JP7175748B2 - シアントナー - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真方式、静電記録方式、静電印刷方式に用いられるシアントナーに関する。
近年、電子写真方式によるカラー画像形成技術の発展に伴い、高画質化への要求が高まっている。高画質化を達成するためには、トナー粒子中での顔料分散を向上させ、顔料の着色能力を最大限に発揮させることが重要である。
現在カラートナーにおいて、シアントナー用の着色剤として、銅フタロシアニン顔料が好適に用いられている。銅フタロシアニン顔料は、コスト、耐光性に関して非常に優れた性能を持っている。
しかしながら、一般的に微細な粒子径である銅フタロシアニン顔料は、非常に強固な結晶性を有し、顔料粒子間の凝集力も強い傾向にあるため、溶融樹脂の如き媒体中での分散が不十分となりやすい。顔料の分散性が不十分で、凝集した状態である場合、着色力の低下を引き起こしやすい。
また、電子写真方式のフルカラー複写機が広く普及し、印刷市場への適用も始まっている。印刷市場では、幅広いメディア(紙種)に対応しながら、高速、高画質、及び高生産性が要求されるようになってきている。例えば、厚紙から薄紙へ紙種が変更されても、紙種に合わせたプロセススピードの変更や定着器の加熱設定温度の変更を行わずに印刷が継続可能な、メディア等速性が求められている。優れたメディア等速性を得るという観点から、トナーには低温から高温まで幅広い温度範囲で適正に定着を完了することが求められている。
シャープメルト性を有する結晶性樹脂をトナーへ添加し、低温定着性能を向上させたトナーが提案されている(特許文献1)。結晶性樹脂を用いることによって、低温定着性に対しては、ある程度の効果は得られる。しかし、上記トナーを坪量の小さいメディア(紙種)に印刷する場合、低粘度化したトナーは粘性応力が小さいため、定着ローラーからメディアが分離せず、メディアが定着ローラーに巻き付く場合がある。
また、幅広い温度範囲で適正にトナーを定着させるために、トナー粒子中にワックスを含有させトナーに離型性を持たせる方法がある。この場合、トナー粒子中のワックスの分散状態は、トナーの性質に重大な影響を及ぼすため、微細かつ均一であることが望まれる。
トナー粒子中のワックスの分散状態を制御するために、トナー中にワックス分散剤を含有させる技術が提案されている(特許文献2)。
さらに、これらトナー粒子中の結晶性樹脂やワックスの存在状態を制御するトナーも提案されている(特許文献3)。
しかし、トナー粒子中の材料の分散状態を制御し、顔料の着色力を最大限に発揮させた状態を維持し、かつ結晶性樹脂やワックスに所望の働きをさせるには、依然として検討の余地がある。
特開2011-123352号公報 特開2011-13548号公報 特開2008-203785号公報
本発明の目的は、上記の課題を解決したシアントナーを提供することにある。具体的には、優れた低温定着性、耐ホットオフセット性、定着分離性、及び着色力を有するシアントナーを提供することにある。
本発明者らが鋭意検討を重ねた結果、低温定着性、耐ホットオフセット性、定着分離性、着色力に優れたシアントナーを提供するためには、下記の構成が重要であることを見出し、本発明に至った。
すなわち、本発明によれば、結着樹脂、着色剤、炭化水素ワックス、ワックス分散剤及び結晶性ポリエステルを含有するシアントナーであって、
前記ワックス分散剤が炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合された重合体であり、
前記ワックス分散剤の酸価が、10.0mgKOH/g以上、40.0mgKOH/g以下であり、
前記着色剤が、蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)が、下記式(1)を満たす銅フタロシアニン顔料を含有しており、
透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察される前記シアントナーの断面において、前記銅フタロシアニン顔料が前記ワックスを被覆した構造体1が存在し、かつ
前記透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察されるルテニウム染色したトナー断面において、針状の前記結晶性ポリエステルが前記ワックスを被覆した構造体2が存在するシアントナーが提供される。
1.5×10-4≦Ca/Cu≦6.0×10-4・・・(1)
本発明によれば、低温定着性、耐ホットオフセット性、着色力及び定着分離性に優れたシアントナーを提供することができる。
本発明に係る構造体1の概略的断面図 本発明に係る構造体2の概略的断面図 本発明に係るトナーの製造に用いられる熱球形化処理装置の概略的図である。 本発明に係るトナーの電子線透過型顕微鏡によるトナー断面における結晶性ポリエステルの結晶の分布図である。 本発明に係るトナーの電子線透過型顕微鏡によるトナー断面における結晶性ポリエステルの長軸長さと短軸長さを示す図である。
以下に図面を参照して、本発明を実施するための形態を例示的に詳しく説明する。ただし、本発明の技術的範囲を以下の実施の形態に限定するものではない。
本発明のトナーは、結着樹脂、着色剤、炭化水素ワックス、ワックス分散剤及び結晶性ポリエステルを含有するシアントナーである。
前記ワックス分散剤は炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合された重合体である。
前記ワックス分散剤の酸価は、10.0mgKOH/g以上、40.0mgKOH/g以下である。
前記着色剤は、蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)が、下記式(1)を満たす銅フタロシアニン顔料を含有している。
1.5×10-4≦Ca/Cu≦6.0×10-4・・・(1)
透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察される前記シアントナー断面において、前記銅フタロシアニン顔料が前記ワックスを被覆した構造体1が存在する。
前記透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察されるルテニウム染色したトナー断面において、針状の前記結晶性ポリエステルが前記ワックスを被覆した構造体2が存在する。
本発明では、
前記シアントナーが、炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合された重合体であるワックス分散剤が上記のような範囲の酸価を持ち、
前記着色剤が、蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)が、上記式(1)を満たす銅フタロシアニン顔料を含有することによって、
トナー粒子中に前記銅フタロシアニン顔料が前記ワックスを被覆した構造体1が存在し、針状の前記結晶性ポリエステルが前記ワックスを被覆した構造体2が存在する。
この理由について、本発明では以下のように考える。
本発明では、分散剤の酸価を持つ部分(COO)と、顔料中の金属(Ca2+)が相互作用し、図1に示すような顔料16がワックス15を取り囲むように分散した構造体1を形成する。構造体1において顔料16がワックス15の周りを覆うので、ワックス15はトナー粒子中でドメインとして存在し、定着分離性が向上する。トナー粒子中で構造体1が分散することによって耐ホットオフセット性、着色力が向上する。前記着色剤の蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)とワックス分散剤の酸価が上記の範囲内にあることによって、構造体1が形成されやすくなり、低温定着性、着色力、及び定着分離性が向上する。
本件において、構造体1が形成されると、低温定着性、着色力、及び定着分離性が向上する理由は以下のように考えられる。構造体1がトナー中で形成されることによって、トナー中で顔料が分散しやすくなり、低温定着性と着色力とが向上する。同様に、トナー中でワックスがドメインとして分散できるようになり、定着分離性が向上する。
なお、本件では、トナーをルテニウム染色せずに透過型電子顕微鏡で観察することによって構造体1を観察することができる。
本発明の前記構造体1において、前記顔料による前記ワックスの被覆率が30%以上80%以下であることが好ましい。被覆率が上記範囲であることによって、トナー粒子で顔料が分散した状態になり、着色力が向上すると同時に、ワックスがドメインとして分散した状態になるので定着分離性、耐ホットオフセット性が向上する。なお、前記構造体1における前記顔料による前記ワックスの被覆率はトナーの製造条件、溶融混練法では混練条件によって制御することができ、混練温度は200℃以下であることが優れた顔料分散性を得ることができるという観点から好ましい。
本発明では、前記構造体1同士の最小距離が20nm以上100nmであることが好ましい。前記構造体1同士の最小距離が上記範囲内にあることによって、トナー中でワックスと顔料が微分散した状態となり、耐ホットオフセット性、着色力が向上する。なお、本発明では前記構造体1同士の最小距離はトナー中に添加するワックス分散剤の添加量で制御することができる。ワックス分散剤の添加量が多すぎると、トナー粒子中でワックス同士が接触してしまい、分散しなくなることがあり、好ましくない。
なお、本発明において、構造体1同士の距離は、透過型電子顕微鏡で観察したトナー断面から測定した。具体的には、トナー断面における任意の構造体1を選び、その構造体1の最も近くにある別の構造体1までの距離を測定した。この操作を合計100個の構造体について行い、最小距離の平均値をとり、本件の構造体1同士の最小距離とした。
図2に示すように、本発明では、前記TEM観察によるルテニウム染色したトナー断面において、針状の結晶性ポリエステル20が分散しており、結晶性ポリエステル20がワックス15を被覆した構造体2(図2中の符号19)が存在する。
前記結晶性ポリエステルによる前記ワックスの被覆率が20%以上70%以下であることが好ましい。前記結晶性ポリエステルによる前記ワックスの被覆率が上記の範囲内にあることによって、トナーにおいて非晶性ポリエステル樹脂17の中にワックスがドメインとして分散するので定着分離性が向上し、結晶性ポリエステルも微分散するので低温定着性が向上する。
なお、本発明では、前記結晶性ポリエステルによる前記ワックスの被覆率は、得られたトナーを温度40℃、相対湿度20%の恒温槽に静置した時間によって制御した。これは温度40℃、相対湿度20%の環境下でトナー粒子中の結晶性ポリエステルの結晶成長が進むことによって、構造体2における前記結晶性ポリエステルによる前記ワックスの被覆率が大きくなるためである。
本発明では、結晶性ポリエステルの長軸の長さは60nm以上250nm以下であることが好ましい。結晶性ポリエステルの長軸の長さがこの範囲であることによって、低温定着性が向上する。
本発明において用いられるトナー用ワックス分散剤(以下、単にワックス分散剤ともいう)は、炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合している重合体を含有するトナー用ワックス分散剤である。前記スチレンアクリル系樹脂が、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有することが好ましい。
本発明のワックス分散剤において、スチレンアクリル系樹脂部位が、トナー粒子を構成する樹脂と親和性を持ち、炭化水素化合物部位が、トナー粒子に含有されるワックスと親和性を持つ。このため、トナー粒子中でワックスを微分散させることができる。
また、スチレンアクリル系樹脂が、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有している場合、トナー粒子中でワックスを微分散させると同時に、トナーが高温高湿下に放置されても帯電性を維持することが可能となる。
本発明者らが検討した結果、以下のようなメカニズムが推定される。
トナーを高温高湿下に放置すると、通常、トナー粒子表面にワックスが移行する。
一方、トナー粒子が本発明のワックス分散剤を含有している場合、トナー粒子表面にワックスが移行する際に、前記ワックス分散剤もワックスと一緒にトナー粒子表面に移行しているものと推測される。
従来のワックス分散剤と比較して、本発明のワックス分散剤は嵩高い飽和脂環式化合物由来の構造部位を有しているため、前記ワックス分散剤がトナー粒子表面に移行しても、ワックスの溶出が抑制される。その結果、トナーが高温高湿下に放置されてもトナーの流動性が低下せず、耐ブロッキング性が向上し、かつ、帯電性が悪化しないと考えられる。
また、前記ワックス分散剤がトナー粒子表面に移行した場合、飽和脂環式化合物由来の構造部位が疎水性を示すため、トナー粒子の疎水性が向上し、高温高湿下に放置されても帯電性が悪化しないものと考えられる。
本発明のワックス分散剤は、炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合している重合体を含有する。そして、前記スチレンアクリル系樹脂が飽和脂環式化合物由来の構造部位(シクロアルキルアクリレート由来のユニット又はシクロアルキルメタクリレート由来のユニット)を有していることが好ましい。
前記炭化水素化合物は、特に限定されることはないが、トナー粒子中でのワックスとの親和性の観点から、後述する本発明のトナーに用いられるワックスから選択するとよい。
前記炭化水素化合物は、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定される最大級熱ピークのピーク温度が60℃以上110℃以下であることが好ましい。また、前記炭化水素化合物は、重量平均分子量(Mw)が900以上50,000以下であることが好ましい。
本発明においては、前記炭化水素化合物が、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックスであることが好適に例示できる。
また、前記ワックス分散剤の製造時の反応性の観点から、ポリプロピレンのように枝分かれ構造を持つことが好ましい。
前記炭化水素化合物の含有割合は、炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合している重合体中に、5.0質量%以上20.0質量%以下であることが好ましく、8.0質量%以上12.0質量%以下であることがより好ましい。
なお、本発明において、炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂をグラフト重合させる方法は、特に限定されず、従来公知の方法を用いることができる。
本発明のワックス分散剤において、スチレンアクリル系樹脂は、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有していることが好ましい。
例えば、スチレンアクリル系樹脂が、下記式(1)で表されるモノマーユニットを有する態様が挙げられる。
ここで、モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
Figure 0007175748000001
[前記式(1)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、Rは飽和脂環式基を表す。]
上記Rにおける飽和脂環式基としては、飽和脂環式炭化水素基が好ましく、より好ましくは炭素数3以上18以下の飽和脂環式炭化水素基、さらに好ましくは炭素数4以上12以下の飽和脂環式炭化水素基である。飽和脂環式炭化水素基には、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基、スピロ炭化水素基などが包含される。
このような飽和脂環式基としては、以下のものが挙げられる。シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、t-ブチルシクロヘキシル基、シクロヘプチル基、シクロオクチル基、トリシクロデカニル基、デカヒドロ-2-ナフチル基、トリシクロ[5.2.1.02,6]デカン-8-イル基、ペンタシクロペンタデカニル基、イソボルニル基、アダマンチル基、ジシクロペンタニル基、トリシクロペンタニル基など。
また、飽和脂環式基は、置換基としてアルキル基、ハロゲン原子、カルボキシ基、カルボニル基、ヒドロキシ基などを有することもできる。前記アルキル基としては、炭素数1~4のアルキル基が好ましい。
これらの飽和脂環式基のうち、シクロアルキル基、縮合多環炭化水素基、橋かけ環炭化水素基が好ましく、
炭素数3以上18以下のシクロアルキル基、置換又は非置換のジシクロペンタニル基、置換又は非置換のトリシクロペンタニル基がより好ましく、
炭素数4以上12以下のシクロアルキル基がさらに好ましく、炭素数6以上10以下のシクロアルキル基が特に好ましい。
なお、置換基の位置及び数は任意であり、置換基を2以上有する場合、前記置換基は同一でも異なっていてもよい。
本発明において、式(1)で表されるモノマーユニットの含有割合は、前記スチレンアクリル系樹脂を構成する全モノマーユニットを基準として、
1.5mol%以上45.0mol%以下であることが好ましく、3.0mol%以上25.0mol%以下であることがより好ましい。
上記スチレンアクリル系樹脂は、飽和脂環式化合物由来の構造部位を有するビニル系モノマー(a)の単独重合体でもよいが、その他のモノマー(b)との共重合体であってもよい。
前記ビニル系モノマー(a)としては、以下のものが挙げられる。シクロプロピルアクリレート、シクロブチルアクリレート、シクロペンチルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロプロピルメタクリレート、シクロブチルメタクリレート、シクロペンチルメタクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレート、ジヒドロシクロペンタジエチルアクリレート、ジシクロペンタニルアクリレート、ジシクロペンタニルメタクリレートなど。これらを併用してもよい。
これらの中でも、疎水性の観点から、シクロヘキシルアクリレート、シクロヘプチルアクリレート、シクロオクチルアクリレート、シクロヘキシルメタクリレート、シクロヘプチルメタクリレート、シクロオクチルメタクリレートが好ましい。
その他のモノマー(b)としては、以下のものが挙げられる。スチレン、α-メチルスチレン、p-メチルスチレン、m-メチルスチレン、p-メトキシスチレン、p-ヒドロキシスチレン、p-アセトキシスチレン、ビニルトルエン、エチルスチレン、フェニルスチレン、ベンジルスチレンなどのスチレン系モノマー;メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート、2-エチルヘキシルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ブチルメタクリレート、2-エチルヘキシルメタクリレートなどの不飽和カルボン酸のアルキルエステル(前記アルキルの炭素数が1以上18以下);酢酸ビニルなどのビニルエステル系モノマー;ビニルメチルエーテルのようなビニルエーテル系モノマー;塩化ビニルのようなハロゲン元素含有ビニル系モノマー;ブタジエン、イソブチレンなどのジエン系モノマー。これらを併用してもよい。
また、極性調整のため、酸基や水酸基を付加するモノマーを前記共重合体の構成成分として含有してもよい。酸基や水酸基を付加するモノマーとしては、アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸、マレイン酸ハーフエステル、アクリル酸2エチルヘキシルなどが挙げられる。
本発明において、上記スチレンアクリル系樹脂は、下記式(2)で表されるモノマーユニットを有することが、トナーの低温定着性の観点から好ましい。
上記スチレンアクリル系樹脂が、式(2)で表されるモノマーユニットを有する場合、前記ワックス分散剤のガラス転移温度(Tg)が低下する傾向にある。その結果、前記ワックス分散剤がトナー粒子に含有された場合、トナーが高温高湿下に放置されても帯電性が低下せず、かつ、低温定着性がさらに向上する。
本発明において、式(2)で表されるモノマーユニットの含有割合は、前記スチレンアクリル系樹脂を構成する全モノマーユニットを基準として、5.0mol%以上30.0mol%以下であることが好ましく、10.0mol%以上20.0mol%以下であることがより好ましい。
Figure 0007175748000002
[前記式(2)中、Rは水素原子又はメチル基を表し、nは1以上18以下の整数を表す(nは、3以上12以下の整数であることが好ましい。)]
前記ワックス分散剤の酸価が上記の範囲内である場合、トナー中のワックス分散剤と樹脂の親和性がより向上し、トナー中のワックス分散性がより向上する。また、トナー粒子の疎水性が適切となり、高温高湿下での帯電性がより向上する。
本発明のトナーは、結着樹脂、ワックス及び上記トナー用ワックス分散剤を含有するトナー粒子を有することが好ましい。
また、前記結着樹脂が、非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
さらに、前記結着樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有することがより好ましい。
前記結着樹脂としてポリエステル樹脂を用いた場合、ポリエステル樹脂とワックスとの相溶性は低い。そのため、ワックスをそのままの状態で添加してトナー粒子に含有させた場合には、トナー粒子中にワックスが偏析して存在し、遊離ワックスなども発生することから、結果的に帯電不良などの不具合が発生し、好ましくない場合があった。
一方、本発明のトナーが上述のトナー用ワックス分散剤を含有し、また、結着樹脂が結晶性ポリエステル樹脂を含有することによって、トナー粒子中のワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の分散状態が制御される。その結果、低温定着性、耐ホットオフセット性、耐ブロッキング性を満足しつつ、帯電性が厳しい状況下においても、十分な帯電性を発揮することができる。
トナー粒子における上記結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、上記非晶性ポリエステル樹脂100.0質量部に対して、1.0質量部以上15.0質量部以下であることが好ましく、2.0質量部以上10.0質量部以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が上述の範囲であると、低温定着性が向上する。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が15.0質量部を超える場合、トナー粒子中に結晶性ポリエステル樹脂を微分散させにくくなる傾向に有り、低温定着性が低下する傾向になる。
本発明において、結着樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
本発明において、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
上記結晶性ポリエステル樹脂は、2価以上の多価カルボン酸とジオールの反応によって得ることができる。その中でも、脂肪族ジオールと脂肪族ジカルボン酸とを縮重合して得られる樹脂であることが、結晶化度が高く好ましい。また、本発明において結晶性ポリエステル樹脂は、1種類のみを用いても、複数種を併用してもよい。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、
炭素数2以上22以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、
炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分と
を縮重合して得られる樹脂であることが好ましい。
その中でも、上記結晶性ポリエステル樹脂は、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するアルコール成分と、
炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物を含有するカルボン酸成分と
を縮重合して得られる結晶性ポリエステル樹脂であることが、優れた低温定着性と耐ブロッキング性を得ることができるという観点からより好ましい。
上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであるとよい。
例えば、以下のものが挙げられる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2-プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,3-プロパンジオール、1,4-ブタンジオール、1,4-ブタジエングリコール、1,5-ペンタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオール。
これらの中でも、以下のような直鎖脂肪族α,ω-ジオールが好ましく例示される。1,6-ヘキサンジオール、1,7-ヘプタンジオール、1,8-オクタンジオール、1,9-ノナンジオール、1,10-デカンジオール、1,11-ウンデカンジオール、及び1,12-ドデカンジオールなど。
本発明において、誘導体としては、上記縮重合によって同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジオールをエステル化した誘導体が挙げられる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分において、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジオール及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の含有量は、
全アルコール成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
本発明において、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコールを用いることもできる。
前記多価アルコールのうち、上記脂肪族ジオール以外のジオールとしては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールAなどの芳香族アルコール;1,4-シクロヘキサンジメタノールなどが挙げられる。
また、前記多価アルコールのうち3価以上の多価アルコールとしては、以下のものが挙げられる。1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセリン、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、及びトリメチロールプロパンなどの脂肪族アルコールなど。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコールを用いてもよい。前記1価のアルコールとしては、n-ブタノール、イソブタノール、sec-ブタノール、n-ヘキサノール、n-オクタノール、2-エチルヘキサノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコールなどが挙げられる。
一方、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であるとよい。
例えば、以下のものが挙げられる。シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸。
これらの酸無水物又は低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
本発明において、誘導体としては、上記縮重合によって同様の樹脂構造が得られるものであれば特に限定されない。例えば、上記ジカルボン酸成分の酸無水物、ジカルボン酸成分をメチルエステル化、エチルエステル化、又は酸クロライド化した誘導体が挙げられる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分において、上記炭素数2以上22以下(好ましくは炭素数6以上12以下)の脂肪族ジカルボン酸及びこれらの誘導体からなる群より選ばれた少なくとも1種の化合物の含有量は、
全カルボン酸成分に対して、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
本発明において、上記脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。前記多価カルボン酸のうち、上記脂肪族ジカルボン酸以外の2価のカルボン酸としては、以下のものが挙げられ、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなども含まれる。イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族カルボン酸;n-ドデシルコハク酸、n-ドデセニルコハク酸などの脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸。
また、その他の多価カルボン酸において、3価以上の多価カルボン酸としては、以下のものが挙げられる。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、及びピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパンなどの脂肪族カルボン酸、これらの酸無水物又は低級アルキルエステルなどの誘導体など。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を用いてもよい。前記1価のカルボン酸としては、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4-メチル安息香酸、3-メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸などが挙げられる。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、上記カルボン酸成分とアルコール成分とをエステル化反応、又はエステル交換反応させた後、減圧下又は窒素ガスを導入して常法に従って縮重合反応させることによって結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化又はエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、及び酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒又はエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記縮重合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、2-エチルヘキサン酸錫(II)、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、及び二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化若しくはエステル交換反応、又は重縮合反応において、
得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全モノマーを一括に仕込むという方法や、
低分子量成分を少なくするために2価のモノマーを先ず反応させた後、3価以上のモノマーを添加して反応させたりするなどの方法を用いてもよい。
本発明において、結晶性ポリエステル樹脂を使用することによって、トナーの低温定着性が良化する理由は、以下のように考えている。
結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂とが相溶し、非晶性ポリエステル樹脂の分子鎖の間隔を広げ、分子間力を弱めることによって、トナーのガラス転移温度(Tg)を大幅に低下させ、溶融粘度を低い状態にするためである。
結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との相溶性を高めるためには、結晶性ポリエステル樹脂を構成する脂肪族ジオール及び/又は脂肪族ジカルボン酸の炭素数を短くし、エステル基濃度を高め、極性を高めるとよい。
しかし、ガラス転移温度(Tg)が大幅に低下したトナーにおいても、高温高湿環境下での使用や輸送などにおける耐ブロッキング性を確保する必要がある。そのためには、高温高湿下にトナーがさらされた場合には、相溶していたトナー中の結晶性ポリエステル樹脂を再結晶化させ、トナーのガラス転移温度(Tg)を非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)付近まで戻す必要がある。
ここで、結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度が高く、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の相溶性があまりにも高いと、結晶性ポリエステル樹脂を再結晶化させることが難しくなり、トナーの耐ブロッキング性が低下する傾向となる。
以上のことから、低温定着性と耐ブロッキング性の両立の観点から、結晶性ポリエステル樹脂を構成する、脂肪族ジオールの炭素数が6以上12以下であり、脂肪族ジカルボン酸の炭素数が6以上12以下であることが好ましい。
さらに、本発明において、上記ワックス分散剤と結晶性ポリエステル樹脂とを併用することによって、低温定着性がさらに向上する。
一般的に結晶性ポリエステル樹脂のような可塑剤は、上述のように、非晶性ポリエステル樹脂の間隙に入り込むことによって非晶性ポリエステル樹脂が規則正しく配向することを阻害し、可塑効果を発揮する。したがって、可塑剤は嵩高い側鎖をもつものが有用な特性を示すことが多い。
本発明のワックス分散剤は、嵩高い飽和脂環式化合物由来の構造部位を有していることが好ましい。嵩高い飽和脂環式化合物由来の構造部位を有する場合、トナー中でワックス分散剤と結晶性ポリエステル樹脂とが相互作用することによって、嵩高い側鎖をもつような可塑剤となっているものと推測される。このため、本発明において、ワックス分散剤と結晶性ポリエステル樹脂とを併用することによって、低温定着性がさらに向上するものと考えられる。
本発明において、結着樹脂は、非晶性ポリエステル樹脂を含有することが好ましい。
前記結着樹脂中の非晶性ポリエステル樹脂の含有割合は、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂は、結晶性ポリエステル樹脂と同様、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。
非晶性ポリエステル樹脂の製造に用いられるモノマーとしては、多価アルコール(2価又は3価以上のアルコール)と、多価カルボン酸(2価又は3価以上のカルボン酸)及びそれらの酸無水物又はそれらの低級アルキルエステルとが挙げられる。
ここで、分岐ポリマーを作製する場合には、非晶性ポリエステル樹脂の分子内において部分架橋することが有効であり、そのためには、3価以上の多官能化合物を使用するとよい。すなわち、モノマーとして、3価以上のカルボン酸及びその酸無水物又はその低級アルキルエステル、及び/又は3価以上のアルコールを含めるとよい。
非晶性ポリエステル樹脂の製造に用いられる多価アルコール及び多価カルボン酸としては、以下が例示できる。
2価のアルコールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、1,3-ブタンジオール、1,4-ブタンジオール、2,3-ブタンジオール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,5-ペンタンジオール、1,6-ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2-エチル-1,3-ヘキサンジオール、水素化ビスフェノールA、下記式(A)で表されるビスフェノール及びその誘導体;及び下記式(B)で表されるジオール類。
Figure 0007175748000003
2価のカルボン酸としては、例えば、以下のものが挙げられる。マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、グルタコン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、アジピン酸、セバチン酸、アゼライン酸、マロン酸、n-ドデセニルコハク酸、イソドデセニルコハク酸、n-ドデシルコハク酸、イソドデシルコハク酸、n-オクテニルコハク酸、n-オクチルコハク酸、イソオクテニルコハク酸、及びイソオクチルコハク酸。また、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルを用いてもよい。
これらのうち、マレイン酸、フマル酸、テレフタル酸、アジピン酸、n-ドデセニルコハク酸が好ましく用いられる。
3価以上のアルコールとしては、例えば、以下のものが挙げられる。ソルビトール、1,2,3,6-ヘキサンテトロール、1,4-ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4-ブタントリオール、1,2,5-ペンタントリオール、グリセロール、2-メチルプロパントリオール、2-メチル-1,2,4-ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、及び1,3,5-トリヒドロキシメチルベンゼン。
これらのうち、グリセロール、トリメチロールプロパン、及びペンタエリスリトールが好適に例示できる。
3価以上のカルボン酸としては、例えば、以下のものが挙げられる。1,2,4-ベンゼントリカルボン酸、2,5,7-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ナフタレントリカルボン酸、1,2,4-ブタントリカルボン酸、1,2,5-ヘキサントリカルボン酸、1,3-ジカルボキシル-2-メチル-2-メチレンカルボキシプロパン、1,2,4-シクロヘキサントリカルボン酸、テトラ(メチレンカルボキシル)メタン、1,2,7,8-オクタンテトラカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸。また、これらの酸無水物及び低級アルキルエステルを用いてもよい。
これらのうち、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)又はその誘導体が安価で、反応制御が容易であるため、好ましく用いられる。
上記2価のアルコール及び3価以上のアルコールは、単独であるいは複数を併用して用いることができる。同様に、上記2価のカルボン酸など及び3価以上のカルボン酸は、単独であるいは複数を併用して用いることができる。
本発明において、上記非晶性ポリエステル樹脂はハイブリッド樹脂であってもよい。例えば、非晶性ポリエステル樹脂と、ビニル系樹脂又はビニル系共重合体とが化学的に結合することによって得られるハイブリッド樹脂が挙げられる。
この場合、ハイブリッド樹脂における、非晶性ポリエステル樹脂の含有割合が、50質量%以上であることが好ましく、70質量%以上であることがより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂と、ビニル系樹脂又はビニル系共重合体とのハイブリッド樹脂を製造する方法としては、以下の方法が挙げられる。ビニル系樹脂又はビニル系共重合体、及び、ポリエステル樹脂のそれぞれと反応しうるモノマー成分を含むポリマーが存在しているところで、どちらか一方又は両方の樹脂の重合反応を行う方法。
非晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーのうち、ビニル系樹脂又はビニル系共重合体と反応し得るものとしては、例えば、フタル酸、マレイン酸、シトラコン酸、イタコン酸のような不飽和ジカルボン酸又はその無水物などが挙げられる。
ビニル系樹脂又はビニル系共重合体を構成するモノマーのうち、非晶性ポリエステル樹脂と反応し得るものとしては、例えば、カルボキシ基又はヒドロキシ基を有するものや、アクリル酸エステル類又はメタクリル酸エステル類が挙げられる。
また、本発明において、本発明の効果を損なわない程度に、結着樹脂として、非晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂を用いることもできる。
前記樹脂としては、特に限定されることはなく、トナーの結着樹脂として使用されている樹脂が挙げられる。例えば、以下のものが挙げられる。ビニル系樹脂、フェノール樹脂、天然樹脂変性フェノール樹脂、天然樹脂変性マレイン樹脂、アクリル樹脂、メタクリル樹脂、ポリ酢酸ビニル樹脂、シリコーン樹脂、ポリウレタン樹脂、ポリアミド樹脂、フラン樹脂、エポキシ樹脂、キシレン樹脂、ポリビニルブチラール、テルペン樹脂、クマロンインデン樹脂、石油系樹脂など。
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂のテトラヒドロフラン(THF)可溶分のゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)によって測定した分子量分布において、ピーク分子量が、4,000以上13,000以下であることが好ましい。上記範囲を満たすことは、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性とを得ることができるという観点から好ましい。
また、非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、2mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
さらに、非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、2mgKOH/g以上20mgKOH/g以下であることが、優れた低温定着性と耐ブロッキング性とを得ることができるという観点から好ましい。
本発明において、非晶性ポリエステル樹脂は、ピーク分子量が4,500以上7,000以下である低分子量の非晶性ポリエステル樹脂C、及び、ピーク分子量が8,500以上9,500以下である高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bを含有する態様もある。
高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bと低分子量の非晶性ポリエステル樹脂Cとの混合比率(B/C)は、質量基準で10/90以上60/40以下であることが、優れた低温定着性と耐ホットオフセット性とを得ることができるという観点から好ましい。
高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bのピーク分子量は、8,500以上9,500以下であることが、優れた耐ホットオフセット性を得ることができるという観点から好ましい。また、高分子量の非晶性ポリエステル樹脂Bの酸価は、10mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電性の観点から好ましい。
低分子量の非晶性ポリエステル樹脂Cのピーク分子量は、4,500以上7,000以下であることが、優れた低温定着性を得ることができるという観点から好ましい。また、低分子量の非晶性ポリエステル樹脂Cの酸価は、10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下において優れた帯電性を得ることができるという観点から好ましい。
なお、上記酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価は、JIS K0070-1992に準じて測定する。
本発明では、トナー粒子はワックスを含有する。前記ワックスとしては、以下のものが挙げられる。
低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。
さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、及びモンタン酸のような飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、及びバリナリン酸のような不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、及びメリシルアルコールのような飽和アルコール類;ソルビトールのような多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、及びモンタン酸のような脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、及びメリシルアルコールのようなアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、及びラウリン酸アミドのような脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、及びヘキサメチレンビスステアリン酸アミドのような飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、及びN,N’ジオレイルセバシン酸アミドのような不飽和脂肪酸アミド類;m-キシレンビスステアリン酸アミド、及びN,N’ジステアリルイソフタル酸アミドのような芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、及びステアリン酸マグネシウムのような脂肪族金属塩(一般的に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸のようなビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、及び耐ホットオフセット性を向上させるという観点から、低分子量ポリプロピレン、パラフィンワックス、及びフィッシャートロプシュワックスのような炭化水素系ワックス、又は、カルナバワックスのような脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
また、示差走査熱量計(DSC)を用いて測定されるワックスの最大吸熱ピークのピーク温度は、45℃以上140℃以下であることが好ましく、70℃以上100℃以下であることがより好ましい。ワックスの最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内である場合、トナーの優れた耐ブロッキング性と耐ホットオフセット性とを両立させることができるという観点からより好ましい。
さらに、本発明では、ワックスの含有量は優れた耐ホットオフセット性と低温定着性とを得ることができるという観点から2.0wt%~7.0wt%であることが好ましい。この範囲を超えると定着温度が上昇する場合があり好ましくない。
本発明のシアントナー粒子は、着色剤を含有する。用いられる着色剤としては、以下のものを改良したものが挙げられる。
C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1~5個置換した銅フタロシアニン顔料。
また、顔料の含有量は、優れた着色力を得ることができるという観点から、トナー中に4.0wt%~10.0wt%であることが好ましい。これ以上含有すると、トナーの定着温度が上昇することがあり、好ましくない。
本発明において、トナー粒子は、必要に応じて荷電制御剤を含有してもよい。
前記荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く、且つ、一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩又はスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物。カルボン酸塩又はカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーン。
ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
荷電制御剤は、トナー粒子に対して内添してもよいし外添してもよい。
荷電制御剤の含有量は、結着樹脂100.0質量部に対して、0.2質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、必要に応じて無機微粒子を含有してもよい。
前記無機微粒子は、トナー粒子に内添してもよいし、外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。
外添剤として含有する場合は、シリカ微粒子、酸化チタン微粒子、酸化アルミニウム微粒子のような無機微粒子が好ましい。
前記無機微粒子は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
前記無機微粒子がトナーの流動性向上のために使用される場合は、その比表面積が50m/g以上400m/g以下であることが好ましい。
一方、前記無機微粒子がトナーの耐久性向上のために使用される場合は、その比表面積が10m/g以上50m/g以下であることが好ましい。
前記流動性向上と耐久性向上とを両立させるためには、比表面積が50m/g以上400m/g以下である無機微粒子と比表面積が10m/g以上50m/g以下である無機微粒子とを併用してもよい。
前記無機微粒子を外添剤として含有させる場合は、トナー粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上10.0質量部以下であることが好ましい。トナー粒子と無機微粒子との混合は、ヘンシェルミキサーのような公知の混合機を用いるとよい。
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、また、長期にわたり安定した画像を供給するために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることもできる。
磁性キャリアとしては、例えば、以下のものを使用することができる。酸化鉄;鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、及び希土類のような金属粒子、それらの合金粒子、それらの酸化物粒子。フェライトなどの磁性体;磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア);など。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、磁性キャリアとトナーの混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度が、2質量%以上15質量%以下であることが好ましく、より好ましくは4質量%以上13質量%以下である。
本発明において、トナー粒子の製造方法は特に限定されることはないが、上記ワックス分散剤の効果を十分に発揮するためには、溶融混練法を用いることが好ましい。
ここで、溶融混練法とは、結着樹脂、ワックス、及びトナー用ワックス分散剤を含有する混合物を溶融及び混練して溶融混練物を得る工程(以下、単に溶融混練工程ともいう)を含む、トナー粒子の製造方法である。
トナー粒子が溶融混練工程を経て製造されることによって、ワックスの分散性が向上する。
前記溶融混練工程では、熱とシェア(せん断)によって、トナー粒子の原材料(特に結着樹脂、ワックス分散剤及びワックス)がしっかりと混合されるために、トナー粒子中のワックスの分散性が向上する。その結果、トナー粒子中でワックスが微分散し、耐ホットオフセット性が向上する。
本発明において、トナー粒子の製造方法は、上記溶融混練工程において得られた溶融混練物を冷却後、粉砕して得られた樹脂粒子を熱処理する工程(以下、単に熱処理工程ともいう)を含むことが好ましい。
以下、溶融混練法を用いたトナー粒子の製造手順について説明する。
まず、原料混合工程では、トナー原料として、結晶性ポリエステル樹脂及び非晶性ポリエステル樹脂を含有する結着樹脂、ワックス、並びに、トナー用ワックス分散剤などを所定量秤量して配合し、混合する。
前記混合に使用される装置の一例としては、以下のものが挙げられる。ヘンシェルミキサー(日本コークス工業(株)製);スーパーミキサー((株)カワタ製);リボコーン((株)大川原製作所製);ナウターミキサー、タービュライザー、サイクロミックス(ホソカワミクロン(株)製);スパイラルピンミキサー(太平洋機工(株)製);レーディゲミキサー((株)マツボー製)など。
次に、得られた混合物を溶融及び混練して、樹脂類を溶融し、その中にワックス及びトナー用ワックス分散剤などを分散させる(溶融混練工程)。
溶融混練に使用される装置の一例としては、TEM型押し出し機(東芝機械(株)製);TEX二軸混練機((株)日本製鋼所製);PCM混練機((株)池貝製);ニーデックス(日本コークス工業(株)製)などが挙げられる。連続生産できるなどの優位性から、バッチ式練り機よりも、1軸又は2軸押出機といった連続式の練り機が好ましい。
次に、得られた溶融混練物は、2本ロールなどで圧延され、水冷などで冷却する。
得られた冷却物は、所望の粒径にまで粉砕される。まず、クラッシャー、ハンマーミル、又はフェザーミルなどで粗粉砕され、さらに、クリプトロンシステム(川崎重工業(株)製)、スーパーローター(日清エンジニアリング(株)製)などで微粉砕され、樹脂粒子を得る。
得られた樹脂粒子は、所望の粒径に分級して、トナー粒子としてもよい。分級に使用される装置としては、ターボプレックス、ファカルティ、TSP、TTSP(ホソカワミクロン(株)製);エルボージェット(日鉄鉱業(株)製)などがある。
また、得られた樹脂粒子に熱処理を実施して、トナー粒子としてもよい。
さらに、熱処理の実施後に粗大な粒子が存在する場合、必要に応じて、分級又は篩分によって粗大粒子を除去してもよい。分級に使用される装置としては、上記装置が挙げられる。一方、篩分に使用される装置としては、ウルトラソニック(晃栄産業(株)製);レゾナシーブ、ジャイロシフター((株)徳寿工作所);ターボスクリーナー(フロイント・ターボ(株)製);ハイボルター(東洋ハイテック(株)製)などが挙げられる。
一方、上記熱処理工程の前に、得られた樹脂粒子に、必要に応じて無機微粒子などを添加しても構わない。
以下、図3に示す熱処理装置を用いて、樹脂粒子に熱処理を実施する方法を具体的に例示する。
原料定量供給手段1によって定量供給された樹脂粒子は、圧縮気体流量調整手段2によって調整された圧縮気体によって、原料供給手段の鉛直線上に設置された導入管3に導かれる。導入管3を通過した混合物は、原料供給手段の中央部に設けられた円錐状の突起状部材4によって均一に分散され、放射状に広がる8方向の供給管5に導かれ熱処理が行われる処理室6に導かれる。
このとき、処理室6に供給された樹脂粒子は、処理室6内に設けられた樹脂粒子の流れを規制するための規制手段9によって、その流れが規制される。このため処理室6に供給された樹脂粒子は、処理室6内を旋回しながら熱処理された後、冷却される。
供給された樹脂粒子を熱処理するための熱風は、熱風供給手段7から供給され、分配部材12で分配され、熱風を旋回させるための旋回部材13によって、処理室6内に熱風を螺旋状に旋回させて導入される。その構成としては、熱風を旋回させるための旋回部材13が、複数のブレードを有しており、その枚数や角度によって、熱風の旋回を制御することができる(なお、11は熱風供給手段出口を示す)。処理室6内に供給される熱風は、熱風供給手段7の出口部における温度が100℃以上300℃以下であることが好ましく、130℃以上170℃以下であることがより好ましい。熱風供給手段7の出口部における温度が上記の範囲内であれば、樹脂粒子を加熱しすぎることによる粒子の融着や合一を防止しつつ、粒子を均一に処理することが可能となる。
熱風は熱風供給手段7から供給される。さらに熱処理された熱処理樹脂粒子は冷風供給手段8から供給される冷風によって冷却される。冷風供給手段8から供給される冷風の温度は-20℃以上30℃以下であることが好ましい。冷風の温度が上記の範囲内であれば、熱処理樹脂粒子を効率的に冷却することができ、樹脂粒子の均一な熱処理を阻害することなく、熱処理樹脂粒子の融着や合一を防止することができる。また、冷風の絶対水分量は、0.5g/m以上15.0g/m以下であることが好ましい。
次に、冷却された熱処理樹脂粒子は、処理室6の下端にある回収手段10によって回収される。なお、回収手段10の先にはブロワー(不図示)が設けられ、それによって吸引搬送される構成となっている。
また、粉体粒子供給口14は、供給された樹脂粒子の旋回方向と熱風の旋回方向が同方向になるように設けられており、回収手段10も、旋回された樹脂粒子の旋回方向を維持するように、処理室6の外周部に接線方向に設けられている。さらに、冷風供給手段8から供給される冷風は、装置外周部から処理室内周面に、水平かつ接線方向から供給されるよう構成されている。粉体粒子供給口14から供給される熱処理前樹脂粒子の旋回方向、冷風供給手段8から供給された冷風の旋回方向、熱風供給手段7から供給された熱風の旋回方向がすべて同方向である。そのため、処理室内で乱流が起こらず、装置内の旋回流が強化され、熱処理前樹脂粒子に強力な遠心力がかかり、熱処理前樹脂粒子の分散性がさらに向上するため、合一粒子の少ない、形状の揃った熱処理樹脂粒子を得ることができる。
本発明において、トナーの平均円形度は0.960以上であることが好ましく、より好ましくは0.965以上である。トナーの平均円形度が上記の範囲であることによって、トナーの転写効率が向上する。
以下に、トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
<トナー中の着色剤の含有量の測定>
トナー中の着色剤の含有量の測定には、X線回折測定を用いる。X線回折装置としては、測定装置「RINT-TTRII」((株)リガク製)を用いる。また、装置付属の制御ソフト及び解析ソフトを用いる。
測定条件は以下のとおりである。
X線:Cu/50kV/300mA
ゴニオメータ:ローター水平ゴニオメータ(TTR-2)
アタッチメント:標準試料ホルダー
発散スリット:解放
発散縦制限スリット:10.00mm
散乱スリット:開放
受光スリット:開放
カウンタ:シンチレーションカウンタ
走査モード:連続
スキャンスピード:4.0000°/min.
サンプリング幅:0.0200°
走査軸:2θ/θ
走査範囲:10.0000~40.0000°
続いて試料板に対象のトナーをセットして測定を開始する。CuKα特性X線において、ブラッグ角(2θ±0.20deg)3deg~35degの範囲で測定を行い、得られたスペクトルの全積分強度から、着色剤由来以外のスペクトルの積分強度を引くことによって、トナー中の着色剤の含有量を求める。
<X線回折の測定方法>
測定装置「RINT-TTRII」((株)リガク製)を用いて、前記の測定条件にて測定した。
得られたスペクトルから2θが6.5deg~7.5degにおけるスペクトルの半値幅を、トナー中の銅フタロシアニンの結晶性の指標とした。
<ワックス分散剤の酸価の測定>
ワックス分散剤の酸価は以下の方法によって測定する。酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数であり、JIS K 0070-1992に準じて測定する。具体的には、以下の手順に従う。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、脱イオン水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの脱イオン水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間静置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001-1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
ワックス分散剤の試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(4:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(4:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C-B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の吸熱ピークのピーク温度の測定>
ワックス及び結晶性ポリエステル樹脂の最大吸熱ピークのピークトップ温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(ティー・エイ・インスツルメント・ジャパン(株)製)を用いて、ASTM D3418-82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。測定条件は以下のとおりである。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
トナーを試料とする場合において、吸熱ピーク(結着樹脂由来の吸熱ピーク)がワックス及び結晶性樹脂以外の樹脂の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークをそのままワックス及び結晶性樹脂に由来する吸熱ピークとして扱う。
一方、トナーを試料とする場合において、ワックスの吸熱ピークと結晶性樹脂の吸熱ピークとの判別は、以下のようにして行う。トナーからヘキサン溶媒を使用したソックスレー抽出によってワックスを抽出し、ワックス単体の示査走査熱量測定を上記方法で行い、得られた吸熱ピークとトナーの吸熱ピークを比較することによって行う。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、該最大吸熱ピークのピーク温度を、融点とする。
さらに、トナー中のワックスの含有量は、あらかじめワックスの含有量が分かっているトナーのΔHを測定し、含有量とΔHの検量線を引き、得られたトナーのΔHから含有量を得る。
<TEM観察による結晶性ポリエステルの結晶状態の評価>
前記トナーの透過型電子顕微鏡(TEM)による断面観察及び結晶性ポリエステルドメインの評価は、以下のようにして実施することができる。
トナー断面をルテニウム染色することによって、結晶性ポリエステル樹脂が明瞭なコントラストとして得られる。結晶性ポリエステル樹脂はトナー内部を構成する有機成分よりも、弱く染色される。これは、結晶性ポリエステル樹脂の中への染色材料の染み込みが、密度の差などが有るために、トナー内部の有機成分よりも弱いためと考えられる。
ルテニウム原子の量に応じて、染色の強弱が異なる。強く染色される部分は、ルテニウム原子が多く存在し、電子線が透過せずに、観察像上では黒くなり、弱く染色される部分は、電子線が透過されやすく、観察像上では白くなる。
オスミウム・プラズマコーター(フィルジェン(株)製、OPC80T)を用いて、保護膜としてトナーにOs(オスミウム)膜(5nm)およびナフタレン膜(20nm)を形成する。そして、光硬化性樹脂D800(日本電子(株)製)で包埋したのち、超音波ウルトラミクロトーム(Leica社製、UC7)によって、切削速度1mm/sで膜厚60nm(or70nm)のトナー断面を作製した。
得られた断面を、真空電子染色装置(フィルジェン(株)製、VSC4R1H)を用いてRuO(四酸化ルテニウム)ガス500Pa雰囲気で15分間染色し、TEM(日本電子(株)製、JEM2800)を用いてSTEM観察を行った。
STEMのプローブサイズは1nm、画像サイズ1024pixel×1024pixelで取得した。
得られた画像については、画像処理ソフト「Image-Pro Plus (Media Cybernetics社製)」にて 2値化(閾値120/255段階)を行う。
図4に、得られた2値化前の断面画像を示す。図4に示されるように、黒い針状の結晶性ポリエステルの結晶ドメインが確認できる。得られた画像を2値化することによって結晶ドメインを抽出し、そのサイズを計測する。本発明では無作為に選んだ20個のトナーについて断面観察した際に、長さが測定可能な結晶性ポリエステルの結晶ドメインの長軸及び短軸の長さを全数計測する。
ここで、結晶性ポリエステルの結晶ドメインの長軸長さとは、図5(a)に示すように、断面画像の結晶ドメインにおける最長距離(図5(a)に示すaの長さ)であり、短軸長さは結晶長軸の中点位置での最短距離(図5(a)に示すbの長さ)である。
なお、本発明における針状とは、以下の3つの条件を満たす細長く真直度が高い形状を意味する。
条件1:短軸長さが25nm以下である。
条件2:アスペクト比が3以上である。
条件3:結晶の長軸方向両端部における短軸方向の中心点同士を直線で結んだ際、その直線からの結晶輪郭のずれが、結晶短軸長さの100%以内の長さに収まる。
条件3を、図5(b)及び(c)を用いて説明すると以下のとおりである。
結晶50の長軸方向の端部51における短軸方向の中心点53と、端部52における短軸方向の中心点54とを結んだ直線55を中心線とし、幅が短軸長さbの2倍である長方形56の中に結晶の輪郭が全て収まる。
<TEM観察による構造体1、2の被覆率の算出>
本発明に係る構造体1における顔料によるワックスの被覆率は、ルテニウム染色をせずに透過型電子顕微鏡で観察したトナー断面(図1)から求めた。
具体的には、下記の式を用いて算出した。
被覆率(%)=B/A
A:100個のトナー断面におけるワックスの周囲長の合計
B:100個のトナー断面における構造体1の「顔料と接触する部分」のワックスの周囲長の合計(図1において顔料16と重なっている部分のワックス15の周囲長の合計)
また、本発明に係る構造体2における結晶性ポリエステルによるワックスの被覆率は、透過型電子顕微鏡で観察したルテニウム染色をしたトナー断面(図2)から求めた。
具体的には、下記の式を用いて算出した。
被覆率(%)=C/A
A:100個のトナー断面におけるワックスの周囲長の合計
C:100個のトナー断面における構造体2の「結晶性ポリエステルと接触する部分」のワックスの周囲長の合計(図2において結晶性ポリエステル20と重なっている部分のワックス15の周囲長の合計)
以下、本発明を製造例及び実施例によってさらに具体的に説明するが、これらは本発明の技術的範囲をなんら限定するものではない。なお、以下の配合における部数及び%は特に断りが無い場合、すべて質量基準である。
<結晶性ポリエステル樹脂1の製造例>
・1,6-ヘキサンジオール: 34.5部
(0.29モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・ドデカン二酸: 65.5部
(0.28モル;多価カルボン酸総モル数に対して100.0mol%)
・2-エチルヘキサン酸錫(II): 0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に、上記材料を秤量した。
フラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、140℃の温度で撹拌しつつ、3時間反応させた。
次に、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃の状態を維持して、4時間反応させた。
その後、反応槽内の圧力を5kPa以下へ減圧して温度200℃の状態を維持して、3時間反応させることによって、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。
<結晶性ポリエステル樹脂2~5の製造例>
結晶性ポリエステル樹脂1の製造例において、ジオール及びジカルボン酸を表1に記載したものに変更した以外は、結晶性ポリエステル樹脂1の製造例と同様の操作を行い、結晶性ポリエステル樹脂2~5を得た。
Figure 0007175748000004
<シアン顔料1の製造例>
無水フタル酸60部、尿素74部、塩化第一銅10.5部、モリブデン酸アンモニウム0.4部およびトリクロルベンゼン170部を撹拌しつつ、さらにアルキルベンゼンスルホン酸インプロピルアミンを3部投入し、190~200℃に昇温し5時間反応させた。反応終了後、溶剤を減圧除去し、その後カルシウムイオンを含有する水で熱水処理、希酸処理、濾過、水洗、乾燥して青色の粗製銅フタロシアニンを得た。さらに生成物を常法に従って精製し、銅フタロシアニンブルー(シアン顔料1)を得た。このとき得られたシアン顔料1の蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)は、4.2×10-4であった。
<シアン顔料2~5の製造例>
着色剤1の製造例において、カルシウムイオンの含水量を調整し、蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)を表2Aに示すように調整した以外は同様にして顔料を製造し、シアン顔料2~5を得た。
<ワックス分散剤1の製造例>
温度計及び攪拌機の付いたオートクレーブ反応槽中に、キシレン300.0部、ポリプロピレン(融点90℃)10.0部を入れ充分に溶解した。そして、窒素置換後、スチレン68.0部、メタクリル酸5.0部、メタクリル酸シクロヘキシル5.0部、ブチルアクリレート12.0部、及びキシレン250.0部、ジ-t-ブチルパーオキシド 1.0質量部の混合溶液を温度180℃で3時間かけて滴下し重合した。さらにこの温度で30分間保持し、脱溶剤を行い、ワックス分散剤1を得た。得られたワックス分散剤の酸価は25mgKOH/gであった。
<ワックス分散剤2~5の製造例>
ワックス分散剤1の製造例において、メタクリル酸シクロヘキシルを含有させず、メタクリル酸の量を調整し、酸価を表2に示すようにした以外は、ワックス分散剤1の製造例と同様の操作を行い、ワックス分散剤2~5を得た。
<非晶性ポリエステル樹脂の製造例>
<低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L)の製造例>
・ポリオキシプロピレン(2.8)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
:76.6部
(0.17モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸 :17.4部
(0.10モル;多価カルボン酸総モル数に対して72.0mol%)
・アジピン酸 : 6.0部
(0.04モル;多価カルボン酸総モル数に対して28.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒) : 0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。
次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、180℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤) : 0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度180℃の状態を維持して、1時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した反応物の軟化点が90℃に達したことを確認してから温度を下げて反応を止めた(第2反応工程)。このようにして、非晶性ポリエステル樹脂(L)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂(L)は、ピーク分子量(Mp)が5,000、軟化点(Tm)が90℃、ガラス転移温度(Tg)が52℃であった。
<高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H)の製造例>
・ポリオキシエチレン(2.2)-2,2-ビス(4-ヒドロキシフェニル)プロパン
:72.2部
(0.20モル;多価アルコール総モル数に対して100.0mol%)
・テレフタル酸 :13.2部
(0.08モル;多価カルボン酸総モル数に対して48.0mol%)
・アジピン酸 : 8.2部
(0.06モル;多価カルボン酸総モル数に対して34.0mol%)
・チタンテトラブトキシド(エステル化触媒) : 0.5部
冷却管、攪拌機、窒素導入管、及び、熱電対を備えた反応槽に、上記材料を秤量した。
次に反応槽内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた。
さらに、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、1時間維持した後、160℃まで冷却し、大気圧に戻した(第1反応工程)。
・トリメリット酸 : 6.3部
(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して18.0mol%)
・tert-ブチルカテコール(重合禁止剤) : 0.1部
その後、上記材料を加え、反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度160℃の状態を維持して、15時間反応させ、ASTM D36-86に従って測定した反応物の軟化点が140℃に達したことを確認してから温度を下げて反応を止めた(第2反応工程)。このようにして、非晶性ポリエステル樹脂(H)を得た。得られた非晶性ポリエステル樹脂(H)は、ピーク分子量(Mp)が8,700、軟化点(Tm)が142℃、ガラス転移温度(Tg)が57℃であった。
<シアントナー1の製造例>
・低分子量の非晶性ポリエステル樹脂(L) 70.0部
・高分子量の非晶性ポリエステル樹脂(H) 30.0部
・結晶性ポリエステル樹脂1 7.5部
・ワックス分散剤1 8.0部
・シアン顔料1 7.0部
・フィッシャートロプシュワックス
(炭化水素ワックス、最大吸熱ピークのピーク温度90℃) 6.5部
・3,5-ジ-t-ブチルサリチル酸アルミニウム化合物 0.1部
上記材料をヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度140℃に設定した二軸混練機(PCM-30型、(株)池貝製)にて溶融及び混練した。得られた溶融混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T-250、フロイント・ターボ(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF-300(ホソカワミクロン(株)製)を用い、分級を行い、樹脂粒子1を得た。ファカルティF-300の運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
得られた樹脂粒子1を用い、図3に示す熱処理装置によって熱処理を行い、シアントナー粒子1を得た。運転条件は、フィード量を5kg/hr、熱風温度を150℃、熱風流量を6m/min.、冷風温度を-5℃、冷風流量を4m/min.、ブロワー風量を20m/min.、インジェクションエア流量を1m/min.とした。
下記の材料を、ヘンシェルミキサー(FM-75型、日本コークス工業(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min.で混合して、シアントナー1を得た。
・シアントナー粒子1: 100部
・疎水性シリカ(BET:200m/g) 1.0部
・イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m/g) 1.0部
得られたシアントナー1を温度40℃、相対湿度20%の恒温槽に24時間静置した後、構造体2における結晶性ポリエステルによるワックスの被覆率を算出したところ、41%であった。
<シアントナー2~37の製造例>
シアントナー1の製造例において、混練温度、ワックス分散剤の種類と含有量、顔料の種類と含有量、結晶性ポリエステル樹脂の種類を表2の記載となるように変更した以外はシアントナー1の製造例と同様の操作を行い、シアントナー2~37を得た。
<磁性コア粒子1の製造例>
・工程1(秤量及び混合工程):
Fe 62.7部
MnCO 29.5部
Mg(OH) 6.8部
SrCO 1.0部
上記材料を上記組成比となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、直径1/8インチのステンレスビーズを用いた乾式振動ミルで5時間粉砕及び混合した。
・工程2(仮焼成工程):
得られた粉砕物をローラーコンパクターにて、約1mm角のペレットにした。このペレットを目開き3mmの振動篩にて粗粉を除去し、次いで目開き0.5mmの振動篩にて微粉を除去した後、バーナー式焼成炉を用いて、窒素雰囲気下(酸素濃度0.01体積%)で、温度1000℃で4時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。得られた仮焼フェライトの組成は、下記のとおりである。
(MnO)(MgO)(SrO)(Fe
上記式において、a=0.257、b=0.117、c=0.007、d=0.393
・工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.3mm程度に粉砕した後に、直径1/8インチのジルコニアビーズを用いて、仮焼フェライト100部に対し、水を30部加えて、湿式ボールミルで1時間粉砕した。そのスラリーを、直径1/16インチのアルミナビーズを用いた湿式ボールミルで4時間粉砕し、フェライトスラリー(仮焼フェライトの微粉砕品)を得た。
・工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、仮焼フェライト100部に対して、分散剤としてポリカルボン酸アンモニウム1.0部、バインダーとしてポリビニルアルコール2.0部を添加して、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機(株))を用いて、球状粒子に造粒した。得られた粒子を粒度調整した後、ロータリーキルンを用いて、温度650℃で2時間加熱し、分散剤やバインダーの有機成分を除去した。
・工程5(焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%)で、室温から温度1,300℃まで2時間で昇温し、その後、温度1,150℃で4時間焼成した。その後、4時間をかけて、温度60℃まで降温し、窒素雰囲気から大気に戻し、温度40℃以下で取り出した。
・工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、磁力選鉱によって低磁力品をカットし、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、体積分布基準の50%粒径(D50)37.0μmの磁性コア粒子1を得た。
<被覆樹脂1の調製>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量%
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量%
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量%
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量%
メチルエチルケトン 31.3質量%
アゾビスイソブチロニトリル 2.0質量%
上記材料のうち、シクロヘキシルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートモノマー、メチルメタクリレートマクロモノマー、トルエン、及びメチルエチルケトンを、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び攪拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに入れ、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした後、80℃まで加温した。その後、アゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合した。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、減圧乾燥して被覆樹脂1を得た。
得られた30部の被覆樹脂1を、トルエン40部、及びメチルエチルケトン30部に溶解して、重合体溶液1(固形分30質量%)を得た。
<被覆樹脂溶液1の調製>
重合体溶液1(樹脂固形分濃度30%) 33.3質量%
トルエン 66.4質量%
カーボンブラック(Regal330;キャボット社製) 0.3質量%
(一次粒径25nm、窒素吸着比表面積94m/g、DBP吸油量75mL/100g)
上記材料を、直径0.5mmのジルコニアビーズを用いて、ペイントシェーカーで1時間分散を行った。得られた分散液を、5.0μmのメンブランフィルターで濾過を行い、被覆樹脂溶液1を得た。
<磁性キャリア1の製造例>
(樹脂被覆工程):
常温で維持されている真空脱気型ニーダーに被覆樹脂溶液1を、100部の磁性コア粒子1に対して、樹脂成分として2.5部になるように投入した。投入後、回転速度30rpmで15分間撹拌し、溶媒が一定以上(80質量%)揮発した後、減圧混合しながら80℃まで昇温し、2時間かけてトルエンを留去した後に冷却した。
得られた磁性キャリアを、磁力選鉱によって低磁力品を分別し、開口70μmの篩を通した後、風力分級器で分級し、体積分布基準の50%粒径(D50)が38.2μmの磁性キャリア1を得た。
磁性キャリア1に対し、表2に示す各トナーを、トナー濃度が8.0質量%になるように添加し、V型混合機(V-10型:(株)徳寿工作所)を用い0.5s-1、回転時間5minの条件で混合し、二成分系現像剤1~37を得た。
<実施例1~30及び比較例1~7>
得られた二成分系現像剤1~37について、実施例1~30及び比較例1~7として、表2に示す組合せで評価を行った。
Figure 0007175748000005
Figure 0007175748000006
画像形成装置として、キヤノン(株)製デジタル商業印刷用プリンターimageRUNNER ADVANCE C9075 PROの改造機を用いた。そして、各現像器に各二成分系現像剤を入れて、静電潜像担持体又は紙上のトナーの載り量が所望になるように現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧V、及びレーザーパワーを調整し、後述の評価を行った。前記改造機の改造点は、定着温度、及びプロセススピードを自由に設定できるように変更したことである。
以下の評価方法に基づいて評価し、その結果を表3に示す。
<評価1:低温定着性>
紙 :CS-680(68.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)
トナーの載り量 :1.20mg/cm
評価画像 :上記A4用紙の中心に10cmの画像を配置
定着試験環境 :低温低湿環境、温度15℃/相対湿度10%(以下「L/L」)
プロセススピード:450mm/sec
定着温度 :130℃
上記画像形成装置を用い、上記条件で出力した定着画像の低温定着性を評価した。
低温定着性の評価は、下記画像濃度低下率の値を指標とした。
画像濃度低下率は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を用い、先ず、中心部の定着画像の濃度を測定した。次に、定着画像の濃度を測定した部分に対し、4.9kPa(50g/cm)の荷重をかけて、シルボン紙によって定着画像を摺擦(5往復)し、定着画像の濃度を再度測定した。そして、下記式を用いて摺擦前後での定着画像の濃度の低下率(%)を算出した。得られた濃度低下率を下記の評価基準に従って評価した。
濃度低下率(%)=(摺擦前の画像濃度-摺擦後の画像濃度)/摺擦前の画像濃度×100
(評価基準)
A:濃度低下率が 1.0%未満
B:濃度低下率が 1.0%以上、 4.0%未満
C:濃度低下率が 4.0%以上、 7.0%未満
D:濃度低下率が 7.0%以上、10.0%未満
E:濃度低下率が10.0%以上
本発明ではD以上を問題ないレベルと判断した。
<評価2:耐ホットオフセット性>
紙 :CS-680(68.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)
トナーの載り量 :0.08mg/cm
評価画像 :上記A4用紙の中心にYMCKの単色のハーフトーン画像(2cm×2cm)を配置
定着試験環境 :常温低湿環境:温度23℃/相対湿度5%(以下「N/L」)
プロセススピード:321mm/sec
定着温度 :200℃
上記未定着画像を作製した後、耐ホットオフセット性を評価した。手順としては、まず、定着ベルトの中心位置に無地のはがきを10枚通紙した後に、上記未定着画像を通紙した。カブリの値をホットオフセットの評価指標とした。リフレクトメータ((有)東京電色製の「REFLECTOMETER MODEL TC-6DS」)によって画出し前の評価紙の平均反射率Dr(%)と定着試験後の白地部の反射率Ds(%)を測定し、下記式を用いてカブリを算出した。得られたカブリを下記の評価基準に従って評価した。
カブリ(%) = Dr(%)-Ds(%)
(評価基準)
A:0.2%未満
B:0.2%以上、0.5%未満
C:0.5%以上、0.8%未満
D:0.8%以上、1.1%未満
E:1.1%以上
本発明ではD以上を問題ないレベルと判断した。
<評価3:着色力の評価>
紙 :CS-680(68.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)
トナーの載り量 :0.35mg/cm
評価画像 :上記A4用紙の中心にYMCKの単色のFFh画像(2cm×2cm)を配置
定着試験環境 :常温低湿環境:温度23℃/相対湿度50%(以下「N/N」)
プロセススピード:321mm/sec
定着温度 :170℃
上記画像を作製した後、現像バイアスが一定の状態で画像出力を行い、出力画像の画像濃度を調べた。画像濃度は、X-Riteカラー反射濃度計(500シリーズ:X-Rite社製)を使用して測定した。
X-Riteカラー反射濃度計の測定結果から、下記の基準でトナーの着色力を評価した。
(評価基準)
A:1.30以上
B:1.25以上、1.30未満
C:1.20以上、1.25未満
D:1.20未満
本発明ではC以上を問題ないレベルと判断した。
<評価4:定着分離性>
紙 : GFR-070(70.0g/m
(キヤノンマーケティングジャパン(株)より販売)
紙上のトナーの載り量:1.20mg/cm
(現像剤担持体の直流電圧VDC、静電潜像担持体の帯電電圧V、及びレーザーパワーによって調整)
評価画像 :上記A4用紙の長手方向に先端余白3mm空けて29cm×5cmの画像を配置
定着試験環境 :高温高湿環境:温度30℃/相対湿度80%(以下「H/H」)
定着温度 :120℃から170℃まで1℃刻みで通紙
プロセススピード :321mm/sec
上記評価画像を出力し、定着分離性を評価した。各定着温度で定着を行い、定着時に巻き付きが起こるかを目視で観測し、巻き付きが見られない上限の温度を定着分離可能温度とした。定着分離可能温度を下記の評価基準に従って評価した。
(評価基準)
A:定着分離可能温度160℃以上
B:定着分離可能温度150℃以上160℃未満
C:定着分離可能温度140℃以上150℃未満
D:定着分離可能温度140℃未満
本発明ではC以上を問題ないレベルと判断した。

Figure 0007175748000007
以上のように、結晶性ポリエステルを含有するシアントナーにおいて、所定の要件を満たすことによって、低温定着性、耐ホットオフセット性、着色力、及び定着分離性に優れたトナーを得ることができる。
1.原料定量供給手段
2.圧縮気体流量調整手段
3.導入管
4.突起状部材
5.供給管
6.処理室
7.熱風供給手段
8.冷風供給手段
9.規制手段
10.回収手段
11.熱風供給手段出口
12.分配部材
13.旋回部材
14.粉体粒子供給口
15.ワックス
16.顔料
17.非晶性ポリエステル樹脂
18.構造体1
19.構造体2
20.結晶性ポリエステル

Claims (8)

  1. 結着樹脂、着色剤、炭化水素ワックス、ワックス分散剤及び結晶性ポリエステルを含有するシアントナーであって、
    前記ワックス分散剤が炭化水素化合物にスチレンアクリル系樹脂がグラフト重合された重合体であり、
    前記ワックス分散剤の酸価が、10.0mgKOH/g以上、40.0mgKOH/g以下であり、
    前記着色剤が、蛍光X線分析におけるCaの強度とCuの強度との比(Ca/Cu)が、下記式(1)を満たす銅フタロシアニン顔料を含有しており、
    透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察される前記シアントナーの断面において、前記銅フタロシアニン顔料が前記ワックスを被覆した構造体1が存在し、かつ
    前記透過型電子顕微鏡(TEM)によって観察されるルテニウム染色したトナー断面において、針状の前記結晶性ポリエステルが前記ワックスを被覆した構造体2が存在することを特徴とするシアントナー。
    1.5×10-4≦Ca/Cu≦6.0×10-4・・・(1)
  2. 前記構造体1において、前記顔料による前記ワックスの被覆率が30%以上80%以下である請求項1に記載のシアントナー。
  3. 前記構造体1同士の最小距離が20nm以上100nmである請求項1または2に記載のシアントナー。
  4. 前記結晶性ポリエステルによる前記ワックスの被覆率が20%以上70%以下である請求項1~3のいずれか1項に記載のシアントナー。
  5. 前記結晶性ポリエステルの長軸長さが60nm以上250nm以下である請求項1~4のいずれか1項に記載のシアントナー。
  6. 前記顔料の含有量が4.0wt%~10.0wt%である請求項1~5のいずれか1項に記載のシアントナー。
  7. 前記ワックスの含有量が2.0wt%~7.0wt%である請求項1~6のいずれか1項に記載のシアントナー。
  8. 前記スチレンアクリル系樹脂が、シクロアルキルアクリレート由来のユニット、又はシクロアルキルメタクリレート由来のユニットを有している請求項1~7のいずれか1項に記載のシアントナー。

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