以下、本発明を実施するための最良の形態を詳細に説明する。
本発明の主な特徴点は、トナーが結晶性ポリエステル樹脂を含有し、動的粘弾性測定における120℃の貯蔵弾性率(G’)が、1.0×104[Pa]以下であり、動的粘弾性測定において温度160℃以上の温度範囲にtanδ(損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)=損失正接(tanδ))の極大値を持ち、温度120℃から160℃の範囲にtanδが極小値を持ち、その極小値が1.1以上であることである。
従来よりもより低温で定着するために、本発明においては結晶性ポリエステル樹脂をトナーに添加している。結晶性ポリエステル樹脂は、融点付近で一気に溶融する特性を有し、結晶性ポリエステルをトナー中に添加することで、定着時に融点付近の温度に到達すると結着樹脂を一気に可塑化させ、トナーを低粘度化することができると考えられる。その結果、従来より低温での定着が可能になっている。本発明では、結晶性ポリエステル樹脂を添加し、動的粘弾性測定における120℃の貯蔵弾性率(G’)が1.0×104のとき、従来より低温での定着が可能にとなる。本発明では、動的粘弾性測定における120℃の貯蔵弾性率(G’)が、1.0×104[Pa]以下のとき、従来より低い温度で定着が可能となり、光沢度の高い画像を安定して得ることができる。しかし、粘弾性測定における120℃の貯蔵弾性率(G’)が1.0×104[Pa]を超えると、溶融時の粘度が不足し、メディアへの付着が不十分となり、コールドオフセットが起こることがある。また、画像が折曲げられた際には、折曲げ部で部分的な剥離が起こり、紙の地合が現れる等の画像不良がでることがある。
一方、本発明において、損失正接(tanδ)=損失弾性率(G”)/貯蔵弾性率(G’)で表わされる損失正接の極大値が160℃を超える温度領域に出現するとき、ホットオフセットが良化する。損失正接の極大値が出現するということは、本発明のトナーにおいて、160℃を超える温度領域に、何らかの高粘度成分が存在することを示唆している。本発明のトナーにおいて、本発明のトナーを構成する高分子成分の絡み合いのようなことが起こり、あたかも高粘度の成分が存在するかのように挙動していると推察している。160℃を超える温度領域で、あたかも高粘度の成分が存在するかのように挙動させることで、トナーの貯蔵弾性率を定着開始以降の温度領域でもある程度粘度を維持させ、さらに損失弾性率を貯蔵弾性率のように急激に低下させず、損失正接の極大値を出現させている。貯蔵弾性率の急激な低下が起こると、損失正接tanδの極大値は出現せず、耐ホットオフセット性が不足する。本発明において、160℃を超える温度範囲に損失正接の極大値をもつことが重要であり、165℃以上に極大値があることが耐ホットオフセット性を向上するためにより好ましい。結晶性ポリエステル樹脂を含有する損失正接の極大値をもたないトナーや、160以下の範囲に極大値をもつだけでは、従来技術のトナーと同等のホットオフセットレベルにとどまる結果となる。結晶性ポリエステル樹脂を添加しつつ、高温オフセットを従来トナーからさらに伸ばすためには、160℃以上の範囲に極大値を出現させることが重要でありまた、極大値としてピークとなるためには、それよりも低い温度範囲で極小値を経ることが条件となる。本発明では、120℃から160℃の範囲に極小値を持ち、tanδが1.1を下回らないことが重要である。。1.1を下回ると、160℃以上の高温域に到達する前に弾性が失われ、ホットオフセットが悪化する。
また、本発明のトナーは、前記トナーの動的粘弾性測定における160℃を超える温度領域に存在する損失正接の前記極大値と120℃以上160℃以下の温度領域に存在する損失正接の前記極小値との差(Δtanδ)が、0.15以上0.35以下であることが、凹凸の大きいメディアを用いた際にも、高温で高光沢度の高い画像を得るために好ましい。損失正接の前記極小値との差(Δtanδ)は、0.20以上0.35以下であることがより好ましい。
また、本発明のトナーは、前記トナーの動的粘弾性測定における160℃における貯蔵弾性率(G’)が、5.0×102[Pa]以上1.1×103[Pa]以下であることが、高温時の混色性が向上し、色域の広い画像を得ることができるようになる。
本発明のトナーの動的粘弾性特性は、結晶性ポリエステル樹脂の軟化点や配合量、非晶質ポリエステル樹脂の組成、特に非晶質ポリエステル樹脂の架橋構造や樹脂の組合せが重要である。また、トナー製造工程、特に混練時のフィード量や混練温度、混練軸回転速度などによって樹脂の負荷を変えることでも、上記の粘弾性挙動を制御することができ、幅広い定着可能温度範囲を実現し、光沢度の高い画像と、発色のよい画像を得ることができる。
<結晶性ポリエステル樹脂>
本発明のトナーは、結晶性ポリエステル樹脂を含有するが、結晶性ポリエステル樹脂は、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールと、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸とを主成分として含む単量体組成物を重縮合反応させることにより得ることができる。
炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数2以上12以下)の脂肪族ジオールとしては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジオールであることが好ましく、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,4−ブタジエングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコールが挙げられる。これらの中でも、特にエチレングリコール、ジエチレングリコール、1,4−ブタンジオール、及び1,6−ヘキサンジオールの如き直鎖脂肪族、α,ω−ジオールが好ましく例示される。
特に、本発明のトナーにおいて、前記結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールから選ばれるアルコール成分を主成分として含む単量体と、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸化合物から選ばれるカルボン酸成分を主成分として含む単量体とを縮重合して得られた結晶性ポリエステル樹脂であることが低温定着と保存性を両立する上で好ましい。結晶性ポリエステル樹脂による可塑効果を引き出すためには、非晶質ポリエステル樹脂との相溶性を高めることが重要である。そのため、結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーの脂肪族ジオール及び/または脂肪族ジカルボン酸の炭素数を短くし、エステル基濃度を高め、極性を高めていくことが相溶性を上げる方法となる。一方で、相溶性を上げTgを低下させたトナーも、高温高湿環境下での使用や輸送などにおける保存性を確保する必要がある。そのような環境下にトナーがさらされた場合に、相溶していたトナー中の結晶性ポリエステル樹脂が速やかに再結晶化し、トナーのTgを結着樹脂のTgまで戻すことができれば、保存性を確保することができる。しかし、結晶性ポリエステルのエステル基濃度が高く、結着樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の相溶性があまりにも高いと、結晶性ポリエステル樹脂の再結晶化速度が遅くなったり、再結晶化させること自体が難しくなり、トナーの保存性が悪化することになる。本発明において、低温定着性と保存性を両立できる結晶性ポリエステルのモノマー構成として、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールと、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸を用いることが好ましいことを見出した。
上記アルコール成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2以上22以下の脂肪族ジオールから選ばれるアルコールである。
本発明において、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール単量体を用いることもできる。該多価アルコール単量体のうち2価アルコール単量体としては、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA等の芳香族アルコール;1,4−シクロヘキサンジメタノール等が挙げられる。また、該多価アルコール単量体のうち3価以上の多価アルコール単量体としては、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン等の芳香族アルコール;ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン等の脂肪族アルコール等が挙げられる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のアルコ−ルを用いてもよい。該1価のアルコールとしては、例えばn−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコール等の1官能性アルコールなどが挙げられる。
一方、炭素数2以上22以下(より好ましくは炭素数4以上14以下)の脂肪族ジカルボン酸としては、特に限定されないが、鎖状(より好ましくは直鎖状)の脂肪族ジカルボン酸であることが好ましい。具体例としてはシュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルを加水分解したものなども含まれる。
本発明において、上記カルボン酸成分のうち、好ましくは50質量%以上、より好ましくは70質量%以上が、炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸から選ばれるカルボン酸である。
本発明において、上記炭素数2以上22以下の脂肪族ジカルボン酸以外の多価カルボン酸を用いることもできる。その他の多価カルボン酸単量体のうち、2価のカルボン酸としては、イソフタル酸、テレフタル酸等の芳香族カルボン酸;n−ドデシルコハク酸、n−ドデセニルコハク酸の脂肪族カルボン酸;シクロヘキサンジカルボン酸などの脂環式カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステルなども含まれる。また、その他のカルボン酸単量体のうち、3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸等の芳香族カルボン酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン等の脂肪族カルボン酸が挙げられ、これらの酸無水物または低級アルキルエステル等の誘導体等も含まれる。
さらに、本発明において、結晶性ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に1価のカルボン酸を含有していてもよい。1価のカルボン酸としては、例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。
本発明における結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法に従って製造することができる。例えば、前記したカルボン酸単量体とアルコ−ル単量体とをエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法に従って重縮合反応させることで所望の結晶性ポリエステル樹脂を得ることができる。
上記エステル化またはエステル交換反応は、必要に応じて硫酸、チタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いて行うことができる。
また、上記重縮合反応は、通常の重合触媒、例えばチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなど公知の触媒を使用して行うことができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、適宜に決めればよい。
エステル化もしくはエステル交換反応または重縮合反応において、得られる結晶性ポリエステル樹脂の強度を上げるために全単量体を一括仕込みしたり、低分子量成分を少なくするために2価の単量体を先ず反応させた後、3価以上の単量体を添加して反応させたりする等の方法を用いてもよい。
前記結晶性ポリエステル樹脂の含有量は、非晶質ポリエステル100質量部に対し、1質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
<非晶質ポリエステル樹脂>
本発明において、前記非晶質ポリエステルは、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有している。本発明において多価アルコールユニットというのは、ポリエステルの縮重合の際に使用した多価アルコール成分に由来する構成要素である。また、本発明において多価カルボン酸ユニットというのは、ポリエステルの縮重合の際に使用した多価カルボン酸またはその無水物、低級アルキルエステルに由来する構成要素のことである。
本発明において、前記非晶質ポリエステルの多価カルボン酸ユニットが、炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸に由来する多価カルボン酸ユニットを含有することが好ましい。
前記非晶質ポリエステルの多価カルボン酸ユニットの総モル数に対して、前記カルボン酸ユニットを5.0mol%以上15.0mol%以下含有することが好ましい。
炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸が多価カルボン酸ユニット中に含まれることで、ポリエステル樹脂の主鎖は部分的に柔軟な構造となる。その結果、定着後のトナー一粒あたりの溶融ひろがり面積が大きくなることで、印刷メディア上のトナー粒子の被覆面積が増すことで、メディアとの付着面積がひろがることで低温定着された状態でも、トナーがメディアから剥離しにくくなる。また、前記直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸が多価カルボン酸ユニット中に含まれることで、高湿高温環境下に放置した際の帯電量の低下率が小さくなった。前述の炭化水素主鎖の構造と、結晶性ポリエステル樹脂を構成するモノマーの構造とが、構造的にも極性的にも近い。そのため、結晶性樹脂は炭化水素主鎖の近傍に存在する可能性が高い。非晶質ポリエステル樹脂中の炭化水素主鎖はトナー中に均一に存在しており、結晶性ポリエステルもトナー中に均一に分散していると考えられる。また、前述の炭化水素主鎖が結晶核のように振る舞い、結晶性ポリエステル樹脂の結晶がトナー中に微分散させることができる。結晶性ポリエステル樹脂がトナー中に微小な結晶として微分散され、トナー表面には大きな塊状の結晶性ポリエステル樹脂部分が露出することがなく、結晶性ポリエステル樹脂を介した帯電低下が抑制されたと考えら得る。
炭素数4以上16以下の直鎖状炭化水素を主鎖として両末端にカルボキシル基を有する脂肪族ジカルボン酸は、例えば、アジピン酸、アゼライン酸、セバシン酸、テトラデカン二酸やオクタデカン二酸などのアルキルジカルボン酸やその無水物、低級アルキルエステルなどが挙げられる。また、それらの主鎖の一部がメチル基やエチル基、オクチル基などのアルキル基、またはアルキレン基で分岐した構造を持つ化合物が挙げられる。該直鎖状炭化水素の炭素数は好ましくは4以上12以下である。
前記非晶質ポリエステル樹脂に含有されるその他の多価カルボン酸ユニットとしては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。これらの中でも、テレフタル酸、イソフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やそれらの無水物のような、芳香環をもつカルボン酸またはその誘導体が、耐ホットオフセット性の観点で好ましく用いられる。
本発明の前記非晶質ポリエステル樹脂は、多価アルコールユニットの総モル数に対し、多価アルコールユニットの総モル数に対し、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルに由来する多価アルコールユニットを0.1mol%以上3.0mol%以下含有することが好ましい。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルは、3価以上のアルコール性水酸基価を有し、酸成分と反応して網目の広い柔軟な架橋構造をとる。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルは、ノボラック型フェノール樹脂と分子中1個のエポキシ環を有する化合物との反応物である。
本発明において、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル由来のアルコールユニット持たせた樹脂を用いることで、160℃を超える温度領域に、確実にtanδの極大値を発現させることができる。その結果、高温までオフセットが発生せず、定着可能温度幅の広いトナーとすることができている。tanδの極大値が出現するということは、極大値が出現する温度領域に、あたかも高分子成分が存在するかのようにトナーが挙動することを示している。つまり、ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル由来のアルコールユニット持たせた樹脂を用いることで、トナー内部に柔軟な網目構造が構築され、結晶性ポリエステル樹脂などの材料が網目構造に取り込まれていると考えられる。網目構造に取り込まれた結晶性ポリエステル樹脂をはじめとするトナーの構成材料と、非晶質ポリエステル樹脂とが複合化し、あたかも高粘度の高分子材料として振舞ったことでtanδの極大値が高温領域に出現し、ホットオフセットが良化したと推察している。
ノボラック型フェノール樹脂としては、例えばエンサイクロベディア・オブ・ポリマーサイエンス・アンド・テクノロジー(インターサイエンス・パブリッシャーズ)第10巻1頁のフエノリツク・レジンズの項に記載されるように、塩酸、リン酸、硫酸などの無機酸又はパラトルエンスルホン酸、シュウ酸などの有機酸又は酢酸亜鉛などの金属塩を触媒としてフェノール類とアルデヒド類からの重縮合により製造されるものが挙げられる。フェノール類としては、フェノールや炭素数1乃至35の炭化水素基及び/又はハロゲン基を1個以上置換基として有する置換フェノールが挙げられる。置換フェノールの具体例としては、クレゾール(オルソ体、メタ体もしくはパラ体)、エチルフェノール、ノニルフェノール、オクチルフェノール、フェニルフェノール、スチレン化フェノール、イソプロペニルフェノール、3−クロルフェノール、3−ブロムフェノール、3,5−キシレノール、2,4−キシレノール、2,6−キシレノール、3,5−ジクロルフェノール、2,4−ジクロルフェノール、3−クロル−5−メチルフェノ−ル、ジクロルキシレノール、ジブロムキシレノール、2,4,5−トリクロルフェノール、6−フェニル−2−クロルフェノール等が挙げられる。フェノール類は2種以上併用してよい。これらの中ではフェノール及び炭化水素基で置換された置換フェノールが好ましく、その中でも特にフェノール、クレゾール、t−ブチルフェノールおよびノニルフェノールが好ましい。フェノールとクレゾールは価格及びトナーの耐オフセット性を付与する点で好ましく、t−ブチルフェノール及びノニルフェノールに代表される炭化水素基で置換された置換フェノールはトナーの帯電量の温度依存性を小さくする点で好ましい。アルデヒド類としては、ホルマリン(各種濃度のホルムアルデヒド溶液)、パラホルムアルデヒド、トリオキサン、ヘキサメチレンテトラミン等が挙げられる。ノボラック型フェノール樹脂の数平均分子量は通常300乃至8000、好ましくは450乃至3000、更に好ましくは400乃至2000である。
ノボラック型フェノール樹脂中の数平均のフェノール類の核体数は通常3乃至60、好ましくは3乃至20、更に好ましくは4乃至15である。また軟化点(JIS K2531;環球法)は、通常40乃至180℃、好ましくは40乃至150℃、更に好ましくは50乃至130℃である。
分子中1個のエポキシ環を有する化合物の具体例としては、エチレンオキサイド(EO)、1,2−プロピレンオキサイド(PO)、1,2−ブチレンオキサイド、2,3−ブチレンオキサイド、スチレンオキサイド、エピクロルヒドリン等を挙げることができる。また炭素数1乃至20の脂肪族1価アルコールもしくは1価フェノールのグリシジルエーテルも使用できる。これらの中ではEOおよび/またはPOが好ましい。ノボラック型フェノール樹脂1モルに対する、分子中1個のエポキシ環を有する化合物の付加モル数は通常1乃至30モル、好ましくは2乃至15モル、更に好ましくは2.5乃至10モルである。また、ノボラック型フェノール樹脂中のフェノール性水酸基1個に対する分子中1個のエポキシ環を有する化合物の平均付加モル数は通常0.1乃至10モル、好ましくは0.1乃至4モル、更に好ましくは0.2乃至2モルである。
本発明で特に好ましく用いられるノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの構造を例示する。
(式中Rはエチレンまたはプロピレン基であり、xは0以上の数で、y1乃至y3は0以上の同一又は異なった数である。)
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの数平均分子量は通常300乃至10000、好ましくは350乃至5000、更に好ましくは450乃至3000である。数平均分子量が300未満ではトナーの耐ホットオフセット性が充分確保できず、10000を超えるとポリエステル樹脂Aの製造過程でゲル化を引き起こして好ましくない。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの水酸基価(アルコール性及びフェノール性水酸基の合計)は通常10乃至550、好ましくは50乃至500、更に好ましくは100乃至450mgKOH/gである。また、水酸基価のうち、フェノール性水酸基価は通常0乃至500mgKOH/g、好ましくは0乃至350mgKOH/g、更に好ましくは5乃至250mgKOH/gである。
ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテルの製法を例示すると、必要により触媒(塩基性触媒又は酸性触媒)の存在下、ノボラック型フェノール樹脂に分子中1個のエポキシ環を有する化合物を付加反応させることにより得られる。反応温度は通常20乃至250℃、好ましくは70乃至200℃であり、常圧下、又は加圧下、更には減圧下においても行うことができる。また反応は溶媒(例えばキシレン、ジメチルホルムアミドなど)あるいは他の2価アルコール類及び/又は他の3価以上のアルコール類の存在下で行うこともできる。
非晶質ポリエステル樹脂の多価アルコールユニットを構成する成分としては、前記芳香族ジオールや、前記ノボラック型フェノール樹脂のオキシアルキレンエーテル以外に、必要に応じて、以下の多価アルコール成分を使用することができる。エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブテンジオール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジメタノール、ジプロピレングリコール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ソルビット、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼン。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂は、多価アルコールユニットと多価カルボン酸ユニットを有し、多価アルコールユニットの総モル数に対し、芳香族ジオールに由来する多価アルコールユニットを90mol%以上含有することが好ましい。
芳香族ジオールに由来する成分としては、例えば式(1)で表されるビスフェノール及びその誘導体が挙げられる。
(式中、Rはエチレンまたはプロピレン基であり、x、yはそれぞれ0以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は0乃至10である。)
中でも、式(1)中のRがRがプロピレン基であり、x+yの平均値が2乃至4であるようなビスフェノールAのプロピレンオキシド付加物であることが、結晶性ポリエステル樹脂の相溶性を上げ低温定着性向上の点で好ましい。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂のピーク分子量は10000以上20000以下であることを特徴とする。ピーク分子量がこの範囲であると高グロスでグロスむらが良好である。好ましくは12000以上18000以下である。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることを特徴とする。酸価がこの範囲であると高グロスかつグロスむらが良好となる。好ましくは17mgKOH/g以上25mgKOH/g以下である。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂の水酸基価は0mgKOH/g以上10mgKOH/g以下であることが帯電性の観点から好ましい。
本発明の非晶質ポリエステル樹脂は、多価カルボン酸ユニットの総モル数に対し、芳香族ジカルボン酸またはその誘導体に由来する多価カルボン酸ユニットを90mol%以上含有することが好ましい。
芳香族ジカルボン酸またはその誘導体としては、フタル酸、イソフタル酸及びテレフタル酸の如き芳香族ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。
脂肪族ジカルボン酸またはその誘導体としては、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸及びアゼライン酸の如きアルキルジカルボン酸類又はその無水物;炭素数6乃至18のアルキル基又はアルケニル基で置換されたコハク酸もしくはその無水物;フマル酸、マレイン酸及びシトラコン酸の如き不飽和ジカルボン酸類又はその無水物が挙げられる。中でも、コハク酸、アジピン酸、フマル酸やその酸無水物、低級アルキルエステルが好ましく用いられる。
これら以外の多価カルボン酸ユニットとしては、トリメリット酸、ピロメリット酸、ベンゾフェノンテトラカルボン酸やその無水物等の3価または4価のカルボン酸等が挙げられる。
また、本発明のトナーの非晶質ポリエステル樹脂は、低分子量の非晶質ポリエステル樹脂と高分子量の非晶質ポリエステル樹脂を含有することが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
高分子量の非晶質ポリエステル樹脂と低分子量の非晶質ポリエステル樹脂の含有比率は質量基準で10/90以上60/40以下であることが、低温定着性と耐ホットオフセット性の観点から好ましい。
高分子量の非晶質ポリエステル樹脂のピーク分子量は10000以上20000以下であることが、耐ホットオフセット性の観点から好ましい。また、高分子量の非晶質ポリエステル樹脂の酸価は15mgKOH/g以上30mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
低分子量の非晶質ポリエステル樹脂の数平均分子量は1500以上3500以下であることが、低温定着性の観点から好ましい。また、低分子量の非晶質ポリエステル樹脂の酸価は10mgKOH/g以下であることが、高温高湿環境下における帯電安定性の観点から好ましい。
<離型剤(ワックス)>
本発明のトナーに用いられるワックスとしては、例えば以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、アルキレン共重合体、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスの如き炭化水素系ワックスの酸化物又はそれらのブロック共重合物;カルナバワックスの如き脂肪酸エステルを主成分とするワックス類;脱酸カルナバワックスの如き脂肪酸エステル類を一部又は全部を脱酸化したもの。さらに、以下のものが挙げられる。パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸の如き飽和直鎖脂肪酸類;ブラシジン酸、エレオステアリン酸、バリナリン酸の如き不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如き飽和アルコール類;ソルビトールの如き多価アルコール類;パルミチン酸、ステアリン酸、ベヘン酸、モンタン酸の如き脂肪酸類と、ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールの如きアルコール類とのエステル類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドの如き脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドの如き飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドの如き不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドの如き芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムの如き脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸の如きビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドの如き脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加によって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物。
これらのワックスの中でも、低温定着性、耐ホットオフセット性を向上させるという観点で、パラフィンワックス、フィッシャートロプシュワックスの如き炭化水素系ワックス、もしくはカルナバワックスの如き脂肪酸エステル系ワックスが好ましい。本発明においては、耐ホットオフセット性がより向上する点で、炭化水素系ワックスがより好ましい。
本発明では、離型剤は、結着樹脂100質量部あたり1質量部以上20質量部以下で使用されることが好ましい。
また、示差走査熱量測定(DSC)装置で測定される昇温時の吸熱曲線において、離型剤の最大吸熱ピークのピーク温度としては45℃以上140℃以下であることが好ましい。離型剤の最大吸熱ピークのピーク温度が上記範囲内であるとトナーの保存性と耐ホットオフセット性を両立できるため好ましい。
<着色剤>
トナーに含有できる着色剤としては、以下のものが挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック;イエロー着色剤とマゼンタ着色剤及びシアン着色剤とを用いて黒色に調色したものが挙げられる。着色剤には、顔料を単独で使用してもかまわないが、染料と顔料とを併用してその鮮明度を向上させた方がフルカラー画像の画質の点からより好ましい。
マゼンタトナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントレッド1、2、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14、15、16、17、18、19、21、22、23、30、31、32、37、38、39、40、41、48:2、48:3,48:4、49、50、51、52、53、54、55、57:1、58、60、63、64、68、81:1、83、87、88、89、90、112、114、122、123、146、147、150、163、184、202、206、207、209、238、269、282;C.I.ピグメントバイオレット19;C.I.バットレッド1、2、10、13、15、23、29、35。
マゼンタトナー用染料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ソルベントレッド1、3、8、23、24、25、27、30、49、81、82、83、84、100、109、121;C.I.ディスパースレッド9;C.I.ソルベントバイオレット8、13、14、21、27;C.I.ディスパーバイオレット1の如き油溶染料、C.I.ベーシックレッド1、2、9、12、13、14、15、17、18、22、23、24、27、29、32、34、35、36、37、38、39、40;C.I.ベーシックバイオレット1、3、7、10、14、15、21、25、26、27、28の如き塩基性染料。
シアントナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントブルー2、3、15:2、15:3、15:4、16、17;C.I.バットブルー6;C.I.アシッドブルー45、フタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1個乃至5個置換した銅フタロシアニン顔料。
シアントナー用染料としては、C.I.ソルベントブルー70がある。
イエロートナー用顔料としては、以下のものが挙げられる。C.I.ピグメントイエロー1、2、3、4、5、6、7、10、11、12、13、14、15、16、17、23、62、65、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、127、128、129、147、151、154、155、168、174、175、176、180、181、185;C.I.バットイエロー1、3、20。
イエロートナー用染料としては、C.I.ソルベントイエロー162がある。
着色剤の使用量は、結着樹脂100質量部に対して0.1質量部以上30質量部以下で使用されることが好ましい。
<荷電制御剤>
トナーには、必要に応じて荷電制御剤を含有させることもできる。トナーに含有される荷電制御剤としては、公知のものが利用できるが、特に、無色でトナーの帯電スピードが速く且つ一定の帯電量を安定して保持できる芳香族カルボン酸の金属化合物が好ましい。
ネガ系荷電制御剤としては、サリチル酸金属化合物、ナフトエ酸金属化合物、ジカルボン酸金属化合物、スルホン酸又はカルボン酸を側鎖に持つ高分子型化合物、スルホン酸塩或いはスルホン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、カルボン酸塩或いはカルボン酸エステル化物を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンが挙げられる。ポジ系荷電制御剤としては、四級アンモニウム塩、前記四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。荷電制御剤はトナー粒子に対して内添しても良いし外添しても良い。荷電制御剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し0.2質量部以上10質量部以下が好ましい。
<無機粒子(主に外添剤)>
本発明のトナーには、必要に応じて無機微粒子を含有させることもできる。無機微粒子は、トナー粒子に内添しても良いし外添剤としてトナー粒子と混合してもよい。外添剤としては、シリカ、酸化チタン、酸化アルミニウムの如き無機微粉体が好ましい。無機微粉体は、シラン化合物、シリコーンオイル又はそれらの混合物の如き疎水化剤で疎水化されていることが好ましい。
流動性向上のための外添剤としては、比表面積が50m2/g以上400m2/g以下の無機微粉体が好ましく、耐久性安定化のためには、比表面積が10m2/g以上50m2/g以下の無機微粉体であることが好ましい。流動性向上や耐久性安定化を両立させるためには、比表面積が上記範囲の無機微粉体を併用してもよい。
外添剤は、トナー粒子100質量部に対して0.1質量部以上10.0質量部以下使用されることが好ましい。トナー粒子と外添剤との混合は、ヘンシェルミキサーの如き公知の混合機を用いることができる。
<現像剤>
本発明のトナーは、一成分系現像剤としても使用できるが、ドット再現性をより向上させるために、磁性キャリアと混合して、二成分系現像剤として用いることが、また長期にわたり安定した画像が得られるという点で好ましい。
磁性キャリアとしては、例えば、表面を酸化した鉄粉、或いは、未酸化の鉄粉や、鉄、リチウム、カルシウム、マグネシウム、ニッケル、銅、亜鉛、コバルト、マンガン、クロム、希土類の如き金属粒子、それらの合金粒子、酸化物粒子、フェライト等の磁性体や、磁性体と、この磁性体を分散した状態で保持するバインダー樹脂とを含有する磁性体分散樹脂キャリア(いわゆる樹脂キャリア)等、一般に公知のものを使用できる。
本発明のトナーを磁性キャリアと混合して二成分系現像剤として使用する場合、その際のキャリア混合比率は、二成分系現像剤中のトナー濃度として、2質量%以上15質量%以下、好ましくは4質量%以上13質量%以下にすると通常良好な結果が得られる。
<製造方法>
トナー粒子を製造する方法としては、結着樹脂と、着色剤と、離型剤を溶融混練する必要があることから、結着樹脂と、着色剤と、離型剤を溶融混練し、混練物を冷却後、粉砕及び分級する粉砕法が好ましい。
以下、粉砕法でのトナー製造手順について説明する。
原料混合工程では、トナー粒子を構成する材料として、例えば、結着樹脂及び離型剤、着色剤、必要に応じて荷電制御剤等の他の成分を所定量秤量して配合し、混合する。混合装置の一例としては、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。
次に、混合した材料を溶融混練して、結着樹脂中に離型剤等を分散させる。その溶融混練工程では、加圧ニーダー、バンバリィミキサーの如きバッチ式練り機や、連続式の練り機を用いることができ、連続生産できる優位性から、1軸又は2軸押出機が主流となっている。例えば、KTK型2軸押出機(神戸製鋼所社製)、TEM型2軸押出機(東芝機械社製)、PCM混練機(池貝鉄工製)、2軸押出機(ケイ・シー・ケイ社製)、コ・ニーダー(ブス社製)、ニーデックス(日本コークス工業株式会社製)などが挙げられる。更に、溶融混練することによって得られる樹脂組成物は、2本ロール等で圧延され、冷却工程で水などによって冷却してもよい。
ついで、樹脂組成物の冷却物は、粉砕工程で所望の粒径にまで粉砕される。粉砕工程では、例えば、クラッシャー、ハンマーミル、フェザーミルの如き粉砕機で粗粉砕した後、更に、例えば、クリプトロンシステム(川崎重工業社製)、スーパーローター(日清エンジニアリング社製)、ターボ・ミル(ターボ工業製)やエアージェット方式による微粉砕機で微粉砕する。
その後、必要に応じて慣性分級方式のエルボージェット(日鉄鉱業社製)、遠心力分級方式のターボプレックス(ホソカワミクロン社製)、TSPセパレータ(ホソカワミクロン社製)、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)の如き分級機や篩分機を用いて分級し、分級品(トナー粒子)を得る。中でも、ファカルティ(ホソカワミクロン社製)は、分級と同時にトナー粒子の球形化処理を行うことができ、転写効率の向上という点で好ましい。
更に必要に応じて、トナー粒子の表面に外添剤が外添処理される。外添剤を外添処理する方法としては、分級されたトナーと公知の各種外添剤を所定量配合し、ダブルコン・ミキサー、V型ミキサー、ドラム型ミキサー、スーパーミキサー、ヘンシェルミキサー、ナウタミキサ、メカノハイブリッド(日本コークス工業株式会社製)、ノビルタ(ホソカワミクロン株式会社製)等の混合装置を外添機として用いて、撹拌・混合する方法が挙げられる。
トナー及び原材料の各種物性の測定法について以下に説明する。
(樹脂の酸価測定)
ポリエステル樹脂の酸価は以下の方法により測定した。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定した。具体的には、以下の手順に従って測定した。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得た。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとした。炭酸ガス等に触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得た。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管した。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求めた。前記0.1モル/l塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作成されたものを用いた。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン:エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解した。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定した。尚、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとした。 (B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン:エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行った。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出した。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<GPCによる樹脂の分子量測定>
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてTHFを毎分1mlの流速で流し、THF試料溶液を約100μl注入して測定する。試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出した。検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては例えば、東ソー社製あるいは昭和電工社製の分子量が102乃至107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。尚、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、例えば昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せや、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKguard columnの組み合せを挙げることができる。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうしTHFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、更に12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター(ポアサイズ0.2乃至0.5μm、例えばマイショリディスクH−25−2(東ソー社製)など使用できる。)を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5mg/ml以上5mg/ml以下となるように調整する。
<樹脂の重量平均分子量の測定方法>
樹脂のTHF可溶分の分子量分布は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により、以下のようにして測定する。
まず、室温で24時間かけて、トナーをテトラヒドロフラン(THF)に溶解する。そして、得られた溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブランフィルター「マエショリディスク」(東ソー社製)で濾過してサンプル溶液を得る。尚、サンプル溶液は、THFに可溶な成分の濃度が約0.8質量%となるように調整する。このサンプル溶液を用いて、以下の条件で測定する。
装置:HLC8120 GPC(検出器:RI)(東ソー社製)
カラム:Shodex KF−801、802、803、804、805、806、807の7連(昭和電工社製)
溶離液:テトラヒドロフラン(THF)
流速:1.0ml/min
オーブン温度:40.0℃
試料注入量:0.10ml
試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(例えば、商品名「TSKスタンダード ポリスチレン F−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500」、東ソ−社製)を用いて作成した分子量校正曲線を使用する。
<樹脂のガラス転移温度(TG)の測定>
樹脂のガラス転移温度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、樹脂約5mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30乃至200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。一度180℃まで昇温させ10分間保持し、続いて30℃まで降温し、その後に再度昇温を行う。この2度目の昇温過程で、温度30乃至100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、樹脂のガラス転移温度(Tg)とする。
<離型剤および結晶性ポリエステル樹脂のDSC吸熱量(ΔH)の測定>
本発明におけるトナー等(トナー、結晶性ポリエステル樹脂)の最大吸熱ピークのピーク温度(Tp)は、DSC Q1000(TA Instruments社製)を使用して以下の条件にて測定を行う。
昇温速度:10℃/min
測定開始温度:20℃
測定終了温度:180℃
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約5mgを精秤し、銀製のパンの中に入れ、一回測定を行う。リファレンスとしては銀製の空パンを用いる。
トナーを試料とする場合において、最大吸熱ピーク(結着樹脂由来の最大吸熱ピーク)が離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂以外の樹脂の吸熱ピークと重なっていない場合には、得られた最大吸熱ピークの吸熱量をそのまま離型剤及び結晶性ポリエステル樹脂に由来する最大吸熱ピークの吸熱量として扱う。一方、トナーを試料とする場合において、離型剤及び結着樹脂以外の樹脂の吸熱ピークが結着樹脂の最大吸熱ピークと重なっている場合は、離型剤及び結着樹脂以外の樹脂に由来する吸熱量を、得られた最大吸熱ピークの吸熱量から差し引く必要がある。
なお、最大吸熱ピークとは、ピークが複数あった場合に、吸熱量が最大となるピークのことを意味する。また、最大吸熱ピークの吸熱量(ΔH)はピークの面積から装置付属の解析ソフトを用いて計算により求める。
<無機微粒子のBET比表面積の測定>
無機微粒子のBET比表面積の測定は、JIS Z8830(2001年)に準じて行なう。具体的な測定方法は、以下の通りである。
測定装置としては、定容法によるガス吸着法を測定方式として採用している「自動比表面積・細孔分布測定装置 TriStar3000(島津製作所社製)」を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、本装置に付属の専用ソフト「TriStar3000 Version4.00」を用いて行い、また装置には真空ポンプ、窒素ガス配管、ヘリウムガス配管が接続される。窒素ガスを吸着ガスとして用い、BET多点法により算出した値を本発明における無機微粒子のBET比表面積とする。
尚、BET比表面積は以下のようにして算出する。
まず、無機微粒子に窒素ガスを吸着させ、その時の試料セル内の平衡圧力P(Pa)と外添剤の窒素吸着量Va(モル・g-1)を測定する。そして、試料セル内の平衡圧力P(Pa)を窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)で除した値である相対圧Prを横軸とし、窒素吸着量Va(モル・g-1)を縦軸とした吸着等温線を得る。次いで、外添剤の表面に単分子層を形成するのに必要な吸着量である単分子層吸着量Vm(モル・g-1)を、下記のBET式を適用して求める。
Pr/Va(1−Pr)=1/(Vm×C)+(C−1)×Pr/(Vm×C)
(ここで、CはBETパラメーターであり、測定サンプル種、吸着ガス種、吸着温度により変動する変数である。)
BET式は、X軸をPr、Y軸をPr/Va(1−Pr)とすると、傾きが(C−1)/(Vm×C)、切片が1/(Vm×C)の直線と解釈できる(この直線をBETプロットという)。
直線の傾き=(C−1)/(Vm×C)
直線の切片=1/(Vm×C)
Prの実測値とPr/Va(1−Pr)の実測値をグラフ上にプロットして最小二乗法により直線を引くと、その直線の傾きと切片の値が算出できる。これらの値を用いて該の傾きと切片の連立方程式を解くと、VmとCが算出できる。
さらに、該で算出したVmと窒素分子の分子占有断面積(0.162nm2)から、下記の式に基づいて、無機微粒子のBET比表面積S(m2/g)を算出する。
S=Vm×N×0.162×10-18
(ここで、Nはアボガドロ数(モル-1)である。)
本装置を用いた測定は、装置に付属の「TriStar3000 取扱説明書V4.0」に従うが、具体的には、以下の手順で測定する。
充分に洗浄、乾燥した専用のガラス製試料セル(ステム直径3/8インチ、容積約5ml)の風袋を精秤する。そして、ロートを使ってこの試料セルの中に約0.1gの外添剤を入れる。
無機微粒子を入れた該試料セルを真空ポンプと窒素ガス配管を接続した「前処理装置 バキュプレップ061(島津製作所社製)」にセットし、23℃にて真空脱気を約10時間継続する。尚、真空脱気の際には、無機微粒子が真空ポンプに吸引されないよう、バルブを調整しながら徐々に脱気する。セル内の圧力は脱気とともに徐々に下がり、最終的には約0.4Pa(約3ミリトール)となる。真空脱気終了後、窒素ガスを徐々に注入して試料セル内を大気圧に戻し、試料セルを前処理装置から取り外す。そして、この試料セルの質量を精秤し、風袋との差から外添剤の正確な質量を算出する。尚、この際に、試料セル内の外添剤が大気中の水分等で汚染されないように、秤量中はゴム栓で試料セルに蓋をしておく。
次に、無機微粒子が入った該試料セルのステム部に専用の「等温ジャケット」を取り付ける。そして、この試料セル内に専用のフィラーロッドを挿入し、該装置の分析ポートに試料セルをセットする。尚、等温ジャケットとは、毛細管現象により液体窒素を一定レベルまで吸い上げることが可能な、内面が多孔性材料、外面が不浸透性材料で構成された筒状の部材である。
続いて、接続器具を含む試料セルのフリースペースの測定を行なう。フリースペースは、23℃においてヘリウムガスを用いて試料セルの容積を測定し、続いて液体窒素で試料セルを冷却した後の試料セルの容積を、同様にヘリウムガスを用いて測定して、これらの容積の差から換算して算出する。また、窒素の飽和蒸気圧Po(Pa)は、装置に内蔵されたPoチューブを使用して、別途に自動で測定される。
次に、試料セル内の真空脱気を行った後、真空脱気を継続しながら試料セルを液体窒素で冷却する。その後、窒素ガスを試料セル内に段階的に導入してトナーに窒素分子を吸着させる。この際、平衡圧力P(Pa)を随時計測することにより該吸着等温線が得られるので、この吸着等温線をBETプロットに変換する。尚、データを収集する相対圧Prのポイントは、0.05、0.10、0.15、0.20、0.25、0.30の合計6ポイントに設定する。得られた測定データに対して最小二乗法により直線を引き、その直線の傾きと切片からVmを算出する。さらに、このVmの値を用いて、上述したように無機微粒子のBET比表面積を算出する。
<トナー粒子の重量平均粒径(D4)の測定方法>
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer 3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行い、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
尚、測定、解析を行う前に、以下のように前記専用ソフトの設定を行う。
前記専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μm以上60μm以下に設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、解析ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispension System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。尚、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。尚、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
<トナーの平均円形度の測定方法>
トナーの平均円形度は、フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)によって、校正作業時の測定及び解析条件で測定する。
フロー式粒子像分析装置「FPIA−3000」(シスメックス社製)の測定原理は、流れている粒子を静止画像として撮像し、画像解析を行うというものである。試料チャンバーへ加えられた試料は、試料吸引シリンジによって、フラットシースフローセルに送り込まれる。フラットシースフローに送り込まれた試料は、シース液に挟まれて扁平な流れを形成する。フラットシースフローセル内を通過する試料に対しては、1/60秒間隔でストロボ光が照射されており、流れている粒子を静止画像として撮影することが可能である。また、扁平な流れであるため、焦点の合った状態で撮像される。粒子像はCCDカメラで撮像され、撮像された画像は512×512画素の画像処理解像度(一画素あたり0.37×0.37μm)で画像処理され、各粒子像の輪郭抽出を行い、粒子像の投影面積Sや周囲長L等が計測される。
次に、上記面積Sと周囲長Lを用いて円相当径と円形度を求める。円相当径とは、粒子像の投影面積と同じ面積を持つ円の直径のことであり、円形度Cは、円相当径から求めた円の周囲長を粒子投影像の周囲長で割った値として定義され、次式で算出される。
円形度C=2×(π×S)1/2/L
粒子像が円形の時に円形度は1.000になり、粒子像外周の凹凸の程度が大きくなればなるほど円形度は小さい値になる。各粒子の円形度を算出後、円形度0.200乃至1.000の範囲を800分割し、得られた円形度の相加平均値を算出し、その値を平均円形度とする。
具体的な測定方法は、以下の通りである。まず、ガラス製の容器中に予め不純固形物などを除去したイオン交換水約20mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.2ml加える。更に測定試料を約0.02g加え、超音波分散器を用いて2分間分散処理を行い、測定用の分散液とする。その際、分散液の温度が10℃以上40℃以下となる様に適宜冷却する。超音波分散器としては、発振周波数50kHz、電気的出力150Wの卓上型の超音波洗浄器分散器(例えば「VS−150」(ヴェルヴォクリーア社製))を用い、水槽内には所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に該コンタミノンNを約2ml添加する。
測定には、標準対物レンズ(10倍)を搭載した該フロー式粒子像分析装置を用い、シース液にはパーティクルシース「PSE−900A」(シスメックス社製)を使用した。該手順に従い調整した分散液を該フロー式粒子像分析装置に導入し、HPF測定モードで、トータルカウントモードにて3000個のトナー粒子を計測する。そして、粒子解析時の2値化閾値を85%とし、解析粒子径を指定することにより、その範囲の粒子の個数割合(%)、平均円形度を算出することができる。トナーの平均円形度は、円相当径1.98μm以上39.96μm以下とし、トナーの平均円形度を求めた。
測定にあたっては、測定開始前に標準ラテックス粒子(例えば、Duke Scientific社製の「RESEARCH AND TEST PARTICLES Latex Microsphere Suspensions 5200A」をイオン交換水で希釈)を用いて自動焦点調整を行う。その後、測定開始から2時間毎に焦点調整を実施することが好ましい。
なお、本願実施例では、シスメックス社による校正作業が行われた、シスメックス社が発行する校正証明書の発行を受けたフロー式粒子像分析装置を使用した。解析粒子径を円相当径1.98μm以上39.69μm未満に限定した以外は、校正証明を受けた時の測定及び解析条件で測定を行った。
<トナーの粘弾性の測定方法>
測定装置としては、回転平板型レオメーター「ARES」(TA INSTRUMENTS社製)を用いる。
測定試料としては、25℃の環境下で、錠剤成型器を用いて、トナーを直径25mm、厚さ2.0±0.3mmの円板状に加圧成型した試料を用いる。
該試料をパラレルプレートに装着し、室温(25℃)から110℃に15分間で昇温して、試料の形を整えた後、粘弾性の測定開始温度まで冷却し、測定を開始する。この際、初期のノーマルフォースが0になるようにサンプルをセットすることが、重要である。また、以下に述べるように、その後の測定においては、自動テンション調整(Auto Tension Adjustment ON)にすることで、ノーマルフォースの影響をキャンセルできる。
測定は、以下の条件で行う。
(1)直径25mmのパラレルプレートを用いる。
(2)周波数(Frequency)は6.28rad/sec(1.0Hz)とする。
(3)印加歪初期値(Strain)を1.0%に設定する。
(4)100乃至200℃の間を、昇温速度(Ramp Rate)2.0℃/minで測定を行う。尚、測定においては、以下の自動調整モードの設定条件で行う。自動歪み調整モード(Auto Strain)で測定を行う。
(5)最大歪(Max Applied Strain)を40.0%に設定する。
(6)最大トルク(Max Allowed Torque)150.0g・cmとし、最低トルク(Min Allowed Torque)0.2g・cmと設定する。
(7)歪み調整(Strain Adjustment)を20.0% of Current Strainと設定する。測定においては、自動テンション調整モード(Auto Tension)を採用する。
(8)自動テンションディレクション(Auto Tension Direction)をコンプレッション(Compression)と設定する。
(9)初期スタティックフォース(Initial Static Force)を10.0g、自動テンションセンシティビティ(Auto Tension Sensitivity)を40.0gと設定する。
(10)自動テンション(Auto Tension)の作動条件は、サンプルモデュラス(Sample Modulus)が1.0×103Pa以上である。
<非晶質ポリエステル樹脂L1の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンの部数を56.4質量部、テレフタル酸25.5質量部、及びチタンテトラブトキシド0.5質量部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れた。そして、該4つ口フラスコに温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけ、マントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、4時間反応させた(第1反応工程)。その後、無水トリメリット酸1.2質量部を添加し、180℃で1時間反応させ(第2反応工程)、非晶質ポリエステル樹脂L1を得た。
この非晶質ポリエステル樹脂L1の数平均分子量は2900で、酸価は4mg/KOHであった。ポリエステル樹脂L1の多価アルコールユニットを構成する多価アルコール成分、多価カルボン酸ユニットを構成する多価カルボン酸成分について表1に示す。非晶質また、非晶質ポリエステル樹脂L1の物性を表1に示す。
<非晶質ポリエステル樹脂L2及びL3の製造例>
表1に示す配合でモノマーを選択し、軟化点90℃にあわせるため反応時間を調整した以外は、非晶質ポリエステル樹脂L製造例1とほぼ同様にしてポリエステル樹脂L2と3を合成した。酸価184mg/KOHであった。非晶質ポリエステル樹脂L2と3の物性を表1に示す。
<非晶質ポリエステル樹脂H1の製造例>
ポリオキシプロピレン(2.2)−2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパン68.2質量部(0.19モル;多価アルコール総モル数に対して97mol%)、テレフタル酸15.0質量部(0.09モル;多価カルボン酸総モル数に対して55mol%)、ノボラック型フェノール樹脂(核体数約5のプロピレンオキシド5mol付加物)4.4質量部(0.01モル;多価アルコール総モル数に対して3mol%)、アジピン酸6.0質量部(0.04モル;多価カルボン酸総モル数に対して25mol%)及びチタンテトラブトキシド0.5質量部をガラス製4リットルの4つ口フラスコに入れた。そして、該4つ口フラスコに温度計、撹拌棒、コンデンサー及び窒素導入管を取りつけマントルヒーター内においた。次にフラスコ内を窒素ガスで置換した後、撹拌しながら徐々に昇温し、200℃の温度で撹拌しつつ、2時間反応させた(第1反応工程)。その後、無水トリメリット酸6.4質量部(0.03モル;多価カルボン酸総モル数に対して20mol%)を添加し、160℃で15時間反応させ(第2反応工程)、非晶質ポリエステル樹脂H1を得た。
この非晶質ポリエステル樹脂H1の多価アルコールユニットを構成する成分、多価カルボン酸ユニットを構成する成分について表1に示す。また、非晶質ポリエステル樹脂H1の物性を表1に示す。
<非晶質ポリエステル樹脂H2乃至9、M1及びM2の製造例>
非晶質ポリエステル樹脂H1製造例において、表1に記載の各種モノマーの添加部数を変更し、軟化点が130℃となるよう反応時間を調整した以外は、製造例1と同様に反応を行い、ポリエステル樹脂H2乃至9、M1、M2を得た。非晶質ポリエステル樹脂H2乃至8、M1、M2の多価アルコールユニットを構成する多価アルコール成分、多価カルボン酸ユニットを構成する多価カルボン酸成分について表1に示す。非晶質ポリエステル樹脂H2乃至8、M1、M2の物性を表1に示す。
<結晶性ポリエステル樹脂C1の製造例>
表2に示した組成物3000gとハイドロキノン3gを、冷却管、撹拌機、窒素導入管、及び、熱電対のついた反応槽に入れ、窒素ガス雰囲気に撹拌しながら徐々に昇温し、150℃で撹拌し、3時間反応させた。反応槽内の圧力を8.3kPaに下げ、温度200℃に維持したまま、4時間反応させ、結晶性ポリエステル樹脂C1を得た。樹脂軟化点Tmは、84℃であった。
<結晶性ポリエステル樹脂C2乃至C8の製造例>
結晶性ポリエステル樹脂製造例1において、表2に示した酸及びアルコールの組合せで製造例1とほぼ同様にして結晶性ポリエステル樹脂C2乃至C8を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂C2乃至C8の物性を表2に示す。
<トナー製造例1>
・非晶質ポリエステルL1 25質量部
・非晶質ポリエステルH1 75質量部
・結晶性ポリエステル樹脂C1 10質量部
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度78℃) 5質量部
・C.I.ピグメントブルー15:3 7質量部
・3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸アルミニウム化合物(ボントロンE88 オリエント化学工業社製) 0.5質量部
なお、3,5−ジ−t−ブチルサリチル酸の構造式は、以下の式(5)で表される。
上記材料をヘンシェルミキサー(FM−75型、三井鉱山(株)製)を用いて、回転数20s-1、回転時間5minで混合した後、温度150℃に設定した二軸混練機(PCM−30型、株式会社池貝製)にて混練した。突出物の温度は155℃まで上昇していた。得られた混練物を冷却し、ハンマーミルにて1mm以下に粗粉砕し、粗砕物を得た。得られた粗砕物を、機械式粉砕機(T−250、ターボ工業(株)製)にて微粉砕した。さらにファカルティF−300(ホソカワミクロン社製)を用い、分級を行い、トナー粒子を得た。運転条件は、分級ローター回転数を130s-1、分散ローター回転数を120s-1とした。
得られたトナー粒子100質量部に、疎水性シリカ(BET:200m2/g)1.0質量部、イソブチルトリメトキシシランで表面処理した酸化チタン微粒子(BET:80m2/g)を1.0質量部、ヘンシェルミキサ(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で回転数30s-1、回転時間10minで混合して、トナー1を得た。トナー1の重量平均粒径(D4)は6.2μmであり、平均円形度は0.966であった。トナーの物性を表4に示した。
<トナー2乃至15、トナーa乃至d製造例>
表3に示した材料配合に従い各種材料の秤量を行い、表3に示した混練温度に調整した以外は、トナー1の製造例とほぼ同様にしてトナーを製造した。表4にトナーの物性を示した。
<トナーeの製造例>
(ポリエステル樹脂分散液)
非晶質ポリエステル樹脂L3、H8を、イオン交換水80%、ポリエステル樹脂の濃度が20%の組成比で、アンモニアによりpHを8.5に調整し、加熱140℃の条件でキャビトロンを運転し、ポリエステル樹脂L3分散液、ポリエステル樹脂H8分散液(固形分:20%)を得た。
(結晶性ポリエステル樹脂分散液)
結晶性ポリエステル樹脂C6を80質量部、イオン交換水720質量部を各々ステンレスビーカーに入れ、98℃に加熱した。結晶性ポリエステル樹脂が溶融した時点で、ホモジナイザーを用いて撹拌した。次いで、アニオン性界面活性剤(第一工業製薬(株)、ネオゲンRK、固形分:20%)2.0質量部を滴下しながら、乳化分散を行い、結晶性ポリエステル樹脂C6分散液(固形分:10%)を得た。
(着色剤分散液)
・C.I.ピグメントブルー15:3 1000質量部
・アニオン界面活性剤 150質量部
・イオン交換水 9000質量部
以上を混合し、溶解した後、高圧衝撃式分散機を用いて分散した。
得られた着色剤分散液における着色剤粒子の体積平均粒径D50は0.16μm、着色剤濃度は23%であった。
(離型剤分散液)
・フィッシャートロプシュワックス(最大吸熱ピークのピーク温度90℃)45質量部
・アニオン性界面活性剤 5質量部
・イオン交換水 200質量部
以上を95℃に加熱して、ホモジナイザーを用いて分散した後、圧力吐出型ゴーリンホモジナイザーで分散処理し、体積平均粒径が210nmである離型剤を分散させてなる離型剤分散液(離型剤濃度:20%)を調製した。
(トナーeの製造)
・ポリエステル樹脂L3分散液 120質量部
・ポリエステル樹脂H8分散液 120質量部
・結晶性ポリエステル樹脂C6分散液 70質量部
以上を丸型ステンレス製フラスコ中においてホモジナイザーで混合・分散した。これにポリ塩化アルミニウム0.15部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。その後、
・着色剤分散液 21.5質量部
・離型剤分散液 50質量部
以上を追加し、さらにポリ塩化アルミニウム0.05質量部を加え、ウルトラタラックスで分散操作を継続した。
撹拌機、マントルヒーターを設置し、スラリーが充分に撹拌するように撹拌機の回転数を調整しながら、50℃まで昇温し、50℃で15分保持した後、0.05℃/分で昇温しながら10分ごとに、コールターマルチサイザーII(アパーチャー径:50μm、ベックマン−コールター社製)にて粒径を測定し、体積平均粒径が5.0μmとなったところで、ポリエステル樹脂L3分散液75質量部及びポリエステル樹脂H8分散液75質量部(追加樹脂)を3分間かけて投入した。投入後30分間保持した後、5%水酸化ナトリウム水溶液を用いてpHを9.0にした。その後、5℃ごとにpHを9.0に調整しながら、昇温速度1℃/分で96℃まで昇温し、96℃で保持した。30分ごとに光学顕微鏡及び走査電子顕微鏡(FE−SEM)にて粒子形状及び表面性を観察したところ、5時間目で球形化したので、1℃/分で20℃まで降温して粒子を固化させた。
その後、反応生成物をろ過し、イオン交換水で十分洗浄した後、真空乾燥機を用いて乾燥させることにより、トナー粒子eを得た。
トナー粒子e100質量部に対して、ヘキサメチルジシラザン4質量%で表面処理したBET比表面積25m2/gの疎水性シリカ微粒子1.0質量部、ポリジメチルシロキサン10質量%で表面処理したBET比表面積100m2/gの疎水性シリカ微粒子0.7質量部を添加し、ヘンシェルミキサー(FM−75型、三井三池化工機(株)製)で回転数30s-1、回転時間10min混合して、トナーeを得た。トナーeの重量平均粒径(D4)は6.0μmであり、平均円形度は0.986であった。トナーeの物性を表4に示した。
<磁性コア粒子の製造例>
工程1(秤量・混合工程):
Fe2O3 60.2質量%
MnCO3 33.9質量%
Mg(OH)2 4.8質量%
SrCO3 1.1質量%
となるようにフェライト原材料を秤量した。その後、ジルコニア(φ10mm)のボールを用いた乾式ボールミルで2時間粉砕・混合した。
工程2(仮焼成工程):
粉砕・混合した後、バーナー式焼成炉を用い大気中で1000℃で3時間焼成し、仮焼フェライトを作製した。フェライトの組成は、下記の通り。
(MnO)a(MgO)b(SrO)c(Fe2O3)d
(上記式において、a=0.39、b=0.11、c=0.01、d=0.50)
工程3(粉砕工程):
クラッシャーで0.5mm程度に粉砕した後に、ジルコニア(φ10mm)のボールを用い、仮焼フェライト100質量部に対し、水を30質量部加え、湿式ボールミルで2時間粉砕した。そのスラリーを、ジルコニアのビーズ(φ1.0mm)を用いた湿式ビーズミルで4時間粉砕し、フェライトスラリーを得た。
工程4(造粒工程):
フェライトスラリーに、バインダーとして仮焼フェライト100質量部に対してポリビニルアルコール2.0質量部を添加し、スプレードライヤー(製造元:大川原化工機)で、約36μmの球状粒子に造粒した。
工程5(本焼成工程):
焼成雰囲気をコントロールするために、電気炉にて窒素雰囲気下(酸素濃度1.00体積%以下)で、1150℃で4時間焼成した。
工程6(選別工程):
凝集した粒子を解砕した後に、目開き250μmの篩で篩分して粗大粒子を除去し、磁性コア粒子1を得た。
<コート樹脂の製造例1>
シクロヘキシルメタクリレートモノマー 26.8質量部
メチルメタクリレートモノマー 0.2質量部
メチルメタクリレートマクロモノマー 8.4質量部
(片末端にメタクリロイル基を有する重量平均分子量5000のマクロモノマー)
トルエン 31.3質量部
メチルエチルケトン 31.3質量部
上記材料を、還流冷却器、温度計、窒素導入管及び撹拌装置を取り付けた四つ口のセパラブルフラスコに添加し、窒素ガスを導入して充分に窒素雰囲気にした。その後、80℃まで加温し、2.0質量部のアゾビスイソブチロニトリルを添加して5時間還流し重合させた。得られた反応物にヘキサンを注入して共重合体を沈殿析出させ、沈殿物を濾別後、真空乾燥してコート樹脂1を得た。
<磁性キャリア製造例1>
コート樹脂1 18.0質量%
トルエン 82.0質量%
上記材料をビーズミルで分散混合し、樹脂液1を得た。
前記磁性コア粒子1 100質量部をナウタミキサに投入し、さらに、前記樹脂液1を樹脂成分として2.0質量部になるようにナウタミキサに投入した。減圧下で温度70℃に加熱し、100rpmで混合し、4時間かけて溶媒除去及び塗布操作を行った。その後、得られた試料をジュリアミキサーに移し、窒素雰囲気下、温度100℃で2時間熱処理した後、目開き70μmの篩で分級して磁性キャリア1を得た。得られた磁性キャリア1の体積分布基準50%粒径(D50)は、38.2μmであった。
<二成分系現像剤1の製造例>
前記トナー1と前記磁性キャリア1で、トナー濃度が8質量%になるようにV型混合機(V−10型:株式会社徳寿製作所)で0.5s-1、回転時間5minで混合し、二成分系現像剤1を得た。
<二成分系現像剤2乃至15、a乃至eの製造例>
二成分系現像剤1と同様にトナー2乃至15、a乃至eと磁性キャリア1を混合して二成分系現像剤2乃至15、a乃至eを得た。
〔実施例1〕
二成分系現像剤1に対して下記の評価を行った。
<低温定着性>
キヤノン製フルカラー複写機imagePRESS C1+のシアンステーションに上記二成分系現像剤を入れた現像器を搭載し、定着温度を取り外した状態で画像形成できるように改造し、未定着画像を形成した。評価には、カラー複写機・プリンタ用普通紙 GF−C104(A4、104g/cm2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
FFH画像(以下、ベタ部)のトナーの紙上への載り量が1.2mg/cm2となるように現像条件を適宜調整し、A4評価紙先端から3cm、評価紙中心の位置に2cm×10cmのベタ未定着画像を形成した。未定着画像は低湿低温環境下(15℃/10%Rh)に24時間調湿した。
キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROから定着器を取り出し、プロセススピード、上下の定着部材温度を独立に制御できるよう定着試験用治具を低湿低温環境下(15℃/10%Rh)準備した。プロセススピードを348mm/secに調整し、前記定着試験用治具の上ベルト温度を100乃至200℃の範囲で5℃おきに調整した。下ベルト温度は100℃に固定した状態で、前記の調湿済み未定着画像を通紙した。定着器を通過させた定着画像を4.9kPaの荷重をかけたレンズクリーニングワイパー(ダスパー 小津産業株式会社製)で5往復摺擦し、摺擦前後の画像濃度の濃度低下率が10%以下になる点を定着温度とした。10%を超えて濃度低下がおこると定着できていないとの判定基準のもと、画像濃度低下率10%を超えない最も低い上ベルト設定温度を低温定着温度とし、下記の評価基準に従って評価した。
(評価基準:低温定着性)
A:120℃未満 (優れている)
B:120℃以上130℃未満 (少し優れている)
C:130℃以上140℃未満 (従来技術レベル;本発明において許容レベル)
D:140℃以上 (従来より劣る;本発明において実用不可レベル)
<耐ホットオフセット性>
紙は、カラー複写機・プリンタ用普通紙 CS680 A3(A4、68g/m2)(キヤノンマーケティングジャパン株式会社より販売)を用いた。
FFH画像(以下、ベタ部)のトナーの紙上への載り量が0.08mg/cm2となるように現像条件を調整し、未定着のFFH画像を得た。
その後、低温定着性評価と同様に、キヤノン製フルカラー複写機imageRUNNER ADVANCE C9075PROから取り外した定着器を改造した定着評価治具を用いて常温低湿環境にて評価を行った。。
画出し前の評価紙について反射率をリフレクトメータ(「REFLECTOMETER MODEL TC−6DS」、東京電色株式会社製)によって測定し、5箇所測定した平均値をDA(%)とした。上記外部定着器における定着温度を100乃至200℃の範囲で10℃おきに調整し、各定着温度における定着画像の白地部についてリフレクトメータで反射率を測定し、最大値をDB(%)とした。
そして、DA(%)とDB(%)の差が0.5%を超えない、最も高い定着温度を定着上限温度とし、下記の基準にて耐ホットオフセット性を評価した。
(評価基準:耐ホットオフセット性)
A:220℃以上 (優れている)
B:180℃以上220℃未満 (少し優れている)
C:160℃以上180℃未満 (従来技術レベル;本発明において許容レベル)
D:160℃未満 (従来より劣る;本発明において実用不可レベル)
<保存性評価(高温高湿)>
100ccのポリカップにトナー10gを入れ、温度及び湿度可変型の恒温槽(50℃/54%Rh)に48時間放置し、放置後にトナーを常温常湿(25℃/50Rh)に24時間以上調湿してから、保存性評価を行った。評価には、ホソカワミクロン社製パウダーテスタPT−Xを用い、1.0mmの振幅にて60秒間、目開き250μmのメッシュで振るった際の、メッシュ上のトナー残存率で保存性レベルを評価した。
(評価基準:残存率)
A:10%未満 (優れている)
B:10%以上20%未満 (少し優れている)
C:20℃以上60%未満 (従来技術レベル;本発明において許容レベル)
D:60%以上 (従来より劣る;本発明において実用不可レベル)
<帯電量低下率(高温高湿放置による帯電量低下率)>
画像形成装置として、キヤノン製デジタルimageRUNNER iR C3580改造機を用い、シアン位置の現像器に二成分系現像剤1を入れ、高温高湿(30℃、80%RH)環境下で画像形成を行った。現像スリーブには、周波数2.0kHz、Vpp1.3kVの交流電圧と直流電圧VDCを印加した。また、Vback 150Vに固定した条件で、帯電直流電圧VDCを500Vに調整し、カラーレーザーコピーペーパー(A4、81.4g/m2)を用いて、以下の評価項目について評価を行った。ただし、現像性については、画出し試前にのみ評価を行なった。詳細は、後述する。
評価には、カラーレーザーコピーペーパー(A4、81.4g/m2)上に、FFH画像(ベタ画像)を形成し、FFH画像とは、256階調を16進数で表示した値であり、00Hを1階調目(白地部)、FFHを256階調目(ベタ部)とする。
画出し試験は、画像割合が5%の画像を用いて10万枚の画出し試験を行った。画出し試験後、現像剤をサンプリングし、現像剤中のトナー濃度を確認した。初期のトナー濃度8%から変動のあった現像剤については、現像器にトナーを補給するか、トナーの補給を止めて画出しを行うなどしてトナーを消費させ、画出し試験後のトナー濃度が8%となるよう調整した。トナー濃度を調整した後、以下の手順にて評価を行った。
高温高湿(30℃、80%RH)環境下での10万枚の画出し試験直後にサンプリングした現像剤の帯電量を測定し、その帯電量をQ1とする。そのまま現像器をが機内に3晩放置した後にサンプリングし、三晩放置後の現像剤の帯電量をQ2とした。Q1とQ2から帯電量低下率を評価を行った。
帯電量は、高温高湿(30℃、80%RH)環境下に設置した吸引分離式帯電量測定器セパソフト STC−1−C1型(三協パイオテク製)を用いて測定した。サンプルフォルダー(ファラデーゲージ)底に目開き20μmのメッシュ(金網)を設置し、その上に、サンプリングした現像剤を0.10g入れフタをする。この時のサンプルフォルダー全体の質量を秤りW1(g)とする。次にサンプルフォルダーを本体に設置し風量調節弁を調整して吸引圧力を2kPaとする。この状態で2分間吸引しトナーを吸引除去する。この時の電流Q(μC)とする。また、吸引後のサンプルフォルダー全体の質量を秤りW2(g)とする。この時もとまるQは、キャリアの電荷を計測しているため、トナーの摩擦帯電量としては、その逆極性になる。この現像剤の摩擦帯電量(mC/kg)の絶対値は下式の如く算出される。
摩擦帯電量(mC/kg)=Q/(W1−W2)
(帯電量低下率の評価基準)
帯電量低下率は、下式に従い算出した。
帯電量低下率(%)=(Q1−Q2)/Q1×100評価基準を以下に示した。
A:3.0%未満(非常に良好)
B:3.0以上7.0%未満(良好)
C:7.0以上15.0%未満(本発明において許容レベル)(ここまで実用レベル)
D:15.0%以上(本発明において実用不可レベル)
以上の評価方法・基準によりトナーを評価した結果を表5に示す。
〔実施例2乃至15、及び比較例1乃至5〕
実施例1において、評価に用いる二成分系現像剤を表5に記載の二成分現像剤に変更する以外は同様にして、評価を行った。表5に評価結果を示す。
以上の結果で示されるように、結晶性ポリエステル樹脂添加トナーであっても、トナーの粘弾性制御によって、従来より低温で定着可能となり、かつ耐ホットオフセット性を損なわずに、幅広い定着可能温度範囲で定着させることが可能となる。加えて、材料選択によって、低温定着トナー設計でありながら、高温高湿保管時の保存性を満足し、高温高湿環境での帯電量変動を抑え画像弊害の発生もないトナーとすることができた。