JP2015119803A - バルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バルーンに形成されるコーティング層の厚さや形態型の均一性を適切に設定可能なバルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置を提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法および装置50であって、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94をバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動させるとともに、ディスペンシングチューブ94を当該ディスペンシングチューブ94の軸心Yを中心として回転させつつコーティング液Rをバルーン30の外表面に塗布する。
【選択図】図1
【解決手段】バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法および装置50であって、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94をバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動させるとともに、ディスペンシングチューブ94を当該ディスペンシングチューブ94の軸心Yを中心として回転させつつコーティング液Rをバルーン30の外表面に塗布する。
【選択図】図1
Description
本発明は、バルーンの表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置に関する。
近年、生体管腔内に生じた病変部(狭窄部)の改善のために、バルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、通常、長尺なシャフト部と、シャフト部の先端側に設けられて径方向に拡張可能なバルーンとを備えており、収縮されているバルーンを、細い生体管腔を経由して体内の目的場所まで到達させた後に拡張させることで、病変部を押し広げることができる。
しかしながら、病変部を強制的に押し広げると、内皮細胞が過剰に増殖して病変部に新たな狭窄(再狭窄)が発症する場合がある。このため、最近では、バルーンの外表面に狭窄を抑制するための薬剤をコーティングした薬剤溶出バルーンが用いられている。薬剤溶出バルーンは、拡張することで外表面にコーティングされている薬剤を病変部へ瞬時に放出し、薬剤を生体組織へ移行させることができ、これにより、再狭窄を抑制することができる。
バルーンに薬剤を含むコーティング層を形成する方法として、例えば、スプレー法、ドロップ法、糸引き法などがある。スプレー法は、薬剤を含むコーティング液を、バルーンに対して接触しないディスペンシングチューブから霧状に吹き付けた後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの外表面にコーティング層を形成する方法である。ドロップ法は、コーティング液を、バルーンに対して接触しないディスペンシングチューブから滴下した後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの外表面にコーティング層を形成する方法である。糸引き法は、コーティング液を、バルーンに接触する糸等を介してバルーンの外表面上に供給した後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの外表面にコーティング層を形成する方法である。
上述した種々の方法によってバルーンにコーティング液を塗布する際には、バルーンを回転させつつ、コーティング液を供給するディスペンシングチューブや糸等の器具をバルーンの軸方向へ移動させることで、バルーンの外表面に連続的にコーティング液を塗布することができる(例えば、特許文献1を参照)。
ディスペンシングチューブからコーティング液を吐出させると、ディスペンシングチューブや糸等の器具に、薬剤の結晶等が析出する虞がある。ディスペンシングチューブ等に薬剤の結晶等が析出すると、析出した結晶等が脱落してバルーンの外表面上に点在し、コーティング層の厚さや形態型の均一性が損なわれる可能性がある。なお、形態型には、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などが存在する。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、バルーンに形成されるコーティング層の厚さや形態型の均一性を適切に設定可能なバルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係るバルーンコーティング方法は、バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法であって、前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液を塗布する塗布部を前記バルーンに対して軸心方向へ相対的に移動させるとともに、前記塗布部を当該塗布部の軸心を中心として回転させつつ前記コーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布工程を有する。
また、上記目的を達成する本発明に係るバルーンコーティング装置は、バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング装置であって、前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心として回転させる回転機構と、前記バルーンに対して当該バルーンの軸心方向へ相対的に移動し、薬剤を含むコーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布部と、前記塗布部を当該塗布部の軸心を中心として回転させる塗布部回転機構と、を有する。
上記のように構成したバルーンコーティング方法は、塗布部を当該塗布部の軸心を中心として回転させつつコーティング液をバルーンの外表面に塗布するため、塗布部のコーティング液と接触する面が回転方向へ移動するとともに、コーティング液に遠心力が作用しコーティング液が塗布部から離れやすくなるため、コーティング液に含まれる薬剤の結晶等が塗布部に析出し難くなり、薬剤の結晶等が塗布部から脱落してバルーンの外表面上に点在することを抑制でき、バルーンに形成されるコーティング層の厚さや形態型の均一性を適切に設定可能である。
前記塗布工程において、前記バルーンの外表面に対して垂直に配置された前記塗布部によりコーティング液を塗布するようにすれば、コーティング液をバルーンへ効率よく塗布することができるとともに、コーティング液が塗布部に対して偏って位置し難くなり、コーティング液に含まれる薬剤の結晶等が塗布部に析出し難くなる。
前記塗布工程において、前記塗布部の回転速度を変化させるようにすれば、塗布部とコーティング液との接触の規則性を排除して、コーティング液に含まれる薬剤の結晶等が塗布部に対してより析出し難くなる。
また、上記のように構成したバルーンコーティング装置によれば、塗布部を当該塗布部の軸心を中心として回転させる塗布部回転機構を備えるため、塗布部を回転させつつコーティング液をバルーンの外表面に塗布することができる。このため、塗布部とコーティング液との接触面が変化するとともにコーティング液に遠心力が作用し、コーティング液に含まれる薬剤の結晶等が塗布部に析出し難くなり、薬剤の結晶等が塗布部から脱落してバルーンの外表面上に点在することを抑制でき、バルーンに形成されるコーティング層の厚さや形態型の均一性を適切に設定可能である。
前記塗布部は、前記バルーンの外表面に対して垂直に配置されるようにすれば、コーティング液をバルーンへ効率よく塗布することができるとともに、コーティング液が塗布部に対して偏って位置し難くなり、コーティング液に含まれる薬剤の結晶等が塗布部に析出し難くなる。
前記塗布部回転機構は、前記バルーンの回転速度を変更可能であるようにすれば、薬剤の結晶等が塗布部に析出し難くなる条件へ変更することが可能となるとともに、塗布部とコーティング液との接触の規則性を排除して、コーティング液に含まれる薬剤の結晶等が塗布部に対してより析出し難くなる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
本発明実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーンの表面に薬剤を含むコーティング層を形成するものであり、図1に示すバルーンコーティング装置50により実施される。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
まず、バルーンカテーテル10の構造を説明する。バルーンカテーテル10は、図2に示すように、長尺なカテーテル本体部20と、カテーテル本体部20の先端部に設けられるバルーン30と、カテーテル本体部20の基端に固着されたハブ40とを有している。
カテーテル本体部20は、先端および基端が開口した管状体である外管21と、外管21の内部に配置される内管22とを備えている。外管21および内管22の間には、バルーン30を拡張するための拡張用流体が流通する拡張ルーメン23が形成されており、内管22の内側には、ガイドワイヤーが挿通されるガイドワイヤールーメン24が形成されている。
バルーン30は、先端側が内管22に接着され、基端側が外管21に接着されており、バルーン30の内部が、拡張ルーメン23に連通している。
ハブ40は、外管21の拡張ルーメン23と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する第1開口部41と、ガイドワイヤールーメン24を挿通させる第2開口部42とを備えている。第2開口部42には、血液の流出を抑制する止血弁43が設けられている。
バルーン30は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されることが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
次に、バルーンコーティング装置50について説明する。バルーンコーティング装置50は、図1に示すように、バルーンカテーテル10を保持してバルーン30の軸心Xを中心として回転させる回転機構60と、バルーンカテーテル10を支持する支持台70と、バルーンカテーテル10の軸心Xの方向へ移動可能な移動台81を備える移動機構80と、バルーン30の外表面にコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94(塗布部)を備える塗布機構90と、ディスペンシングチューブ94を回転させる塗布部回転機構100と、バルーンコーティング装置50を制御する制御部110と、を有する。
回転機構60は、バルーンカテーテル10のハブ40を保持し、内蔵されるモーター等の駆動源によってバルーンカテーテル10を回転させる。バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤールーメン24内に芯材61が挿通されて保持されるとともに、芯材61によってコーティング液Rのガイドワイヤールーメン24内への流入が防止されている。また、バルーンカテーテル10は、拡張ルーメン23を覆うようにハブ40の第1開口部41にキャップ63が被せられ、バルーン30を拡張させた際に拡張用流体を密封することができる。
支持台70は、カテーテル本体部20を内部に収容して回転可能に支持する管状の基端側支持部71と、芯材61を回転可能に支持する先端側支持部72とを備えている。なお、先端側支持部72は、可能であれば、芯材61ではなしにカテーテル本体部20の先端部を回転可能に支持してもよい。
移動機構80は、バルーン30の軸心Xと平行な方向へ直線的に移動可能な移動台81を備えている。移動台81は、内蔵されるモーター等の駆動源によって、直線的に移動可能である。移動台81には、塗布機構90が載置されており、塗布機構90をバルーンカテーテル10の軸心Xに沿う両方向へ直線的に移動させる。
塗布機構90は、コーティング液Rを収容する容器92と、任意の送液量でコーティング液Rを送液する送液ポンプ93と、コーティング液Rをバルーン30に塗布するディスペンシングチューブ94と、容器92と送液ポンプ93とを連結する吸引チューブ95と、ディスペンシングチューブ94と送液ポンプ93とを連結する供給チューブ96とを備えている。
送液ポンプ93は、例えばチューブポンプであり、制御部110によって制御されて、容器92から吸引チューブ95を介してコーティング液Rを吸引し、供給チューブ96を介してディスペンシングチューブ94へコーティング液Rを任意の送液量で供給することができる。送液ポンプ93は、移動台81に設置され、移動台81の移動により直線的に移動可能である。なお、送液ポンプ93は、コーティング液Rを送液可能であればチューブポンプに限定されず、例えばシリンジポンプであってもよい。
ディスペンシングチューブ94は、図1,3に示すように、バルーン30の外表面へ向かって開口する開口部からコーティング液Rを吐出する円管状の部材であり、移動台81から下方へ延びる移動梁83に設置される軸受84によって回転可能に支持されている。ディスペンシングチューブ94の開口部は、ディスペンシングチューブ94の軸心Yと直交する面で開口するように形成されている。ディスペンシングチューブ94は、移動台81の移動によって、バルーン30の軸心Xに沿う両方向へ直線的に移動可能である。ディスペンシングチューブ94は、軸心Yが鉛直方向へ延びており、上方側の開口部に供給チューブ96が挿入され、下方側の開口部から、バルーン30の外表面へコーティング液Rを吐出する。ディスペンシングチューブ94は、軸受99を介して供給チューブ96に対して回転可能に接続されている。なお、ディスペンシングチューブ94と供給チューブ96が相対的に回転可能であれば、軸受99は設けられなくてもよい。また、軸受99を介してディスペンシングチューブ94を供給チューブ96により保持可能であれば、ディスペンシングチューブ94は、軸受84を介して移動梁83により保持されなくてもよい。ディスペンシングチューブ94の軸心Yは、ディスペンシングチューブ94のコーティング液Rを吐出する開口部の中心を通過する。ディスペンシングチューブ94の上端面には、周方向に並ぶ複数の従動歯97が形成されている。ディスペンシングチューブ94の軸心Yは、バルーン30の外表面に対して垂直となっており、かつバルーン30の軸心Xと直交する。なお、ディスペンシングチューブ94は、コーティング液Rを供給可能であれば、円管状でなくてもよい。また、バルーン30にコーティング液Rを塗布する方法は、ディスペンシングチューブ94を用いる方法に限定されず、例えば、コーティング液Rを含ませた繊維材、織布、不織布、スポンジ等の多孔質体、長尺な中実部材、ヘラ状の部材、ブラシ等を用いて塗布してもよい。
ディスペンシングチューブ94の内径は、特に限定されないが、例えば0.1〜0.3mmであり、バルーン30の大きさやコーティング液Rの粘度等に応じて適宜設定されることが好ましい。
ディスペンシングチューブ94の構成材料は、コーティング液Rを塗布できれば、特に限定されず、一般的な樹脂や金属等を適用できる。
塗布部回転機構100は、ディスペンシングチューブ94を、当該ディスペンシングチューブ94の軸心Yを中心に回転させるための機構であり、移動梁83に固定される駆動源としてのモーター101と、モーター101の回転軸に固定される駆動歯車102とを備えている。モーター101の回転軸は、ディスペンシングチューブ94の軸心Yと直交している。駆動歯車102の駆動歯102Aは、ディスペンシングチューブ94の従動歯97に噛み合っており、モーター101の回転力をディスペンシングチューブ94へ伝達して、ディスペンシングチューブ94を回転させることができる。なお、駆動源は、モーターでなくてもよい。
制御部110は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構60、移動機構80および塗布機構90を統括的に制御する。
コーティング液Rは、薬剤、添加剤、および揮発性溶媒を含んでいる。薬剤は、生体へ作用する物質であり、水溶性薬剤および不水溶性薬剤のいずれであってもよいが、薬剤の血中への溶出を抑制するという観点から、不水溶性薬剤が好ましい。
不水溶性薬剤は、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は、脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤および抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻酔剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤としては、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセルおよびエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスは、それぞれ、同様の薬効を有する限り、それらの類似体および/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルとは類似体の関係にあり、ラパマイシンとエベロリムスとは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
本実施形態におけるコーティング液Rは、上記水不溶性薬剤を、好ましくは5〜60mg/mLの濃度で、より好ましくは20〜50mg/mLの濃度で、さらに好ましくは30〜40mg/mLの濃度で、含有する。
添加剤は、特に制限されないが、薬剤と固体分散体を形成するポリマー(重合体)及び/又は高分子または低分子の化合物を適用でき、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニル・メチル・エーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−メチル・メタクリル酸塩共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ナイロン12およびそのブロック共重合体、ポリカプロラクトン、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン・トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオニルセルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン・グリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、有機酸、有機酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、添加剤は、必ずしも設けられなくてもよい。
添加剤は、薬剤に対して少量であることが好ましく、マトリクスを形成しないことが好ましい。また、添加剤は、ミセル、リポソーム、造影剤、乳化剤、界面活性剤を含まないことが好ましいが、含まれてもよい。また、添加剤は、ポリマーを含まず低分子の化合物のみを含むことが好ましい。
揮発性溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン等の揮発性有機溶媒を少なくとも1種類を含むことが好ましい。また、揮発性有機溶媒に水等が混合されてもよい。
次に、上述したバルーンコーティング装置50を用いてバルーン30の表面に薬剤を含むコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法を説明する。
初めに、バルーンカテーテル10の第1開口部41から拡張用の流体をバルーン30内に供給し、バルーン30を拡張させた状態で第1開口部41にキャップ63を被せて密封し、バルーン30を拡張させた状態で維持する。なお、バルーン30を拡張させずに、バルーン30の表面にコーティング層32を形成することもでき、その場合には、拡張用の流体をバルーン30内に供給する必要はない。
次に、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ40を回転機構60に連結する。
次に、移動台81を移動させて、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置にディスペンシングチューブ94を位置させる。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング液Rをディスペンシングチューブ94へ供給し、回転機構60によりバルーンカテーテル10を回転させ、かつ塗布部回転機構100によりディスペンシングチューブ94を回転させつつ移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94を徐々に基端方向へ移動させる。これにより、図4に示すように、ディスペンシングチューブ94から吐出されるコーティング液Rは、バルーン30の回転およびディスペンシングチューブ94の移動によって、バルーン30の外周面上に、螺旋を描きつつ連続的に隙間なく塗布される(塗布工程)。そして、ディスペンシングチューブ94が回転することで、ディスペンシングチューブ94とコーティング液Rとの接触面が変化するとともにコーティング液Rに遠心力が作用し、コーティング液Rに含まれる薬剤の結晶等がディスペンシングチューブ94に析出し難くなる。このため、薬剤の結晶等がディスペンシングチューブ94から脱落してバルーン30の外表面上に点在することを抑制できる。
ディスペンシングチューブ94の移動速度は、例えば0.5〜10mm/秒であるが、これに限定されない。コーティング液Rのディスペンシングチューブ94からの吐出速度は、例えば0.05〜5μL/秒であるが、これに限定されない。バルーン30の回転速度は、例えば20〜100rpmであるが、これに限定されない。ディスペンシングチューブ94の回転速度は、例えば20〜100rpmであるが、これに限定されず、コーティング液Rに含まれる薬剤等がディスペンシングチューブ94に析出しないように、コーティング液Rの粘度等に応じて適宜設定されることが好ましい。
この後、バルーン30の表面に塗布されたコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発して、バルーン30の表面に薬剤および添加物を含むコーティング層32が徐々に形成される。揮発させる時間は、溶媒により適宜設定されるが、例えば、数秒〜十数秒程度である。
バルーン30の外表面にコーティングされる薬剤は、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などの異なる形態型となり得る。薬剤が結晶型となる場合でも、結晶構造が異なる種々の形態型が存在する。さらに、結晶や非晶質は、コーティング層32において規則性を有するように配置されてもよいが、不規則に配置されてもよい。そして、このような薬剤の形態型は、揮発性溶媒を揮発させる時間の長短や雰囲気温度により影響を受ける。したがって、コーティング液Rの厚さを適切に調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節し、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に調節することができる。上述のように、ディスペンシングチューブ94に薬剤の結晶等が析出し難くなり、薬剤の結晶等がディスペンシングチューブ94から脱落してバルーン30の外表面上に点在することを抑制することで、バルーン20に形成される形態型の均一性を適切に設定することができる。
そして、バルーン30およびディスペンシングチューブ94を回転させつつディスペンシングチューブ94を徐々に軸心Xの方向へ移動させることで、バルーン30の外表面に、コーティング層32を徐々に形成する。バルーン30のコーティングする範囲の全体にコーティング層32が形成された後、回転機構60、移動機構80、塗布機構90および塗布部回転機構100を停止させる。
コーティング層32の厚さは、例えば1〜50μmであるが、これに限定されず、バルーン30の寸法や薬剤の種類等に応じて適宜設定可能である。
この後、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置50から取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、本実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法であって、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94(塗布部)をバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動させるとともに、ディスペンシングチューブ94を当該ディスペンシングチューブ94の軸心Yを中心として回転させつつコーティング液Rをバルーン30の外表面に塗布する塗布工程を有している。このように、塗布工程において、ディスペンシングチューブ94が軸心Yを中心として回転するため、ディスペンシングチューブ94のコーティング液Rと接触する面が回転方向へ移動するとともに、コーティング液Rに遠心力が作用してコーティング液Rがディスペンシングチューブ94から離れやすくなり、コーティング液Rに含まれる薬剤の結晶等がディスペンシングチューブ94に析出し難くなる。このため、ディスペンシングチューブ94に析出した結晶等がディスペンシングチューブ94から脱落してバルーン30の外表面上に点在することを抑制でき、バルーン20に形成されるコーティング層32の厚さや形態型の均一性を適切に設定することができる。そして、バルーン30に適切なコーティング層32が形成されることで、望ましい治療効果を期待できる。
また、塗布工程において、バルーン30の外表面に対して垂直に配置されたディスペンシングチューブ94(塗布部)によりコーティング液Rを塗布するため、コーティング液Rをバルーン30へ効率よく塗布することができる。さらに、ディスペンシングチューブ94の軸心Yが、バルーン30の外表面に対して垂直に配置されることで、軸心Yがバルーン30の外表面に対して平行に近くなる場合(例えば、図6を参照)と比較して、ディスペンシングチューブ94の開口部(塗布を行う部位)を囲む部位のバルーン30への距離が均一となり、コーティング液Rがディスペンシングチューブ94に対して偏って位置し難くなる。このため、コーティング液Rに含まれる薬剤の結晶等がディスペンシングチューブ94に析出し難くなり、薬剤の結晶等がバルーン30の外表面上に点在することを抑制して、バルーン20に形成される形態型の均一性を適切に設定することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、バルーン30の先端側から基端側へ向かってコーティング液Rを塗布しているが、基端側から先端側へ向かって塗布してもよい。
また、本実施形態では、ディスペンシングチューブ94(塗布部)をバルーン30に対して移動させているが、バルーン30をディスペンシングチューブ94に対して移動させてもよい。
また、ディスペンシングチューブ94(塗布部)を回転させる機構の構造は、ディスペンシングチューブ94を回転させることができるのであれば、図3に示す例に限定されない。一例として、図5に示すように、ディスペンシングチューブ120(塗布部)の上端の外周面に従動歯121を形成し、モーター101に固定される駆動歯車122の駆動歯122Aおよび従動歯121と噛み合う中間歯車123を設けてもよい。なお、上述の実施形態と同様の機能を有する部位には、同一の符号を付し、説明を省略する。中間歯車123は、移動台81に固定される移動梁125に回転可能に支持され、モーター101は、移動梁125に固定されている。モーター101の回転軸は、ディスペンシングチューブ120の軸心Yと平行である。モーター101が回転すると、回転力が駆動歯車122および中間歯車123を介して従動歯121へ伝わり、ディスペンシングチューブ120を回転させることができる。なお、モーター101に固定される駆動歯車122と従動歯121との間に設けられる中間歯車の数は、1つに限定されず、2つ以上であっても、なくてもよい。
また、上述の実施形態では、ディスペンシングチューブ94(塗布部)は、バルーン30の外表面に対して垂直に配置されているが、垂直に配置されなくてよい。一例として、図6に示すように、ディスペンシングチューブ130(塗布部)の軸心Yが、バルーン30の外表面に対して水平に配置されてもよい。
また、塗布部の回転は、常に同一方向へ一定回転速度で回転する必要はなく、例えば、途中で回転速度を変化させたり、途中で停止させたり、途中で回転方向を変更(回転速度を負として回転)させたり、回転方向の変更を繰り返してもよい。塗布工程において、塗布部の回転速度を変化させれば、薬剤の結晶等がディスペンシングチューブ94に析出し難くなる条件へ変更することが可能となる。また、塗布工程において、塗布部の回転速度を変化させることで、塗布部とコーティング液Rとの接触の規則性を排除して、コーティング液Rに含まれる薬剤の結晶等を塗布部に対してより析出し難くすることができる。
また、上述の実施形態に係るバルーンコーティング方法では、バルーンカテーテル10は、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)のバルーンカテーテル10のバルーン30にコーティングを施しているが、図7に示すように、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)のバルーンカテーテル140のバルーン190にコーティングを施してもよい。バルーンカテーテル140は、基端側からハブ150、基部シャフト160、中間部分170、先端シャフト180、バルーン190および内管シャフト200を備えている。
ハブ150には、金属または一部の樹脂など比較的剛性の高い材質からなる基部シャフト160が、流体を流通可能に連通して接合されている。
基部シャフト160の先端側には、中間部分170が流体を流通可能に連通して設けられている。中間部分170の先端側には樹脂などの材質からなる比較的剛性の低い先端シャフト180が流体を流通可能に連通して設けられている。先端シャフト180の先端側には、バルーン190の基端部が流体を流通可能に連通して設けられている。
内管シャフト200は、先端シャフト180及びバルーン190の内部を同軸状に貫通している。内管シャフト200の先端部は先端チップ201となっており、先端チップ201はバルーン190の先端部より先端側へ延在している。先端チップ201は、バルーン190の先端部と液密を保った状態で接合されている。内管シャフト200の基端は、中間部分170から先端シャフト180にかけての一部分に設けられたガイドワイヤ開口部202まで延長され、液密を保った状態で接合されている。ガイドワイヤは、先端チップ201の先端開口部203を入口とし、ガイドワイヤ開口部202を出口として、内管シャフト200内に挿入可能である。
上述のラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル140であっても、バルーン190を拡張させて密封し、ハブ150を回転機構60に取り付け、支持台70により基部シャフト160、中間部分170および先端シャフト180の少なくとも一部を支持し、芯材61をガイドワイヤ開口部202から内管シャフト200内に挿入して、バルーンコーティング装置50に取り付けることができる。そして、前述の実施形態において説明した方法と同様の方法で、バルーン190の外表面にコーティング層を形成することができる。
10,140 バルーンカテーテル、
30,190 バルーン、
32 コーティング層、
50 バルーンコーティング装置、
60 回転機構、
80 移動機構、
90 塗布機構、
94,120,130 ディスペンシングチューブ(塗布部)、
100 塗布部回転機構、
R コーティング液、
X バルーンの軸心、
Y ディスペンシングチューブの軸心。
30,190 バルーン、
32 コーティング層、
50 バルーンコーティング装置、
60 回転機構、
80 移動機構、
90 塗布機構、
94,120,130 ディスペンシングチューブ(塗布部)、
100 塗布部回転機構、
R コーティング液、
X バルーンの軸心、
Y ディスペンシングチューブの軸心。
Claims (6)
- バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法であって、
前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液を塗布する塗布部を前記バルーンに対して軸心方向へ相対的に移動させるとともに、前記塗布部を当該塗布部の軸心を中心として回転させつつ前記コーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布工程を有するバルーンコーティング方法。 - 前記塗布工程において、前記バルーンの外表面に対して垂直に配置された前記塗布部によりコーティング液を塗布する請求項1に記載のバルーンコーティング方法。
- 前記塗布工程において、前記塗布部の回転速度を変化させる請求項1または2に記載のバルーンコーティング方法。
- バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング装置であって、
前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心として回転させる回転機構と、
前記バルーンに対して当該バルーンの軸心方向へ相対的に移動し、薬剤を含むコーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布部と、
前記塗布部を当該塗布部の軸心を中心として回転させる塗布部回転機構と、を有するバルーンコーティング装置。 - 前記塗布部は、前記バルーンの外表面に対して垂直に配置される請求項4に記載のバルーンコーティング装置。
- 前記塗布部回転機構は、前記バルーンの回転速度を変更可能である請求項4または5に記載のバルーンコーティング装置。
Priority Applications (1)
Application Number | Priority Date | Filing Date | Title |
---|---|---|---|
JP2013264705A JP2015119803A (ja) | 2013-12-21 | 2013-12-21 | バルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置 |
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Publications (1)
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JP2015119803A true JP2015119803A (ja) | 2015-07-02 |
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JP2013264705A Pending JP2015119803A (ja) | 2013-12-21 | 2013-12-21 | バルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置 |
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-
2013
- 2013-12-21 JP JP2013264705A patent/JP2015119803A/ja active Pending
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