JP2015119804A - バルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置 - Google Patents
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Abstract
【課題】バルーンにコーティングされる薬剤の厚さや形態型などを適切に設定可能なバルーンコーティング方法および装置を提供する。【解決手段】バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法および装置50であって、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94をバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動させるとともに、ディスペンシングチューブ94によってコーティング液Rをバルーン30の外表面に塗布する塗布工程と、ディスペンシングチューブ94の移動方向においてディスペンシングチューブ94と同一位置または後方に設けられ、バルーン30の外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液Rを吸引可能な吸引部105により吸引する吸引工程と、を有している。【選択図】図1
Description
本発明は、バルーンの表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置に関する。
近年、生体管腔内に生じた病変部(狭窄部)の改善のために、バルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、通常、長尺なシャフト部と、シャフト部の先端側に設けられて径方向に拡張可能なバルーンとを備えており、収縮されているバルーンを、細い生体管腔を経由して体内の目的場所まで到達させた後に拡張させることで、病変部を押し広げることができる。
しかしながら、病変部を強制的に押し広げると、内皮細胞が過剰に増殖して病変部に新たな狭窄(再狭窄)が発症する場合がある。このため、最近では、バルーンの外表面に狭窄を抑制するための薬剤をコーティングした薬剤溶出バルーンが用いられている。薬剤溶出バルーンは、拡張することで外表面にコーティングされている薬剤を病変部へ瞬時に放出し、薬剤を生体組織へ移行させることができ、これにより、再狭窄を抑制することができる。
バルーンに薬剤を含むコーティング層を形成する方法として、例えば、スプレー法、ドロップ法、糸引き法などがある。スプレー法は、薬剤を含むコーティング液を、バルーンに対して接触しないディスペンシングチューブから霧状に吹き付けた後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの外表面にコーティング層を形成する方法である。ドロップ法は、コーティング液を、バルーンに対して接触しないディスペンシングチューブから滴下した後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの外表面にコーティング層を形成する方法である。糸引き法は、コーティング液を、バルーンに接触する糸等を介してバルーンの外表面上に供給した後、コーティング液を乾燥させて、バルーンの外表面にコーティング層を形成する方法である。
上述した種々の方法によってバルーンにコーティング液を塗布する際には、バルーンを回転させつつ、コーティング液を供給するディスペンシングチューブや糸等の器具をバルーンの軸方向へ移動させることで、バルーンの外表面に連続的にコーティング液を塗布することができる(例えば、特許文献1を参照)。
バルーンの外表面にコーティング液を塗布すると、バルーンを構成するフィルムの表面の微妙な凹凸や表面張力等の影響により、コーティング液の厚さが不均一となる可能性がある。コーティング液が不均一となると、コーティング液が乾燥した後にバルーンにコーティングされる薬剤の厚さが不均一となり、薬効の観点で望ましくない。
ところで、バルーンの外表面にコーティングされる薬剤は、溶媒を揮発させる際の時間の長短等によって、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などの異なる形態型となり得る。結晶および非晶質は、必ずしもどちらが望ましいというものではなく、目的に応じて選択できることが望まれる。そして、コーティング液の塗布が不均一となると、溶媒の揮発する時間も不均一となり、バルーンにコーティングされる薬剤の形態型を適切に設定することが困難となる。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、バルーンにコーティングされる薬剤の厚さや形態型などを適切に設定可能なバルーンコーティング方法およびバルーンコーティング装置を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係るバルーンコーティング方法は、バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法であって、前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液を塗布する塗布部を前記バルーンに対して軸心方向へ相対的に移動させるとともに、前記塗布部によって前記コーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布工程と、前記塗布部の移動方向において前記塗布部と同一位置または後方に設けられ、前記バルーンの外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液を吸引可能な吸引部により吸引する吸引工程と、を有する。
また、上記目的を達成する本発明に係るバルーンコーティング装置は、バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング装置であって、前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心として回転させる回転機構と、前記バルーンに対して当該バルーンの軸心方向へ相対的に移動し、薬剤を含むコーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布部と、前記塗布部の移動方向において前記塗布部と同一位置または後方に設けられ、前記バルーンの外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液を吸引可能な吸引部と、を有する。
上記のように構成したバルーンコーティング方法は、バルーンの外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液を吸引可能な吸引部により吸引するため、バルーンの外表面の微妙な凹凸や表面張力等の影響によりバルーン上のコーティング液の厚さが不均一となっても、コーティング液の余剰分を吸引して取り除くことができ、コーティング液(コーティング層)を所望の厚さに調節することができる。さらに、コーティング液の厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。
前記吸引工程において、前記バルーンに対して前記吸引部を接触させずにコーティング液を吸引するようにすれば、吸引部とバルーンとの間の距離によって、コーティング液の厚さを調節することが容易となる。
前記吸引工程において、前記吸引部の前記バルーンからの距離および吸引力の少なくとも一方を変化させるようにすれば、バルーンに塗布されるコーティング液を任意の厚さに調節することが容易となる。さらに、コーティング液の厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。
前記吸引工程において、コーティング液の厚さを検知可能な検知部によって前記バルーンの外表面に塗布されたコーティング液の厚さを検知し、検知された結果に基づいて前記吸引部の前記バルーンからの距離および吸引力の少なくとも一方を変化させるようにすれば、コーティング液の厚さを自動で制御することができる。
また、上記のように構成したバルーンコーティング装置は、塗布部の移動方向において塗布部と同一位置または後方に設けられ、バルーンの外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液を吸引可能な吸引部を有するため、バルーンの外表面の微妙な凹凸や表面張力等の影響によりバルーン上のコーティング液の厚さが不均一となっても、コーティング液の余剰分を吸引部で吸引して取り除くことができ、コーティング液(コーティング層)を所望の厚さに調節することができる。さらに、コーティング液の厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。
前記吸引部の前記バルーンからの距離を変化させる吸引部移動機構を有するようにすれば、吸引部とバルーンとの間の距離によって、コーティング液の厚さを調節することが容易となる。
前記バルーンの外表面に塗布されたコーティング液の厚さを検知可能な検知部を有するようにすれば、バルーンに塗布されるコーティング液を任意の厚さに調節することが容易となる。さらに、コーティング液の厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
本発明の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーンの表面に薬剤を含むコーティング層を形成するものであり、図1に示すバルーンコーティング装置50により実施される。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10の生体管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
まず、バルーンカテーテル10の構造を説明する。バルーンカテーテル10は、図2に示すように、長尺なカテーテル本体部20と、カテーテル本体部20の先端部に設けられるバルーン30と、カテーテル本体部20の基端に固着されたハブ40とを有している。
カテーテル本体部20は、先端および基端が開口した管状体である外管21と、外管21の内部に配置される内管22とを備えている。外管21および内管22の間には、バルーン30を拡張するための拡張用流体が流通する拡張ルーメン23が形成されており、内管22の内側には、ガイドワイヤーが挿通されるガイドワイヤールーメン24が形成されている。
バルーン30は、先端側が内管22に接着され、基端側が外管21に接着されており、バルーン30の内部が、拡張ルーメン23に連通している。バルーン30の軸心X方向における中央部には、拡張させた際に外径が等しい円筒状のストレート部31が形成され、ストレート部31の軸心X方向の両側に、外径が徐々に変化するテーパ部33が形成される。そして、ストレート部31の外表面の全体に、薬剤を含むコーティング層32が形成される。なお、バルーン30においてコーティング層32を形成する範囲は、ストレート部31のみに限定されず、ストレート部31に加えてテーパ部33の少なくとも一部が含まれてもよく、または、ストレート部31の一部のみであってもよい。
ハブ40は、外管21の拡張ルーメン23と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する第1開口部41と、ガイドワイヤールーメン24を挿通させる第2開口部42とを備えている。第2開口部42には、血液の流出を抑制する止血弁43が設けられている。
バルーン30は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されることが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。
次に、バルーンコーティング装置50について説明する。バルーンコーティング装置50は、図1に示すように、バルーンカテーテル10を保持してバルーン30の軸心Xを中心として回転させる回転機構60と、バルーンカテーテル10を支持する支持台70と、バルーンカテーテル10の軸心Xの方向へ移動可能な移動台81を備える移動機構80と、バルーン30の外表面にコーティング液Rを塗布する塗布機構90と、コーティング液Rを吸引する吸引機構100と、コーティング液Rを検知するための検知部110と、バルーンコーティング装置50を制御する制御部120と、を有する。
回転機構60は、バルーンカテーテル10のハブ40を保持し、内蔵されるモーター等の駆動源によってバルーンカテーテル10を回転させる。バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤールーメン24内に芯材61が挿通されて保持されるとともに、芯材61によってコーティング液Rのガイドワイヤールーメン24内への流入が防止されている。また、バルーンカテーテル10は、拡張ルーメン23を覆うようにハブ40の第1開口部41にキャップ63が被せられ、バルーン30を拡張させた際に拡張用流体を密封することができる。
支持台70は、カテーテル本体部20を内部に収容して回転可能に支持する管状の基端側支持部71と、芯材61を回転可能に支持する先端側支持部72とを備えている。なお、先端側支持部72は、可能であれば、芯材61ではなしにカテーテル本体部20の先端部を回転可能に支持してもよい。
移動機構80は、バルーン30の軸心Xと平行な方向へ直線的に移動可能な移動台81を備えている。移動台81は、内蔵されるモーター等の駆動源によって、直線的に移動可能である。移動台81には、塗布機構90、吸引機構100および検知部110が載置されており、これらをバルーンカテーテル10の軸心Xに沿う両方向へ直線的に移動させる。
塗布機構90は、コーティング液Rを収容する容器92と、任意の送液量でコーティング液Rを送液する送液ポンプ93と、コーティング液Rをバルーン30に塗布するディスペンシングチューブ94(塗布部)とを備えている。
送液ポンプ93は、例えばチューブポンプであり、制御部120によって制御されて、容器92から供給チューブ95を介してコーティング液Rを吸引し、送液チューブ96を介してディスペンシングチューブ94へコーティング液Rを任意の送液量で供給することができる。送液ポンプ93は、移動台81に設置され、移動台81の移動により直線的に移動可能である。なお、送液ポンプ93は、コーティング液Rを送液可能であればチューブポンプに限定されず、例えばシリンジポンプであってもよい。
ディスペンシングチューブ94は、バルーン30の外表面へ向かって開口する開口部からコーティング液Rを吐出する円管状の部材である。ディスペンシングチューブ94の開口部は、ディスペンシングチューブ94の軸心Yと直交する面で開口するように形成されているが、これに限定されない。ディスペンシングチューブ94は、移動台81に固定される固定部材98に固定されており、移動台81に設置される送液ポンプ93とともに、バルーンカテーテル10の軸心Xに沿う両方向へ直線的に移動可能である。なお、ディスペンシングチューブ94は、コーティング液Rを供給可能であれば、円管状でなくてもよい。また、バルーン30にコーティング液Rを塗布する方法は、ディスペンシングチューブ94を用いる方法に限定されず、例えば、コーティング液Rを含ませた繊維材、織布、不織布、スポンジ等の多孔質体、ヘラ状の部材、ブラシ等を用いて塗布してもよい。
ディスペンシングチューブ94の内径は、特に限定されないが、例えば0.1〜0.4mmであり、バルーン30の大きさやコーティング液Rの粘度等に応じて適宜設定されることが好ましい。
ディスペンシングチューブ94の構成材料は、コーティング液Rを塗布できれば、特に限定されず、一般的な樹脂や金属等を適用できる。
吸引機構100は、バルーン30の外表面から乾燥前のコーティング液Rを吸引する吸引チューブ101と、吸引チューブ101へ吸引力を作用させる吸引ポンプ102と、吸引ポンプ102により回収されたコーティング液Rを容器92へ送液する回収チューブ103と、吸引チューブ101をバルーン30の外表面に対して近接または離間させる吸引部移動機構104とを備えている。
吸引ポンプ102は、例えばチューブポンプであり、制御部120によって制御されて、吸引チューブ101を介して任意の吸引量でコーティング液Rを吸引し、回収チューブ103を介して容器92へ送液する。吸引ポンプ102は、移動台81に設置され、移動台81の移動により直線的に移動可能である。なお、吸引ポンプ102は、コーティング液Rを送液可能であればチューブポンプに限定されず、例えばシリンジポンプであってもよい。
吸引チューブ101は、一端側の開口部が吸引ポンプ102に接続され、他端側の開口部が形成される吸引部105が、バルーン30の外表面の近傍に配置される。吸引部105は、ディスペンシングチューブ94の移動方向においてディスペンシングチューブ94の後方に設けられる。すなわち、ディスペンシングチューブ94がバルーン30の先端側から基端側へ移動する場合には、吸引部105は、ディスペンシングチューブ94に対してバルーン30の先端側に配置される。吸引部105のディスペンシングチューブ94からの離間距離は、バルーン30に塗布されるコーティング液Rがバルーン30上で完全に乾燥せずに吸引可能な範囲内で設定される。吸引部105のディスペンシングチューブ94からの離間距離は、特に限定されないが、例えば2mm〜10mmであり、コーティング液Rの溶媒の種類や塗布量等に応じて適宜設定されることが好ましい。なお、吸引部105の位置は、コーティング液Rを吸引可能であれば、ディスペンシングチューブ94の後方ではなしに、ディスペンシングチューブ94の移動方向においてディスペンシングチューブ94と同一位置に設けられてもよい。この場合、吸引部105は、ディスペンシングチューブ94と干渉しないように、ディスペンシングチューブ94に対してバルーン30の周方向へずれた位置に設けられる。
吸引チューブ101の内径は、特に限定されないが、例えば0.1〜0.3mmであり、バルーン30の大きさやコーティング液Rの粘度等に応じて適宜設定されることが好ましい。
吸引チューブ101の構成材料は、例えばポリテトラフルオロエチレン等を適用できるが、コーティング液Rを吸引できるのであれば、特に限定されない。
吸引部移動機構104は、吸引チューブ101の吸引部105の近傍を保持する保持部106と、移動台81に固定されて保持部106をバルーンの軸心Xと垂直な方向へ移動させる駆動部107とを備えている。駆動部107は、制御部120により制御されて、内蔵されるモーター等の駆動源によって保持部106を直線的に昇降移動させる。保持部106が昇降移動することで、吸引部105が、バルーン30の外表面に対して近接および離間可能である。
検知部110は、バルーン30に塗布されたコーティング液Rの厚さを検知するセンサであり、例えば変位計である。検知部110は、移動台81に固定されるが、バルーン30に塗布されたコーティング液Rの厚さを検知できるのであれば、固定場所は限定されない。
制御部120は、例えばコンピュータにより構成され、検知部110から信号を受信し、回転機構60、移動機構80および塗布機構90を統括的に制御する。
コーティング液Rは、薬剤、添加剤、および揮発性溶媒を含んでいる。薬剤は、生体へ作用する物質であり、水溶性薬剤および不水溶性薬剤のいずれであってもよいが、薬剤の血中への溶出を抑制するという観点から、不水溶性薬剤が好ましい。
不水溶性薬剤は、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は、脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤および抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻酔剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤としては、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセルおよびエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスは、それぞれ、同様の薬効を有する限り、それらの類似体および/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルとは類似体の関係にあり、ラパマイシンとエベロリムスとは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
本実施形態におけるコーティング液Rは、上記水不溶性薬剤を、好ましくは5〜60mg/mLの濃度で、より好ましくは20〜50mg/mLの濃度で、さらに好ましくは30〜40mg/mLの濃度で、含有する。
添加剤は、特に制限されないが、薬剤と固体分散体を形成するポリマー(重合体)及び/又は高分子または低分子の化合物を適用でき、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニル・メチル・エーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−メチル・メタクリル酸塩共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ナイロン12およびそのブロック共重合体、ポリカプロラクトン、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン・トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオニルセルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン・グリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、有機酸、有機酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、添加剤は、必ずしも設けられなくてもよい。
添加剤は、薬剤に対して少量であることが好ましく、マトリクスを形成しないことが好ましい。また、添加剤は、ミセル、リポソーム、造影剤、乳化剤、界面活性剤を含まないことが好ましいが、含まれてもよい。また、添加剤は、ポリマーを含まず低分子の化合物のみを含むことが好ましい。
揮発性溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン等の揮発性有機溶媒を少なくとも1種類を含むことが好ましい。また、揮発性有機溶媒に水等が混合されてもよい。
次に、上述したバルーンコーティング装置50を用いてバルーン30の表面に薬剤を含むコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法を説明する。
初めに、バルーンカテーテル10の第1開口部41から拡張用の流体をバルーン30内に供給し、バルーン30を拡張させた状態で第1開口部41にキャップ63を被せて密封し、バルーン30を拡張させた状態で維持する。なお、バルーン30を拡張させずに、バルーン30の表面にコーティング層32を形成することもでき、その場合には、拡張用の流体をバルーン30内に供給する必要はない。
次に、バルーンカテーテル10を支持台70に回転可能に設置し、ハブ40を回転機構60に連結する。
次に、移動台81を移動させて、図3に示すように、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置にディスペンシングチューブ94を位置させる。これにより、吸引部105は、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置よりもさらに先端側に位置した状態となる。吸引部105の鉛直方向位置は、吸引部移動機構104によって所定の位置に設定される。
次に、送液ポンプ93により送液量を調節しつつコーティング液Rをディスペンシングチューブ94へ供給し、吸引ポンプ102により所定の吸引力で吸引を開始して、回転機構60によりバルーンカテーテル10を回転させるとともに、移動台81を移動させて、ディスペンシングチューブ94を徐々に基端方向へ移動させる。これにより、ディスペンシングチューブ94から吐出されるコーティング液Rは、バルーン30の回転およびディスペンシングチューブ94の移動によって、バルーン30の外周面上に、螺旋を描きつつ連続的に隙間なく塗布される(塗布工程)。ディスペンシングチューブ94が軸心Xに沿って移動し、図4に示すように、吸引部105が、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も先端側の位置に到達すると、吸引部105によるコーティング液Rの吸引が可能となる。吸引部105は、予め設定された指定距離でバルーン30の外表面から離れて位置しているため、バルーン30の外表面の微妙な凹凸や表面張力等の影響によりコーティング液Rの厚さが不均一となって指定距離を超えると、コーティング液Rの余剰分が吸引部105によって吸引される。これにより、バルーン30に塗布されるコーティング液Rの厚さのバラツキを抑制して均一な塗布が可能となり、コーティング液R(コーティング層32)の厚さを調節できる。吸引されたコーティング液Rは、吸引チューブ101、吸引ポンプ102および回収チューブ103を通って容器92へ回収され、再び再利用される。なお、吸引されたコーティング液Rは、容器92へ回収されずに廃棄されてもよい。
また、上記の例では、コーティング液Rの厚さは基本的にディスペンシングチューブ94からの吐出量により調節し、塗布されたコーティング液Rの厚さが不均一となって指定距離を超えた場合にのみ、コーティング液Rの余剰分を吸引部105によって吸引しているが、バルーン30の外表面上に、所望の厚さを常に超えるようにディスペンシングチューブ94から多めにコーティング液Rを吐出し、吸引部105によってコーティング液Rを吸引することで、コーティング液Rを所望の厚さに調節することもできる。このようにすれば、塗布厚さが不均一となって指定距離を超えた場合にのみコーティング液Rの余剰分を吸引部105によって吸引する場合には、塗布厚さが所望の厚さよりも薄い場合に対応できないのに対し、ディスペンシングチューブ94から予め多めにコーティング液Rを塗布するため、塗布厚さが所望の厚さよりも薄くなることがなく、塗布厚さをより均一にすることができる。
また、上記の例では、吸引部105のバルーン30からの距離は一定のまま吸引を行っているが、吸引部移動機構104によって、吸引部105のバルーン30からの距離を変化させることもできる。吸引部105のバルーン30からの距離を変化させることで、コーティング液Rの厚さを、バルーン30の部位に応じて任意に変更することができる。また、バルーン30に塗布されたコーティング液Rが、バルーン30の外表面の微妙な凹凸や表面張力等の影響により不均一に塗布された場合に、この部位を検知部110からの信号により制御部120で判別して、この部位が吸引部105の下方を通過する際に吸引部105をバルーンに近づけて、選択的にコーティング液Rを吸引することもできる。
ディスペンシングチューブ94の移動速度は、例えば0.5〜10mm/秒であるが、これに限定されない。コーティング液Rのディスペンシングチューブ94からの吐出速度は、例えば0.05〜5μL/秒であるが、これに限定されない。バルーン30の回転数は、例えば20〜100rpmであるが、これに限定されない。吸引部105の吸引速度は、例えば0.05〜1μL/秒であるが、これに限定されない。
この後、バルーン30の表面に塗布された後に吸引部105に吸引されなかったコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発して、バルーン30の表面に薬剤および添加物を含むコーティング層32が徐々に形成される。揮発させる時間は、溶媒により適宜設定されるが、例えば、数秒〜十数秒程度である。
バルーン30の外表面にコーティングされる薬剤は、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などの異なる形態型となり得る。薬剤が結晶型となる場合でも、結晶構造が異なる種々の形態型が存在する。さらに、結晶や非晶質は、コーティング層32において規則性を有するように配置されてもよいが、不規則に配置されてもよい。そして、このような薬剤の形態型は、揮発性溶媒を揮発させる時間の長短や雰囲気温度により影響を受ける。したがって、上述のように、コーティング液Rの厚さを適切に調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に調節することが可能となる。
そして、バルーン30を回転させつつディスペンシングチューブ94および吸引部105を徐々に軸心Xの方向へ移動させることで、バルーン30の外表面に、コーティング層32を徐々に形成する。バルーン30においてコーティング層32を形成する最も基端側の位置をディスペンシングチューブ94が通過すると、図5に示すように、送液ポンプ93を停止させてコーティング液Rのディスペンシングチューブ94からの吐出を停止させる。この後、さらにバルーン30を回転させつつディスペンシングチューブ94および吸引部105を徐々に軸心Xの方向へ移動させ、吸引部105による吸引を継続する。図6に示すように、バルーン30においてコーティング層32を形成する最も基端側の位置を吸引部105が通過した後、吸引部105による吸引を停止させ、さらに回転機構60および移動機構80を停止させる。
コーティング層32の厚さは、例えば1〜50μmであるが、これに限定されず、バルーン30の寸法や薬剤の種類等に応じて適宜設定可能である。
この後、バルーンカテーテル10をバルーンコーティング装置50から取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、本実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法であって、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液Rを塗布するディスペンシングチューブ94(塗布部)をバルーン30に対して軸心X方向へ相対的に移動させるとともに、ディスペンシングチューブ94によってコーティング液Rをバルーン30の外表面に塗布する塗布工程と、ディスペンシングチューブ94の移動方向においてディスペンシングチューブ94と同一位置または後方に設けられ、バルーン30の外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液Rを吸引可能な吸引部105により吸引する吸引工程と、を有している。このため、バルーン30の外表面の微妙な凹凸や表面張力等の影響によりコーティング液Rの厚さが不均一となっても、コーティング液Rの余剰分を吸引して取り除くことができ、コーティング液R(コーティング層32)を所望の厚さに調節することができる。さらに、コーティング液Rの厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。そして、バルーン30に適切なコーティング層32が形成されることで、望ましい治療効果を期待できる。
また、吸引工程において、吸引部105をバルーン30に対して吸引部105を接触させずにコーティング液Rを吸引するため、吸引部105とバルーン30との間の距離によって、コーティング液Rの厚さを調節することが容易となる。
また、吸引工程において、吸引部105のバルーン30からの距離および吸引力の少なくとも一方を変化させれば、バルーン30に塗布されるコーティング液Rを任意の厚さに調節することが容易となる。さらに、コーティング液Rの厚さを調節することで、溶媒を揮発させる時間を調節することが容易となり、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどをより自在に設定することが可能となる。
また、吸引工程において、コーティング液Rの厚さを検知可能な検知部110によってバルーン30の外表面に塗布されたコーティング液Rの厚さを検知し、検知された結果に基づいて吸引部105のバルーン30からの距離および吸引力の少なくとも一方を変化させるようにすれば、コーティング液Rの厚さを自動で制御することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、上述した実施形態では、バルーン30の先端側から基端側へ向かってコーティング液Rを塗布しているが、基端側から先端側へ向かって塗布してもよい。
また、上述の実施形態では、ディスペンシングチューブ94および吸引部105をバルーン30に対して移動させているが、バルーン30を、ディスペンシングチューブ94および吸引部105に対して移動させてもよい。
また、上述の実施形態では、吸引部105をバルーン30に接触させずにコーティング液Rを吸引しているが、吸引部105をコーティング液Rに接触させてもよい。
また、上述の実施形態に係るバルーンコーティング方法では、バルーンカテーテル10は、オーバーザワイヤ型(Over−the−wire type)のバルーンカテーテル10のバルーン30にコーティングを施しているが、図7に示すように、ラピッドエクスチェンジ型(Rapid exchange type)のバルーンカテーテル140のバルーン190にコーティングを施してもよい。バルーンカテーテル140は、基端側からハブ150、基部シャフト160、中間部分170、先端シャフト180、バルーン190および内管シャフト200を備えている。
ハブ150には、金属または一部の樹脂など比較的剛性の高い材質からなる基部シャフト160が、流体を流通可能に連通して接合されている。
基部シャフト160の先端側には、中間部分170が流体を流通可能に連通して設けられている。中間部分170の先端側には樹脂などの材質からなる比較的剛性の低い先端シャフト180が流体を流通可能に連通して設けられている。先端シャフト180の先端側には、バルーン190の基端部が流体を流通可能に連通して設けられている。
内管シャフト200は、先端シャフト180及びバルーン190の内部を同軸状に貫通している。内管シャフト200の先端部は先端チップ201となっており、先端チップ201はバルーン190の先端部より先端側へ延在している。先端チップ201は、バルーン190の先端部と液密を保った状態で接合されている。内管シャフト200の基端は、中間部分170から先端シャフト180にかけての一部分に設けられたガイドワイヤ開口部202まで延長され、液密を保った状態で接合されている。ガイドワイヤは、先端チップ201の先端開口部203を入口とし、ガイドワイヤ開口部202を出口として、内管シャフト200内に挿入可能である。
上述のラピッドエクスチェンジ型のバルーンカテーテル140であっても、バルーン190を拡張させて密封し、ハブ150を回転機構60に取り付け、支持台70により基部シャフト160、中間部分170および先端シャフト180の少なくとも一部を支持し、芯材61をガイドワイヤ開口部202から内管シャフト200内に挿入して、バルーンコーティング装置50に取り付けることができる。そして、上述の実施形態において説明した方法と同様の方法で、バルーン190の外表面にコーティング層を形成することができる。
10,140 バルーンカテーテル、
30,190 バルーン、
32 コーティング層、
50 バルーンコーティング装置、
60 回転機構、
80 移動機構、
90 塗布機構、
94 ディスペンシングチューブ(塗布部)、
104 吸引部移動機構、
105 吸引部、
110 検知部、
R コーティング液。
30,190 バルーン、
32 コーティング層、
50 バルーンコーティング装置、
60 回転機構、
80 移動機構、
90 塗布機構、
94 ディスペンシングチューブ(塗布部)、
104 吸引部移動機構、
105 吸引部、
110 検知部、
R コーティング液。
Claims (7)
- バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法であって、
前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心に回転させつつ、薬剤を含むコーティング液を塗布する塗布部を前記バルーンに対して軸心方向へ相対的に移動させるとともに、前記塗布部によって前記コーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布工程と、
前記塗布部の移動方向において前記塗布部と同一位置または後方に設けられ、前記バルーンの外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液を吸引可能な吸引部により吸引する吸引工程と、を有するバルーンコーティング方法。 - 前記吸引工程において、前記バルーンに対して前記吸引部を接触させずにコーティング液を吸引する請求項1に記載のバルーンコーティング方法。
- 前記吸引工程において、前記吸引部の前記バルーンからの距離および吸引力の少なくとも一方を変化させる請求項1または2に記載のバルーンコーティング方法。
- 前記吸引工程において、コーティング液の厚さを検知可能な検知部によって前記バルーンの外表面に塗布されたコーティング液の厚さを検知し、検知された結果に基づいて前記吸引部の前記バルーンからの距離および吸引力の少なくとも一方を変化させる請求項3に記載のバルーンコーティング方法。
- バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング装置であって、
前記バルーンを当該バルーンの軸心を中心として回転させる回転機構と、
前記バルーンに対して当該バルーンの軸心方向へ相対的に移動し、薬剤を含むコーティング液を前記バルーンの外表面に塗布する塗布部と、
前記塗布部の移動方向において前記塗布部と同一位置または後方に設けられ、前記バルーンの外周面上に塗布されて乾燥する前のコーティング液を吸引可能な吸引部と、を有するバルーンコーティング装置。 - 前記吸引部の前記バルーンからの距離を変化させる吸引部移動機構を有する請求項5に記載のバルーンコーティング装置。
- 前記バルーンの外表面に塗布されたコーティング液の厚さを検知可能な検知部を有する請求項5または6に記載のバルーンコーティング装置。
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-
2013
- 2013-12-21 JP JP2013264706A patent/JP2015119804A/ja active Pending
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