JP2015115438A - Ntcサーミスタ素子 - Google Patents

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Kazuichi Onishi
一市 大西
洋一 川瀬
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Abstract

【課題】より緻密なサーミスタ膜を備えたNTCサーミスタ素子を提供すること。
【解決手段】NTCサーミスタ素子1は、基材3と、20nm以上500nm以下の粒径を持つ成膜原料を用いたエアロゾルデポジション法により、基材3に形成された無焼成のサーミスタ膜5と、サーミスタ膜5に形成された少なくとも一つの電極7と、を備えている。
【選択図】図1

Description

本発明は、エアロゾルデポジション法(以下、本明細書ではAD法という)により基材に成膜された無焼成のサーミスタ膜を有するNTCサーミスタ素子に関する。
従来のサーミスタ膜としては、例えば、下記の特許文献1に記載されたNTCサーミスタ厚膜がある。このNTCサーミスタ厚膜は、下記の工程(1)〜(3)により製造される。
(1)まず、準備工程において、所定のセラミックス粉末が容器に収容され、ガラスまたはセラミックス等の電気的に絶縁性を有する基材がステージに固定される。
(2)次に、容器内にキャリアガスが供給され、これによって、容器内でセラミックス粉末とキャリアガスとが混合される。
(3)次に、容器内からキャリアガスおよびセラミックス粉末からなるエアロゾルを移送させて、ステージに固定された基材にエアロゾルが噴射される。この間、ステージを移動させて、基材表面の広範囲にNTCサーミスタ厚膜が形成される。
特開2010−251757号公報
しかしながら、上記NTCサーミスタ厚膜は、0.5〜1.0μmの平均粒径を有しており、緻密さに欠けるという問題点があった。
それゆえに、本発明の目的は、より緻密なサーミスタ膜を備えたNTCサーミスタ素子を提供することである。
上記目的を達成するために、本発明の一局面は、NTCサーミスタ素子であって、基材と、20nm以上500nm以下の粒径を持つ成膜原料を用いたエアロゾルデポジション法により基材に形成された、無焼成のサーミスタ膜と、サーミスタ膜に形成された少なくとも一つの電極と、を備えている。
上記局面によれば、より緻密なサーミスタ膜を備えたNTCサーミスタ素子を提供することが可能となる。
本発明の一実施形態に係るNTCサーミスタ素子の斜視図である。 図1のNTCサーミスタ素子の三面図である。 図1のNTCサーミスタ素子の抵抗−温度特性の一例を示すグラフである。 図1のサーミスタ膜の成膜装置を示す模式図である。 成膜原料(No.1)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.1)の断面を表すSTEM画像である。 成膜原料(No.2)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.2)の断面を表すSTEM画像である。 成膜原料(No.3)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.3)の断面を表すSTEM画像である。 成膜原料(No.4)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.4)の断面を表すSTEM画像である。 成膜原料(No.5)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.5)の断面を表すSTEM画像である。 成膜原料(No.6)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.6)の断面を表すSTEM画像である。 成膜原料(No.7)を表すSEM画像と、この成膜原料から作製されたサーミスタ薄膜(評価サンプルNo.7)の断面を表すSTEM画像である。 本発明の変形例に係るNTCサーミスタ素子の斜視図である。 図6のNTCサーミスタ素子の等価回路図である。 図6のNTCサーミスタ素子の電流経路を示す図である。
《実施形態》
本発明の第一実施形態に係るNTCサーミスタ素子1の説明に先立ち、いくつかの図面に示すL軸、W軸、T軸を定義する。L軸、W軸およびT軸は互いに直交しており、基本的には、NTCサーミスタ素子1の左右方向(横方向)、前後方向(縦方向)および上下方向(厚さ方向)を示す。
《NTCサーミスタ素子1の構成》
図1は、NTCサーミスタ素子1の斜視図である。また、図2は、NTCサーミスタ素子1の三面図である。より具体的には、図2下段左側には、NTCサーミスタ素子1の正面図が示され、図2下段右側には、NTCサーミスタ素子1の側面図が示され、図2上段には、NTCサーミスタ素子1の上面図が示されている。
図1,図2において、NTCサーミスタ素子1は、基材3と、サーミスタ膜5と、電極7と、を備えている。
基材3は、上面、底面、前面、背面、左側面および右側面を有する略直方体形状を有する。この基材3において、L軸方向の寸法(以下、L寸という場合がある)およびW軸方向の寸法(以下、W寸という場合がある)は例えば0.4mmである。また、T軸方向の寸法(以下、T寸という場合がある)は例えば40μmである。ここで、L寸、W寸およびT寸はいずれも設計目標値であって、必ずしも正確に0.4mm、0.4mmおよび40μmとなるわけではない。言い換えると、L寸、W寸およびT寸はいずれも公差を持っている。なお、公差を持つ点については、サーミスタ膜5および電極7の寸法にも同様に当てはまる。
また、基材3は金属板または金属箔である。金属としては、銅(Cu)、アルミニウム(Al)、ニッケル(Ni)、銀(Ag)またはステンレスが例示される。
サーミスタ膜5は、基材3の上面全域を覆っており、無焼成の薄膜である。ここで、サーミスタ膜5のT軸方向の厚さは、本実施形態では7μmとする。このサーミスタ膜5は、典型的にはMn2NiO4スピネル相粉末をAD法により基材3の上面に高速噴射することで形成される。ここで、Mn2NiO4スピネル相粉末の一次粒子の粒径は、20nm以上500nm以下である。このようなサーミスタ膜5は、図3に示すように、NTC特性、つまり、周囲温度の上昇に対し自身の抵抗値が減少する負の抵抗−温度特性(換言すると、負の温度係数)を有する。また、本実施形態では、サーミスタ膜5のB定数は概ね3800Kとする。
再度、図1および図2を参照する。電極7は、ニクロム(Ni−Cr合金)層と、モネル(Ni−Cu合金)層と、銀(Ag)層と、を含んでいる。電極7のいずれの層も、スパッタリング、蒸着または印刷等の手法で形成される。より具体的には、ニクロム層は、サーミスタ膜5の上面に、サーミスタ膜5とオーミック接触するよう形成される。また、モネル層は、ニクロム層の上面に物理的に接触するよう形成される。ニクロム層およびモネル層は、例えば70nmの厚さを有する。また、銀層は、モネル層の上面に物理的に接触するよう形成され、例えば160nmの厚さを有する。かかる積層構造を有する電極7は、上方からの平面視で、例えば0.2mmの直径を有する略円形形状を有する。
かかる形状の電極7は、サーミスタ膜5の中央部分に形成される。より具体的には、サーミスタ膜5の上面の重心と、電極7の上面の中心とが、上方からの平面視で概ね一致するように、電極7は形成される。
《NTCサーミスタ素子1の製法》
以上のNTCサーミスタ素子1は、下記工程(1)〜(3)により製造される。
(1)まず、Mn2NiO4粉末を作製するために、試薬級のMn34およびNiOそれぞれの粉末が準備される。その後、(Mnのモル量)/(Niのモル量)が8/2となるように、準備された各粉末が秤量され混合される。かかる混合粉末は純水と共にジルコニア製容器に収容される。この容器内において、これら材料は、PSZ玉石を用いて約24時間ボールミルにより混合され粉砕され、これにより、スラリーを得る。このスラリーは乾燥させられた後、約850℃で約4時間仮焼され、これによって、仮焼粉が得られる。この仮焼粉は、再度、純水と共にジルコニア製容器に収容されて、PSZ玉石を用いてボールミルされる。これにより、サーミスタ膜5の成膜原料となるMn2NiO4スピネル相粉末が得られる。以上のように製造されたMn2NiO4粉末の微小な一次粒子は、20nm以上500nm以下の粒径を有する。
(2)まず、図4に示すような成膜装置50が準備される。この成膜装置50は公知の構成でよく、特許文献1にも同種の成膜装置が説明されている。かかる成膜装置50において、まず、エアロゾル発生器52に、上記工程(1)で得られた成膜原料が収容される。また、ステージ54が真空チャンバ56内に、少なくとも二方向に移動可能に取り付けられている。このステージ54に、基材3(図1を参照)となるべき金属箔が設置される。この金属箔は、略矩形形状を有する。金属箔において、L寸は約30mmで、W寸は約20mmで、T寸は約40μmである。
次に、高圧のキャリアガス(例えばアルゴン(Ar))がガス供給装置58からエアロゾル発生器52に供給される。すると、エアロゾル発生器52の内部でキャリアガスと成膜原料とが混合され、エアロゾルとしてエアロゾル発生器52から配管510に送り出され、その先端に設けられたノズル512に向けて案内される。このノズル512からは、エアロゾルがステージ54に取り付けられた金属箔に向けて高速で噴射される。その結果、成膜原料の微粒子が金属箔に衝突して破砕されて、サーミスタ膜5(図1参照)となるべき薄膜が金属箔に形成される。この間、ステージ54は、L軸方向およびW軸方向に所定ピッチで移動し、その後停止するというように繰り返し制御されて、ノズル512に対し相対的に移動する。これにより、金属箔の表面全域に薄膜が形成されたマザー基材が得られる。
ここで、より詳細な成膜条件を説明する。
ノズル512の噴出孔の直径:約0.8mm
ノズル512および金属箔間の距離:約7mm
キャリアガスとしてのArの供給量:約10L/min
ステージ54に対するノズル512の相対速度:約1mm/sec
ノズル512の移動ピッチ:約0.3mm
サーミスタ膜の厚さ:約7μm
(3)上記工程(2)で得られたマザー基材の薄膜上には、スパッタリング等の手法にて、例えば直径が0.2mmの電極が一定間隔で形成される。ここで、L軸方向(またはW軸方向)に隣り合う電極の中心間距離は約0.4mmである。その後、L寸およびW寸が約0.4mmとなるように、マザー基材はカットされて、図1に示すようなNTCサーミスタ素子1が完成する。
《NTCサーミスタ素子1の作用・効果》
本件発明者は、成膜原料における一次粒子の粒径を変更して、サーミスタ素子の評価サンプルを作製した。具体的には、以下の表1に示すように、七種の成膜原料が準備された。
ここで、図5A〜図5Gの左側には、上記成膜原料No.1〜No.7を、電界放射型走査電子顕微鏡(日本電子社製,型番:JSM−7500FA)を用いて40000倍の倍率で撮影した画像(以下、FE−SEM画像という)が示されている。参考のため、各FE−SEM画像の右下に横長の白いスケールが示されているが、この左端から右端までが100nmを表している。
本件発明者はまた、上表1に示す七種の成膜原料を個別的に用いて、上記製法に従ってサーミスタ膜を作製した。以下、成膜原料No.1を用いて作製したサーミスタ膜を評価サンプルNo.1という。同様に、成膜原料No.2〜No.7で作製したサーミスタ膜を評価サンプルNo.2〜No.7という。ここで、図5A〜図5Gの右側には、評価サンプルNo.1〜No.7を、走査透過型電子顕微鏡(HITACHI社製,型番:HD−2300A)を用いて300000倍の倍率で撮影した画像(以下、STEM画像という)が示されている。参考のため、各STEM画像の右下には、合計十一個の目盛が示されているが、左端の目盛から右端の目盛までが100nmを表している。
ここで、図5Aを参照する。図5A左側に示すように、一次粒子の粒径が約3μmと巨大であるため、評価サンプルNo.1の断面には、図5A右側に白い部分で示されるような空隙(ポア)と共に、大きくかつ破砕されていないグレインも多く観察される。このように、評価サンプルNo.1のサーミスタ膜では、緻密さに欠け、要求される抵抗−温度特性を得ることができない。
次に、図5Bを参照する。図5B左側に示すように、一次粒子の粒径が約1〜2μmと大きいため、評価サンプルNo.2の断面には、図5B右側において白い部分で示されるような空隙(ポア)と共に、大きくかつ破砕されていないグレインも多く観察される。このように、評価サンプルNo.2のサーミスタ膜もまた、緻密さに欠け、要求される抵抗−温度特性を得ることができない。
次に、図5Cを参照する。まず、図5C左側に示すように、一次粒子の粒径は、図5A,図5Bの場合と比較すると小さくなってはいるものの、約0.3〜0.8μmと大きい。よって、図5C右側に示すように、評価サンプルNo.3の断面には、グレインが破砕されて小さくなっている様子が観察されるが、未だ多くの空隙(ポア)が観察される。このように、評価サンプルNo.3のサーミスタ膜もまた、緻密さに欠け、要求される抵抗−温度特性を得ることができない。
次に、図5Dを参照する。まず、図5D左側に示すように、一次粒子の粒径は、図5A,図5Bの場合と比較すると小さくなってはいるものの、この成膜原料には約0.7〜1.0μmと大きな粒子が多く含まれる。よって、図5D右側に示すように、評価サンプルNo.4の断面には、図5Cの場合と同様、多くの空隙(ポア)が観察される。このように、評価サンプルNo.4のサーミスタ膜もまた、緻密さに欠け、要求される抵抗−温度特性を得ることができない。
次に、図5Eを参照する。まず、図5E左側に示すように、一次粒子の粒径は、図5A〜図5Dのそれと比較して微細化されてはいるものの、この成膜原料は約0.1〜0.6μmの一次粒子を含んでいる。換言すると、この成膜原料は、若干大きな一次粒子を含む。以上のことから、図5E右側に示すように、評価サンプルNo.5の断面において、グレインは微細化され、殆ど視認不能になっている。つまり、評価サンプルNo.5は概ね緻密な状態にある。しかし、この断面には、若干の空隙(ポア)が観察される。このように、評価サンプルNo.5のサーミスタ膜は、概ね良好な状態にあるが、後述の評価サンプルNo.6,No.7と比較すると品質面で若干及ばない。
次に、図5Fを参照する。まず、図5F左側に示すように、一次粒子の粒径は、図5A〜図5Eのそれと比較するとかなり微細化されており、約30〜500nmの一次粒子を含んでいる。かかる成膜原料から作製された評価サンプルNo.6の断面全域が、図5F右側に示すように、均一で緻密なグレインにて占められる。このように、成膜原料No.6によれば、高品質なサーミスタ膜を提供することが可能となる。
次に、図5Gを参照する。まず、図5G左側に示すように、成膜原料No.7において、一次粒子の粒径は、約20〜350nmというように、成膜原料No.6と比較してさらに微細化されている。よって、評価サンプルNo.7の断面全域が、図5G右側に示すように、均一で緻密なグレインにて占められる。このように、成膜原料No.7によれば、高品質なサーミスタ膜を提供することが可能となる。
《変形例》
次に、図6を参照して、上記実施形態の変形例に係るNTCサーミスタ素子10について説明する。図6において、NTCサーミスタ素子10は、基材13と、サーミスタ膜15と、二個の電極17a,17bと、を備えている。
基材13は、前述の基材3と同様、略直方体形状を有する金属板または金属箔である。ただし、この基材13は、寸法面で、基材3とは異なる。具体的には、基材13に関しては、L寸の設計目標値は約0.6mmであり、W寸の設計目標値は約0.3mmであり、T寸の設計目標値は約30μmである。
サーミスタ膜15は、前述のサーミスタ膜5と同様の成膜原料を用いたAD法により基材13の上面全域を覆うように形成された、無焼成の薄膜である。ただし、サーミスタ膜15の厚さは、本実施形態では15μmである。
二個の電極17はいずれも、前述の電極7と同様の積層構造を有しており、この電極7と同様の手法でサーミスタ膜15の上面に形成される。より具体的には、上方からの平面視で、二個の電極17は略矩形形状を有しており、L軸方向に所定距離だけ離して形成される。
《NTCサーミスタ素子10の等価回路》
ここで、図7を参照して、NTCサーミスタ素子10の等価回路について説明する。図7において、二個の電極17a,17bの一方が入力端子となり、他方が出力端子となる。そして、抵抗R1、R2は、サーミスタ膜15によって形成されるとともに、金属製の基材13を介して電気的に直列に接続される。
従って、二個の電極17a,17bの間に電圧Vを印加すると、電極17aおよび基材13間に電界が形成され、さらに、電極17bと基材13間に電界が形成される。よって、NTCサーミスタ素子10では、図8中の矢印に示すような電流経路Iが生じる。
《付記1》
上記実施形態または変形例では、サーミスタ膜5,15はMn−Ni系であるとして説明した。しかし、サーミスタ膜5,15は、これに限定されず、マンガン(Mn)、ニッケル(Ni)、鉄(Fe)、コバルト(Co)および銅(Cu)等の遷移元素のグループから選ばれた二種から四種の酸化物を混合し仮焼した仮焼粉を用いたAD法でサーミスタ膜5は形成されれば良い。
《付記2》
上記実施形態または変形例において、基材3,13のサイズは、上記に限定されず、設計仕様に応じて適宜適切されればよい。
本発明に係るNTCサーミスタ素子は、緻密で均一なサーミスタ膜を備えており、温度センサ等に好適である。
1,10 NTCサーミスタ素子
3,13 基材
5,15 サーミスタ膜
7,17a,17b 電極

Claims (5)

  1. 基材と、
    20nm以上500nm以下の粒径を持つ成膜原料を用いたエアロゾルデポジション法により前記基材に形成された、無焼成のサーミスタ膜と、
    前記サーミスタ膜に形成された少なくとも一つの電極と、を備えた、NTCサーミスタ素子。
  2. 前記基材は金属からなる、請求項1に記載のNTCサーミスタ素子。
  3. 50μm以下の厚さを有する、請求項1または2に記載のNTCサーミスタ素子。
  4. 前記成膜原料は、MnおよびNiを含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のNTCサーミスタ素子。
  5. 前記成膜原料において、Mn:Niのモル比は8:2である、請求項4に記載のNTCサーミスタ素子。
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