JP2015113627A - 防音壁 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】枠体12内に防音板回転軸15を介して回動自在に支持されて、該枠体12で包囲された開口部11を開放又は閉鎖するように設けられた防音板13と、防音板13の回転モーメントを小さくするとともに、該防音板13が風力により開放された際、開口部11を閉鎖する方向へ該防音板13に回転トルクを与える防音板開閉補助機構100とを、を具備する。
【選択図】図2
Description
さらに、強風が収まり、防音板を完全に閉鎖(復元)させようとする場合には相当程度の回転トルクが必要となり、該防音板が有している自重だけでは開口部を閉鎖することが困難であった。
高速化が進展し、沿線に高階の建築物が増加すると、防音壁を大幅に高くする必要がある。既設の防音壁の上に防音板(基本、透明PC)を設置して高さを積みますことを「嵩上げ」と言い、新設の構造物に対して防音壁を高くするか、又はこの嵩上げにより、防音壁を高くしている。
しかしながら、防音壁を高くすると、風(自然風)による荷重とモーメントが増大し、大幅(目安としてレールレベル上、3.5m以上)に高くすると既設構造物の応力が許容値を上回り、安全に支障の恐れがある、このため、これまでは防音壁を高くすることを断念するか、構造物を大幅に補強する必要がある。
そして、このような不具合を解決するために、特許文献2に示す技術が提案されたが、その一方で、強風が収まり、防音板を完全に閉鎖(復元)させようとする場合には相当程度の回転トルクが必要となり、該防音板が有している自重、既存の磁石だけでは開口部を閉鎖することが困難であり、その後の鉄道運転に支障を来す場合もあった。
具体的には、防音板開閉補助機構として、防音板の回転モーメントを小さくするために該防音板の中央より上部位置に水平な防音板回転軸を配置し、かつ該防音板の閉鎖方向に磁力を発生させる防音板吸着体を設置するようにした。
そして、このような防音板開閉補助機構により、開口部が閉鎖状態にあるときに、防音板から音漏れしないように該防音板の姿勢を保持した状態でありながら、強風時においては防音板の回転運動を円滑にでき、かつ風力により開放された後の該防音板を速やかに閉鎖することができる。また、防音板開閉補助機構として、防音板回転軸の設置位置を調整し、かつ防音板吸着体などを採用することで、簡単かつ低コストに防音壁を実現することが可能となる。
図1は、実施形態に係る防音壁10の外観を示す概略斜視図、図2は図1の正面図、図3は図2(B)を矢印III方向から視た側面図である。
これらの図に示すように、防音壁10は、内部に開口部11を有する枠体12と、この枠体12の開口部11に設けられた防音板13とを有するものであって、該防音板13は、枠体12に設けられた軸受け14により矢印(イ)−(ロ)方向に回動自在に支持されている。
また、このような防音壁10は、図1に詳細は示されないが、鉄道が走行する鉄道軌道の側方の構造物上あるいは構造物上に敷設されている防音側壁上に設置される。
なお、この軸受け14の設置位置は、防音板13の回転モーメントを小さくするとともに、防音板13が風力により開放された際、開口部11を閉鎖する方向(矢印(イ)方向)に該防音板13に回転トルクを与える防音板開閉補助機構100を構成している(後述する)。
そして、軸受け14によって水平方向に沿う防音板回転軸15の軸線15Aを中心として、防音板13が、図2(A)で示す閉鎖位置と、図2(B)及び図3で示す開放位置との間で矢印(イ)-(ロ)で示すように開閉可能となる。
この第1防音板吸着体M1は、枠体12の開口部11に臨む側部枠12Bに配置された複数の磁石16と、防音板13の本体部13Aの側部に沿って設けられた被吸着側の複数の磁石17と、からなるものであって、これら磁石16と磁石17とは防音板13の閉鎖時に互いに近接しかつ対向した位置関係にある。
そして、これら磁石16と磁石17との磁気的吸着作用によって、防音板13の閉鎖時に該防音板13に対して回転トルクを与える(後述する)。なお、本例では、枠体12側に磁石16を設け、防音板13側に磁石17を設けているが、いずれか一方を磁性体にしても良い。
そして、これら磁石18と磁石19との磁気的吸着作用によって、防音板13の閉鎖直前時に該防音板13に対して回転トルクを与える(後述する)。なお、本例では、枠体12側に磁石18を設け、防音板13側に磁石19を設けているが、いずれか一方を磁性体にしても良い。
そして、防音板13と下部枠12Aとの間には通気空間20が形成される。そうすると、防音板13に吹き付ける強風が、この通気空間20を通って防音板13の一方側から他方側へ抜けるので、防音板13に作用する風荷重が緩和される。
これにより防音板13が当初の閉鎖位置に復元され、軌道での鉄道運転が通常通り可能となる。
まず、防音板開閉補助機構100を設置するに至った背景について説明する。
運転規制としては、例えば、一般区間では風速30m/s、指定区間では25m/sの状態が30分間保たれれば運転規制が解除される。最近ではほとんど区間で25m/sのルールが適用されており、すなわち、防音板13は25m/sの風が吹く中、復元することが求められている。
ここで、図4(B)の防音板53は、自重のモーメントにより閉鎖位置に復元することとしているが、25m/sの風は平板受風面において0.77kPaの風圧を与え、これによるモーメントはどのような構造を考慮した場合でもはるかに自重のモーメントを超える。
すなわち、自重だけでは戻すことができないという問題があり、そこで、本発明では所定の状況で容易に防音板を復元させる防音板開閉補助機構100を付与している。
しかしながら、一般に風速と風圧の関係は複雑で、厳密に求めるのは煩雑な手続きを経なければならず、このため、本実施形態では、次のようなシンプルな仮定の下、基礎的な関係式で換算することにする。
(1)防音板となる受風板は、単純平板(2次元)である。
(2)風は防音板に垂直に一様に吹く付けるものとする。
そして、このような前提の下では、防音板に作用する風圧pは次式で与えられる。
しかるに現状、図5(A)に図示されるように、そのような大きなトルクを与える復元条件はない。そこで、小さなトルクでも防音板を復元させられるように、次のような工夫をする。
既設構造物に対しては自然風がそのまま負荷を与える。構造物の分野では設計風荷重として3kPa(平板受風面を前提とすると50m/s)を設計値としている。
既設構造物の強度照査を行った結果、既設構造物および嵩上げ部を含めて嵩上げ部の荷重が次式で与えられる値以下であれば、構造物の安全が担保される知見が得られた。
ちなみに、現時点で想定している嵩上げモデル(既設防音壁がレールレベル上2mで、その上に3m嵩上げ)ではPL=1.5kPaと求められている。
数5で示される式による荷重Fは、常に数4で示される式のFL以下になる必要がある。すなわち、防音板は、次式のθL以上(=θLでよい)開く必要がある。
しかるに、防音板に復元のためのトルクを加えると、そのトルクは強風時でも作用し続けるために、風によるモーメント(+防音板自重によるモーメント)とある角度で釣り合い。従って、防音板に強すぎる復元トルクを与えると防音板はθLまで開かず、強風時に構造物の安全を守れない状況が発生しかねない。
(1)開けトルク+自重モーメントは1.5kPa(35m/s)以上の強風に対して風モーメント以下の値であること。そして3kPa(50m/s)のときθLまで開くこと、
(2)閉じトルク+自重モーメントは25m/s(0.77kPa)の風モーメント以上であること、である。
一方、復元条件となる閉じトルクは原理的に開けトルクと同様の特性を持つ(開けトルクより若干低い値となる)とされる中、防音板が戻るべき25m/sの風モーメントを上回る必要があるが、上述のように開けトルクが理想的な特性を持っている場合には、風によるモーメントが小さくてすむので、図4(B)に示す構成により、風によるモーメントを小さくすることより、閉じトルクが25m/sによる風モーメントを上まわる状況を作ることができる。
(1)25m/sの風モーメントが閉じトルクが下回らなければならないので、風モーメントが小さくなるよう、防音板回転軸15の位置を防音板13の中心に近づけていく。
(2)しかしながら防音板回転軸15を防音板13の中心に近づけすぎると強風時の風モーメントが開けモーメントを下回るので、θL以下の範囲で風モーメントが開けモーメントを上回る位置でとどめる。こちらの条件の方が優先させる。
(3)その上で、閉じトルクと25m/sの風モーメントとの大小関係を検討し、不足する分を次項で示す防音板13の側面に、防音板吸着体M1、M2を配置して磁石磁力吸着力で補う。
図1〜図3に示される磁石16〜19の配置については、現実の防音板13を設計する上で個々に定めていく必要がある。ここではまず、磁石16〜19の配置位置の設計の考え方について述べる。
図8(A)を参照して、まず、防音壁10の構造について再度、説明する。図8は、図1〜図3の防音壁10を簡略的に示したものであって、下部枠12A、側部枠12B、上部枠12Cからなる枠体12と、この枠体12の開口部11内に軸受け14により回動自在に設けられた高さ「h」の防音板13とを具備する。
軸受け14は、枠体12の左右両側に位置する側部枠12Bに配置されるものであって、該軸受け14に軸支された防音板回転軸15より、防音板13を回転自在に支持する。
なお、軸受け14に軸支された防音板回転軸15は、その軸心15Aが枠体12の高さ中央部(符号Oで示す)より若干離れて位置設定されている。また、防音板13としては、具体的には、透明のPC板の周囲に金属製の内枠13B(PC板の剛性補強などの目的から)が設置された構成とされ、その周囲に枠体12となる金属製外枠が設置されている。
また、第2防音板吸着体M2を構成している磁石18、19は、枠体12の下部枠12Aと、防音板13の内枠13B底辺との相対する位置に離して設置される。これら磁石18、19は、通常時には防音板13を閉じさせるためのものであるが、強風で開放した後は、防音板13が閉じる直前(開放角が0に近い)では防音板復元に寄与するものである。
なお、第1防音板吸着体M1を構成する磁石16、17は、図8(B)に示すように、枠体12の側部枠12Bと防音板13の側辺との相対する位置において、例えば、防音板回転軸15を基準として、符号(1)で示す中心軸位置(0.02h)、符号(2)で示す0.1hの位置、符号(3)で0.25hの位置に設置可能である。
図9(A)は、防音板回転軸15の近くに(軸心15Aから長さa離れた位置に)第1防音板吸着体M1からなる磁石16、17を1対(第1磁石)配置することを示す。この例は、防音板13の閉じ力がほんの少し不足している場合を想定している。これら図9では防音板13中心に合わせているが、目安としてそこを選定したもので、実際の設置位置は図8の符号(1)で示される位置に則するものである。
図9(C)は複数対の磁石16、17を配置した例であるが、復元性を高めるために、複数対の磁石16、17を、防音板回転軸15に近い位置で密に配置し、該防音板回転軸15から離れるに従って疎に配置している。
図9(A)〜図9(C)のパターンでは、防音板回転軸15の軸心15Aの下側に各対の磁石16、17を配置しているが、防音板13を復元させる際の閉じ力が不足する場合、又は吸着力の小さい磁石16、17である場合には、図9(D)〜図9(F)に示すように、防音板回転軸15の軸心15Aを基準として、防音板13の上側に対称となるように、各対の磁石16、17を配置しても良い。
そして、図11に示すように、防音板13を復元させる場合には、特に防音板13の角度(θ)が「0〜10°」の範囲において、閉じ方向に強いトルク(復元トルク)が発生し、これにより防音板13を速やかに復元させることができる。
具体的には、防音板開閉補助機構100として、防音板13の回転モーメントを小さくするために該防音板13の中央より上部位置に水平な防音板回転軸15を配置し、かつ該防音板13の閉鎖方向に磁力を発生させる防音板吸着体M1、M2を設置するようにした。
そして、このような、防音板開閉補助機構100により、枠体12の開口部11が閉鎖状態にあるときに、防音板13から音漏れしないように該防音板13の姿勢が保持された状態でありながら、強風時における防音板13の回転運動を円滑にでき、かつ風力により開放された後の該防音板13を速やかに閉鎖することができる。また、防音板開閉補助機構100として、防音板回転軸15の設置位置を調整し、かつ防音板吸着体M1、M2などを採用することで、簡単かつ低コストに防音壁10を実現することが可能となる。
このドアクローザは、ばね定数が最適に設定されたバネが内蔵されており、防音板13を閉鎖する方向(矢印(イ)方向)に付勢するものである。さらに、このドアクローザは、防音板13が開放する際には機能せず、防音板13が閉鎖する際にのみ、防音板13の本体部13Aの一部に係合して、該防音板13を閉じる方向に復元トルクを発生させるカム機構/リンク機構を具備するものである。
11 開口部
12 枠体
12A 下部枠
12B 側部枠
12C 上部枠
13 防音板
14 軸受け
15 防音板回転軸
16 磁石
17 磁石
18 磁石
19 磁石
M1 防音板吸着体
M2 防音板吸着体
100 防音板開閉補助機構
Claims (8)
- 枠体内に防音板回転軸を介して回動自在に支持されて、該枠体で包囲された開口部を開放又は閉鎖するように設けられた防音板と、
前記防音板の回転モーメントを小さくするとともに、前記防音板が風力により開放された際、前記開口部を閉鎖する方向へ該防音板に回転トルクを与える防音板開閉補助機構と、を具備することを特徴とする防音壁。 - 前記防音板回転軸は、前記防音板の中央より上部位置に配置された水平軸からなることを特徴とする請求項1に記載の防音壁。
- 前記防音板開閉補助機構は、前記枠体と前記防音板との間に配置されて、前記防音板が開放された際、該防音板を閉鎖する方向に磁力を発生させる防音板吸着体をさらに備えることを特徴とする請求項1又は2のいずれか1項に記載の防音壁。
- 前記防音板吸着体は、前記枠体と前記防音板との対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項3に記載の防音壁。
- 前記防音板吸着体は、前記枠体の側部枠と前記防音板との対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項4に記載の防音壁。
- 前記防音板吸着体は、前記枠体の下部枠と前記防音板との対向する位置に設けられていることを特徴とする請求項4又は5のいずれか1項に記載の防音壁。
- 前記防音板開閉補助機構は、前記防音板と前記枠体との間に設けられて、前記防音板が開放された際、該防音板を閉鎖する方向に磁力を発生させるドアクローザからなることを特徴とする請求項1〜6のいずれか1項に記載の防音壁。
- 前記防音板開閉補助機構では、前記防音板の自重モーメント、想定される風モーメント等に基づき開けトルク及び閉じトルクを設定し、これらトルクの値により、前記防音板回転軸、磁石等の配置を決定することを特徴とする請求項1〜7のいずれか1項に記載の防音壁。
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