JP2015113335A - 四塩化炭素の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明は、難分解性の四塩化炭素を脱塩素化する方法及びこれにより脱塩素化物を製造する方法に関する。
四塩化炭素は難分解性であり、強い温室効果及び環境毒性を持つため、その製造は種々の法律で規制されている。
しかしながら、四塩化炭素は塩化メチレンなどの化学製品の製造に伴い、しばしば多量に副生する。
そのため、副生する四塩化炭素を低コストで処理する技術が必要とされている。
しかしながら、四塩化炭素は塩化メチレンなどの化学製品の製造に伴い、しばしば多量に副生する。
そのため、副生する四塩化炭素を低コストで処理する技術が必要とされている。
そこで、例えば、四塩化炭素と硫化水素アルカリ金属及び/又は硫化アルカリ金属を相間移動触媒の存在下で、反応させることを特徴とする四塩化炭素からクロロホルムを製造する四塩化炭素の処理方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、四塩化炭素をメタン及び/又は部分塩素化メタンと気相無触媒で反応させる四塩化炭素の処理方法において、四塩化炭素とメタン及び/又は部分塩素化メタンとを反応させる際に同時に塩素をフィードすることを特徴とする四塩化炭素の処理方法も提案されている(特許文献2参照)。
しかしながら、上記の如き従来技術においては、高温、高圧を必要としたり、腐食性、可燃性、揮発性あるいは強毒性の薬品を必要としたりするなどのデメリットがあった。
そこで、本発明は、高温、高圧条件が不要で、かつ腐食性、可燃性、揮発性あるいは強毒性の薬品を用いることも不要な四塩化炭素の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者は、上記課題を解決するために、鋭意検討を行った結果、四塩化炭素に対して特定のイオン液体を作用させることにより、高温、高圧条件や腐食性、可燃性、揮発性あるいは強毒性の薬品の使用を要することなく、四塩化炭素を脱塩素化できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明にかかる四塩化炭素の脱塩素化方法は、四塩化炭素に対し、下記一般式(1)で表されるイオン液体を反応させることにより、四塩化炭素を脱塩素化する工程を含む、ことを特徴とする。
また、本発明にかかる脱塩素化物の製造方法は、四塩化炭素を原料とし、上記脱塩素化方法によって前記四塩化炭素を脱塩素化することにより脱塩素化物を製造する、ことを特徴とする。
本発明によれば、高温、高圧条件や、腐食性、可燃性、揮発性あるいは強毒性の薬品の使用を要することなく、四塩化炭素を脱塩素化することができる。
以下、本発明にかかる四塩化炭素の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法の好ましい実施形態について詳しく説明するが、本発明の範囲はこれらの説明に拘束されることはなく、以下の例示以外についても、本発明の趣旨を損なわない範囲で適宜変更実施し得る。
〔四塩化炭素〕
本発明の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法は、四塩化炭素に対して適用される。
本発明の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法は、四塩化炭素に対して適用される。
四塩化炭素は、温室効果や環境毒性を有するために種々の法律で規制されているにもかかわらず、化学製品の製造においてしばしば副生するものであり、難分解性であることから、脱塩素化が強く望まれるものである。
〔イオン液体〕
本発明の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法に用いるイオン液体は、下記一般式(1)で表される。以下、下記一般式(1)で表されるイオン液体を、イオン液体(1)と称することがある。
本発明の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法に用いるイオン液体は、下記一般式(1)で表される。以下、下記一般式(1)で表されるイオン液体を、イオン液体(1)と称することがある。
上記一般式(1)において、R1〜R4は、それぞれ独立して、水素原子の一部が置換されていてもよいアルキル基もしくはアリール基である。例えば、R1〜R4の水素原子の一部は、フッ素などにより置換されていてもよい。
上記水素原子の一部が置換されていてもよいアルキル基としては、例えば、1個〜18個の炭素数を有する直鎖状又は分岐鎖状のアルキル基やパーフルオロアルキル基が例示され、具体的には、メチル基、エチル基、n−プロピル基、iso−プロピル基、n−ブチル基、iso−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、iso−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−オクチル基、n−デシル基、n−ドデシル基、n−テトラデシル基、n−オクタデシル基、トリフルオロメチル基、ペンタフルオロエチル基、ヘプタフルオロ−n−プロピル基、ヘプタフルオロ−iso−プロピル基、ノナフルオロ−n−ブチル基などが挙げられる。
上記水素原子の一部が置換されていてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基やペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
好ましくは炭素数3〜18の直鎖状のアルキル基であり、特に好ましくはn−ブチル基である。
上記水素原子の一部が置換されていてもよいアリール基としては、例えば、フェニル基やペンタフルオロフェニル基などが挙げられる。
好ましくは炭素数3〜18の直鎖状のアルキル基であり、特に好ましくはn−ブチル基である。
また、上記一般式(1)において、Aは、リン原子又は窒素原子である。
なお、上記一般式(1)において、ギ酸イオンのHは、軽水素(1H)に限らず、重水素(2H)であってもよい。
ギ酸イオンの水素が重水素化されたイオン液体を用いて後述の脱塩素化を行った場合、塩素が重水素で置換された脱塩素化物(すなわち、クロロメタン−d1やジクロロメタン−d2)が生成されることになる。
このことから、本願発明は、重水素化された脱塩素化物を製造する方法としても好適である。
ギ酸イオンの水素が重水素化されたイオン液体を用いて後述の脱塩素化を行った場合、塩素が重水素で置換された脱塩素化物(すなわち、クロロメタン−d1やジクロロメタン−d2)が生成されることになる。
このことから、本願発明は、重水素化された脱塩素化物を製造する方法としても好適である。
〔脱塩素化〕
本発明の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法では、上記四塩化炭素とイオン液体(1)とを反応させる。これにより、四塩化炭素が脱塩素化されて脱塩素化物が生成するとともに、下記一般式(2)で表されるイオン液体と二酸化炭素が副生する。
なお、下記一般式(2)で表されるイオン液体を、以下、イオン液体(2)と称することがある。
本発明の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法では、上記四塩化炭素とイオン液体(1)とを反応させる。これにより、四塩化炭素が脱塩素化されて脱塩素化物が生成するとともに、下記一般式(2)で表されるイオン液体と二酸化炭素が副生する。
なお、下記一般式(2)で表されるイオン液体を、以下、イオン液体(2)と称することがある。
すなわち、脱塩素化反応は、下記のように進行するものと理解される。なお、下記反応式では、四塩化炭素からクロロホルムが生成する反応を示しているが、同様にして、さらにクロロホルムの脱塩素化が進行し、ジクロロメタンやクロロメタンが生成する場合もある。
上記反応を行う際の条件としては、例えば、20〜60℃の温度であることが好ましく、0.1〜1MPaの圧力であることが好ましい。
このように、本発明においては、高温、高圧条件を要しない。
このように、本発明においては、高温、高圧条件を要しない。
また、本発明者は、上記四塩化炭素とイオン液体(1)との反応系に水を添加することが好ましいとの知見も得ている。
具体的には、まず、上記脱塩素化反応は発熱反応であり、反応速度も速いが、水の添加により、反応温度及び反応速度が適度に制御できることが分かった。また、詳細なメカニズムは不明であるものの、反応系に水を適量添加することにより、脱塩素化反応による脱塩素化物の収率も向上する場合があることが分かった。さらに、粘度の低下や、副生するイオン液体(2)の結晶化を防止できるなどの利点もあることが分かった。
具体的には、まず、上記脱塩素化反応は発熱反応であり、反応速度も速いが、水の添加により、反応温度及び反応速度が適度に制御できることが分かった。また、詳細なメカニズムは不明であるものの、反応系に水を適量添加することにより、脱塩素化反応による脱塩素化物の収率も向上する場合があることが分かった。さらに、粘度の低下や、副生するイオン液体(2)の結晶化を防止できるなどの利点もあることが分かった。
水を添加する場合、その添加量は、反応の適度な制御及び脱塩素化物の収率のバランスを考慮すると、イオン液体(1)1モルに対して、水を0.5〜10モルの割合で添加することが好ましく、2〜5モルの割合で添加することがより好ましい。
上述のとおり、反応は発熱反応であり、必要に応じて冷却手段を講じることが好ましいが、水の添加により反応が適度に制御される場合には冷却手段は不要である。
上記反応は、例えば、前記四塩化炭素1モルに対して、前記イオン液体(1)を0.1〜10モルの割合で反応させることが好ましく、1.2〜2モルの割合で反応させることがより好ましい。
〔イオン液体の再利用〕
イオン液体(1)は前記脱塩素化によって消費されるが、これを再生して脱塩素化に再利用することが可能である。
これにより、一般に高価であるイオン液体(1)を繰り返し使用して、コスト削減を図ることができる。
イオン液体(1)は前記脱塩素化によって消費されるが、これを再生して脱塩素化に再利用することが可能である。
これにより、一般に高価であるイオン液体(1)を繰り返し使用して、コスト削減を図ることができる。
具体的には、まず、四塩化炭素にイオン液体(1)を作用させると、上述の脱塩素化反応により、イオン液体(2)が副生する。
次に、上記イオン液体(2)に対して、ギ酸イオンと金属イオンとからなるギ酸塩を反応させると、下記反応によりイオン液体(1)が再生されるとともに、金属塩が生成する。
上記において、Mは金属であり、上記反応を進行させ得るものであれば特に限定されないが、反応後に生成する金属塩化物(MCl)を、再生したイオン液体(1)から容易に分離できることが好ましく、このような観点から、Mとして、カリウム、ナトリウム、カルシウムなどを選択することが好ましい。再生効率を考慮すると、Mとして、カリウム、ナトリウムを選択することがより好ましく、カリウムを選択することが特に好ましい。
上記反応を行う際の条件としては、特に限定されず、常温常圧でよい。
上記反応を行う際には、少量の水を共存させることが好ましい。両反応物を均一相で反応させることが反応の加速につながり、好ましいからである。
上記反応は、例えば、前記イオン液体(2)1モルに対して、前記ギ酸塩を0.5〜2モルの割合で反応させることが好ましく、0.7〜1.2モルの割合で反応させることがより好ましい。
また、反応を行う際に水を共存させる場合は、前記イオン液体(2)1モルに対して、水を1〜50モルの割合で存在させることが好ましく、8〜15モルの割合で存在させることがより好ましい。
また、反応を行う際に水を共存させる場合は、前記イオン液体(2)1モルに対して、水を1〜50モルの割合で存在させることが好ましく、8〜15モルの割合で存在させることがより好ましい。
イオン液体(2)から再生したイオン液体(1)は脱塩素化に再利用できる。
そのため、イオン液体(1)により四塩化炭素を脱塩素化する工程と、イオン液体(1)を再生して脱塩素化に再利用する工程を組み合わせて、イオン液体(1)を再利用しながら、脱塩素化を繰り返し行うことができる。
そのため、イオン液体(1)により四塩化炭素を脱塩素化する工程と、イオン液体(1)を再生して脱塩素化に再利用する工程を組み合わせて、イオン液体(1)を再利用しながら、脱塩素化を繰り返し行うことができる。
すなわち、脱塩素化工程では、四塩化炭素をイオン液体(1)で処理して脱塩素化を行う。
脱塩素化物は回収して化学原料や燃料に利用することができる。
副生するイオン液体(2)は、脱塩素化物とは分離して、次の再利用工程に供する。
脱塩素化物は回収して化学原料や燃料に利用することができる。
副生するイオン液体(2)は、脱塩素化物とは分離して、次の再利用工程に供する。
再利用工程では、脱塩素化工程で生成したイオン液体(2)にギ酸塩を反応させてイオン液体(1)を再生する。
再生したイオン液体(1)は、再び脱塩素化工程に供する。
副生する無機塩は、再生したイオン液体(1)とは分離して回収する。
再生したイオン液体(1)は、再び脱塩素化工程に供する。
副生する無機塩は、再生したイオン液体(1)とは分離して回収する。
さらに、上記脱塩素化工程と上記再利用工程を、同時的あるいは連続的に行うことも可能である。
具体的には、イオン液体(1)に対し、四塩化炭素とギ酸塩を連続的に投入して、イオン液体(1)をギ酸塩により再生させつつ、四塩化炭素を連続的に脱塩素化することができる。
具体的には、イオン液体(1)に対し、四塩化炭素とギ酸塩を連続的に投入して、イオン液体(1)をギ酸塩により再生させつつ、四塩化炭素を連続的に脱塩素化することができる。
以下、実施例を用いて、本発明について説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
〔実施例1:脱塩素化(水の添加あり)〕
実施例1で用いた実験装置は図1に示すとおりであり、容量10mlナス型フラスコ、三方コック、ゴム管、100mlガラス注射筒、マグネチックスターラーからなる。
実験は室温(22℃±1度)で行い、水浴などの加熱・冷却手段は用いなかった。
イオン液体としてテトラ−n−ブチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)を用い、これを、水と所定の割合で混合することによって、反応液を調製した。この混合割合は、イオン液体に対する水のモル比で0.22、0.90、1.38、1.55、2.03、3.07の6通りとした。
上記反応液1.00gをフラスコに入れて三方コックをとりつけ、冷凍庫で−20℃に冷却した。十分冷却されたら、冷凍庫から取り出し、フラスコ内に四塩化炭素0.40gを注入したのち、ただちに100mlガラス注射筒を三方コックの横枝に接続した。数分待ってフラスコを室温に戻したあと、マグネチックスターラーを始動して四塩化炭素を反応液に溶解させることにより、脱塩素化反応を開始した。反応開始後、ガラス注射筒のピストンの動きから、気体発生量を読み取った。
結果を図2に示す。
図2に示すとおり、水のモル比が小さいほど、反応が速い傾向がある。ただし、水のモル比が1から2前後の時は、必ずしもモル比の順番になっていない。これは本反応が大きな発熱反応であるため、小さな室温の変化等により最初の反応速度が少し早い場合、そのあとで反応速度が急速に増大することと関係していると考えられる。
また、80分後に反応を終了し、反応液とガラス注射筒内の気体を1H−NMRによって分析した。典型的な1H−NMRスペクトルとして、イオン液体に対する水のモル比が1.38の場合の液相(反応液)の1H−NMRスペクトルを図3に示し、また、イオン液体に対する水のモル比が0.90の場合の気相(発生気体)の1H−NMRスペクトルを図4に示す。
さらに、1H−NMRにより反応液及び発生した気体を分析して、クロロホルム、ジクロロメタンの収率を算出した。結果を下記表1に示す。ジクロロメタンの収量は、反応が急速に進んだ場合(水モル比0.22及び1.38)に多い傾向がみられる。水モル比が2以上の場合は、反応が遅いため収率がやや低かった。
実施例1で用いた実験装置は図1に示すとおりであり、容量10mlナス型フラスコ、三方コック、ゴム管、100mlガラス注射筒、マグネチックスターラーからなる。
実験は室温(22℃±1度)で行い、水浴などの加熱・冷却手段は用いなかった。
イオン液体としてテトラ−n−ブチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)を用い、これを、水と所定の割合で混合することによって、反応液を調製した。この混合割合は、イオン液体に対する水のモル比で0.22、0.90、1.38、1.55、2.03、3.07の6通りとした。
上記反応液1.00gをフラスコに入れて三方コックをとりつけ、冷凍庫で−20℃に冷却した。十分冷却されたら、冷凍庫から取り出し、フラスコ内に四塩化炭素0.40gを注入したのち、ただちに100mlガラス注射筒を三方コックの横枝に接続した。数分待ってフラスコを室温に戻したあと、マグネチックスターラーを始動して四塩化炭素を反応液に溶解させることにより、脱塩素化反応を開始した。反応開始後、ガラス注射筒のピストンの動きから、気体発生量を読み取った。
結果を図2に示す。
図2に示すとおり、水のモル比が小さいほど、反応が速い傾向がある。ただし、水のモル比が1から2前後の時は、必ずしもモル比の順番になっていない。これは本反応が大きな発熱反応であるため、小さな室温の変化等により最初の反応速度が少し早い場合、そのあとで反応速度が急速に増大することと関係していると考えられる。
また、80分後に反応を終了し、反応液とガラス注射筒内の気体を1H−NMRによって分析した。典型的な1H−NMRスペクトルとして、イオン液体に対する水のモル比が1.38の場合の液相(反応液)の1H−NMRスペクトルを図3に示し、また、イオン液体に対する水のモル比が0.90の場合の気相(発生気体)の1H−NMRスペクトルを図4に示す。
さらに、1H−NMRにより反応液及び発生した気体を分析して、クロロホルム、ジクロロメタンの収率を算出した。結果を下記表1に示す。ジクロロメタンの収量は、反応が急速に進んだ場合(水モル比0.22及び1.38)に多い傾向がみられる。水モル比が2以上の場合は、反応が遅いため収率がやや低かった。
〔実施例2:脱塩素化(水の添加なし)〕
<実施例2−1>
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−ブチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)5.0gを試験管にとり、室温で四塩化炭素1.89g(12.4mmol)を添加した。
直ちに、系をピストンシリンダー付の閉鎖系として、60℃に加熱したところ、40秒で100mlの気体の発生が確認された。その後、3分でさらに80mlの気体が発生した。
気体は主として脱塩素化に伴って発生した二酸化炭素であり、その他脱塩素化生成物であるクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムを含む。発生した気体の体積から約7mmolの四塩化炭素が分解したことが分かった。
さらに、60℃で1週間にわたって放置したが気体の新たな発生はなかった。
13C−NMRによりイオン液体を分析したところ、クロロホルムの収率56%、ジクロロメタンの収率0%であることが分かった。ただし、気相中に逃げたジクロロメタンとクロロホルムはこれに含まない。また、四塩化炭素の6%は未反応であったことが分かった。
<実施例2−1>
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−ブチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)5.0gを試験管にとり、室温で四塩化炭素1.89g(12.4mmol)を添加した。
直ちに、系をピストンシリンダー付の閉鎖系として、60℃に加熱したところ、40秒で100mlの気体の発生が確認された。その後、3分でさらに80mlの気体が発生した。
気体は主として脱塩素化に伴って発生した二酸化炭素であり、その他脱塩素化生成物であるクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムを含む。発生した気体の体積から約7mmolの四塩化炭素が分解したことが分かった。
さらに、60℃で1週間にわたって放置したが気体の新たな発生はなかった。
13C−NMRによりイオン液体を分析したところ、クロロホルムの収率56%、ジクロロメタンの収率0%であることが分かった。ただし、気相中に逃げたジクロロメタンとクロロホルムはこれに含まない。また、四塩化炭素の6%は未反応であったことが分かった。
<実施例2−2>
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−ブチルアンモニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=窒素)1.00gをフラスコにとり、図1と同様の実験装置を組んだ。室温で四塩化炭素0.40g(2.61mmol)を添加して、直ちにコックをガラス注射筒の方に切り替えたところ、10秒で反応はほぼ完結し、62mlの気体の発生が確認された。
気体は主として脱塩素化に伴って発生した二酸化炭素であり、その他脱塩素化生成物であるクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムを含む。13C−NMRにより反応液及び発生した気体を分析したところ、クロロホルムの収率46%、ジクロロメタンの収率33%であることが分かった。
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−ブチルアンモニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=窒素)1.00gをフラスコにとり、図1と同様の実験装置を組んだ。室温で四塩化炭素0.40g(2.61mmol)を添加して、直ちにコックをガラス注射筒の方に切り替えたところ、10秒で反応はほぼ完結し、62mlの気体の発生が確認された。
気体は主として脱塩素化に伴って発生した二酸化炭素であり、その他脱塩素化生成物であるクロロメタン、ジクロロメタン、クロロホルムを含む。13C−NMRにより反応液及び発生した気体を分析したところ、クロロホルムの収率46%、ジクロロメタンの収率33%であることが分かった。
<実施例2−3>
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−オクチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−オクチル、A=リン)1.00gを試験管にとり、図1と同様の実験装置を組んだ。室温で四塩化炭素0.40g(2.61mmol)を添加して、直ちにコックをガラス注射筒の方に切り替えたところ、反応は、実施例2−1及び実施例2−2に比べ穏やかで45分ほどかけて進行した。1H−NMRにより反応液及び発生した気体を分析したところ、クロロホルムの収率41%、ジクロロメタンの収率4%であった。
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−オクチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−オクチル、A=リン)1.00gを試験管にとり、図1と同様の実験装置を組んだ。室温で四塩化炭素0.40g(2.61mmol)を添加して、直ちにコックをガラス注射筒の方に切り替えたところ、反応は、実施例2−1及び実施例2−2に比べ穏やかで45分ほどかけて進行した。1H−NMRにより反応液及び発生した気体を分析したところ、クロロホルムの収率41%、ジクロロメタンの収率4%であった。
〔実施例3:イオン液体(1)の再生〕
劣化したイオン液体のモデルとして、純粋なテトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド(一般式(2)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)を、塩化物イオン濃度3.37mol/kgで用い、各種無機ギ酸を用いて塩化物イオンの除去(イオン液体(1)の再生)を試験した。
劣化したイオン液体のモデルとして、純粋なテトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド(一般式(2)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)を、塩化物イオン濃度3.37mol/kgで用い、各種無機ギ酸を用いて塩化物イオンの除去(イオン液体(1)の再生)を試験した。
<実施例3−1:カリウム塩による再生>
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド200g(0.68モル)を80%の濃度で含有する水溶液にギ酸カリウム84g(1.00モル)を含む濃厚水溶液を混合した。この状態では二相分離したので、水を追加して均一溶液とした。この溶液を100℃で減圧濃縮したところ、塩化カリウムの結晶が析出した。結晶を熱時ろ過し、イオン液体を含有するろ液を回収した。ろ液を油回転ポンプで減圧乾燥することで、再生されたイオン液体を回収した。このイオン液体をモール(Mohr)法で分析したところ、塩化物イオン濃度が0.37mol/kgであった。すなわち、モデル劣化イオン液体中の塩化物イオンの89%が除去され、ギ酸イオンに置きかわったことが分かった。
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド200g(0.68モル)を80%の濃度で含有する水溶液にギ酸カリウム84g(1.00モル)を含む濃厚水溶液を混合した。この状態では二相分離したので、水を追加して均一溶液とした。この溶液を100℃で減圧濃縮したところ、塩化カリウムの結晶が析出した。結晶を熱時ろ過し、イオン液体を含有するろ液を回収した。ろ液を油回転ポンプで減圧乾燥することで、再生されたイオン液体を回収した。このイオン液体をモール(Mohr)法で分析したところ、塩化物イオン濃度が0.37mol/kgであった。すなわち、モデル劣化イオン液体中の塩化物イオンの89%が除去され、ギ酸イオンに置きかわったことが分かった。
<実施例3−2:ナトリウム塩による再生>
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド14.3g(0.048モル)とギ酸ナトリウム6.55g(0.096モル)を用いて、上記実施例3−1と同様の実験を行った。その結果、モデル劣化イオン液体中の塩化物イオンの50%が除去され、ギ酸イオンに置きかわったことが分かった。
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド14.3g(0.048モル)とギ酸ナトリウム6.55g(0.096モル)を用いて、上記実施例3−1と同様の実験を行った。その結果、モデル劣化イオン液体中の塩化物イオンの50%が除去され、ギ酸イオンに置きかわったことが分かった。
<実施例3−3:カルシウム塩による再生>
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド11.1g(0.038モル)とギ酸カルシウム二水和物6.23g(0.038モル)を用いて、上記実施例3−1と同様の実験を行った。その結果、モデル劣化イオン液体中の塩化物イオンは除去されたものの、その量は実施例3−1及び実施例3−2と比べると少なく、新たに導入できたギ酸イオンはテトラ−n−ブチルホスホニウムイオンに対するモル比で0.11にとどまった。
テトラ−n−ブチルホスホニウムクロリド11.1g(0.038モル)とギ酸カルシウム二水和物6.23g(0.038モル)を用いて、上記実施例3−1と同様の実験を行った。その結果、モデル劣化イオン液体中の塩化物イオンは除去されたものの、その量は実施例3−1及び実施例3−2と比べると少なく、新たに導入できたギ酸イオンはテトラ−n−ブチルホスホニウムイオンに対するモル比で0.11にとどまった。
〔実施例4:ギ酸カリウムの添加による反応収率の向上〕
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−ブチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)1.05gを試験管にとり、さらにギ酸カリウムの20℃における飽和水溶液1.00gを加え、図1と同様の実験装置を組んだ。室温で四塩化炭素0.80g(5.23mmol)を添加して、室温において1時間反応させた。気体は途中最大18ml発生したが、時間がたつにつれ、そのうちの9mlは反応液に再吸収された。反応終了後に反応液を1H−NMRで調べたところ、仕込みの四塩化炭素に対してクロロホルムの収率84%、ジクロロメタンの収率2%であった。また、仕込みのイオン液体を基準にとるとクロロホルムの収率は128%となった。値が100%を超えていることから、ギ酸カリウムとして添加したギ酸イオンが脱塩素化に有効に働いたことがわかった。
この実施例4の結果は、イオン液体による脱塩素化反応とイオン液体の再生とを同時的・連続的に実施できることを示唆するものである。
イオン液体として結晶状態のテトラ−n−ブチルホスホニウムギ酸塩(一般式(1)においてR1〜R4=n−ブチル、A=リン)1.05gを試験管にとり、さらにギ酸カリウムの20℃における飽和水溶液1.00gを加え、図1と同様の実験装置を組んだ。室温で四塩化炭素0.80g(5.23mmol)を添加して、室温において1時間反応させた。気体は途中最大18ml発生したが、時間がたつにつれ、そのうちの9mlは反応液に再吸収された。反応終了後に反応液を1H−NMRで調べたところ、仕込みの四塩化炭素に対してクロロホルムの収率84%、ジクロロメタンの収率2%であった。また、仕込みのイオン液体を基準にとるとクロロホルムの収率は128%となった。値が100%を超えていることから、ギ酸カリウムとして添加したギ酸イオンが脱塩素化に有効に働いたことがわかった。
この実施例4の結果は、イオン液体による脱塩素化反応とイオン液体の再生とを同時的・連続的に実施できることを示唆するものである。
本発明にかかる四塩化炭素の脱塩素化方法及び脱塩素化物の製造方法は、難分解性の四塩化炭素を脱塩素化して、脱塩素化物を生成することができるので、例えば、四塩化炭素を副生する化学プロセスなどにおいて、四塩化炭素の無害化のために好適に利用することができる。
Claims (5)
- 前記四塩化炭素と前記一般式(1)で表されるイオン液体との反応系に水を添加する、請求項1に記載の四塩化炭素の脱塩素化方法。
- 前記水の添加量が、前記一般式(1)で表されるイオン液体1モルに対して0.5〜10モルである、請求項2に記載の四塩化炭素の脱塩素化方法。
- 四塩化炭素を原料とし、請求項1から4までのいずれかに記載の脱塩素化方法によって前記四塩化炭素を脱塩素化することにより脱塩素化物を製造する、脱塩素化物の製造方法。
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CN111019750A (zh) * | 2019-12-23 | 2020-04-17 | 宁波中循环保科技有限公司 | 一种利用强碱性离子液体脱除废机油中氯的方法 |
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2013
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