JP2015106079A - 定着方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】 加熱加圧手段で記録材上のトナー画像を定着し定着画像を形成する定着方法において、加熱加圧手段が加熱部材と加圧部材を有し、加熱部材が導電層を有する筒状の回転体と回転体の内部に配置され螺旋軸が回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するコイルと螺旋形状部の中に配置され交番磁界の磁力線を誘導するコアを有し、母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間でコアの磁気抵抗が導電層の磁気抵抗と導電層とコアの間の領域の磁気抵抗の合成磁気抵抗の30%以下であり、トナーの温度−貯蔵弾性率曲線を、温度で1回微分して得られる曲線1において、60℃以上の範囲における曲線1の最小値が−0.32以上−0.15以下である。
【選択図】 図1
Description
加熱回転体(加熱部材)と、
加熱回転体に接触する加圧ローラー(加圧部材)と、
で形成されたニップ部で未定着トナー画像を担持した記録材を搬送しながら加熱してトナー画像を記録材に定着するものが一般的である。
前記加熱加圧手段は、加熱部材と、加圧部材とを有する加熱加圧手段であり、
前記加熱部材は、導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
を備え、前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であって、
前記トナー画像を形成するトナーが、結着樹脂、着色剤を含有するトナーであって、
前記トナーの20℃から2.0℃/分の昇温速度で120℃まで加熱する粘弾性測定において、温度(℃)を横軸とし、縦軸に該トナーの損失弾性率G”(Pa)を前記損失弾性率の単位(Pa)で除した値の常用対数(LogG”)をプロットして得られる温度−貯蔵弾性率曲線において、温度で1回微分して得られる曲線1において、60℃以上の範囲における前記曲線1の最小値が−0.32以上−0.15以下であることを特徴とする定着方法に関する。
温度による損失弾性率G”の最大傾きを制御したトナーを組み合わせることで、ブリスター現象が抑制され、低温定着性に優れた定着方法を提供することができる。
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
を備える定着装置において、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗が、
前記導電層の磁気抵抗と、
前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
の合成磁気抵抗の30%以下であることを特徴とするものである。
図2は本実施例に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用したレーザービームプリンターである。101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、所定の周速度にて回転駆動される。
(2−1)概略構成
図3は定着装置1の概略断面図である。定着装置1は、筒状の加熱回転体しての定着フィルム1と、定着フィルム1の内面と接触するニップ部形成部材としてのフィルムガイド9(ベルトガイド)と、対向部材としての加圧ローラー(加圧部材)7と、を有する。加圧ローラー7は、定着フィルム1を介してニップ部形成部材とともにニップ部Nを形成する。ニップ部Nでトナー画像Tを担持した記録材Pを搬送しながら加熱して、トナー画像Tを記録材Pに定着する。
図1は円筒形回転体1a(導電層)と、磁性コア2と、励磁コイル3の斜視図である。
励磁コイル3は、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1〜2mmの銅線材(単一導線)を、磁性コア2に約10巻〜100巻で螺旋状に巻いて形成する。本実施例では励磁コイル3の巻き数は18回とする。励磁コイル3は、磁性コア2に定着フィルム1の母線方向に交差する方向に巻回されているため、この励磁コイルに高周波電流を流すと、定着フィルム1の母線方向に平行な方向に交番磁界を発生させることができる。
図1における温度検知部材4は、定着フィルム1中央部の表面温度を検知するために設けられる。本実施例では、温度検知部材4として非当接型サーミスタを用いている。高周波コンバータ5は、励磁コイル3に、給電接点部3a、3bを介して高周波電流を供給する。なお、日本国内では電波法施行規則により電磁誘導加熱の利用周波数は20.05kHzから100kHzの範囲に定められている。また、電源の部品コスト上、周波数は低いことが好ましいため、利用周波数帯の下限付近21kHz〜40kHzの領域において周波数変調制御を行う。以下周波数変調制御について説明する。共振回路を用いて誘導発熱を行う電磁誘導方式においては図4のグラフのように、駆動周波数により出力電力が変化する。これは、駆動周波数が共振周波数と一致するときに電力は最大となり、駆動周波数が共振周波数から遠ざかると電力が下がるという性質を利用したものである。すなわち、目標温度と温度検知部材4の温度差に応じて、駆動周波数を21kHz〜100kHzまで変化させることにより、出力電力を調整するという方法である。制御回路6は、温度検知部材4によって検出された温度を基に高周波コンバータ5を制御する。これにより、定着フィルム1は電磁誘導加熱されて表面の温度が所定の目標温度(約150℃〜200℃)になるように電力が制御される。
(3−1)磁力線の形状と誘導起電力
まず、図5(a)は、同形状のソレノイドコイル3の中心に磁性コア2を挿通して磁路を形成した場合の、コイル形状と磁界の対応図である。本磁力線の向きは、矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。磁性コア2は、ソレノイドコイル3にて生成された磁力線を内部に誘導し、磁路を形成する部材として機能する。定着装置1の磁性コア2は、環状になっているものではなく、長手方向にそれぞれ端部を有するものである。そのため、磁力線は、大多数がソレノイドコイル中央の磁路に集中して通って、磁性コア2の長手方向の端部において拡散する形状の開磁路となる。そのため、コイルの隙間Δdにおける磁力線の漏えいも少なく、両極から出た磁力線は、外周の遥か遠くで繋がる形状の開磁路となる(図の表記上は端部で途切れている)。図5(b)は、ソレノイド中心軸Xにおける磁束密度の分布を示す。磁束密度は、グラフ上の曲線B2に示すように、B1と比較してソレノイドコイル3の端部での磁束密度の減衰が少なくなっており、台形に近い形状となる。
発熱原理はファラデーの法則に従う。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。図6(a)に示すソレノイドコイル3の磁性コア2の端部近傍に、コイルと磁性コアより直径の大きな回路Sを置き、コイル3には高周波交流を流す場合を考える。高周波交流を流した場合、ソレノイドコイル周辺には交番磁界(時間とともに大きさと方向が変化を繰り返す磁界)が形成される。そのとき、回路Sに発生する誘導起電力は、以下の式(1)に従い、ファラデーの法則より回路Sの中を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する。
V:誘導起電力
N:コイル巻き数
Δφ/Δt:微小時間Δtでの回路を垂直に貫く磁束の変化
(I)円筒形回転体の材質の比透磁率が大きい
(II)円筒形回転体の断面積が大きい
(III)磁性コアの断面積が小さい
(IV)磁性コアの比透磁率が小さい
(V)磁性コアが長手方向に分割して大きなギャップを形成している
次に、(3−2)に説明した発熱原理を達成するための、具体的な設計指針について説明する。そのためには、定着装置の各構成部品の円筒形回転体の母線方向への磁気の通りやすさを、形状係数によって表現する必要がある。その形状係数は、「静磁界における磁気回路モデル」の「パーミアンス」を用いる。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁束が主として通る磁路の閉回路を、電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができるものである。磁気回路の基礎計算式は、電気回路に関するオームの法則と同一であり、全磁束をφ、起磁力をV、磁気抵抗をRとすると、この3つの要素は
全磁束φ=起磁力V/磁気抵抗R ・・・(2)
の関係にある(したがって、電気回路における電流は磁気回路における全磁束φと対応し、電気回路における起電力は磁気回路における起磁力Vと対応し、電気回路における電気抵抗は磁気回路における磁気抵抗と対応する)。しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。したがって上記(2)は
全磁束φ=起磁力V×パーミアンスP ・・・(3)
で置き換えられる。このパーミアンスPは、磁路の長さをB、磁路の断面積をS、磁路の透磁率をμとしたとき、
パーミアンスP=透磁率μ×磁路断面積S/磁路長B ・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、磁路長Bが短く、磁路断面積Sおよび透磁率μが大きいほど大きくなることを示し、パーミアンスPが大きい部分に磁束φがより多く形成される。
φc=φa_in+φcy+φa_out ・・・(5)
すなわち、磁性コアの内部を通過した磁束は、φa_in、φcy、φa_outの何れかを必ず通過して磁性コアに戻ってくることを意味する。
φc=Pc・Vm ・・・(6)
φa_in=Pa_in・Vm ・・・(7)
φcy=Pcy・Vm ・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(9)
よって、(5)に(6)〜(9)を代入すると下記ようになる。
Pc・Vm=Pa_in・Vm+Pcy・Vm+Pa_out・Vm
=(Pa_in+Pcy+Pa_out)・Vm
∴Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0 ・・・(10)
図10(b)より、磁気コイルの断面積:Sc、円筒体内側空気の断面積:Sa_in、円筒体の断面積:Scyとすると、各領域の単位長さ当たりのパーミアンスは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1)2 ・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)2−(a1)2) ・・・(12)
Pcy=μ2・Scy=μ2・π・((a3)2−(a2)2) ・・・(13)
さらに、Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0であるから、円筒体外側空気中のパーミアンスは次のように表すことができる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Scy
=π・μ1・(a1)2
−π・μ0・((a2)2−(a1)2)
−π・μ2・((a3)2−(a2)2) ・・・(14)
磁気抵抗を用いて議論する場合、磁気抵抗は単純にパーミアンスの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができ、単位は「1/(H・m)」である。
は、Pcに対するPa_outの比率(=Pa_out/Pc)である。
手段1)磁性コアのパーミアンスを大きくする。(磁性コア断面積大、材質の比透磁率大)
手段2)円筒体内のパーミアンスを小さくする。(空気部分の断面積小)
手段3)円筒体内に鉄などのパーミアンスの大きい部材を配置しない。
手段4)円筒体のパーミアンスを小さくする。(円筒体の断面積小、円筒体に用いる材質の比透磁率小)
手段4より、円筒体は比透磁率μの低い材質が好ましい。円筒体として比透磁率μの高い材質を用いる際は、円筒体の断面積をより小さくする必要がある。これは、円筒体の断面積が大きいほど、円筒体を貫く磁束が多くなり発熱効率が高くなる従来の定着装置とは反対である。また、円筒体内にはパーミアンスの大きい部材を配置しないことが望ましいものの、やむを得ず鉄などを配置しなければならない場合は、断面積を小さくするなどによって、「円筒体外部を通る磁束の比率」をコントロールする必要がある。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+・・・+Rm_c10)+(Rm_g1+Rm_g2+・・・+Rm_g9) ・・・(15)
本構成の場合は、磁性コアの形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次のようになる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g) ・・・(16)
磁性コアの長手:Lc、透磁率:μc、断面積:Sc、ギャップの長手:Lg、透磁率:
μg、断面積:Sgとすると、
Rm_c=Lc/(μc・Sc) ・・・(17)
Rm_g=Lg/(μg・Sg) ・・・(18)
(16)式に代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lg/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9・・(19)
となる。単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると、
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9) ・・・(20)
となり、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下のように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}] ・・・(21)
ΣLc:分割された磁性コアの長さの合計
μc:磁性コアの透磁率
Sc:磁性コアの断面積
ΣLg:ギャップの長さの合計
μg:ギャップの透磁率
Sg:ギャップの断面積
図8(a)において、中心から磁性コア2、励磁コイル3、円筒形回転体(導電層1a)が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加しているときは、概念図においては8本の磁力線が磁性コア2の中を通過している。
定着フィルムの円筒形回転体(導電層)を発熱させる際は、励磁コイルに高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は円筒形回転体に電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることができる。その交番磁界によって励磁コイルと円筒形回転体が磁気結合して、励磁コイルに投入した電力が円筒形回転体に伝達される。ここで述べる「電力の変換効率」は、磁界発生手段である励磁コイルに投入する電力と、円筒形回転体により消費される電力の比率である。本実施例の場合、図1に示す励磁コイル3に対して高周波コンバータ5に投入した電力と、円筒形回転体1aで発生した熱として消費される電力の比率である。この電力の変換効率は以下の式で表すことができる。
電力の変換効率=円筒回転体で熱として消費される電力/励磁コイルに投入した電力
励磁コイルに投入して円筒回転体以外で消費される電力は、励磁コイルの抵抗による損失、磁性コア材料の磁気特性による損失などがある。
ZA=R1+jωL1 ・・・(22)
と表される。この回路に流れる電流は、R1により損失する。すなわち、R1はコイルおよび磁性コアによる損失を表している。
・・・・・(23)
・・・・(24)
Mは励磁コイルと円筒形回転体の相互インダクタンスを表す。
・・・(25)
が成り立つため、
・・・(26)
となる。
・・・(27)
となり、
円筒形回転体を装荷する前の直列等価抵抗R1と、
円筒形回転体を装荷した後の直列等価抵抗Rxと
を測定すると、励磁コイルに投入した電力のうち、どれだけの電力が円筒回転体で発生する熱として消費されるかを示す電力の変換効率を求めることができる。なお、実施例1の構成においては、電力の変換効率の測定には、Agilent Technologies社製のインピーダンスアナライザ4294Aを用いた。まず、円筒形回転体の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗R1を測定し、次に円筒形回転体に磁性コアを挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定した。R1=103mΩ、Rx=2.2Ωとなり、このとき、電力の変換効率は式(27)により、95.3%と求めることができる。以後この電力の変換効率を用いて、電磁誘導加熱方式の定着装置の性能を評価する。
本実施例の定着装置においては、静磁界において円筒体外部を通る磁束の比率と、交番磁界において励磁コイルに投入した電力が円筒回転体に伝達される電力の変換効率(電力の変換効率)とは、相関がある。円筒体外部を通る磁束の比率が増加するほど電力の変換効率は高くなる。その理由は、トランスの場合に、漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと同じ原理である。つまり、磁性コアの内部を通過する磁束と、円筒形回転体の外部を通過する磁束の数が近い程、周回電流への電力の変換効率は高くなる。これは、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束(磁性コアの内部を通過する磁束と向きが反対の磁束)が、円筒形回転体の中空部を通過し磁性コアの内部を通過する磁束をキャンセルする割合が少ないということである。つまり、図11(b)の磁気等価回路に示すように、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束が円筒形回転体の外(円筒体外空気)を通過するということある。故に本実施例の骨子は、円筒体外部磁束の比率を高くすることによって、励磁コイルに流した高周波電流を円筒形回転体内部の周回電流として効率よく誘導することである。具体的にはフィルムガイド、円筒体内空気、円筒体を通る磁束を減らすことである。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層)の直径が143.2mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、円筒(導電層)の発熱に寄与した分を示すパラメータである。したがって、最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となってしまい、その損失はコイルおよび磁性コアの発熱となる。本構成の場合、立ち上げ時、数秒間1000Wを投入しただけでも、コイル温度は200℃を超える場合がある。コイルの絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイル等の部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コアの温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が127.3mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は70.8%であった。このとき、定着装置の印字動作によっては、励磁コイル等に定常的に大きな熱量が発生し、励磁コイルユニット、特に磁性コアの昇温が課題となる場合がある。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒形回転体の回転速度は330mm/secとなる。よって、円筒形回転体の表面温度を180℃に維持するケースがある。そうすると、磁性コアの温度は20秒間で240℃を超え、円筒体(導電層)の温度より高くなる場合が考えられる。磁性コアとして用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であり、フェライトがキュリー温度を超えた場合、透磁率は急激に減少する。透磁率が急激に減少すると、磁性コアの中に磁路を形成することができない。磁路を形成することができなくなると、本実施例においては、周回電流を誘導して発熱することが難しくなる場合がある。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が63.7mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%であった。このとき、励磁コイル等には定常的に熱量が発生したものの、熱伝達と自然冷却で放熱できる熱量を大きく上回ることはなかった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。したがって、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースであっても、フェライトの磁性コアの温度は220℃以上に上昇することはなかった。そのため本構成においては、定着装置を前述した高スペックする場合、キュリー温度220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。設計条件R2の構成の定着装置を高スペックな定着装置として使用する場合は、フェライト等の耐熱設計を最適化することが望ましい。本構成に、前述した高スペックを要求しない場合は、そこまでの耐熱設計は不要である。
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%であった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなり、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースにおいて励磁コイル等は、180℃以上に上昇することはなかった。これは、励磁コイルがほとんど発熱しないことを示す。円筒体外部磁束の比率94.7%、電力の変換効率94.7%(設計条件R3)は、電力の変換効率が十分高いため、更なる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は必要ない。
以上、円筒形回転体に対してその軸方向に磁界を発生させ、円筒形回転体を電磁誘導発熱させる定着装置において、円筒体外部磁束の比率に求められる設計条件は、図22中矢印R1、R2、R3に領域分けすることができる。
R1:円筒体外部磁束の比率70%以上90%未満
R2:円筒体外部磁束の比率90%以上94%未満
R3:円筒体外部磁束の比率94%以上
(3−4)で説明した「周回電流」は、図6の回路S内に生じる誘導起電力によって生じるものである。そのため、回路Sに内包する磁束と、回路Sの抵抗値に依存する。後述する「渦電流E//」とは異なり、材料内部の磁束密度とは関係しない。そのため、磁路とならない薄い磁性金属製の円筒形回転体でも、非磁性金属製の円筒回転体でも高い効率で発熱することが可能である。また、抵抗値が大きく変わらない範囲においては、材料の厚みにも依存しない。図16(a)は、厚さ20μmのアルミニウムの円筒形回転体における電力の変換効率の周波数依存性である。20kHz〜100kHzの周波数帯域において、電力の変換効率は90%以上を維持している。特に、21〜40kHzの周波数帯域を発熱に利用する場合において、高い電力の変換効率を持っている。次に図16(b)は、同形状の円筒形回転体における、周波数21kHzでの電力の変換効率の厚み依存性である。黒丸―実線はニッケル、白丸―点線はアルミニウムの実験結果を示している。両者は厚み20μm〜300μmの領域において、電力の変換効率は90%以上を維持しており、両者とも厚みに寄らず、定着装置用発熱材料として使用可能である。
・・・(28)
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように計算する。
・・・(29)
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記の関係式を、定着装置の記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向の断面において満足するのが望ましい。
横軸に温度(℃)、
縦軸に該トナーの損失弾性率G”(Pa)を前記損失弾性率の単位(Pa)で除した値の常用対数(LogG”)
をプロットして得られる温度−貯蔵弾性率曲線を、温度で1回微分して得られる曲線1において、60℃以上の範囲における前記曲線1の最小値が−0.32以上−0.15以下であることが特徴である。
測定装置としては、ARES(商品名、TAインスツルメンツ社製)を用いる。
測定冶具:トーションレキュタンギュラーフィクスチャー
測定試料:50℃の乾燥機で10時間以上乾燥したトナーを使用する。
試料形状:長辺30.0mm、短辺12.5mm、厚さ1.5〜2.0mm、但し厚みの均一度は±0.05mmにする。
試料成形条件:錠剤整形器を用いて温度25℃、圧力50MPa、加圧時間60分で成形する。
角振動周波数:6.28rad/秒
昇温速度:温度0℃〜120℃の範囲を2.0℃/分で測定する。
印加歪初期値:0.01%とし、自動歪み調整モードで測定を行う。
Max Applied Strainを0.5%と設定する。
Max Allowed Torqueを200.0g・cmと設定する。
Min Allowed Torqueを1.0g・cmと設定する。
Strain Adjustmentを20.0% of Current Strainと設定する。
自動テンション調整モード(Auto Tension Mode)で測定を行う。
自動テンション調整モード(Auto Tension Mode)の条件を以下に記す。
自動テンションディレクション(Auto Tension Direction)をテンション(Tension)と設定する。
Initial Static Force10.0gと設定する。
Auto Tension Sensitivityを40.0gと設定する。
Sample Modulus<1.0×108(Pa)と設定する。
横軸に温度(℃)、
縦軸に該トナーの損失弾性率G”(Pa)を前記損失弾性率の単位(Pa)で除した値の常用対数(LogG”)
をプロットして得られる温度−貯蔵弾性率曲線を、温度で1回微分して得られる曲線1において、60℃以上の範囲における前記曲線の最小値が、−0.32以上−0.15以下の範囲に入るか確認する。
本発明のトナー粒子は、結着樹脂および着色剤を含有する。
ビニル系樹脂、スチレン系樹脂、スチレン系共重合樹脂、ポリエステル樹脂、ポリオール樹脂、ポリ塩化ビニル樹脂、フェノール樹脂などである。中でも好ましく用いられる樹脂として、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂である。ビニル系樹脂の中でも、スチレン系重合性単量体およびアクリル系重合性単量体の共重合体が好ましい。
(1)重合性単量体
(2)着色剤
(3)結晶性樹脂
(4)さらに必要に応じて非晶質ポリエステル、架橋剤、帯電制御剤、上述したワックス、その他の添加剤
を均一に溶解または分散せしめて重合性単量体組成物とする。その後この重合性単量体組成物を、分散安定剤を含有する水系媒体中に適当な撹拌機を用いて分散させ、そして必要に応じて、重合開始剤を添加して重合反応を行わせ、所望の粒径を有するトナー粒子を得るものである。上記トナー粒子に対し重合終了後、公知の方法によって濾過、洗浄、乾燥を行い、必要により流動性向上剤を混合し表面に付着させることで、トナー粒子を得ることができる。
結晶性樹脂のGPCによる重量平均分子量の測定は以下の通り実施した。
結晶性ポリエステル樹脂およびワックスの融点は、示差走査熱量分析装置を用いてASTMD3418−82に準じて測定したDSC曲線において、最大吸熱ピークのピーク温度を融点とし、ピークの面積から求められる熱量を融解熱量とする。本発明では、示差走査熱量分析装置として、TA Instruments社製の「Q2000」を用いた。
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順にしたがって測定する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
図3は本発明の定着装置の概略断面図であり、加圧ローラー7は、例えばφ14のアルミあるいは鉄製芯金の外側にシリコーンのソリッドあるいはスポンジゴムなどの厚み3mmの弾性層と、PFAなどの離型層を厚み30μmで積層している。そして、不図示の軸受け手段・付勢手段により総圧約200N〜100N(約20kgf〜約10kgf)の押圧力をもってフィルムガイド9との間に定着フィルムを挟ませて圧接させてある。そして、不図示の定着器回転制御手段は、加圧ローラー7を矢印方向に回転駆動し、5〜10mm程度の幅のニップ部Nにおける摩擦力で定着スリーブ1に回転力が作用し、従動回転状態になる。フィルムガイド9は、耐熱性樹脂PPSなどで構成されている。定着フィルム1は、直径50〜10mmの、基層となる導電性部材でできた発熱層1aと、その外面に積層した弾性層1bと、その外面に積層した離型層1cの複合構造の円筒形回転体である。発熱層1aは、本装置では、厚さ20μmの比透磁率1、断面積1.5×10−6m2、直径は24mmのアルミニウムの円筒形状部材である。弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムを0.3mm〜0.1mm成形している。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として50μm〜10μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。円筒形状部材である定着フィルム1の内部にて、この回転軸線方向に磁性コア2が挿通されている。その磁性コア2の周囲に励磁コイル3が巻き回されている。
導電層と磁性コアとの間の領域の単位長さ当たりのパーミアンスPa_inは、フィルムガイドの単位長あたりのパーミアンスと円筒体内の空気の単位長さ当たりのパーミアンスとの合成であるから次のように表される。
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
導電層の単位長さ当たりのパーミアンスPcyは、表4に記載の円筒体であり、次のように表される。
Pcy=1.9×10−12[H・m]
Pa_outは、表4に記載された円筒体外空気であり、次のように表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy=3.5×10−7[H・m]
よって、定着装置1は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Pcy+Pa_in≦0.30×Pc
次に、パーミアンスの逆数である、磁気抵抗を用いた場合について説明する。
Rc=2.9×106[1/(H・m)]
導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗は、フィルムガイドの抵抗Rfと円筒体内空気の抵抗Raの合成抵抗となるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×109[1/(H・m)]となる。
比較例として用いる定着装置2は、定着装置1の定着装置の構成に対して磁性コアの断面積と円筒形回転体の材質および断面積が異なる。すなわち、「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしていない構成である。この構成について説明する。特に、円筒形回転体が主磁路になっている構成について説明する。図17は定着装置2の定着装置の断面図であり、電磁誘導発熱回転体は定着フィルムではなく定着ローラー11を用いる。定着ローラー11と加圧ローラー7の押圧力をもってニップNを形成し、像担持体Pとトナー画像Tを挟ませて矢印方向に回転する構成である。
磁性コアのパーミアンスPc=4.4×10−8[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.1×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=1.1×10−8[H・m]
よって、定着装置2は下記のパーミアンスの関係式を満たしていない。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.3×107[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=4.5×108[1/(H・m)]となる。
δ=503×(ρ/fμ)1/2 ・・・(30)
δ:浸透深さ〔m〕
f:励磁回路の周波数〔Hz〕
μ:透磁率〔H/m〕
ρ:抵抗率〔Ωm〕
浸透深さδは電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になるというものである。そしてその深さは周波数と透磁率、抵抗率に依存する。
本定着装置3は先に説明をした定着装置1に関する他の例であり、円筒形回転体(導電層)としてオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)を用いた点が定着装置1と異なる。以下表6は参考として各種金属における抵抗率と比透磁率について纏め、式30に従い21kHz、40kHz、100kHzにおける浸透深さδを計算した結果である。
コアのパーミアンスPc=3.5×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=2.8×10−12[H・m]
よって、定着装置3は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.9×106[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×109[1/(H・m)]となる。
定着装置4として、定着装置1の構成に対して磁性コア2の断面積と円筒形回転体の材質および断面積が異な構成について説明する。本構成は「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしているものの円筒形回転体が一部、磁路になっている構成である。
磁性コアのパーミアンス:Pc=2.6×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+2.0×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンス:Ps=2.3×10−8[H・m]
よって、定着装置4は、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗:Rc=3.9×106[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗:Ra=4.8×108[1/(H・m)]
円筒体の磁気抵抗:Rs=4.4×107[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=4.0×107[1/(H・m)]
よって、定着装置4は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
以下の実施例において、部数は質量部基準である。
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、アルコールモノマーとして1,6−ヘキサンジオール、1,12−ドデカンジオール、およびカルボン酸モノマーとして1,12−ドデカン二酸を表9に示す量を投入した。そして、触媒としてジオクチル酸スズをモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させて結晶性樹脂1を得た。結晶性樹脂1の物性を表9に示す。
モノマーの種類および使用量を表9に記載のように変更し、それ以外は、結晶性樹脂1と同様にして結晶性樹脂2〜5を得た。
窒素導入管、脱水管、撹拌器および熱電対を装備した反応槽中に、アルコールモノマーとして1,12−ドデカンジオール、およびカルボン酸モノマーとしてセバシン酸を表6に示す量を投入した。そして、触媒としてジオクチル酸スズをモノマー総量100質量部に対して1質量部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら8時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させて樹脂6を得た。次に、窒素雰囲気下で、滴下ロート、リービッヒ冷却管および撹拌機を備えた耐圧反応機に上記により得られた樹脂1を100質量部としてキシレン70質量部および得られた樹脂1を入れて200℃まで昇温させた。これに、表6に示すスチレン、アクリル酸および、ジ−tert−ブチルパーオキサイド 1部の混合物を滴下ロートに仕込んだものを2時間かけて加圧下(0.31MPa)で滴下した。滴下後、さらに200℃で3時間反応を行い、重合を完了させて、75℃で加熱しながら減圧してキシレンを除去し、さらに、シクロヘキサンで洗浄して結晶性樹脂6を得た。得られた結晶性樹脂の物性を表9に示す。
減圧装置、水分離装置、窒素ガス導入装置、温度測定装置、撹拌装置を備えたオートクレープ中に表10に記載したポリエステルモノマーおよびテトラブトキシチタネート0.025部を仕込み、窒素雰囲気下、常圧下で210℃で5時間反応を行った。その後、テトラブトキシチタネートを0.010部追加し、220℃で3時間反応させ、さらに10〜20mmHgの減圧下で2時間反応して非晶質ポリエステル1を得た。得られた物性を表10に示す。
非晶質ポリエステル1の製造例において、ポリエステルモノマーの仕込み量を表10の通りに変更した以外は同様の方法で非晶質ポリエステル2を得た。得られた物性を表10に示す。
非晶質ポリエステル1の製造例において、ポリエステルモノマーの仕込み量を表10の通りに変更し、さらに追加のテトラブトキシチタネートを0.020部に変更した以外は同様の方法で非晶質ポリエステル3を得た。得られた物性を表10に示す。
非晶質ポリエステル3の製造例において、ポリエステルモノマーの仕込み量を表10の通りに変更した以外は同様の方法で非晶質ポリエステル4を得た。得られた物性を表10に示す。
イオン交換水332質量部にNa3PO4・12H2Oを5質量部投入し温度60℃に加温した後、撹拌機(クレアミックス、エム・テクニック社製)を用いて毎秒58.3回転(3500rpm)にて撹拌した。これに1.0モル/リットル−CaCl2水溶液27質量部を添加し、Ca3(PO4)2を含む水系媒体を得た。
・スチレン45質量部
・n−ブチルアクリレート 25質量部
・結晶性樹脂1 5質量部
・非晶質ポリエステル樹脂1 4質量部
また、下記の材料をアトライターで分散し、微粒状着色剤含有単量体を得た。
・スチレン 30質量部
・C.I.ピグメントブルー15:37.4質量部
・帯電制御剤ボントロンE−88(オリエント化学社製) 5.0質量部
トナー製造例1のC.I.ピグメントブルー15:3をC.I.ピグメントレッド269に変更し、また、非晶質ポリエステル1を非晶質ポリエステル2に変更する以外は同様の方法により、それぞれMgトナー1を得た。トナーの物性を表11に示す。
トナー製造例1のC.I.ピグメントブルー15:3をC.I.ピグメントイエロー93に変更し、また、非晶質ポリエステル1を非晶質ポリエステル3に変更する以外は同様の方法により、Yeトナー1を得た。トナーの物性を表11に示す。
トナー製造例1のC.I.ピグメントブルー15:3をカーボンブラックに変更し、また、非晶質ポリエステル1を非晶質ポリエステル4に変更する以外は同様の方法により、Bkトナー1を得た。トナーの物性を表11に示す。
トナー製造例1において、結晶性樹脂1の添加量を10.0質量部に変更する以外は同様の手法によりCyトナー2を得た。Cyトナー2の物性を表11に示す。
トナー製造例5において、結晶性樹脂1を結晶性樹脂2に変更し、ワックスをベヘン酸ベヘニル(融点;73.8℃)9部とHNP51 3部に変更する以外は同様の手法によりCyトナー3を得た。トナー6の物性を表11に示す。
トナー製造例5において、結晶性樹脂1を結晶性樹脂3に変更して添加量を70質量部とし、ワックスをセバシン酸ジベヘネート(融点;73.3) 12部に変更する以外は同様の手法によりCyトナー4を得た。Cyトナー4の物性を表11に示す。
トナー製造例6において、結晶性樹脂1を結晶性樹脂4に変更する以外は同様の手法によりCyトナー5を得た。Cyトナー5の物性を表11に示す。
トナー製造例5において、結晶性樹脂1を結晶性樹脂5に変更し、ワックスをHNP−9(日本精蝋社製)にする以外は同様の手法によりCyトナー6を得た。Cyトナー6の物性を表11に示す。
トナー製造例1において、結晶性樹脂1を結晶性樹脂6に変更し、ワックスをHNP−9(日本精蝋社製)にする以外は同様の手法によりCyトナー7を得た。Cyトナー7の物性を表11に示す。
実施例の未定着画出しには、市販のカラーレーザープリンターLBP7200C(Canon社製)を用いた。
評価は、前記した温度制御手段に基づき、定着器の投入電力を長手中央部のターゲット温度に合わせて制御し、ターゲット温度が130℃〜200℃まで10℃刻みで評価できるように調整し得られたベタ画像を以下の基準に則り目視で判断して評価した。なお加圧ローラーの回転速度250mm/秒とした。評価結果を表12に示す。
A:150℃以上でブリスターが発生しない。
B:160℃以上でブリスターが発生しない。
C:170℃以上でブリスターが発生しない。
D:180℃以上でブリスターが発生しない。
トナー処方および定着装置を表12に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価をおこなった。トナー2〜7の物性を表12に示す。また、実施例1と同様にして評価を行った結果を表12に示す。
トナー処方および定着装置を表12に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価をおこなった。また、実施例1と同様にして評価を行った結果を表12に示す。
1a 導電層(円筒形回転体)
1b 弾性層
1c 離型層
2 磁性コア
2c 閉磁路の磁性コア
3 励磁コイル
4 温度検知素子
7 加圧ローラー
9 ニップ部形成部材
N ニップ部
M 誘導起電力安定領域
Bin 円筒形回転体としてのローラー1の中を紙面奥方向に向かう磁力線
Bout 円筒形回転体としてのローラー1の外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線
11a 導電層
11b 弾性層
11c 離型層
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j 分割した磁性コア
12 励磁コイル
21 定着ローラー
21a 導電層
21b 弾性層
21c 離型層
22 励磁コイル
23 加圧ステー
24 温度検知素子
Bin 磁性コア内部の磁路を通る磁束
Bni ニッケルの材料内部の磁路を通る磁束
100 本実施例に従う画像形成装置
200 円筒形回転体
200a 円筒形回転体の材料内部
B// 軸Xと平行方向に発生する磁場
E// B//によって発生する渦電流
B⊥ 軸Xと⊥方向に発生する磁場
E⊥ B⊥によって発生する渦電流
Bcou 金属ステーの中を通る反対向きの磁束
Ls 定着フィルムの長手長さ
Lt 補強ステーの長手長さ
Lc 磁性コアの長手長さLp 画像形成領域
Claims (10)
- 加熱加圧手段により記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する定着方法において、
前記加熱加圧手段が、
加熱部材と、
加圧部材と
を有し、
前記加熱部材が、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
を有し、
前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗が、
前記導電層の磁気抵抗と、
前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
の合成磁気抵抗の30%以下であって、
前記トナー画像を形成するトナーが、結着樹脂および着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであり、
前記トナーの20℃から2.0℃/分の昇温速度で120℃まで加熱する粘弾性測定を行って得られる、
横軸に温度(℃)、
縦軸に該トナーの損失弾性率G”(Pa)を前記損失弾性率の単位(Pa)で除した値の常用対数(LogG”)
をプロットして得られる温度−貯蔵弾性率曲線を、温度で1回微分して得られる曲線1において、60℃以上の範囲における前記曲線1の最小値が、−0.32以上−0.15以下である
ことを特徴とする定着方法。 - 前記導電層が、銀、アルミニウム、オーステナイト系ステンレス鋼および銅からなる群より選択される少なくとも1つで形成されている請求項1に記載の定着方法。
- 前記回転体が、筒状のフィルムである請求項1または2に記載の定着方法。
- 前記トナー粒子に含有される前記結着樹脂が、ビニル系樹脂およびポリエステル樹脂からなる群より選択される少なくとも1種である請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着方法。
- 前記ビニル系樹脂が、スチレン系重合性単量体およびアクリル系重合性単量体の共重合体である請求項4に記載の定着方法。
- 前記トナー粒子が、結晶性樹脂を含有する請求項1〜5のいずれか1項に記載の定着方法。
- 前記結晶性樹脂が、結晶性ポリエステル樹脂である請求項5に記載の定着方法。
- 前記結晶性ポリエステル樹脂の、示差走査熱量計(DSC)測定において昇温時に観測される吸熱ピークの面積から求められる融解熱量(ΔH)が、100J/g以上140J/g以下である請求項7に記載の定着方法。
- 前記トナー粒子が、ワックスを含有する請求項1〜8のいずれか1項に記載の定着方法。
- 前記ワックスが、炭化水素系ワックスである請求項9に記載の定着方法。
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