JP2015106135A - 定着方法 - Google Patents

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Masashi Kawamura
政志 河村
池田 直隆
Naotaka Ikeda
池田  直隆
橋本 康弘
Yasuhiro Hashimoto
康弘 橋本
雄平 照井
Yuhei Terui
雄平 照井
洋 北
Hiroshi Kita
洋 北
静磨 西村
Shizumaro Nishimura
静磨 西村
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公孝 一瀬
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Abstract

【課題】 色ムラが低減された高画質出力を可能とする定着方法を提供する。【解決手段】 加熱加圧手段で記録材上のトナー画像を定着し定着画像を形成する定着方法において、加熱加圧手段が加熱部材と加圧部材を有し、加熱部材が導電層を有する筒状の回転体と回転体の内部に配置され螺旋軸が回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するコイルと螺旋形状部の中に配置され交番磁界の磁力線を誘導するコアを有し、母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間でコアの磁気抵抗が導電層の磁気抵抗と導電層とコアの間の領域の磁気抵抗の合成磁気抵抗の30%以下であり、トナー画像を形成するトナーに含まれるトナー粒子の断面画像中の顔料分散性の指標が0.70以上1.30以下であり、分散顔料粒径が30nm以上130nm以下である。【選択図】 図1

Description

本発明は、電子写真法に用いる定着方法に関する。
近年、デジタルカメラ、携帯端末などによって取り込まれた画像データやポスターなどのグラフィック画像をユーザーがデジタル複写機、デジタルプリンターなどの画像形成装置を用いて出力する機会が増加している。
このような用途で画像形成装置を用いる場合、画質・質感をより重視するため、出力画像に、全面で均一な光沢度を有し、階調性が再現できる画像を出力する必要がある。
また、ユーザーの要望として、プリント信号を受信してから未定着トナー画像が形成された記録材を加熱定着するまでの時間(ウォームアップ時間)を短縮することも求められている。
電子写真方式の複写機やプリンターなどの画像形成装置に搭載される定着装置は、
加熱回転体(加熱部材)と、
加熱回転体に接触する加圧ローラー(加圧部材)と、
で形成されたニップ部で未定着トナー画像を担持した記録材を搬送しながら加熱してトナー画像を記録材に定着するものが一般的である。
その中でも、ウォームアップ時間を短縮できるという観点から、加熱回転体の導電層を直接発熱させることができる電磁誘導加熱方式の定着装置が開発され実用化されている。
特許文献1〜3に開示されている定着装置は、磁界発生手段から発生した磁界で加熱回転体の導電層に誘導された渦電流によって導電層が発熱するものである。このような定着装置は、加熱回転体の導電層として、磁束を通しやすい、厚さが200μm〜1mmの鉄やニッケルなどの磁性金属またはこれらが主体の合金を用いている。
ところで、定着装置のウォームアップ時間を短くしようとすると、加熱回転体の熱容量を小さくする必要があるので、加熱回転体の導電層も薄い方が有利である。しかしながら、上記文献に開示されている定着装置においては、加熱回転体の厚みを薄くすると、加熱回転体の熱が記録材などに奪われやすい状況となり、所望の定着温度に戻すために、若干の時間を要する場合がある。
そのため、加熱回転体1周目と2周目とで微小な温度差が生まれ、これが記録材内のグロスムラにつながることもある。
一方、出力画像の高画質化のために、使用するトナーの発色性を向上した場合、上記のようなグロスムラがあると、色ムラが目立ちやすくなり、画質を向上することはできない。
また、近年、プリンターなどにおいて、環境への配慮から、省エネルギー化が求められている。特に、定着エネルギーの低減が重要であり、定着エネルギーの低減の対策として、従来よりも低温で速やかに溶融することにより、素早く、かつ低エネルギーで定着させることのできるトナーの実現も望まれている。
これらの要求を満たすためには、トナーを軟化させる必要があるが、耐熱保存性や耐久性のような観点から、単純にトナーを軟化させるだけでは達成できない。そこで、シャープメルト性を有する結晶性樹脂を添加することも検討されている。
このような結晶性樹脂を用いてトナーの低温定着化を可能としても、上記のような温度差があると、低温での定着時にトナーの溶融部分と未溶部分が生じ、結果グロスムラが生じ、色ムラが生じることで画質が低下してしまう。
特開2000−81806号公報 特開2004−341164号公報 特開平9−102385号公報
本発明の目的は、上記問題点を解決し、色ムラが低減された高画質出力を可能とする定着方法を提供することにある。
本発明は、
加熱加圧手段により記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する定着方法において、
前記加熱加圧手段が、
加熱部材と、
加圧部材と
を有し、
前記加熱部材が、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
を有し、
前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗が、
前記導電層の磁気抵抗と、
前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
の合成磁気抵抗の30%以下であり、
前記トナー画像を形成するトナーに含まれるトナー粒子の断面画像中の顔料分散性の指標(CEI)が、0.70以上1.30以下であり、分散顔料粒径が、30nm以上130nm以下である
ことを特徴とする定着方法である。
本発明によれば、色ムラが低減された高画質出力を可能とする定着方法を提供することができる。
定着フィルムと磁性コアとコイルの斜視図 定着装置1の画像形成装置の概略構成図 定着装置1の定着装置の断面模式図 駆動周波数と出力電力との関係図 ソレノイドコイルと磁性コア周辺の磁界の模式図 ソレノイドコイルの磁性コアの端部近傍の模式図 回路を貫く磁束が安定する領域の模式図 円筒形回転体と磁束が安定する領域の模式図 定着装置1の目的に沿わない磁力線形状の例 有限長ソレノイドを配置した構造体の模式図 単位長さ当たりのコア・コイル・円筒体を含む空間の磁気等価回路図 磁性コアとギャップの模式図 円筒形回転体内部の電流と磁場の断面模式図 渦電流E//の説明図 渦電流E⊥の説明図 定着装置1の構成において電力の変換効率を測定した結果 定着装置2としての誘導加熱方式の定着装置構成 定着装置2の発熱の模式図 コイルとスリーブの等価回路 回路の効率に関する説明図 電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置の図 円筒形回転体外部磁束の比率と変換効率の関係の図
加熱加圧手段により記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する定着装置の中でも、従来の電磁誘導加熱方式の定着装置は、加熱回転体(加熱部材)の導電層を薄くすることで、熱容量を小さく設計する方向にある。これは、ウォームアップ時間を短縮するためである。その結果、ウォームアップ時間は短くなるものの、記録材が加熱回転体の有する熱を奪った際の、加熱回転体の温度低下も大きくなる。この温度低下は、短時間で回復されるように設計はされているが、加熱回転体1周目と2周目といった極短時間での領域においては、十分に回復することは困難である。
その結果、同じ1枚の記録材でも、加熱回転体1周目と2周目との定着範囲において、微小な温度差が生じ、これが、光沢度の不均一化が生じ色ムラにつながる可能性がある。特にグラフィック用途で使用されるような画質・質感をより重視されるような状況においては問題となりうる場合がある。
そこで、本発明者らは、電磁誘導加熱方式の定着装置において、加熱回転体の微小な温度低下が起こりにくい定着装置構成とした。これと、発色性の良いトナーとを組み合わせることで、光沢度均一性に優れ、色ムラのない高画質な画像を提供できることを見出した。発色性の良いトナーとは、具体的には、トナー粒子の断面画像中の顔料分散性の指標(CEI)が、0.70以上1.30以下であり、分散顔料粒径が、30nm以上130nm以下であるトナー粒子を有するトナーである。
以下、本発明に関して、詳細を説明する。
定着装置は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
を有する定着装置において、
前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗が、
前記導電層の磁気抵抗と、
前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
の合成磁気抵抗の30%以下であることを特徴とするものである。
以下、図面に基づき本発明について説明する。
(1)画像形成装置例
図2は本実施例に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用したレーザービームプリンターである。101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、所定の周速度にて回転駆動される。
感光ドラム101は回転する過程において帯電ローラー102により所定の極性、所定の電位、に一様に帯電処理される。103は露光手段としてのレーザービームスキャナである。スキャナ103は、不図示のイメージスキャナやコンピューターなどの外部機器から入力される画像情報に応じて変調したレーザー光Lを出力して、感光ドラム101の帯電処理した面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム101表面の電荷が除電され感光ドラム101の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。104は現像装置であり、現像ローラー104aから感光ドラム101表面にトナーが供給されて静電潜像がトナー画像として現像される。105は、記録材Pが積載して収納される給紙カセットある。給紙開始信号に基づいて給紙ローラー106が駆動されて給紙カセット105内の記録材Pが一枚ずつ分離して給紙される。その記録材Pは、レジストレーションローラー107を介して、感光ドラム101と転写ローラー108とで形成された転写部位108T所定のタイミングで導入される。すなわち、感光ドラム101上のトナー画像の先端部が転写部位108Tに到達するタイミングで、記録材Pの先端部が転写部位108Tに到達するようにレジストレーションローラー107で記録材Pの搬送が制御される。転写部位108Tに導入された記録材Pは、この転写部位108Tで搬送され、その間、転写ローラー108は不図示の転写バイアス印加電源によって転写バイアス電圧が印加される。転写ローラー108はトナーと逆極性の転写バイアス電圧が印加されることで転写部位108Tにおいて感光ドラム101の表面側のトナー画像が記録材Pの表面に転写される。転写部位108Tにおいてトナー画像が転写された記録材Pは感光ドラム101の表面から分離されて搬送ガイド109を経由し定着装置Aで定着処理される。定着装置Aについては後述する。一方、記録材が感光ドラム101から分離した後の感光ドラム101の表面はクリーニング装置110でクリーニングされ、繰り返し画像形成動作に供される。定着装置Aを通った記録材Pは、排紙口111から排紙トレイ112上に排出される。
(2)定着装置
(2−1)概略構成
図3は定着装置1の概略断面図である。定着装置1は、筒状の加熱回転体しての定着フィルム1と、定着フィルム1の内面と接触するニップ部形成部材としてのフィルムガイド9(ベルトガイド)と、対向部材としての加圧ローラー(加圧部材)7と、を有する。加圧ローラー7は、定着フィルム1を介してニップ部形成部材とともにニップ部Nを形成する。ニップ部Nでトナー画像Tを担持した記録材Pを搬送しながら加熱して、トナー画像Tを記録材Pに定着する。
ニップ部形成部材9は、不図示の軸受け手段および付勢手段により総圧約50N〜100N(約5kgf〜約10kgf)の押圧力で加圧ローラー7に対して定着フィルム1を挟んで押圧されている。そして、加圧ローラー7は、不図示の駆動源によって矢印方向に回転駆動され、ニップ部Nにおける摩擦力で定着フィルム1に回転力が作用し、定着フィルム1は加圧ローラー7に従動して回転する。ニップ部形成部材9は、定着フィルム1の内面をガイドするフィルムガイドとしての機能もあり、耐熱性樹脂であるポリフェニレンサルファイド(PPS)などで構成されている。
定着フィルム1(定着ベルト)は、直径(外径)が10〜100mmの金属製の導電層1a(基層)と、導電層1aの外側に形成した弾性層1bと、弾性層1bの外側に形成した表層1c(離型層)と、を有する。以後、導電層1aを「円筒形回転体」または「円筒体」と記す。定着フィルム1は、可撓性を有する。
実施例1に用いた定着装置1においては、円筒形回転体1aは、比透磁率が1.0で、厚さが20μmのアルミニウムを用いる。円筒形回転体1aの材質としては、非磁性材料であるアルミニウム、銅(Cu)、Ag(銀)および、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS)のうち、少なくとも1つで形成されていることが好ましい。
本定着装置の特徴の1つとして、円筒形回転体1aに使用できる材質の選択肢が広いこと挙げられる。これにより、加工性に優れた材質やコストの安い材質を使うことができるというメリットがある。
円筒形回転体1aの厚みは75μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下である。なぜなら、円筒形回転体1aに適度な可撓性を持たせ、かつ、熱容量を小さくしたいためである。直径が小さい方が、熱容量を小さくするのに有利である。
以上の理由により、熱容量の極小化を実現するためには、導電層1aの厚みを50μm以下で使いこなすことが重要である。本発明の定着装置は、後述するが、電磁誘導加熱方式の定着装置においても、導電層1aの厚みを50μm以下にできるというメリットがある。
弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムで形成され、厚みが0.1mm〜0.3mmである。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として厚みが10μm〜50μmのフッ素樹脂チューブを被覆している。磁性コア2は、定着フィルム1の中空部に、定着フィルム1の母線方向に挿通されている。その磁性コア2の外周に励磁コイル3が巻かれている。
(2−2)磁性コア
図1は円筒形回転体1a(導電層)と、磁性コア2と、励磁コイル3の斜視図である。
磁性コア2は、円柱形状をしており、不図示の固定手段で定着フィルム1のほぼ中央に配置させている。磁性コア2は、励磁コイル3にて生成された交番磁界の磁力線(磁束)を円筒形回転体1aの内部(円筒形回転体1aと磁性コア2の間の領域)に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する役割がある。この磁性コア2の材質は、ヒステリシス損が小さく比透磁率の高い材料、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、やパーマロイなどの高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が好ましい。特に21kHz〜100kHz帯の高周波交流を励磁コイルに流す場合、高周波電流において損失の小さな焼成フェライトが好ましい。磁性コア2は、円筒形回転体1aの中空部に収納可能な範囲で、断面積をできるだけ大きくすることが望ましい。本実施例では磁性コアの直径は5mm〜40mmとし、長手方向の長さ230〜300mmとする。なお、磁性コア2の形状は円柱形状に限定されず、角柱形状などでも良い。また、磁性コアを長手方向に複数分割し、各コア間にギャップ(空隙)を設けても良いが、その際は後述する理由により分割した磁性コア同士のギャップを極力小さく構成することが望ましい。
(2−3)励磁コイル
励磁コイル3は、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1〜2mmの銅線材(単一導線)を、磁性コア2に約10巻〜100巻で螺旋状に巻いて形成する。本実施例では励磁コイル3の巻き数は18回とする。励磁コイル3は、磁性コア2に定着フィルム1の母線方向に交差する方向に巻回されているため、この励磁コイルに高周波電流を流すと、定着フィルム1の母線方向に平行な方向に交番磁界を発生させることができる。
なお、励磁コイル3は、必ずしも磁性コア2に巻きつけられている必要はない。励磁コイル3は螺旋形状部を有し、その螺旋形状部の螺旋軸が円筒形回転体の母線方向と平行になるように螺旋形状部が円筒形回転体の内部に配置され、磁性コアが螺旋形状部の中に配置されていれば良い。例えば、円筒形回転体の内部に励磁コイル3が螺旋状に巻かれたボビンを有し、磁性コア2がそのボビンの内部に配置されている構成でも良い。
また、発熱原理的に螺旋軸と円筒形回転体の母線方向が平行であるときに、発熱効率は最も高くなる。しかしながら、螺旋軸の円筒形回転体の母線方向に対する平行度がずれた場合、「回路を平行に貫く磁束の量」がわずかに減少し、その分発熱効率が減少するものの、数°程度傾くだけであれば、実用上問題はない。
(2−4)温度制御手段
図1における温度検知部材4は、定着フィルム1中央部の表面温度を検知するために設けられる。本実施例では、温度検知部材4として非当接型サーミスタを用いている。高周波コンバータ5は、励磁コイル3に、給電接点部3a、3bを介して高周波電流を供給する。なお、日本国内では電波法施行規則により電磁誘導加熱の利用周波数は20.05kHzから100kHzの範囲に定められている。また、電源の部品コスト上、周波数は低いことが好ましいため、利用周波数帯の下限付近21kHz〜40kHzの領域において周波数変調制御を行う。以下周波数変調制御について説明する。共振回路を用いて誘導発熱を行う電磁誘導方式においては図4のグラフのように、駆動周波数により出力電力が変化する。これは、駆動周波数が共振周波数と一致するときに電力は最大となり、駆動周波数が共振周波数から遠ざかると電力が下がるという性質を利用したものである。すなわち、目標温度と温度検知部材4の温度差に応じて、駆動周波数を21kHz〜100kHzまで変化させることにより、出力電力を調整するという方法である。制御回路6は、温度検知部材4によって検出された温度を基に高周波コンバータ5を制御する。これにより、定着フィルム1は電磁誘導加熱されて表面の温度が所定の目標温度(約150℃〜200℃)になるように電力が制御される。
(3)発熱原理
(3−1)磁力線の形状と誘導起電力
まず、図5(a)は、同形状のソレノイドコイル3の中心に磁性コア2を挿通して磁路を形成した場合の、コイル形状と磁界の対応図である。本磁力線の向きは、矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。磁性コア2は、ソレノイドコイル3にて生成された磁力線を内部に誘導し、磁路を形成する部材として機能する。定着装置1の磁性コア2は、環状になっているものではなく、長手方向にそれぞれ端部を有するものである。そのため、磁力線は、大多数がソレノイドコイル中央の磁路に集中して通って、磁性コア2の長手方向の端部において拡散する形状の開磁路となる。そのため、コイルの隙間Δdにおける磁力線の漏えいも少なく、両極から出た磁力線は、外周の遥か遠くで繋がる形状の開磁路となる(図の表記上は端部で途切れている)。図5(b)は、ソレノイド中心軸Xにおける磁束密度の分布を示す。磁束密度は、グラフ上の曲線B2に示すように、B1と比較してソレノイドコイル3の端部での磁束密度の減衰が少なくなっており、台形に近い形状となる。
(3−2)誘導起電力
発熱原理はファラデーの法則に従う。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。図6(a)に示すソレノイドコイル3の磁性コア2の端部近傍に、コイルと磁性コアより直径の大きな回路Sを置き、コイル3には高周波交流を流す場合を考える。高周波交流を流した場合、ソレノイドコイル周辺には交番磁界(時間とともに大きさと方向が変化を繰り返す磁界)が形成される。そのとき、回路Sに発生する誘導起電力は、以下の式(1)に従い、ファラデーの法則より回路Sの中を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する。
V:誘導起電力
N:コイル巻き数
Δφ/Δt:微小時間Δtでの回路を垂直に貫く磁束の変化
すなわち、励磁コイルに直流電流を流して静磁界を形成した状態において、回路Sの中を磁力線の垂直成分がより多く通過していると、高周波の交流電流を流して交番磁界を発生させたときの際の磁力線の垂直成分の時間変化も大きくなる。その結果、発生する誘導起電力も大きくなり、その磁束の変化を打ち消す方向に電流が流れる。すなわち、交番磁界を発生させた結果、電流が流れると、磁束の変化は打消されて静磁界を形成した際とは異なる磁力線形状となる。また、この誘導起電力Vは、交流電流の周波数が高い(すなわちΔtが小さい)ほど大きくなる傾向がある。したがって、50〜60Hzの低周波数の交流電流を励磁コイルに流した場合と、21kHz〜100kHzの高周波数の交流電流を励磁コイルに流した場合では、所定の磁束の量で発生させることのできる起電力は大きく異なる。交流電流の周波数を高周波数にすると、少ない磁束でも高い起電力を発生させることができるのである。したがって、交流電流の周波数を高周波数することは、断面積の小さな磁性コアで大きい熱量を発生させることができるため、小さな定着装置に大きな熱量を発生させたい場合に非常に有効である。これは、交流電流の周波数を大きくすることによって、トランスを小型化できることと似ている。例えば、低周波数帯(50〜60Hz)で用いられるトランスは、Δtが大きい分だけ磁束φを大きくする必要があり、磁性コアの断面積を大きくする必要がある。これに対して高周波数帯(kHz)で用いられるトランスは、Δtが小さい分だけ磁束φを小さくすることが可能であり、磁性コアの断面積を小さく設計することができる。
以上述べたことから、交流電流の周波数を21kHz〜100kHzの高周波数帯で用いることで、磁性コアの断面積を小さくして画像形成装置の小型化を実現することができる。
交番磁界によって高効率で回路Sに誘導起電力を発生させるためには、回路Sの中を磁力線の垂直成分がより多く通過している状態を設計する必要がある。しかし、交番磁界においては、コイルに誘導起電力が発生した際の反磁界の影響なども考慮する必要があり、現象が複雑となってしまう。本発明の定着装置については後述するが、本発明の定着装置を設計するためには、誘導起電力の発生していない静磁界の状態の磁力線の形によって議論を進めることによって、より簡単な物理モデルで設計を進めることができる。すなわち静磁界における磁力線形状を最適化することによって、交番磁界において高効率に誘導起電力を発生させる定着装置が設計できる。
図6(b)は、ソレノイド中心軸Xにおける磁束密度の分布を示す。コイルに直流電流を流して静磁界(時間的に変動しない磁界)を形成した場合を考えると、回路Sを位置X1に置いたときの磁束に対して、位置X2に置いたときに、回路Sを垂直に貫く磁束はB2に示すように増加する。そして位置X2において、磁性コア2に束縛された磁力線がほぼ全て回路Sの中に納まり、位置X2よりもX軸正方向の安定領域Mにおいては、回路を垂直に貫く磁束は飽和し、常に最大となる。同様のことは反対側端部にも言え、図7(b)の磁束密度の分布に示すように位置X2から、反対側端部のX3までの安定領域Mは、回路Sの中を垂直に貫く磁束密度は飽和し、安定している。図7(a)に示すように、この安定領域Mは、磁性コア2のある領域内に存在する。
図8(a)に示すように、本発明における磁力線構成としては、静磁界を形成した場合において円筒形回転体1aを、X2からX3の領域で覆せる。そして磁性コア2の一端(磁極NP)から他端(磁極SP)まで、円筒形回転体の外部を磁束が通る磁力線の形状を設計する。そして、安定領域Mを用いて記録材の画像を加熱する。したがって、定着装置1においては、少なくとも磁路を形成するための磁性コア2の長手方向の長さは、記録材Pの最大の画像加熱領域ZLよりも長い構成とする必要がある。さらに好ましい構成としては、磁性コア2と励磁コイル3の両方の長手方向の長さを最大の画像加熱領域ZLよりも長い構成とすると良い。そうすることによって、記録材P上のトナー画像を端部まで均一に加熱することが可能となるからである。また、円筒形回転体1aの長手方向の長さは、最大の画像加熱領域ZLより長く構成することが必要である。本定着装置において、図8(a)に示すソレノイド磁場を形成した際に、2つの磁極NPとSPが最大の画像加熱領域ZLよりも外側に出ていることが重要である。そうすることによって、ZLの範囲に均一な熱を発生させることができる。
なお、最大の画像加熱領域の代わりに記録材の最大搬送領域を用いても良い。
本定着装置では、磁性コア2の長手方向の両端部がそれぞれ、定着フィルム1の母線方向の端面から外側に突出している。これによって、定着フィルム1の母線方向全域の発熱量を安定させることができる。
従来の電磁誘導加熱方式の定着装置は、円筒形回転体の材料内部に磁力線を注入するという技術思想で設計されている。これに対して、本定着装置の電磁誘導加熱方式は回路Sを垂直に貫く磁束が最大となる状態で、円筒形回転体の全域を発熱させる、つまり、円筒形回転体の外部を磁束が通るようにするという技術思想で設計されていることが特徴である。よって、円筒形回転体の全域を発熱させるという設計が従来の電磁誘導加熱方式の定着装置とは異なり、記録材が通過しても、温度低下の非常に小さい定着装置構成となっているのである。
以下に、本発明の目的に沿わない磁力線形状の例を3つ示す。図9(a)は、磁力線が円筒形回転体の内側(円筒形回転体と磁性コアの間の領域)を通っている例を示す。この場合、円筒形回転体の内側を通る磁束は、図中で左方向に向かう磁束と右方向に向かう磁束とが混在するため、両者は打ち消し合ってファラデーの法則上、φの積分値は減少してしまい、発熱効率が減少するため好ましくない。このような磁力線形状は、磁性コアの断面積が小さい場合、磁性コアの比透磁率が小さい場合、磁性コアが長手方向に分割して大きなギャップを形成している場合、円筒形回転体の直径が大きい場合に生じる。
図9(b)は、磁力線が円筒形回転体の材料内部を通っている例を示す。このような状態は、円筒形回転体の材質がニッケルや鉄などの比透磁率の高い材質である場合に生じやすい。
以上述べたことから、本発明の目的に沿わない磁力線形状は、下記の(I)〜(V)の場合に形成され、これは円筒形回転体の材料内部に発生する渦電流損によるジュール熱で発熱する従来の定着装置である。
(I)円筒形回転体の材質の比透磁率が大きい
(II)円筒形回転体の断面積が大きい
(III)磁性コアの断面積が小さい
(IV)磁性コアの比透磁率が小さい
(V)磁性コアが長手方向に分割して大きなギャップを形成している
図9(c)は、磁性コアが長手方向に複数に分割されていて磁性コアの両端部NP、SP部分以外の箇所MPにおいても磁極ができている場合である。本発明の目的を達成するためには、NPとSPの2つのみを磁極とするよう磁路を形成するのが好ましく、磁性コアを長手方向で複数に分割して磁極MPを作ることは好ましくない。(3−3)にて後述する理由により、磁性コア全体の磁気抵抗を上昇させてしまい、磁路を形成しにくくなること、磁極MP部分の付近において発熱量が減少して、均一な画像加熱しにくい場合がある。
分割する場合は、磁性コアが十分磁路として働くよう、磁気抵抗を小さく、パーミアンスを大きく保てる範囲((3−6)に後述)に限られる。
(3−3)磁気回路とパーミアンス
次に、(3−2)に説明した発熱原理を達成するための、具体的な設計指針について説明する。そのためには、定着装置の各構成部品の円筒形回転体の母線方向への磁気の通りやすさを、形状係数によって表現する必要がある。その形状係数は、「静磁界における磁気回路モデル」の「パーミアンス」を用いる。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁束が主として通る磁路の閉回路を、電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができるものである。磁気回路の基礎計算式は、電気回路に関するオームの法則と同一であり、全磁束をφ、起磁力をV、磁気抵抗をRとすると、この3つの要素は
全磁束φ=起磁力V/磁気抵抗R ・・・(2)
の関係にある(したがって、電気回路における電流は磁気回路における全磁束φと対応し、電気回路における起電力は磁気回路における起磁力Vと対応し、電気回路における電気抵抗は磁気回路における磁気抵抗と対応する)。しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。したがって上記(2)は
全磁束φ=起磁力V×パーミアンスP ・・・(3)
で置き換えられる。このパーミアンスPは、磁路の長さをB、磁路の断面積をS、磁路の透磁率をμとしたとき、
パーミアンスP=透磁率μ×磁路断面積S/磁路長B ・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、磁路長Bが短く、磁路断面積Sおよび透磁率μが大きいほど大きくなることを示し、パーミアンスPが大きい部分に磁束φがより多く形成される。
図8(a)に示すように、静磁界において磁性コアの長手方向の一端から出る磁力線の大部分が円筒形回転体の外部を通って磁性コアの他端まで戻るように設計する。その設計の際は、定着装置を磁気回路に見立て、「磁性コア2のパーミアンスは十分大きく、かつ円筒形回転体と円筒形回転体の内側のパーミアンスが十分小さい状態」にすれば良い。
図10において、円筒形回転体(導電層)を円筒体と記す。図10(a)は、円筒体1a内部に、半径:a1[m]、長さ:B[m]、比透磁率:μ1の磁性コア2に、巻き数:N[回]の励磁コイル3を巻いた有限長ソレノイドを配置した構造体である。ここで、円筒体は、長さ:B[m]、円筒内側半径:a2[m]、円筒外側半径:a3[m]、比透磁率:μ2の導体である。円筒体内側および外側の真空の透磁率:μ0[H/m]とする。ソレノイドコイルに電流:I[A]を流したときに、磁性コアの任意の位置の単位長さ当たりに発生する磁束8をφc(x)とした。
図10(b)は、磁性コア2の長手方向に垂直な断面を拡大した図である。図中の矢印は、ソレノイドコイルに電流:Iを流したときに、磁性コアの内部、円筒体内外の空気、および、円筒内を通る磁性コアの長手方向に平行な磁束を表している。磁性コア中を通る磁束をφc(=φc(x))、円筒体の内側の空気中を通る磁束をφa_in、円筒体内を通る磁束をφcy、円筒体外側の空気中を通る磁束をφa_outとしている。
図11(a)に、図10(b)に示した単位長さ当たりのコア・コイル・円筒体を含む空間の磁気等価回路を示す。磁性コアを通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コアのパーミアンスをPc、円筒体の内側の空気中のパーミアンスをPa_in、円筒体内のパーミアンスをPcy、円筒体外側の空気のパーミアンスをPa_outとしている。
円筒体内部または円筒体のパーミアンスPa_in、Pcyに比べて磁性コアのパーミアンスPcが十分大きいとき、以下の関係が成り立つ。
φc=φa_in+φcy+φa_out ・・・(5)
すなわち、磁性コアの内部を通過した磁束は、φa_in、φcy、φa_outの何れかを必ず通過して磁性コアに戻ってくることを意味する。
φc=Pc・Vm ・・・(6)
φa_in=Pa_in・Vm ・・・(7)
φcy=Pcy・Vm ・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(9)
よって、(5)に(6)〜(9)を代入すると下記ようになる。
Pc・Vm=Pa_in・Vm+Pcy・Vm+Pa_out・Vm
=(Pa_in+Pcy+Pa_out)・Vm
∴Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0 ・・・(10)
図10(b)より、磁気コイルの断面積:Sc、円筒体内側空気の断面積:Sa_in、円筒体の断面積:Scyとすると、各領域の単位長さ当たりのパーミアンスは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1) ・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)−(a1))・・・(12)
Pcy=μ2・Scy=μ2・π・((a3)−(a2)) ・・・(13)
さらに、Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0であるから、円筒体外側空気中のパーミアンスは次のように表すことができる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Scy
=π・μ1・(a1)
−π・μ0・((a2)−(a1)
−π・μ2・((a3)−(a2)) ・・・(14)
各領域を通る磁束は、式(5)〜式(10)に示すように、各領域のパーミアンスに比例する。式(5)〜(10)を用いれば、後述する表1のように各領域を通る磁束の比率を算出することができる。なお、円筒体の中空部に、空気以外の材質が存在していた場合も、その断面積と透磁率から、円筒体内の空気と同じ方法でパーミアンスを求めることができる。この場合のパーミアンスの計算の仕方は後述する。
本発明においては、「円筒形回転体長軸方向への磁気の通りやすさを表現する形状係数」として、上記した「単位長さ当たりのパーミアンス」を利用する。まず、式(5)〜(10)を用いて磁性コア、フィルムガイド(ニップ部形成部材)、円筒体内空気、円筒体に対して、断面積と透磁率から単位長さ当たりのパーミアンスを計算する。そして、式(14)を用いて円筒体外空気のパーミアンスを計算する。本計算は、「円筒体に内包し、磁路になり得る部材」は全て考慮する。そして磁性コアのパーミアンスの値を100%として、各部分のパーミアンスの割合が何%になるかを示している。これによれば、どの部分において最も磁路が形成されやすいか、磁束がどの部分を通過するかについて磁気回路を用いて数値化することができる。
パーミアンスの代わりに磁気抵抗R(パーミアンスPの逆数)を用いても良い。なお、
磁気抵抗を用いて議論する場合、磁気抵抗は単純にパーミアンスの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができ、単位は「1/(H・m)」である。
次に、「磁束の比率」について、磁気等価回路を図11(b)を用いて説明する。
本発明において、静磁界における磁気回路モデル上で、磁性コア内部を通って磁性コアの一端から出た磁束100%が通る経路は次のような内訳である。磁性コアを通過して磁性コアの一端を出た磁束100%のうち0.0%がフィルムガイドを、0.1%が円筒体内の空気を、0.0%が円筒体を、99.9%が円筒体外の空気を通る。以後この状態を、「円筒体外部磁束の比率:99.9%」と表現する。なお、理由は後述するが本発明の目的を達成するためには「静磁界における磁気回路モデル上、円筒体外部を通る磁束の比率」の値が100%に近いほど良い。
「円筒体外部を通る磁束の比率」は、励磁コイルに直流電流を流し静磁界を形成した際に磁性コアの内部をフィルムの母線方向に通過して磁性コアの長手方向の一端から出た磁束のうち円筒形回転体の外側を通って磁性コアの他端に戻る磁束の割合である。
式(5)〜(10)に記載したパラメータで表すと、「円筒体外部を通る磁束の比率」
は、Pcに対するPa_outの比率(=Pa_out/Pc)である。
そして、「円筒体外部磁束の比率」の高い構成を作るためには、具体的には下記のような設計手段が望ましい。
(手段1)磁性コアのパーミアンスを大きくする。(磁性コア断面積大、材質の比透磁率大)
(手段2)円筒体内のパーミアンスを小さくする。(空気部分の断面積小)
(手段3)円筒体内に鉄などのパーミアンスの大きい部材を配置しない。
(手段4)円筒体のパーミアンスを小さくする。(円筒体の断面積小、円筒体に用いる材質の比透磁率小)
手段4より、円筒体は比透磁率μの低い材質が好ましい。円筒体として比透磁率μの高い材質を用いる際は、円筒体の断面積をより小さくする必要がある。これは、円筒体の断面積が大きいほど、円筒体を貫く磁束が多くなり発熱効率が高くなる従来の定着装置とは反対である。また、円筒体内にはパーミアンスの大きい部材を配置しないことが望ましいものの、やむを得ず鉄などを配置しなければならない場合は、断面積を小さくするなどによって、「円筒体外部を通る磁束の比率」をコントロールする必要がある。
なお、磁性コアを長手方向で複数に分割し、分割した各磁性コア同士の間に空隙(ギャップ)を設ける場合もある。その場合、この空隙が空気または比透磁率が1.0とみなせるものなどの磁性コアの比透磁率よりも小さいもので満たされている場合、磁性コア全体の磁気抵抗は大きくなり磁路形成能力を減少させることになる。よって、本発明の定着装置を達成するためには、磁性コアのギャップを厳しく管理する必要がある。磁性コアのパーミアンスの計算方法は複雑になる。以下に、磁性コアを複数分割し、空隙またはシート状非磁性体を挟んで等間隔に並べた場合の磁性コア全体のパーミアンスの計算方法について説明する。この場合長手全体の磁気抵抗を導出し、それを全体長さで割って単位長さ当たりの磁気抵抗を求め、その逆数を取って単位長さ当たりのパーミアンスを求める必要がある。
まず、磁性コアの長手構成図を図12に示す。磁性コアc1〜c10は、断面積:Sc、透磁率:μc、分割された磁性コア1個当たりの長手寸法:Lcとなっており、ギャップg1〜g9は、断面積:Sg、透磁率:μg、1ギャップ当たりの長手寸法:Lgとなっている。そのとき長手全体の磁気抵抗Rm_allは、以下の式で与えられる。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+ ・・・+Rm_c10)+
(Rm_g1+Rm_g2+ ・・・+Rm_g9) ・・・(15)
本構成の場合は、磁性コアの形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次のようになる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g) ・・・(16)
磁性コアの長手:Lc、透磁率:μc、断面積:Sc、ギャップの長手:Lg、透磁率:
μg、断面積:Sgとすると、
Rm_c=Lc/(μc・Sc) ・・・(17)
Rm_g=Lg/(μg・Sg) ・・・(18)
(16)式に代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lg/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9・・(19)
となる。単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると、
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9) ・・・(20)
となり、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下のように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}]・・(21)
ΣLc:分割された磁性コアの長さの合計
μc:磁性コアの透磁率
Sc:磁性コアの断面積
ΣLg:ギャップの長さの合計
μg:ギャップの透磁率
Sg:ギャップの断面積
式(21)より、ギャップLgを大きくすることは、磁性コアの磁気抵抗の増加(パーミアンスの低下)につながる。本定着装置を構成する上で、発熱原理上、磁性コアの磁気抵抗が小さく(パーミアンスが大きく)なるように設計することが望ましいため、ギャップを設けることはあまり望ましくない。しかし、磁性コアを割れにくくするために磁性コアを複数に分割してギャップを設ける場合がある。この場合ギャップLgは極力小さく(望ましくは50μm以下程度)構成し、後述するパーミアンスまたは磁気抵抗の設計条件から外れないように設計することで、本発明の目的を達成することができる。
(3−4)円筒形回転体内部の周回電流
図8(a)において、中心から磁性コア2、励磁コイル3、円筒形回転体(導電層1a)が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加しているときは、概念図においては8本の磁力線が磁性コア2の中を通過している。
図13(a)は、図8(a)の位置Oにおける断面構成の概念図を示したものである。
磁路の中を通過する磁力線Binを、図中奥行き方向に向かう矢印(×印8個)で示す。そして図中手前方向に向かう矢印Bout(●印8個)は、静磁界を形成したときに磁路の外から戻ってくる磁力線を表している。これによると、円筒形回転体1aの中を紙面奥方向に向かう磁力線Binは8本であり、円筒形回転体1aの外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線Boutも8本である。励磁コイル3の中に電流が矢印Iの向きに電流が増加している瞬間は、磁路の中に図中奥行き方向に向かう矢印(○の中に×印)のように磁力線が形成される。実際に交番磁界を形成したときには、このように形成されようとする磁力線を打ち消すように、円筒形回転体1aの周方向全域に誘導起電力がかかり、電流は矢印Jの方向に流れる。この、円筒形回転体1aに電流が流れると、円筒形回転体1aは金属なので電気抵抗によりジュール発熱する。
この電流Jが円筒形回転体1aを周回方向に流れることは、本発明の重要な特徴である。本発明の構成は、静磁界において磁性コアの内部を通過する磁力線Binが円筒形回転体1aの中空部を通過し、磁路コアの一端から出て磁性コアの他端に戻ってくる磁力線Boutが円筒形回転体1aの外部を通過する。これは、交番磁界において、円筒形回転体1a内部において周回電流が支配的となり、図14で示すような磁束が導電層の材料内部を貫いて発生する渦電流E//は発生しにくい。なお、以後、一般に誘導加熱の説明で使用される「渦電流」と区別するため本実施例の構成で円筒形回転体を矢印Jの方向(またはその逆方向)に一様に流れる電流を「周回電流」と呼ぶ。
ファラデーの法則に従う誘導起電力は、円筒形回転体1aの周回方向に生じているので、この周回電流Jは円筒形回転体1a内部を一様に流れる。そして磁力線は、高周波電流により生成消滅と方向反転を繰り返すため、周回電流Jは高周波電流と同期して生成消滅と方向反転を繰り返し、円筒形回転体の材料の厚み方向全域の抵抗値によってジュール発熱する。図13(b)は、磁性コアの磁路の中を通過する磁力線Binと、磁路の外から戻ってくる磁力線Boutと、円筒形回転体1a内部を流れる周回電流Jの方向を示す長手斜視図である。
周回電流による発熱は、定着装置として以下(1)および(2)のメリットを有する。
(1)円筒形回転体の熱を奪い、大きく温度低下したとしても、図3のA→Bに至る回転中に発熱し、失われた熱を補給する時間が十分にある。したがって、B点における温度低下は小さい。
(2)また、(1)式によって誘起される誘導電流は、円筒形回転体の周回方向に、全周にわたって均一な熱を発生させる。したがって、円筒形回転体の温度差が起きにくい。
このように、本発明の定着装置は、周回電流によって、円筒形回転体全体を発熱させるために、定着温度が非常に安定する構成となっている。
(3−5)電力の変換効率
定着フィルムの円筒形回転体(導電層)を発熱させる際は、励磁コイルに高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は円筒形回転体に電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることができる。その交番磁界によって励磁コイルと円筒形回転体が磁気結合して、励磁コイルに投入した電力が円筒形回転体に伝達される。ここで述べる「電力の変換効率」は、磁界発生手段である励磁コイルに投入する電力と、円筒形回転体により消費される電力の比率である。本実施例の場合、図1に示す励磁コイル3に対して高周波コンバータ5に投入した電力と、円筒形回転体1aで発生した熱として消費される電力の比率である。この電力の変換効率は以下の式で表すことができる。
電力の変換効率=円筒回転体で熱として消費される電力/励磁コイルに投入した電力
励磁コイルに投入して円筒回転体以外で消費される電力は、励磁コイルの抵抗による損失、磁性コア材料の磁気特性による損失などがある。
図19に回路の効率に関する説明図を示す。図19(a)において1aは円筒形回転体、2は磁性コア、3は励磁コイルであり、円筒形回転体1aに周回電流Jが流れる。図19(b)は、図19(a)に示した定着装置の等価回路である。
は励磁コイルおよび磁性コアの損失分、Lは磁性コアに周回した励磁コイルのインダクタンス、Mは巻き線と円筒形回転体との相互インダクタンス、Lは円筒形回転体のインダクタンス、R2は円筒回転体の抵抗である。円筒回転体を取り外したときの等価回路を図20のうち(a)に示す。インピーダンスアナライザやLCRメーターといった装置により、励磁コイル両端からの直列等価抵抗はR、等価インダクタンスLを測定すると、励磁コイル両端から見たインピーダンスZ
=R+jωL ・・・(22)
と表される。この回路に流れる電流は、Rにより損失する。すなわち、R1はコイルおよび磁性コアによる損失を表している。
円筒回転体を装荷したときの等価回路を図20のうち(b)に示す。このときの直列等価抵抗RxおよびLxを測定しておけば、図20のうち(c)のように等価変換することで以下のような関係式を得ることができる。

・・・(23)

・・・(24)
Mは励磁コイルと円筒形回転体の相互インダクタンスを表す。
図20のうち(c)に示すように、Rに流れる電流をI、Rに流れる電流をIとおくと

・・・(25)
が成り立つため、

・・・(26)
となる。
効率は抵抗Rの消費電力/(抵抗Rの消費電力+抵抗Rの消費電力)で表されるため、

・・・(27)
となり、
円筒形回転体を装荷する前の直列等価抵抗Rと、
円筒形回転体を装荷した後の直列等価抵抗Rxと、
を測定すると、励磁コイルに投入した電力のうち、どれだけの電力が円筒回転体で発生する熱として消費されるかを示す電力の変換効率を求めることができる。なお、実施例1の構成においては、電力の変換効率の測定には、Agilent Technologies社製のインピーダンスアナライザ4294Aを用いた。まず、円筒形回転体の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rを測定し、次に円筒形回転体に磁性コアを挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定した。R=103mΩ、Rx=2.2Ωとなり、このとき、電力の変換効率は式(27)により、95.3%と求めることができる。以後この電力の変換効率を用いて、電磁誘導加熱方式の定着装置の性能を評価する。
(3−6)「円筒体外部磁束の比率」に求められる条件
本実施例の定着装置においては、静磁界において円筒体外部を通る磁束の比率と、交番磁界において励磁コイルに投入した電力が円筒回転体に伝達される電力の変換効率(電力の変換効率)とは、相関がある。円筒体外部を通る磁束の比率が増加するほど電力の変換効率は高くなる。その理由は、トランスの場合に、漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと同じ原理である。つまり、磁性コアの内部を通過する磁束と、円筒形回転体の外部を通過する磁束の数が近いほど、周回電流への電力の変換効率は高くなる。これは、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束(磁性コアの内部を通過する磁束と向きが反対の磁束)が、円筒形回転体の中空部を通過し磁性コアの内部を通過する磁束をキャンセルする割合が少ないということである。つまり、図11(b)の磁気等価回路に示すように、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束が円筒形回転体の外(円筒体外空気)を通過するということある。故に本実施例の骨子は、円筒体外部磁束の比率を高くすることによって、励磁コイルに流した高周波電流を円筒形回転体内部の周回電流として効率よく誘導することである。具体的にはフィルムガイド、円筒体内空気、円筒体を通る磁束を減らすことである。
図21は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置の図である。金属シート1Sは、面積230mm×600mm、厚み20μmのアルミニウムシートであり、磁性コア2と励磁コイル3を囲むように円筒上に丸め、太線1ST部分において導通することによって円筒形回転体と同じ導電経路を形成している。磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm、長さB=230mmの円柱形状をしている。磁性コア2は不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置させており、長さB=230mmの円筒の中空部を貫通して、円筒の内部に磁路を形成する。励磁コイル3は円筒の中空部において、磁性コア2に巻数25回で螺旋状に巻き回して形成される。
ここで、金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、円筒の直径1SDを小さくできる。この実験装置を用いて、円筒の直径1SDを191mmから18mmまで変化させながら、電力の変換効率を測定した。なお、1SD=191mmのときの円筒体外部磁束の比率の計算結果を下記の表1に示し、1SD=18mmのときの円筒体外部磁束の比率の計算結果を下記の表2に示す。
電力の変換効率の測定は、まず、円筒形回転体の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rを測定する。その次に、円筒形回転体の中空部に磁性コアを挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定し、式(27)に従って電力の変換効率を測定する。図22は、円筒の直径に対応する円筒体外部磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったものである。プロットは、グラフ中のP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超え、矢印で示す領域R1の範囲で電力の変換効率70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、領域R2において80%以上となっている。P4以降の領域R3においては電力の変換効率が94%以上と高い値を維持している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは、円筒体の内部に効率的に周回電流が流れ始めるようになったことに起因する。
電磁誘導加熱方式の定着装置を設計する上で、この電力の変換効率は極めて重要なパラメータである。例えば電力の変換効率80%であった場合、残り20%の電力は、円筒形回転体以外の箇所に熱エネルギーとして発生する。発生する箇所は、主に励磁コイル、磁性コア、円筒形回転体内部に磁性体などの部材を配置した場合はその部材に発生する。つまり電力の変換効率が低ければ、励磁コイルや磁性コアに発生する熱のための対策を講じなければならない。そしてその対策の程度は、発明者らの検討によると、電力の変換効率70%、80%を境界として大きく変化する。従って領域R1,R2,R3の構成において、定着装置としての構成が大きく異なる。設計条件R1,R2,R3の3種類と、いずれにも属さない定着装置の構成について説明する。以下に定着装置を設計する上で、必要な電力の変換効率について詳細を説明する。
下記の表3は、図22のP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層)の直径が143.2mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、円筒(導電層)の発熱に寄与した分を示すパラメータである。従って最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となってしまい、その損失はコイルおよび磁性コアの発熱となる。本構成の場合、立ち上げ時、数秒間1000Wを投入しただけでもコイル温度は200℃を超える場合がある。コイルの絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイルなどの部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コアの温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置に供給した電力の約45%が無駄になるので、円筒体に900W(1000Wの90%を想定)の電力を供給するためには約1636Wの電力供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源という事になる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流は15Aという制限がある場合、許容電流をオーバーする可能性がある。よって、円筒体外部磁束の比率64%、電力の変換効率54.4%の定着装置P1は、定着装置に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が127.3mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は70.8%であった。このとき、定着装置の印字動作によっては、励磁コイルなどに定常的に大きな熱量が発生し、励磁コイルユニット、特に磁性コアの昇温が課題となる場合がある。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒形回転体の回転速度は330mm/secとなる。よって、円筒形回転体の表面温度を180℃に維持するケースがある。そうすると、磁性コアの温度は20秒間で240℃を超え、円筒体(導電層)の温度より高くなる場合が考えられる。磁性コアとして用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であり、フェライトがキュリー温度を超えた場合、透磁率は急激に減少する。透磁率が急激に減少すると、磁性コアの中に磁路を形成することができない。磁路を形成することができなくなると、本実施例においては、周回電流を誘導して発熱することが難しくなる場合がある。
従って、設計条件R1の定着装置を、前述した高スペックの装置にすると、フェライトコアの温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成においてそこまでの高スペックを要求しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が63.7mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%であった。このとき、励磁コイルなどには定常的に熱量が発生したものの、熱伝達と自然冷却で放熱できる熱量を大きく上回ることはなかった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。従って、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースであっても、フェライトの磁性コアの温度は220℃以上に上昇することはなかった。そのため本構成においては、定着装置を前述した高スペックする場合、キュリー温度220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。設計条件R2の構成の定着装置を高スペックな定着装置として使用する場合は、フェライトなどの耐熱設計を最適化することが望ましい。本構成に、前述した高スペックを要求しない場合は、そこまでの耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%であった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなり、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースにおいて励磁コイルなどは、180℃以上に上昇することはなかった。これは、励磁コイルがほとんど発熱しないことを示す。円筒体外部磁束の比率94.7%、電力の変換効率94.7%(設計条件R3)は、電力の変換効率が十分高いため、さらなる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は必要ない。
また、電力の変換効率が高い値で安定しているこの領域においては、円筒形回転体と磁性コアの位置関係が変動しても、電力の変換効率が変動しない。電力の変換効率が変動しない場合、円筒形回転体から常に安定した熱量を供給することができる。よって、可撓性を有する定着フィルムを用いる定着装置において、この電力の変換効率が変動しない領域R3を用いることは、大きなメリットがある。
以上、円筒形回転体に対してその軸方向に磁界を発生させ、円筒形回転体を電磁誘導発熱させる定着装置において、円筒体外部磁束の比率に求められる設計条件は、図22中矢印R1、R2、R3に領域分けすることができる。
R1:円筒体外部磁束の比率70%以上90%未満
R2:円筒体外部磁束の比率90%以上94%未満
R3:円筒体外部磁束の比率94%以上
(3−7)「周回電流」による発熱の特徴
(3−4)で説明した「周回電流」は、図6の回路S内に生じる誘導起電力によって生じるものである。そのため、回路Sに内包する磁束と、回路Sの抵抗値に依存する。後述する「渦電流E//」とは異なり、材料内部の磁束密度とは関係しない。そのため、磁路とならない薄い磁性金属製の円筒形回転体でも、非磁性金属製の円筒回転体でも高い効率で発熱することが可能である。また、抵抗値が大きく変わらない範囲においては、材料の厚みにも依存しない。図16(a)は、厚さ20μmのアルミニウムの円筒形回転体における電力の変換効率の周波数依存性である。20kHz〜100kHzの周波数帯域において、電力の変換効率は90%以上を維持している。特に、21〜40kHzの周波数帯域を発熱に利用する場合において、高い電力の変換効率を持っている。次に図16(b)は、同形状の円筒形回転体における、周波数21kHzでの電力の変換効率の厚み依存性である。黒丸−実線はニッケル、白丸−点線はアルミニウムの実験結果を示している。両者は厚み20μm〜300μmの領域において、電力の変換効率は90%以上を維持しており、両者とも厚みに寄らず、定着装置用発熱材料として使用可能である。
よって、「周回電流による発熱」は、従来の渦電流損による発熱より、円筒形回転体の材質や厚み、そして、交流電流の周波数に対する設計自由度を広げることができる。
なお、磁性コアの長手方向の一端を出た磁束のうち円筒形回転体の外部を通って磁性コアの他端に戻る割合が70%以上であることが本定着装置の特徴である。磁性コアの長手方向の一端を出た磁束のうち円筒形回転体の外部を通って磁性コアの他端に戻る割合が70%以上である。このことは、円筒体のパーミアンスと円筒体内部(円筒体と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの30%以下であることと等価である。したがって、本発明の特徴的な構成の1つは、磁性コアのパーミアンスをPc、円筒体内部のパーミアンスをPa、円筒体のパーミアンスPsとしたときに、0.30×Pc≧Ps+Paの関係を満足する構成である。
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記のようになる。

・・・(28)
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように計算する。

・・・(29)
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記の関係式を、定着装置の記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向の断面において満足するのが望ましい。
この合成磁気抵抗の値が低いほど、(1)式によって誘起される誘導電流による発熱の割合は高くなり、合成磁気抵抗が0%の構成では、ほぼ100%、(1)式の周回電流による発熱が起きていることになる。よって、合成磁気抵抗の値が低ければ低いほど、先述したメリット(1)および(2)を発揮させることができる。
このように、上述したような定着装置構成とし、さらに、
前記導電層の磁気抵抗と、
前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
の合成磁気抵抗の30%以下にすることで、前述したメリット(1)および(2)を発揮させることができ、温度低下が非常に少なく、均一加熱できる定着装置構成が得られる。
この定着装置に、さらに、下記に示すような、トナーを組み合わせることで、グロスムラのない高画質な画像を得ることができる。
高画質な画像を得るためには、発色性の高いトナーを用いることが有効である。発色性の高いトナーとは、トナー中の顔料の分散性が良好であることが1つの要件として挙げられる。
トナー中の顔料分散性は、トナー断面画像中における顔料分散粒径、および顔料分散性の指標[CEI(クラーク・エバンス指数)]の2つの指標を加味して評価可能である。具体的には以下の手法を用いる。
(1)分散顔料粒径の評価
まずトナーを樹脂に包埋し、クロスセッションポリッシャーなどの装置を用いてトナーの切片試料を作製し、トナー断面画像をSEMで撮影する。そしてその画像を画像処理解析装置[例えば、(株)ニレコ製、LUZEX]を用いて顔料とそれ以外の部分と明確に差が出るコントラストで二値化を行う。そして、スケールを画像処理解析装置に反映させることで、画像中の解析範囲における顔料の円相当系(平均値)が算出される。この数値を4/πで乗じた数値が分散顔料粒径である。
分散顔料粒径は、一次粒子だけではなく、凝集した顔料の塊を1つの粒径単位として算出している。よって一次粒子で良好に分散するほど、分散顔料粒径の数値は低くなる。
(2)CEI(クラーク・エバンス指数)の評価
上記(1)で解析した画像より、全粒子の最近接重心間距離の平均をr、ポアソン分布をしている粒子の最近接重心間距離の期待値をE(r)としたとき、CEI(クラーク・エバンス指数)は、CEI=r/E(r)と定義される。このCEIが1より小さい場合は集中分布(凝集度合いが大きい)、CEIが1に等しい場合はポアソン分布(ランダム分布)、CEIが1より大きい場合は規則分布(一定間隔に分布している)となる。CEIの限界値は2.1程度である。
上記(1)および(2)の評価手法を用いて種々のトナーを評価した。そうしたところ、発色性の良いトナーの条件が、トナー粒子の断面画像中の顔料分散性の指標(CEI)が、0.70以上1.30以下であり、分散顔料粒径が、30nm以上130nm以下となることを見出した。
上記条件を満たすトナーであれば、トナーの製造方法は限定されないが、例えば、粉砕法、乳化凝集法、懸濁造粒法、懸濁重合法などが挙げられる。
また、トナー中の顔料分散性をより向上させるために、トナー構成材料として結着樹脂、顔料の他に、顔料分散剤をさらに含有することが好ましい。
顔料分散剤は、トナー中の顔料分散性を向上させるものであればよく、下記に述べる顔料分散剤に限定されるものではない。
上述のトナー製造方法の中でも、懸濁造粒法、および懸濁重合法は、容易に高い顔料分散性を有するトナーを得られやすい点で有効である。
ここでは、顔料分散剤を使用するトナーの一例として懸濁重合法について詳細に説明する。以下に述べる顔料分散剤の適用範囲は、その他のトナーの製造方法にも適用可能である。
懸濁重合法とは、具体的には、結着樹脂および顔料を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に加える。そして、前記水系媒体中で前記重合性単量体組成物の粒子を形成する。そして、前記重合性単量体組成物の前記粒子に含まれる前記重合性単量体を重合させることにより得られるトナー粒子を得る製造方法である。
また、顔料分散性をより向上させるために、上記重合性単量体組成物にさらに、顔料分散剤が含有されることが好ましい。
また、トナーの低温定着化のために、上記重合性単量体組成物にさらに、結晶性ポリエステルが含有されることがさらに好ましい。結晶性ポリエステルについては詳細に後述する。
本発明で用いる顔料分散剤は、吸着成分、ポリマー成分、および、ポリマー成分と吸着成分を結合する連結部分で構成される。吸着成分は「ポリマー成分を除いた、顔料への吸着性が高い吸着成分」であり、適宜、「吸着成分」と略す。ポリマー成分は「結着樹脂および分散媒体への親和性が高く、顔料同士の凝集を抑制するために立体反発効果を高めたポリマー成分」であり、適宜、「ポリマー成分」と略す。
なお、本発明の懸濁重合法で製造するトナーにおいて、結着樹脂とは、コア部分を形成する結晶性ポリエステル樹脂を除く樹脂であり、シェル部分を形成する樹脂は除くこととする。
前記結着樹脂は、ビニル系共重合体であり、本発明で用いるトナーの顔料分散剤のポリマー成分は、ビニル系重合体である。
結着樹脂がビニル系共重合体であるトナーにおいて、顔料分散剤のポリマー成分をビニル系重合体にすることにより、結着樹脂と顔料分散剤の親和性が高くなり、顔料の結着樹脂中の分散性が良好になる。また、この効果は結着樹脂がビニル系共重合体以外の重合体(他の製造方法のトナー)においても、同様に、親和性の高いポリマー成分を選択することにより顔料の結着樹脂中の分散性が良好となる。
さらに顔料分散剤のSP値(A)と結着樹脂のSP値(C)の差(A−C)を、−1.1以上1.2以下にする。この範囲内にすることによって、顔料分散剤と結着樹脂の親和性がさらに高くなり、顔料の分散が相乗的に良好になる。
本発明で用いるトナーは、低温定着性能を向上させるために後述する結晶性ポリエステル樹脂をさらに添加する場合には、顔料分散剤のSP値(A)と結晶性ポリエステル樹脂のSP値(B)の差(A−B)は、−1.8以上+0.8以下であることが好ましい。より好ましくは−1.5以上+0.8以下であり、より好ましくは−1.3以上+0.5以下であり、さらに好ましくは−1.0以上+0.3以下である。SP値の差(A−B)が、上記範囲内であれば、低温定着性の改善のために多量の結晶性ポリエステル樹脂を添加したとしても、顔料の分散を悪化させることなく良好にすることができる。
本発明において、顔料分散剤の酸価が、10mgKOH/g以下であることが好ましく、5mgKOH/g以下であることがより好ましい。上記範囲内であれば、トナーの製造安定性に対する弊害を発現しにくく、顔料を結着樹脂中に分散しやすくなる。顔料分散剤の酸価が、10mgKOH/g以下であれば、例えば、懸濁重合法においてトナー粒子を製造する際、水系媒体に用いられる分散安定剤と顔料分散剤が相互作用し、トナーの造粒性を阻害することもない。
本発明において、顔料分散剤のアミン価は、5mgKOH/g以下であることが好ましく、0mgKOH/g以上3mgKOH/g以下であることがより好ましい。アミン価が5mgKOH/g以下であれば、顔料分散剤の正帯電性付与性能が大きくなり過ぎず、負帯電性トナーにおいては、帯電性を悪化させることもない。
さらに、ポリマー成分について、詳細に説明する。
ポリマー成分は、顔料分散剤と結着樹脂とのSP値差、顔料分散剤と結晶性ポリエステル樹脂とのSP値差が、前述の範囲内になるよう構造および物性を設計する必要がある。また、後述する顔料分散剤の酸価やアミン価などが、後述の範囲もしくは好ましい範囲になるよう、構造および物性を設計する必要がある。
ポリマー成分は、顔料分散剤と結着樹脂との親和性の点から、結着樹脂と親和性のある骨格にする必要がある。また、懸濁重合法によるトナーの場合には、結着樹脂を構成する重合性単量体と親和性のある骨格を有することが好ましい。
そのため、本発明で用いるトナーの結着樹脂は、ビニル系共重合体であるため、ポリマー成分をビニル系重合体にする。
上記理由により、ポリマー成分は、トナーの結着樹脂が、スチレン、アクリルおよび/またはメタクリル系樹脂である場合、式(6)で示されるユニットを含むことが好ましい。
[式(6)中、Rは水素原子、またはアルキル基を示す。Rはフェニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、またはカルボン酸アミド基を示す。]
さらには、式(6)が下記式(1)または下記式(2)で示されるユニットを含むことがさらに好ましい。
[式(1)中のRは、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。]
上記式(6)で示されるユニットを含むポリマー成分について詳細に説明する。
上記式(6)中のRにおけるアルキル基としては、特に限定されるものではないが、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(6)中のRは上記に列挙した置換基、および水素原子から任意に選択できるが、ユニットの重合性の観点から水素原子、メチル基である場合が好ましい。
またRにおけるカルボン酸エステル基としては、特に限定されるものではないが、上記式(1)のRが、例えば、アルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ウンデシル基、n−ドデシル基、n−トリデシル基、n−テトラデシル基、n−ペンタデシル基、n−ヘキサデシル基、n−ヘプタデシル基、n−オクタデシル基、n−ノナデシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、2−エチルヘキシル基、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基のような直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、α−メチルベンジル基、フェネチル基が挙げられる。
上記式(6)中のRにおけるカルボン酸アミド基としては、N−メチルアミド基、N,N−ジメチルアミド基、N,N−ジエチルアミド基、N−イソプロピルアミド基、N−tert−ブチルアミド基、N−フェニルアミド基などのアミド基が挙げられる。
上記式(6)中のRの置換基は、さらに置換されていてもよく、ユニットの重合性を阻害したり、顔料分散剤の重合性単量体への溶解性を著しく低下させたりするものでなければ特に制限されない。この場合、置換しても良い置換基としてはメトキシ基、エトキシ基などのアルコキシ基、N−メチルアミノ基、N,N−ジメチルアミノ基などのアミノ基、アセチル基などのアシル基、フッ素原子、塩素原子などのハロゲン原子が挙げられる。
上記式(6)中のRは上記に列挙した置換基、フェニル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基およびカルボン酸アミド基から任意に選択できる。しかし、顔料分散剤と結着樹脂とのSP値差および顔料分散剤と結晶性ポリエステル樹脂とのSP値差をそれぞれ規定の範囲内にする点で上記式(1)、上記式(2)を含むことが好ましい。
例えば、懸濁重合法によるトナーの場合、結着樹脂およびこれを構成する際に用いられる重合性単量体がスチレンのような非極性溶剤の場合には、式(6)中のRがフェニル基で示されるユニットの割合を大きくすることが分散媒体との親和性の点で好ましい。
分散媒体がアクリル酸エステルのような極性がある程度ある溶剤の場合には上記式(6)中のRがカルボキシル基、カルボン酸エステル基、またはカルボン酸アミド基で示されるユニットの割合を大きくすることも分散媒体との親和性の点で好ましい。
また、上記ポリマー成分は、上記式(1)中のRのアルキル基鎖長を調整することで、発明の顔料分散剤と結着樹脂とのSP値差および顔料分散剤と結晶性ポリエステル樹脂とのSP値差をそれぞれ規定の範囲にし、親和性を制御することが好ましい。
中でも、結着樹脂および結晶性ポリエステル樹脂とのSP差を前述の範囲にする点から、Rは、炭素原子数が1以上22以下のアルキル基または、炭素原子数が7以上8以下のアラルキル基が好ましい。
顔料分散剤の酸価を調整する方法として、Rがカルボキシル基である式(6)のユニット(つまり、Rが水素原子である式(1)のユニット)の割合を調整することが好ましい。
顔料分散剤のポリマー成分の個数平均分子量(Mn)は、3000〜20000である。
この範囲内であれば、顔料同士の凝集を抑制するために、ポリマー成分の立体反発効果を高めることができ、顔料分散性が向上する。個数平均分子量(Mn)が、3000より小さい場合は、立体反発効果が弱く、所望の顔料分散性が得られない。20000より大きい場合は、重合性単量体への溶解性が悪化し、所望の顔料分散性を得ることができない。
また、ポリオキシアルキレンカルボニル系の分散剤において、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することで分散性を向上させる方法が知られている。本発明のポリマー成分においても、後述するATRP(AtomTransferRadialPolymerization)のような方法でテレケリックなポリマー成分を合成すれば、末端に分岐した脂肪族鎖を導入することができる。その結果、分散性が向上する場合もある。
次に、顔料分散剤の顔料への吸着性が高い吸着成分について、詳細に説明する。
顔料分散剤の吸着成分の顔料への吸着率は、30%以上であり、好ましくは70%以上である。吸着成分の構造を適宜選択することで、吸着率を上記範囲内に制御することが可能となる。
本発明で用いられる顔料分散助剤としては、吸着成分が顔料と強い相互作用を有し、顔料への吸着率(親和性)が、上記範囲内であれば特に制限はなく、公知の構造を用いることができる。
吸着成分と顔料との相互作用は、π−π相互作用、水素結合による相互作用、酸−塩基相互作用のいずれでもよく、顔料が相互作用しやすい吸着成分の構造を適宜選択すればよい。
水素結合による相互作用しやすい顔料に対しては、吸着成分の水素結合による相互作用を高めるために、吸着基成分がヒドロキシル基やアミド基などの官能基を有していることが好ましい。酸−塩基相互作用しやすい顔料に対して、吸着成分の酸−塩基相互作用を高めるために吸着成分は、顔料が酸性官能基を有する場合にはアミノ基などの塩基性官能基を有するものが好ましい。顔料が塩基性官能基を有する場合にはカルボキシル基やスルホネート基などの酸性官能基を有するものが好ましい。
π−π相互作用しやすい顔料に対しては、吸着成分のπ−π相互作用を高めるために、吸着成分が芳香族骨格を有していることが好ましい。前記π−π相互作用とは、有機化合物分子の芳香環の間に働く分散力(ロンドン分散力)である。2つの芳香環がコインを積み重ねたような配置で安定化する傾向があるため、スタッキング(積み重ね)相互作用が生じて、顔料表面に顔料分散剤を吸着することを可能とする。
例えば吸着成分が芳香族骨格を有する場合、芳香族骨格が堅固な平面構造をとり、π電子系により非局在化した電子が豊富に存在するため、特にロンドン分散力が強く発現する。したがって、π電子が増えるほど強くなる。
このような芳香族骨格を吸着成分が有することにより、顔料に含まれる芳香族が発現するπ電子雲と、顔料分散剤の芳香族骨格が有するπ電子雲とがπ−π相互作用による結合を形成する。
このようなπ−π相互作用を有する芳香族骨格としては、特に制限はなく、目的に応じて適宜選択することができ、例えばベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環、テトラセン環、ペンタセン環、ヘキサセン環、ヘプタセン環などが挙げられる。
前記芳香族骨格を有する化合物としては、例えば、ベンゼン環を有する化合物、ナフタレン環を有する化合物、アントラセン環を有する化合物などが挙げられる。また、テトラセン環を有する化合物、ペンタセン環を有する化合物、ヘキサセン環を有する化合物、ヘプタセン環を有する化合物なども挙げられる。具体的には、2,6−ナフタレンジスルホン酸ジメチル、2−ナフタレンカルボン酸、安息香酸、4,5−ジヒドロキシ−9,10−ジオキソ−9,10−ジヒドロアントラセン−2−カルボン酸などが挙げられる。
本発明の顔料分散剤としては、アミノ基などの塩基性官能基、カルボキシル基やスルホネート基などの酸性官能基を有し芳香族骨格を有することが好ましい。このような顔料分散材は、π−π相互作用しやすい顔料であり、水素結合による相互作用しやすい顔料であり、酸−塩基相互作用しやすい顔料であり、いずれの顔料にも吸着しやすい。
本発明の顔料分散剤の1分子当たりの吸着成分の個数は、1以上6以下であることが好ましい。顔料分散剤中の吸着成分の数は、1以上有ればよいが、6以上であると重合性単量体への相溶性が悪化する場合がある。
また、顔料分散剤中の吸着成分の位置は、ポリマー成分に対してランダムに存在していても、一端に1つもしくは複数のブロックを形成して偏在していてもよい。
以下、前述した課題に対して効果をより発現することができる本発明の顔料分散剤の吸着成分として、下記式(3)で示されるアゾ部分骨格構造を一例として詳述する。
[式(3)中、R、RおよびArのいずれかは、単結合または連結基を介してポリマー成分が結合した構造を有する。
は、アルキル基、フェニル基、OR基またはNR10基を示し、
〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
がポリマー成分と結合する場合、単結合または連結基を介して結合し、Rに結合する連結基は、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−NR−および−NHCH(CHOH)−からなる群より選ばれる二価の連結基であり、
は、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
は、アルキル基、フェニル基、OR42基またはNR4344基を示し、
42〜R44は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
がポリマー成分と結合する場合、連結基を介して結合し、Rに結合する連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−NR11−、−NHCOC(CH−および−NHCH(CHOH)−からなる群より選ばれる二価の連結基であり、
11は、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
Arは、アリール基を示し、Arがポリマー成分と結合する場合、単結合または連結基を介して結合し、Arに結合する連結基は、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−NR−および−NHCH(CHOH)−からなる群より選ばれる二価の連結基であり、Rは、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
前記単結合または連結基が、R、R、またはArに結合する場合は、R、R、またはArの水素原子と置換して結合する。]
本発明の顔料分散剤の吸着成分をアゾ骨格部分構造にした場合、アゾ骨格部分構造がアゾ構造を有するため、アゾ顔料への吸着性が良い。
上記式(3)の中のRおよびRにおけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(3)中のRおよびRは上記に列挙した置換基、水素原子およびフェニル基から任意に選択できる。それらの中でも、RがNR1112基であり、かつR11が水素原子、R12がフェニル基である場合が好ましい。そうすることにより、アゾ骨格部分構造が、カーボンブラック、銅フタロシアニン、キナクリドン、カーミンなどのπ共役平面を大きくもつ顔料へのπ−π相互作用による吸着性の良い構造となる。
上記式(3)中のR10〜R12におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、イソプロピル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、シクロヘキシル基などの直鎖、分岐または環状のアルキル基が挙げられる。
上記式(3)中のR10〜R12におけるアラルキル基としては、例えば、ベンジル基、フェネチル基などが挙げられる。
上記式(3)中のArはアリール基を示し、フェニル基、ナフチル基などが挙げられる。
本発明の顔料分散剤の吸着成分が、上記式(3)中にArの構造を有することで、π共役平面を大きく持つ顔料への吸着性を良くすることができる。
上記式(3)中のArは、アゾ骨格部分構造が、π共役平面を大きくもつ顔料へのπ−π相互作用による吸着性を著しく阻害せず、また顔料への水素結合による吸着性を良くするために、さらに置換基により置換されていても良い。
Arに置換しても良い置換基としては、例えば、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン原子、ヒドロキシル基、シアノ基、トリフルオロメチル基、カルボキシル基、カルボン酸エステル基、カルボン酸アミド基などが挙げられる。これら置換基は、顔料の官能基への水素結合を形成し、強くなるように、適宜選択することが好ましい。
上記式(3)中のR、R、Arの少なくとも1つはポリマー成分との結合部位を有する。顔料への吸着性の点で、上記式(3)で示される顔料分散剤が下記式(7)で示される場合が好ましい。
[式(7)中のR、Rは式(3)中のR、Rと同義である。R21〜R25はそれぞれ独立して水素原子、COOR26基、CONR2728基を示す。R26〜R28はそれぞれ独立して水素原子、アルキル基、フェニル基、アラルキル基を示す。ただし、R、R、R21〜R25の1つは顔料分散剤のポリマー成分との結合部位を有する置換基である。]
上記式(7)中のR21〜R25は、水素原子、COOR26基、CONR2728基から選択できる。アゾ骨格部分構造が、顔料への水素結合による吸着性を良くするために、吸着性R21〜R25のうち少なくとも1つがCOOR26基、またはCONR2728基である場合が好ましい。
上記式(7)中のR26〜R28におけるアルキル基としては、例えば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基などが挙げられる。
上記式(7)中のR26〜R28は上記に列挙した置換基、および水素原子から任意に選択できるが、顔料への吸着性の観点から、R26およびR27がメチル基であり、R28がメチル基、または水素原子である場合が好ましい。嵩高いアルキル基であると、立体障害により、顔料への水素結合を形成しにくくしたり、π−π共役相互作用を弱くしたりする場合がある。
これら置換基は、顔料の官能基への水素結合を形成し、強くなるように、適宜選択することが好ましい。
上記式(3)中のR、R、Arの少なくとも1つはポリマー成分との結合部位を有する置換基である。顔料への吸着性、および製造の容易性の観点から、RがNR1112基であり、かつR11が水素原子、R12がポリマー成分との結合部位を有するフェニル基である場合が特に好ましい。
上記式(3)中の置換基の好ましい組み合わせは、上記式(3)が下記式(8)、(9)で示される場合が、顔料の吸着性の点で最も好ましい。
上記式(8)、(9)中のポリマー成分との連結部位Lは、二価の連結基であれば特に限定されるものではない。ただ、製造の容易性の点から、アゾ骨格部分構造とポリマー成分を、カルボン酸エステル結合、カルボン酸アミド結合、スルホン酸エステル結合により連結する連結部位である場合が好ましい。
上記式(8)、(9)中のLの置換位置は、アミド基に対し、o−位、m−位、p−位で置換した場合が挙げられる。これらの置換位置の違いによる顔料への吸着性は、o−位、m−位、p−位で同等である。
上記アゾ骨格部分構造について、詳述したが、RからR28は、本発明の顔料分散剤が、本発明の顔料分散剤の規定の範囲、また好ましい形態である酸価、アミン価の範囲内になるよう考慮し、それぞれの構造を選択する。
顔料分散剤の吸着成分の位置は、ポリマー成分に対して、ランダムに点在していても、一端に1つもしくは複数のブロックを形成して偏在していてもよい。
顔料分散剤中の吸着成分の数は、多い方が顔料への吸着性は高いが、あまりに多すぎると、結着樹脂や懸濁重合法における重合性単量体への親和性が悪化するため好ましくない。したがって、吸着成分の数は、ポリマー成分を形成する単量体数100に対して0.5〜15.0の範囲内である場合が好ましく、2.0〜10.0の範囲内である場合がより好ましい。
本発明において吸着成分として例示した上記式(3)で示されるアゾ骨格部分構造は、下記図に示されるように、下記式(10)および(11)などで示される互変異性体が存在するが、これらの互変異性体についても本発明の権利範囲内である。アゾ骨格部分構造は互変異性体が存在するため、従来の顔料分散剤にはない顔料に対するより一層強固なπ−π相互作用が得られる。強固なπ−π相互作用が得られる理由は、上記式(3)で示されるアゾ骨格部分構造中のアリル基だけではなく、アリル基に直結するアゾ結合やアゾ結合に影響を及ぼし共鳴するように配置されたカルボニル基による共鳴構造にある。
[式(10)および(11)中のR、R、Arは、式(3)におけるR、R、Arと各々同義である。]
顔料分散剤は、公知の方法にしたがって合成することができる。
顔料分散剤を合成する方法としては、例えば、下記(i)〜(iv)に示す方法が挙げられる。
まず、方法(i)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
[式(14)および(15)中のR、Rは上記式(3)中のR、Rと各々同義である。式(13)および(15)中のArはアリーレン基を示す。例えば、Pは上記式(6)で示されるユニットを重合して得られるポリマー成分である。式(13)および(15)中のQは、Pと反応して、上記二価の連結基Lを形成する置換基を示す。]
上記に例示した方法(i)のスキームでは、工程1と工程2とによって、上記顔料分散剤を合成することができる。工程1では、式(13)で示されるアニリン誘導体と、化合物(14)とをジアゾカップリングさせ、アゾ骨格部分構造(15)を合成する。工程2では、アゾ骨格部分構造(15)とポリマー成分Pとを縮合反応などにより結合させる。
まず、工程1について説明する。工程1では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、下記に示す方法が挙げられる。まず、メタノール溶剤中、アニリン誘導体(13)を塩酸、または硫酸などの無機酸の存在下、亜硝酸ナトリウム、またはニトロシル硫酸などのジアゾ化剤と反応させて、対応するジアゾニウム塩を合成する。さらに、このジアゾニウム塩を化合物(14)とカップリングさせて、アゾ骨格部分構造(15)を合成する。
上記アニリン誘導体(13)は、多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。
溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、メタノール、エタノール、プロパノールなどのアルコール類、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピルなどのエステル類、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン(THF)、ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類、ギ酸、酢酸、プロピオン酸などの酸類、水などが挙げられる。
また、上記溶剤は2種以上を混合して用いることができ、基質の溶解性に応じて、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で、上記式(13)で示される化合物に対し1.0〜20重量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常−50℃〜100℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
次に、工程2で用いるポリマー成分Pの合成方法について説明する。ポリマー成分Pの合成では公知の重合方法を利用できる。
具体的には、ラジカル重合、カチオン重合、アニオン重合が挙げられるが、製造容易性の点でラジカル重合を用いることが好ましい。
ラジカル重合は、ラジカル重合開始剤の使用、放射線、レーザー光などの照射、光重合開始剤と光の照射との併用、加熱などにより行うことができる。
ラジカル重合開始剤としては、ラジカルを発生し、重合反応を開始させることができるものであればよく、熱、光、放射線、酸化還元反応などの作用によってラジカルを発生する化合物から選ばれる。例えば、顔料分散剤、有機過酸化物、無機過酸化物、有機金属化合物、光重合開始剤などが挙げられる。
より具体的には、2,2’−アゾビス(イソブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)などのアゾ系重合開始剤、ベンゾイルパーオキサイド、ジ−tert−ブチルパーオキサイド、tert−ブチルパーオキシイソプロピルカーボネート、tert−へキシルパーオキシベンゾエート、tert−ブチルパーオキシベンゾエートなどの有機過酸化物系重合開始剤、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウムなどの無機過酸化物系重合開始剤、過酸化水素−第1鉄系、過酸化ベンゾイル−ジメチルアニリン系、セリウム(IV)塩−アルコール系などのレドックス開始剤などが挙げられる。
光重合開始剤としては、ベンゾフェノン類、ベンゾインエーテル類、アセトフェノン類、チオキサントン類などが挙げられる。これらのラジカル重合開始剤は、2種以上を併用してもよい。
この際使用される重合開始剤の使用量は、単量体100重量部に対し0.1〜20重量部の範囲で、目標とする分子量分布のポリマー成分が得られるように使用量を調節するのが好ましい。
上記Pで示されるポリマー成分は、溶液重合、懸濁重合、乳化重合、分散重合、沈殿重合、塊状重合など何れの方法を用いて製造することも可能であり、特に限定するものではないが、製造時に用いる各成分を溶解し得る溶媒中での溶液重合が好ましい。
上記Pで示されるポリマー成分は、公知の方法を用いて、分子量分布や分子構造を制御することができる。具体的には、例えば、付加開裂型の連鎖移動剤を利用する方法、アミンオキシドラジカルの解離と結合を利用するNMP法(nitroxidemediatedpolymerization)、ハロゲン化合物を重合開始剤として、重金属およびリガンドを用いて重合するATRP法(原子移動ラジカル重合法)、ジチオカルボン酸エステルやザンテート化合物などを重合開始剤とするRAFT法(reversibleadditionfragmentationchaintransfer)、その他、MADIX法(MacromolecularDesignviaInterchangeofXanthate)、DT法(Degenerativetransfer)などを用いることで、分子量分布や分子構造を制御したポリマー成分を製造することができる。
次に、工程2について説明する。工程2では公知の方法を利用できる。具体的には、例えば、カルボキシル基を有するポリマー成分Pと、Xがヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、連結基がカルボン酸エステル結合を有する上記部位顔料分散剤を合成することができる。また、ヒドロキシル基を有するポリマー成分PとXがスルホン酸基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、連結基がスルホン酸エステル結合を有する上記顔料分散剤を合成することができる。
さらに、カルボキシル基を有するポリマー成分Pと、Xがアミノ基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、連結基がカルボン酸アミド結合を有する上記顔料分散剤を合成することができる。具体的には、脱水縮合剤、例えば、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド塩酸塩などを使用する方法、ショッテン−バウマン法などが挙げられる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えば、ジエチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジオキサンなどのエーテル類、ベンゼン、トルエン、キシレン、ヘキサン、ヘプタンなどの炭化水素類、ジクロロメタン、ジクロロエタン、クロロホルムなどの含ハロゲン炭化水素類、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリドン、N,N−ジメチルイミダゾリジノンなどのアミド類、アセトニトリル、プロピオニトリルなどのニトリル類などが挙げられる。
また、上記溶剤は基質の溶解性に応じて、2種以上を混合して用いることができ、混合使用の際の混合比は任意に定めることができる。上記溶剤の使用量は、任意に定めることができるが、反応速度の点で上記一般式(15)で示される化合物に対し1.0〜20重量倍の範囲が好ましい。
本工程は、通常0℃〜250℃の温度範囲で行われ、通常24時間以内に完結する。
次に、方法(ii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
[式(15)中のR、R、Ar、Qは、上記方法(i)のスキーム中の式(15)中のR、R、Ar、Qと各々同義である。式(16)中のQは、式(15)中のQと反応して、式(17)中のQを形成する置換基を示す。式(16)および(17)中のR26は、水素原子、アルキル基を示し、Qは式(15)中のQおよび式(16)中のQが反応し、形成する二価の連結基Lを形成する置換基を示す。]
上記に例示した方法(ii)のスキームでは、工程3と工程4とによって、上記顔料分散剤を合成することができる。工程3は、式(15)で示されるアゾ骨格部分構造と、式(16)で示されるビニル基含有化合物とを反応させ、重合性官能基を有するアゾ骨格部分構造(17)を合成する。工程4は、重合性官能基を有するアゾ骨格部分構造(17)を、上記式(2)で示されるユニットと共重合する。
まず、工程3について説明する。工程3では方法(i)における工程2と同様の方法を利用し、重合性官能基を有するアゾ骨格部分構造(17)を合成することができる。
具体的には、例えば、カルボキシル基を有するビニル基含有化合物(16)と、X3がヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)とを使用することで、アゾ骨格部分構造(17)を合成することができる。アゾ骨格部分構造(17)は、連結基がカルボン酸エステル結合である、上記重合性官能基を有する。
また、ヒドロキシル基を有するビニル基含有化合物(16)と、X3がスルホン酸基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)とを使用することで、アゾ骨格部分構造(17)を合成することができる。アゾ骨格部分構造(17)は、連結基がスルホン酸エステル結合である、上記重合性官能基を有する。
さらに、カルボキシル基を有するビニル基含有化合物(16)と、X3がアミノ基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、連結基がカルボン酸アミド結合を有する上記部位顔料分散剤を合成することができる。
上記ビニル基含有化合物(16)多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
次に、工程4について説明する。工程4では上記方法(i)のポリマー成分Pの合成と同様の方法を利用し、上記式(1)で示される顔料分散剤を合成することができる。
次に、方法(iii)について、スキームの一例を以下に示し、詳細に説明する。
[式(15)中のR、R、Ar、Qは上記方法(i)のスキーム中の式(15)中のR、R、Ar、Qと各々同義である。式(18)中のQは、式(15)中のQと反応して、式(19)中のQを形成する置換基を示す。Aは塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子を示す。式(19)中のR、R、Arは、上記式(15)中のR、R、Arと同義であり、Qは式(15)中のQおよび式(18)中のQが反応し、形成する連結基を示す。]
上記に例示した方法(iii)のスキームでは、工程5と工程6とによって、上記顔料分散剤を合成することができる。工程5では、式(15)で示されるアゾ骨格部分構造と、式(18)で示されるハロゲン原子含有化合物とを反応させ、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を合成する。工程6では、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を重合開始剤として、上記式(2)で示されるユニットと重合する。
まず、工程5について説明する。工程5では上記方法(i)の工程2と同様の方法を利用し、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を合成することができる。具体的には、例えば、カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(18)とXがヒドロキシル基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を合成することができる。
また、ヒドロキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(18)と、Xがスルホン酸基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を合成することができる。
さらに、カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(18)と、Xがアミノ基を有する置換基であるアゾ骨格部分構造(15)を使用することで、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を合成することができる。
上記カルボキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(18)としては、例えば、クロロ酢酸、α−クロロプロピオン酸、α−クロロ酪酸、α−クロロイソ酪酸、α−クロロ吉草酸、α−クロロイソ吉草酸、α−クロロカプロン酸、α−クロロフェニル酢酸、α−クロロジフェニル酢酸、α−クロロ−α−フェニルプロピオン酸、α−クロロ−β−フェニルプロピオン酸、ブロモ酢酸、α−ブロモプロピオン酸、α−ブロモ酪酸、α−ブロモイソ酪酸、α−ブロモ吉草酸、α−ブロモイソ吉草酸、α−ブロモカプロン酸、α−ブロモフェニル酢酸、α−ブロモジフェニル酢酸、α−ブロモ−α−フェニルプロピオン酸、α−ブロモ−β−フェニルプロピオン酸、ヨード酢酸、α−ヨードプロピオン酸、α−ヨード酪酸、α−ヨードイソ酪酸、α−ヨード吉草酸、α−ヨードイソ吉草酸、α−ヨードカプロン酸、α−ヨードフェニル酢酸、α−ヨードジフェニル酢酸、α−ヨード−α−フェニルプロピオン酸、α−ヨード−β−フェニルプロピオン酸、β−クロロ酪酸、β−ブロモイソ酪酸、ヨードジメチルメチル安息香酸、1−クロロエチル安息香酸などが挙げられ、その酸ハロゲン化物、酸無水物も同様に本発明において使用することができる。
上記ヒドロキシル基を有するハロゲン原子含有化合物(18)としては、例えば、1−クロロエタノール、1−ブロモエタノール、1−ヨードエタノール、1−クロロプロパノール、2−ブロモプロパノール、2−クロロ−2−プロパノール、2−ブロモ−2−メチルプロパノール、2−フェニル−1−ブロモエタノール、2−フェニル−2−ヨードエタノールなどが挙げられる。
次に、工程6について説明する。工程6では上記方法(i)中の公知のATRP法を利用し、ハロゲン原子を有するアゾ骨格部分構造(19)を重合開始剤として、金属触媒、配位子の存在下、上記ユニット(2)と重合することで、上記顔料分散剤を合成することができる。
また、上記式(3)中のRがNR1112基であり、かつR11が水素原子、R12がフェニル基である場合、上記顔料分散剤は、例えば下記方法(iv)により合成することができる。
[式(20)、(22)、(24)および(25)中のArはアリーレン基を示す。式(21)、(22)、(24)および(25)中のRは上記式(4)中のRと同義である。式(21)中のQは、式(20)のアミノ基と反応して、式(22)中のアミド基を形成する際に脱離する置換基を示す。Pは上記方法(i)のスキーム中のPと同義である。]
上記に例示した方法(iv)のスキームでは、工程7、工程8、工程9および工程10によって、上記顔料分散剤を合成することができる。工程7では、式(20)で示されるアニリン誘導体と化合物(21)をアミド化し、化合物(22)を得る。工程8では、化合物(22)と式(23)で示されるアニリン類縁体のジアゾ成分とをカップリングさせて式(24)で示されるアゾ骨格部分構造を得る。工程9では、式(24)で示されるアゾ骨格部分構造のニトロ基を、還元剤にてアミノ基に還元して式(25)で示されるアゾ骨格部分構造を得る。工程10では、式(25)で示されるアゾ骨格部分構造のアミノ基と、別途合成したPで示されるポリマー成分のカルボキシル基とをアミド化により結合する。
まず、工程7について説明する。工程7では、公知の方法を利用できる。また、化合物(22)中のRがメチル基の場合は、前記化合物(21)の替わりにジケテンを用いた方法によっても合成可能である。上記化合物(21)は、多種市販されており容易に入手可能である。また、公知の方法によって容易に合成することができる。
本工程は無溶剤で行うことも可能であるが、反応の急激な進行を防ぐため溶剤の存在下で行うことが好ましい。溶剤としては、反応を阻害しないものであれば特に制限されるものではないが、例えばトルエン、キシレンなどの高沸点溶剤を使用することができる。
次に、工程8について説明する。工程8では、上記方法(i)中の工程1と同様の方法を利用し、アゾ骨格部分構造(24)を合成することができる。
次に、工程9について説明する。工程9は、例えば、下記に挙げるような方法でニトロ基の還元反応を行えばよい。まず、アルコールなどの溶剤中で上記アゾ骨格部分構造(24)を溶解し、還元剤の存在下、常温または加熱条件下、上記アゾ骨格部分構造(24)のニトロ基をアミノ基に還元し、上記アゾ骨格部分構造(25)を得る。還元剤としては、特に限定されるものではないが、例えば、硫化ナトリウム、硫化水素ナトリウム、水硫化ナトリウム、多硫化ナトリウム、鉄、亜鉛、スズ、SnCl、SnCl・2HOなどが挙げられる。上記還元反応は、ニッケル、白金、パラジウムなどの金属を活性炭などの不溶性担体に担持させた触媒存在下、水素ガスを接触させる方法を用いても進行する。
次に、工程10について説明する。工程10では、上記方法(i)中の工程2と同様の方法を利用して、式(25)で示されるアゾ骨格部分構造のアミノ基と、Pで示されるポリマー成分のカルボキシル基とをアミド化により結合することにより、上記顔料分散剤を合成することができる。
上記例示した合成方法の各工程で得られた化合物は、例えば、有機溶剤を用いた再結晶法や再沈殿法、シリカゲルなどを用いたカラムクロマトグラフィーなど通常の有機化合物の単離、精製方法を用い精製することができる。これらの方法を単独、または2つ以上組み合わせて精製を行うことにより、高純度の化合物を得ることが可能である。
次に、本発明で用いるトナーおよびトナーの製造方法について詳細に説明する。
本発明で用いるトナーの重量平均粒径(D4)は、4.0μm以上9.0μm以下であることで、本発明の効果を発揮しえる。好ましくは5.0μm以上7.5μm以下が良い。
トナーの重量平均粒径が4.0μm以上あると、チャージアップを引き起こしにくくなり、チャージアップによるカブリや飛散、画像濃度薄などの弊害を引き起こしにくくなる。また、長期画像出力において帯電付与部材を汚染しにくくなり安定した高画質画像を供しやすくなる。さらには、感光体上に残る転写残トナーのクリーニングが容易となるばかりでなく、融着なども発生しにくくなる。
9.0μm以下であると、微小文字などの細線再現性の悪化および画像飛び散りの悪化を引き起こしにくくなり、昨今望まれる高画質画像を供し得る。
本発明で用いるトナーの製造方法は、懸濁重合法である。
本発明で用いるトナーの製造方法において、顔料分散剤と、顔料とを予め混合し、顔料組成物(マスターバッチ)を調製することで、顔料の分散性を向上させることができる。
具体的には、例えば、下記のようにして得られる。
分散媒体中に顔料分散剤、顔料粒子および必要に応じてその他トナーの原材料を添加し、撹拌しながら十分に分散媒体になじませる。さらにニーダー、ロールミル、ボールミル、ペイントシェーカー、ディゾルバー、アトライター、サンドミル、ハイスピードミル、SCミル、スターミル、超音波分散機などの分散機により、顔料を安定に均一な微粒子状に微分散することができる。
上記顔料組成物に使用し得る分散媒体としては特に限定されないが、顔料分散剤が高い顔料分散効果を得るためには、後述するトナーの結着樹脂を構成するための重合性単量体、である場合が好ましい。
本発明の懸濁重合法で製造されるトナーについて、さらに詳述する。
本発明の懸濁重合法により製造されるトナー粒子は、例えば下記のようにして製造される。上記顔料組成物、重合性単量体、離型剤および重合開始剤などを混合して重合性単量体組成物を調製する。次に、該重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して重合性単量体組成物の粒子を造粒する。そして、水系媒体中にて重合性単量体組成物の粒子中の重合性単量体を重合させてトナー粒子を得る。
重合性単量体としては、ラジカル重合が可能なビニル系重合性単量体が用いられる。ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチルスチレン、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンなどのスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、ベンジルアクリレート、ジメチルフォスフェートエチルアクリレート、ジエチルフォスフェートエチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートなどのアクリル系重合性単量体;メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、n−プロピルメタクリレート、iso−プロピルメタクリレート、n−ブチルメタクリレート、iso−ブチルメタクリレート、tert−ブチルメタクリレート、n−アミルメタクリレート、n−ヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−オクチルメタクリレート、n−ノニルメタクリレート、ジエチルフォスフェートエチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートなどのメタクリル系重合性単量体;メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニル、酪酸ビニル、安息香酸ビニル、ギ酸ビニルなどのビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルなどのビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンなどのビニルケトン。
多官能性重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、ジエチレングリコールジメタクリレート、トリエチレングリコールジメタクリレート、テトラエチレングリコールジメタクリレート、ポリエチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,6−ヘキサンジオールジメタクリレート、ネオペンチルグリコールジメタクリレート、ポリプロピレングリコールジメタクリレート、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、2,2’−ビス(4−(メタクリロキシ・ポリエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリメタクリレート、テトラメチロールメタンテトラメタクリレート、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテル。
単官能性重合性単量体は、単独で或いは2種以上組み合わせて、または、多官能性重合性単量体と組み合わせて使用する。多官能性重合性単量体は架橋剤として使用することも可能である。
上記工程における重合性単量体組成物は、上記顔料組成物を第1の重合性単量体に分散させた分散液を、第2の重合性単量体と混合して調製されたものであることが好ましい。即ち、上記顔料組成物を第1の重合性単量体により十分に分散させた後で、他のトナー材料とともに第2の重合性単量体と混合することにより、顔料がより良好な分散状態でトナー粒子中に存在できる。
重合性単量体の重合の際に用いられる重合開始剤としては、油溶性開始剤および/または水溶性開始剤が用いられる。油溶性開始剤としては、以下のものが挙げられる。
2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリルなどの顔料分散剤;アセチルシクロヘキシルスルホニルパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、デカノニルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、ステアロイルパーオキサイド、プロピオニルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート、シクロヘキサノンパーオキサイド、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジクミルパーオキサイド、t−ブチルヒドロパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド、クメンヒドロパーオキサイドなどのパーオキサイド系開始剤。
水溶性開始剤としては、以下のものが挙げられる。過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、硫酸第一鉄または過酸化水素。
また、重合性単量体の重合度を制御するために、連鎖移動剤、重合禁止剤などをさらに添加し用いることも可能である。
上記重合開始剤の濃度は、重合性単量体100重量部に対して0.1〜20重量部の範囲である場合が好ましく、より好ましくは0.1〜10重量部の範囲である場合である。上記重合性開始剤の種類は、重合法により若干異なるが、10時間半減温度を参考に、単独または混合して使用される。
さらに、本発明においては、トナー粒子の耐ストレス性を高めるとともに、上記粒子構成分子の分子量を制御するために、結着樹脂の合成時に架橋剤を用いることもできる。
架橋剤としては、2個以上の重合可能な二重結合を有する化合物が用いられる。具体的には、ジビニルベンゼン、ジビニルナフタレンのような芳香族ジビニル化合物;エチレングリコールジアクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、1,3−ブタンジオールジメタクリレートのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホンなどのジビニル化合物;および3個以上のビニル基を有する化合物が挙げられる。これらは単独もしくは混合物として用いられる。
これらの架橋剤は、トナーの定着性、耐オフセット性の点で、上記単量体100質量部に対して、好ましくは0.05〜10質量部の範囲、より好ましくは0.1〜5質量部の範囲で用いることが良い。
重合性単量体や架橋剤は、単独、または理論ガラス転移温度(Tg)が、40〜75℃の範囲を示すように単量体を適宜混合して用いられる。理論ガラス転移温度が40℃以上の場合にはトナーの保存安定性や耐ストレス性の面から問題が生じにくく、一方75℃以下の場合はトナーのフルカラー画像形成の場合において透明性や低温定着性が低下しない。
上記懸濁重合法で用いられる水系媒体は、分散安定化剤を含有させることが好ましい。該分散安定化剤としては、公知の無機系および有機系の分散安定化剤を用いることができる。無機系の分散安定化剤としては、例えば、リン酸カルシウム、リン酸マグネシウム、リン酸アルミニウム、リン酸亜鉛、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウム、メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、ベントナイト、シリカ、アルミナなどが挙げられる。
有機系の分散安定化剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ゼラチン、メチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、エチルセルロース、カルボキシメチルセルロースのナトリウム塩、デンプンなどが挙げられる。また、ノニオン性、アニオン性、カチオン性の界面活性剤の利用も可能である。例えば、ドデシル硫酸ナトリウム、テトラデシル硫酸ナトリウム、ペンタデシル硫酸ナトリウム、オクチル硫酸ナトリウム、オレイン酸ナトリウム、ラウリル酸ナトリウム、ステアリン酸カリウム、オレイン酸カルシウムなどが挙げられる。
上記分散安定化剤のうち、本発明においては、酸に対して可溶性のある難水溶性無機分散安定化剤を用いることが好ましい。また、本発明においては、難水溶性無機分散安定化剤を用い、水系分散媒体を調製する場合に、これらの分散安定化剤が重合性単量体100重量部に対して0.2〜2.0重量部の範囲となるような割合で使用することが好ましい。このような範囲となる割合で使用することによって、重合性単量体組成物の水系媒体中での液滴安定性が向上するからである。また、本発明においては、重合性単量体組成物100重量部に対して300〜3000重量部の範囲の水を用いて水系媒体を調製することが好ましい。
本発明において、上記難水溶性無機分散安定化剤が分散された水系媒体を調製する場合には、市販の分散安定化剤をそのまま用いて分散させても良い。しかし、細かい均一な粒度を有する分散安定化剤粒子を得るために、水中にて高速撹拌下に、上記難水溶性無機分散安定化剤を生成させて調製することが好ましい。例えば、リン酸カルシウムを分散安定化剤として使用する場合、高速撹拌下でリン酸ナトリウム水溶液と塩化カルシウム水溶液を混合してリン酸カルシウムの微粒子を形成することで、好ましい分散安定化剤を得ることができる。
懸濁重合方法においては、重合性単量体組成物に極性樹脂を添加させ、トナー粒子を製造することで、主に結着樹脂および離型剤(コア)を極性樹脂(シェル)で被覆したコア−シェル構造を有するトナーを得ることができる。
そのため、これら重合法によるトナーは、離型剤をトナー内に良好に内包化することにより、比較的多量の離型剤を含有しても、トナー表面への露出は少なく、連続プリントにおけるトナー劣化を抑制することができる。
シェルを形成させる極性樹脂として、以下に一例を挙げるがこれら以外のものでも構わない。
本発明で用いられる極性樹脂は例えば、ポリエステル、ポリカーボネート、フェノール樹脂、エポキシ樹脂、ポリアミド、セルロースなどが挙げられる。より好ましくは材料の多様性からポリエステルが望まれる。前記極性樹脂は結着樹脂100質量部当たり0.01〜20.0質量部、より好ましくは0.5〜10.0質量部を使用するのが良い。
本発明で用いるトナーの着色剤としては、以下に示すブラック、イエロー、マゼンタおよびシアンの顔料および必要に応じて染料を用いることができる。
ブラック着色剤としては、公知のブラック着色剤を用いることができる。
例えば、ブラック着色剤としては、カーボンブラックが挙げられる。
また、以下に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を混合させて、ブラックに調節したものが挙げられる。
カーボンブラックとしては、特に制限はないが、例えばサーマル法、アセチレン法、チャンネル法、ファーネス法、ランプブラック法などの製法により得られたカーボンブラックを用いることができる。
本発明に用いるカーボンブラックの平均一次粒径は、特に制限はないが、平均一次粒径が14〜80nmであることが好ましく、より好ましくは25〜50nmである。平均一次粒径が14nm以上の場合には、トナーは赤味を呈さず、フルカラー画像形成用のブラックとして好ましい。カーボンブラックの平均一次粒径が80nm以下の場合には、良好に分散しかつ着色力が低くなり過ぎず好ましい。
なお、カーボンブラックの平均一次粒径は、走査型電子顕微鏡で拡大した写真を撮影して測定することができる。
上記カーボンブラックは単独で用いても良く、2種以上を混合しても良い。
これらは粗製顔料であっても良く、本発明の顔料分散剤の効果を著しく阻害するものでなければ調製された顔料組成物であっても良い。
イエロー着色剤としては、公知のイエロー着色剤を用いることができる。
顔料系のイエロー着色剤としては、縮合顔料分散剤、イソインドリノン化合物、アンスラキノン化合物、アゾ金属錯体メチン化合物、アリルアミド化合物に代表される化合物が用いられる。具体的には、C.I.PigmentYellow3、7、10、12、13、14、15、17、23、24、60、62、74、75、83、93、94、95、99、100、101、104、108、109、110、111、117、123、128、129、138、139、147、148、150、155、166、168、169、177、179、180、181、183、185、191:1、191、192、193、199が挙げられる。
染料系のイエロー着色剤としては、C.I.solventYellow33、56、79、82、93、112、162、163、C.I.disperseYellow42、64、201、211が挙げられる。
中でも、C.I.PigmentYellow155、180などの縮合顔料分散剤が、本発明の顔料分散剤のアゾ骨格部分構造と構造が類似しているため、吸着性が高く、好ましい。また、本発明の顔料分散剤は、置換基を適宜選択し、顔料との水素結合による相互作用を強くすることができるため、C.I.PigmentYellow185などのイソインドリン化合物などにも吸着性が高く、好ましい。
マゼンタ着色剤としては、公知のマゼンタ着色剤を用いることができる。
マゼンタ着色剤としては、縮合顔料分散剤、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が用いられる。具体的には、C.I.PigmentRed2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、150、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.PigmentViolet19が挙げられる。
中でも、C.I.PigmentRed150などの縮合顔料分散剤が、本発明の顔料分散剤のアゾ骨格部分構造と構造が類似しているため、吸着性が高く、好ましい。また、本発明の顔料分散剤は、置換基を適宜選択し、顔料との水素結合による相互作用を強くすることができるため、C.I.PigmentRed122やC.I.PigmentViolet19などのキナクリドン化合物などにも吸着性が高く、好ましい。
シアン着色剤としては、公知のシアン着色剤を用いることができる。
シアン着色剤としては、フタロシアニン化合物およびその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が用いられる。具体的には、C.I.PigmentBlue1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
着色剤は、単独または混合しさらには固溶体の状態で用いることができる。本発明において、着色剤は、色相角、彩度、明度、耐侯性、OHT透明性、トナー中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、結着樹脂100質量部に対し1質量部以上20質量部以下であることが好ましい。
本発明で用いるトナーにおいて、本発明の顔料と顔料分散剤との好ましい重量組成比は、100:0.1〜100:30、さらに好ましくは、100:0.5〜100:15の範囲である。
本発明で用いるトナーは、一種以上の離型剤を含有していることが好ましい。トナー中に含まれる離型剤は総量で、トナー粒子100質量部中に2.5質量部以上25.0質量部以下含有されることが好ましい。また、トナー中に含まれる離型剤の総量は、4.0質量部以上20質量部以下であることがより好ましく、6.0質量部以上18.0質量部以下であることがさらに好ましい。
離型剤としては、以下のものが挙げられる。低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、フィッシャートロプッシュワックス、パラフィンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスなどの脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物、またはそれらのブロック共重合物;カルナバワックス、モンタン酸エステルワックスなどの脂肪酸エステルを主成分とするワックス類、および脱酸カルナバワックスなどの脂肪酸エステル類を一部または全部を脱酸化したもの;パルミチン酸、ステアリン酸、モンタン酸などの飽和直鎖脂肪酸類;ブランジン酸、エレオステアリン酸、パリナリン酸などの不飽和脂肪酸類;ステアリルアルコール、アラルキルアルコール、ベヘニルアルコール、カルナウビルアルコール、セリルアルコール、メリシルアルコールなどの飽和アルコール類;ソルビトールなどの多価アルコール類;リノール酸アミド、オレイン酸アミド、ラウリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスカプリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ヘキサメチレンビスステアリン酸アミドなどの飽和脂肪酸ビスアミド類;エチレンビスオレイン酸アミド、ヘキサメチレンビスオレイン酸アミド、N,N’ジオレイルアジピン酸アミド、N,N’ジオレイルセバシン酸アミドなどの不飽和脂肪酸アミド類;m−キシレンビスステアリン酸アミド、N,N’ジステアリルイソフタル酸アミドなどの芳香族系ビスアミド類;ステアリン酸カルシウム、ラウリン酸カルシウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸マグネシウムなどの脂肪族金属塩(一般に金属石けんといわれているもの);脂肪族炭化水素系ワックスにスチレンやアクリル酸などのビニル系モノマーを用いてグラフト化させたワックス類;ベヘニン酸モノグリセリドなどの脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂の水素添加などによって得られるヒドロキシル基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。
本発明で用いるトナーは、低温定着性を付与するために、さらに結晶性ポリエステル樹脂を添加することが好ましい。
本実施形態において、『結晶性』とは、後述する示差走査熱量測定(DSC)の測定において、明確な吸熱ピークを有することを意味する。一方、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非晶性であることを意味する。
本実施形態において、『結晶性』とは、後述する示差走査熱量測定(DSC)の測定において、明確な吸熱ピークを有することを意味する。一方、明確な吸熱ピークが認められない樹脂は、非晶性であることを意味する。
本発明に用いる結晶性ポリエステル樹脂の融点Tm(C)は、55℃以上90℃以下であることが好ましく、60℃以上85℃以下であることがより好ましい。55℃以上の場合は、トナーの耐トナーブロッキング性が生じにくくなり、保存性が低下する可能性が低い。一方、融点が90℃以下の場合、結晶性ポリエステル樹脂の重合性単量体への溶解性が悪化しにくく、顔料や結晶性ポリエステル樹脂などのトナー構成材料の分散性が悪化しないため、かぶりや画像均一性が悪化することもない。
本発明の結晶性ポリエステル樹脂は、脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオールとの重縮合樹脂から構成される。
Tm(C)は、使用する脂肪族ジカルボン酸や脂肪族ジオールの種類、重合度などによって調整することができる。
結晶性ポリエステル樹脂に好適に用いられる脂肪族ジカルボン酸としては、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、グルタコン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ノナンジカルボン酸、デカンジカルボン酸、ウンデカンジカルボン酸、ドデカンジカルボン酸、マレイン酸、フマル酸、メサコン酸、シトラコン酸、イタコン酸、イソフタル酸、テレフタル酸、n−ドデシルコハク酸、n−デドセニルコハク酸、シクロヘキサンジカルボン酸、これらの酸の無水物または低級アルキルエステルなどが挙げられる。
また、本発明においては上記のようなカルボン酸単量体を主成分として用いるが、上記の成分の他に三価以上の多価カルボン酸を用いても良い。
三価以上の多価カルボン酸成分としては、トリメリット酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、1,2,4−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、1,2,4−ブタントリカルボン酸、1,2,5−ヘキサントリカルボン酸、1,3−ジカルボキシル−2−メチル−2−メチレンカルボキシプロパン、およびこれらの酸無水物または低級アルキルエステルなどの誘導体などが挙げられる。
これらは1種単独、または、2種以上併用してもよい。
脂肪族ジオールとしては、具体的には、例えば、エチレングリコール、ジエチレングリコール、トリエチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、トリメチレングリコール、テトラメチレングリコール、ペンタメチレングリコール、ヘキサメチレングリコール、オクタメチレングリコール、ノナメチレングリコール、デカメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、1,4−ブタジエングリコールその他が挙げられる。
また、本発明においては上記のようなアルコール単量体が主成分として用いられるが、上記成分の他に、ポリオキシエチレン化ビスフェノールA、ポリオキシプロピレン化ビスフェノールA、1,4−シクロヘキサンジメタノールなどの二価のアルコール、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンなどの芳香族アルコール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセリン、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパンなどの三価のアルコールなどを用いても良い。
三価以上のアルコールとしては、例えば、グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、ペンタエリスリトールなどが挙げられる。
これらは1種単独、または、2種以上併用してもよい。
上記脂肪族ジカルボン酸と脂肪族ジオール下記式(4)が示す直鎖型脱脂肪族ジカルボン酸と下記式(5)直鎖型脂肪族ジオールから構成されることがより好ましい。
HOOC−(CH)m−COOH式(4)
[式中、mは、4〜16の整数を示す。]
HO−(CH)n−OH式(5)
[式中、nは、4〜16の整数を示す。]
直鎖型であると、ポリエステル樹脂の結晶性に優れ、結晶融点が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、および、低温定着性に優れる。また、炭素原子数が4以上であると、融点(Tm)が適度であるため、耐トナーブロッキング性、画像保存性、および、低温定着性に優れる。また、炭素原子数が16以下であると、実用上の材料の入手が容易である。前記炭素原子数としては14以下であることがより好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の点で、ポリカルボン酸成分のうち、脂肪族ジカルボン酸の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましく、100モル%であることがさらに好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の結晶性の点で、ポリオール成分のうち、前記脂肪族ジオール成の含有量が80モル%以上であることが好ましく、90モル%以上であることがより好ましいく、100モル%であることがさらに好ましい。
なお、必要に応じて、酸価や水酸基価の調製などの目的で、酢酸、安息香酸などの一価の酸や、シクロヘキサノールベンジルアルコールなどの一価のアルコールも用いられる。
結晶性ポリエステル樹脂は飽和ポリエステルであると一層望ましい。結晶性ポリエステル樹脂が不飽和部分を有する場合と比較して、過酸化物系重合開始剤との反応で架橋反応が起こらないため、結晶性ポリエステル樹脂の溶解性の点で有利なためである。本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂は、通常のポリエステル合成法で製造することができる。例えば、ジカルボン酸成分とジアルコ−ル成分をエステル化反応、またはエステル交換反応せしめた後、減圧下または窒素ガスを導入して常法にしたがって重縮合反応させることによって得ることができる。
エステル化またはエステル交換反応のときには、必要に応じて硫酸、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸マンガン、酢酸マグネシウムなどの通常のエステル化触媒またはエステル交換触媒を用いることができる。また、重合に関しては、通常の重合触媒、例えば、ターシャリーブチルチタンブトキサイド、ジブチルスズオキサイド、酢酸スズ、酢酸亜鉛、二硫化スズ、三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウムなどの公知のものを使用することができる。重合温度、触媒量は特に限定されるものではなく、必要に応じて任意に選択すればよい。
前記触媒としてはチタン触媒を用いると望ましく、キレート型チタン触媒であるとさらに望ましい。これはチタン触媒の反応性が適当であり、本発明において望ましい分子量分布のポリエステルが得られるためである。また、チタン触媒を用いて作製された結晶性ポリエステル樹脂の方が作成中にポリエステル内部に取り込まれたチタンもしくはチタン触媒がトナーの帯電性の点で優れるためである。
キレート型チタン触媒であるとそれらの効果が大きく、かつ前記触媒が反応中に加水分解されたものがポリエステル中に取り込まれることによって、前記過酸化物系重合開始剤からの水素引き抜き反応を適切に制御するため望ましい。さらに、トナーの耐久性も向上するためである。
また、ポリマー末端のカルボキシル基を封止することで結晶性ポリエステル樹脂の酸価を制御することもできる。末端封止にはモノカルボン酸、モノアルコールを用いることができる。モノカルボン酸としては例えば安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸などのモノカルボン酸が挙げられる。また、モノアルコールとしてはメタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、ブタノール、および、高級アルコールが使用可能である。
また、本実施形態では、結晶性ポリエステル樹脂部位に対して、他成分を60重量%以下の割合で共重合(変性)した共重合体も結晶性ポリエステル樹脂(ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂)とする。
本発明で用いるトナーの結着樹脂は、ビニル系共重合体であるため、結晶性ポリエステル樹脂が他成分を重合した共重合体部位を有する場合、共重合体部位が非晶性ビニル系共重合体であることが好ましい。
共重合体部位が非晶性ビニル系共重合体であることにより、結晶性ポリエステル樹脂が結着樹脂との相溶性が向上し、トナー中で結晶性ポリエステル樹脂を従来よりもさらに微分散させることが可能となる。それにより、優れた低温定着性と耐久性を得ることが可能となる。
さらには、定着工程において結晶性ポリエステル樹脂が溶融した際、同じビニル系共重合体である結着樹脂と瞬時に相溶することができ、結着樹脂を十分に可塑させることができる。そのため、低温定着性をさらに向上させることができる。
結晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ビニル部位の重量比が60重量%以下の場合、結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂との相溶が過度に進行せず、トナーの耐トナーブロッキング性が低下する原因となることもない。また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度が低下し過ぎず、定着工程における十分なシャープメルト性を発揮することができる。
また、本発明の結晶性ポリエステル樹脂において、結着樹脂との相溶性を高めるため、結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度を調整するのも好ましい。すなわち、結晶性ポリエステル樹脂のエステル基濃度を大きくすることにより、ビニル系共重合体である結着樹脂との相溶性を高めることができ、非晶性ビニル部位の上記効果と同様の効果を得ることができる。
エステル基濃度を高めることにより、結晶性ポリエステル樹脂のTm(C)が低くなり、耐トナーブロッキング性、画像保存性が悪化する場合があるので、ガラス転移温度(Tg)を考慮し、エステル基濃度を調整する必要がある。
また、結晶性ポリエステル樹脂は重量平均分子量(Mw)が10000以上80000以下であることが好ましく、13000以上40000以下であることがさらに好ましい。Mwが10000以上80000以下であることで、トナーの製造工程においては結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を高く保持しつつ、定着工程においては速やかに結晶性ポリエステル樹脂による可塑効果を得ることができる。そのため、優れた耐熱保存性と、低温条件や高速条件における優れた定着性を両立することが可能となる。
結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)は、結晶性ポリエステル樹脂の種々の製造条件によって制御可能である。なお、結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量(Mw)の測定方法に関しては後述する。
また、結晶性ポリエステル樹脂が非晶性ビニル部を有する場合、非晶性ビニル部の重量平均分子量(Mw)は2000以上12000以下であることが好ましい。重量平均分子量(Mw)が2000以上12000以下であることで、非晶性ビニル部が結晶性ポリエステル樹脂中にさらに均一に分散した状態となる。その結果、結晶性ポリエステル樹脂と結着樹脂との相溶性がさらに向上し、低温定着性が良化する。非晶性ビニル部の重量平均分子量(Mw)は、結晶性ポリエステル樹脂製造時の両反応性モノマーの添加量などポリエステルの種々の製造条件によって制御可能である。なお、非晶性ビニル部の重量平均分子量(Mw)の測定方法に関しては後述する。
また、本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂の酸価を5.0mgKOH/g以下にすることが好ましい。
本発明に用いられる結晶性ポリエステル樹脂の酸価が5.0mgKOH/g以下であることにより、結着樹脂中での結晶性ポリエステル樹脂の分布状態に偏りが出にくくなり、結晶性ポリエステル樹脂の適度な分散状態が得られる。そのため、結着樹脂に対する所望の可塑効果を得ることができ、優れた低温定着性能を満たすことができる。また、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化度を高めることができ、耐熱性が向上する。
また、酸価を下げることにより、画像形成時におけるトナーと紙との接着性は向上する。また重合法によりトナー粒子を製造する場合、結晶性ポリエステル樹脂の酸価が5.0mgKOH/g以下であると、トナー粒子同士の凝集が起こりにくくなる傾向にある。帯電安定性および耐久安定性が向上するため望ましい。
また、結晶性ポリエステル樹脂の添加量は、結着樹脂100質量部に対して3質量部以上50質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上20質量部以下であることがさらに好ましい。
結晶性ポリエステル樹脂の含有量が3質量部以上では、低温定着性がより良好であり望ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂は吸湿しやすいが、その含有量が結着樹脂に対して50質量部以下であればトナーの帯電の均一性が損なわれにくく、カブリの増加などを招かないため好ましい。また、結晶性ポリエステル樹脂の含有量が50質量部以下の場合には、過剰な結晶性ポリエステル樹脂の存在による溶融粘度の低下が起こったりしないためにオフセットが発生しにくい。さらに、懸濁重合トナーでは、トナー粒子の表面形状の平滑性が低下せず、帯電特性が低下したり、画像濃度が低下したりすることもないため望ましい。
また、前記トナー粒子は、前記重合工程において、下記式(26)で示される温度T1(℃)にて加熱保持されることがさらに好ましい。
T1≧Tm(C)+5式(26)
前記トナー粒子の前記重合工程において、前記結晶性樹脂の融点Tm(C)以上の温度で加熱保持されることによって、前記結晶性樹脂が十分に溶融し、前記結着樹脂との相溶が進行する。その結果、前記結晶性樹脂の微分散性が向上し、低温定着性が向上する。T1は、Tm(C)より10℃以上高いことがさらに好ましい。
また、前記トナー粒子は、前記重合工程を経た後、下記式(27)で示される温度T2(℃)にて60分間以上加熱保持(アニール処理)されることがさらに好ましい。
Tm(C)−30≦T2≦Tm(C)−5式(27)
前記結晶性樹脂は、トナーの製造中に一部非晶化し、結晶化度が下がる傾向にある。非晶化した前記結晶性樹脂は前記結着樹脂と相溶し、前記結着樹脂を軟化させる場合がある。前記トナー粒子の前記重合工程後に、上記式(27)で示される温度T2で60分間以上加熱保持されることによって、前記結晶性樹脂の結晶化度が向上する。つまり、前記結晶性樹脂が微分散された状態であっても充分結晶性を維持されており、トナーの耐熱保存性や耐久性を維持しつつ、優れた定着性を得ることができる。
また、トナー中の前記結晶性樹脂の分散状態は、前記結晶性樹脂の酸価、分子量のような物性や、前記結晶性樹脂の融点と重合温度の条件でも制御可能である。
前記ハイブリッド結晶性ポリエステル樹脂の製造方法としては非晶性ビニル系重合体ユニット部を作成する際に加圧環境下で重合反応を進行させる方法が挙げられる。具体的には、ポリエステルに含有される水酸基と非晶性ビニル系重合体に含有される(メタ)アクリル酸エステルとのエステル交換反応が挙げられる。また、ポリエステルに含有される水酸基と非晶性ビニル系重合体に含有されるカルボキシル基とのエステル化反応が挙げられる。また、ポリエステルに含有されるカルボキシル基と非晶性ビニル系重合体に含有される水酸基とのエステル化反応が挙げられる。また、水素引き抜き反応によりポリエステル中にラジカルを発生させ、ビニル系単量体を添加し、加圧環境下において、重合させるなどの方法が挙げられる。その際、加圧の程度としては0.20MPa以上0.45MPa以下が好ましい。
前記ハイブリッド樹脂を製造する際に用いる前記ビニル系重合性単量体としては、単官能性重合性単量体或いは多官能性重合性単量体を使用することができる。単官能性重合性単量体としては、スチレン;α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレンのようなスチレン誘導体;メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、iso−ブチルアクリレート、tert−ブチルアクリレート、n−アミルアクリレート、n−ヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、n−オクチルアクリレート、n−ノニルアクリレート、シクロヘキシルアクリレート、のようなアクリル系重合性単量体;前記アクリル系重合性単量体をメタクリレートに変えたメタクリル系重合性単量体が挙げられる。
多官能性重合性単量体としては、ジエチレングリコールジアクリレート、トリエチレングリコールジアクリレート、テトラエチレングリコールジアクリレート、ポリエチレングリコールジアクリレート、1,6−ヘキサンジオールジアクリレート、ネオペンチルグリコールジアクリレート、トリプロピレングリコールジアクリレート、ポリプロピレングリコールジアクリレート、2,2’−ビス(4−(アクリロキシ・ジエトキシ)フェニル)プロパン、トリメチロールプロパントリアクリレート、テトラメチロールメタンテトラアクリレートのようなアクリル系多官能性重合性単量体;前記アクリル系多官能性重合性単量体をメタクリレートに変えたメタクリル系多官能性重合性単量体;ジビニルベンゼン、ジビニルナフタリン、ジビニルエーテルが挙げられる。
前記ビニル系単量体としては、カルボキシル基、ヒドロキシル基を有するもの、(メタ)アクリル酸エステル類が含有されるものが好ましい。カルボキシル基といった強い極性を持った官能基が、前記ハイブリッド樹脂のビニル系重合体ユニット中に存在する。すると、ビニル系重合体ユニットが適当な極性を有することになり、水系媒体中でのトナー粒子製造時にトナー粒子を安定化させるため好ましい。
また、前記ハイブリッド樹脂のビニル系重合体ユニットがアクリル酸との共重合体であるとアクリル酸の持つカルボキシル基による水素結合により、トナー表面が強固になり耐久性に優れるため好ましい。ただし、アクリル酸の前記ハイブリッド樹脂中の含有量が3.0質量%を越えると高温高湿環境下において吸湿性が高まりトナーの摩擦帯電性が低下するため好ましくない。
前記ハイブリッド樹脂を製造する際に上記した重合性単量体を重合するために用いられる重合開始剤としては、本発明で用いられるもの以外にも本発明の効果を阻害しない範囲であれば油溶性開始剤および/または水溶性開始剤が適宜用いることが可能である。例えば、油溶性開始剤としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、のようなアゾ化合物;t−ブチルパーオキシネオデカノエート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、ラウロイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、ジt−ブチルパーオキシイソフタレート、ジt−ブチルパーオキサイドのような過酸化物が挙げられる。
水溶性開始剤としては、過硫酸アンモニウム、過硫酸カリウム、2,2’−アゾビス(N,N’−ジメチレンイソブチロアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビス(2−アミノジノプロパン)塩酸塩、アゾビス(イソブチルアミジン)塩酸塩、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルスルホン酸ナトリウム、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[1,1−ビス(ヒドロキシメチル)−2−ヒドロキシエチル]プロピオンアミド}、2,2’−アゾビス{2−メチル−N−[2−(1−ヒドロキシブチル)]−プロピオンアミド}、塩酸塩硫酸第一鉄または過酸化水素が挙げられる。
特に、好ましくは、過酸化物であり、ポリエステル樹脂を水素引き抜き反応によりビニル変性させる場合は、10時間半減期温度が70℃以上170℃以下が好ましく、75℃以上130℃以下のものを用いると、適度な反応性を持つためより好ましい。
本発明で用いるトナーは、トナーの帯電性を環境によらず安定に保つために、荷電制御剤を用いてもよい。
負荷電性の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。モノアゾ金属化合物、アセチルアセトン金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族ダイカルボン酸、オキシカルボン酸およびダイカルボン酸系の金属化合物、芳香族オキシカルボン酸、芳香族モノおよびポリカルボン酸およびその金属塩、無水物、エステル類、ビスフェノールなどのフェノール誘導体類、尿素誘導体、含金属サリチル酸系化合物、含金属ナフトエ酸系化合物、ホウ素化合物、4級アンモニウム塩、カリックスアレーン、樹脂系帯電制御剤。
正荷電性の荷電制御剤としては、以下のものが挙げられる。ニグロシンおよび脂肪酸金属塩などによるニグロシン変性物;グアニジン化合物;イミダゾール化合物;トリブチルベンジルアンモニウム−1−ヒドロキシ−4−ナフトスルフォン酸塩、テトラブチルアンモニウムテトラフルオロボレートなどの4級アンモニウム塩、およびこれらの類似体であるホスホニウム塩などのオニウム塩およびこれらのレーキ顔料;トリフェニルメタン染料およびこれらのレーキ顔料(レーキ化剤としては、リンタングステン酸、リンモリブデン酸、リンタングステンモリブデン酸、タンニン酸、ラウリン酸、没食子酸、フェリシアン化物、フェロシアン化物など);高級脂肪酸の金属塩;ジブチルスズオキサイド、ジオクチルスズオキサイド、ジシクロヘキシルスズオキサイドなどのジオルガノスズオキサイド;ジブチルスズボレート、ジオクチルスズボレート、ジシクロヘキシルスズボレートのようなジオルガノスズボレート類;樹脂系帯電制御剤が挙げられる。
これらを単独で或いは2種類以上組み合わせて用いることができる。
中でも、樹脂系帯電制御剤以外の荷電制御剤としては、含金属サリチル酸系化合物が良く、特にその金属がアルミニウムもしくはジルコニウムのものが良い。特に好ましい制御剤は、サリチル酸アルミニウム化合物である。
荷電制御剤の好ましい配合量は、重合性単量体100.00質量部に対して0.01質量部〜20.00質量部、より好ましくは0.05質量部〜10.00質量部である。
また、上記樹脂系荷電制御剤としては、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体が好適に例示できる。
スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体としては、特にスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドモノマーを共重合比で2質量%以上、好ましくは5質量%以上含有し、かつガラス転移温度(Tg)が40〜90℃、ピーク分子量が10,000〜30,000、重量平均分子量が25,000〜40,000であるスチレンおよび/またはスチレン(メタ)アクリル酸共重合体からなる高分子型化合物が挙げられる。
上記のスルホン酸基含有(メタ)アクリルアミドモノマーとしては、下記一般式(28)で示されるものが好ましく、具体的には、2−アクリルアミド−2−メチルプロパン酸や2−メタクリルアミド−2−メチルプロパン酸などが挙げられる。
[式(28)中、R27は水素原子、またはメチル基を示し、R28およびR29は、それぞれ独立して、水素原子、炭素原子数1以上10以下のアルキル基、アルケニル基、アリール基、またはアルコキシ基を示し、pは1〜10の整数を示す。]
これらスルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体は、極性が大きく、水系媒体中で製造されるトナーでは、シェル部分に局在化させることができ、効率的に帯電特性をトナーに付与することができる。
一方、スルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体は、ゼータ電位が小さい。そのため、ゼータ電位が大きい、例えば、C.I.PigmentRed122や150などに作用しやすく、これら顔料をトナー表層に偏在させたり、凝集させたりする場合がある。しかし、本発明のアゾ化合物は、これら顔料に対して吸着力が大きく、適度なゼータ電位であり、かつ結着樹脂とのゼータ電位の差の絶対値が小さい。そのためスルホン酸基、スルホン酸塩基またはスルホン酸エステル基を有する重合体または共重合体をトナーに用いても、顔料をトナー表面へ偏在させたり、凝集させたりするなどの弊害を生じさせることなく分散させることができる。そのため、本発明で用いるトナーは、帯電性を精密に制御することが可能となる。
上記荷電制御剤の好ましい配合量は、結着樹脂または重合性単量体100.00質量部に対して、0.001質量部〜15.000質量部であることが好ましく、より好ましくは0.003質量部〜10.000質量部である。
本発明で用いるトナーは、トナー粒子の表面に無機微粉体を有することが好ましい。無機微粉体は、トナーの流動性改良および帯電均一化のためにトナー粒子に添加、混合され、添加された無機微粉体はトナー粒子の表面に均一に付着した状態で存在する。
本発明における無機微粉体は、一次粒子の個数平均粒径(D1)が4nm以上500nm以下であることが好ましい。
本発明で用いられる無機微粉体としては、シリカ、アルミナ、チタニアから選ばれる無機微粉体またはその複合酸化物などが使用できる。複合酸化物としては、例えば、シリカアルミニウム微粉体やチタン酸ストロンチウム微粉体などが挙げられる。これら無機微粉体は、表面を疎水化処理して用いることが好ましい。
さらに、本発明に用いられるトナーには、実質的な悪影響を与えない範囲内でさらに他の添加剤、例えば、
テフロン(登録商標)粒子、ステアリン酸亜鉛粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子のような滑剤粒子、
酸化セリウム粒子、炭化ケイ素粒子、チタン酸ストロンチウム粒子などの研磨剤、
酸化チタン粒子、酸化アルミニウム粒子などの流動性付与剤、
ケーキング防止剤、あるいは、
逆極性の有機および/または無機微粒子などの現像性向上剤
を用いることもできる。これらの添加剤も表面を疎水化処理して用いることも可能である。
本発明で用いるトナーは、公知の一成分現像方式、二成分現像方式を用いた画像形成方法に適用可能である。
以下、本発明において用いた測定方法について、説明する。
≪顔料分散剤の顔料への吸着率の測定方法≫
顔料分散剤の顔料への吸着率の測定は、以下のように行った。
検量線の作成
(A)実際に製造するトナーと同じ処方(顔料分散剤は除く)の顔料組成物、重合性単量体組成物もしくは溶剤組成物において、顔料に対して10質量%に相当する顔料分散剤を添加した。そして、組成物中の分散媒体と顔料分散剤の比率で作成した分散媒体と顔料分散剤の溶液を5ml作成する(溶液1)。さらに溶液に分散媒体を加えて、1/5、1/10に希釈した溶液を作成する(溶液2、溶液3)。
(B)25℃で24時間静置した溶液1、2、3を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とし、以下の条件でGPC(ゲルパーミエーションクロマトグラフィー)を用いて顔料分散剤を測定した。測定結果に基づいて、分散媒体中の顔料分散剤濃度(g/ml)の検量線を作成した。
・高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
・カラム:LF−804の2連・溶離液:THF
・流速:1.0ml/分・オーブン温度:40℃
・試料注入量:0.025ml
吸着率の測定
(A)顔料に対して10.0質量%に相当する顔料分散剤を添加した、実際に製造するトナーと同じ処方(顔料分散剤は除く)の顔料組成物、重合性単量体組成物もしくは溶剤組成物を作成後、25℃で24時間静置し、以下の条件で遠心分離した。
・コクサン(株)社製高速遠心機H−9R・遠沈チューブPPT−010
・サンプル遠沈チューブの容積に対して、約8割に当たる組成物を投入
・遠心条件10000rpmで3分(25℃)
(B)遠心分離された組成物の上澄みを採取し、フィルター(日本ミリポア社製・マイレクスLH孔径0.45μm直径13mm)にてろ過し、検量線と同じ条件でGPCを用いて上澄み液中の顔料分散剤の濃度を測定した。
(C)上記測定結果から、以下の式により吸着率を算出した。
吸着率(%)=(1−((溶液1の顔料分散剤濃度(g/ml))−(組成物の上澄み液の顔料分散剤濃度(g/ml)))/(溶液1の顔料分散剤濃度(g/ml)))×100
≪顔料分散剤の酸価の測定方法≫
顔料分散剤の酸価は以下のようにして測定した。
試料1g中に含有されている樹脂酸などを中和するのに要する水酸化カリウムのmg数を酸価といい、次によって試験を行う。
結着樹脂の酸価はJISK0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順にしたがって測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JISK8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した結着樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
≪顔料分散剤のアミン価の測定方法≫
アミン価は、試料1gに含まれる全アミンを中和するために必要な過塩素酸と、当量の水酸化カリウムのmg数である。顔料分散剤のアミン価はJISK7237−1995に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順にしたがって測定する。
(1)試薬の準備
クリスタルバイオレット0.1gを酢酸100mlに溶解しクリスタルバイオレット溶液を得る。過塩素酸8.5mlをあらかじめ酢酸500mlと無水酢酸200mlとを混合した溶液中にゆっくりと加えて、混合する。これに、酢酸を加え全量を1lとしたのち、3日間放置して過塩素酸酢酸溶液を得る。前記過塩素酸酢酸溶液のファクターは次の手順で求める。まず、フタル酸水素カリウム0.1gを1mgまで量りとり、酢酸20mlに溶解したのち、o−ニトロトルエン90mlを加え、前記クリスタルバイオレット溶液を数滴加える。これを、前記過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定して求める。
(2)操作
(A)本試験
試料2.0gを200mlのビーカーに精秤し、o−ニトロトルエン/酢酸(9:2)の混合溶液を100ml加え、3時間かけて溶解する。次いで、前記クリスタルバイオレット溶液を数滴加え、前記過塩素酸酢酸溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の青が緑色に変色し緑色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちo−ニトロトルエン/酢酸(9:2)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の試験を行う。
(3)全アミン価の算出
得られた結果を下記式に代入して、アミン価AmVを算出する。
AmV=[(D−C)×f×5.61]/S
ここで、AmV:アミン価(mgKOH/g)、C:空試験の過塩素酸酢酸溶液の添加量(ml)、D:本試験の過塩素酸酢酸溶液の添加量(ml)、f:過塩素酸酢酸溶液のファクター、S:試料(g)である。
≪ポリマー成分および顔料分散剤の数平均分子量の測定方法≫
本発明の高分子部位、およびアゾ骨格部分構造を有する化合物の分子量は、サイズ排除クロマトグラフィー(SEC)によって、ポリスチレン換算で算出される。SECによる分子量の測定は以下に示すように行った。
サンプル濃度が1.0%になるようにサンプルを下記溶離液に加え、室温で24時間静置した溶液を、ポア径が0.2μmの耐溶剤性メンブレンフィルターで濾過したものをサンプル溶液とし、以下の条件で測定した。
・装置:高速GPC装置「HLC−8220GPC」[東ソー(株)製]
・カラム:LF−804の2連・溶離液:THF
・流速:1.0ml/分・オーブン温度:40℃
・試料注入量:0.025ml
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂[東ソー(株)製TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500]により作成した分子量校正曲線を使用した。
≪トナーの平均粒径および粒度分布測定≫
トナーの平均粒径および粒度分布はコールター・カウンターTA−III型あるいはコールターマルチサイザー(コールター社製)など種々の方法で測定可能である。本発明においてはコールター・カウンターTA−III型(コールター社製)を用い、個数分布および重量分布を算出する。トナーの重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)は、以下のようにして算出する。
測定装置としては、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンターMultisizer3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)を用いる。測定条件の設定および測定データの解析は、付属の専用ソフト「ベックマン・コールターMultisizer3Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いる。なお、測定は実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで行う。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTONII」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定、解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行った。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更」画面において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。「閾値/ノイズレベルの測定ボタン」を押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTONIIに設定し、「測定後のアパーチャーチューブのフラッシュ」にチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定」画面において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer3専用のガラス製250ml丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mlを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行う。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100ml平底ビーカーに前記電解水溶液約30mlを入れる。この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で約3質量倍に希釈した希釈液を約0.3ml加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「UltrasonicDispensionSystemTetora150」(日科機バイオス社製)を準備する。超音波分散器の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2ml添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波
分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー約10
mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。また、トナー粒子の造粒性を確認する際には、重合反応終了後のトナー粒子懸濁液を少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)および個数平均粒径(D1)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、「分析/重量統計値(算術平均)」画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。専用ソフトでグラフ/個数%と設定したときの、「分析/個数統計値(算術平均)」画面の「平均径」が個数平均粒径(D1)である。
造粒工程における造粒性については、コールター・カウンターで測定されたD50重量%/D50個数%により調べた。D50体積%/D50個数%とは、重量分布基準の50%粒径/個数分布基準の50%粒径である。
≪結晶性ポリエステル樹脂の重量平均分子量≫
結晶性ポリエステル樹脂0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解後、135℃において24時間振投機で振とうを行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用い、下記の条件にて分析を行う。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSKGMHHR−HHT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/分.
試料濃度:約0.3%
注入量:300μl
検出器:示差屈折率検出器ShodexRI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
≪結晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ビニル部の重量平均分子量≫
結晶性ポリエステル樹脂中の非晶性ビニル部の分子量の測定は、結晶性ポリエステル樹脂のポリエステル部位を過水分解させて測定を行う。具体的な方法は、結晶性ポリエステル樹脂30mgにジオキサン5ml、10wt%の水酸化カリウム水溶液1mlを加え、温度70℃で6時間振とうさせてポリエステル部位を加水分解させる。その後、溶液を乾燥させて、ビニル部の分子量の測定用の試料を作成した。
測定用試料0.03gをo−ジクロロベンゼン10mlに分散して溶解後、135℃において24時間振投機で振とうを行い、0.2μmフィルターで濾過し、その濾液を試料として用い、下記の条件にて分析を行う。
[分析条件]
分離カラム:Shodex(TSKGMHHR−HHT20)×2
カラム温度:135℃
移動相溶媒:o−ジクロロベンゼン
移動相流速:1.0ml/分
試料濃度:約0.3%
注入量:300μl
検出器:示差屈折率検出器ShodexRI−71
また、試料の分子量の算出にあたっては、標準ポリスチレン樹脂(東ソー社製TSKスタンダードポリスチレンF−850、F−450、F−288、F−128、F−80、F−40、F−20、F−10、F−4、F−2、F−1、A−5000、A−2500、A−1000、A−500)により作成した分子量校正曲線を使用する。
≪結晶性ポリエステル樹脂Tm(C)の融点≫
トナーのガラス転移温度Tgおよび結晶性ポリエステル樹脂の融点、吸熱量、結晶化度は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAInstruments社製)を用いてASTMD3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナー5mgまたは結晶性ポリエステル樹脂1mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲20℃から140℃の間で、下記の設定でモジュレーション測定を行う。
・昇温速度1℃/分
・振幅温度幅±0.318℃/分
この昇温過程で、温度20℃から140℃の範囲において比熱変化が得られる。トナーのガラス転移温度Tgは、可逆比熱変化曲線の比熱変化が出る前と出た後の、ベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点とする。また、結晶性ポリエステル樹脂の融点Tm(C)は、比熱変化曲線における最大吸熱ピーク温度とする。
(結晶性ポリエステル樹脂の酸価Av(C))
結晶性ポリエステル樹脂の酸価はJISK1557−1970に準じて測定される。具体的な測定方法を以下に示す。試料の粉砕品2gを精秤する(W(g))。200mlの三角フラスコに試料を入れ、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間溶解する。指示薬としてフェノールフタレイン溶液を加える。0.1規定のKOHもアルコール溶液を用いて上記溶液をビュレットを用いて滴定する。このときのKOH溶液の量をS(ml)とする。ブランクテストをし、このときのKOH溶液の量をB(ml)とする。
次式により酸価を計算する。
酸価=〔(S−B)×f×5.61〕/W
(f:KOH溶液のファクター)
≪極性ポリエステルのガラス転移温度Tg(H)≫
極性ポリエステルのガラス転移温度Tg(H)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAInstruments社製)を用いてASTMD3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、極性ポリエステル約10mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度10℃/分で測定を行う。この昇温過程で、温度40〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、極性ポリエステルのガラス転移温度Tgとする。
≪SP値の測定≫
結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、顔料分散剤のSP値は、濁点滴定測定法により、以下のように行った。
50mlサンプル管瓶に、約10.00gの正秤したクロロホルムに約1.48gの正秤した結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂または顔料分散剤を溶解する。次に、メタノールをパスツールピペットにて一滴(約200mg)添加し、蓋を閉め、重量を測定し、マグネットスターラー用のマイクロ回転子(全長3mm×径φ3)にて1分間撹拌する。撹拌後、溶液が白濁しているか目視にて撹拌する。白濁していない場合は、上記手順を白濁するまで繰り返す。
また、同様にメタノールではなく、ヘプタンを用いて行う。
白濁した時点でのクロロホルムとメタノールまたはヘプタンの各重量より、以下の式より、結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、顔料分散剤のSP値を算出した。
結着樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、顔料分散剤のSP値=(SPα+SPβ)/2
SPα=(Vm1/2×SPm+Vc・ml1/2×SPc)/(Vm1/2+Vc1/2)
SPβ(Vc1/2×SPc+Vh1/2×SPh)/(Vc1/2+Vh1/2)
Vm(cm3):白濁した時点でのメタノールの体積(メタノールの比重:0.792)
Vc(cm3):白濁した時点でのクロロホルムの体積(クロロホルムの比重:1.490)
Vh(cm3):白濁した時点でのヘプタンの体積(ヘプタンの比重:0.684)
SPm:メタノールのSP値(14.5cal/cm3)
SPc:クロロホルムのSP値(9.3cal/cm3)
SPh:ヘプタンのSP値(7.4cal/cm3)
SPm、SPc、SPhは、以下文献より引用した。
引用文献:Solubility Parameters:ALLANF.M.BARTON Chemistry Department,Victoria University of Wellington,private Bag,Wellington,NewZealand
Received June 7,1974(Revised Manuscript Received October 29,1974)
なお、結着樹脂は、後述する各実施例、比較例のトナー粒子において、各処方におけるビニル系重合性単量体と開始剤のみで、トナー粒子と同じ反応条件(温度、時間)でバルク重合を行い作製した樹脂のSP値を結着樹脂のSP値とした。
≪顔料分散剤の組成分析≫
本発明のポリマー部位、吸着ユニットを有する顔料分散剤の構造決定は、下記の装置を用いて行った。
1HNMRおよび13CNMR
日本電子(株)製ECA−400(使用溶剤重クロロホルム)
ブルカー社製FT−NMRAVANCE−600(使用溶剤重クロロホルム)
以上、本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって本発明の実施の態様がなんら限定されるものではない。
<定着装置1>
図3は本発明の定着装置の概略断面図であり、加圧ローラー7は、例えばφ14のアルミあるいは鉄製芯金の外側にシリコーンのソリッドあるいはスポンジゴムなどの厚み3mmの弾性層と、PFAなどの離型層を厚み30μmで積層している。そして、不図示の軸受け手段・付勢手段により総圧約200N〜100N(約20kgf〜約10kgf)の押圧力をもってフィルムガイド9との間に定着フィルムを挟ませて圧接させてある。そして、不図示の定着器回転制御手段は、加圧ローラー7を矢印方向に回転駆動し、5〜10mm程度の幅のニップ部Nにおける摩擦力で定着スリーブ1に回転力が作用し、従動回転状態になる。フィルムガイド9は、耐熱性樹脂PPSなどで構成されている。定着フィルム1は、直径50〜10mmの、基層となる導電性部材でできた発熱層1aと、その外面に積層した弾性層1bと、その外面に積層した離型層1cの複合構造の円筒形回転体である。発熱層1aは、本装置では、厚さ20μmの比透磁率1、断面積1.5×10−6、直径は24mmのアルミの円筒形状部材である。弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムを0.3mm〜0.1mm成形している。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として50μm〜10μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。円筒形状部材である定着フィルム1の内部にて、この回転軸線方向に磁性コア2が挿通されている。その磁性コア2の周囲に励磁コイル3が巻き回されている。
磁性コア2は、分割されていない一体部品で円柱形状をしている。磁性コア2は、不図示の固定手段で定着フィルム1内に配置させており、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着フィルム1内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2は、比透磁率が1800のフェライトであり、直径14mm、断面積1.5×10−4、長さB=230mmである。
フィルムガイド9は、比透磁率1のポリフェニレンサルファイド(PPS)であり、断面積1.0×10−4[m]である。詳細は表4に記載する。
定着フィルムの弾性層1b、定着フィルムの表層1cは、発熱層である円筒形回転体(導電層)1aより外側にあり、かつ発熱に寄与していない。したがって、パーミアンス(または磁気抵抗)を計算する必要はなく、本磁気回路モデルにおいては「円筒体外空気」に含めて扱うことができる。
上記寸法と比透磁率から計算した定着装置1の各構成物の「単位長さ当たりのパーミアンスと磁気抵抗」を下記の表4にまとめる。
「単位長さ当たりのパーミアンス」に関して、図11(a)の磁気等価回路図と実機上の数値の対応関係について説明する。磁性コアの単位長さ当たりのパーミアンスPcは、次のように表される。
Pc=3.5×10−7[H・m]
導電層と磁性コアとの間の領域の単位長さ当たりのパーミアンスPa_inは、フィルムガイドの単位長あたりのパーミアンスと円筒体内の空気の単位長さ当たりのパーミアンスとの合成であるから次のように表される。
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
導電層の単位長さ当たりのパーミアンスPcyは、表4に記載の円筒体であり、次のように表される。
Pcy=1.9×10−12[H・m]
Pa_outは、表4に記載された円筒体外空気であり、次のように表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy=3.5×10−7[H・m]
よって、定着装置1は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Pcy+Pa_in≦0.30×Pc
次に、パーミアンスの逆数である、磁気抵抗を用いた場合について説明する。
磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗は次のようになる。
Rc=2.9×10[1/(H・m)]
導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗は、フィルムガイドの抵抗Rfと円筒体内空気の抵抗Raの合成抵抗となるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×10[1/(H・m)]となる。
Rcyに該当するのは、表4に記載の円筒体であり、Rcy=Rs=5.3×1011[1/(H・m)]となっているから、RsとRaとの合成磁気抵抗Rsaは以下の式で計算できて、Rsa=2.7×10[1/(H・m)]となる。
なお、円筒体と磁性コアの間の領域のうち空気の断面積は、直径24[mm]の円筒体の中空部の断面積から磁性コアの断面積とフィルムガイドの断面積を差し引いて計算した。
したがって、定着装置1は下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置2>
比較例として用いる定着装置2は、定着装置1の定着装置の構成に対して磁性コアの断面積と円筒形回転体の材質および断面積が異なる。すなわち、「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしていない構成である。この構成について説明する。特に、円筒形回転体が主磁路になっている構成について説明する。図17は定着装置2の定着装置の断面図であり、電磁誘導発熱回転体は定着フィルムではなく定着ローラー11を用いる。定着ローラー11と加圧ローラー7の押圧力をもってニップNを形成し、像担持体Pとトナー画像Tを挟ませて矢印方向に回転する構成である。
定着ローラー11の円筒体(円筒形回転体)11aは比透磁率600、厚み100μm、直径は48mmのニッケル(Ni)を用いる。なお、円筒体の材質がニッケルに限られるわけではなく、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの比透磁率の高い磁性金属を用いても良い。定着装置1の円筒体(円筒形回転体)が、非磁性材料であるアルミニウムであるのに対し、定着装置2では、磁性材料であるニッケルを用いている。
磁性コア2は、分割されていない一体部品で円柱形状をしている。磁性コア2は、不図示の固定手段で定着ローラー11内に配置させており、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着ローラー11内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、直径5mm、長さB=230mmである。その他の構成は定着装置1と同一である。発熱の模式図(図18)に示すように、本構成では円筒体を磁路として通る磁力線が存在する。円筒体の内部を通る磁力線は、図中E//に示すように渦電流を流して発熱に寄与する。この磁力線の通り道は、スリーブとコアが近傍に位置している部分に集中し、図のようにコアに最も近い所に発熱集中を起こす。
定着装置2の各構成物のパーミアンスと磁気抵抗の計算結果を表5にまとめる。
また、定着装置2の各構成物のパーミアンスは下記のようになる。
磁性コアのパーミアンスPc=4.4×10−8[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.1×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=1.1×10−8[H・m]
よって、定着装置2は下記のパーミアンスの関係式を満たしていない。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.3×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=4.5×10[1/(H・m)]となる。
1/R_(a_)=1/R_f+1/R_air
R_(a_)=(R_air×R_f)/(R_air+R_f)
円筒体の磁気抵抗Rs=8.8×10[1/(H・m)]であるから、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように求められ、Rsa=7.4×10[1/(H・m)]となる。
1/R_sa=1/R_s+1/R_a
R_sa=(R_a×R_s)/(R_a+R_s)
よって、定着装置2は下記の磁気抵抗の式を満たさず、定着装置2は、「前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」ではない。
この場合、アルミニウムの円筒形回転体内部には、一部周回電流と、一部図15に示す方向の渦電流E⊥が流れ、両者が発熱に寄与していると考えられる。この渦電流E⊥について説明する。E⊥は材料の表面に近いほど大きく、材料の内部に行くにつれて指数関数的に小さくなるという性質がある。その深さを浸透深さΔと言い、以下の式で表される。
Δ=503×(ρ/fμ)1/2 ・・・(30)
Δ:浸透深さ〔m〕
f:励磁回路の周波数〔Hz〕
μ:透磁率〔H/m〕
ρ:抵抗率〔Ωm〕
浸透深さΔは電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になるというものである。そしてその深さは周波数と透磁率、抵抗率に依存する。
<定着装置3>
本定着装置3は先に説明をした定着装置1に関する他の例であり、円筒形回転体(導電層)としてオーステナイト系ステンレス鋼(SUS304)を用いた点が定着装置1と異なる。以下表6は参考として各種金属における抵抗率と比透磁率について纏め、式(30)に従い、21kHz、40kHz、100kHzにおける浸透深さΔを計算した結果である。
表6によると、SUS304は抵抗値が高く、比透磁率が低いため、浸透深さΔが大きい。すなわち電磁波は透過しやすいため誘導加熱の発熱体として好適に用いられることは少ない。よって従来の電磁誘導加熱方式の定着装置においては、高い電力の変換効率を実現することが困難であった。しかし、本定着装置においては、高い電力の変換効率を実現することが可能であることを示す。
なお、定着装置3の構成は、円筒形回転体の材質としてSUS304を用いている以外は定着装置1の構成と同じである。定着装置の横断面形状も定着装置1と同様である。発熱層は、比透磁率1.0のSUS304を用い、膜厚30μm、直径φ24mmとした。弾性層、表層は定着装置1と同様である。磁性コア、励磁コイル、温度検知部材、温度制御は定着装置1と同様である。
定着装置3の各構成物のパーミアンスと磁気抵抗を下記の表7に示す。
表7から定着装置3の各構成物のパーミアンスは下記のようになる。
コアのパーミアンスPc=3.5×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=2.8×10−12[H・m]
よって、定着装置3は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.9×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×10[1/(H・m)]となる。
円筒体の磁気抵抗Rsは、Rs=3.5×1011[1/(H・m)]となっているから、RsとRaとの合成磁気抵抗Rsaは以下の式で計算できて、Rsa=2.7×10[1/(H・m)]となる。
以上から定着装置3の定着装置は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置4>
本定着装置4は、円筒形回転体として比透磁率の高い金属を用いる構成について解説する。本定着装置のように主に周回電流によって円筒形回転体を発熱させる構成は、円筒形回転体として必ずしも比透磁率の低い金属を用いなければならないものではなく、比透磁率の高い金属でも使用することができる。
従来の電磁誘導加熱方式の定着装置においては、円筒形回転体として比透磁率の高いニッケルなどを用いた場合であっても、円筒形回転体の厚みを薄くすると、電力の変換効率が小さくなるという課題があった。そこで、本実施例において、ニッケルの厚みが薄い場合であっても円筒形回転体を高効率で発熱させることが可能であることを示す。円筒形回転体の厚みを薄くすることによって、繰り返し屈曲に対する耐久性向上や熱容量削減によるクイックスタート性向上などのメリットがある。
なお、円筒形回転体にニッケルを用いることを除いて、画像形成装置の構成は定着装置1と同じである。定着装置4においては、円筒形回転体として比透磁率が600のニッケルを用いる。円筒形回転体の厚みは75μmで、直径がφ24mmとした。弾性層、表層は定着装置1と同じであるので説明を省略する。また、励磁コイル、温度検知部材、温度制御についても定着装置1と同様である。この磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、直径14mm、長さB=230mmである。
定着装置4の各構成物のパーミアンスと磁気抵抗を下記の表8に示す。
表8から定着装置4の各構成物のパーミアンスは下記のようになる。
磁性コアのパーミアンス:Pc=3.5×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+2.4×10−10[H・m]
円筒体のパーミアンス:Ps=4.2×10−9[H・m]
よって、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
ここで、上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に置き換えると、下記のようになる。
磁性コアの磁気抵抗:Rc=2.9×10[1/(H・m)]
円筒体と磁性コアの間の領域の磁気抵抗:Ra=2.7×10[1/(H・m)]
円筒体の磁気抵抗:Rs=2.4×10[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=2.2×10[1/(H・m)]
よって、定着装置4は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置5>
本定着装置は定着装置4の変形例であり、磁性コアを長手方向で複数に分割し、分割した各コア間に空隙(ギャップ)を設けた点のみが定着装置4の構成と異なっている。
つまり、磁性コアを長手方向で複数に分割し、その分割した磁性コアの間に空隙を設けて、磁性コアのパーミアンスを小さく(磁気抵抗を高く)した構成である。磁性コアを分割することで、磁性コアを分割せずに一体部品で構成したときよりも磁性コアは外部の衝撃に対して破損しにくくなるというメリットがある。
例えば、磁性コアの長手方向に対して直交する方向に磁性コアに衝撃が加えられたときに、磁性コアが一体部品の場合割れやすいが、複数に分割されていると割れにくい。その他の構成は定着装置4と同じであるので省略する。
本定着装置の構成のうち、円筒形回転体1a、磁性コア3、および、コイル2を有し、磁性コア3が10分割されている構成を、図19に示す。定着装置5においては分割コア同士のギャップの長さが20μmある。ギャップに比透磁率1、厚みG=20μmのポリイミドなどの絶縁シート部材を挟んでいる。このように、その磁性コア同士の間に薄い絶縁シートを挟むことで分割された磁性コアのギャップを保証することができる。磁性コア全体の磁気抵抗の増加を極力抑えるために、分割コア同士のギャップを極力小さく設計している。この構成において、磁性コア3の単位長さ当たりのパーミアンスを求めると、下記の表9のようになる。
磁性コアの単位長さ当たりのパーミアンスは、式(15)〜(21)に表9に示した各パラメータを代入して算出した。
また、上記計算より磁性コアの単位長さ当たりのパーミアンスを1.9×10−7[H・m]として、各領域を通る磁束の比率を算出すると、下記の表10のようになる。
また、表10から定着装置5の各構成物のパーミアンスは下記のようになっている。
磁性コアのパーミアンス:Pc=1.9×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+1.8×10−10[H・m]
円筒体のパーミアンス:Ps=4.3×10−9[H・m]
よって、定着装置5は、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗:Rc=5.2×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗:Ra=3.2×10[1/(H・m)]
円筒体の磁気抵抗:Rs=2.4×10[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=2.2×10[1/(H・m)]
よって、定着装置5は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置6>
定着装置6として、定着装置1の構成に対して磁性コア2の断面積と円筒形回転体の材質および断面積が異な構成について説明する。本構成は「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしているものの、円筒形回転体が一部、磁路になっている構成である。
図17は定着装置2の定着装置の断面図であり、電磁誘導発熱回転体は厚み200μmのニッケル製の定着フィルムを用いる。定着ローラー11と加圧ローラー7の押圧力をもってニップNを形成し、像担持体Pとトナー画像Tを挟ませて矢印方向に回転する構成である。
定着ローラー11の円筒体(円筒形回転体)11aは比透磁率600、厚み0.2mm、直径は48mmのニッケル(Ni)を用いる。なお、円筒体の材質がニッケルに限られるわけではなく、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの比透磁率の高い磁性金属を用いても良い。
磁性コア2は、分割されていない一体部品で円柱形状をしている。磁性コア2は、不図示の固定手段で定着ローラー11内に配置させており、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着ローラー11内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、直径12mm、長さB=230mmである。その他の構成は定着装置1と同一である。発熱の模式図に示すように、本構成では円筒体を磁路として通る磁力線が存在する。円筒体の内部を通る磁力線は、図中E//に示すように渦電流を流して発熱に寄与する。この磁力線の通り道は、スリーブとコアが近傍に位置している部分に一部集中し、図のようにコアに最も近い所は発熱量が約10%程度多くなる。
定着装置6の定着装置の各構成物のパーミアンスの計算結果を表11にまとめる。
表11から定着装置6の各構成物のパーミアンスは下記のようになっている。
磁性コアのパーミアンス:Pc=2.6×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+2.0×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンス:Ps=2.3×10−8[H・m]
よって、定着装置6は、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗:Rc=3.9×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗:Ra=4.8×10[1/(H・m)]
円筒体の磁気抵抗:Rs=4.4×10[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=4.0×10[1/(H・m)]
よって、定着装置6は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
次に、トナーに関して説明する。以下の実施例において、部数は質量部基準である。
<顔料分散剤のポリマー成分(P−1)の製造例>
プロピレングリコールモノメチルエーテル100質量部を窒素置換しながら加熱し液温120℃以上で還流させ、そこへ、下記材料を混合したものを3時間かけて滴下した。
滴下終了後、溶液を3時間撹拌した後、液温170℃まで昇温しながら常圧蒸留し、液温170℃到達後は1hPaで減圧下1時間蒸留して脱溶剤し、樹脂固形物を得た。該固形物をテトラヒドロフランに溶解し、n−ヘキサンで再沈殿させて析出した固体を濾別することでポリマー成分(P−1)を得た。ポリマー成分(P−1)の個数平均分子量Mnは14400であった。
<顔料分散剤のポリマー成分(P−2)から(P−21)の製造例>
ポリマー成分(P−2)から(P−21)は、表13に示すように重合性単量体および重合性単量体の組成比を変えた。また、開始剤の添加量を調整し、後述する顔料分散剤の分子量になるようにポリマー成分の分子量を調整した。それら以外は、ポリマー成分(P−1)と同様にして製造した。
(顔料分散剤A1の製造例)
上記式(3)で示される吸着成分である化合物(B−1)を、下記スキームに従い製造した。
まず、クロロホルム30質量部に4−ニトロアニリン(東京化成工業株式会社製)3.11質量部を加え、10℃以下に氷冷し、ジケテン(東京化成工業株式会社製)1.89質量部を加えた。その後、65℃で2時間撹拌した。反応終了後、クロロホルムで抽出し、濃縮して化合物(27)を得た。
次に、2−アミノテレフタル酸ジメチル(メルク株式会社製)4.25質量部に、メタノール40.00質量部、濃塩酸5.29質量部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム2.10質量部を水6.00質量部に溶解させたもの加えて同温度で1時間反応させた。
次いでスルファミン酸0.990質量部を加えてさらに20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。メタノール70.00質量部に、化合物(27)4.51質量部を加えて、10℃以下に氷冷し、前記ジアゾニウム塩溶液を加えた。
その後、酢酸ナトリウム5.83質量部を水7.00質量部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水300.00質量部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(28)を得た。
次に、N,N−ジメチルホルムアミド150.00質量部に化合物(28)8.58質量部およびパラジウム−活性炭素(パラジウム5%)0.40質量部を加えて、水素ガス雰囲気下(反応圧力0.1〜0.4MPa)、40℃で3時間撹拌した。反応終了後、溶液を濾別し、濃縮して化合物(B−1)を得た。
次に、アゾ骨格部分構造である化合物(B−1)のアミノ基とポリマー成分(P−1)のカルボキシル基をアミド化により結合して顔料分散剤A1を下記スキームに従い、製造した。
[上記構造式中で、「co」とは、共重合体を構成する各ユニットの配列が無秩序であることを示す記号である。]
まず、テトラヒドロフラン500.00質量部に化合物(B−1)を1.98質量部加えて、80℃まで加熱し溶解した。溶解後50℃に温度を下げ、ポリマー成分(P−1)37.50質量部を加えて溶解し、1−エチル−3−(3−ジメチルアミノプロピル)カルボジイミド・塩酸塩(EDC・HCl)1.96質量部を加えて50℃で5時間撹拌した。
その後、液温を徐々に室温に戻し、一晩撹拌することにより反応を完結させた。反応終了後、溶液を濾過して濃縮し、メタノールで再沈殿させることにより精製し、顔料分散剤A1を得た。顔料分散剤の物性を、表13に示す。
(顔料分散剤A2の製造例)
顔料分散剤A1の製造において、化合物(B−1)を、下記化合物(B−2)に変更した以外は顔料分散剤A1と同様に製造し、顔料分散剤A2を得た。顔料分散剤A2の物性値を表13に示す。
(顔料分散剤A3の製造例)
下記構造で示される顔料分散剤A3を下記スキームに従い製造した。
[スキーム中、「co」とは、共重合体を構成する各ユニットの配列が無秩序であることを示す記号である。]
まず、4−アミノフェノール(東京化成工業株式会社製)5.00質量部に水30.0質量部、および濃塩酸11.0質量部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、亜硝酸ナトリウム3.46質量部を水8.10質量部に溶解させたものを加えて同温度で1時間反応させた。次いでスルファミン酸0.657質量部を加えてさらに20分間撹拌した(ジアゾニウム塩溶液)。水48.0質量部に、アセトアセトアニリド(東京化成工業株式会社製)8.13質量部を加えて、10℃以下に氷冷し、前記ジアゾニウム塩溶液を加えた。その後、炭酸ナトリウム14.30質量部を水80.00質量部に溶解させたものを加えて、10℃以下で2時間反応させた。反応終了後、水50.00質量部を加えて30分間撹拌した後、固体を濾別し、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで化合物(30)を得た。
次に、クロロホルム30.00質量部に3.00質量部の化合物(30)、およびトリエチルアミン1.20質量部を加えて10℃以下に氷冷した。この溶液に、アクリロイルクロリド(東京化成工業株式会社製)1.03質量部を加えて同温度で20分反応させた。これをクロロホルムで抽出し、濃縮、精製することで、化合物(31)を得た。
次に、下記材料Aに下記材料Bを加え、窒素雰囲気下、80℃で2時間撹拌した。
反応終了後、N,N−ジメチルホルムアミドからの再結晶法により精製することで顔料分散剤A3を得た。顔料分散剤の物性を、表16に示す。
(顔料分散剤A4の製造例)
顔料分散剤A3の各置換基を表15の(B−4)のように変更した以外は顔料分散剤A3と同様に製造し、顔料分散剤A4を得た。顔料分散剤A4の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A5の製造例)
顔料分散剤A1の各置換基を表15の(B−5)のように変更した以外は顔料分散剤A1と同様に製造し、顔料分散剤A5を得た。顔料分散剤A5の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A6、A8からA12、B3、B5の製造例)
顔料分散剤A1のポリマー成分をそれぞれ表16のように変更した以外は顔料分散剤A1と同様に製造し、顔料分散剤A6、A8からA12、B3、B5を得た。顔料分散剤A6、A8からA12、B3、B5の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A13、A14、B6、B7の製造例)
顔料分散剤A1の製造例において、ポリマー成分をそれぞれ表16のように変更した以外は顔料分散剤A1と同様に製造し、顔料分散剤A13、A14、B6、B7を得た。顔料分散剤A13、A14、B6、B7の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A15、A16の製造例)
顔料分散剤A1の各置換基を表15のようにそれぞれ(B−6)、(B−7)に変更した以外は顔料分散剤A1と同様に製造し、顔料分散剤A15、A16を得た。顔料分散剤A15、A16の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤B8の製造例)
顔料分散剤A1の製造において、化合物(B−1)を化合物(B−8)に変更した以外は顔料分散剤A1と同様に製造し、顔料分散剤B8を得た。顔料分散剤B8の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A17、A18、A19の製造例)
顔料分散剤A6において、化合物(B−1)の添加量を減らし、顔料分散剤の酸価が表16に示す値になるように変更した以外は顔料分散剤A6と同様に製造し、顔料分散剤A17、A18、A19を得た。顔料分散剤A17、A18、A19の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A20、A21、A22の製造例)
ポリマー成分(P−1)のアクリル酸ブチルの一部をアクリル酸2−(ジメチルアミノ)エチルに変更し、顔料分散剤のアミン価が、表16になるようにして顔料分散剤A2と同様に製造し、顔料分散剤A20、A21、A22を得た。顔料分散剤A20、A21、A22の物性値を表16に示す。
(顔料分散剤A23、A24、A25の製造例)
ポリマー成分(P−1)のアクリル酸組成比量を調整し、また、顔料分散剤A2において、アクリル酸組成比に合わせて、(B−1)の添加量を調整することで、顔料分散剤の1分子当たりの個数を表16になるように変更した。このように変更した以外は顔料分散剤A2と同様に製造し、顔料分散剤A23、A24、A25を得た。顔料分散剤A23、A24、A25の物性値を表16に示す。
[表15中のAr−1、R−1、R−2は、ポリマー成分と結合した際の構造として下記を示す。また、「ph」は「フェニル基」を示す。]
上記Ar−1、R−1〜R−2中の「*」はポリマー成分中に化学結合により組み込まれ、ポリマーと結合していることを示す。また、R−3の「*」は、ポリマー成分であるポリエステル由来のカルボキシル基の炭素原子との結合部位を示す。一方、上記「**」または「***」は下記一般式の「**」または「***」と結合していることを示す。]
(結晶性ポリエステル樹脂1の製造例)
攪拌機、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置にセバシン酸175.0質量部と、1,9−ノナンジオール166.5質量部、テトラブチルチタネート0.3部を入れ、180℃で6時間反応を行った。その後、200℃に昇温するとともに系内を徐々に減圧し、減圧下にて5時間反応し、結晶性ポリエステル樹脂1を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂1の物性を表17に示す。
(結晶性ポリエステル樹脂2の製造例)
攪拌機、温度計、流出用冷却機を備えた反応装置にセバシン酸175.0質量部と、1,12−ドデカンジオール210.1質量部、テトラブチルチタネート0.2部を入れ、180℃で6時間反応を行った。その後、200℃に昇温するとともに系内を徐々に減圧し、減圧下にて5時間反応し、結晶性ポリエステル樹脂2を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂2の物性を表17に示す。
(結晶性ポリエステル樹脂3の製造例)
窒素雰囲気下で、滴下ロート、リービッヒ冷却管および撹拌機を備えた耐圧反応機にキシレン50部とセバシン酸175.0質量部、および1,12−ドデカンジオール210.1部を加えて210℃まで昇温した。このときの圧力は0.32MPaであった。
これにスチレン29.7部、アクリル酸3.09部および重合開始剤であるジ−tert−ブチルパーオキサイド(パーブチルD、日本油脂株式会社製)2.09部をキシレン10部に溶解して混合物を得た。得られた混合物を滴下ロートに仕込んだものを2時間かけて加圧下(0.31MPa)で滴下した。滴下後、さらに210℃で3時間反応を行い、溶液重合を完了した。
その後、テトラブトキシチタネート0.80部を仕込み、窒素雰囲気下、常圧下210℃で3時間縮重合反応を行った。その後テトラブトキシチタネートを0.010部追加し、210℃で2時間反応させた。その後、常圧に戻し、安息香酸37.0部とトリメリット酸4.00部を添加し、さらに220℃で5時間反応させて結晶性ポリエステル樹脂3を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂3の物性を表17に示す。
(結晶性ポリエステル樹脂4の製造例)
撹拌機、温度計、窒素導入管、脱水管、および、減圧装置を備えた反応容器に、セバシン酸100.0質量部および、1,10−デカンジオール93.5質量部を添加して撹拌しながら温度130℃まで加熱した。エステル化触媒としてチタン(IV)イソプロポキシド0.7質量部を加えた後、温度160℃に昇温し5時間かけて縮重合した。その後、温度180℃に昇温し、減圧させながら所望の分子量となるまで反応させてポリエステル(1)を得た。ポリエステル(1)の重量平均分子量(Mw)は19000、融点(Tm)は83℃であった。
次いで、撹拌機、温度計、および、窒素導入管を備えた反応容器にポリエステル(1)100.0質量部、脱水クロロホルム440.0質量部を添加して完全に溶解させた。その後、トリエチルアミン5.0質量部を加え、氷冷させながら、2−ブロモイソブチリルブロミド15.0質量部を徐々に加えた。その後、室温(25℃)で一昼夜撹拌した。
メタノール550.0質量部を入れた容器に、上記樹脂溶解液を徐々に滴化して樹脂分を再沈殿させた後、濾過、精製、乾燥させてポリエステル(2)を得た。
次いで、撹拌機、温度計、および、窒素導入管を備えた反応容器に上記で得られたポリエステル(2)100.0質量部、スチレン300.0質量部、臭化銅(I)3.5質量部、および、ペンタメチルジエチレントリアミン8.5質量部を添加した。添加後、撹拌しながら、温度110℃で重合反応を行った。所望の分子量となったところで反応を停止して、メタノール250.0質量部で再沈殿、濾過、精製し、未反応のスチレンおよび触媒を除去した。
その後、50℃に設定した真空乾燥機で乾燥してポリエステル部位とビニルポリマー部位を有する結晶性ポリエステル樹脂4を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂4の物性を表17に示す。
(結晶性ポリエステル樹脂5、6の製造例)
結晶性ポリエステル樹脂4の製造例において、1,10−デカンジオール93.5質量部を1,9−ノナンジオール83質量部に変更し、スチレンの添加量をそれぞれ400.0質量部、450質量部に変更した以外は同様に行い、結晶性ポリエステル樹脂5、6を得た。得られた結晶性ポリエステル樹脂5、6の物性を表17に示す。
<ブラックトナーKA1の製造例>
スチレン単量体100質量部に対して、下記材料を用意した。
これらを、アトライター(三井鉱山社製)に導入し、半径1.25mmのジルコニアビーズ(140質量部)を用いて200rpmにて25℃で180分間撹拌を行い、マスターバッチ分散液1を調製した。
一方、イオン交換水710質量部に0.1M−Na3PO4水溶液450質量部を投入し60℃に加温した後、1.0M−CaCl2水溶液67.7質量部を徐々に添加してリン酸カルシウム化合物を含む水系媒体を得た。
上記材料を65℃に加温し、TK式ホモミキサー(特殊機化工業製)を用いて、6,000rpmにて均一に溶解し分散した。これに、重合開始剤1,1,3,3−テトラメチルブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエートの70%トルエン溶液8.2質量部を溶解し、重合性単量体組成物を調製した。
前記水系媒体中に上記重合性単量体組成物を投入し、温度65℃、N2雰囲気下において、TK式ホモミキサーにて18000rpmで10分間撹拌し、重合性単量体組成物を造粒した。その後、パドル撹拌翼で撹拌しつつ温度67℃に昇温し、重合性ビニル系単量体の重合転化率が90%に達したところで、0.1mol/リットルの水酸化ナトリウム水溶液を添加して水系分散媒体のpHを9に調整した。さらに昇温速度40℃/hで80℃に昇温し4時間反応させた。その際のトナーの重量平均粒径は、5.8μm、D50体積/D50個数は、1.1であった。
重合反応終了後、減圧下で補給用トナー粒子の残存モノマーを留去した。その際のトナーの重量平均粒径は、5.8μm、D50体積/D50個数は、1.25であった。その後水系媒体を冷却し、塩酸を加えpHを1.4にし、6時間撹拌することでリン酸カルシウム塩を溶解した。
トナー粒子を濾別し水洗を行った後、温度40℃にて48時間乾燥した。得られた乾燥品を、多分割分級装置(日鉄鉱業社製エルボジェット分級機)で、重量平均粒径が12.7μm以上の量を0.5重量%、個数平均粒径が4.0μm以上の量が20.0個数%になるよう厳密に分級除去した。重量平均粒径(D4)5.8μmのブラックトナー粒子KA1を得た。
下記材料をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、ブラックトナーKA1を得た。
次に得られたブラックトナー粒子KA1を100質量部、シリカ微粒子(RY200:日本アエロジル社製)1.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、ブラックトナーKA1を得た。
<ブラックトナーKA2からKA25の製造例>
ブラックトナーK1の製造例において、顔料分散剤A1をそれぞれ顔料分散剤A2からA26に変え、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した。顔料分散剤を変えて、リン酸カルシウムの量を調整した以外はブラックトナーK1と同様に製造し、ブラックトナーKA2からKA25を得た。
<ブラックトナーKA26からKA30の製造例>
ブラックトナーK1の製造例において、結晶性ポリエステル樹脂1をそれぞれ結晶性ポリエステル樹脂2から6に変え、それぞれの添加量を11.8質量部、18.2質量部、25.0質量部、28.5質量部に変更した。また、スチレン単量体31質量部を29.2質量部、27.8質量部、16.0質量部、12.5質量に変更した。さらには反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した以外は同様に製造し、ブラックトナーKA26からKA30を得た。
<イエロートナーY1の製造例>
ブラックトナー粒子の製造例1において、カーボンブラック20.0質量部をピグメントイエロー155(クラリアント社製、商品名「TonerYellow3GP」12.5質量部に変えた。また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した。これら2点以外はブラックトナー粒子の製造例1と同様に製造し、重量平均粒径(D4)5.8μmのイエロートナー粒子Y1を得た。
次に得られたイエロートナー粒子Y1を100質量部、シリカ微粒子(RY200:日本アエロジル社製)1.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、イエロートナーKA1を得た。
<マゼンタトナーM1の製造例>
ブラックトナー粒子の製造例1において、カーボンブラック20.0質量部をピグメントレッド122・16.5質量部に変え、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した。これら2点以外はブラックトナー粒子の製造例1と同様に製造し、重量平均粒径(D4)5.8μmのマゼンタトナーM1粒子を得た。
次に得られたマゼンタトナー粒子M1を100質量部、シリカ微粒子(RY200:日本アエロジル社製)1.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、マゼンタトナーM1を得た。
<マゼンタトナーM2の製造例>
ブラックトナー粒子の製造例1において、カーボンブラック20.0質量部をピグメントレッド155・16.5質量部に変え、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した。これら2点以外はブラックトナー粒子の製造例1と同様に製造し、重量平均粒径(D4)5.8μmのマゼンタトナー粒子M2を得た。
次に得られたマゼンタトナー粒子M1を100質量部、シリカ微粒子(RY200:日本アエロジル社製)1.5質量部をヘンシェルミキサー(三井鉱山社製)で5分間乾式混合して、マゼンタトナーM2を得た。
<ブラックトナーKB1の製造例>
ブラックトナーKA1の製造例において、顔料分散剤A1を添加せず、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した以外は同様に製造し、ブラックトナーKB1を得た。
<ブラックトナーKB2の製造例>
ブラックトナーKA1の製造例において、顔料分散剤A1を添加せず、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した以外は同様に製造し、ブラックトナーKB2を得た。
<ブラックトナーKB3の製造例>
ブラックトナーKA1の製造例において、結晶性ポリエステル樹脂1を添加せず、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した以外は同様に製造し、ブラックトナーKB3を得た。
<ブラックトナーKB5から8の製造例>
ブラックトナーKA1の製造例において、顔料分散剤A1をそれぞれ顔料分散剤B5からB8に変え、また、反応終了後のトナー粒子の重量平均粒径が5.8μmになるようにリン酸カルシウムの量を調整した。これら2点以外はブラックトナーKA1の製造例と同様に製造し、ブラックトナーKB5からKB8を得た。
このようにして得られた上記各トナーの物性を表20に示す。
<CEI(クラーク・エバンス指数)および分散顔料粒径の評価>
上述した各種トナーの顔料分散性評価を下記方法で統一して行った。
(1)分散顔料粒径の評価
まずトナーを樹脂に包埋し、クロスセッションポリッシャーでトナーの切片試料を作製し、トナー断面画像をSEMで撮影した。そしてその画像を画像処理解析装置[(株)ニレコ製、LUZEX]を用いて顔料とそれ以外の部分と明確に差が出るコントラストで二値化を行った。そして、スケールを画像処理解析装置に反映させることで、画像中の解析範囲における顔料の円相当系(平均値)を算出し、この数値を4/πで乗じることにより分散顔料粒径を算出した。
(2)CEI(クラーク・エバンス指数)の評価
上記(1)で解析した画像より、全粒子の最近接重心間距離の平均(r)を算出した。次に(r)よりポアソン分布をした場合の粒子の最近接重心間距離の期待値E(r)算出した。
CEI=r/E(r)
の式よりCEIを求めた。
<実施例1>
実施例の未定着画出しには、市販のカラーレーザープリンターColorLaserJetCP4525(HP社製)を用いた。
上記評価機の定着装置を取り出し、未定着画像を出力できるように改造を施した。
記録材としては、A4の普通紙(GF−C081A4:キヤノンマーケティングジャパン社製)を使用した。そして、市販のブラックカートリッジから製品トナーを抜き取り、エアーブローにて内部を清掃した後、トナーKA1を150g充填した。なお、マゼンタ、イエローの各ステーションには、それぞれ製品トナーを抜き取り、トナー残量検知機構を無効としたマゼンタ、イエローカートリッジを挿入した。
温度23℃、相対湿度50%の環境下で、トナー載り量0.45mg/cmとなるように未定着画像を出力した。なお画像は、べた黒画像で、左右のそれぞれ80mm、上下それぞれ10mmの余白となるように調整した。
次に、上記未定着画像を、定着装置1に通紙し、通紙画像を評価した。なお、定着温度は165℃に調整した。
また、トナーKA2〜KA30、Y1、M1、M2、KB1〜KB8も上記と同様に評価した。
<面内色ムラ評価>
上記定着試験において、上記未定着画像を定着し、加熱回転体1周目と2周目となる箇所の画像濃度を測定した。
画像濃度の測定は、マクベス反射濃度計RD918(マクベス社製)を用いて測定した。
面内色ムラ評価は、下記式を用い、評価を行った。評価基準は下記のように行った。評価結果を表21に示す。
色ムラ(画像濃度差)(%)
=100×(1周目の画像濃度−2周目の画像濃度)/(1周目の画像濃度)
A(非常によい):画像濃度差が5%以下である。
B(よい):画像濃度差が5%より大きく10%以下である。
C(普通):画像濃度差が10%より大きく20%未満である。
D(悪い):画像濃度差が20%以上である。
<実施例2〜5>
定着装置1を定着装置3〜6に各々変更した以外は、実施例1と同様にして、評価をおこなった。評価結果を表21および22に示す。
<比較例>
定着装置1を定着装置2に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価をおこなった。評価結果を表22に示す。
表21および22より、従来の定着装置である定着装置2を使用すると、発色性の高いトナーほど、1周目と2周目の画像濃度差(色ムラ)が大きいことが分かった。しかし、発色性の高いトナーでも本発明の定着装置1、3〜6で定着を行うと色ムラは低減されることが分かった。中でも、定着装置1および3で定着を行うと色ムラがほとんど生じないことが分かった。
また、定着装置2で結晶性ポリエステルを含まないトナー(KB2)は、2周目で画像濃度が著しく劣化したが、本発明の定着装置1、3〜6で定着を行うことにより色ムラが低減された。
1 定着フィルム
1a 導電層(円筒形回転体)
1b 弾性層
1c 離型層
2 磁性コア
2c 閉磁路の磁性コア
3 励磁コイル
4 温度検知部材
7 加圧ローラー
9 ニップ部形成部材
N ニップ部
M 誘導起電力安定領域
Bin 円筒形回転体としてのローラー1の中を紙面奥方向に向かう磁力線
Bout 円筒形回転体としてのローラー1の外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線
11a 導電層
11b 弾性層
11c 離型層
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j 分割した磁性コア
100 本実施例に従う画像形成装置
200 円筒形回転体
200a 円筒形回転体の材料内部
B// 軸Xと平行方向に発生する磁場
E// B//によって発生する渦電流
B⊥ 軸Xと⊥方向に発生する磁場
E⊥ B⊥によって発生する渦電流

Claims (15)

  1. 加熱加圧手段により記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する定着方法において、
    前記加熱加圧手段が、
    加熱部材と、
    加圧部材と
    を有し、
    前記加熱部材が、
    導電層を有する筒状の回転体と、
    前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
    前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
    を有し、
    前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗が、
    前記導電層の磁気抵抗と、
    前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
    の合成磁気抵抗の30%以下であり、
    前記トナー画像を形成するトナーに含まれるトナー粒子の断面画像中の顔料分散性の指標(CEI)が、0.70以上1.30以下であり、分散顔料粒径が、30nm以上130nm以下である
    ことを特徴とする定着方法。
  2. 前記導電層が、銀、アルミニウム、オーステナイト系ステンレス鋼および銅からなる群より選択される少なくとも1つで形成されている請求項1に記載の定着方法。
  3. 前記回転体が、筒状のフィルムである請求項1または2に記載の定着方法。
  4. 前記トナーが、結着樹脂、顔料および顔料分散剤を含有するトナー粒子を有するトナーである請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着方法。
  5. 前記顔料分散剤が、下記(i)〜(iv)の条件を満たす請求項4に記載の定着方法。
    (i)前記顔料分散剤のSP値(A)と前記結着樹脂のSP値(C)の差(A−C)が、−1.1以上1.2以下である。
    (ii)前記顔料分散剤が、ポリマー成分と顔料に吸着する吸着成分を有し、前記ポリマー成分が、ビニル系重合体である。
    (iii)前記顔料分散剤の前記ポリマー成分の個数平均分子量(Mn)が、3000〜20000である。
    (iv)前記顔料分散剤の前記吸着成分の顔料への吸着率が、30%以上である。
  6. 前記トナー粒子が、さらに結晶性ポリエステル樹脂を含有し、前記顔料分散剤が、さらに下記(v)の条件を満たす請求項5に記載の定着方法。
    (v)前記顔料分散剤のSP値(A)と前記結晶性ポリエステル樹脂のSP値(B)の差(A−B)が、−1.8以上+0.8以下である。
  7. 前記顔料分散剤のポリマー成分が、下記一般式(1)で示されるユニットを有する請求項5または6に記載の定着方法。

    [式(1)中のRおよびRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基、アラルキル基またはアミド基を示す。]
  8. 前記顔料分散剤の前記ポリマー成分が、下記一般式(2)で示されるユニットを有する請求項5〜7のいずれか1項に記載の定着方法。
  9. 前記顔料分散剤の吸着成分が、下記一般式(3)で示される部分構造を有する請求項5〜8のいずれか1項に記載の定着方法。

    [式(3)中、R、RおよびArのいずれかは、単結合または連結基を介してポリマー成分が結合する構造を有する。
    は、アルキル基、フェニル基、OR基またはNR10基を示し、
    〜R10は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
    がポリマー成分と結合する場合、単結合または連結基を介して結合し、Rに結合する連結基は、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−NR−および−NHCH(CHOH)−からなる群より選ばれる二価の連結基であり、
    は、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
    は、アルキル基、フェニル基、OR42基またはNR4344基を示し、
    42〜R44は、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
    がポリマー成分と結合する場合、連結基を介して結合し、Rに結合する連結基は、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−NR11−、−NHCOC(CH3)2−および−NHCH(CHOH)−からなる群より選ばれる二価の連結基であり、
    11は、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
    Arは、アリール基を示し、Arがポリマー成分と結合する場合、単結合または連結基を介して結合し、Arに結合する連結基は、アミド基、エステル基、ウレタン基、ウレア基、アルキレン基、フェニレン基、−O−、−NR−および−NHCH(CHOH)−からなる群より選ばれる二価の連結基であり、Rは、水素原子、アルキル基、フェニル基またはアラルキル基を示す。
    前記単結合または連結基が、R、R、またはArに結合する場合は、R、R、またはArの水素原子と置換して結合する。]
  10. 前記顔料分散剤の1分子当たりの吸着成分の個数が、1以上6以下である請求項5〜9のいずれか1項に記載の定着方法。
  11. 前記トナー粒子が、さらに結晶性ポリエステル樹脂を含有する請求項4〜10のいずれか1項に記載の定着方法。
  12. 前記結晶性ポリエステル樹脂が、
    下記一般式(4)で示される脂肪族ジカルボン酸と、
    下記一般式(5)で示される脂肪族ジオールと
    を用いて合成されたポリエステル樹脂である請求項11に記載の定着方法。
    HOOC−(CH)m−COOH 式(4)
    [式(4)中、mは、4〜16の整数を示す。]
    HO−(CH)n−OH 式(5)
    [式(5)中、nは、4〜16の整数を示す。]
  13. 前記顔料分散剤の酸価が、10mgKOH/g以下である請求項4〜12のいずれか1項に記載の定着方法。
  14. 前記顔料分散剤のアミン価が、5mgKOH/g以下である請求項4〜13のいずれか1項に記載の定着方法。
  15. 前記トナー粒子が、重合性単量体、顔料および顔料分散剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体中に分散して前記重合性単量体組成物の粒子を形成し、前記粒子中に含有される前記重合性単量体を重合させして得られるトナー粒子である請求項4〜14のいずれか1項に記載の定着方法。
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