JP6271998B2 - 定着方法 - Google Patents

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Description

本発明は、電子写真法に用いる定着方法に関する。
近年、デジタルカメラ、携帯端末などによって取り込まれた画像データやポスターなどのグラフィック画像をユーザーがデジタル複写機、デジタルプリンターなどの画像形成装置を用いて出力する機会が増加している。
このような用途で画像形成装置を用いる場合、画質・質感をより重視するため、出力画像に、全面で均一な光沢度を有し、階調性が再現できる画像を出力する必要がある。
また、ユーザーの要望として、プリント信号を受信してから未定着トナー画像が形成された記録材を加熱定着するまでの時間(ウォームアップ時間)を短縮することも求められている。
電子写真方式の複写機やプリンターなどの画像形成装置に搭載される定着装置は、
加熱回転体(加熱部材)と、
加熱回転体に接触する加圧ローラー(加圧部材)と、
で形成されたニップ部で未定着トナー画像を担持した記録材を搬送しながら加熱してトナー画像を記録材に定着するものが一般的である。
その中でも、ウォームアップ時間を短縮できるという観点から、加熱回転体の導電層を直接発熱させることができる電磁誘導加熱方式の定着装置が開発され実用化されている。
特許文献1〜3に開示されている定着装置は、磁界発生手段から発生した磁界で加熱回転体の導電層に誘導された渦電流によって導電層が発熱するものである。このような定着装置は、加熱回転体の導電層として、磁束を通しやすい、厚さが200μm〜1mmの鉄やニッケルなどの磁性金属またはこれらが主体の合金を用いている。
ところで、定着装置のウォームアップ時間を短くしようとすると、加熱回転体の熱容量を小さくする必要があるので、加熱回転体の導電層も薄い方が有利である。
しかしながら、上記文献に開示されている定着装置においては、加熱回転体の厚みを薄くして熱容量が小さくなると、定着時に記録材などと接触することにより熱を奪われた際の温度低下が大きくなる。その場合、所望の定着温度に戻すために、若干の時間を要する場合がある。
そのため、連続出力の1枚目と複数枚目とで温度差が生まれ、トナーの軟化が不十分になり、加熱回転体とトナーとの界面へ離型剤が上手く染み出せない部位が生じ、加熱回転体へのトナー付着(オフセット)が生じる場合があった。
上記課題を鑑みて、トナーとしては、離型剤量を増やすなどの検討がなされているが、常温での離型剤の染み出しにより、トナーの耐熱性や多数枚印字の際の部材汚染による画質の不具合が生じやすい。あるいは、離型剤をトナーの表面に固着させ、離型効果を高めようとする検討も行われている(特許文献4)。
しかしながら、離型剤を表面に存在させることは、部材汚染、帯電性不良、耐熱保存性の低下を招く恐れがあった。
特開2000−81806号公報 特開2004−341164号公報 特開平9−102385号公報 特開2013−37230号公報
本発明の目的は、上記問題点を解決し、高速連続通紙時の、耐オフセット性を向上させた定着方法を提供することにある。
本発明は、
加熱加圧手段により記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する定着方法において、
前記加熱加圧手段が、
加熱部材と、
加圧部材と
を有し、
前記加熱部材が、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための励磁コイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
を有し、
前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記磁性コアの磁気抵抗が、
前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記磁性コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、
前記トナー画像を形成するトナーが、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有するトナー粒子を有するトナーであり、
前記トナー粒子が、トナー母粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の樹脂微粒子を固着させたものであり、
前記トナー母粒子のガラス転移温度(Tg1)が、前記樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg2)よりも小さい値である
ことを特徴とする定着方法である。
本発明によれば、高速連続通紙時の耐オフセット性を向上させた定着方法を提供することができる。
定着フィルムと磁性コアとコイルの斜視図 定着装置1の画像形成装置の概略構成図 定着装置1の定着装置の断面模式図 駆動周波数と出力電力との関係図 ソレノイドコイルと磁性コア周辺の磁界の模式図 ソレノイドコイルの磁性コアの端部近傍の模式図 回路を貫く磁束が安定する領域の模式図 円筒形回転体と磁束が安定する領域の模式図 定着装置1の目的に沿わない磁力線形状の例 有限長ソレノイドを配置した構造体の模式図 単位長さ当たりのコア・コイル・円筒体を含む空間の磁気等価回路図 磁性コアとギャップの模式図 円筒形回転体内部の電流と磁場の断面模式図 渦電流E//の説明図 渦電流E⊥の説明図 定着装置1の構成において電力の変換効率を測定した結果 定着装置2としての誘導加熱方式の定着装置構成 定着装置2の発熱の模式図 コイルとスリーブの等価回路 回路の効率に関する説明図 電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置の図 円筒形回転体外部磁束の比率と変換効率の関係の図
本発明は、電磁誘導を利用して加熱加圧定着を行う定着装置において、加熱回転体(加熱部材)の微小な温度低下が起こりにくい構成とした。また、トナーとして、樹脂微粒子をトナー母粒子(以下単に「母粒子」とも表記する。)に固着させ、加熱加圧による定着時の離型剤の染み出し速度を制御したトナーを用いた。これらを組み合わせることで、耐オフセット性に優れた画像(定着画像)を提供できることを見出した。詳細は明確ではないが、樹脂微粒子がトナーの表面に存在することで、溶けている離型剤が少量であっても、毛細管現象のように離型剤がトナー間を速やかに移動し、剥離に十分な量を加熱回転体とトナーとの界面に存在させることが可能となる。さらに、本発明のように、面内での温度が均一となるような定着装置構成を用いると、トナーの軟化が一様になり、溶けて染み出してくる離型剤の量が増加すると予想され、より耐オフセット性を向上させることが可能になると考えられる。
以下、本発明に関して、詳細を説明する。
定着装置は、
導電層を有する筒状の回転体と、
前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するためのコイルと、
前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するためのコアと、
を有する定着装置において、前記母線方向に関し記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記コアの磁気抵抗が、
前記導電層の磁気抵抗と、
前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、
の合成磁気抵抗の30%以下であることを特徴とするものである。
以下、図面に基づき本発明について説明する。
(1)画像形成装置例
図2は本実施例に係る画像形成装置100の概略構成図である。本実施例の画像形成装置100は、電子写真プロセスを利用したレーザービームプリンターである。101は像担持体としての回転ドラム型の電子写真感光体(以下、感光ドラムと記す)であり、所定の周速度にて回転駆動される。
感光ドラム101は回転する過程において帯電ローラー102により所定の極性、所定の電位、に一様に帯電処理される。103は露光手段としてのレーザービームスキャナーである。スキャナー103は、不図示のイメージスキャナーやコンピューターなどの外部機器から入力される画像情報に応じて変調したレーザー光Lを出力して、感光ドラム101の帯電処理した面を走査露光する。この走査露光により感光ドラム101表面の電荷が除電され感光ドラム101の表面に画像情報に応じた静電潜像が形成される。104は現像装置であり、現像ローラー104aから感光ドラム101表面にトナーが供給されて静電潜像がトナー画像として現像される。105は、記録材Pが積載して収納される給紙カセットである。給紙開始信号に基づいて給紙ローラー106が駆動されて給紙カセット105内の記録材Pが一枚ずつ分離して給紙される。その記録材Pは、レジストレーションローラー107を介して、感光ドラム101と転写ローラー108とで形成された転写部位108T所定のタイミングで導入される。すなわち、感光ドラム101上のトナー画像の先端部が転写部位108Tに到達するタイミングで、記録材Pの先端部が転写部位108Tに到達するようにレジストレーションローラー107で記録材Pの搬送が制御される。転写部位108Tに導入された記録材Pは、この転写部位108Tで搬送され、その間、転写ローラー108は不図示の転写バイアス印加電源によって転写バイアス電圧が印加される。転写ローラー108はトナーと逆極性の転写バイアス電圧が印加されることで転写部位108Tにおいて感光ドラム101の表面側のトナー画像が記録材Pの表面に転写される。転写部位108Tにおいてトナー画像が転写された記録材Pは感光ドラム101の表面から分離されて搬送ガイド109を経由し定着装置Aで定着処理される。定着装置Aについては後述する。一方、記録材が感光ドラム101から分離した後の感光ドラム101の表面はクリーニング装置110でクリーニングされ、繰り返し画像形成動作に供される。定着装置Aを通った記録材Pは、排紙口111から排紙トレイ112上に排出される。
(2)定着装置
(2−1)概略構成
図3は定着装置1の概略断面図である。定着装置1は、筒状の加熱回転体しての定着フィルム1と、定着フィルム1の内面と接触するニップ部形成部材としてのフィルムガイド9(ベルトガイド)と、対向部材としての加圧ローラー(加圧部材)7と、を有する。加圧ローラー7は、定着フィルム1を介してニップ部形成部材とともにニップ部Nを形成する。ニップ部Nでトナー画像Tを担持した記録材Pを搬送しながら加熱して、トナー画像Tを記録材Pに定着する。
ニップ部形成部材9は、不図示の軸受け手段および付勢手段により総圧約50N〜100N(約5kgf〜約10kgf)の押圧力で加圧ローラー7に対して定着フィルム1を挟んで押圧されている。そして、加圧ローラー7は、不図示の駆動源によって矢印方向に回転駆動され、ニップ部Nにおける摩擦力で定着フィルム1に回転力が作用し、定着フィルム1は加圧ローラー7に従動して回転する。ニップ部形成部材9は、定着フィルム1の内面をガイドするフィルムガイドとしての機能もあり、耐熱性樹脂であるポリフェニレンサルファイド(PPS)などで構成されている。
定着フィルム1(定着ベルト)は、直径(外径)が10〜100mmの金属製の導電層1a(基層)と、導電層1aの外側に形成した弾性層1bと、弾性層1bの外側に形成した表層1c(離型層)と、を有する。以後、導電層1aを「円筒形回転体」または「円筒体」と記す。定着フィルム1は、可撓性を有する。
実施例1に用いた定着装置1においては、円筒形回転体1aは、比透磁率が1.0で、厚さが20μmのアルミニウムを用いる。円筒形回転体1aの材質としては、非磁性材料であるアルミニウム、銅(Cu)、Ag(銀)および、オーステナイト系ステンレス鋼(SUS)のうち、少なくとも1つで形成されていることが好ましい。
本定着装置の特徴の1つとして、円筒形回転体1aに使用できる材質の選択肢が広いこと挙げられる。これにより、加工性に優れた材質やコストの安い材質を使うことができるというメリットがある。
円筒形回転体1aの厚みは75μm以下が好ましく、より好ましくは50μm以下である。なぜなら、円筒形回転体1aに適度な可撓性を持たせ、かつ、熱容量を小さくしたいためである。直径が小さい方が、熱容量を小さくするのに有利である。
以上の理由により、熱容量の極小化を実現するためには、導電層1aの厚みを50μm以下で使いこなすことが重要である。本発明の定着装置は、後述するが、電磁誘導加熱方式の定着装置においても、導電層1aの厚みを50μm以下にできるというメリットがある。
弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムで形成され、厚みが0.1mm〜0.3mmである。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として厚みが10μm〜50μmのフッ素樹脂チューブを被覆している。磁性コア2は、定着フィルム1の中空部に、定着フィルム1の母線方向に挿通されている。その磁性コア2の外周に励磁コイル3が巻かれている。
(2−2)磁性コア
図1は円筒形回転体1a(導電層)と、磁性コア2と、励磁コイル3の斜視図である。
磁性コア2は、円柱形状をしており、不図示の固定手段で定着フィルム1のほぼ中央に配置させている。磁性コア2は、励磁コイル3にて生成された交番磁界の磁力線(磁束)を円筒形回転体1aの内部(円筒形回転体1aと磁性コア2の間の領域)に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する役割がある。この磁性コア2の材質は、ヒステリシス損が小さく比透磁率の高い材料、例えば、焼成フェライト、フェライト樹脂、非晶質合金(アモルファス合金)、やパーマロイなどの高透磁率の酸化物や合金材質で構成される強磁性体が好ましい。特に21kHz〜100kHz帯の高周波交流を励磁コイルに流す場合、高周波電流において損失の小さな焼成フェライトが好ましい。磁性コア2は、円筒形回転体1aの中空部に収納可能な範囲で、断面積をできるだけ大きくすることが望ましい。本実施例では磁性コアの直径は5mm〜40mmとし、長手方向の長さ230〜300mmとする。なお、磁性コア2の形状は円柱形状に限定されず、角柱形状などでもよい。また、磁性コアを長手方向に複数分割し、各コア間にギャップ(空隙)を設けてもよいが、その際は後述する理由により分割した磁性コア同士のギャップを極力小さく構成することが望ましい。
(2−3)励磁コイル
励磁コイル3は、耐熱性のポリアミドイミドで被覆した直径1〜2mmの銅線材(単一導線)を、磁性コア2に約10巻〜100巻で螺旋状に巻いて形成する。本実施例では励磁コイル3の巻き数は18回とする。励磁コイル3は、磁性コア2に定着フィルム1の母線方向に交差する方向に巻回されているため、この励磁コイルに高周波電流を流すと、定着フィルム1の母線方向に平行な方向に交番磁界を発生させることができる。
なお、励磁コイル3は、必ずしも磁性コア2に巻きつけられている必要はない。励磁コイル3は螺旋形状部を有し、その螺旋形状部の螺旋軸が円筒形回転体の母線方向と平行になるように螺旋形状部が円筒形回転体の内部に配置され、磁性コアが螺旋形状部の中に配置されていれば良い。例えば、円筒形回転体の内部に励磁コイル3が螺旋状に巻かれたボビンを有し、磁性コア2がそのボビンの内部に配置されている構成でもよい。
また、発熱原理的に螺旋軸と円筒形回転体の母線方向が平行であるときに、発熱効率は最も高くなる。
しかしながら、螺旋軸の円筒形回転体の母線方向に対する平行度がずれた場合、「回路を平行に貫く磁束の量」がわずかに減少し、その分発熱効率が減少するものの、数°程度傾くだけであれば、実用上問題はない。
(2−4)温度制御手段
図1における温度検知部材4は、定着フィルム1中央部の表面温度を検知するために設けられる。本実施例では、温度検知部材4として非当接型サーミスタを用いている。高周波コンバータ5は、励磁コイル3に、給電接点部3a、3bを介して高周波電流を供給する。なお、日本国内では電波法施行規則により電磁誘導加熱の利用周波数は20.05kHzから100kHzの範囲に定められている。また、電源の部品コスト上、周波数は低いことが好ましいため、利用周波数帯の下限付近21kHz〜40kHzの領域において周波数変調制御を行う。以下周波数変調制御について説明する。共振回路を用いて誘導発熱を行う電磁誘導方式においては図4のグラフのように、駆動周波数により出力電力が変化する。これは、駆動周波数が共振周波数と一致するときに電力は最大となり、駆動周波数が共振周波数から遠ざかると電力が下がるという性質を利用したものである。すなわち、目標温度と温度検知部材4の温度差に応じて、駆動周波数を21kHz〜100kHzまで変化させることにより、出力電力を調整するという方法である。制御回路6は、温度検知部材4によって検出された温度を基に高周波コンバータ5を制御する。これにより、定着フィルム1は電磁誘導加熱されて表面の温度が所定の目標温度になるように電力が制御される。
(3)発熱原理
(3−1)磁力線の形状と誘導起電力
図5(a)は、同形状のソレノイドコイル3の中心に磁性コア2を挿通して磁路を形成した場合の、コイル形状と磁界の対応図である。本磁力線の向きは、矢印Iの向きに電流が増加している瞬間である。磁性コア2は、ソレノイドコイル3にて生成された磁力線を内部に誘導し、磁路を形成する部材として機能する。定着装置1の磁性コア2は、環状になっているものではなく、長手方向にそれぞれ端部を有するものである。そのため、磁力線は、大多数がソレノイドコイル中央の磁路に集中して通って、磁性コア2の長手方向の端部において拡散する形状の開磁路となる。そのため、コイルの隙間Δdにおける磁力線の漏えいも少なく、両極から出た磁力線は、外周の遥か遠くで繋がる形状の開磁路となる(図の表記上は端部で途切れている)。図5(b)は、ソレノイド中心軸Xにおける磁束密度の分布を示す。磁束密度は、グラフ上の曲線B2に示すように、B1と比較してソレノイドコイル3の端部での磁束密度の減衰が少なくなっており、台形に近い形状となる。
(3−2)誘導起電力
発熱原理はファラデーの法則に従う。ファラデーの法則とは、「回路の中の磁界を変化させると、その回路の中に電流を流そうとする誘導起電力が生じ、誘導起電力は回路を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する」というものである。図6(a)に示すソレノイドコイル3の磁性コア2の端部近傍に、コイルと磁性コアより直径の大きな回路Sを置き、コイル3には高周波交流を流す場合を考える。高周波交流を流した場合、ソレノイドコイル周辺には交番磁界(時間とともに大きさと方向が変化を繰り返す磁界)が形成される。そのとき、回路Sに発生する誘導起電力は、以下の式(1)に従い、ファラデーの法則より回路Sの中を垂直に貫く磁束の時間変化に比例する。
V:誘導起電力
N:コイル巻き数
Δφ/Δt:微小時間Δtでの回路を垂直に貫く磁束の変化
すなわち、励磁コイルに直流電流を流して静磁界を形成した状態において、回路Sの中を磁力線の垂直成分がより多く通過していると、高周波の交流電流を流して交番磁界を発生させたときの際の磁力線の垂直成分の時間変化も大きくなる。その結果、発生する誘導起電力も大きくなり、その磁束の変化を打ち消す方向に電流が流れる。すなわち、交番磁界を発生させた結果、電流が流れると、磁束の変化は打消されて静磁界を形成した際とは異なる磁力線形状となる。また、この誘導起電力Vは、交流電流の周波数が高い(すなわちΔtが小さい)ほど大きくなる傾向がある。したがって、50〜60Hzの低周波数の交流電流を励磁コイルに流した場合と、21kHz〜100kHzの高周波数の交流電流を励磁コイルに流した場合では、所定の磁束の量で発生させることのできる起電力は大きく異なる。交流電流の周波数を高周波数にすると、少ない磁束でも高い起電力を発生させることができるのである。したがって、交流電流の周波数を高周波数することは、断面積の小さな磁性コアで大きい熱量を発生させることができるため、小さな定着装置に大きな熱量を発生させたい場合に非常に有効である。これは、交流電流の周波数を大きくすることによって、トランスを小型化できることと似ている。例えば、低周波数帯(50〜60Hz)で用いられるトランスは、Δtが大きい分だけ磁束φを大きくする必要があり、磁性コアの断面積を大きくする必要がある。これに対して高周波数帯(kHz)で用いられるトランスは、Δtが小さい分だけ磁束φを小さくすることが可能であり、磁性コアの断面積を小さく設計することができる。
以上述べたことから、交流電流の周波数を21kHz〜100kHzの高周波数帯で用いることで、磁性コアの断面積を小さくして画像形成装置の小型化を実現することができる。
交番磁界によって高効率で回路Sに誘導起電力を発生させるためには、回路Sの中を磁力線の垂直成分がより多く通過している状態を設計する必要がある。しかし、交番磁界においては、コイルに誘導起電力が発生した際の反磁界の影響なども考慮する必要があり、現象が複雑となってしまう。本発明の定着装置については後述するが、本発明の定着装置を設計するためには、誘導起電力の発生していない静磁界の状態の磁力線の形によって議論を進めることによって、より簡単な物理モデルで設計を進めることができる。すなわち静磁界における磁力線形状を最適化することによって、交番磁界において高効率に誘導起電力を発生させる定着装置が設計できる。
図6(b)は、ソレノイド中心軸Xにおける磁束密度の分布を示す。コイルに直流電流を流して静磁界(時間的に変動しない磁界)を形成した場合を考えると、回路Sを位置X1に置いたときの磁束に対して、位置X2に置いたときに、回路Sを垂直に貫く磁束はB2に示すように増加する。そして位置X2において、磁性コア2に束縛された磁力線がほぼすべて回路Sの中に納まり、位置X2よりもX軸正方向の安定領域Mにおいては、回路を垂直に貫く磁束は飽和し、常に最大となる。同様のことは反対側端部にも言え、図7(b)の磁束密度の分布に示すように位置X2から、反対側端部のX3までの安定領域Mは、回路Sの中を垂直に貫く磁束密度は飽和し、安定している。図7(a)に示すように、この安定領域Mは、磁性コア2のある領域内に存在する。
図8(a)に示すように、本発明における磁力線構成としては、静磁界を形成した場合において円筒形回転体1aを、X2からX3の領域で覆せる。そして磁性コア2の一端(磁極NP)から他端(磁極SP)まで、円筒形回転体の外部を磁束が通る磁力線の形状を設計する。そして、安定領域Mを用いて記録材の画像を加熱する。したがって、定着装置1においては、少なくとも磁路を形成するための磁性コア2の長手方向の長さは、記録材Pの最大の画像加熱領域ZLよりも長い構成とする必要がある。さらに好ましい構成としては、磁性コア2と励磁コイル3の両方の長手方向の長さを最大の画像加熱領域ZLよりも長い構成とすると良い。そうすることによって、記録材P上のトナー画像を端部まで均一に加熱することが可能となるからである。また、円筒形回転体1aの長手方向の長さは、最大の画像加熱領域ZLより長く構成することが必要である。本定着装置において、図8(a)に示すソレノイド磁場を形成した際に、2つの磁極NPとSPが最大の画像加熱領域ZLよりも外側に出ていることが重要である。そうすることによって、ZLの範囲に均一な熱を発生させることができる。
なお、最大の画像加熱領域の代わりに記録材の最大搬送領域を用いてもよい。
本定着装置では、磁性コア2の長手方向の両端部がそれぞれ、定着フィルム1の母線方向の端面から外側に突出している。これによって、定着フィルム1の母線方向全域の発熱量を安定させることができる。
従来の電磁誘導加熱方式の定着装置は、円筒形回転体の材料内部に磁力線を注入するという技術思想で設計されている。これに対して、本定着装置の電磁誘導加熱方式は回路Sを垂直に貫く磁束が最大となる状態で、円筒形回転体の全域を発熱させる、つまり、円筒形回転体の外部を磁束が通るようにするという技術思想で設計されていることが特徴である。よって、円筒形回転体の全域を発熱させるという設計が従来の電磁誘導加熱方式の定着装置とは異なり、記録材が通過しても、温度低下の非常に小さい定着装置構成となっているのである。
以下に、本発明の目的に沿わない磁力線形状の例を3つ示す。図9(a)は、磁力線が円筒形回転体の内側(円筒形回転体と磁性コアの間の領域)を通っている例を示す。この場合、円筒形回転体の内側を通る磁束は、図中で左方向に向かう磁束と右方向に向かう磁束とが混在するため、両者は打ち消し合ってファラデーの法則上、φの積分値は減少してしまい、発熱効率が減少するため好ましくない。このような磁力線形状は、磁性コアの断面積が小さい場合、磁性コアの比透磁率が小さい場合、磁性コアが長手方向に分割して大きなギャップを形成している場合、円筒形回転体の直径が大きい場合に生じる。
図9(b)は、磁力線が円筒形回転体の材料内部を通っている例を示す。このような状態は、円筒形回転体の材質がニッケルや鉄などの比透磁率の高い材質である場合に生じやすい。
以上述べたことから、本発明の目的に沿わない磁力線形状は、下記の(I)〜(V)の場合に形成され、これは円筒形回転体の材料内部に発生する渦電流損によるジュール熱で発熱する従来の定着装置である。
(I)円筒形回転体の材質の比透磁率が大きい
(II)円筒形回転体の断面積が大きい
(III)磁性コアの断面積が小さい
(IV)磁性コアの比透磁率が小さい
(V)磁性コアが長手方向に分割して大きなギャップを形成している
図9(c)は、磁性コアが長手方向に複数に分割されていて磁性コアの両端部NP、SP部分以外の箇所MPにおいても磁極ができている場合である。本発明の目的を達成するためには、NPとSPの2つのみを磁極とするよう磁路を形成するのが好ましく、磁性コアを長手方向で複数に分割して磁極MPを作ることは好ましくない。3−3にて後述する理由により、磁性コア全体の磁気抵抗を上昇させてしまい、磁路を形成しにくくなること、磁極MP部分の付近において発熱量が減少して、均一な画像加熱しにくい場合がある。
分割する場合は、磁性コアが十分磁路として働くよう、磁気抵抗を小さく、パーミアンスを大きく保てる範囲(3−6に後述)に限られる。
(3−3)磁気回路とパーミアンス
次に、(3−2)に説明した発熱原理を達成するための、具体的な設計指針について説明する。そのためには、定着装置の各構成部品の円筒形回転体の母線方向への磁気の通りやすさを、形状係数によって表現する必要がある。その形状係数は、「静磁界における磁気回路モデル」の「パーミアンス」を用いる。まず、一般的な磁気回路の考え方について説明する。磁束が主として通る磁路の閉回路を、電気回路に対して磁気回路という。磁気回路において磁束を計算する際、電気回路の電流の計算に準じて行うことができるものである。磁気回路の基礎計算式は、電気回路に関するオームの法則と同一であり、全磁束をφ、起磁力をV、磁気抵抗をRとすると、この3つの要素は
全磁束φ=起磁力V/磁気抵抗R ・・・(2)
の関係にある(したがって、電気回路における電流は磁気回路における全磁束φと対応し、電気回路における起電力は磁気回路における起磁力Vと対応し、電気回路における電気抵抗は磁気回路における磁気抵抗と対応する)。しかし、ここでは原理をより理解しやすく説明するために磁気抵抗Rの逆数であるパーミアンスPを用いて説明する。したがって上記(2)は
全磁束φ=起磁力V×パーミアンスP ・・・(3)
で置き換えられる。このパーミアンスPは、磁路の長さをB、磁路の断面積をS、磁路の透磁率をμとしたとき、
パーミアンスP=透磁率μ×磁路断面積S/磁路長B ・・・(4)
で表される。パーミアンスPは、磁路長Bが短く、磁路断面積Sおよび透磁率μが大きいほど大きくなることを示し、パーミアンスPが大きい部分に磁束φがより多く形成される。
図8(a)に示すように、静磁界において磁性コアの長手方向の一端から出る磁力線の大部分が円筒形回転体の外部を通って磁性コアの他端まで戻るように設計する。その設計の際は、定着装置を磁気回路に見立て、「磁性コア2のパーミアンスは十分大きく、かつ円筒形回転体と円筒形回転体の内側のパーミアンスが十分小さい状態」にすれば良い。
図10において、円筒形回転体(導電層)を円筒体と記す。図10(a)は、円筒体1a内部に、半径:a1[m]、長さ:B[m]、比透磁率:μ1の磁性コア2に、巻き数:N[回]の励磁コイル3を巻いた有限長ソレノイドを配置した構造体である。ここで、円筒体は、長さ:B[m]、円筒内側半径:a2[m]、円筒外側半径:a3[m]、比透磁率:μ2の導体である。円筒体内側および外側の真空の透磁率:μ0[H/m]とする。ソレノイドコイルに電流:I[A]を流したときに、磁性コアの任意の位置の単位長さ当たりに発生する磁束8をφc(x)とした。
図10(b)は、磁性コア2の長手方向に垂直な断面を拡大した図である。図中の矢印は、ソレノイドコイルに電流:Iを流したときに、磁性コアの内部、円筒体内外の空気、および、円筒内を通る磁性コアの長手方向に平行な磁束を表している。磁性コア中を通る磁束をφc(=φc(x))、円筒体の内側の空気中を通る磁束をφa_in、円筒体内を通る磁束をφcy、円筒体外側の空気中を通る磁束をφa_outとしている。
図11(a)に、図10(b)に示した単位長さ当たりのコア・コイル・円筒体を含む空間の磁気等価回路を示す。磁性コアを通る磁束φcにより生じる起磁力をVm、磁性コアのパーミアンスをPc、円筒体の内側の空気中のパーミアンスをPa_in、円筒体内のパーミアンスをPcy、円筒体外側の空気のパーミアンスをPa_outとしている。
円筒体内部または円筒体のパーミアンスPa_in、Pcyに比べて磁性コアのパーミアンスPcが十分大きいとき、以下の関係が成り立つ。
φc=φa_in+φcy+φa_out ・・・(5)
すなわち、磁性コアの内部を通過した磁束は、φa_in、φcy、φa_outの何れかを必ず通過して磁性コアに戻ってくることを意味する。
φc=Pc・Vm ・・・(6)
φa_in=Pa_in・Vm ・・・(7)
φcy=Pcy・Vm ・・・(8)
φa_out=Pa_out・Vm ・・・(9)
よって、(5)に(6)〜(9)を代入すると下記のようになる。
Pc・Vm=Pa_in・Vm+Pcy・Vm+Pa_out・Vm
=(Pa_in+Pcy+Pa_out)・Vm
∴Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0 ・・・(10)
図10(b)より、磁気コイルの断面積:Sc、円筒体内側空気の断面積:Sa_in、円筒体の断面積:Scyとすると、各領域の単位長さ当たりのパーミアンスは以下のように、「透磁率×断面積」で表すことができ、単位は[H・m]である。
Pc=μ1・Sc=μ1・π(a1) ・・・(11)
Pa_in=μ0・Sa_in=μ0・π・((a2)−(a1)) ・・・(12)
Pcy=μ2・Scy=μ2・π・((a3)−(a2)) ・・・(13)
さらに、Pc−Pa_in−Pcy−Pa_out=0であるから、円筒体外側空気中のパーミアンスは次のように表すことができる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy
=μ1・Sc−μ0・Sa_in−μ2・Scy
=π・μ1・(a1)
−π・μ0・((a2)−(a1)
−π・μ2・((a3)−(a2)) ・・・(14)
各領域を通る磁束は、式(5)〜式(10)に示すように、各領域のパーミアンスに比例する。式(5)〜式(10)を用いれば、後述する表1のように各領域を通る磁束の比率を算出することができる。なお、円筒体の中空部に、空気以外の材質が存在していた場合も、その断面積と透磁率から、円筒体内の空気と同じ方法でパーミアンスを求めることができる。この場合のパーミアンスの計算の仕方は後述する。
本発明においては、「円筒形回転体長軸方向への磁気の通りやすさを表現する形状係数」として、上記した「単位長さ当たりのパーミアンス」を利用する。まず、式(5)〜式(10)を用いて磁性コア、フィルムガイド(ニップ部形成部材)、円筒体内空気、円筒体に対して、断面積と透磁率から単位長さ当たりのパーミアンスを計算する。そして、式(14)を用いて円筒体外空気のパーミアンスを計算する。本計算は、「円筒体に内包し、磁路になり得る部材」はすべて考慮する。そして磁性コアのパーミアンスの値を100%として、各部分のパーミアンスの割合が何%になるかを示している。これによれば、どの部分において最も磁路が形成されやすいか、磁束がどの部分を通過するかについて磁気回路を用いて数値化することができる。
パーミアンスの代わりに磁気抵抗R(パーミアンスPの逆数)を用いてもよい。なお、磁気抵抗を用いて議論する場合、磁気抵抗は単純にパーミアンスの逆数であるので、単位長さ当たりの磁気抵抗Rは「1/(透磁率×断面積)」で表すことができ、単位は「1/(H・m)」である。
次に、「磁束の比率」について、磁気等価回路を図11(b)を用いて説明する。
本発明において、静磁界における磁気回路モデル上で、磁性コア内部を通って磁性コアの一端から出た磁束100%が通る経路は次のような内訳である。磁性コアを通過して磁性コアの一端を出た磁束100%のうち0.0%がフィルムガイドを、0.1%が円筒体内の空気を、0.0%が円筒体を、99.9%が円筒体外の空気を通る。以後この状態を、「円筒体外部磁束の比率:99.9%」と表現する。なお、理由は後述するが本発明の目的を達成するためには「静磁界における磁気回路モデル上、円筒体外部を通る磁束の比率」の値が100%に近いほど良い。
「円筒体外部を通る磁束の比率」は、励磁コイルに直流電流を流し静磁界を形成した際に磁性コアの内部をフィルムの母線方向に通過して磁性コアの長手方向の一端から出た磁束のうち円筒形回転体の外側を通って磁性コアの他端に戻る磁束の割合である。
式(5)〜式(10)に記載したパラメータで表すと、「円筒体外部を通る磁束の比率」は、Pcに対するPa_outの比率(=Pa_out/Pc)である。
そして、「円筒体外部磁束の比率」の高い構成を作るためには、具体的には下記のような設計手段が望ましい。
(手段1)磁性コアのパーミアンスを大きくする。(磁性コア断面積大、材質の比透磁率大)
(手段2)円筒体内のパーミアンスを小さくする。(空気部分の断面積小)
(手段3)円筒体内に鉄などのパーミアンスの大きい部材を配置しない。
(手段4)円筒体のパーミアンスを小さくする。(円筒体の断面積小、円筒体に用いる材質の比透磁率小)
手段4より、円筒体は比透磁率μの低い材質が好ましい。円筒体として比透磁率μの高い材質を用いる際は、円筒体の断面積をより小さくする必要がある。これは、円筒体の断面積が大きいほど、円筒体を貫く磁束が多くなり発熱効率が高くなる従来の定着装置とは反対である。また、円筒体内にはパーミアンスの大きい部材を配置しないことが望ましいものの、やむを得ず鉄などを配置しなければならない場合は、断面積を小さくするなどによって、「円筒体外部を通る磁束の比率」をコントロールする必要がある。
なお、磁性コアを長手方向で複数に分割し、分割した各磁性コア同士の間に空隙(ギャップ)を設ける場合もある。その場合、この空隙が空気または比透磁率が1.0とみなせるものなどの磁性コアの比透磁率よりも小さいもので満たされている場合、磁性コア全体の磁気抵抗は大きくなり磁路形成能力を減少させることになる。よって、本発明の定着装置を達成するためには、磁性コアのギャップを厳しく管理する必要がある。磁性コアのパーミアンスの計算方法は複雑になる。以下に、磁性コアを複数分割し、空隙またはシート状非磁性体を挟んで等間隔に並べた場合の磁性コア全体のパーミアンスの計算方法について説明する。この場合長手全体の磁気抵抗を導出し、それを全体長さで割って単位長さ当たりの磁気抵抗を求め、その逆数を取って単位長さ当たりのパーミアンスを求める必要がある。
まず、磁性コアの長手構成図を図12に示す。磁性コアc1〜c10は、断面積:Sc、透磁率:μc、分割された磁性コア1個当たりの長手寸法:Lcとなっており、ギャップg1〜g9は、断面積:Sg、透磁率:μg、1ギャップ当たりの長手寸法:Lgとなっている。そのとき、長手全体の磁気抵抗Rm_allは、以下の式で与えられる。
Rm_all=(Rm_c1+Rm_c2+・・・+Rm_c10)+(Rm_g1+Rm_g2+・・・・・+Rm_g9) ・・・(15)
本構成の場合は、磁性コアの形状と材質、ギャップ幅は一様であるので、Rm_cの足し合わせた合計をΣRm_c、Rm_gの足し合わせた合計をΣRm_gとすると、次のようになる。
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g) ・・・(16)
磁性コアの長手:Lc、透磁率:μc、断面積:Sc、ギャップの長手:Lg、透磁率:μg、断面積:Sgとすると、
Rm_c=Lc/(μc・Sc) ・・・(17)
Rm_g=Lg/(μg・Sg) ・・・(18)
(16)式に代入して、長手全体の磁気抵抗Rm_allは
Rm_all=(ΣRm_c)+(ΣRm_g)
=(Lg/(μc・Sc))×10+(Lg/(μg・Sg))×9 ・・・(19)
となる。単位長さ当たりの磁気抵抗Rmは、Lcの足し合わせた合計をΣLc、Lgの足し合わせた合計をΣLgとすると、
Rm=Rm_all/(ΣLc+ΣLg)
=Rm_all/(L×10+Lg×9) ・・・(20)
となり、単位長さあたりのパーミアンスPmは、以下のように求められる。
Pm=1/Rm=(ΣLc+ΣLg)/Rm_all=(ΣLc+ΣLg)/[{ΣLc/(μc+Sc)}+{ΣLg/(μg+Sg)}] ・・・(21)
ΣLc:分割された磁性コアの長さの合計
μc:磁性コアの透磁率
Sc:磁性コアの断面積
ΣLg:ギャップの長さの合計
μg:ギャップの透磁率
Sg:ギャップの断面積
式(21)より、ギャップLgを大きくすることは、磁性コアの磁気抵抗の増加(パーミアンスの低下)につながる。本定着装置を構成するうえで、発熱原理上、磁性コアの磁気抵抗が小さく(パーミアンスが大きく)なるように設計することが望ましいため、ギャップを設けることはあまり望ましくない。しかし、磁性コアを割れにくくするために磁性コアを複数に分割してギャップを設ける場合がある。この場合ギャップLgは極力小さく(望ましくは50μm以下程度)構成し、後述するパーミアンスまたは磁気抵抗の設計条件から外れないように設計することで、本発明の目的を達成することができる。
(3−4)円筒形回転体内部の周回電流
図8(a)において、中心から磁性コア2、励磁コイル3、円筒形回転体(導電層1a)が同心円状に配置されており、励磁コイル3の中に矢印I方向に電流が増加しているときは、概念図においては8本の磁力線が磁性コア2の中を通過している。
図13(a)は、図8(a)の位置Oにおける断面構成の概念図を示したものである。
磁路の中を通過する磁力線Binを、図中奥行き方向に向かう矢印(×印8個)で示す。そして図中手前方向に向かう矢印Bout(●印8個)は、静磁界を形成したときに磁路の外から戻ってくる磁力線を表している。これによると、円筒形回転体1aの中を紙面奥方向に向かう磁力線Binは8本であり、円筒形回転体1aの外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線Boutも8本である。励磁コイル3の中に電流が矢印Iの向きに電流が増加している瞬間は、磁路の中に図中奥行き方向に向かう矢印(○の中に×印)のように磁力線が形成される。実際に交番磁界を形成したときには、このように形成されようとする磁力線を打ち消すように、円筒形回転体1aの周方向全域に誘導起電力がかかり、電流は矢印Jの方向に流れる。この、円筒形回転体1aに電流が流れると、円筒形回転体1aは金属なので電気抵抗によりジュール発熱する。
この電流Jが円筒形回転体1aを周回方向に流れることは、本発明の重要な特徴である。本発明の構成は、静磁界において磁性コアの内部を通過する磁力線Binが円筒形回転体1aの中空部を通過し、磁路コアの一端から出て磁性コアの他端に戻ってくる磁力線Boutが円筒形回転体1aの外部を通過する。これは、交番磁界において、円筒形回転体1a内部において周回電流が支配的となり、図14で示すような磁束が導電層の材料内部を貫いて発生する渦電流E//は発生しにくい。なお、以後、一般に誘導加熱の説明で使用される「渦電流」と区別するため本実施例の構成で円筒形回転体を矢印Jの方向(またはその逆方向)に一様に流れる電流を「周回電流」と呼ぶ。
ファラデーの法則に従う誘導起電力は、円筒形回転体1aの周回方向に生じているので、この周回電流Jは円筒形回転体1a内部を一様に流れる。そして磁力線は、高周波電流により生成消滅と方向反転を繰り返すため、周回電流Jは高周波電流と同期して生成消滅と方向反転を繰り返し、円筒形回転体の材料の厚み方向全域の抵抗値によってジュール発熱する。図13(b)は、磁性コアの磁路の中を通過する磁力線Binと、磁路の外から戻ってくる磁力線Boutと、円筒形回転体1a内部を流れる周回電流Jの方向を示す長手斜視図である。
周回電流による発熱は、定着装置として以下(1)および(2)のメリットを有する。
(1)円筒形回転体の熱を奪い、大きく温度低下したとしても、図3のA→Bに至る回転中に発熱し、失われた熱を補給する時間が十分にある。したがって、B点における温度低下は小さい。
(2)また、(1)式によって誘起される誘導電流は、円筒形回転体の周回方向に、全周にわたって均一な熱を発生させる。したがって、円筒形回転体の温度差が起きにくい。
このように、本発明の定着装置は、周回電流によって、円筒形回転体全体を発熱させるために、定着温度が非常に安定する構成となっている。
(3−5)電力の変換効率
定着フィルムの円筒形回転体(導電層)を発熱させる際は、励磁コイルに高周波交流電流を流し、交番磁界を形成する。その交番磁界は円筒形回転体に電流を誘導する。物理モデルとしては、トランスの磁気結合と良く似ている。そのため、電力の変換効率を考える際には、トランスの磁気結合の等価回路を用いることができる。その交番磁界によって励磁コイルと円筒形回転体が磁気結合して、励磁コイルに投入した電力が円筒形回転体に伝達される。ここで述べる「電力の変換効率」は、磁界発生手段である励磁コイルに投入する電力と、円筒形回転体により消費される電力の比率である。本実施例の場合、図1に示す励磁コイル3に対して高周波コンバータ5に投入した電力と、円筒形回転体1aで発生した熱として消費される電力の比率である。この電力の変換効率は以下の式で表すことができる。
電力の変換効率=円筒回転体で熱として消費される電力/励磁コイルに投入した電力
励磁コイルに投入して円筒回転体以外で消費される電力は、励磁コイルの抵抗による損失、磁性コア材料の磁気特性による損失などがある。
図19に回路の効率に関する説明図を示す。図19(a)において1aは円筒形回転体、2は磁性コア、3は励磁コイルであり、円筒形回転体1aに周回電流Jが流れる。図19(b)は、図19(a)に示した定着装置の等価回路である。
は励磁コイルおよび磁性コアの損失分、Lは磁性コアに周回した励磁コイルのインダクタンス、Mは巻き線と円筒形回転体との相互インダクタンス、Lは円筒形回転体のインダクタンス、R2は円筒回転体の抵抗である。円筒回転体を取り外したときの等価回路を図20のうち(a)に示す。インピーダンスアナライザやLCRメータといった装置により、励磁コイル両端からの直列等価抵抗はR、等価インダクタンスLを測定すると、励磁コイル両端から見たインピーダンスZ
=R+jωL ・・・(22)
と表される。この回路に流れる電流は、Rにより損失する。すなわち、Rはコイルおよび磁性コアによる損失を表している。
円筒回転体を装荷したときの等価回路を図20のうち(b)に示す。このときの直列等価抵抗RxおよびLxを測定しておけば、図20のうち(c)のように等価変換することで以下のような関係式を得ることができる。
・・・(23)
・・・(24)
Mは励磁コイルと円筒形回転体の相互インダクタンスを表す。
図20のうち(c)に示すように、Rに流れる電流をI、Rに流れる電流をIとおくと、
・・・(25)
が成り立つため、
・・・(26)
となる。
効率は抵抗Rの消費電力/(抵抗Rの消費電力+抵抗Rの消費電力)で表されるため、
・・・(27)
となり、
円筒形回転体を装荷する前の直列等価抵抗Rと、
円筒形回転体を装荷した後の直列等価抵抗Rxと
を測定すると、励磁コイルに投入した電力のうち、どれだけの電力が円筒回転体で発生する熱として消費されるかを示す電力の変換効率を求めることができる。なお、実施例1の構成においては、電力の変換効率の測定には、Agilent Technologies社製のインピーダンスアナライザ4294Aを用いた。まず、円筒形回転体の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rを測定し、次に円筒形回転体に磁性コアを挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定した。R=103mΩ、Rx=2.2Ωとなり、このとき、電力の変換効率は式(27)により、95.3%と求めることができる。以後この電力の変換効率を用いて、電磁誘導加熱方式の定着装置の性能を評価する。
(3−6)「円筒体外部磁束の比率」に求められる条件
本実施例の定着装置においては、静磁界において円筒体外部を通る磁束の比率と、交番磁界において励磁コイルに投入した電力が円筒回転体に伝達される電力の変換効率(電力の変換効率)とは、相関がある。円筒体外部を通る磁束の比率が増加するほど電力の変換効率は高くなる。その理由は、トランスの場合に、漏れ磁束が十分少なく、トランスの1次巻線と2次巻線の中を通過する磁束の数が等しいと電力の変換効率は高くなることと同じ原理である。つまり、磁性コアの内部を通過する磁束と、円筒形回転体の外部を通過する磁束の数が近いほど、周回電流への電力の変換効率は高くなる。これは、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束(磁性コアの内部を通過する磁束と向きが反対の磁束)が、円筒形回転体の中空部を通過し磁性コアの内部を通過する磁束をキャンセルする割合が少ないということである。つまり、図11(b)の磁気等価回路に示すように、磁性コアの長手方向の一端から出て他端に戻る磁束が円筒形回転体の外(円筒体外空気)を通過するということある。故に本実施例の骨子は、円筒体外部磁束の比率を高くすることによって、励磁コイルに流した高周波電流を円筒形回転体内部の周回電流として効率よく誘導することである。具体的にはフィルムガイド、円筒体内空気、円筒体を通る磁束を減らすことである。
図21は、電力の変換効率の測定実験に用いる実験装置の図である。金属シート1Sは、面積230mm×600mm、厚み20μmのアルミニウムシートであり、磁性コア2と励磁コイル3を囲むように円筒上に丸め、太線1ST部分において導通することによって円筒形回転体と同じ導電経路を形成している。磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、断面積26mm、長さB=230mmの円柱形状をしている。磁性コア2は不図示の固定手段でアルミニウムシート1Sの円筒のほぼ中央に配置させており、長さB=230mmの円筒の中空部を貫通して、円筒の内部に磁路を形成する。励磁コイル3は円筒の中空部において、磁性コア2に巻数25回で螺旋状に巻き回して形成される。
ここで、金属シート1Sの端部を矢印1SZ方向に引くと、円筒の直径1SDを小さくできる。この実験装置を用いて、円筒の直径1SDを191mmから18mmまで変化させながら、電力の変換効率を測定した。なお、1SD=191mmのときの円筒体外部磁束の比率の計算結果を下記の表1に示し、1SD=18mmのときの円筒体外部磁束の比率の計算結果を下記の表2に示す。
電力の変換効率の測定は、まず、円筒形回転体の無い状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rを測定する。その次に、円筒形回転体の中空部に磁性コアを挿入した状態において巻線両端からの直列等価抵抗Rxを測定し、式(27)に従って電力の変換効率を測定する。図22は、円筒の直径に対応する円筒体外部磁束の比率[%]を横軸にとり、21kHzの周波数における電力の変換効率を縦軸にとったものである。プロットは、グラフ中のP1以降に電力の変換効率が急上昇して70%を超え、矢印で示す領域R1の範囲で電力の変換効率70%以上を維持している。P3付近において電力の変換効率は再度急上昇し、領域R2において80%以上となっている。P4以降の領域R3においては電力の変換効率が94%以上と高い値を維持している。この、電力の変換効率が急上昇し始めたことは、円筒体の内部に効率的に周回電流が流れ始めるようになったことに起因する。
電磁誘導加熱方式の定着装置を設計する上で、この電力の変換効率は極めて重要なパラメータである。例えば電力の変換効率80%であった場合、残り20%の電力は、円筒形回転体以外の箇所に熱エネルギーとして発生する。発生する箇所は、主に励磁コイル、磁性コア、円筒形回転体内部に磁性体などの部材を配置した場合はその部材に発生する。つまり電力の変換効率が低ければ、励磁コイルや磁性コアに発生する熱のための対策を講じなければならない。そしてその対策の程度は、発明者らの検討によると、電力の変換効率70%、80%を境界として大きく変化する。したがって、領域R1、R2、R3の構成において、定着装置としての構成が大きく異なる。設計条件R1、R2、R3の3種類と、いずれにも属さない定着装置の構成について説明する。以下に定着装置を設計する上で、必要な電力の変換効率について詳細を説明する。
下記の表3は、図22のP1〜P4に該当する構成を、実際に定着装置として設計し、評価した結果である。
(定着装置P1)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体(導電層)の直径が143.2mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は54.4%であった。電力の変換効率は定着装置に投入した電力のうち、円筒(導電層)の発熱に寄与した分を示すパラメータである。したがって、最大1000W出力可能な定着装置として設計しても約450Wが損失となってしまい、その損失はコイルおよび磁性コアの発熱となる。本構成の場合、立ち上げ時、数秒間1000Wを投入しただけでも、コイル温度は200℃を超える場合がある。コイルの絶縁体の耐熱温度が200℃後半であること、フェライトの磁性コアのキュリー点は通常200℃〜250℃程度であることを考えると、損失45%では励磁コイルなどの部材を耐熱温度以下に保つことは難しくなる。また、磁性コアの温度がキュリー点を超えるとコイルのインダクタンスが急激に低下し、負荷変動となる。
定着装置に供給した電力の約45%が無駄になるので、円筒体に900W(1000Wの90%を想定)の電力を供給するためには約1636Wの電力供給する必要がある。これは100V入力時、16.36Aを消費する電源ということになる。商用交流のアタッチメントプラグから投入できる許容電流は15Aという制限がある場合、許容電流をオーバーする可能性がある。よって、円筒体外部磁束の比率64%、電力の変換効率54.4%の定着装置P1は、定着装置に供給する電力が不足する可能性がある。
(定着装置P2)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が127.3mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は70.8%であった。このとき、定着装置の印字動作によっては、励磁コイルなどに定常的に大きな熱量が発生し、励磁コイルユニット、特に磁性コアの昇温が課題となる場合がある。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒形回転体の回転速度は330mm/secとなる。よって、円筒形回転体の表面温度を180℃に維持するケースがある。そうすると、磁性コアの温度は20秒間で240℃を超え、円筒体(導電層)の温度より高くなる場合が考えられる。磁性コアとして用いるフェライトのキュリー温度は通常200℃〜250℃程度であり、フェライトがキュリー温度を超えた場合、透磁率は急激に減少する。透磁率が急激に減少すると、磁性コアの中に磁路を形成することができない。磁路を形成することができなくなると、本実施例においては、周回電流を誘導して発熱することが難しくなる場合がある。
したがって、設計条件R1の定着装置を、前述した高スペックの装置にすると、フェライトコアの温度を下げるために冷却手段を設けることが望ましい。冷却手段としては、空冷ファン、水冷、放熱板、放熱フィン、ヒートパイプ、または、ベルチェ素子などを用いることができる。もちろん、本構成においてそこまでの高スペックを要求しない場合は、冷却手段は不要である。
(定着装置P3)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が63.7mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は83.9%であった。このとき、励磁コイルなどには定常的に熱量が発生したものの、熱伝達と自然冷却で放熱できる熱量を大きく上回ることはなかった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなる。したがって、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースであっても、フェライトの磁性コアの温度は220℃以上に上昇することはなかった。そのため本構成においては、定着装置を前述した高スペックする場合、キュリー温度220℃以上のフェライトを用いることが望ましい。設計条件R2の構成の定着装置を高スペックな定着装置として使用する場合は、フェライトなどの耐熱設計を最適化することが望ましい。本構成に、前述した高スペックを要求しない場合は、そこまでの耐熱設計は不要である。
(定着装置P4)
本構成は、磁性コアの断面積が5.75mm×4.5mmであり、円筒体の直径が47.7mmの場合である。このとき、インピーダンスアナライザによって求められる電力の変換効率は94.7%であった。本構成の定着装置を60枚/分の印字動作ができる高スペックな装置にすると、円筒体の回転速度は330mm/secとなり、円筒体の表面温度を180℃に維持するケースにおいて励磁コイルなどは、180℃以上に上昇することはなかった。これは、励磁コイルがほとんど発熱しないことを示す。円筒体外部磁束の比率94.7%、電力の変換効率94.7%(設計条件R3)は、電力の変換効率が十分高いため、さらなる高スペックの定着装置として用いても、冷却手段は必要ない。
また、電力の変換効率が高い値で安定しているこの領域においては、円筒形回転体と磁性コアの位置関係が変動しても、電力の変換効率が変動しない。電力の変換効率が変動しない場合、円筒形回転体から常に安定した熱量を供給することができる。よって、可撓性を有する定着フィルムを用いる定着装置において、この電力の変換効率が変動しない領域R3を用いることは、大きなメリットがある。
以上、円筒形回転体に対してその軸方向に磁界を発生させ、円筒形回転体を電磁誘導発熱させる定着装置において、円筒体外部磁束の比率に求められる設計条件は、図22中矢印R1、R2、R3に領域分けすることができる。
R1:円筒体外部磁束の比率70%以上90%未満
R2:円筒体外部磁束の比率90%以上94%未満
R3:円筒体外部磁束の比率94%以上
(3−7)「周回電流」による発熱の特徴
(3−4)で説明した「周回電流」は、図6の回路S内に生じる誘導起電力によって生じるものである。そのため、回路Sに内包する磁束と、回路Sの抵抗値に依存する。後述する「渦電流E//」とは異なり、材料内部の磁束密度とは関係しない。そのため、磁路とならない薄い磁性金属製の円筒形回転体でも、非磁性金属製の円筒回転体でも高い効率で発熱することが可能である。また、抵抗値が大きく変わらない範囲においては、材料の厚みにも依存しない。図16(a)は、厚さ20μmのアルミニウムの円筒形回転体における電力の変換効率の周波数依存性である。20kHz〜100kHzの周波数帯域において、電力の変換効率は90%以上を維持している。特に、21〜40kHzの周波数帯域を発熱に利用する場合において、高い電力の変換効率を持っている。次に図16(b)は、同形状の円筒形回転体における、周波数21kHzでの電力の変換効率の厚み依存性である。黒丸−実線はニッケル、白丸−点線はアルミニウムの実験結果を示している。両者は厚み20μm〜300μmの領域において、電力の変換効率は90%以上を維持しており、両者とも厚みに寄らず、定着装置用発熱材料として使用可能である。
よって、「周回電流による発熱」は、従来の渦電流損による発熱より、円筒形回転体の材質や厚み、そして、交流電流の周波数に対する設計自由度を広げることができる。
なお、磁性コアの長手方向の一端を出た磁束のうち円筒形回転体の外部を通って磁性コアの他端に戻る割合が70%以上であることが本定着装置の特徴である。磁性コアの長手方向の一端を出た磁束のうち円筒形回転体の外部を通って磁性コアの他端に戻る割合が70%以上である。このことは、円筒体のパーミアンスと円筒体内部(円筒体と磁性コアの間の領域)のパーミアンスとの和が磁性コアのパーミアンスの30%以下であることと等価である。したがって、本発明の特徴的な構成の1つは、磁性コアのパーミアンスをPc、円筒体内部のパーミアンスをPa、円筒体のパーミアンスPsとしたときに、0.30×Pc≧Ps+Paの関係を満足する構成である。
また、パーミアンスの関係式を磁気抵抗に置き換えて表現すると下記のようになる。
・・・(28)
ただし、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように計算する。
・・・(29)
Rc:磁性コアの磁気抵抗
Rs:導電層の磁気抵抗
Ra:導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗
Rsa:RsとRaの合成磁気抵抗
上記の関係式を、定着装置の記録材の最大搬送領域全域で、円筒形回転体の母線方向に直交する方向の断面において満足するのが望ましい。
この合成磁気抵抗の値が低いほど、(1)式によって誘起される誘導電流による発熱の割合は高くなり、合成磁気抵抗が0%の構成では、ほぼ100%、(1)式の周回電流による発熱が起きていることになる。よって、合成磁気抵抗の値が低ければ低いほど、先述したメリット(1)および(2)を発揮させることができる。
トナーとしては、未定着トナー画像が加熱回転体を通過する際に、トナーの軟化とともに離型剤が速やかに加熱回転体とトナーとの界面に移動することが求められる。しかし、低温定着時は離型剤が溶けづらく、十分量の離型剤が加熱回転体とトナーとの界面に移動することが困難となり、オフセットが生じる。そこで本発明者らは、樹脂微粒子を固着させたトナーを用い、面内の加熱が均一である定着装置と組み合わせると、低温側定着時の離型剤の界面への速やかな移動を促し、耐低温オフセット性の向上につながることを見出した。
本発明において、樹脂微粒子を固着させたトナーを用いた場合、低温側定着でオフセットが生じにくくなる理由は、明らかではない。本発明者らは、毛細管現象のように溶融した離型剤がトナー間を浸透することで効果を発現しているのではないかと考えている。また、その際、トナー母粒子に固着される樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg2)がトナー母粒子のガラス転移温度(Tg1)よりも高いことが重要であることがわかった。それは、トナーの溶融時に表面の樹脂微粒子部分が母粒子よりも硬いことで、溶融時においてもトナー間に毛細管状の経路ができやすいのではないかと考えている。
また、本発明のような均一加熱の効果のある定着装置を用いると、記録材面内で偏りなくトナーが軟化するので、離型剤の染み出しも一様に均一に生じる。したがって、加熱回転体とトナーとの界面に離型剤量がムラなく十分量存在し、樹脂微粒子がない場合よりも耐オフセット性が高まる。
本発明に用いられる耐オフセット性を向上させたトナーを得るための具体的方法を以下に記述するが、本発明は、これに限定されるものではない。
まず、本発明で用いることができる母粒子の製造方法について以下に述べる。
本発明の母粒子を作製する手段としては公知の方法を用いることが可能である。具体的には、例えば、混練粉砕法、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法を挙げることができる。また、本発明の効果をより好適に発現させるためには水系媒体中でトナーを作製する、懸濁重合法、溶解懸濁法、乳化凝集法が挙げられるが、これらの中でも、懸濁重合法がより好ましい。
以下に、懸濁重合法による母粒子の作製方法について具体的に説明する。
重合性単量体、着色剤および離型剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物の粒子を形成(造粒)する。そして、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合させてトナー母粒子を得る。
具体的な製法を説明すると、まず、母粒子の主構成材料となる重合性単量体に着色剤と離型剤を加え、ホモジナイザー、ボールミル、コロイドミル、超音波分散機のような分散機を用いてこれらを均一に溶解あるいは分散させた重合性単量体組成物を調製する。このとき、上記重合性単量体組成物中には、必要に応じて多官能性単量体や連鎖移動剤、また荷電制御剤や可塑剤、さらに他の添加剤(例えば、顔料分散剤や離型剤分散剤)を適宜加えることができる。次いで、上記重合性単量体組成物を、あらかじめ用意しておいた分散安定剤を含有する水系媒体中に投入し、高速攪拌機もしくは超音波分散機のような高速分散機を用いて懸濁させ、造粒を行う。重合開始剤は、重合性単量体組成物を調製する際に他の添加剤とともに混合してもよく、水系媒体中に懸濁させる直前に重合性単量体組成物中に混合してもよい。また、造粒中や造粒完了後、すなわち重合反応を開始する直前に、必要に応じて重合性単量体や他の溶媒に溶解した状態で加えることもできる。重合反応は、造粒後の懸濁液を温度50以上90℃以下に加熱し、懸濁液中の重合性単量体組成物の粒子が粒子状態を維持し、かつ粒子の浮遊や沈降が生じることがないよう、撹拌しながら行う。
上記重合開始剤は、加熱によって容易に分解し、遊離基(ラジカル)を生成する。生成したラジカルは重合性単量体の不飽和結合に付加し、付加体のラジカルを新たに生成する。そして、生成した付加体のラジカルはさらに重合性単量体の不飽和結合に付加する。このような付加反応を連鎖的に繰り返すことによって重合反応が進行し、前記重合性単量体に由来する結着樹脂を主構成材料とする母粒子が形成される。
重合反応の後半あるいは重合反応終了後に、減圧や昇温のような公知の方法を用いて蒸留を行ってもよい。蒸留工程を行うことで、残存する未反応の重合性単量体を除去することができる。
次に、本発明におけるトナーの製造方法において用いることができる材料を説明する。
本発明のトナーを重合法で製造する際に用いられる重合性単量体としては、以下のものが挙げられる。
例えば、スチレン、α−メチルスチレン、o−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−エチルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、p−n−ブチルスチレン、p−tert−ブチルスチレン、p−n−ヘキシルスチレン、p−n−オクチル、p−n−ノニルスチレン、p−n−デシルスチレン、p−n−ドデシルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン系単量体や、アクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸n−ブチル、アクリル酸イソブチル、アクリル酸n−プロピル、アクリル酸n−オクチル、アクリル酸ドデシル、アクリル酸2−エチルヘキシル、アクリル酸ステアリル、アクリル酸2−クロルエチル、アクリル酸フェニル、アクリル酸−2−ヒドロキシエチルのようなアクリル酸エステル類、メタクリル酸メチル、メタクリル酸エチル、メタクリル酸n−プロピル、メタクリル酸n−ブチル、メタクリル酸イソブチル、メタクリル酸n−オクチル、メタクリル酸ドデシル、メタクリル酸2−エチルヘキシル、メタクリル酸ステアリル、メタクリル酸フェニル、メタクリル酸−2−ヒドロキシエチル、メタクリル酸ジメチルアミノエチル、メタクリル酸ジエチルアミノエチルのようなメタクリル酸エステル類、その他、アクリロニトリル、メタクリロニトリル、アクリルアミドが挙げられる。
これらの重合性単量体の中でも、スチレン系単量体(スチレンまたはスチレン誘導体)とスチレン系単量体以外の重合性単量体とを混合して使用することが、トナーの現像特性および耐久性の点から好ましい。そして、これら重合性単量体の混合比率は、所望する重合体微粒子のTgを考慮して、適宜選択すればよい。
上記重合体微粒子の製造において使用する重合開始剤としては、過酸化物系重合開始剤、アゾ系重合開始剤など様々なものが使用できる。使用できる過酸化物系重合開始剤としては、有機系としては、パーオキシエステル、パーオキシジカーボネート、ジアルキルパーオキサイド、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド、ハイドロパーオキサイド、ジアシルパーオキサイドが挙げられる。無機系としては、過硫酸塩、過酸化水素などが挙げられる。具体的には、t−ブチルパーオキシアセテート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ヘキシルパーオキシアセテート、t−ヘキシルパーオキシピバレート、t−ヘキシルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキシルモノカーボネートなどのパーオキシエステル;ベンゾイルパーオキサイドなどのジアシルパーオキサイド;ジイソプロピルパーオキシジカーボネートなどのパーオキシジカーボネート;1,1−ジ−t−ヘキシルパーオキシシクロヘキサンなどのパーオキシケタール;ジ−t−ブチルパーオキサイドなどのジアルキルパーオキサイド;その他としてt−ブチルパーオキシアリルモノカーボネートなどが挙げられる。また、使用できるアゾ系重合開始剤としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリル、ジメチル−2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)などが例示される。
なお、必要に応じてこれら重合開始剤を2種以上同時に用いることもできる。この際使用される重合開始剤の使用量は、重合性単量体100質量部に対し0.100質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。
本発明のトナーは、磁性トナーとして用いることも可能であり、その場合には、以下に挙げられる磁性体が用いられる。マグネタイト、マグヘマイト、フェライトのような酸化鉄、または他の金属酸化物を含む酸化鉄;Fe、Co、Niのような金属、あるいは、これらの金属とAl、Co、Cu、Pb、Mg、Ni、Sn、Zn、Sb、Ca、Mn、Se、Tiのような金属との合金、およびこれらの混合物。四三酸化鉄(Fe)、三二酸化鉄(γ−Fe)、酸化鉄亜鉛(ZnFe)、酸化鉄銅(CuFe)、酸化鉄ネオジウム(NdFe)、酸化鉄バリウム(BaFe1219)、酸化鉄マグネシウム(MgFe)、酸化鉄マンガン(MnFe)。上述した磁性材料を単独であるいは2種類以上を組合せて使用する。特に好適な磁性材料は、四三酸化鉄またはγ−三二酸化鉄の微粉末である。
これらの磁性体は、平均粒径が0.1μm以上2μm以下であることが好ましく、0.1μm以上0.3μm以下であることがさらに好ましい。795.8kA/m(10Kエルステッド)印加での磁気特性は、抗磁力(Hc)が1.6kA/m以上12kA/m以下(20エルステッド以上150エルステッド以下)、飽和磁化(σs)が5Am/kg以上200Am/kg以下である。好ましくは50Am/kg以上100Am/kg以下である。残留磁化(σr)は、2Am/kg以上20Am/kg以下のものが好ましい。
重合性単量体100.0質量部に対して、磁性体10.0質量部以上200.0質量部以下、好ましくは20.0質量部以上150.0質量部以下使用するのが良い。
発明のトナーにおいて使用される着色剤としては、従来から知られている種々の染料や顔料など、公知の着色剤を用いることができる。
イエロー用着色顔料としては、C.I.ピグメントイエロー1、3、12、13、14、17、55、74、83、93、94、95、97、98、109、110、154、155、166、180、185が挙げられる。
マゼンタ用着色顔料としては、C.I.ピグメントレッド3、5、17、22、23、38、41、112、122、123、146、149、178、179、190、202、C.I.ピグメントバイオレット19、23が挙げられる。かかる顔料を単独で使用しても、染料と顔料を併用してもよい。
シアン用着色顔料としては、C.I.ピグメントブルー15、15:1、15:3またはフタロシアニン骨格にフタルイミドメチル基を1以上5個以下置換した銅フタロシアニン顔料が挙げられる。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、アニリンブラック、アセチレンブラック、チタンブラックおよび上記に示すイエロー/マゼンタ/シアン着色剤を用い、黒色に調色されたものが利用できる。
また、本発明のトナーは離型剤を含有してもよい。離型剤としては、低分子量ポリエチレン、低分子量ポリプロピレン、マイクロクリスタリンワックス、パラフィンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックス;酸化ポリエチレンワックスのような脂肪族炭化水素系ワックスの酸化物;脂肪族炭化水素系ワックスのブロック共重合物;カルナバワックス、サゾールワックス、モンタン酸エステルワックスのような脂肪酸エステルを主成分とするワックス;および脱酸カルナバワックスのような脂肪酸エステルを一部または全部を脱酸化したもの、ベヘニン酸モノグリセリドのような脂肪酸と多価アルコールの部分エステル化物;植物性油脂を水素添加することによって得られるヒドロキシ基を有するメチルエステル化合物が挙げられる。カルナバワックスは、カルナウバワックスとも呼ばれる。
離型剤の分子量分布としては、メインピークが分子量400以上2400以下の領域にあることが好ましく、430以上2000以下の領域にあることがより好ましい。これによって、トナーに好ましい熱特性を付与することができる。離型剤の添加量は、重合性単量体100.0質量部に対して総量で2.5質量部以上40.0質量部以下であることが好ましく、3.0質量部以上15.0質量部以下であることがより好ましい。
また、上記母粒子の製造においては、分子量の調整を目的として、連鎖移動剤を使用することができる。具体例としては、n−ペンチルメルカプタン、イソペンチルメルカプタン、2−メチルブチルメルカプタン、n−ヘキシルメルカプタン、n−ヘプチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、t−オクチルメルカプタン、t−ノニルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン、t−ドデシルメルカプタン、n−テトラデシルメルカプタン、t−テトラデシルメルカプタン、n−ペンタデシルメルカプタン、n−ヘキサデシルメルカプタン、t−ヘキサデシルメルカプタン、ステアリルメルカプタンのようなアルキルメルカプタン類、チオグリコール酸のアルキルエステル類、メルカプトプロピオン酸のアルキルエステル類、クロロホルム、四塩化炭素、臭化エチレン、四臭化炭素のようなハロゲン化炭化水素類、α−メチルスチレンダイマーが挙げられる。
これらの連鎖移動剤は必ずしも使用する必要はないが、使用する場合の好ましい添加量としては、重合性単量体100.0質量部に対して0.05〜3.0質量部である。
また、本発明においては、上述した重合性単量体組成物中に樹脂を添加して重合を行ってもよい。また、その樹脂は非晶性あるいは結晶性樹脂でもよく、併用してもよい。例えば、ポリエステル樹脂はエステル結合を数多く含む、比較的極性の高い樹脂である。このポリエステル樹脂を重合性単量体組成物中に溶解させて重合を行った場合、水系媒体中では樹脂が液滴の表面層に移行する傾向を示し、重合の進行とともに粒子の表面部に偏在しやすくなるため、造粒性が向上し、前述した離型剤の内包化が容易となる。
前記ポリエステル樹脂には、構成成分としてアルコール成分と酸成分を含有する、通常のものを使用することができる。
アルコール成分の具体例としては、例えば2価のアルコールとして、エチレングリコール、1,2−プロピレングリコール、1,3−プロピレングリコール、1,4−ブタンジオール、1,3−ブタンジオール、2,3−ブタンジオール、ジエチレングリコール、ジプロピレングリコール、トリエチレングリコール、1,5−ペンタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、1,4−シクロヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,2,4−トリメチルペンタン−1,3−ジオール、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコール、ビスフェノールA、水素添加ビスフェノールA、または下記一般式(I)で表されるビスフェノール誘導体、また、下記式(II)で示されるジオール類を挙げることができる。
(式(I)中、Rは、エチレンまたはプロピレン基であり、xおよびyは、それぞれ、1以上の整数であり、かつ、x+yの平均値は2〜10である。)
(式(II)中、R’は、−CHCH−、−CHCH(CH)−、または、−CH−C(CH−である。)
また、3価以上のアルコールとして、ソルビトール、1,2,3,6−ヘキサンテトロール、1,4−ソルビタン、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトール、トリペンタエリスリトール、1,2,4−ブタントリオール、1,2,5−ペンタントリオール、グリセロール、2−メチルプロパントリオール、2−メチル−1,2,4−ブタントリオール、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、1,3,5−トリヒドロキシメチルベンゼンが挙げられる。
これらのアルコール成分は、単独で使用してもよいし、混合状態で使用してもよい。
酸成分の具体例としては、例えば2価のカルボン酸として、ナフタレンジカルボン酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、マレイン酸、フマル酸、シトラコン酸、イタコン酸、コハク酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸のようなジカルボン酸;無水フタル酸、無水マレイン酸のようなジカルボン酸無水物およびテレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチルのようなジカルボン酸の低級アルキルエステルを挙げることができる。特に、テレフタル酸ジメチル、マレイン酸ジメチル、アジピン酸ジメチルのようなジカルボン酸の低級アルキルエステルまたはその誘導体が好適である。
また、3価以上のカルボン酸を用いることにより、架橋させてもよい。架橋成分としては、トリメリット酸、1,2,4−トリカルボン酸トリn−エチル、1,2,4−トリカルボン酸トリn−ブチル、1,2,4−トリカルボン酸トリn−ヘキシル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリイソブチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリn−オクチル、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸トリ2−エチルヘキシルおよびトリカルボン酸の低級アルキルエステルが使用できる。
また、ポリエステル樹脂の特性を損なわない程度に、1価のカルボン酸成分や1価のアルコ−ル成分を用いてもよい。例えば1価のカルボン酸成分として、安息香酸、ナフタレンカルボン酸、サリチル酸、4−メチル安息香酸、3−メチル安息香酸、フェノキシ酢酸、ビフェニルカルボン酸、酢酸、プロピオン酸、酪酸、オクタン酸、デカン酸、ドデカン酸、ステアリン酸を添加することができる。また、1価のアルコ−ル成分として、n−ブタノール、イソブタノール、sec−ブタノール、n−ヘキサノール、n−オクタノール、ラウリルアルコール、2−エチルヘキサノール、デカノール、シクロヘキサノール、ベンジルアルコール、ドデシルアルコールを添加することができる。
樹脂の添加量としては、重合性単量体100.0質量部に対して1.0〜20.0質量部の範囲であることが好ましい。1.0質量部未満では添加効果が小さく、20.0質量部を超えて添加するとトナーの種々の物性設計が難しくなる。
また、本発明のトナーは、荷電特性の安定化を目的として、必要に応じて荷電制御剤を含有させることができる。含有させる方法としては、トナー粒子内部に添加する方法と外添する方法がある。荷電制御剤としては公知のものを利用することができるが、内部に添加する場合には重合阻害性が低く、水系分散媒体への可溶化物を実質的に含まない荷電制御剤が特に好ましい。具体的な化合物としては、ネガ系荷電制御剤として、サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸のような芳香族カルボン酸の金属化合物が挙げられる。また、アゾ染料あるいはアゾ顔料の金属塩または金属錯体、スルホン酸またはカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物、ホウ素化合物、尿素化合物、ケイ素化合物、カリックスアレーンも挙げられる。また、ポジ系荷電制御剤として、四級アンモニウム塩、該四級アンモニウム塩を側鎖に有する高分子型化合物、グアニジン化合物、ニグロシン系化合物、イミダゾール化合物が挙げられる。
これらの電荷制御剤の使用量としては、結着樹脂の種類、他の添加剤の有無、分散方法を含めたトナー製造方法によって決定されるもので、一義的に限定されるものではない。内部添加する場合は、好ましくは重合性単量体100.0質量部に対して0.1〜10.0質量部、より好ましくは0.1〜5.0部の範囲で用いられる。また、外部添加する場合は、好ましくはトナー100.0質量部に対して0.005〜1.0質量部、より好ましくは0.01〜0.3質量である。
そして、本発明のトナーには、流動性向上剤が外部添加されていることが画質向上のために好ましい。流動性向上剤としては、ケイ酸微粒子、酸化チタン、酸化アルミニウムのような無機微粒子が好適に用いられる。これら無機微粒子は、シランカップリング剤、シリコーンオイルまたはそれらの混合物のような疎水化剤で疎水化処理されていることが好ましい。上述のような外添剤は、トナー粒子100.0部に対して0.1以上5.0部以下で使用するのが好ましく、0.1以上3.0質量部以下で使用するのがより好ましい。
次に、樹脂微粒子の製造方法について以下に述べる。
樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg2)は、50.0℃以上120.0℃以下であることが好ましく、60.0℃以上120.0℃以下であることがより好ましい。50.0℃以上であることで、好ましくは60.0℃以上であることで、被覆層形成時におけるトナー粒子同士の合一を抑えることが容易になり、より製造安定性が向上する。また、120.0℃以下であることで、母粒子と樹脂微粒子の密着性をより高めることが可能であり、トナーとしての耐久性がより優れたものとなる。樹脂微粒子を構成する樹脂のTgは、主に樹脂に用いられる単量体の種類、比率によって制御することが可能である。
樹脂微粒子を構成する樹脂の材質としては、トナーの結着樹脂として使用し得るものであればよく、ビニル系樹脂、ポリエステル樹脂、エポキシ樹脂、ウレタン樹脂などが用いられる。中でもポリエステル樹脂は、シャープメルト性や母粒子に用いられる重合性単量体への溶解性の観点から好ましいと考えられる。また、上記した樹脂を複数併用したものや、結晶化されたもの、ハイブリッド化させたものも用いることができる。さらに、樹脂の一部が変性されたものでもよく、帯電などの機能を持たせた樹脂を使用してもよい。
また、樹脂微粒子を構成する樹脂には、樹脂微粒子の水分散安定性や、トナーの帯電性の観点から、親水性官能基を含有させるのが好ましい。該親水性官能基としては、所望のトナー極性によって適宜選択すればよいが、本発明においては、トナーの製造安定性の観点からカルボキシル基および/またはスルホン酸基が好ましい。このときの酸価は、樹脂微粒子の分散安定性や、トナーの帯電安定性の観点から5.0mgKOH/g以上50.0mgKOH/g以下であることが好ましい。5.0mgKOH/g未満であると、分散安定剤への付着力が不足し、被覆率が落ちるため、耐熱性の悪化が懸念される。また、50.0mgKOH/gを超えると、特に高湿環境下におけるトナーの帯電量変化が起こり、帯電性の環境差が懸念されるためである。
上記樹脂微粒子を構成する樹脂に含有される親水性官能基の種類や酸価は、樹脂微粒子を構成する樹脂に、親水性官能基を含有する単量体や、その他の構成材料を使用することで制御することが可能である。
また、本発明において、前記樹脂微粒子はいかなる方法で製造されたものであってもよく、乳化重合法やソープフリー乳化重合法、転相乳化法のような公知の方法によって製造されたものを用いることができる。これらの製法の中でも、転相乳化法は、乳化剤や分散安定剤を必要とせず、より小粒径の樹脂微粒子が容易に得られるため、特に好適である。
転相乳化法では、自己分散性を有する樹脂、あるいは中和によって自己分散性を発現し得る樹脂を使用する。ここで、自己水分散性有する樹脂とは、水系媒体中で自己分散が可能な官能基を分子内に含有する樹脂であって、具体的にはカルボキシル基、スルホン酸基、リン酸基、もしくはこれらの塩を含有する樹脂である。また、中和によって自己分散性が発現し得る樹脂とは、中和によって親水性が増大し、水系媒体中での自己分散が可能となり得る官能基を、分子内に含有する樹脂である。
これらの樹脂を有機溶剤に溶解し、必要に応じて中和剤を加え、撹拌しながら水系媒体と混合すると、前記樹脂の溶解液が転相乳化を起こして微小な粒子を生成する。該有機溶剤は、転相乳化後に加熱、減圧のような方法を用いて除去する。
このように、転相乳化法によれば、実質的に乳化剤や分散安定剤を用いることなく、安定した樹脂微粒子の水系分散体を得ることができる。
また、自己分散性を有する樹脂、あるいは中和によって自己分散性を発現し得る樹脂を有機溶剤に溶解する工程において、界面活性剤を添加し、転相乳化を行う方法も好ましい。転相乳化時に界面活性剤を添加しておくと、前述の微粒子固着工程での凝集を抑制する効果が高まり、さらに製造安定性が高まる効果を発揮する。添加する界面活性剤は、特に限定されるものではないが、例えば、硫酸エステル塩系、スルホン酸塩系、リン酸エステル系、せっけん系などのアニオン界面活性剤;アミン塩型、4級アンモニウム塩型などのカチオン界面活性剤;ポリエチレングリコール系、アルキルフェノールエチレンオキサイド付加物系、多価アルコール系などのノニオン界面活性剤などが挙げられる。これらの中でもノニオン界面活性剤および/またはアニオン界面活性剤が好ましい。ノニオン界面活性剤は、アニオン界面活性剤と併用してもよい。界面活性剤は、1種単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。界面活性剤は、自己分散性を有する樹脂100.0質量部に対し、0.5部以上10.0質量部以下添加することが、良好な凝集抑制効果と帯電性能のバランスが取れるため好ましい。
本発明において、母粒子に樹脂微粒子を固着させる方法としては公知のものが利用可能である。
例えば、母粒子と樹脂微粒子を混合して機械的応力を加える方法がある。また、母粒子を含む水系媒体中に樹脂微粒子を添加し固着させる方法がある。その際、必要に応じて樹脂微粒子添加量、温度、pH、時間の制御や、電解質の凝集剤添加の条件を変化させることにより任意の固着状態が得られる。本発明の効果をより好適に発現させるためには水系媒体中で固着させることが好ましい。
本発明において、母粒子表面に樹脂微粒子を、均一に固着させるためには以下に示す構成が重要である。
すなわち、トナー母粒子の表面の固着均一性を得るためには、樹脂微粒子の粒子径が、10〜150nmであることが好ましい。樹脂微粒子の粒子径の測定方法は後述する。樹脂微粒子粒径は小さいほど膜均一性が得られやすくなるが、10nm未満では個々の微粒子に組成分布が生じやすく、母粒子の固着工程において収率の低下が生じる場合があり好ましくない。また、粒子径が150nmより大きい場合には固着後のトナーの表面に凹凸ができる場合があり、それら微粒子の遊離による画像特性の低下が生じる場合がある。上記粒子径は、好ましくは30〜120nmであり、より好ましくは40〜80nmである。
上記樹脂微粒子粒子径は、微粒子作製時の造粒条件を調整することで上記範囲を満たすことが可能である。具体的には、水系媒体中の固液比や、水系媒体のpHや撹拌速度などを挙げることができる。
本発明において樹脂微粒子の固着量はトナー母粒子100.0質量部に対して、樹脂微粒子0.1質量部以上5.0質量部以下であることが好ましい。固着量が0.1質量部未満の場合には、低温定着時において、離型剤の界面への移動が不十分なため低温オフセットを生じやすくなる。また、固着量が、5.0質量部より多い場合には、離型剤の染み出しは十分に起こるので低温オフセット抑制の効果はあるが、母粒子の被覆度合が過剰になるにつれて、定着阻害の弊害が大きくなる場合がある。
以下に樹脂微粒子固着の方法を詳細に述べる。
樹脂微粒子固着工程は、前記母粒子分散液を撹拌しながら、前記分散安定剤に対する極性が前記母粒子と同じである樹脂微粒子を水系媒体に分散させた状態で、樹脂微粒子を添加する。このようにして表面に前記分散安定剤を吸着した状態の重合体微粒子に、前記樹脂微粒子を緻密かつ均一に付着させることが可能となる。その後、樹脂微粒子のTg以上の温度で加熱処理し、重合体微粒子と分散安定剤との間に樹脂微粒子が入り込むことによる母粒子と樹脂微粒子との密着性と、樹脂微粒子層の平滑化による隣接する樹脂微粒子同士の密着性を高めることにより固着させる。さらに、分散液の温度を、前記母粒子のTgから前記樹脂微粒子のTgまでの温度範囲内に保ちながら、これに酸をゆっくり添加して前記分散安定剤を徐々に溶解させる。このようにして分散安定剤が取り除かれると、それと同時に樹脂微粒子が芯粒子の表面と接触し、均一な状態を維持したまま固定化(固着)される。したがって、母粒子と樹脂微粒子との密着性を高めることにより、より強固な固着が可能となる。この密着性を十分高めることで、良好な耐久性が実現可能となる。上記の酸添加後には、この分散液にアルカリを添加して該無機分散剤が再析出するpH領域に調整し、次いで、前記樹脂微粒子のTg以上で加熱することがより好ましい。pHを調整して無機分散剤を再析出させることにより、樹脂微粒子が固着した粒子の表面が無機分散剤で被覆されるため、樹脂微粒子のTg以上に加熱しても粒子同士の凝集を抑制することができる。そして、これにより樹脂微粒子による外殻は平滑化され、より均一かつ緻密な層となる。
微粒子固着工程の後は、前記樹脂微粒子のTgよりも低い温度で前記分散安定剤を除去する。分散安定剤は樹脂微粒子のTgよりも高い温度で加熱した場合に、重合体微粒子と樹脂微粒子の過度の相溶を抑制する働きもある。そのため、Tgよりも高い温度で分散安定剤を除去すると、過剰に相溶が進行し、製造安定性が悪化し、場合によっては著しい合一が生じる恐れがある。このようにして、分散安定剤を除去した後、公知の方法でろ過、洗浄、乾燥してトナー粒子を得る。
結着樹脂、離型剤およびトナーなどに係る物性の測定方法は以下に示す通りである。後述の実施例においてもこれらの方法に基づいて物性値を測定している。
<ガラス転移温度>
トナーおよび樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量分析装置「Q1000」(TAInstruments社製)を用いてASTMD3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、トナー約6mgを精秤し、アルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用い、測定範囲30〜200℃の間で、昇温速度2℃/minで測定を行う。この昇温過程で、温度40℃〜100℃の範囲において比熱変化が得られる。このときの比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点を、結着樹脂のガラス転移温度Tgとする。
<樹脂微粒子の酸価>
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。ポリエステル樹脂の酸価はJISK0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順にしたがって測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95vol%)90mlに溶かし、イオン交換水を加えて100mlとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mlの水に溶かし、エチルアルコール(95vol%)を加えて1lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/l塩酸25mlを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/l塩酸は、JISK8001−1998に準じて作成されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕したポリエステル樹脂の試料2.0gを200mlの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mlを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(ml)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
<樹脂微粒子の粒径>
本発明における樹脂微粒子の粒径はゼータサイザーNano−ZS(MALVERN社製)を用いて測定する。
<測定条件>
・セル:石英ガラスセル
・Dispersant:Water(DispersantRI:1.330)
・Temperature:25℃
・MaterialRI:1.60
・ResultCalculation:GeneralPurpose
サンプルは測定対象の樹脂微粒子の水分散液を固液比が0.20〜0.30重量%となるように希釈して調整した。
以上、本発明の基本的な構成と特色について述べたが、以下実施例に基づいて具体的に本発明について説明する。しかしながら、これによって、本発明がなんら限定されるものではない。
<定着装置1>
図3は本発明の定着装置の概略断面図であり、加圧ローラー7は、例えばφ14のアルミニウムあるいは鉄製芯金の外側にシリコーンのソリッドあるいはスポンジゴムなどの厚み3mmの弾性層と、PFAなどの離型層を厚み30μmで積層している。そして、不図示の軸受け手段・付勢手段により総圧約200N〜100N(約20kgf〜約10kgf)の押圧力をもってフィルムガイド9との間に定着フィルムを挟ませて圧接させてある。そして、不図示の定着器回転制御手段は、加圧ローラー7を矢印方向に回転駆動し、5〜10mm程度の幅のニップ部Nにおける摩擦力で定着スリーブ1に回転力が作用し、従動回転状態になる。フィルムガイド9は、耐熱性樹脂PPSなどで構成されている。定着フィルム1は、直径50〜10mmの、基層となる導電性部材でできた発熱層1aと、その外面に積層した弾性層1bと、その外面に積層した離型層1cの複合構造の円筒形回転体である。また、発熱層1aは、本装置では、厚さ20μmの比透磁率1、断面積1.5×10−6、直径は24mmのアルミニウムの円筒形状部材である。弾性層1bは、硬度が20度(JIS−A、1kg加重)のシリコーンゴムを0.3mm〜0.1mm成形している。そして、弾性層1b上に表層1c(離型層)として50μm〜10μmの厚さのフッ素樹脂チューブを被覆している。円筒形状部材である定着フィルム1の内部にて、この回転軸線方向に磁性コア2が挿通されている。その磁性コア2の周囲に励磁コイル3が巻き回されている。
磁性コア2は、分割されていない一体部品で円柱形状をしている。磁性コア2は、不図示の固定手段で定着フィルム1内に配置させており、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着フィルム1内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2は、比透磁率が1800のフェライトであり、直径14mm、断面積1.5×10−4、長さB=230mmである。
フィルムガイド9は、比透磁率1のポリフェニレンサルファイド(PPS)であり、断面積1.0×10−4[m]である。詳細は表1に記載する。
定着フィルムの弾性層1b、定着フィルムの表層1cは、発熱層である円筒形回転体(導電層)1aより外側にあり、かつ発熱に寄与していない。したがって、パーミアンス(または磁気抵抗)を計算する必要はなく、本磁気回路モデルにおいては「円筒体外空気」に含めて扱うことができる。
上記寸法と比透磁率から計算した定着装置1の各構成物の「単位長さ当たりのパーミアンスと磁気抵抗」を下記の表4にまとめる。
「単位長さ当たりのパーミアンス」に関して、図11(a)の磁気等価回路図と実機上の数値の対応関係について説明する。磁性コアの単位長さ当たりのパーミアンスPcは、次のように表される。
Pc=3.5×10−7[H・m]
導電層と磁性コアとの間の領域の単位長さ当たりのパーミアンスPa_inは、フィルムガイドの単位長あたりのパーミアンスと円筒体内の空気の単位長さ当たりのパーミアンスとの合成であるから次のように表される。
Pa_in=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
導電層の単位長さ当たりのパーミアンスPcyは、表4に記載の円筒体であり、次のように表される。
Pcy=1.9×10−12[H・m]
Pa_outは、表4に記載された円筒体外空気であり、次のように表せる。
Pa_out=Pc−Pa_in−Pcy=3.5×10−7[H・m]
よって、定着装置1は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Pcy+Pa_in≦0.30×Pc
次に、パーミアンスの逆数である、磁気抵抗を用いた場合について説明する。
磁性コアの単位長さ当たりの磁気抵抗は次のようになる。
Rc=2.9×10[1/(H・m)]
導電層と磁性コアとの間の領域の磁気抵抗は、フィルムガイドの抵抗Rfと円筒体内空気の抵抗Raの合成抵抗となるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×10[1/(H・m)]となる。
Rcyに該当するのは、表4に記載の円筒体であり、Rcy=Rs=5.3×1011[1/(H・m)]となっているから、RsとRaとの合成磁気抵抗Rsaは以下の式で計算できて、Rsa=2.7×10[1/(H・m)]となる。
なお、円筒体と磁性コアの間の領域のうち空気の断面積は、直径24[mm]の円筒体の中空部の断面積から磁性コアの断面積とフィルムガイドの断面積を差し引いて計算した。
したがって、定着装置1は下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置2>
比較例として用いる定着装置2は、定着装置1の定着装置の構成に対して磁性コアの断面積と円筒形回転体の材質および断面積が異なる。すなわち、「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしていない構成である。この構成について説明する。特に、円筒形回転体が主磁路になっている構成について説明する。図17は定着装置2の定着装置の断面図であり、電磁誘導発熱回転体は定着フィルムではなく定着ローラー11を用いる。定着ローラー11と加圧ローラー7の押圧力をもってニップNを形成し、像担持体Pとトナー画像Tを挟ませて矢印方向に回転する構成である。
定着ローラー11の円筒体(円筒形回転体)11aは比透磁率600、厚み100μm、直径は48mmのニッケル(Ni)を用いる。なお、円筒体の材質がニッケルに限られるわけではなく、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの比透磁率の高い磁性金属を用いてもよい。定着装置1の円筒体(円筒形回転体)が、非磁性材料であるアルミニウムであるのに対し、定着装置2では、磁性材料であるニッケルを用いている。
磁性コア2は、分割されていない一体部品で円柱形状をしている。磁性コア2は、不図示の固定手段で定着ローラー11内に配置させており、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着ローラー11内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、直径5mm、長さB=230mmである。
その他の構成は定着装置1と同一である。発熱の模式図(図18)に示すように、本構成では円筒体を磁路として通る磁力線が存在する。円筒体の内部を通る磁力線は、図中E//に示すように渦電流を流して発熱に寄与する。この磁力線の通り道は、スリーブとコアが近傍に位置している部分に集中し、図のようにコアに最も近い所に発熱集中を起こす。
定着装置2の各構成物のパーミアンスと磁気抵抗の計算結果を表5にまとめる。
また、定着装置2の各構成物のパーミアンスは下記のようになる。
磁性コアのパーミアンスPc=4.4×10−8[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.1×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=1.1×10−8[H・m]
よって、定着装置2は下記のパーミアンスの関係式を満たしていない。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.3×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=4.5×10[1/(H・m)]となる。
円筒体の磁気抵抗Rs=8.8×10[1/(H・m)]であるから、RsとRaの合成磁気抵抗Rsaは以下のように求められ、Rsa=7.4×10[1/(H・m)]となる。
よって、定着装置2は下記の磁気抵抗の式を満たさず、定着装置2は、「前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」ではない。
この場合、アルミニウムの円筒形回転体内部には、一部周回電流と、一部図15に示す方向の渦電流E⊥が流れ、両者が発熱に寄与していると考えられる。この渦電流E⊥について説明する。E⊥は材料の表面に近いほど大きく、材料の内部に行くにつれて指数関数的に小さくなるという性質がある。その深さを浸透深さδと言い、以下の式で表される。
δ=503×(ρ/fμ)1/2 ・・・(22)
δ:浸透深さ〔m〕
f:励磁回路の周波数〔Hz〕
μ:透磁率〔H/m〕
ρ:抵抗率〔Ωm〕
浸透深さδは電磁波の吸収の深さを示しており、これより深いところでは電磁波の強度は1/e以下になるというものである。そしてその深さは周波数と透磁率、抵抗率に依存する。
<定着装置3>
本定着装置3は先に説明をした定着装置1に関する他の例であり、円筒形回転体(導電層)としてオーステナイト系のステンレス鋼(SUS304)を用いた点が定着装置1と異なる。以下表6は参考として各種金属における抵抗率と比透磁率についてまとめ、式22に従い21kHz、40kHz、100kHzにおける浸透深さδを計算した結果である。
表6によると、SUS304は抵抗値が高く、比透磁率が低いため、浸透深さδが大きい。すなわち、電磁波は透過しやすいため誘導加熱の発熱体として好適に用いられることは少ない。よって従来の電磁誘導加熱方式の定着装置においては、高い電力の変換効率を実現することが困難であった。しかし、本定着装置においては、高い電力の変換効率を実現することが可能であることを示す。
なお、定着装置3の構成は、円筒形回転体の材質としてSUS304を用いている以外は定着装置1の構成と同じである。定着装置の横断面形状も定着装置1と同様である。発熱層は、比透磁率1.0のSUS304を用い、膜厚30μm、直径φ24mmとした。弾性層、表層は定着装置1と同様である。磁性コア、励磁コイル、温度検知部材、温度制御は定着装置1と同様である。
本定着装置の各構成物のパーミアンスと磁気抵抗を下記の表7に示す。
表7から定着装置3の各構成物のパーミアンスは下記のようになる。
コアのパーミアンスPc=3.5×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンスPa=1.3×10−10+2.5×10−10[H・m]
円筒体のパーミアンスPs=2.8×10−12[H・m]
よって、定着装置3は下記のパーミアンスの関係式を満たしている。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗Rc=2.9×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗はフィルムガイドRfと円筒体内空気Rairの磁気抵抗の合成抵抗であるから、下記の式を用いて計算すると、Ra=2.7×10[1/(H・m)]となる。
円筒体の磁気抵抗Rsは、Rs=3.5×1011[1/(H・m)]となっているから、RsとRaとの合成磁気抵抗Rsaは以下の式で計算できて、
Rsa=2.7×10[1/(H・m)]となる。
以上から定着装置3の定着装置は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置4>
本定着装置4は、円筒形回転体として比透磁率の高い金属を用いる構成について解説する。本定着装置のように主に周回電流によって円筒形回転体を発熱させる構成は、円筒形回転体として必ずしも比透磁率の低い金属を用いなければならないものではなく、比透磁率の高い金属でも使用することができる。
従来の電磁誘導加熱方式の定着装置においては、円筒形回転体として比透磁率の高いニッケルなどを用いた場合であっても、円筒形回転体の厚みを薄くすると、電力の変換効率が小さくなるという課題があった。そこで、本実施例において、ニッケルの厚みが薄い場合であっても円筒形回転体を高効率で発熱させることが可能であることを示す。円筒形回転体の厚みを薄くすることによって、繰り返し屈曲に対する耐久性向上や熱容量削減によるクイックスタート性向上などのメリットがある。
なお、円筒形回転体にニッケルを用いることを除いて、画像形成装置の構成は定着装置1と同じである。定着装置4においては、円筒形回転体として比透磁率が600のニッケルを用いる。円筒形回転体の厚みは75μmで、直径がφ24mmとした。弾性層、表層は定着装置1と同じであるので説明を省略する。また、励磁コイル、温度検知部材、温度制御についても定着装置1と同様である。この磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、直径14mm、長さB=230mmである。定着装置4の各構成物のパーミアンスと磁気抵抗を下記の表8に示す。
表8から定着装置4の各構成物のパーミアンスは下記のようになる。
磁性コアのパーミアンス:Pc=3.5×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+2.4×10−10[H・m]円筒体のパーミアンス:Ps=4.2×10−9[H・m]
よって、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
ここで、上記のパーミアンスの関係式を磁気抵抗の関係式に置き換えると、下記のようになる。
磁性コアの磁気抵抗:Rc=2.9×10[1/(H・m)]
円筒体と磁性コアの間の領域の磁気抵抗:Ra=2.7×10[1/(H・m)]円筒体の磁気抵抗:Rs=2.4×10[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=2.2×10[1/(H・m)]
よって、定着装置4は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
<定着装置5>
定着装置5として、定着装置1の構成に対して磁性コア2の断面積と円筒形回転体の材質および断面積が異な構成について説明する。本構成は「コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下」を満たしているものの円筒形回転体が一部、磁路になっている構成である。
図17は定着装置5の定着装置の断面図であり、電磁誘導発熱回転体は厚み200μmのニッケル製の定着フィルムを用いる。定着ローラー11と加圧ローラー7の押圧力をもってニップNを形成し、像担持体Pとトナー画像Tを挟ませて矢印方向に回転する構成である。
定着ローラー11の円筒体(円筒形回転体)11aは比透磁率600、厚み0.2mm、直径は48mmのニッケル(Ni)を用いる。なお、円筒体の材質がニッケルに限られるわけではなく、鉄(Fe)、コバルト(Co)などの比透磁率の高い磁性金属を用いてもよい。
磁性コア2は、分割されていない一体部品で円柱形状をしている。磁性コア2は、不図示の固定手段で定着ローラー11内に配置させており、励磁コイル3にて生成された交流磁界による磁力線(磁束)を定着ローラー11内部に誘導し、磁力線の通路(磁路)を形成する部材として機能する。この磁性コア2は、比透磁率が1800、飽和磁束密度が500mTのフェライトであり、直径12mm、長さB=230mmである。その他の構成は定着装置1と同一である。発熱の模式図(図18)に示すように、本構成では円筒体を磁路として通る磁力線が存在する。円筒体の内部を通る磁力線は、図中E//に示すように渦電流を流して発熱に寄与する。この磁力線の通り道は、スリーブとコアが近傍に位置している部分に一部集中し、図のようにコアに最も近い所は発熱量が約10%程度多くなる。
定着装置5の定着装置の各構成物のパーミアンスの計算結果を表9にまとめる。
表9から定着装置5の各構成物のパーミアンスは下記のようになっている。
磁性コアのパーミアンス:Pc=2.6×10−7[H・m]
円筒体内部のパーミアンス:Pa=1.3×10−10+2.0×10−9[H・m]
円筒体のパーミアンス:Ps=2.3×10−8[H・m]
よって、定着装置5は、下記のパーミアンスの関係式を満たす。
Ps+Pa≦0.30×Pc
これを磁気抵抗に置き換えると、
磁性コアの磁気抵抗:Rc=3.9×10[1/(H・m)]
円筒体内部の磁気抵抗:Ra=4.8×10[1/(H・m)]
円筒体の磁気抵抗:Rs=4.4×10[1/(H・m)]
RsとRaの合成磁気抵抗:Rsa=4.0×10[1/(H・m)]
よって、定着装置5は、下記の磁気抵抗の式を満たしており、前記コアの磁気抵抗は、前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下である。
次に、トナーに関して説明する。以下の実施例において、部数は質量部基準である。
<合成例1:樹脂微粒子A>
(工程1:樹脂aの合成)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に下記の単量体を仕込み、エステル化触媒としてテトラブトキシチタネート0.03部を添加し、窒素雰囲気下、220℃に昇温して、撹拌しながら5時間反応を行った。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:50.0部
エチレングリコール:10.0部
テレフタル酸:25.0部
イソフタル酸:25.0部
無水トリメリット酸:5.0部
次いで、反応容器内を5〜20mmHgに減圧しながら、さらに5時間反応を行い、樹脂aを得た。
(工程2:樹脂微粒子Aの作製)
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を備えた反応容器に、得られた樹脂a100.0部とメチルエチルケトン45.0部、テトラヒドロフラン45.0部を仕込み、80℃に加熱して溶解した。
次いで、撹拌下、80℃のイオン交換水300.0部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、留分温度が100℃に達するまで蒸留を行った。
冷却後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを、樹脂微粒子Aとした。
<合成例2:樹脂微粒子B>
撹拌機、コンデンサー、温度計、窒素導入管を付した反応容器にキシレン200部を仕込み、窒素気流下で還流した。
2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸10.0部
スチレン72.0部
2−エチルヘキシルアクリレート18.0部
を混合し、前記反応容器に撹拌しながら滴下し10時間保持した。その後、蒸留を行って溶剤を留去し、減圧下40℃で乾燥し樹脂bを得た。
1LのトールビーカーにTHF100部を投入し、撹拌しながら樹脂b60部を少しずつ添加し溶解させた。そこへジメチルアミノエタノール1.50部を添加し充分に混合した。緩やかな撹拌を続けながら蒸留水180部を30分間かけて滴下したのちエバポレータにてTHFを留去し樹脂微粒子Bを得た。
<合成例3:樹脂微粒子C>
合成例1の工程1における単量体の仕込み量を下記に変更した以外は、合成例1と同様に工程2まで行い、樹脂cを得て、さらに樹脂微粒子Cを得た。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:49.2部
エチレングリコール:8.9部
テレフタル酸:21.7部
イソフタル酸:14.4部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:5.8部
<合成例4:樹脂微粒子D>
合成例1の工程1における単量体の仕込み量を下記に変更した以外は、合成例1と同様に工程2まで行い、樹脂dを得て、さらに樹脂微粒子Dを得た。
ビスフェノールA−プロピレンオキサイド2モル付加物:61.3部
エチレングリコール:7.3部
テレフタル酸:25.1部
フマル酸:8.3部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:5.2部
<合成例5:樹脂微粒子E>
合成例1の工程1で得られた樹脂a100.0部とテトラヒドロフラン200.0部を仕込み、室温で撹拌して溶解させた。ここに界面活性剤として、サンモリンOT‐70(三洋化成社製)6.0部を添加し、10分間撹拌後、樹脂aの酸価に対して1当量のジメチルアミノエタノールを加え中和した。次いで、撹拌下、イオン交換水300.0部を添加して水分散させた後、得られた水分散体を蒸留装置に移し、減圧蒸留を行った。蒸留後、得られた水分散体にイオン交換水を加え、水分散液中の樹脂濃度が20%になるように調整した。これを樹脂微粒子Eとした。
<合成例6:樹脂微粒子F>
合成例2における単量体の仕込み量を下記に変更した以外は、合成例2と同様に樹脂eを得て、さらに樹脂微粒子Fを得た。
スチレン:94.0部
2−エチルヘキシルアクリレート:3.3部
メチルメタクリレート:2.6部
<合成例7:樹脂微粒子G>
合成例1の工程1における単量体の仕込み量を下記に変更した以外は、合成例1と同様に工程2まで行い、樹脂fを得て、さらに樹脂微粒子Gを得た。
エチレングリコール:32.5部
シクロヘキサンジオール:32.5部
テレフタル酸:14.0部
イソフタル酸:10.5部
フマル酸:6.3部
5−ナトリウムスルホイソフタル酸:0.7部
1,5−ナフタレンジカルボン酸:3.5部
<母粒子作製例1:母粒子1>
(顔料分散ペーストの作製)
スチレン:80.0部
Cuフタロシアニン(PigmentBlue15:3):8.0部
上記材料を容器中で十分予備混合した後、これを20℃以下に保ったままアトライター(三井三池化工機製)を用いて4時間均一に分散混合し、顔料分散ペーストを作製した。
(造粒工程)
イオン交換水150.0部に0.1モル/リットル−リン酸ナトリウム(NaPO)水溶液160.0部を投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて撹拌しながら、60℃に加温した。その後、1.0モル/リットル−塩化カルシウム(CaCl)水溶液24.0部を添加してさらに撹拌を続け、リン酸三カルシウム(Ca(PO)からなる分散安定剤を含む水系媒体を調製した。
一方、上記顔料分散ペーストに以下の材料を加え、アトライター(三井三池化工機製)を用いて分散混合し、単量体組成物を調製した。
n−ブチルアクリレート:20.0部
非晶性ポリエステル:5.0部
(テレフタル酸−プロピレンオキサイド変性ビスフェノールA共重合体、酸価10.0mgKOH/g、Mw16000)
サリチル酸アルミニウム化合物:0.5部
(ボントロンE−88:オリエント化学社製)
上記単量体組成物を60℃に加温し、エステルワックス(主成分C1939COOC2041、最大吸熱ピーク温度68.6℃):10.0部を添加して混合溶解した。次いで、重合開始剤として、t−ブチルパーオキシピバレート(10時間半減期温度:54.6℃、分子量:174):10.0部をさらに添加して溶解した。これを前記水系媒体中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、60℃、窒素雰囲気下にて、12,000rpmで10分間撹拌して造粒を行った。
(重合工程)
得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で200回転/分の回転速度で撹拌しつつ、70℃にて7時間重合反応を行った。
(蒸留工程)
得られた重合体微粒子分散液を140℃のオイルバスで加熱して蒸留を行い、残留している重合性単量体の除去を行った。なお、蒸留は、8時間行い、1時間ごとに留分と同量のイオン交換水を追加した。蒸留を終えた重合体微粒子分散液を母粒子1分散液とし、少量抜き取り、固形分率を測定後、希塩酸を加えpH=1.5に調整して2時間撹拌した後、ろ過、水洗、乾燥を行い、Tgを測定した。
<母粒子作製例2:母粒子2>
母粒子作製例1の造粒工程における重合性単量体と樹脂の仕込み量を下記に変更した以外は、母粒子作製例1と同様に工程を進め、母粒子2を得た。
スチレン:80.0部
n−ブチルアクリレート:20.0部
非晶性ポリエステル:15.0部
結晶性ポリエステル:10.0部
<母粒子作製例3:母粒子3>
(結着樹脂溶液の作製)
冷却管、窒素導入管および撹拌機のついた反応容器中に、下記材料を投入した。
1,3−プロパンジオール:847部
テレフタル酸ジメチルエステル:861部
1,6−ヘキサン二酸:212部
テトラブトキシチタネート(縮合触媒):3部
170℃で窒素気流下、生成するメタノールを留去しながら7時間反応させた。ついで240℃まで徐々に昇温させながら、窒素気流下に、生成するプロピレングリコール、水を留去しながら5時間反応させ、さらに20mmHgの減圧下にて反応させた後、取り出した。取り出した樹脂を室温まで冷却後、粉砕、粒子化し、結着樹脂1を得た。
次に、撹拌羽根つきの密閉性容器に酢酸エチルを50部投入し、100rpmで撹拌しているところに、上記結着樹脂1を50部添加して、室温で3日撹拌することで結着樹脂溶液を調製した。
(離型剤分散液の作製)
カルナウバワックス(融点83℃):18部
酢酸エチル:82部
上記材料を撹拌羽根つきの容器内に投入し、系内を70℃に加熱することでカルナウバワックスを酢酸エチルに溶解させた。
ついで、系内を100rpmで緩やかに撹拌しながら徐々に冷却し、2時間かけて30℃にまで冷却した。その後、この溶液を1mmのガラスビーズ20部とともに耐熱性の容器に投入し、ペイントシェーカーにて3時間分散を行い、ナイロンメッシュでガラスビーズを取り除き、離型剤分散液を得た。
(着色剤分散液の作製)
結着樹脂1:20部
Cuフタロシアニン(PigmentBlue15:3):20部
酢酸エチル:60部
上記材料を容器中で十分プレミクスした後、これを20℃以下に保ったままアトライター(三井三池化工機製)を用いて約4時間分散混合し、着色剤分散液を得た。
(母粒子分散液の作製)
・油相の調製
ワックス分散液:50部
(カルナウバWAX固形分:18%)
着色剤分散液:25部
(顔料固形分:20%、樹脂固形分:20%)
結着樹脂溶液:160部
(樹脂固形分:50%)
酢酸エチル:15部
上記溶液を容器内に投入し、ホモディスパー(特殊機化工業(株)社製)で2000rpmで5分間撹拌・分散することにより油相を調製した。
・水相の調製
イオン交換水1152.0部に0.1モル/リットル−リン酸ナトリウム(Na3PO4)水溶液390.0部を投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて撹拌しながら、60℃に加温した。その後、1.0モル/リットル−塩化カルシウム(CaCl2)水溶液58.0部を添加してさらに撹拌を続け、リン酸三カルシウム(Ca3(PO4)2)からなる分散安定剤を製造し、さらに酢酸エチル100部を投入して水系媒体を調製した。
・乳化および脱溶媒
前記油相を前記水相中に投入し、クレアミックス(エム・テクニック社製)を用いて、60℃、窒素雰囲気下にて、10,000rpmで1分間撹拌して造粒を行った。
さらに、得られた懸濁液を、パドル撹拌翼で150回転/分の回転速度で撹拌しつつ、60℃にてかつ500mgHgに減圧した状態で5時間かけて脱溶媒を行い、母粒子の分散液を得た。
得られた母粒子の分散液を冷却し、上澄み液を除き分散液中の母粒子濃度が20%になるように調整した。これを、母粒子3の分散液とした。
<母粒子作製例4:母粒子4>
(樹脂分散液の製造)
スチレン:80.0部
n−ブチルアクリレート:20.0部
メタクリル酸:2.0部
ドデカンチオール:6.0部
四臭化炭素:1.0部
フラスコ中で非イオン性界面活性剤ノニポール4001.5部、アニオン性界面活性剤ネオゲンSC2.5部をイオン交換水140部に溶解する。上記の材料を混合溶解したものをフラスコ中で分散、乳化し10分ゆっくりと混合しながら、過硫酸アンモニウム1.0部を溶解したイオン交換水10部を投入する。窒素置換を行いながら、フラスコをオイルバスで内容物が70℃になるまで加熱し、5時間そのまま乳化重合を継続する。
(青顔料分散液の調製):
下記組成を混合溶解し、ホモジナイザー(IKAウルトラタラックス)と超音波照射により分散し、中心粒径140nmの青顔料分散液を得る。
銅フタロシアニン(C.I.PigmentBlue15:3:大日精化社製):100.0部
アニオン性界面活性剤ネオゲンSC:10.0部
イオン交換水:400.0部
(離型剤分散液の調製)
下記組成を混合し、97℃に加熱後、IKA製ウルトラタラックスT50にて分散する。その後、ゴーリンホモジナイザー(盟和商事製)で分散処理し、105℃、550kg/cm2の条件で20回処理することで、中心径190nmの離型剤分散液を得る。
パラフィンワックス(HNP−7:日本精鑞製):100.0部
アニオン性界面活性剤ネオゲンSC:5.0部
イオン交換水:300.0部
(母粒子の調製)
樹脂分散液(樹脂粒子固形分25.0質量%):400.0部
着色剤分散液(芳香族系化合物A含有率11.0質量%):25.5部
離型剤分散液:30.0部
サニゾールB50:2.0部
以上を丸型ステンレス鋼製フラスコ中でウルトラタラックスT50で混合分散後、加熱用オイルバスでフラスコを撹拌しながら48℃まで加熱する。さらに加熱用オイルバスの温度を上げて50℃で1時間保持する。その後、ここにネオゲンSC3部を追加後、ステンレス鋼製フラスコを密閉し、磁力シールを用いて撹拌を継続しながら105℃まで加熱し、3時間保持する。得られた母粒子の分散液を冷却し、上澄み液を除き分散液中の母粒子濃度が20%になるように調整した。これを、母粒子4の分散液とした。
<母粒子作製例5:母粒子5>
母粒子作製例1の造粒工程における重合性単量体の仕込み量を下記に変更した以外は、母粒子作製例1と同様に工程を進め、母粒子5を得た。
スチレン:80.0部
n−ブチルアクリレート:20.0部
<トナー1の作製>
(微粒子固着工程)
蒸留を終えた母粒子分散液を45℃まで冷却した。次に、蒸留工程を終えた母粒子分散液の固形分100.0部に対して3.0部の樹脂微粒子Aを5分かけて添加し、45℃に保持したまま、0.3モル/lの塩酸を1.0部/分の滴下速度で滴下し、上記分散液のpHを1.5とした後、2時間撹拌を続けた。その後、攪拌下、1.0モル/lの水酸化ナトリウム水溶液を上記分散液のpHが7.5になるまで滴下した。
この分散液を樹脂微粒子のガラス転移温度である74℃に保持し、さらに1時間攪拌した。上記分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えた。さらに、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥および分級してトナー粒子1を得た。
(トナー1の作製)
上記トナー粒子1:100.0部に、n−CSi(OCHで処理した疎水性酸化チタン(BET比表面積:110m/g):0.8部とヘキサメチルジシラザン処理した後シリコーンオイルで処理した疎水性シリカ(BET比表面積が150m/g):0.8部を加えヘンシェルミキサーで混合し、トナー1を得た。
<トナー2の作製>
トナー1の微粒子固着工程において、下記の変更を加えた以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー2を得た。
(微粒子固着工程)
蒸留を終えた母粒子分散液を80℃まで冷却し、pH=7に調整した。次に、蒸留工程を終えた重合体微粒子分散液の固形分100.0部に対して0.25部の樹脂微粒子Bを5分かけて添加し、80℃のまま30分間撹拌した。その後、1℃/分のスピードで室温まで冷却した。さらに、分散安定剤除去のために室温になったのを確認してから10%塩酸を添加し、pHを1.5に調整した。そのまま2時間撹拌し、ろ過と水による洗浄を3回繰り返した後に固形分を回収し、30℃の減圧乾燥機で1日間乾燥して、トナー粒子2を得た。
<トナー3の作製>
トナー1の樹脂微粒子を下記に変更した以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー3を得た。
樹脂微粒子C:5.0部
<トナー4の作製>
トナー1の母粒子と樹脂微粒子を下記に変更した以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー4を得た。
母粒子2分散液:100.0部
樹脂微粒子D分散液:3.0部
<トナー5の作製>
トナー2母粒子と樹脂微粒子を下記に変更した以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー5を得た。
母粒子2分散液:100.0部
樹脂微粒子E分散液:1.0部
<トナー6の作製>
トナー1の母粒子と樹脂微粒子を下記に変更した以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー6を得た。
母粒子2分散液:100.0部
樹脂微粒子F散液:1.0部
<トナー7の作製>
トナー1の微粒子固着工程において、下記の変更を加えた以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー7を得た。
(樹脂微粒子固着工程)
母粒子3散液500.0部(固形分100.0部)に、撹拌下、樹脂微粒子分散液A15.0部(固形分3.0部)を緩やかに添加した。
次いで、加熱用オイルバスの温度を上げて45℃を保持しながら、上記分散液のpHが緩やかに変化するように気をつけながら1モル/l塩酸を滴下し、上記分散液のpHを1.5とした後、2時間撹拌を続けた。その後、攪拌下、1モル/lの水酸化ナトリウム水溶液を上記分散液のpHが7.2になるまで滴下した。
この分散液を樹脂微粒子のガラス転移温度以上の温度である75℃に保持し、さらに1時間攪拌した。上記分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えた。さらに、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥および分級してトナー粒子7を得た。
<トナー8の作製>
トナー2の母粒子と樹脂微粒子を下記に変更した以外はトナー2と同様の操作を行い、トナー8を得た。
母粒子4分散液:100.0部
樹脂微粒子E分散液:3.0部
<トナー9の作製>
トナー1の母粒子と樹脂微粒子を下記に変更した以外はトナー1と同様の操作を行い、トナー9を得た。
母粒子5分散液:100.0部
樹脂微粒子G分散液:3.0部
<トナー10の作製>
蒸留工程を終えた母粒子1の分散液を20℃まで冷却した後、pHが1.5になるまで希塩酸を加えた。さらに、イオン交換水で充分に洗浄した後、ろ過し、乾燥および分級してトナー粒子10を得た。
その後は、トナー1と同様の外添剤を付与し、トナー10を得た。
<実施例1>
表11に表記のトナーと定着装置を組み合わせ、以下に示す評価を行った。
<耐オフセット性>
実施例の未定着トナー画像の出力には、市販のカラーレーザープリンターColorLaserJetCP4525(HP社製)を用いた。
上記評価機の定着装置を取り出し、未定着トナー画像を出力できるように改造を施した。
シアンカートリッジのトナーを取り出して、これにトナーを充填し、該カートリッジをシアンステーションに装着した。次いで、記録材としては、HP製LaserJetA4用紙90g/m)上に、縦2.0cm横5.0cmの未定着トナー画像(0.6mg/cm)を、通紙方向に対し上端部から1.0cmの部分に形成した。なお画像は、ベタ画像で、左右のそれぞれ80mmに余白を設けた。
まず、評価を低温低湿(10℃/15%)環境で行った。そして、前記した温度制御手段に基づき、定着器の投入電力を長手中央部のターゲット温度に合わせて制御した。さらに加圧ローラーの回転速度は250mm/secとした。
上記定着装置1に、上記未定着トナー画像を紙間距離が5cmとなるようにして10枚連続で通紙した。通紙する際、ターゲット温度は120℃から150℃まで、1℃刻みで設定した。
通紙後の画像に対し、10枚目においてオフセットが発生する温度を評価した。
<実施例2〜10>
トナーおよび定着装置を表12に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価をおこなった。評価結果を表12に示す。
<比較例1〜3>
トナーおよび定着装置を表12に記載のように変更した以外は、実施例1と同様にして、評価をおこなった。評価結果を表12に示す。
1 定着フィルム
1a 導電層(円筒形回転体)
1b 弾性層
1c 離型層
2 磁性コア
2c 閉磁路の磁性コア
3 励磁コイル
4 温度検知部材
7 加圧ローラー
9 ニップ部形成部材
N ニップ部
M 誘導起電力安定領域
Bin 円筒形回転体としてのローラー1の中を紙面奥方向に向かう磁力線
Bout 円筒形回転体としてのローラー1の外を紙面手前方向に戻ってくる磁力線
11a 導電層
11b 弾性層
11c 離型層
3a、3b、3c、3d、3e、3f、3g、3h、3i、3j 分割した磁性コア
100 本実施例に従う画像形成装置
200 円筒形回転体
200a 円筒形回転体の材料内部
B// 軸Xと平行方向に発生する磁場
E// B//によって発生する渦電流
B⊥ 軸Xと⊥方向に発生する磁場
E⊥ B⊥によって発生する渦電流

Claims (10)

  1. 加熱加圧手段により記録材上のトナー画像を加熱加圧定着して記録材に定着画像を形成する定着方法において、
    前記加熱加圧手段が、
    加熱部材と、
    加圧部材と
    を有し、
    前記加熱部材が、
    導電層を有する筒状の回転体と、
    前記回転体の内部に配置され、螺旋軸が前記回転体の母線方向と略平行である螺旋形状部を有し、前記導電層を電磁誘導発熱させる交番磁界を形成するための励磁コイルと、
    前記螺旋形状部の中に配置され、前記交番磁界の磁力線を誘導するための磁性コアと、
    を有し、
    前記母線方向に関し、記録材上の画像の最大通過領域の一端から他端までの区間において、前記磁性コアの磁気抵抗が、
    前記導電層の磁気抵抗と、前記導電層と前記磁性コアとの間の領域の磁気抵抗と、の合成磁気抵抗の30%以下であり、
    前記トナー画像を形成するトナーが、結着樹脂、着色剤および離型剤を含有するトナー粒子を有するトナーであり、
    前記トナー粒子が、トナー母粒子100.0質量部に対して、0.1質量部以上5.0質量部以下の樹脂微粒子を固着させたものであり、
    前記トナー母粒子のガラス転移温度(Tg1)が、前記樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg2)よりも小さい値である
    ことを特徴とする定着方法。
  2. 前記樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg2)が、50.0℃以上120.0℃以下である請求項1に記載の定着方法。
  3. 前記樹脂微粒子のガラス転移温度(Tg2)が、60.0℃以上120.0℃以下である請求項2に記載の定着方法。
  4. 前記トナー母粒子が、重合性単量体、着色剤および離型剤を含有する重合性単量体組成物を水系媒体に加え、該水系媒体中で該重合性単量体組成物の粒子を形成し、該重合性単量体組成物の粒子に含まれる重合性単量体を重合させて得られたトナー母粒子である請求項1〜3のいずれか1項に記載の定着方法。
  5. 前記離型剤の添加量が、前記重合性単量体100.0質量部に対して総量で2.5質量部以上40.0質量部以下である請求項4に記載の定着方法。
  6. 前記重合性単量体組成物が、前記重合性単量体としてスチレン系単量体を含有する請求項4または5に記載の定着方法。
  7. 前記重合性単量体組成物が、前記重合性単量体としてスチレン系単量体以外の重合性単量体をさらに含有する請求項に記載の定着方法。
  8. 前記スチレン系単量体以外の重合性単量体が、n−ブチルアクリレートである請求項に記載の定着方法。
  9. 前記離型剤が、カルナバワックスまたはパラフィンワックスである請求項1〜のいずれか1項に記載の定着方法。
  10. 前記導電層の厚み方向において、前記導電層を流れる電流の方向が前記導電層の周方向に関して主に同じ方向である請求項1〜9のいずれか1項に記載の定着方法。
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