JP2018004877A - トナー、及び該トナーを備えた現像装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、オフィスユースの印字率の低い画像から、デジタルカメラ、携帯端末などによって取り込まれた画像データやポスターなど、印字比率の高いグラフィック画像まで、ユーザーが複写機やレーザープリンター(LBP)などの画像形成装置を用いて出力する機会が増加している。よって、印字比率の低い画像を長期に渡って出力できる耐久安定性、印字比率の高い画像を短時間で高精細にプリントアウトする高耐久性、及び優れた低温定着性を達成しうるトナーが求められている。
このような背景から、まず優れた低温定着性を達成するために、結着樹脂として結晶性樹脂を用いたトナーが数多く提案されている。近年、低温定着性を改良するためのトナーとしては、結着樹脂の改良として結晶性樹脂が広く用いられるようになっている。
特許文献1には、結晶性樹脂がガラス転移温度付近で急激に溶融すること、及び、結晶性樹脂と非晶性樹脂との相溶性を高めることで、トナーの低温定着性が改善されることが記載されている。
特許文献2では、トナーの製造工程に、特定の温度で加熱処理する工程を付加し、結晶性樹脂の再結晶化を促進させることが記載されている。
また、高い耐久安定性を達成するために、結着樹脂としてビニル系樹脂とポリエステル樹脂を併用し、且つマトリクス−ドメイン構造を有するトナーが数多く提案されている。
特許文献3には、マトリクス相がビニル樹脂であり、ドメイン相が非晶性ポリエステル樹脂とすることで、低温定着性と耐久安定性を両立する記載がなされている。
特許文献4では、ドメイン径とドメイン相の面積比率を制御することにより、低温定着性と耐久安定性を両立する記載がなされている。
特許文献2に記載の方法によれば、確かに、結晶性樹脂の結晶を含むトナーが得られる。しかしながら、定着工程においてトナーを一端溶融させると、結晶性樹脂と非晶性樹脂
が完全に相溶化してしまい、元の結晶状態には戻らないため、両面プリントを長期に渡って行うと、定着後のトナー画像同士が接着しやすくなる。以後、定着後のトナー画像同士の接着を防止する特性を耐排紙接着性という。
特許文献3に開示されたトナーは、確かにマトリクス相にビニル樹脂を使用することで、高耐久性は得られやすいものの、ドメイン相の非晶性ポリエステル樹脂の定着性への効果は未だ不十分である。
特許文献4に開示されたトナーは、ドメインの存在状態を制御することで定着性に対する一定の効果は得られるものの、上記背景に係る課題を解決するには未だ不十分である。
すなわち、いずれの従来技術も一定の効果が得られるものの、耐久安定性と優れた低温定着性を高いレベルで両立するためには、更なる改良の余地がある。
本発明は、低温定着性及び耐排紙接着性に優れ、且つ、低温低湿下でのベタ黒画像出力後のカブリが抑制された、耐久安定性の高いトナー、及び、該トナーを備えた現像装置を提供することにある。
ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
透過型電子顕微鏡で観察される該トナーの断面において、
該ビニル樹脂がマトリクスを形成し、該非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
該トナーの示差走査熱量測定において、
1回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg1st(℃)とし、
2回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg2nd(℃)とし、
50℃における、ガラス転移温度の上昇速度係数をkとしたときに、
下記式(1)〜(3)の全てを満たすことを特徴とするトナーに関する。
Tg1st≧50 (1)
Tg1st−Tg2nd≧5 (2)
k≧0.04 (3)
また、本発明は、
静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像するトナーと、該トナーを担持し、該静電潜像担持体にトナーを搬送するトナー担持体と、を備えた現像装置であって、
該トナーが、上記トナーであることを特徴とする現像装置に関する。
本発明のトナーは、
ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
透過型電子顕微鏡で観察される該トナーの断面において、
該ビニル樹脂がマトリクスを形成し、該非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
該トナーの示差走査熱量測定において、
1回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg1st(℃)とし、
2回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg2nd(℃)とし、
50℃における、ガラス転移温度の上昇速度係数をkとしたときに、
上記式(1)〜(3)の全てを満たすことを特徴とする。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約3mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて測定を行う。
1回目の昇温時に測定されるガラス転移温度は、試料を昇温速度10℃/minで、20℃から180℃まで昇温させ、該昇温過程の温度30℃〜90℃の範囲における比熱変化から求める。
2回目の昇温時に測定されるガラス転移温度は、1回目の昇温後、降温速度10℃/minで、180℃から10℃まで降温し、その後、昇温速度10℃/minで、10℃から180℃まで再度昇温を行う。該2回目の昇温過程の温度30℃〜90℃の範囲における比熱変化から求める。
ガラス転移温度は、該比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点とする。
また、1回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg1st[単位:℃]とし、2回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg2nd[単位:℃]とする。
試料を昇温速度10℃/minで、20℃から180℃まで昇温させ、続いて、降温速度10℃/minで、180℃から50℃まで降温し、50℃で、0分間、10分間、20分間、又は30分間保持する。続いて、降温速度10℃/minで、10℃まで降温し、その後に、昇温速度10℃/minで、20℃から180℃まで再度昇温させる。
この2回目の昇温過程の温度30℃〜90℃の範囲における比熱変化より求められたガラス転移温度をY、保持時間(0分間、10分間、20分間、30分間)をXとし、Y=kX+bから得られる傾きkを、ガラス転移温度の上昇速度係数とする。
該マトリクスを構成するビニル樹脂は、良好な耐久性を有し、ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂は良好な低温定着性を有する。
また、結晶性ポリエステル樹脂は、ドメインを形成している非晶性ポリエステル樹脂を定着時に可塑化させ、優れた低温定着性を発揮させる。
そして、50℃における、トナーのガラス転移温度(Tg)の上昇速度係数kが0.04以上であることで、非晶性ポリエステル樹脂と相溶した結晶性ポリエステル樹脂を、定着時に瞬時に結晶化させ、得られた定着画像を構成するトナーのガラス転移温度を上昇させる。その結果、定着直後の耐排紙接着性を向上させることができる。特に印字比率の高い画像を連続両面プリントで出力した際の、耐排紙接着性の向上が顕著となる。
これは、装置内の昇温やストレスにより発生する部分的な発熱によっても、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化が起こり、トナー粒子表面において局所的にガラス転移温度の上昇が起こっているものによると考える。したがって、オフィスユースの印字比率の低い画像を長期に渡って出力した際でも、本発明のトナーは、トナー劣化が抑制され、低温低湿下で発生しやすいベタ黒画像出力後の帯電不良によるカブリといった画像不良が顕著に抑制できる。
該ガラス転移温度の上昇速度係数kが0.04未満である場合、いかに優れた低温定着性を発揮するトナーであっても、定着画像を構成するトナーのガラス転移温度を上昇させることが難しく、定着後のトナー画像同士の接着を防止することができない。
該50℃における、トナーのガラス転移温度(Tg)の上昇速度係数kは、0.07以上であることが好ましい。また、上限は、特に制限されないが、好ましくは0.30以下である。
なお、ガラス転移温度の上昇速度係数kを上記範囲に調整するには、後述する非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータ(SP値)を制御するなどの手法が例示できる。
該Tg1stは、耐久安定性の観点から50℃以上である。また、上限は、特に制限されないが、低温定着性の観点から、好ましくは65℃以下である。
なお、Tg1stを上記範囲に調整するには、ビニル樹脂を構成する重合性単量体の種類や架橋剤の添加などの手法が例示できる。
該[Tg1st−Tg2nd]が5℃以上である場合、良好な低温定着性が得られる。
なお、[Tg1st−Tg2nd]を上記範囲に調整するには、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の溶解度パラメータ(SP値)を制御するなどの手法が例示できる。
−1.50≦{SP(A)−SP(C)}≦0.80 (4)
−1.40≦{SP(A)−SP(C)}≦0.70 (4)’
なお、各樹脂の溶解性パラメータ(SP値)は、該樹脂を構成するモノマーの物性で制御することが可能である。また、該SP値は、コーティングの基礎と工学(53ページ、原崎勇次著、加工技術研究会)記載のFedorsによる原子及び原子団の蒸発エネルギーとモル体積から、下記式を用いて算出することができる。また、結晶性ポリエステル樹脂のSP値は、結晶核剤部位を除くポリエステル分子鎖のSP値を表している。
(式)SP値[単位:(cal/cm3)1/2]=
(Ev/v)1/2=(ΣΔei/ΣΔvi)1/2
(式中、Ev:蒸発エネルギー(cal/mol)、v:モル体積(cm3/mol)、
Δei:各々の原子又は原子団の蒸発エネルギー、Δvi:各々の原子又は原子団のモル体積)
トナー中の非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂の相溶状態を制御するのは、非晶性ポリエステル樹脂のSP値SP(A)と結晶性ポリエステル樹脂のSP値SP(C)との差で決定される。前記式(4)を満たすことで、可塑化促進及び結晶化促進を効果的に発揮することができる。
[SP(A)−SP(C)]の値が−1.50より小さくなると、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂は相溶しやすい状態となり優れた低温定着性を有するが、定着画像を構成するトナーのガラス転移温度を上昇させることが難しく、耐排紙接着性が低下する傾向にある。
一方、SP(A)−SP(C)の値が0.80より大きくなると、非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂は結晶化しやすい状態となりトナーのガラス転移温度(Tg)が上昇し、低温定着性が低下する傾向にある。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;
スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;
ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、ポリアクリル酸樹脂を用いることができる。
これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。これらの中でも、スチレン系共重合体が、現像特性、定着性などの観点から好ましい。さらに、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体がより好ましい。
該非晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分に由来するモノマーユニットと、アルコール成分に由来するモノマーユニットとを有する。
ここで、モノマーユニットとは、ポリマー中のモノマー物質の反応した形態をいう。
該アルコール成分としては下記のものが挙げられる。
2価のアルコール成分としては、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、及び2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物などを含む下記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物、エチレングリコール、1,3−プロピレングリコール、ネオペンチルグリコールなどが挙げられる。
3価以上のアルコール成分としては、ソルビトール、ペンタエリスリトール、ジペンタエリスリトールなどが挙げられる。
上記2価のアルコール成分及び3価以上の多価アルコール成分は、単独で、又は複数の化合物を組み合わせて用いることができる。
2価のカルボン酸成分としては、マレイン酸、フマル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スベリン酸、アゼライン酸、セバシン酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸、テトラデカン二酸、n−ドデセニルコハク酸、これらの酸無水物、及び、これらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
3価以上のカルボン酸成分としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸、エンポール三量体酸、これらの酸無水物、及び、これらの低級アルキルエステルなどが挙げられる。
これらのうち、炭素数6以上12以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸が好ましく、炭素数6以上10以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸がより好ましい。
また、該非晶性ポリエステル樹脂は、炭素数6以上12以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットと、アルコール成分に由来するモノマーユニットとを有し、該炭素数6以上12以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットの含有割合が、該非晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分に由来する全モノマーユニットに対して、10mol%以上50mol%以下であることが好ましく、30mol%以上50mol%以下であることがより好ましい。
非晶性ポリエステル樹脂と結晶性ポリエステル樹脂のモノマー構成が近しい構成になる場合、相溶化と結晶化が促進され、低温定着性及び耐排紙接着性がより向上するものと考えられる。
また、該炭素数6以上12以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットの含有割合が、該非晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分に由来する全モノマーユニットに対して、10mol%以上50mol%以下(好ましくは30mol%以上50mol%以下)である場合、相溶化と結晶化の促進を両立させやすくなる。
非晶性ポリエステル樹脂のガラス転移温度(Tg)は、定着性及び耐久安定性の観点から45℃以上70℃以下であることが好ましい。
30℃以下であることが好ましく、90℃以上120℃以下であることがより好ましい。
該非晶性ポリエステル樹脂の酸価は、1.0mgKOH/g以上10.0mgKOH/g以下であることが好ましく、4.0mgKOH/g以上8.0mgKOH/g以下であることがより好ましい。これは、トナーの良好な帯電特性の観点と、後述するトナー表面近傍に非晶性ポリエステルのドメインを形成し、該非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径を制御する観点からである。
該非晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、定着性及び保存安定性の観点から、2mgKOH/g以上40mgKOH/g以下であることが好ましく、より好ましくは5.0mgKOH/g以上30.0mgKOH/g以下である。
トナー粒子中の該非晶性ポリエステルの含有量は、ビニル樹脂100質量部に対して、5質量部以上30質量部以下であることが好ましい。
なお、結晶性樹脂とは、示差走査熱量測定(DSC)において吸熱ピークが観測される樹脂である。
該結晶性ポリエステル樹脂は、カルボン酸成分に由来するモノマーユニットと、アルコール成分に由来するモノマーユニットとを有する。
該アルコール成分としては、ポリエステル樹脂の結晶性を高める観点から、炭素数6以上18以下の脂肪族ジオールを用いることが好ましい。
これらの中でも、トナーの定着性及び耐熱安定性の観点から、炭素数6以上12以下の脂肪族ジオールが好ましい。
該脂肪族ジオールとしては、1,6−ヘキサンジオール、1,7−ヘプタンジオール、1,8−オクタンジオール、1,9−ノナンジオール、1,10−デカンジオール、1,11−ウンデカンジオール、1,12−ドデカンジオールなどが挙げられる。
該炭素数6以上18以下の脂肪族ジオールに由来するモノマーユニットの含有割合は、ポリエステル樹脂の結晶性をより高める観点から、該結晶性ポリエステル樹脂を構成するアルコール成分に由来する全モノマーユニットに対して、80mol%以上100mol%以下であることが好ましい。
また、該結晶性ポリエステル樹脂は、上記脂肪族ジオール以外の多価アルコール成分由来のモノマーユニットを含有していてもよい。
該多価アルコール成分として、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシプロピレン付加物、2,2−ビス(4−ヒドロキシフェニル)プロパンのポリオキシエチレン付加物などを含む上記式(I)で表されるビスフェノールAのアルキレンオキサイド付加物などの芳香族ジオール;グリセリン、ペンタエリスリトール、トリメチロールプロパンなどの3価以上のアルコールが挙げられる。
これらの中でも、トナーの定着性及び耐熱安定性の観点から、炭素数6以上12以下の脂肪族ジカルボン酸が好ましい。
該脂肪族ジカルボン酸としては、ヘキサン二酸、ヘプタン二酸、オクタン二酸、ノナン二酸、デカン二酸、ウンデカン二酸、ドデカン二酸などが挙げられる。
炭素数6以上18以下の脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットの含有割合は、該結晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分に由来する全モノマーユニットに対して、80mol%以上100mol%以下であることが好ましい。
該カルボン酸成分として、芳香族ジカルボン酸、3価以上の芳香族多価カルボン酸などが挙げられるが、特にこれらに限定されるものではない。芳香族ジカルボン酸には、芳香
族ジカルボン酸誘導体も含まれる。
該芳香族ジカルボン酸としては、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸、これらの酸無水物、及びこれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルが好ましく挙げられる。該アルキルエステル中のアルキル基としては、メチル基、エチル基、プロピル基及びイソプロピル基が挙げられる。
3価以上の多価カルボン酸としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸(トリメリット酸)、2,5,7−ナフタレントリカルボン酸、ピロメリット酸などの芳香族カルボン酸、これらの酸無水物、及びこれらのアルキル(炭素数1〜3)エステルなどが挙げられる。
該結晶性ポリエステル樹脂の示差走査熱量計を用いて測定される、昇温時に観測される最大吸熱ピークのピーク温度(以下、融点ともいう)は、トナーの低温定着性の観点から、60℃以上120℃以下であることが好ましく、70℃以上90℃以下であることがよい好ましい。
該結晶性ポリエステル樹脂の水酸基価は、トナーの定着性及び保存安定性の観点から、2.0mgKOH/g以上40.0mgKOH/g以下であることが好ましい。
トナー粒子中の該結晶性ポリエステルの含有量は、ビニル樹脂100質量部に対して、2質量部以上15質量部以下であることが好ましい。
一般的にトナー中の結晶性ポリエステル樹脂の結晶成分は、結晶核ができた後に、結晶が成長する。本発明では、結晶性ポリエステル樹脂の分子鎖末端に該結晶核剤部位を有することで、結晶性ポリエステル樹脂における結晶構造をとりうる部位の結晶化を誘発させることができる。すなわち、結晶核剤部位は該結晶性ポリエステル樹脂の結晶化における結晶核形成を担うことができる。
該結晶核剤部位としては、結晶性ポリエステル樹脂よりも結晶化速度が速い化合物であれば特に制限されるものではないが、結晶化速度が速い点で主鎖が炭化水素系部位を含んでなり、結晶性ポリエステル樹脂の樹脂分子の末端と反応しうる1価以上の官能基を有する化合物であることが好ましい。
結晶化速度をより高める観点から、結晶核剤部位は、炭化水素系部位が直鎖状であり、官能基が1価の化合物が好ましい。また、結晶核剤部位と結晶性ポリエステル樹脂の樹脂末端の反応性が高まる点で、結晶核剤部位の分子量は100〜10,000であることが好ましく、150〜5,000であることがより好ましい。
結晶核剤部位が特定の炭素数を有することで、結晶核剤の結晶化度が高くなり、さらに、結晶性ポリエステル樹脂よりも分子運動性が高いため、結晶核を形成する造核作用を高めることができる。
7.0mol%以下であることが好ましく、より好ましくは0.2mol%以上5.0mol%以下である。
該含有割合が上記範囲を満たす場合、結晶性ポリエステル樹脂の結晶化速度がより向上する。その結果、結晶性ポリエステル樹脂と非晶性ポリエステル樹脂との相溶化が高度に制御され、トナーのガラス転移温度(Tg)の上昇が適切となり、低温定着性と耐排紙接着性の両立を高いレベルで達成することができる。
サンプルを2mg精秤し、クロロホルム2mLを加えて溶解させてサンプル溶液を作製する。樹脂サンプルとしては結晶性ポリエステル樹脂を用いてもよいし、結晶性ポリエステル樹脂を含有するトナーをサンプルとして代用してもよい。
具体的には、2,5−ジヒドロキシ安息香酸(DHBA)20mgを精秤し、クロロホルム1mLを添加して溶解させてマトリクス溶液を調製する。また、トリフルオロ酢酸Na(NaTFA)3mgを精秤した後、アセトンを1mL添加して溶解させてイオン化助剤溶液を調製する。
上記サンプル溶液25μL、マトリクス溶液50μL、及びイオン化助剤溶液5μLを混合してMALDI分析用のサンプルプレートに滴下させ、乾燥させることで測定サンプルとする。
分析機器として、MALDI−TOFMS(Bruker Daltonics製 Reflex III)を用い、マススペクトルを得る。得られたマススペクトルにおいて、オリゴマー領域(m/Zが2000以下)の各ピークの帰属を行い、分子鎖末端に結晶核剤が結合した組成に対応するピークが存在するか否かを確認する。
ビニル樹脂がマトリクスを形成し、非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
非晶性ポリエステル樹脂のドメインが、該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に、該非晶性ポリエステルのドメインの総面積に対して、30面積%以上70面積%以下存在していることが好ましい。より好ましくは、40面積%以上70面積%以下存在していることである。
トナーの断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に存在する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの総面積に対する面積割合(以下、「25%面積率」ともいう)が上記範囲にあることで、トナー表面近傍の非晶性ポリエステル樹脂のドメイン量が適切となり、低温定着性と耐排紙接着性がより向上する。
「25%面積率」が30面積%以上であると、非晶性ポリエステル樹脂のドメインがトナー表面近傍に偏在しやすくなり、低温定着性と耐排紙接着性をより向上させる。
一方、「25%面積率」が70面積%以下であると、トナー表面近傍にドメインが適度に存在し、耐久安定性が十分になる。特に低温低湿下で低印字率の出力を繰り返した際のトナー劣化が抑制され、ベタ黒画像出力後のカブリが抑制される。
トナーの断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の50%以内に存在する非晶性ポリエステル樹脂のドメインの、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの総面積に対する面積割合(以下、「50%面積率」ともいう)が、80面積%以上である場合、低温定着性と耐排紙接着性がより向上する。
該「50%面積率」が80面積%以上であるということは、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインが、「トナー断面の中心点」から、「トナー断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の50%の境界線」までの領域に、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの総面積に対して、20面積%以下存在している、と言い換えることができる。この場合、上記したように低温定着性と耐排紙接着性がより向上する。
該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%〜50%に存在する該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの面積をBとしたときに、
該A及びBは、下記式(5)の関係を満たすことが好ましい。
式(5) A/B≧1.05
ここで、[A/B](以下、ドメインの面積比ともいう)は3.00以下であることが好ましい。
また、該A及びBは、下記式(5)’の関係を満たすことがより好ましい。
式(5)’ 3.00≧A/B≧1.20
非晶性ポリエステル樹脂のドメインの個数平均径は、0.3μm以上3.0μm以下であることが好ましく、0.3μm以上2.0μm以下であることがより好ましい。
該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの個数平均径が、上記範囲を満たす場合、低温定着性と耐排紙接着性がより向上する。
トナー表面近傍に非晶性ポリエステル樹脂のドメインを形成し、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの個数平均径を制御するための方策として、非晶性ポリエステル樹脂の酸価及び水酸基価の調整、非晶性ポリエステル樹脂の軟化点の調整、並びに、トナー粒子の製造条件の調整が挙げられる。
荷電制御剤としては各種のものが利用できるが、帯電スピードが速く、かつ、一定の帯電量を安定して維持できる荷電制御剤が好ましい。
該荷電制御剤としては、以下のものが例示できる。
サリチル酸、アルキルサリチル酸、ジアルキルサリチル酸、ナフトエ酸、ダイカルボン酸などの芳香族カルボン酸の金属化合物;アゾ染料又はアゾ顔料の金属塩又は金属錯体;スルフォン酸又はカルボン酸基を側鎖に持つ高分子型化合物;ホウ素化合物;尿素化合物;ケイ素化合物;カリックスアレーン。
該荷電制御剤の含有量は、トナー粒子の内部に添加する場合、ビニル樹脂100質量部に対して、好ましくは0.1質量部以上10.0質量部以下、より好ましくは0.1質量部以上5.0質量部以下である。また、トナー粒子の外部に添加する場合、トナー粒子100質量部に対して、好ましくは0.005質量部以上1.000質量部以下、より好ましくは0.010質量部以上0.300質量部以下である。
トナー粒子中の離型剤の含有量は、1質量%以上30質量%以下であることが好ましく、3質量%以上25質量%以下であることがより好ましい。
離型剤としては、以下のものが例示できる。
パラフィンワックス、マイクロクリスタリンワックス、ペトロラクタムなどの石油系ワックス及びその誘導体;モンタンワックス及びその誘導体;フィッシャートロプシュ法による炭化水素ワックス及びその誘導体;ポリエチレンなどのポリオレフィンワックス及びその誘導体;カルナバワックス、キャンデリラワックスなどの天然ワックス及びその誘導体。
該誘導体には、酸化物や、ビニルモノマーとのブロック共重合物、グラフト変性物が含まれる。また、高級脂肪族アルコール、ステアリン酸、パルミチン酸などの脂肪酸、酸アミドワックス、エステルワックス、硬化ヒマシ油及びその誘導体、植物系ワックス、動物性ワックスなども離型剤として使用できる。
これらの離型剤の中では、エステルワックス、パラフィンワックスが好ましく用いられる。
上述のように離型剤の融点は、DSCにて測定した際の最大吸熱ピークのピーク温度とする。また、最大吸熱ピークのピーク温度は、ASTM D3417−99に準じて行う。
これらの測定には、例えば、パーキンエルマー社製DSC−7、TAインストルメント社製DSC2920、TAインストルメント社製Q1000を用いることができる。
装置検出部の温度補正は、インジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正については、インジウムの融解熱を用いる。測定サンプルには、アルミニウム製のパンを用い、対照用に空のアルミニウム製パンをセットし、測定する。
黒色着色剤としては、カーボンブラック、磁性体、イエロー、マゼンタ及びシアン着色剤を用い黒色に調色されたものが利用できる。
本発明において、磁性一成分現像方式を用いることも可能である。この場合、トナーの着色剤としては磁性体を用いた磁性トナーが好ましい。
磁性体の窒素吸着法によるBET比表面積は、2.0m2/g以上20.0m2/g以下であることが好ましく、3.0m2/g以上10.0m2/g以下であることがより好ましい。
磁性体の形状としては、多面体、8面体、6面体、球形、針状、鱗片状などがあるが、多面体、8面体、6面体、球形などの異方性の少ないものが、画像濃度を高めるうえで好ましい。
磁性体は、トナー中での均一分散性や色味の観点から、個数平均粒径が0.10μm以上0.40μm以下であることが好ましい。
磁性体の個数平均粒径は、透過型電子顕微鏡を用いて測定できる。具体的には、エポキシ樹脂中へ観察すべきトナーを十分に分散させた後、温度40℃の雰囲気中で2日間硬化させて硬化物を得る。得られた硬化物をミクロトームにより薄片状のサンプルとして、透過型電子顕微鏡(TEM)において1万倍〜4万倍の拡大倍率の写真で、視野中の100個の磁性体の粒子径を測定する。そして、磁性体の投影面積に等しい円の相当径を基に、個数平均粒径の算出を行う。また、画像解析装置により粒径を測定することも可能である。
トナー粒子内での磁性体の存在状態としては、トナー粒子の表面に磁性体が露出せず、表面より内部に存在していることが好ましい。また、トナー粒子間での磁性体の存在量や
存在状態が均一であることが好ましい。このような磁性体の分散状態を有するトナーとしては、例えば、磁性体に所望の疎水化処理を施し、さらに懸濁重合によりトナー粒子が製造されたトナーが挙げられる。
まず、第一鉄塩水溶液に、鉄成分に対して当量又は当量以上の水酸化ナトリウムなどのアルカリを加え、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製する。調製された水溶液のpHを7.0以上に維持しながら空気を吹き込み、水溶液を70℃以上に加温しながら水酸化第一鉄の酸化反応を行い、磁性酸化鉄粒子の芯となる種晶を生成する。
次に、種晶を含むスラリーに、前に加えたアルカリの添加量を基準として約1当量の硫酸第一鉄を含む水溶液を加える。そして、得られた混合液のpHを5.0〜10.0に維持し、空気を吹き込みながら水酸化第一鉄の反応を進め、種晶を芯にして磁性酸化鉄粒子を成長させる。この時、任意のpH及び反応温度、撹拌条件を選択することにより、磁性酸化鉄の形状及び磁気特性をコントロールすることが可能である。酸化反応が進むにつれて混合液のpHは酸性側に移行していくが、混合液のpHは5.0未満にしない方が好ましい。
酸化反応終了後、珪酸ソーダなどの珪素源を添加し、混合液のpHを5.0以上8.0以下に調整し、磁性酸化鉄粒子表面に珪素の被覆層を形成する。得られた磁性酸化鉄粒子を定法によりろ過、洗浄、乾燥することにより磁性酸化鉄(磁性体)を得ることができる。
乾式にて疎水化処理を実施する場合、洗浄、ろ過、乾燥した磁性酸化鉄にカップリング剤を用いて疎水化処理を行う。
湿式にて疎水化処理を実施する場合、上記得られた磁性酸化鉄を水系媒体中に再分散させるか、又は、上記洗浄及び濾過して得られた磁性酸化鉄を乾燥せずに別の水系媒体中に再分散させて、カップリング剤による処理を行う。
例えば、再分散液を十分撹拌しながらシランカップリング剤又はシラン化合物を添加し、加水分解後温度を上げる、又は、加水分解後に分散液のpHをアルカリ域に調整することでカップリング処理を行う。
RmSiYn 式(I)
[式(I)中、Rはアルコキシ基、又は、水酸基を示し、Yはアルキル基、フェニル基又はビニル基を示し、該アルキル基は、置換基として、アミノ基、ヒドロキシ基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基などを有していてもよい。mは1〜3の整数を示し、nは1〜3の整数を示す。但し、m+n=4である。]
該式(I)で示されるシランカップリング剤又はシラン化合物としては、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン、β−(3,4エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルメチルジエトキシシラン、γ−アミノプロピルトリエトキシシラン、N−フェニル−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリアセトキシシラン、メチルトリメトキシシラン、ジメチルジメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、ジフェニルジエトキシシラン、n−プロピルトリメトキ
シシラン、イソプロピルトリメトキシシラン、n−ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、トリメチルメトキシシラン、n−ヘキシルトリメトキシシラン、n−オクチルトリメトキシシラン、n−オクチルトリエトキシシラン、n−デシルトリメトキシシラン、ヒドロキシプロピルトリメトキシシラン、n−ヘキサデシルトリメトキシシラン、n−オクタデシルトリメトキシシラン、及びこれらの加水分解物などを挙げることができる。
上記式(I)のYがアルキル基であるものが好ましい。中でも好ましいのは、炭素数3〜6のアルキル基である。
上記シランカップリング剤又はシラン化合物を用いる場合、単独で、又は複数を併用することができる。
複数を併用する場合、それぞれのシランカップリング剤又はシラン化合物で個別に処理してもよいし、同時に処理してもよい。
該カップリング剤又はシラン化合物の総処理量は、磁性体100質量部に対して、0.9〜3.0質量部であることが好ましく、磁性体の表面積、カップリング剤又はシラン化合物の反応性などに応じてその量を調整するとよい。
トナー粒子中の磁性体の含有量は、ビニル樹脂100質量部に対して、40質量部以上90質量部以下であることが好ましく、50質量部以上70質量部以下であることがより好ましい。
トナー粒子中の磁性体の含有量の測定は、パーキンエルマー社製熱分析装置[TGA7]を用いて測定することができる。測定方法は以下のとおりである。
窒素雰囲気下において、昇温速度25℃/分で、常温から900℃までトナーを加熱する。100℃から750℃まで間の減量質量%を結着樹脂の量とし、残存質量を近似的に磁性体の量とする。
具体的には、C.I.ピグメントイエロー12、13、14、15、17、62、73、74、83、93、94、95、97、109、110、111、120、128、129、138、147、150、151、154、155、168、180、185、214が挙げられる。
マゼンタ着色剤としては、縮合アゾ化合物、ジケトピロロピロール化合物、アントラキノン化合物、キナクリドン化合物、塩基染料レーキ化合物、ナフトール化合物、ベンズイミダゾロン化合物、チオインジゴ化合物、ペリレン化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントレッド2、3、5、6、7、23、48:2、48:3、48:4、57:1、81:1、122、146、166、169、177、184、185、202、206、220、221、238、254、269、C.I.ピグメントバイオレッド19が挙げられる。
シアン着色剤としては、銅フタロシアニン化合物及びその誘導体、アントラキノン化合物、塩基染料レーキ化合物が挙げられる。
具体的には、C.I.ピグメントブルー1、7、15、15:1、15:2、15:3、15:4、60、62、66が挙げられる。
これらの着色剤は、単独又は混合し、さらには固溶体の状態で用いることができる。着色剤は、色相角、彩度、明度、耐光性、OHP透明性、トナー粒子中への分散性の点から選択される。着色剤の添加量は、重合性単量体又はビニル樹脂100質量部に対して、1〜20質量部添加して用いられる。
まず、粉砕法により製造する場合を説明する。
ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤、並びに、必要に応じて離型剤及び荷電制御剤などをヘンシェルミキサ、ボールミルなどの混合機により十分混合する。その後、加熱ロール、ニーダー、エクストルーダーのような熱混練機を用いて溶融混練して、トナー材料を分散又は溶解させ、冷却固化、粉砕後、分級、必要に応じて表面処理を行って、トナー粒子を得る。
分級及び表面処理の順序はどちらが先でもよい。分級工程においては、生産効率の観点から、多分割分級機を用いることが好ましい。
懸濁重合法では、ビニル樹脂を生成しうる重合性単量体、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂及び着色剤、並びに、必要に応じて、離型剤、重合開始剤、架橋剤及び荷電制御剤などのその他の添加剤を、分散機によって均一に溶解又は分散させて重合性単量体組成物を得る。
分散機としては、ホモジナイザー、ボールミル、超音波分散機などが挙げられる。
次いで、得られた重合性単量体組成物を、分散剤を含有する水系媒体中に懸濁し、該重合性単量体組成物の粒子を形成する。このとき、高速攪拌機又は超音波分散機のような高速分散機を使用して一気に所望のトナー粒子のサイズとするほうが、得られるトナー粒子の粒径がシャープになる。また、該重合性単量体組成物の粒子の形成後は、通常の攪拌機を用いて、粒子状態が維持され、かつ、粒子の浮遊及び沈降が防止される程度の攪拌を行えばよい。
さらに、重合性単量体組成物の粒子に含有される重合性単量体を重合させて、トナー粒子を得る。ここで、重合温度は40℃以上、一般的には50℃以上90℃以下の温度に設定するとよい。
また、重合開始剤の添加時期は、重合性単量体中に他の添加剤を添加するときに同時に加えてもよいし、水系媒体中に懸濁する直前に混合してもよい。また、重合反応を開始する前に重合開始剤を加えることもできる。
得られたトナー粒子は、個々のトナー粒子の形状がほぼ球形に揃っているため、規制部での流動性が向上しやすく、摩擦帯電しやすくなるため、規制不良を抑制しやすくなる。
スチレン;α−メチルスチレン、β−メチルスチレン、ο−メチルスチレン、m−メチルスチレン、p−メチルスチレン、p−メトキシスチレン、p−フェニルスチレンのようなスチレン誘導体;
メチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、iso−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、ジブチルフォスフェートエチルアクリレート、2−ベンゾイルオキシエチルアクリレートのようなアクリル系重合性単量体;
メチルメタクリレート、エチルメタクリレート、ジブチルフォスフェートエチルメタクリレートのようなメタクリル系重合性単量体;
メチレン脂肪族モノカルボン酸エステル;酢酸ビニル、プロピオン酸ビニルのようなビニルエステル;ビニルメチルエーテル、ビニルエチルエーテル、ビニルイソブチルエーテルのようなビニルエーテル;ビニルメチルケトン、ビニルヘキシルケトン、ビニルイソプロピルケトンのようなビニルケトン。
これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。
該重合性単量体の中でも、スチレン系単量体、アクリル酸エステル系単量体、メタクリル酸エステル系単量体を好適に例示できる。
また、重合性単量体中、スチレン系単量体の含有量が、60質量%以上90質量%以下であることが好ましく、65質量%以上85質量%以下であることがより好ましい。一方、アクリル酸エステル系単量体、又は、メタクリル酸エステル系単量体の含有量が、10質量%以上40質量%以下であることが好ましく、15質量%以上35質量%以下であることがより好ましい。
さらに、スチレンとアクリル酸n−ブチルとを組み合わせて使用することが、吸湿性を低下させやすく、高温高湿環境下での転写性を良化しやすいため、より好ましい。
懸濁重合法では、水系媒体中でトナー粒子を製造するため、極性樹脂を含有させることによって、トナー粒子の表面に極性樹脂を配置することができ、帯電性が向上しやすくなり、現像ゴーストを抑制しやすい。
極性樹脂としては、以下のものが例示できる。
ポリスチレン、ポリビニルトルエンなどのスチレン及びその置換体の単重合体;
スチレン−プロピレン共重合体、スチレン−ビニルトルエン共重合体、スチレン−ビニルナフタリン共重合体、スチレン−アクリル酸メチル共重合体、スチレン−アクリル酸エチル共重合体、スチレン−アクリル酸ブチル共重合体、スチレン−アクリル酸オクチル共重合体、スチレン−アクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸メチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸エチル共重合体、スチレン−メタアクリル酸ブチル共重合体、スチレン−メタクリル酸ジメチルアミノエチル共重合体、スチレン−ビニルメチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルエチルエーテル共重合体、スチレン−ビニルメチルケトン共重合体、スチレン−ブタジエン共重合体、スチレン−イソプレン共重合体、スチレン−マレイン酸共重合体、スチレン−マレイン酸エステル共重合体などのスチレン系共重合体;
ポリメチルメタクリレート、ポリブチルメタクリレート、ポリ酢酸ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリビニルブチラール、シリコーン樹脂、ポリアミド樹脂、エポキシ樹脂、ポリアクリル酸樹脂、テルペン樹脂、フェノール樹脂など。
これらは単独で又は複数種を組み合わせて用いることができる。また、これらポリマー中に、アミノ基、カルボキシ基、水酸基、スルフォン酸基、グリシジル基、ニトリル基などの官能基を導入してもよい。
具体例としては、2,2’−アゾビス−(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス−4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスイソブチロニトリルのようなアゾ系又はジアゾ系重合開始剤;ベンゾイルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシ2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシピバレート、t−ブチルパーオキシイソブチレート、t−ブチルパーオキシネオデカノエート、メチルエチルケトンパーオキサイド、ジイソプロピルパーオキシカーボネート、クメンヒドロパーオキサイド、2,4−ジクロロベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイドのような過酸化物系重合開始剤などが挙げられる。
−ブタンジオールジメタクリレートなどのような二重結合を2個有するカルボン酸エステル;ジビニルアニリン、ジビニルエーテル、ジビニルスルフィド、ジビニルスルホン、1−6ヘキサンジオールジアクリレートなどのジビニル化合物が挙げられる。これらは単独で、又は2種以上の混合物として用いられる。
該架橋剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.01質量部以上5.00質量部以下であることが好ましい。
無機分散剤としては、燐酸三カルシウム、燐酸マグネシウム、燐酸アルミニウム、燐酸亜鉛、ヒドロキシアパタイトなどの燐酸多価金属塩;炭酸カルシウム、炭酸マグネシウムなどの炭酸塩;メタケイ酸カルシウム、硫酸カルシウム、硫酸バリウムなどの無機塩;水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム、水酸化アルミニウムなどの無機化合物が挙げられる。
該分散剤の添加量は、重合性単量体100質量部に対して、0.2質量部以上20.0質量部以下であることが好ましい。また、分散剤は単独で用いてもよいし、複数種を併用してもよい。
上記重合性単量体の重合を終了して樹脂粒子を得た後、樹脂粒子が水系媒体に分散された分散体を、非晶性ポリエステル樹脂の軟化点近辺(例えば、非晶性ポリエステルの軟化点±20℃、好ましくは軟化点±10℃)、具体的には100℃程度まで昇温し、その温度で、30分以上保持することが好ましい。
該保持時間は、60分以上であることがより好ましく、120分以上であることがさらに好ましい。該保持時間の上限は、製造効率の関係から24時間以下程度である。
その後、分散体を、樹脂粒子のガラス転移温度(Tg)以下まで、冷却速度5.0℃/分以上で冷却することが好ましく、冷却速度20℃/分以上で冷却することがより好ましく、冷却速度100℃/分以上で冷却することがさらに好ましい。該冷却速度の上限は、製造効率の関係から500℃/分以下程度である。
また、上記冷却速度で冷却した後に、その温度で30分以上保持することが好ましい。
該保持時間は、60分以上であることがより好ましく、120分以上であることがさらに好ましい。該保持時間の上限は、製造効率の関係から24時間以下程度である。
また、製造工程(無機微粒子の混合前)に分級工程を入れ、トナー粒子中に含まれる粗粉や微粉を除去することも可能である。
トナーの流動性改良及び帯電均一化のために、無機微粒子を用いる場合、無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は4nm以上80nm以下であることが好ましく、より好ましくは6nm以上40nm以下である。また、一次粒子の個数平均粒径が80nm以上200nm以下の無機微粒子を併用することも好ましい態様である。
無機微粒子の一次粒子の個数平均粒径は、走査型電子顕微鏡により拡大撮影したトナーの写真を用いて行うとよい。
該無機微粒子の含有量は、トナー粒子100質量部に対して、0.1質量部以上3.0質量部以下であることが好ましい。無機微粒子の含有量は、蛍光X線分析を用い、標準試料から作成した検量線を用いて定量できる。
が例示できる。シリカ微粒子としては、例えば、ケイ素ハロゲン化物の蒸気相酸化により生成された、いわゆる乾式法又はヒュームドシリカと称される乾式シリカ、及び、水ガラスなどから製造される、いわゆる湿式シリカが挙げられる。
表面及びシリカ微粒子の内部にあるシラノール基が少なく、また、Na2O、SO3 2−などの製造残滓の少ない乾式シリカが好ましい。また、乾式シリカにおいては、製造工程において、例えば、塩化アルミニウム、塩化チタンなど他の金属ハロゲン化合物をケイ素ハロゲン化合物とともに用いることによって、シリカと他の金属酸化物の複合微粒子を得ることも可能であり、それらも包含する。
該無機微粒子は疎水化処理剤により疎水化処理されていることが、トナーの帯電量の調整及び環境安定性の向上の観点からより好ましい。
疎水化処理剤としては、例えば、以下のものが挙げられる。
γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルトリメトキシシラン、γ−(2−アミノエチル)アミノプロピルメチルジメトキシシラン、γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン、N−β−(N−ビニルベンジルアミノエチル)γ−アミノプロピルトリメトキシシラン塩酸塩、ヘキサメチルジシラザン、メチルトリメトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、イソブチルトリメトキシシラン、ヘキシルトエリメトキシシラン、オクチルトリメトキシシラン、デシルトリメトキシシラン、ドデシルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、o−メチルフェニルトリメトキシシラン、p−メチルフェニルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、ヘキシルトリエトキシシラン、オクチルトリエトキシシラン、デシルトリエトキシシラン、ドデシルトリエトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、o−メチルフェニルトリエトキシシラン、p−メチルフェニルトリエトキシシラン。
上記無機微粒子以外に、さらに他の添加剤を少量用いてもよい。
例えば、フッ素樹脂粒子、ステアリン酸亜鉛粒子、ポリフッ化ビニリデン粒子のような滑剤粒子;酸化セリウム粒子、炭化ケイ素粒子、チタン酸ストロンチウム粒子などの研磨剤;ケーキング防止剤;逆極性の有機微粒子及び無機微粒子などが挙げられる。これらの添加剤も疎水化処理して用いるとよい。
該トナーが、本発明のトナーであることを特徴とする。
<25%面積率、50%面積率、及びドメインの面積比(上記[A/B])の測定方法>
可視光硬化性樹脂(商品名、アロニックスLCRシリーズD−800;東亞合成社製)中にトナーを十分に分散させた後、短波長光を照射し硬化させる。得られた硬化物を、ダイアモンドナイフを備えたウルトラミクロトームで切り出し、250nmの薄片状サンプルを作製する。次いで、切り出したサンプルを透過型電子顕微鏡(日本電子社製電子顕微鏡JEM−2800)(TEM―EDX)を用いて40000〜50000倍の倍率で拡大し、トナーの断面の観察及びEDXを用いた元素マッピングを行う。
なお、観察するトナーの断面は以下のように選択する。まずトナー断面画像から、トナーの断面積を求め、その断面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)を求める。この円相当径とトナーの重量平均粒径(D4)との差の絶対値が1.0μm以内のトナー断面画像についてのみ観察する。
マッピング条件としては、保存レート:9000〜13000、積算回数:120回とする。
観察画像より確認される樹脂由来の各ドメインの中でC元素に由来するスペクトル強度と、O元素に由来するスペクトル強度を測定し、O元素に対するC元素のスペクトル強度が0.05以上のドメインが非晶性ポリエステルのドメインである。非晶性ポリエステル
のドメインを特定後、二値化処理により、トナー断面に存在する非晶性ポリエステルのドメインの総面積に対する、トナーの断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積割合(面積%)を計算する。なお、二値化処理には、Image Pro PLUS(日本ローパー株式会社製)を用いる。
算出方法は、以下の通りである。上記TEM画像において、トナー断面の輪郭及び中心点を求める。トナー断面の輪郭は、上記TEM画像で観察されるトナーの表面に沿ったものとする。また、トナー断面の中心点は、トナー断面の重心とする。
得られた中心点から、トナー断面の輪郭上の点に対して線を引く。該線上において、輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%の位置を特定する。
そして、トナー断面の輪郭に対して一周分、この操作を行い、トナー断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%の境界線を明示する。
該25%の境界線が明示されたTEM画像をもとに、トナーの断面の輪郭と、該25%の境界線とで囲まれた領域に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積を計測する。そして、トナー断面に存在する非晶性ポリエステルドメインの総面積を計測し、該総面積を基準とした面積%を算出する。
(50%面積率)
上述の25%面積率の測定と同様にして、トナー断面の輪郭から該輪郭と該断面の中心点間の距離の50%の境界線を明示する。トナーの断面の輪郭と、該50%の境界線とで囲まれた領域に存在する非晶性ポリエステルのドメインの面積を計測し、ドメイン総面積を基準とした面積%を算出する。
(ドメインの面積比)
また、トナーの断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に存在する非晶性ポリエステルドメインの面積(すなわち、上記[A])と、トナーの断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%〜50%に存在する非晶性ポリエステルドメインの面積(すなわち、上記[B])との比(ドメインの面積比:[A/B])は、上記より得られた計算値を用い、下記式により得られる。
ドメインの面積比(すなわち、[A/B])=
(25%面積率(面積%))/[(50%面積率(面積%))−(25%面積率(面積%))]
上記と同様にEDXを用いて元素マッピングを行い、非晶性ポリエステルのドメインを特定する。
そして、非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径は、該ドメインの面積から円相当径を求めて得られる。測定数は100個とし、100個のドメインの円相当径の算術平均値を、非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径とする。なお、該個数平均径を算出するトナーは以下のように決定する。
まず、トナー断面画像から、トナーの断面積を求め、その断面積と等しい面積を持つ円の直径(円相当径)を求める。この円相当径とトナーの重量平均粒径(D4)との差の絶対値が1.0μm以内のトナー断面画像についてのみ、個数平均径の算出を行う。
樹脂のガラス転移温度(Tg)は、示差走査熱量計「Q2000」(TA Instruments社製)を用いて、ASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて測定を行う。
測定温度範囲20℃から180℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
なお、測定においては、試料を昇温速度10℃/minで、20℃から180℃まで昇温させ、続いて、降温速度10℃/minで、180℃から10℃まで降温し、その後昇温速度10℃/minで、10℃から180℃まで再度昇温を行う。
この2回目の昇温過程の温度30℃〜90℃の範囲における比熱変化から求める。
ガラス転移温度(Tg:単位「℃」)は、該比熱変化が出る前と出た後のベースラインの中間点の線と示差熱曲線との交点とする。
非晶性ポリエステル樹脂及びトナーの軟化点の測定は、定荷重押し出し方式の細管式レオメータ「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」(島津製作所社製)を用い、装置付属のマニュアルに従って行なう。本装置では、測定試料の上部からピストンによって一定荷重を加えつつ、シリンダに充填した測定試料を昇温させて溶融し、シリンダ底部のダイから溶融された測定試料を押し出し、この際のピストン降下量と温度との関係を示す流動曲線を得ることができる。
本発明においては、「流動特性評価装置 フローテスターCFT−500D」に付属のマニュアルに記載の「1/2法における溶融温度」を軟化点とする。なお、1/2法における溶融温度とは、次のようにして算出されたものである。まず、流出が終了した時点におけるピストンの降下量Smaxと、流出が開始した時点におけるピストンの降下量Sminとの差の1/2を求める(これをXとする。X=(Smax−Smin)/2)。そして、流動曲線においてピストンの降下量がXとSminの和となるときの流動曲線の温度が、1/2法における溶融温度である。
測定試料は、約1.0gの試料を、25℃の環境下で、錠剤成型圧縮機(例えば、NT−100H、エヌピーエーシステム社製)を用いて約10MPaで、約60秒間圧縮成型し、直径約8mmの円柱状としたものを用いる。
CFT−500Dの測定条件は、以下の通りである。
試験モード:昇温法
昇温速度:4.0℃/min
開始温度:50℃
到達温度:200℃
測定間隔:1.0℃
ピストン断面積:1.000cm2
試験荷重(ピストン荷重):10.0kgf(0.9807MPa)
予熱時間:300秒
ダイの穴の直径:1.0mm
ダイの長さ:1.0mm
酸価は試料1gに含まれる酸を中和するために必要な水酸化カリウムのmg数である。樹脂の酸価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム7gを5mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.1モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.1モル/L塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料2.0gを200mLの三角フラスコに精秤し、トルエン/エタノール(2:1)の混合溶液100mLを加え、5時間かけて溶解する。次いで、指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液を用いて滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
試料を用いない(すなわちトルエン/エタノール(2:1)の混合溶液のみとする)以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、酸価を算出する。
A=[(C−B)×f×5.61]/S
ここで、A:酸価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)である。
水酸基価とは,試料1gをアセチル化するとき、水酸基と結合した酢酸を中和するのに要する水酸化カリウムのmg数である。樹脂の水酸基価はJIS K 0070−1992に準じて測定されるが、具体的には、以下の手順に従って測定する。
(1)試薬の準備
特級無水酢酸25gをメスフラスコ100mLに入れ、ピリジンを加えて全量を100mLにし、十分に振りまぜてアセチル化試薬を得る。得られたアセチル化試薬は、湿気、炭酸ガスなどに触れないように、褐色びんにて保存する。
フェノールフタレイン1.0gをエチルアルコール(95体積%)90mLに溶かし、イオン交換水を加えて100mLとし、フェノールフタレイン溶液を得る。
特級水酸化カリウム35gを20mLの水に溶かし、エチルアルコール(95体積%)を加えて1Lとする。炭酸ガスなどに触れないように、耐アルカリ性の容器に入れて3日間放置後、ろ過して、水酸化カリウム溶液を得る。得られた水酸化カリウム溶液は、耐アルカリ性の容器に保管する。前記水酸化カリウム溶液のファクターは、0.5モル/L塩酸25mLを三角フラスコに取り、前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定し、中和に要した前記水酸化カリウム溶液の量から求める。前記0.5モル/L塩酸は、JIS K 8001−1998に準じて作製されたものを用いる。
(2)操作
(A)本試験
粉砕した樹脂の試料1.0gを200mL丸底フラスコに精秤し、これに前記のアセチル化試薬5.0mLを、ホールピペットを用いて正確に加える。この際、試料がアセチル化試薬に溶解しにくいときは、特級トルエンを少量加えて溶解する。
フラスコの口に小さな漏斗をのせ、約97℃のグリセリン浴中にフラスコ底部約1cmを浸して加熱する。このときフラスコの首の温度が浴の熱を受けて上昇するのを防ぐため、丸い穴をあけた厚紙をフラスコの首の付根にかぶせることが好ましい。
1時間後、グリセリン浴からフラスコを取り出して放冷する。放冷後、漏斗から水1mLを加えて振り動かして無水酢酸を加水分解する。さらに完全に加水分解するため、再びフラスコをグリセリン浴中で10分間加熱する。放冷後、エチルアルコール5mLで漏斗及びフラスコの壁を洗う。
指示薬として前記フェノールフタレイン溶液を数滴加え、前記水酸化カリウム溶液で滴定する。なお、滴定の終点は、指示薬の薄い紅色が約30秒間続いたときとする。
(B)空試験
樹脂の試料を用いない以外は、上記操作と同様の滴定を行う。
(3)得られた結果を下記式に代入して、水酸基価を算出する。
A=[{(B−C)×28.05×f}/S]+D
ここで、A:水酸基価(mgKOH/g)、B:空試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、C:本試験の水酸化カリウム溶液の添加量(mL)、f:水酸化カリウム溶液のファクター、S:試料(g)、D:樹脂の酸価(mgKOH/g)である。
結晶性ポリエステル樹脂の融点は、示差走査熱量分析装置「Q2000」(TA Instruments社製)を用いてASTM D3418−82に準じて測定する。
装置検出部の温度補正はインジウムと亜鉛の融点を用い、熱量の補正についてはインジウムの融解熱を用いる。
具体的には、試料約2mgを精秤し、これをアルミニウム製のパンの中に入れ、リファレンスとして空のアルミニウム製のパンを用いて測定する。
測定温度範囲30℃から200℃の間で、昇温速度10℃/minで測定を行う。
なお、測定においては、試料を昇温速度10℃/minで、30℃から200℃まで昇温させ、続いて、降温速度10℃/minで、200℃から30℃まで降温し、その後昇温速度10℃/minで、30℃から200℃まで再度昇温を行う。
この2回目の昇温過程の温度30℃〜200℃の範囲における示差走査熱量曲線の最大吸熱ピークのピーク温度を融点[単位:℃]とする。
結晶性ポリエステルの重量平均分子量は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を用い、以下のようにして測定する。
40℃のヒートチャンバー中でカラムを安定化させ、この温度におけるカラムに溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を毎分1mLの流速で流し、THF試料溶液を約100μL注入して測定する。
試料の分子量測定にあたっては試料の有する分子量分布を数種の単分散ポリスチレン標準試料により作成された検量線の対数値とカウント値との関係から算出する。
検量線作成用の標準ポリスチレン試料としては、東ソー社製又は昭和電工社製の分子量が1×102〜1×107程度のものを用い、少なくとも10点程度の標準ポリスチレン試料を用いるのが適当である。
また、検出器はRI(屈折率)検出器を用いる。
なお、カラムとしては市販のポリスチレンジェルカラムを複数本組み合わせるのが良く、昭和電工社製のshodex GPC KF−801、802、803、804、805、806、807、800Pの組み合せ、東ソー社製のTSKgel G1000H(HXL)、G2000H(HXL)、G3000H(HXL)、G4000H(HXL)、G5000H(HXL)、G6000H(HXL)、G7000H(HXL)、TSKgurd columnの組み合せを用いる。
また、試料は以下のようにして作製する。
試料をTHF中に入れ、25℃で数時間放置した後、十分振とうし、THFとよく混ぜ(試料の合一体が無くなるまで)、さらに12時間以上静置する。その時THF中への放置時間が24時間となるようにする。その後、サンプル処理フィルター〔ポアサイズ0.2μm以上0.5μm以下、マイショリディスクH−25−2(東ソー社製)を使用する。〕を通過させたものをGPCの試料とする。また、試料濃度は、樹脂成分が0.5mg/mL以上5.0mg/mL以下となるように調整する。
トナー粒子の重量平均粒径(D4)は、100μmのアパーチャーチューブを備えた細孔電気抵抗法による精密粒度分布測定装置「コールター・カウンター Multisizer 3」(登録商標、ベックマン・コールター社製)と、測定条件設定及び測定データ解析をするための付属の専用ソフト「ベックマン・コールター Multisizer
3 Version3.51」(ベックマン・コールター社製)を用いて、実効測定チャンネル数2万5千チャンネルで測定し、測定データの解析を行ない、算出する。
測定に使用する電解水溶液は、特級塩化ナトリウムをイオン交換水に溶解して濃度が約1質量%となるようにしたもの、例えば、「ISOTON II」(ベックマン・コールター社製)が使用できる。
なお、測定及び解析を行う前に、以下のように専用ソフトの設定を行う。
専用ソフトの「標準測定方法(SOM)を変更画面」において、コントロールモードの総カウント数を50000粒子に設定し、測定回数を1回、Kd値は「標準粒子10.0μm」(ベックマン・コールター社製)を用いて得られた値を設定する。閾値/ノイズレベルの測定ボタンを押すことで、閾値とノイズレベルを自動設定する。また、カレントを1600μAに、ゲインを2に、電解液をISOTON IIに設定し、測定後のアパーチャーチューブのフラッシュにチェックを入れる。
専用ソフトの「パルスから粒径への変換設定画面」において、ビン間隔を対数粒径に、粒径ビンを256粒径ビンに、粒径範囲を2μmから60μmまでに設定する。
具体的な測定法は以下の通りである。
(1)Multisizer 3専用のガラス製250mL丸底ビーカーに前記電解水溶液約200mLを入れ、サンプルスタンドにセットし、スターラーロッドの撹拌を反時計回りで24回転/秒にて行なう。そして、専用ソフトの「アパーチャーのフラッシュ」機能により、アパーチャーチューブ内の汚れと気泡を除去しておく。
(2)ガラス製の100mL平底ビーカーに前記電解水溶液約30mLを入れ、この中に分散剤として「コンタミノンN」(非イオン界面活性剤、陰イオン界面活性剤、有機ビルダーからなるpH7の精密測定器洗浄用中性洗剤の10質量%水溶液、和光純薬工業社製)をイオン交換水で3質量倍に希釈した希釈液を約0.3mL加える。
(3)発振周波数50kHzの発振器2個を、位相を180度ずらした状態で内蔵し、電気的出力120Wの超音波分散器「Ultrasonic Dispersion System Tetora150」(日科機バイオス社製)の水槽内に所定量のイオン交換水を入れ、この水槽中に前記コンタミノンNを約2mL添加する。
(4)前記(2)のビーカーを前記超音波分散器のビーカー固定穴にセットし、超音波分散器を作動させる。そして、ビーカー内の電解水溶液の液面の共振状態が最大となるようにビーカーの高さ位置を調整する。
(5)前記(4)のビーカー内の電解水溶液に超音波を照射した状態で、トナー粒子約10mgを少量ずつ前記電解水溶液に添加し、分散させる。そして、さらに60秒間超音波分散処理を継続する。なお、超音波分散にあたっては、水槽の水温が10℃以上40℃以下となる様に適宜調節する。
(6)サンプルスタンド内に設置した前記(1)の丸底ビーカーに、ピペットを用いてトナーを分散した前記(5)の電解質水溶液を滴下し、測定濃度が約5%となるように調整する。そして、測定粒子数が50000個になるまで測定を行う。
(7)測定データを装置付属の前記専用ソフトにて解析を行い、重量平均粒径(D4)を算出する。なお、専用ソフトでグラフ/体積%と設定したときの、分析/体積統計値(算術平均)画面の「平均径」が重量平均粒径(D4)である。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、原料モノマーとして、カルボン酸成分とアルコール成分を表1に示すように調整し、入れた後、触媒としてジブチル錫をモノマー総量100部に対して1.5部添加した。
次いで、窒素雰囲気下にて常圧で180℃まで素早く昇温した後、180℃から210℃まで10℃/時間の速度で加熱しながら水を留去して重縮合を行った。
210℃に到達してから反応槽内を5kPa以下まで減圧し、210℃、5kPa以下の条件下にて重縮合を行い、非晶性ポリエステル樹脂A1を得た。
なお、非晶性ポリエステル樹脂A1のガラス転移温度(℃)が65℃前後、酸価(mgKOH/g)が表2の値となるように重合時間を調整した。非晶性ポリエステル樹脂A1の物性を表2に示す。
原料モノマー及び使用量を表1の記載に変更した以外は、非晶性ポリエステル樹脂A1の製造例と同様にして非晶性ポリエステル樹脂A2〜A19を得た。非晶性ポリエステル樹脂A2〜A19の物性を表2に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表3に示す使用量のモノマーを入れた後、触媒としてジオクチル酸錫をモノマー総量100部に対して1部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させ、結晶性ポリエステル樹脂C1を得た。物性を表4に示す。
モノマーを表3に記載の様に変更する以外は、結晶性ポリエステル樹脂C1の製造例と同様にして結晶性ポリエステル樹脂C2〜C6を得た。物性を表4に示す。
窒素導入管、脱水管、撹拌器及び熱電対を装備した反応槽中に、表3に示す使用量のモノマーを入れた後、触媒としてジオクチル酸錫をモノマー総量100部に対して1部添加し、窒素雰囲気下で140℃に加熱して常圧下で水を留去しながら6時間反応させた。次いで、200℃まで10℃/時間で昇温しつつ反応させ、200℃に到達してから2時間反応させた後、反応槽内を5kPa以下に減圧して200℃で3時間反応させた。
その後、反応槽内の圧力を序々に開放して常圧へ戻した後、表3に示した結晶核剤(n−オクタン酸)を加え、常圧下にて200℃で2時間反応させた。その後、再び反応槽内を5kPa以下へ減圧して200℃で3時間反応させることにより結晶性ポリエステル樹脂C7を得た。得られた樹脂C7のMALDI−TOFMSのマススペクトルには、樹脂C7の分子鎖末端にn−オクタン酸が結合した組成のピークが確認されたことから、樹脂C7の分子鎖末端に結晶核剤が結合していることが確認された。物性を表4に示す。
モノマーを表3に記載の様に変更する以外は、結晶性ポリエステル樹脂C7の製造例と同様にして結晶性ポリエステル樹脂C8〜C12を得た。物性を表4に示す。
硫酸第一鉄水溶液中に、鉄元素に対して1.00から1.10当量の水酸化ナトリウム溶液、鉄元素に対しリン元素換算で0.15質量%となる量のP2O5、鉄元素に対して珪素元素換算で0.50質量%となる量のSiO2を混合し、水酸化第一鉄を含む水溶液を調製した。該水溶液のpHを8.0とし、空気を吹き込みながら85℃で酸化反応を行い、種晶を有するスラリー液を調製した。
次いで、このスラリー液に当初のアルカリ量(水酸化ナトリウムのナトリウム成分)に対し0.90から1.20当量となるよう硫酸第一鉄水溶液を加えた後、スラリー液をpH7.6に維持して、空気を吹込みながら酸化反応をすすめ、磁性酸化鉄を含むスラリー液を得た。
得られたスラリー液を濾過、洗浄した後、この含水スラリーを一旦取り出した。この時、含水スラリーを少量採取し、含水量を計っておいた。
次に、この含水スラリーを乾燥せずに別の水系媒体中に投入し、撹拌すると共にスラリーを循環させながらピンミルにて再分散させ、再分散液のpHを約4.8に調整した。
そして、撹拌しながらn−ヘキシルトリメトキシシランカップリング剤を磁性酸化鉄100部に対し1.6部(磁性酸化鉄の量は含水スラリーから含水量を引いた値として計算した)添加し、加水分解を行った。その後、撹拌を十分行い、分散液のpHを8.6にして表面処理を行った。生成した疎水性磁性体をフィルタープレスにてろ過し、多量の水で洗浄した後に100℃で15分、90℃で30分乾燥し、得られた粒子を解砕処理して体積平均粒径が0.21μmの磁性体1を得た。
下記の手順によって、トナーを製造した。
(第一水系媒体の調整)
イオン交換水342.8部にリン酸ナトリウム12水和物3.1部を投入して、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)を用いて、撹拌しながら60℃に加温した。
その後、該水溶液に、イオン交換水12.7部に塩化カルシウム2水和物1.8部を添加した塩化カルシウム水溶液と、イオン交換水14.5部に塩化ナトリウム4.3部を添加した塩化ナトリウム水溶液を添加して撹拌を進め、分散剤を含む第一水系媒体を得た。(重合性単量体組成物の調整)
・スチレン 74.0部
・n−ブチルアクリレート 26.0部
・1−6ヘキサンジオールジアクリレート 0.5部
・サリチル酸アルミニウム化合物 0.5部
(E−101:オリエント化学社製)
・着色剤:磁性体1 60.0部
・非晶性ポリエステル樹脂A1 20.0部
・結晶性ポリエステル樹脂C1 10.0部
上記材料をアトライタ(三井三池化工機(株)製)を用いて均一に分散混合した後、65℃に加温し、そこにパラフィンワックス(最大吸熱ピークのピーク温度:78℃)10.0部を添加混合し、溶解して重合性単量体組成物を得た。
(第二水系媒体の調整)
イオン交換水164.7部にリン酸ナトリウム12水和物0.9部を投入して、パドル撹拌翼を用いて撹拌しながら60℃に加温した後、イオン交換水3.8部に塩化カルシウム2水和物0.5部を添加した塩化カルシウム水溶液を添加して撹拌を進め、分散剤を含む第二水系媒体を得た。
(造粒)
上記第一水系媒体中に上記重合性単量体組成物と重合開始剤としてt−ブチルパーオキシピバレート7.0部を投入し、60℃、窒素雰囲気下において、T.K.ホモミクサー(特殊機化工業株式会社製)にて12000rpmで10分間撹拌しながら造粒し、重合性単量体組成物の液滴を含む造粒液を得た。
(重合/蒸留/乾燥)
上記第二水系媒体中に上記造粒液を全量投入し、パドル撹拌翼で撹拌しながら74℃で3時間反応させた。
反応終了後、98℃で3時間蒸留した後、懸濁液を100℃/minの冷却速度で50℃まで冷却し、50℃にて2時間保持した。その後、塩酸を加えて洗浄し、濾過・乾燥して、重量平均粒径(D4)が8.0μmのトナー粒子を得た。
(外添混合)
得られたトナー粒子100部に対して、ヘキサメチルジシラザン15質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径20nmの疎水性シリカ微粒子0.6部、ヘキサメチルジシラザン5質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径110nmの疎水性シリカ微粒子0.3部、及びオクチルトリメトキシシラン10質量%で表面処理した一次粒子の個数平均粒径50nmの疎水性チタニア微粒子0.3部を三井ヘンシェルミキサ(三井三池化工機株式会社製FM−10型)で混合して、トナー1を得た。
なお、ヘンシェルミキサの撹拌羽根の回転数は4000rpm、混合時間は7分、ジャケット温度は45℃になるように温度調整を行った。得られたトナーの物性を表5に示す。
トナー1の製造例において、表5に示した樹脂に変更した以外は、トナー1の製造例と同様にして、トナー2〜26、28〜31を得た。得られたトナーの物性を表5に示す。
トナー16の製造例において、磁性体60部をカーボンブラック5部に変更した以外は、トナー16の製造例と同様にして、トナー27を得た。得られたトナーの物性を表5に示す。
トナー30の製造例において、磁性体60部をカーボンブラック5部に変更した以外は、トナー30の製造例と同様にして、トナー32を得た。得られたトナーの物性を表5に
示す。
下記の手順によって、トナー担持体1を製造した。
(基体の準備)
基体として、外径10mm(直径)で算術平均粗さRa0.2μmの研削加工したアルミニウム製円筒管にプライマー(商品名、DY35−051;東レダウコーニング社製)を塗布、焼付けしたものを準備した。
(弾性ローラの作製)
基体を金型に配置し、以下の材料を混合した付加型シリコーンゴム組成物を金型内に形成されたキャビティに注入した。
・液状シリコーンゴム材料 100部
(商品名、SE6724A/B;東レ・ダウコーニング社製)
・カーボンブラック 15部
(商品名、トーカブラック#4300;東海カーボン社製)
・耐熱性付与剤としてのシリカ粒子 0.2部
・白金触媒 0.1部
続いて、金型を加熱してシリコーンゴムを温度150℃で15分間加硫して硬化させた。周面に硬化したシリコーンゴム層が形成された基体を金型から脱型した後、当該基体を、さらに温度180℃で1時間加熱して、シリコーンゴム層の硬化反応を完了させた。こうして、基体の外周に膜厚0.5mm、直径11mmのシリコーンゴム弾性層が形成された弾性ローラを作製した。
(表面層の調製)
(イソシアネート基末端プレポリマーの合成)
窒素雰囲気下、反応容器中でトリレンジイソシアネート(TDI)(商品名:コスモネートT80;三井化学社製)17.7部に対し、ポリプロピレングリコール系ポリオール(商品名:エクセノール4030;旭硝子社製)100.0部を反応容器内の温度を65℃に保持しつつ、徐々に滴下した。滴下終了後、温度65℃で2時間反応させた。得られた反応混合物を室温まで冷却し、イソシアネート基含有量3.8質量%のイソシアネート基末端プレポリマーを得た。
(アミノ化合物の合成)
撹拌装置、温度計、還流管、滴下装置及び温度調整装置を取り付けた反応容器中で、攪拌しながらエチレンジアミン100.0部(1.67mol)、純水100部を40℃まで加温した。次に、反応温度を40℃以下に保持しつつ、プロピレンオキシド425.3部(7.35mol)を30分かけて徐々に滴下した。さらに1時間攪拌して反応を行い、反応混合物を得た。得られた反応混合物を減圧下加熱して水を留去し、アミノ化合物426gを得た。
[トナー担持体1の作製]
・イソシアネート基末端プレポリマー 617.9部
・アミノ化合物 34.2部
・カーボンブラック 117.4部
(商品名、MA230;三菱化学社製)
・ウレタン樹脂微粒子 130.4部
(商品名、アートパールC−400;根上工業社製)
を撹拌混合した。
次に、総固形分量が30質量%となるようにメチルエチルケトン(以下「MEK」ともいう。)を加え、表面層形成用塗料を調製した。
次に、先に作製した弾性ローラのシリコーンゴム弾性層の無い部分をマスキングして垂直に立て、1500rpmで回転させ、スプレーガンを30mm/sで下降させながら該塗料を塗布した。
続いて、熱風乾燥炉中で温度180℃、20分間加熱して塗布層を硬化及び乾燥することで弾性層外周に膜厚約8μmの表面層を設けたトナー担持体1を得た。
画出し評価には、市販のレーザープリンタLASERJET PRO P1606(HP社製)を改造して用いた。
上記評価機のプロセスカートリッジを取り出し、カートリッジからクリーニングブレードを取り外し、トナー担持体を上記トナー担持体1に変更し、静電潜像担持体に接触して現像するように設置した。また、現像バイアスは直流のみが印加されるように、外部からバイアスを印加できるように改造した。
さらに、製品トナーを抜き取り、トナー1を120g充填した。カートリッジは、温度15.0℃、相対湿度10%の低温低湿(L/L)環境下に24時間放置した後、L/L環境下にて画出し評価を行った。
評価紙は、普通紙であるXerox Vitality(坪量:75g/m2)、ラフ紙であるOCE RED LABEL(坪量:80g/m2)、薄紙であるCS−520(坪量:52g/m2)を用いた。
画出し評価として、下記評価を行い、下記に示す指標で判断した。評価結果を表6に示す。
評価紙は、上記普通紙と上記ラフ紙を使用した。
印字比率100%のベタ黒画像をそれぞれの評価紙に100枚ずつ片面連続で通紙した。得られた画像の低温定着性(モトル)を目視で確認し、下記指標で判断した。
モトルとは、定着不良画像の一種で、トナー画像が溶融しきらず融け残るためにガサついた画像になることである。表6に結果を示す。
A:100枚全てにモトル発生箇所無し
B:100枚中、1〜2枚にモトル発生箇所有り
C:100枚中、3〜5枚にモトル発生箇所有り
D:100枚中、6〜10枚にモトル発生箇所有り
E:100枚中、11枚以上にモトル発生箇所有り
評価紙は、上記普通紙と上記薄紙を使用した。
印字比率100%のベタ黒画像をそれぞれの評価紙に100枚ずつ両面連続で通紙後、評価紙は評価機上に積載したままで30分間放置した。その後、定着面を目視で確認し、下記指標で判断した。表6に結果を示す。
A:100枚全てに接着発生箇所無し
B:100枚中、1〜2枚に接着発生箇所有り
C:100枚中、3〜5枚に接着発生箇所有り
D:100枚中、6〜10枚に接着発生箇所有り
E:100枚中、11枚以上に接着発生箇所有り
評価紙は上記普通紙を使用した。
印字比率1%の画像を3000枚通紙後、画像の先端50面積%をベタ黒画像とし、後端50面積%をベタ白画像とした画像を出力する。
このベタ黒画像直後のベタ白画像におけるカブリ濃度(%)を、非通紙の濃度(%)との差分で算出した。
なお、カブリ測定には、TC−6DS(東京電色社製)を用い、5点の平均値をもってカブリ濃度(%)とし、下記指標で判断した。なお、表6に結果を示す。
A:カブリ濃度が1.5%未満
B:カブリ濃度が1.5%以上2.0%未満
C:カブリ濃度が2.0%以上2.5%未満
D:カブリ濃度が2.5%以上3.0%未満
E:カブリ濃度が3.0%以上
トナーを表5に記載の様に変更した以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表6に示す。
評価機を市販のカラーレーザープリンタColor Laser Jet CP4525(hp社製)とし、ブラックのカートリッジからクリーニングブレードを取り外し、トナー27、32を用いて画出し評価した以外は、実施例1と同様にして、評価を行った。評価結果を表6に示す。
表5中、A、B、C及びD、並びに、NDは、以下の通り。
A:25%面積率[面積%]
B:50%面積率[面積%]
C:ドメインの面積比
D:非晶性ポリエステルのドメインの個数平均径[μm]
ND:観察されず
Claims (9)
- ビニル樹脂、非晶性ポリエステル樹脂、結晶性ポリエステル樹脂、及び着色剤を含有するトナー粒子を有するトナーであって、
透過型電子顕微鏡で観察される該トナーの断面において、
該ビニル樹脂がマトリクスを形成し、該非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
該トナーの示差走査熱量測定において、
1回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg1st(℃)とし、
2回目の昇温時に測定されるガラス転移温度をTg2nd(℃)とし、
50℃における、ガラス転移温度の上昇速度係数をkとしたときに、
下記式(1)〜(3)の全てを満たすことを特徴とするトナー。
Tg1st≧50 (1)
Tg1st−Tg2nd≧5 (2)
k≧0.04 (3) - 前記非晶性ポリエステル樹脂のSP値をSP(A)とし、
前記結晶性ポリエステル樹脂のSP値をSP(C)としたときに、
下記式(4)の関係を満たす、請求項1に記載のトナー。
−1.50≦{SP(A)−SP(C)}≦0.80 (4) - 前記結晶性ポリエステル樹脂が、炭素数10以上30以下の脂肪族モノアルコール及び炭素数11以上31以下の脂肪族モノカルボン酸からなる群より選ばれる少なくとも一の化合物に由来するモノマーユニットを分子鎖末端に有する、請求項1又は2に記載のトナー。
- 前記非晶性ポリエステル樹脂が、炭素数6以上12以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットと、アルコール成分に由来するモノマーユニットとを有し、
該炭素数6以上12以下の直鎖脂肪族ジカルボン酸に由来するモノマーユニットの含有割合が、該非晶性ポリエステル樹脂を構成するカルボン酸成分に由来する全モノマーユニットに対して、10mol%以上50mol%以下である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のトナー。 - 透過型電子顕微鏡で観察される前記トナーの断面において、
前記ビニル樹脂がマトリクスを形成し、前記非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
該非晶性ポリエステル樹脂のドメインが、該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの総面積に対して、30面積%以上70面積%以下存在している、請求項1〜4のいずれか一項に記載のトナー。 - 透過型電子顕微鏡で観察される前記トナーの断面において、
前記ビニル樹脂がマトリクスを形成し、前記非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
該非晶性ポリエステル樹脂のドメインが、該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の50%以内に、該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの総面積に対して、80面積%以上100面積%以下存在している、請求項1〜5のいずれか一項に記載のトナー。 - 透過型電子顕微鏡で観察される前記トナーの断面において、
前記ビニル樹脂がマトリクスを形成し、前記非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成
しており、
該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%以内に存在する該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの面積をAとし、
該断面の輪郭から、該輪郭と該断面の中心点間の距離の25%〜50%に存在する該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの面積をBとしたときに、
該A及びBが、下記式(5)の関係を満たす、請求項1〜6のいずれか一項に記載のトナー。
A/B≧1.05 (5) - 透過型電子顕微鏡で観察される前記トナーの断面において、
前記ビニル樹脂がマトリクスを形成し、前記非晶性ポリエステル樹脂がドメインを形成しており、
該非晶性ポリエステル樹脂のドメインの個数平均径が、0.3μm以上3.0μm以下である、請求項1〜7のいずれか一項に記載のトナー。 - 静電潜像担持体に形成された静電潜像を現像するトナーと、
該トナーを担持し、該静電潜像担持体にトナーを搬送するトナー担持体と、を備えた現像装置であって、
該トナーが、請求項1〜8のいずれか一項に記載のトナーであることを特徴とする現像装置。
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