JP2015101803A - 炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】凝固浴温度を低下させることなく凝固糸の含水率を減らすことが可能である炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法を提供する。【解決手段】アクリロニトリル系重合体の溶解装置の排出口からノズル孔までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が0.5時間〜20.0時間であり、前記排出口から排出された時点から5分以内に前記重合体溶液の温度を30℃〜85℃とし、その後からノズル孔まで30℃〜85℃に保つ炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法に関する。
炭素繊維は、他の繊維に比べて高い比強度及び比弾性率を有することが知られている。このため、複合材料用補強繊維として、従来からのスポーツ用途及び航空・宇宙用途に加え、自動車や土木、建築、圧力容器、風車ブレード等の一般産業用途にも幅広く展開されつつある。
炭素繊維の中ではアクリロニトリル系炭素繊維が最も広く利用されている。アクリロニトリル系炭素繊維はアクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解してアクリロニトリル系重合体溶液とし、これを用いて湿式紡糸または乾湿式紡糸して、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を得た後、それを200〜300℃の酸化性雰囲気中にて加熱、耐炎化処理して耐炎化繊維とし、更に300〜2500℃の不活性雰囲気にて前記耐炎化繊維を加熱処理することにより得ることができる。しかし、このようにして得られた炭素繊維は、物性や品質には優れるものの、製造費用が高額になるため、特に低コスト化が求められる産業用途分野においては、多用化は十分に実現されていない。
炭素繊維の低コスト化を達成する手段として、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造工程で使用するエネルギーコストを削減する方法がある。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を得る方法としては、上述したとおり、アクリロニトリル系重合体溶液を用いて湿式紡糸または乾湿式紡糸する手法が広く採用されている。この方法では水膨潤状態の凝固糸を延伸して延伸糸とした後、乾燥緻密化処理する工程を含むことが一般的であり、その後更に延伸等の処理を施すことで炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維が得られる。乾燥緻密化させる際は、加熱ロールを通しながら乾燥させることが一般的である。ロールの加熱には電気や蒸気といったエネルギーを使用するため、乾燥負荷を下げることはエネルギーコスト削減に繋がる。
特許文献1には炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を製造するにあたって、凝固浴の温度を低下させることで、凝固糸の膨潤度を低下させる方法が記載されている。凝固糸の膨潤度が低下することで、凝固糸に含まれる含水率も低下するため、凝固糸を延伸した延伸糸の含水率も低下し、結果的に乾燥負荷の低下につながり、エネルギーコストを削減できる。
特開昭59−82420号公報
しかし、特許文献1の方法では、凝固浴温度の低下に伴い、凝固浴中の凝固糸同士が接着してしまうため、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程中にて糸切れなどのトラブルを発生させてしまう。従って、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を安定に製造しつつ、エネルギーコスト削減を達成することが困難であった。
本発明は、前記した問題を解決すること、すなわち、凝固浴温度を低下させることなく凝固糸の含水率を減らすことが可能である炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法を提供することを目的としている。
前記の目的は、以下の発明によって解決される。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、アクリロニトリル系重合体と溶媒の混合物を溶解する溶解装置の排出口から、溶解装置で溶解された重合体溶液をノズル孔から吐出されるまでのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が0.5時間〜20.0時間であり、前記排出口から排出された時点から5分後の前記重合体溶液の温度が30℃〜85℃であり、その後からノズル孔から吐出されるまでの保持温度が30℃〜85℃である炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法である。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、前記保持が1.5時間〜10時間であることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、前記保持温度が45℃〜75℃、前記通過時間が2.5時間〜5.5時間であることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、下記測定方法により得られる、前記溶解装置の排出口から排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aが0.030以上0.160以下であることが好ましい。
アクリロニトリル系重合体溶液の吸光度測定方法
アクリロニトリル系重合体溶液を溶液と同じ溶媒にて質量換算で20倍に希釈し、厚さ1cmのセルに入れ、波長350nmにおける吸光度Xを測定する。また、溶媒のみを厚さ1cmのセルに入れ、波長350nmにおける吸光度Yを測定する。吸光度Xから吸光度Yの値を差し引いた値をアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度とする。吸光度測定時の温度は30℃とする。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Bが0.165以下であることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、前記吸光度Aと前記吸光度Bの比であるB/Aが1.030以上1.350以下であることが好ましい。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法は、凝固糸同士の接着を抑制しつつ、凝固糸の含水率を減らすことが可能となるため、乾燥緻密化時の乾燥負荷を下げることができ、結果的に炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の低コスト化が可能となる。
本発明の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維は、アクリロニトリル系重合体溶液を紡糸して得られる。また、アクリロニトリル系重合体溶液はアクリロニトリル系重合体を溶剤に溶解して得られる。
本発明で用いられるアクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルを主な単量体とし、これを重合して得られる重合体である。アクリロニトリル系重合体は、アクリロニトリルのみから得られるホモポリマーだけでなく、主成分であるアクリロニトリルに加えて他の単量体を用いたアクリロニトリル系重合体であってもよい。
アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリルの配合量は、得られる炭素繊維に求める品質等を勘案して決定でき、例えば、90〜99.5質量%であることが好ましく、96〜99.5質量%であることがより好ましい。アクリロニトリルの配合量が90質量%以上であれば、前駆体繊維を炭素繊維に転換するための焼成工程で、繊維同士の融着を招くことがなく、炭素繊維の優れた品質及び性能を維持できる。加えて、アクリロニトリル系重合体の耐熱性が低下せず、前駆体繊維を紡糸する際に乾燥を抑制することができる。さらに、加熱ローラーや加圧水蒸気による延伸等の処理において、単繊維間の接着を回避できる。アクリロニトリルの配合量が99.5質量%以下であれば、溶剤への溶解性が低下せず、アクリロニトリル系重合体の析出・凝固を防止し、紡糸原液の安定性が維持できるため、前駆体繊維を安定して製造できる。
アクリロニトリル系重合体中のアクリロニトリル以外の単量体としては、アクリロニトリルと共重合可能なビニル系単量体から適宣選択することができ、アクリロニトリル系重合体の親水性を向上させるビニル系単量体、耐炎化促進効果を有するビニル系単量体が好ましい。
アクリロニトリル系重合体の親水性を向上する単量体としては、例えば、カルボキシル基、スルホ基、アミノ基、アミド基、ヒドロキシル基等の親水性の官能基を有するビニル化合物がある。カルボキシル基を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、エタクリル酸、マレイン酸、メサコン酸等が挙げられ、中でもアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸が好ましい。スルホ基を有する単量体としては、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、ビニルスルホン酸、スルホプロピルメタクリレート等が挙げられ、中でも、アリルスルホン酸、メタリルスルホン酸、スチレンスルホン酸、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸が好ましい。アミノ基を有する単量体としては、ジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレート、ターシャリーブチルアミノエチルメタクリレート、アリルアミン、o−アミノスチレン、p−アミノスチレン等が挙げられ、中でもジメチルアミノエチルメタクリレート、ジエチルアミノエチルメタクリレート、ジメチルアミノエチルアクリレート、ジエチルアミノエチルアクリレートが好ましい。アミド基を有する単量体としては、アクリルアミド、メタクリルアミド、ジメチルアクリルアミド、クロトンアミドが好ましい。ヒドロキシル基を有する単量体としては、ヒドロキシメチルメタクリレート、ヒドロキシメチルアクリレート、2―ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、3−ヒドロキシプロピルメタクリレート、3−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレートなどが挙げられる。
このような単量体を配合することで、アクリロニトリル系重合体は親水性が向上する。親水性が向上すると、得られる前駆体繊維の緻密性が向上し、表層部のミクロボイド発生を抑制することができる。上述の単量体は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このようなアクリロニトリル系重合体の親水性を向上させる単量体の配合量は、アクリロニトリル系重合体中0.5〜10.0質量%とすることが好ましく、0.5〜4.0質量%とすることがより好ましい。
耐炎化促進効果を有する単量体としては、アクリル酸、メタクリル酸、エタクリル酸、イタコン酸、クロトン酸、シトラコン酸、マレイン酸、メサコン酸又はこれらの低級アルキルエステル、アルカリ金属塩、アンモニウム塩もしくはアクリルアミド、メタクリルアミド等が挙げられる。中でも、少量の配合量でより高い耐炎化促進効果を得る観点から、カルボキシル基を有する単量体が好ましく、特にアクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のビニル系単量体がより好ましい。このような単量体を配合することで、後述する耐炎化工程の時間を短縮でき、製造コストを低減できる。上述の単量体は、1種単独で又は2種以上を適宜組み合わせて用いることができる。このような耐炎化促進効果を有する単量体の配合量は、アクリロニトリル系重合体中0.5〜10.0質量%であることが好ましく、0.5〜4.0質量%とすることがより好ましい。
本発明のアクリロニトリル系重合体の製造方法であるが、溶液重合や水系析出重合など公知のものを採用することが出来る。
アクリロニトリル系重合体溶液はアクリロニトリル系重合体が溶剤に溶解した溶液である。アクリロニトリル系重合体溶液は、アクリロニトリル系重合体と溶剤と混合し、下記1及び2に記載の特徴を持った溶解装置に通すことで得られる。
1.アクリロニトリル系重合体と溶剤を混合した混合液を加熱する加熱エリアを持つ
2.加熱エリア通過直後に溶解装置より排出される
また、溶液重合によりアクリロニトリル系重合体溶液を得ることもできる。また、溶液重合の場合は、溶解装置を重合装置と読み替える。溶液重合の装置としては、公知の重合装置を用いることができる。
溶解装置を用いる場合は、加熱エリアの装置形状は公知の熱交換器を用いることが出来き、バッチ式、連続式いずれのタイプでも問題ない。製造効率および設置スペースの観点から、連続式とすることが好ましく、伝熱効率やメンテナンス効率の観点から、熱交換器としてシェルアンドチューブタイプの単管もしくは多管式熱交換器が好ましい。また、加熱及び冷却媒体としては、例えば加圧蒸気やシリコンオイル、水など公知の加熱媒体を用いることができる。
アクリロニトリル系重合体と溶剤を混合した混合液を加熱する加熱媒体の温度は、90〜160℃とすることが好ましい。加熱媒体の温度が90℃以上であれば、アクリロニトリル系重合体の溶解が均一にでき、未溶解物が少なくなるため、アクリロニトリル系重合体溶液をノズルより吐出する際に、溶解しなかったアクリロニトリル系重合体がノズル孔を閉塞、紡糸継続が困難となることを防止できる。また、加熱媒体の温度が160℃以下であれば、ポリマー鎖同士の架橋の進行が十分に抑制できたアクリロニトリル系重合体溶液となるため、ポリマー鎖同士の配位結合を切断に必要な熱保持を実施した後も、ポリマー鎖同士の架橋の進行が十分抑制できたアクリロニトリル系重合体溶液とすることが可能となる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点と紡糸継続性の観点から、加熱媒体の温度を100℃〜150℃とすることがより好ましく、110℃〜140℃とすることが更に好ましい。
溶剤は、アクリロニトリル系重合体の種類等を勘案して決定でき、例えば、ジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミド等の有機溶剤、塩化亜鉛、チオシアン酸ナトリウム等の無機化合物の水溶液が挙げられる。中でもジメチルアセトアミド、ジメチルスルホキシド、ジメチルホルムアミドが緻密な炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維が得られる点で好ましい。
炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を得る方法としては、例えば、アクリロニトリル系重合体溶液をノズルより吐出し、直接凝固浴中に紡出して凝固させる湿式紡糸法、空気中で凝固させる乾式紡糸法、一旦、空気中に紡出した後、凝固浴中で凝固させる乾湿式紡糸法等、公知の紡糸方法が挙げられる。中でも、炭素繊維の強度及び弾性率をより向上させる観点から、湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法が好ましい。
湿式紡糸法又は乾湿式紡糸法による紡糸賦形は、アクリロニトリル系重合体溶液を略円形断面の吐出孔を有するノズルより凝固浴中に紡出する方法が挙げられる。
本発明では、アクリロニトリル系重合体溶液を熱保持した後、ノズルより吐出して凝固浴に浸漬させて凝固糸とし、その凝固糸を洗浄、延伸、乾燥緻密化させることで炭素繊維前駆体アクリル系繊維を得る。
アクリロニトリル系重合体はアクリロニトリルを主成分としたポリマー鎖の集合体である。アクリロニトリル系重合体溶液中のポリマー鎖は、アクリロニトリル系重合体溶液を熱保持することで、金属イオンなどを介したポリマー鎖同士の配位結合切断や化学結合を起点としたポリマー鎖同士の架橋が進行する。ポリマー鎖同士の配位結合や架橋が過剰に発生した場合、アクリロニトリル系重合体溶液中の斑が増加するため、凝固不均一を引き起こし、得られる凝固糸も不均一となるため、空孔率が増加し、含水率も上がってしまうものと考えられる。本発明者らはアクリロニトリル系重合体溶液を熱保持する条件を制御することにより、ポリマー鎖同士の配位結合や架橋が過剰に進行することを抑制し、結果的に凝固糸中の含水率を低下させ、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減できることを見出した。
本発明では、前述した溶解装置の排出口より排出されたアクリロニトリル系重合体溶液を排出した時点から5分以内に、30〜85℃の範囲に温度調整し、その直後からノズル孔より吐出するまで温度30℃〜85℃にて熱保持することが好ましい。
溶解装置の排出口より排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液温度を5分以内に30℃以上とすることで、配位結合の再形成を抑制することが可能となり、結果的に凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減できる。溶解装置の排出口より排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を5分以内に85℃以下とすることでポリマー鎖同士の架橋の進行を十分に抑制可能となり、ポリマー鎖同士の架橋進行に伴う流動性低下を抑制できるだけでなく、凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減することが可能となる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点から、溶解装置の排出口より排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液温度を5分以内に温度35℃〜80℃に温度調整することがより好ましく、45℃〜75℃に温度調整することが更に好ましい。
温度調整直後からノズル孔より吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液の熱保持を30℃以上とすることで、ポリマー鎖同士の配位結合を十分切断でき、配位結合の再形成も抑制することが可能となり、結果的に凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減できる。また、アクリロニトリル系重合体溶液の流動性を容易に保つことができ、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維を製造する際に、安定してノズル孔よりアクリロニトリル系重合体溶液を吐出することが可能となる。温度調整直後からノズル孔より吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液の85℃以下とすることでポリマー鎖同士の架橋の進行を十分に抑制可能となり、ポリマー鎖同士の架橋進行に伴う流動性低下を抑制できるだけでなく、凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減することが可能となる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点から、温度調整直後からノズル孔より吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液をノズル孔より吐出するまで温度35℃〜80℃で熱保持することがより好ましく、45℃〜75℃で熱保持することが更に好ましい。
また、上述したアクリロニトリル系重合体溶液の、前述した溶解装置の排出口からノズル孔までの通過時間を、0.5時間〜20時間とすることが好ましい。通過時間を0.5時間以上とすることで、ポリマー鎖同士の配位結合を十分切断するための熱保持が可能となり、結果的に凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減することが可能となる。また、通過時間を20時間以下とすることでポリマー鎖同士の架橋の進行を十分に抑制可能な熱保持を実施することができ、結果的に凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減できる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点から、上述したアクリロニトリル系重合体溶液の、前述した溶解装置の排出口からノズル孔までの通過時間を、1.5時間〜10時間とすることがより好ましく、2.5時間〜5.5時間とすることが更に好ましい。
なお、本発明での熱保持は、アクリロニトリル系重合体溶液をタンク内にて静置熱保持することで実施してもよく、また、アクリロニトリル系重合体溶液をノズルへ送液している最中に熱保持を実施してもよい。
本発明では、下記測定方法により得られる、前述した溶解装置の排出口より排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aが0.030以上0.160以下であることが好ましい。アクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aは、例えばアクリロニトリル系重合体と溶剤を混合した混合液を加熱する加熱媒体の温度により調整することができる。また、溶液重合によりアクリロニトリル系重合体溶液を得る際は、重合反応時の反応温度により調整することができる。溶解装置から排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aを0.030以上であれば、アクリロニトリル系重合体溶液中の溶解が十分進んでおり、アクリロニトリル系重合体溶液をノズルより吐出する際に、溶解しなかったアクリロニトリル系重合体がノズル孔を閉塞、紡糸継続が困難となることを防止できる。また、溶解装置から排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aを0.160以下であれば、ポリマー鎖同士の架橋の進行が十分に抑制できたアクリロニトリル系重合体溶液となるため、ポリマー鎖同士の配位結合を切断に必要な熱保持を実施した後も、ポリマー鎖同士の架橋の進行が十分抑制できたアクリロニトリル系重合体溶液とすることが可能となる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点と紡糸継続性の観点から、アクリロニトリル系重合体を溶剤と混合、溶解装置を通して溶解、装置から排出された直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aを0.050以上0.150以下であることがより好ましく、0.070以上0.130以下であることが更に好ましい。
アクリロニトリル系重合体溶液の吸光度測定方法
アクリロニトリル系重合体溶液を溶液と同じ溶媒にて質量換算で20倍に希釈し、厚さ1cmのセルに入れ、波長350nmにおける吸光度Xを測定する。また、溶媒のみを厚さ1cmのセルに入れ、波長350nmにおける吸光度Yを測定する。X−Yをアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度とする。吸光度測定時の温度は30℃とする。
本発明では、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Bが0.165以下であることが好ましい。ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度を0.165以下とすることで、ポリマー鎖同士の架橋の進行が十分に抑制できたアクリロニトリル系重合体溶液となり、得られる凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減させることが可能となる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点から、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Bを0.160以下とすることがより好ましく、0.140以下とすることが更に好ましい。
本発明では、前記吸光度Aと前記吸光度Bの比であるB/Aが1.050以上1.350以下であることが好ましい。B/Aを1.030以上であれば、ポリマー鎖同士の配位結合を十分切断できていることとなり、結果的に凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減することが可能となる。また、B/Aを1.350以下であれば、ポリマー鎖同士の架橋の進行が十分に抑制できるため、得られる凝固糸中の含水率を低下させ、乾燥緻密化時の乾燥負荷を低減させることが可能となる。炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程での乾燥緻密化時の乾燥負荷をより低減するという観点から、B/Aを1.055以上1.250以下とすることがより好ましく、B/Aを1.080以上1.180以下とすることが更に好ましい。
凝固浴としては、アクリロニトリル系重合体溶液に用いられる溶剤を含む水溶液を用いることが好ましい。このような凝固浴が、溶剤回収の容易性の観点から好ましい。
凝固浴として溶剤を含む水溶液を用いる場合、該水溶液中の溶剤濃度は、30〜90質量%であることが好ましく、40〜85質量%であることがより好ましい。この範囲内であれば、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維をボイドの発生がない緻密な構造とすることができ、高強度、高弾性率の炭素繊維が得られる。加えて、延伸性が確保でき生産性にも優れる。
凝固浴温度の低温化に伴い、凝固糸の含水率は低下するものの、凝固浴中にて凝固糸同士が接着しやすくなるため、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維製造工程中にて糸切れなどのトラブルを発生させてしまう。従って、凝固浴の温度は0〜40℃が好ましい。
紡糸工程では、凝固糸を凝固浴中又は延伸浴中で延伸することができる。或いは、凝固糸を空中で延伸した後、再度、浴中で延伸することができる。更にまた、延伸の前後又は延伸中に水洗し、凝固糸を水膨潤状態とすることができる。延伸浴は、例えば、水、又はアクリロニトリル系重合体溶液に用いられる溶剤を含む水溶液等が挙げられる。
延伸は、凝固浴又は延伸浴に凝固糸を入れ、凝固糸に張力を掛けることで行われる。延伸は、例えば、1回で所望の倍率としてもよいし、2回以上に分けて多段に延伸することで所望の倍率としてもよい。例えば、空中での延伸と延伸浴中での延伸を組み合わせ、合計で5〜15倍に延伸することとよい。このように凝固糸を延伸して延伸糸とすることで、炭素繊維の高強度化、高弾性率が図れる。
油剤組成物の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維への付与は、前述の浴中延伸後の延伸糸に油剤組成物の分散液を付与することにより行うことができる。浴中延伸の後に洗浄を行う場合は、浴中延伸及び洗浄を行った後に得られる延伸糸に油剤分散液を付与することもできる。
油剤組成物は、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維に求める機能等を勘案して決定でき、例えば、シリコーン系油剤組成物が好ましく、必要に応じて、さらに酸化防止剤、帯電防止剤、消泡剤、防腐剤、抗菌剤、浸透剤等の添加物を配合することができる。油剤組成物を延伸糸に含浸する方法としては、ローラー法、ガイド法、スプレー法、ディップ法等、公知の方法を用いることができる。油剤組成物が付着した凝固糸は、続いて乾燥緻密化される。
乾燥工程は、従来公知の方法で延伸糸を乾燥でき、例えば、加熱ローラーによる乾燥が好ましい乾燥方法として挙げられる。なお、加熱ローラーの数量は1個であっても2個以上であってもよい。
乾燥工程における乾燥温度は、延伸糸のガラス転移温度を超えた温度とすることが好ましい。このような乾燥温度で処理することで、凝固糸の乾燥と緻密化が達成できる。乾燥温度は延伸糸の含水量の変動により異なるが、例えば、100〜200℃の範囲で決定することが好ましい。延伸糸の含水率は凝固糸の含水率に影響するため、凝固糸の含水率が低いほど延伸糸の含水率も低下し、結果的に乾燥工程における延伸糸の乾燥処理コストを低減できる。
延伸糸は乾燥後、加熱延伸を行うことが、得られる炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の緻密性や配向度をさらに高めることができることから好ましい。加熱延伸の方法には、加熱ローラーで搬送させながら延伸する方法や加圧水蒸気圧雰囲気下で延伸する方法がある。
加熱延伸後、炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維は、室温のロール等を通すことにより、常温の状態まで冷却する。冷却した炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維は、ワインダーでボビンに巻き取られ、或いはケンスに振込まれて収納され、炭素繊維の製造に供される。
上述した方法により、凝固浴温度を低下させることなく凝固糸の含水率を減らすことが可能となるため、凝固糸同士の接着を発生させることなく、乾燥緻密化時の乾燥負荷を下げることができ、結果的に炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の低コスト化が可能となる。
以下、本発明について実施例を挙げて具体的に説明するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
[凝固糸含水率]
アクリロニトリル系重合体溶液をノズル孔より吐出、凝固浴に浸漬して、凝固浴から引き上げて得られた凝固糸を約20g採取し、卓上遠心機(社製、型番:)にて3000rpmで10分間遠心脱水し、その質量Xを測定する。その後、凝固糸を30℃の流水で5時間洗浄し、105℃に保温した乾燥機に入れて3時間乾燥する。乾燥し終えた凝固糸の質量Yを測定する。得られた数値と下記の式を用いて凝固糸含水率を求める。
凝固糸含水率=(X−Y/Y)×100
[吸光度]
アクリロニトリル系重合体溶液を、アクリロニトリル系重合体溶液と同じ溶媒で、30℃にて、質量換算で20倍に希釈し、厚さ1cmのセルに入れ、日立分光光度計(型番:U―3300)を用いて波長350nmにおける吸光度Mを測定する。
溶媒のみを厚さ1cmのセルに入れ、日立分光光度計(型番:U―3300)を用いて波長350nmにおける吸光度Nを測定する。
M−Nをアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度とする。
(実施例1)
[アクリロニトリル系重合体の製造]
アクリロニトリル系重合体は、オーバーフロー式の重合容器に、以下のように各原料を供給すると共に重合容器内の温度を50℃に維持しながら攪拌し、オーバーフローした重合体スラリーを洗浄、乾燥して製造した。重合容器内には、脱イオン水82.75質量%と、モノマー17質量%(モノマー組成比は、アクリロニトリル(AN)単量体単位:メタクリル酸(MAA)単量体単位(質量比)=98:2)と、過硫酸アンモニウム0.1質量%と、亜硫酸水素アンモニウム0.15質量%と、硫酸第一鉄7水和物2質量ppmとを、それぞれ連続して供給すると共に、pH3.0となるように硫酸を適量添加した。得られたアクリロニトリル系重合体の組成は、AN単量体単位:MAA単量体単位(質量比)=98:2であった。
[炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造]
上記で得たアクリロニトリル系重合体23質量%と、10℃のジメチルホルムアミド77質量%を混合して混合液とし、溶解装置に通してアクリロニトリル系重合体溶液を得た。
溶解装置はシェル側に120℃のシリコンオイルを循環した、内径13mmのシェルアンドチューブ式二重管から成っている。また、溶解装置の排出口直後にシェル側に45℃の温水を循環した内径13mmのシェルアンドチューブ式二重管(以下温度調整エリアと記載する)を設置した。まず溶解装置のチューブ側に、平均滞在時間が10分間となるよう混合液を連続的に供給、加熱溶解して溶解装置より排出し、アクリロニトリル系重合体溶液を得た。その後、温度調整エリアのチューブ側に、平均滞在時間が3分間となるよう続けて連続的に供給し、温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度が50℃となるよう調整した。
溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aは表1に示したとおりであった。このアクリロニトリル系重合体溶液を温度調整エリア排出直後からノズルより吐出するまで50℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が5時間となるように調整した。
アクリロニトリル系重合体溶液は孔径150μm、ホール数2000のノズルより一旦空気中に吐出し、約4mmの空間を通過させた後、濃度80質量%、温度10℃のジメチルホルムアミド水溶液からなる凝固浴中に浸け、凝固糸を得た。ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B及び得られた凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。得られた凝固糸を空気中で1.1倍に延伸し、続いて濃度50質量%、温度60℃のジメチルホルムアミド水溶液中で3.0倍に延伸し、熱水中で1.1倍に延伸しながら洗浄、脱溶剤を行った。脱溶剤した凝固糸をアミノ変性シリコーン系油剤分散液中に浸漬し、140℃の加熱ローラーで緻密乾燥化した。このとき使用したアミノ変性シリコーン系油剤分散液は、アミノ変性シリコーン(信越化学工業株式会社製、商品名:KF−8002)90質量部に対し、乳化剤(花王株式会社製、商品名:エマルゲン108)を10質量部混合したものをゴーリンミキサー(エスエムテー株式会社製、商品名:圧力式ホモジナイザーゴーリンタイプ)で乳化した後、水を加えて製造したもので、得られた油剤分散液の組成は、水:アミノ変性シリコーン:乳化剤(質量比)=98.65:1.2:0.15であった。次いで、表面温度190℃の熱ロールにて3.0倍に延伸し、捲取速度250m/分にて単繊維繊度0.7dtexの炭素繊維前駆体繊維を製造した。
(実施例2)
溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が3時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例3)
溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が2時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例4)
溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が10時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例5)
温度調整エリアのシェル側に35℃の温水を循環させ、温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を40℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度40℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が19時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例6)
溶解装置のシェル側に135℃のシリコンオイルを循環させ、温度調整エリアのシェル側に65℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を70℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度70℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が8時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例7)
溶解装置のシェル側に145℃のシリコンオイルを循環させ、温度調整エリアのシェル側に65℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を70℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度70℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が8時間になるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例8)
溶解装置のシェル側に150℃のシリコンオイルを循環させ、温度調整エリアのシェル側に35℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を40℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度40℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が1時間になるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例9)
温度調整エリアのシェル側に75℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を80℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度80℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が5時間になるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(実施例10)
溶解装置のシェル側に155℃のシリコンオイルを循環させ、温度調整エリアのシェル側に30℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を35℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度35℃にて熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が2時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。
(比較例1)
溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が0.2時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。また、凝固糸含水率は130%と実施例1と比較して高い値となった。
(比較例2)
溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が30時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。また、凝固糸含水率は135%と実施例1と比較して高い値となった。
(比較例3)
温度調整エリアのシェル側に120℃のシリコンオイルを循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を110℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を110℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が8時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Aは表1に示した通りであった。また、熱保持後のアクリロニトリル系重合体溶液は粘度が高く、吸光度を測定することができず、ノズルより吐出して凝固糸を得ることができなかった。
(比較例4)
温度調整エリアのシェル側に5℃の冷水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を10℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を10℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が5時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。また、熱保持後のアクリロニトリル系重合体溶液は粘度が高く、ノズルより吐出して凝固糸を得ることができなかった。
(比較例5)
溶解装置のシェル側に165℃のシリコンオイルを循環させ、温度調整エリアのシェル側に30℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を35℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度35℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が0.2時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度B、凝固糸の凝固糸含水率は表1に示した通りであった。また、凝固糸含水率は137%と実施例1と比較して高い値となった。
(比較例6)
溶解装置のシェル側に50℃の温水を循環させ、温度調整エリアのシェル側に50℃の温水を循環させて温度調整エリア排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の温度を50℃とし、それ以降からノズルより吐出するまでのアクリロニトリル系重合体溶液を温度50℃に熱保持しつつ、溶解装置の排出口からノズル吐出までのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が0.2時間となるよう調整した以外は実施例1と同様に実施した。
このときの溶解装置排出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度A、ノズル吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Bは表1に示した通りであった。また、ノズル孔の閉塞が著しく、凝固糸を得ることができなかった。

Claims (6)

  1. アクリロニトリル系重合体と溶媒の混合物を溶解する溶解装置の排出口から、溶解装置で溶解された重合体溶液をノズル孔から吐出されるまでのアクリロニトリル系重合体溶液の通過時間が0.5時間〜20.0時間であり、前記排出口から排出された時点から5分後の前記重合体溶液の温度が30℃〜85℃であり、その後からノズル孔から吐出されるまでの保持温度が30℃〜85℃である炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。
  2. 前記通過時間が1.5時間〜10.0時間である請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。
  3. 前記温度が45℃〜75℃、前記通過時間が2.5時間〜5.5時間である請求項1に記載の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。
  4. 前記溶解装置の排出口から排出された直後におけるアクリロニトリル系重合体溶液の以下の測定方法による吸光度Aが0.030以上0.160以下である請求項1から3のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。
    吸光度測定方法
    アクリロニトリル系重合体溶液の吸光度は下記測定方法により得られる。
    アクリロニトリル系重合体溶液を溶液と同じ溶媒にて質量換算で20倍に希釈し、厚さ1cmのセルに入れ、波長350nmにおける吸光度Xを測定する。
    また、溶媒のみを厚さ1cmのセルに入れ、波長350nmにおける吸光度Yを測定する。吸光度Xから吸光度Yの値を差し引いた値をアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度とする。吸光度測定時の温度は30℃とする。
  5. ノズル孔から吐出直後のアクリロニトリル系重合体溶液の吸光度Bが0.165以下である請求項1から4のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。
  6. 前記吸光度Aと前記吸光度Bの比であるB/Aが1.030以上1.350以下である請求項1から5のいずれか一項に記載の炭素繊維前駆体アクリロニトリル系繊維の製造方法。
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