JP2015101784A - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents

ニッケル粉の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2015101784A
JP2015101784A JP2013245863A JP2013245863A JP2015101784A JP 2015101784 A JP2015101784 A JP 2015101784A JP 2013245863 A JP2013245863 A JP 2013245863A JP 2013245863 A JP2013245863 A JP 2013245863A JP 2015101784 A JP2015101784 A JP 2015101784A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
nickel
powder
hydroxide
nickel powder
alkali
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Granted
Application number
JP2013245863A
Other languages
English (en)
Other versions
JP6135479B2 (ja
Inventor
尚人 西村
Naohito Nishimura
尚人 西村
雅男 浅田
Masao Asada
雅男 浅田
春樹 両見
Haruki Moromi
春樹 両見
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Original Assignee
Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Sumitomo Metal Mining Co Ltd filed Critical Sumitomo Metal Mining Co Ltd
Priority to JP2013245863A priority Critical patent/JP6135479B2/ja
Publication of JP2015101784A publication Critical patent/JP2015101784A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6135479B2 publication Critical patent/JP6135479B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Landscapes

  • Manufacture Of Metal Powder And Suspensions Thereof (AREA)

Abstract

【課題】積層セラミックスコンデンサ(MLCC)の内部や外部電極、電磁波シールドなどの電子部品用として有用な、微細で連結粒子が少なく酸素濃度が低いニッケル粉を、特殊な装置によらず、低コストかつ簡潔なプロセスで効率よく得ることができるニッケル粉の製造方法を提供する。【解決手段】塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルを沈澱させて、残留塩素濃度が5000〜9000質量ppmの水酸化ニッケル粉とする工程(A)と、該水酸化ニッケル粉を酸化性雰囲気下あるいは不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉にする工程(B)と、該酸化ニッケルを還元性雰囲気下、380〜500℃で加熱処理してニッケル粉を作製する工程(C)と、該ニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、前記工程(A)における塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーのpHを8.5〜12.0として洗浄し、その後、ろ過、純水洗浄を行うことを特徴とするニッケル粉の製造方法により提供。【選択図】なし

Description

本発明は、ニッケル粉の製造方法に関し、より詳しくは、積層セラミックスコンデンサ(以後、MLCCと記載する)の内部や外部電極、電磁波シールドなどの電子部品用として有用な、微細で連結粒子が少なく酸素濃度が低いニッケル粉を、特殊な装置によらず、低コストかつ簡潔なプロセスで効率よく得ることができるニッケル粉の製造方法に関する。
近年、携帯電話やデジタル機器の小型化、高性能化に伴い、チップ部品であるMLCCについても、小型化、大容量化が進んでいる。MLCCの小型化、高容量化に伴い、内部電極に使用されているニッケル粉も小径化や粗大粒子の低減が求められており、様々なニッケル粉の製造方法が提案されている。
例えば、塩化ニッケル蒸気を還元性ガスにより還元する気相還元法、金属化合物を含む溶液を微細な液滴にして高温で熱分解させる噴霧熱分解法、水または有機溶媒中でニッケル塩を還元剤により還元する湿式還元法、酸化ニッケル、水酸化ニッケル、炭酸ニッケルなどのニッケル化合物の粉を水素ガスにより還元する静置式水素還元法などがある。
これらの方法の中でも、湿式法により水酸化ニッケルを生成し、これを原料として還元処理しニッケル粉を製造する方法は、生産性も高く低コストでニッケル粉を得ることができる製造方法である。例えば、一定温度に保持された反応槽内のスラリーに、含ニッケル溶液を連続的に添加しつつ、該スラリーを所定のpHに保持するようにアルカリ溶液を添加して水酸化ニッケルを生成し、該スラリーをろ過し、水洗し、乾燥させて水酸化ニッケル粉を得た後、これを水素ガス還元雰囲気下で、還元温度を400〜550℃として加熱還元するニッケル粉の製造方法が開示されている(特許文献1)。
この方法は、塩化ニッケルを原料として用いることで、安価で生産性が良いニッケル粉が得られるが、ニッケル粉の残留塩素が多いという問題点がある。ニッケル粉中の残留塩素が多いと、ニッケル粉の耐錆性を阻害するだけではなく、電子部品の材料として使用する場合、焼成等の工程で塩化水素ガスを発生させ、電子部品や装置、環境へ悪影響を与えるといった問題がある。
前記問題点を解決するために、水酸化ニッケル中の不純物を水酸化ナトリウム水溶液で洗浄する工程を含む酸化ニッケルの製造方法(特許文献2)、水酸化ニッケルの製造工程で中和反応終了後にスラリーのpHを10以上に上げる工程を含む酸化ニッケルの製造方法(特許文献3)、ニッケル粉を有機酸で洗浄する方法(特許文献4)が提案されている。
特許文献2、3には得られた酸化ニッケルを還元する工程について記載はないが、これらの製造方法で、塩素濃度を低減した水酸化ニッケルを得た後、酸化処理により酸化ニッケル粉を生成し、この酸化ニッケル粉を還元処理によりニッケル粉を製造した場合、還元処理中の焼結阻害効果が小さくなり連結粒子が生じやすくなる。一方で、連結粒子を低減するために熱処理温度を低下させると、ニッケル粉の還元が十分に進行せず、ニッケル粉の酸素濃度が高くなり、電極用材料として適さない。
特許文献4では有機酸を使用するため、発生する廃液を処理する必要性があり、高コストになる。
そのため、塩化ニッケルを原料とするニッケル粉の製造方法で、連結粒子が少なく、かつ酸素濃度が低い安価なニッケル粉が切望されていた。
特開2003−213310号公報 特許第5194876号公報 特開2011−42528号公報 特開2009−108351号公報
本発明は、上記従来技術の問題点に鑑み、積層セラミックスコンデンサ(以後、MLCCと記載する)の内部や外部電極、電磁波シールドなどの電子部品用として有用な、微細で連結粒子が少なく酸素濃度が低いニッケル粉を、特殊な装置によらず、低コストかつ簡潔なプロセスで効率よく得ることができるニッケル粉の製造方法を提供することを目的としている。
本発明者らは、生産性が高く低コストである湿式法で得た水酸化ニッケルを、還元処理することで得られるニッケル粉の連結粒子低減、酸素濃度の低減について鋭意検討した結果、水酸化ニッケルを特定条件で洗浄し、水酸化ニッケル中の塩素濃度を特定の値に制御し、その後、酸化して得られた酸化ニッケルを特定の温度で加熱し還元することで、ニッケル粉の酸素濃度を抑えつつ、連結粒子の少ないニッケル粉の製造が可能であることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルを沈澱させて、残留塩素濃度が5000〜9000質量ppmの水酸化ニッケル粉とする工程(A)と、該水酸化ニッケル粉を酸化性雰囲気下あるいは不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉にする工程(B)と、該酸化ニッケルを還元性雰囲気下、380〜500℃で加熱処理してニッケル粉を作製する工程(C)と、該ニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、前記工程(A)における塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーのpHを8.5〜12.0として洗浄し、その後、ろ過、純水洗浄を行うことを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記工程(A)において、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーを濃縮し、pHを8.5〜12.0として洗浄することを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記工程(A)において、洗浄時の水酸化ニッケルのスラリーのpHは、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応時のpHよりも高いことを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記工程(A)で中和に用いるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第5の発明によれば、第1〜4のいずれかの発明において、前記工程(A)で洗浄に用いるアルカリは、中和に用いたものと同一のアルカリとすることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、得られるニッケル粉のD90が、1.5μm以下であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、得られるニッケル粉の酸素濃度が、1.8質量%以下であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
本発明によれば、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーのpHを8.5〜12.0として洗浄し、得られる水酸化ニッケルの残留塩素濃度が5000〜9000質量ppmであるようにし、その後、水酸化ニッケルを酸化して得られる酸化ニッケルを特定の温度で熱処理(還元)するという簡易なプロセスであるから、特殊な装置を必要とすることなく、効率よく微細なニッケル粉を製造することができる。
また、本発明によって得られるニッケル粉は、連結粒子が少なく、酸素濃度が低いことから、MLCCの内部や外部電極、電磁波シールドなどの電子部品用として好適であり、その工業的価値は大きい。
以下、本発明のニッケル粉の製造方法について実施形態を詳細に説明する。
本発明のニッケル粉の製造方法は、塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルを沈澱させて、残留塩素濃度が5000〜9000質量ppmの水酸化ニッケル粉とする工程(A)と、該水酸化ニッケル粉を酸化性雰囲気下あるいは不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉にする工程(B)と、該酸化ニッケルを還元性雰囲気下、380〜500℃で加熱処理してニッケル粉を作製する工程(C)と、該ニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、前記工程(A)における塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーのpHを8.5〜12.0として洗浄し、その後、ろ過、純水洗浄を行うことを特徴とするものである。
(1)工程A
本発明の工程Aは、塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルを生成する工程である。水溶液の濃度や中和条件等は公知の技術が適用でき、洗浄装置も特に限定されるものではなく、機械式攪拌装置を備えた反応槽などを用いることができる。
このとき、均一な特性の水酸化ニッケルを得るために、十分に攪拌された反応槽内に、水酸化ニッケル水溶液とアルカリ水溶液のpHを一定に保ちながら投入することが好ましい。中和に使用するアルカリ水溶液としては、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種以上が好適であるが、コスト面から水酸化ナトリウムを用いることが特に好ましい。
本発明では、水酸化ニッケルの生成後、反応液にアルカリを添加してpHを8.5〜12.0の範囲として水酸化ニッケルの洗浄を行う。洗浄時のpHは、8.5以上10.0未満が好ましく、pH9.0以上10.0未満が好ましい。洗浄時のpHが8.5未満であると、水酸化ニッケルの洗浄が十分に進まず塩素濃度が高くなり生産設備に悪影響を及ぼし、pHが12.0を超えると水酸化ニッケルの塩素濃度が低くなりすぎて熱処理工程で連結粒子が生成されやすくなるため好ましくない。中和時のpHと洗浄時のpHは、洗浄により塩素濃度を低減させるために、アルカリ洗浄時のpHを中和時より高く設定して、洗浄時にアルカリ水溶液をさらに添加するのが好ましい。
中和後の反応液は、洗浄後の廃液量を減らすために生成した水酸化ニッケルを一度沈降させて上澄み液を除去して濃縮後、水酸化ニッケルのスラリーにアルカリ水溶液を添加して洗浄するのが好ましい。また上澄み液除去後の水酸化ニッケルのスラリー濃度は、250〜1000g/Lとするのが好ましい。アルカリ洗浄前のスラリー濃度が250g/L未満では廃液量が多くなり、1000g/Lより濃ければ、ろ液中の不純物濃度が増え、レパルプ工程への不純物持込が多くなり、結果として不純物濃度が高くなる。なおアルカリ洗浄の時間や温度は適宜設定すればよいが、20〜70℃で15分〜2時間とすることが好ましい。この範囲を外れると、十分なアルカリ洗浄を行えない場合がある。
水酸化ニッケルの洗浄度合いは、残留塩素濃度によって把握できることから、洗浄後の残留塩素を5000〜9000質量ppmに制御することが好ましい。残留塩素が5000質量ppm未満では熱処理工程で連結粒子が生成されやすくなり、9000質量ppmを超えると塩素濃度が高くなり生産設備に悪影響を及ぼす。
従来は、アルカリ洗浄の代わりに純水で洗浄を行っていたが、純水だと塩素濃度を低減するために複数回の洗浄が必要となり、廃液や生産性の面で好ましくない。アルカリ洗浄時に添加するアルカリ水溶液としては、ニッケル粉の不純物濃度を高くしないように中和時に用いたものと同一である水酸化ナトリウム、水酸化カリウムが好ましく、コスト面から水酸化ナトリウムを用いることが特に好ましい。
こうして生成された水酸化ニッケルは、ろ過により固液分離し、ケーキとする。得られたケーキは直接次工程で使用することも可能であるが、アルカリ水溶液由来の元素濃度を低減させるために、水洗することが好ましい。洗浄方法は、任意の方法を用いることができ、固液分離したケーキに通水する方法や、純水中に再度スラリー化する方法(レパルプ)などが用いられる。
次に、洗浄にて得られた水酸化ニッケル粉を乾燥する。乾燥には大気乾燥機や真空乾燥機といった一般的な乾燥機を使用することができ、乾燥温度は200℃以下が好ましい。200℃より高温で乾燥すると、水酸化ニッケルの分解が起こり、物性に影響を与える場合がある。
(2)工程(B)
本発明の工程(B)は、前記の工程(A)で得られた水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下または不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉を得る工程である。加熱温度および時間などの処理条件は、得ようとする酸化ニッケル粉に応じて、適宜設定することができる。
この加熱処理においては、均一な処理を行うために、ガス交換が行える状態で行うことが好ましい。ガス交換が不十分であると、発生水蒸気の影響により、得られる酸化ニッケル粉の特性が不均一になる可能性がある。前記加熱処理には、一般的な加熱炉を使用することができ、例えば、静置式電気炉、転動炉、バーナー炉、搬送式連続炉などを用いることができる。用いるガス種に関しては、非還元性雰囲気であればその種類は制約されないが、コストや取り扱いやすさの点で酸素を含む大気雰囲気が優れている。
(3)工程(C)
本発明の工程(C)は、前記の工程(B)で得られた酸化ニッケル粉を還元性雰囲気で還元してニッケル粉を得る工程である。
この還元条件に関しては、還元温度を380〜500℃とする。好ましい還元温度は380〜450℃であり、より好ましいのは380〜400℃である。また、加熱時間は、還元温度にもよるが、例えば1〜5時間とすることが好ましい。
還元温度が380℃未満では、酸化ニッケル粉が十分に還元されない場合や還元に長時間を要する場合がある。一方で、還元温度が500℃を超えると、ニッケル粒子が粗大化する場合がある。還元性雰囲気は、適宜選択することが可能であるが、環境への影響などを考慮すると、含水素ガス雰囲気とすることが好ましい。また、還元中は、工程(B)と同様の理由より、ガス交換雰囲気で行うことが好ましい。還元に関するその他の因子は、必要とする規模に応じて任意に設定することができる。還元性雰囲気にするために用いるガス種に関しては、その種類は制約されないが、入手の容易さと環境への影響度から、水素含有窒素ガス等の含水素ガスが好ましい。
(4)工程(D)
本発明の工程(D)は、前記の工程(C)で得られたニッケル粉を、洗浄する工程である。ここでの洗浄には、純水、硫酸などの無機酸、あるいはクエン酸などの有機酸を用いることができるが、排水処理の容易さなどから純水を用いるのが好適である。
また洗浄は、任意の温度で行うことが可能であるが、10℃〜50℃で行うことが好ましい。温度が低いと、洗浄効果が低下し、不純物除去に長時間を要するため生産性に問題を生じる。洗浄温度を高くすることで不純物除去の効果は大きくなるが、水酸化ニッケルへの変化が進み、ニッケル粉の表面状態が変化したり、酸素濃度が上昇したりするといった問題点がある。
前記洗浄のスラリー濃度は、特に限定されるものではないが、スラリー濃度を30〜500g/Lとすることが好ましく、30〜300g/Lとすることがより好ましい。スラリー濃度が30g/L未満の場合、生産性が低く、多量の廃液が生じてしまう。一方、スラリー濃度が500g/Lを超える場合には、ニッケルの分散性が悪化したり、ケーキ中に残留する不純物が増えたりして、洗浄が十分に行えない場合がある。洗浄装置は、特に限定されず前記の工程(A)と同様、機械式攪拌装置を備えた反応槽などを用いることができる。
最後に、ニッケルスラリーをろ過等により固液分離し、得られたニッケル粉の乾燥を行う。乾燥は、工程(A)と同様、一般的な乾燥機を使用することができるが、乾燥温度は180℃以下が好ましい。180℃より高温で乾燥を行うと、粒子の連結が生じ、ニッケル粉の分散性に影響を与える場合がある。乾燥温度の下限は特に限定されないが、100℃未満では所望の乾燥状態に達するまでに時間を要するので、生産性が低下してしまう。
(5)得られるニッケル粉
上記の工程(A)〜(D)を経ることで、D90が1.5μm以下、酸素濃度が1.8質量%以下のニッケル粉を得ることができる。D90が1.5μmを超えるものは、粒子の連結が生じているので、ニッケル粉の分散性が悪化する。また、酸素濃度が1.8質量%を越えたニッケル粉は電極材料として使用し難い。
本発明の製造方法で得られたニッケル粉は、上記のような特徴を有するために、MCLLの内部や外部電極、電磁波シールドなどに適用されるニッケルペーストとして使用することができる。
以下に、実施例に基づき本発明を具体的に説明するが、本発明は、これらの実施例によって何ら限定されるものではない。なお、水酸化ニッケル粉中の塩素濃度、ニッケル粉の粒径と酸素濃度は、下記の要領で測定し評価した。
(水酸化ニッケル粉中の塩素濃度)
水酸化ニッケル粉中の塩素濃度は、蛍光X線定量分析装置にて検量線法で評価した。(PANalytical社製Magix)
(ニッケル粉の粒径)
ニッケル粉の粒径は、レーザー拡散法により測定し、その粒度分布から体積積算90%での粒径D90を求めた。なお同一粒子径でも連結粒子の比率が増大するとD90の値は増加するため、D90の値は連結粒子の多寡の指標となる。
(ニッケル粉中の酸素濃度)
ニッケル粉中の酸素濃度は、分析装置(LECO社製TC−336)を用い抵抗加熱赤外吸収分析法にて評価した。
(総合評価)
ニッケル粉のD90が1.5μm以下、酸素濃度が1.8%以下、生産性:水酸化ニッケルの洗浄回数が2回以下を良(○)、3回を超えると不可(×)とし、これらを全て満たしたもののみ良(○)とし、1つでも満たさないものがある場合は不可(×)とした。
(実施例1)
10Lのビーカー内で純水に水酸化ナトリウムを溶解し、pH8.3に調整した水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを準備した。この水酸化ナトリウム水溶液に、ニッケル濃度60g/Lの塩化ニッケル水溶液と、pH8.3で一定となるように24質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調整しながら反応槽に連続的に添加することで水酸化ニッケルを生成させた。
その際、塩化ニッケル水溶液は24mL/分の速度で添加した。また、液温は60℃に保持し、攪拌羽により200rpmで混合した。3Lの塩化ニッケル水溶液を添加した後、3時間攪拌を続けて水酸化ニッケルを製造した。
次に、得られた水酸化ニッケルのスラリーを一度沈降させ、スラリー濃度が500g/Lとなるように上澄み液を除去した。その後、該スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを8.5、液温を50℃に調整して30分間洗浄を行った。その後、ろ過して水酸化ニッケルのケーキを分離し、更に200g/Lのスラリー濃度で30分の純水レパルプ、ろ過を行い、水酸化ニッケルのろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを、大気乾燥機に入れ120℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケル粉を得た。また得られた水酸化ニッケル粉の塩素濃度を測定した。
引き続き、得られた水酸化ニッケル10gを空気中460℃で2時間加熱し、酸化ニッケルを合成し、得られた酸化ニッケルを、水素雰囲気中400℃で3時間還元し、ニッケル粉を得た。
最後に、得られたニッケル粉を40g/Lのスラリー濃度の純水で30分攪拌して洗浄し、吸引ろ過により固液分離した。その後、大気乾燥機中、120℃で12時間乾燥し、#100の篩にかけ、ニッケル粉を得た。結果を表1に示した。
(実施例2)
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを9.8に変更した以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表1に示した。
(実施例3)
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.0に変更した以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表1に示した。
(比較例1)
実施例1で水酸化ニッケルのスラリーを一度沈降させ、上澄み液除去後に洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液を添加する代わりに、水酸化ニッケルの洗浄を純水で行い、ろ過後の純水レパルプ及びろ過の回数を3回とした以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。なお最初の純水洗浄時のpHは7.5であった。結果を表2に示した。
(比較例2)
実施例1で水酸化ニッケルのスラリーを一度沈降させ、上澄み液除去後に洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液を添加する代わりに、水酸化ニッケルの洗浄を純水とした以外は実施例1と同様の方法で水酸化ニッケルを作製した。水酸化ニッケルの残留塩素が高いために、酸化ニッケル生成以降の作業は行わなかった。なお最初の純水洗浄時のpHは7.5であった。結果を表2に示した。
(比較例3)
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.3に変更した以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表2に示した。
(比較例4)
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.3に変更し、酸化ニッケルの還元処理において水素雰囲気での加熱温度を370℃とした以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表1に示した。
Figure 2015101784
Figure 2015101784
(評価)
上記の結果を示す表1から明らかなように、実施例1〜3は、ニッケル粉の生産性に優れ、粗大粒子が少なく、酸素濃度が低いことがわかる。なお、実施例3で得られたニッケル粉は、ややD90が大きく連結粒子が若干多くなるが実用上問題がないレベルである。
これに対し、表2から明らかなように、比較例1は、水酸化ニッケルの洗浄にアルカリを使用しなかったため、洗浄回数が多くなり、生産性で不可となった。比較例2は、純水での洗浄を2回としたため、水酸化ニッケルの塩素濃度が高く、設備に与える影響が大きいため不可となった。比較例3は、水酸化ニッケルの洗浄時にpHを12.0よりも高くしたため、水酸化ニッケルの塩素濃度が低くなりすぎ、粒子の連結が進行したため不可となった。比較例4は、水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.0より高くしたため、水酸化ニッケルの塩素濃度が低くなったので、粒子の連結防止のために熱処理温度を下げた結果、酸素濃度が高く不可となった。
本発明のニッケル粉の製造方法によれば、連結粒子が少なく、酸素濃度を低減したニッケル粉が得られる。得られるニッケル粉は、MLCCや電磁波シールドなどにおける配線材料、電極材料といった電子部品材料として好適である。

Claims (7)

  1. 塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルを沈澱させて、残留塩素濃度が5000〜9000質量ppmの水酸化ニッケル粉とする工程(A)と、該水酸化ニッケル粉を酸化性雰囲気下あるいは不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉にする工程(B)と、該酸化ニッケルを還元性雰囲気下、380〜500℃で加熱処理してニッケル粉を作製する工程(C)と、該ニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、
    前記工程(A)における塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーのpHを8.5〜12.0として洗浄し、その後、ろ過、純水洗浄を行うことを特徴とするニッケル粉の製造方法。
  2. 前記工程(A)において、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーを濃縮し、pHを8.5〜12.0として洗浄することを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
  3. 前記工程(A)において、洗浄時の水酸化ニッケルのスラリーのpHは、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応時のpHよりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル粉の製造方法。
  4. 前記工程(A)において、中和に用いるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
  5. 前記工程(A)において、洗浄に用いるアルカリは、中和に用いたものと同一のアルカリとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
  6. 得られるニッケル粉のD90が、1.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
  7. 得られるニッケル粉の酸素濃度が、1.8質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
JP2013245863A 2013-11-28 2013-11-28 ニッケル粉の製造方法 Active JP6135479B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013245863A JP6135479B2 (ja) 2013-11-28 2013-11-28 ニッケル粉の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2013245863A JP6135479B2 (ja) 2013-11-28 2013-11-28 ニッケル粉の製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2015101784A true JP2015101784A (ja) 2015-06-04
JP6135479B2 JP6135479B2 (ja) 2017-05-31

Family

ID=53377751

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2013245863A Active JP6135479B2 (ja) 2013-11-28 2013-11-28 ニッケル粉の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6135479B2 (ja)

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102084430B1 (ko) * 2018-10-30 2020-03-04 인하대학교 산학협력단 산소발생용 니켈 수산화물 촉매의 산소결핍의 유도 방법 및 이에 의해 제조된 니켈 수산화물 촉매

Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009108351A (ja) * 2007-10-26 2009-05-21 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル粉およびその製造方法
JP2009196870A (ja) * 2008-02-25 2009-09-03 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ニッケル粉末及びその製造方法
JP2010089988A (ja) * 2008-10-08 2010-04-22 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ニッケル微粉末及びその製造方法
JP2010255041A (ja) * 2009-04-24 2010-11-11 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル粉およびその製造方法
JP2010255040A (ja) * 2009-04-24 2010-11-11 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル粉およびその製造方法
JP2011042528A (ja) * 2009-08-21 2011-03-03 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ニッケル粉末及びその製造方法
JP2012041265A (ja) * 2011-08-23 2012-03-01 Tanaka Chemical Corp ニッケル酸化物の製造方法

Patent Citations (7)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2009108351A (ja) * 2007-10-26 2009-05-21 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル粉およびその製造方法
JP2009196870A (ja) * 2008-02-25 2009-09-03 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ニッケル粉末及びその製造方法
JP2010089988A (ja) * 2008-10-08 2010-04-22 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ニッケル微粉末及びその製造方法
JP2010255041A (ja) * 2009-04-24 2010-11-11 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル粉およびその製造方法
JP2010255040A (ja) * 2009-04-24 2010-11-11 Sumitomo Metal Mining Co Ltd ニッケル粉およびその製造方法
JP2011042528A (ja) * 2009-08-21 2011-03-03 Sumitomo Metal Mining Co Ltd 酸化ニッケル粉末及びその製造方法
JP2012041265A (ja) * 2011-08-23 2012-03-01 Tanaka Chemical Corp ニッケル酸化物の製造方法

Cited By (1)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102084430B1 (ko) * 2018-10-30 2020-03-04 인하대학교 산학협력단 산소발생용 니켈 수산화물 촉매의 산소결핍의 유도 방법 및 이에 의해 제조된 니켈 수산화물 촉매

Also Published As

Publication number Publication date
JP6135479B2 (ja) 2017-05-31

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP2011149080A (ja) ニッケル粉末およびその製造方法
JP2009024197A (ja) ニッケル粉の製造方法
JP5369864B2 (ja) ニッケル粉およびその製造方法
JP5182206B2 (ja) ニッケル粉およびその製造方法
JP5067312B2 (ja) ニッケル粉末とその製造方法
JP5141983B2 (ja) ニッケル微粉およびその製造方法
TW201436905A (zh) 鎳粉末及其製造方法
JP5621268B2 (ja) 酸化ニッケル微粉末及びその製造方法
JP2010024501A (ja) 銀粉の製造方法
JP6135479B2 (ja) ニッケル粉の製造方法
KR102017177B1 (ko) 습식공정을 이용한 고순도 은 나노 분말의 제조 방법
KR102031753B1 (ko) 산화 안정성이 향상된 고순도의 구리 나노 분말의 제조방법
JP2011225395A (ja) 酸化ニッケル微粉末及びその製造方法
JP6213301B2 (ja) ニッケル粉末の製造方法
JP2018024535A (ja) 酸化ニッケル微粉末の製造方法
JP6131773B2 (ja) ニッケル粉とその製造方法、及びそれを用いたニッケルペースト
JP6131775B2 (ja) ニッケル粉の製造方法
JP5168592B2 (ja) ニッケル粉の製造方法
KR102023711B1 (ko) 특정 온도에서 경도가 향상되는 고순도의 은 나노 분말
JP6065699B2 (ja) ニッケル粉末の製造方法
JP5979041B2 (ja) ニッケル粉の製造方法
JP6179423B2 (ja) 硫黄含有ニッケル粉末の製造方法
JP5125411B2 (ja) ニッケル粉およびその製造方法
JP2016172658A (ja) 酸化ニッケル粉末の製造方法
JP2018024551A (ja) 水酸化ニッケル粒子及びその製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
RD03 Notification of appointment of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7423

Effective date: 20150511

RD04 Notification of resignation of power of attorney

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A7424

Effective date: 20150608

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20151119

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20160810

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20161004

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20170328

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20170410

R150 Certificate of patent or registration of utility model

Ref document number: 6135479

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R150