JP2015101784A - ニッケル粉の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
この方法は、塩化ニッケルを原料として用いることで、安価で生産性が良いニッケル粉が得られるが、ニッケル粉の残留塩素が多いという問題点がある。ニッケル粉中の残留塩素が多いと、ニッケル粉の耐錆性を阻害するだけではなく、電子部品の材料として使用する場合、焼成等の工程で塩化水素ガスを発生させ、電子部品や装置、環境へ悪影響を与えるといった問題がある。
そのため、塩化ニッケルを原料とするニッケル粉の製造方法で、連結粒子が少なく、かつ酸素濃度が低い安価なニッケル粉が切望されていた。
また、本発明の第3の発明によれば、第1の発明において、前記工程(A)において、洗浄時の水酸化ニッケルのスラリーのpHは、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応時のpHよりも高いことを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第4の発明によれば、第1〜3のいずれかの発明において、前記工程(A)で中和に用いるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第6の発明によれば、第1〜5のいずれかの発明において、得られるニッケル粉のD90が、1.5μm以下であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明の第7の発明によれば、第1〜6のいずれかの発明において、得られるニッケル粉の酸素濃度が、1.8質量%以下であることを特徴とするニッケル粉の製造方法が提供される。
また、本発明によって得られるニッケル粉は、連結粒子が少なく、酸素濃度が低いことから、MLCCの内部や外部電極、電磁波シールドなどの電子部品用として好適であり、その工業的価値は大きい。
本発明の工程Aは、塩化ニッケル水溶液をアルカリ水溶液で中和して水酸化ニッケルを生成する工程である。水溶液の濃度や中和条件等は公知の技術が適用でき、洗浄装置も特に限定されるものではなく、機械式攪拌装置を備えた反応槽などを用いることができる。
こうして生成された水酸化ニッケルは、ろ過により固液分離し、ケーキとする。得られたケーキは直接次工程で使用することも可能であるが、アルカリ水溶液由来の元素濃度を低減させるために、水洗することが好ましい。洗浄方法は、任意の方法を用いることができ、固液分離したケーキに通水する方法や、純水中に再度スラリー化する方法(レパルプ)などが用いられる。
本発明の工程(B)は、前記の工程(A)で得られた水酸化ニッケルを酸化性雰囲気下または不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉を得る工程である。加熱温度および時間などの処理条件は、得ようとする酸化ニッケル粉に応じて、適宜設定することができる。
本発明の工程(C)は、前記の工程(B)で得られた酸化ニッケル粉を還元性雰囲気で還元してニッケル粉を得る工程である。
還元温度が380℃未満では、酸化ニッケル粉が十分に還元されない場合や還元に長時間を要する場合がある。一方で、還元温度が500℃を超えると、ニッケル粒子が粗大化する場合がある。還元性雰囲気は、適宜選択することが可能であるが、環境への影響などを考慮すると、含水素ガス雰囲気とすることが好ましい。また、還元中は、工程(B)と同様の理由より、ガス交換雰囲気で行うことが好ましい。還元に関するその他の因子は、必要とする規模に応じて任意に設定することができる。還元性雰囲気にするために用いるガス種に関しては、その種類は制約されないが、入手の容易さと環境への影響度から、水素含有窒素ガス等の含水素ガスが好ましい。
本発明の工程(D)は、前記の工程(C)で得られたニッケル粉を、洗浄する工程である。ここでの洗浄には、純水、硫酸などの無機酸、あるいはクエン酸などの有機酸を用いることができるが、排水処理の容易さなどから純水を用いるのが好適である。
上記の工程(A)〜(D)を経ることで、D90が1.5μm以下、酸素濃度が1.8質量%以下のニッケル粉を得ることができる。D90が1.5μmを超えるものは、粒子の連結が生じているので、ニッケル粉の分散性が悪化する。また、酸素濃度が1.8質量%を越えたニッケル粉は電極材料として使用し難い。
本発明の製造方法で得られたニッケル粉は、上記のような特徴を有するために、MCLLの内部や外部電極、電磁波シールドなどに適用されるニッケルペーストとして使用することができる。
水酸化ニッケル粉中の塩素濃度は、蛍光X線定量分析装置にて検量線法で評価した。(PANalytical社製Magix)
(ニッケル粉の粒径)
ニッケル粉の粒径は、レーザー拡散法により測定し、その粒度分布から体積積算90%での粒径D90を求めた。なお同一粒子径でも連結粒子の比率が増大するとD90の値は増加するため、D90の値は連結粒子の多寡の指標となる。
(ニッケル粉中の酸素濃度)
ニッケル粉中の酸素濃度は、分析装置(LECO社製TC−336)を用い抵抗加熱赤外吸収分析法にて評価した。
ニッケル粉のD90が1.5μm以下、酸素濃度が1.8%以下、生産性:水酸化ニッケルの洗浄回数が2回以下を良(○)、3回を超えると不可(×)とし、これらを全て満たしたもののみ良(○)とし、1つでも満たさないものがある場合は不可(×)とした。
10Lのビーカー内で純水に水酸化ナトリウムを溶解し、pH8.3に調整した水酸化ナトリウム水溶液1.5Lを準備した。この水酸化ナトリウム水溶液に、ニッケル濃度60g/Lの塩化ニッケル水溶液と、pH8.3で一定となるように24質量%の水酸化ナトリウム水溶液を調整しながら反応槽に連続的に添加することで水酸化ニッケルを生成させた。
その際、塩化ニッケル水溶液は24mL/分の速度で添加した。また、液温は60℃に保持し、攪拌羽により200rpmで混合した。3Lの塩化ニッケル水溶液を添加した後、3時間攪拌を続けて水酸化ニッケルを製造した。
次に、得られた水酸化ニッケルのスラリーを一度沈降させ、スラリー濃度が500g/Lとなるように上澄み液を除去した。その後、該スラリーに水酸化ナトリウム水溶液を添加し、pHを8.5、液温を50℃に調整して30分間洗浄を行った。その後、ろ過して水酸化ニッケルのケーキを分離し、更に200g/Lのスラリー濃度で30分の純水レパルプ、ろ過を行い、水酸化ニッケルのろ過ケーキを得た。得られたろ過ケーキを、大気乾燥機に入れ120℃で24時間乾燥し、水酸化ニッケル粉を得た。また得られた水酸化ニッケル粉の塩素濃度を測定した。
引き続き、得られた水酸化ニッケル10gを空気中460℃で2時間加熱し、酸化ニッケルを合成し、得られた酸化ニッケルを、水素雰囲気中400℃で3時間還元し、ニッケル粉を得た。
最後に、得られたニッケル粉を40g/Lのスラリー濃度の純水で30分攪拌して洗浄し、吸引ろ過により固液分離した。その後、大気乾燥機中、120℃で12時間乾燥し、#100の篩にかけ、ニッケル粉を得た。結果を表1に示した。
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを9.8に変更した以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表1に示した。
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.0に変更した以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表1に示した。
実施例1で水酸化ニッケルのスラリーを一度沈降させ、上澄み液除去後に洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液を添加する代わりに、水酸化ニッケルの洗浄を純水で行い、ろ過後の純水レパルプ及びろ過の回数を3回とした以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。なお最初の純水洗浄時のpHは7.5であった。結果を表2に示した。
実施例1で水酸化ニッケルのスラリーを一度沈降させ、上澄み液除去後に洗浄液として水酸化ナトリウム水溶液を添加する代わりに、水酸化ニッケルの洗浄を純水とした以外は実施例1と同様の方法で水酸化ニッケルを作製した。水酸化ニッケルの残留塩素が高いために、酸化ニッケル生成以降の作業は行わなかった。なお最初の純水洗浄時のpHは7.5であった。結果を表2に示した。
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.3に変更した以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表2に示した。
水酸化ニッケルの洗浄時のpHを12.3に変更し、酸化ニッケルの還元処理において水素雰囲気での加熱温度を370℃とした以外は実施例1と同様の方法でニッケル粉を作製した。結果を表1に示した。
上記の結果を示す表1から明らかなように、実施例1〜3は、ニッケル粉の生産性に優れ、粗大粒子が少なく、酸素濃度が低いことがわかる。なお、実施例3で得られたニッケル粉は、ややD90が大きく連結粒子が若干多くなるが実用上問題がないレベルである。
Claims (7)
- 塩化ニッケル水溶液をアルカリで中和して水酸化ニッケルを沈澱させて、残留塩素濃度が5000〜9000質量ppmの水酸化ニッケル粉とする工程(A)と、該水酸化ニッケル粉を酸化性雰囲気下あるいは不活性雰囲気下で加熱処理して酸化ニッケル粉にする工程(B)と、該酸化ニッケルを還元性雰囲気下、380〜500℃で加熱処理してニッケル粉を作製する工程(C)と、該ニッケル粉を洗浄する工程(D)を備えたニッケル粉の製造方法であって、
前記工程(A)における塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーのpHを8.5〜12.0として洗浄し、その後、ろ過、純水洗浄を行うことを特徴とするニッケル粉の製造方法。 - 前記工程(A)において、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応が終了した後、水酸化ニッケルのスラリーを濃縮し、pHを8.5〜12.0として洗浄することを特徴とする請求項1に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記工程(A)において、洗浄時の水酸化ニッケルのスラリーのpHは、塩化ニッケル水溶液とアルカリの中和反応時のpHよりも高いことを特徴とする請求項1または2に記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記工程(A)において、中和に用いるアルカリは、水酸化ナトリウム、水酸化カリウムから選ばれる少なくとも1種以上であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
- 前記工程(A)において、洗浄に用いるアルカリは、中和に用いたものと同一のアルカリとすることを特徴とする請求項1〜4のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
- 得られるニッケル粉のD90が、1.5μm以下であることを特徴とする請求項1〜5のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
- 得られるニッケル粉の酸素濃度が、1.8質量%以下であることを特徴とする請求項1〜6のいずれかに記載のニッケル粉の製造方法。
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