JP2015097484A - 人工降雨用ノズルおよび人工降雨用装置 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】人工的に雨を降らせる際に使用される人工降雨用ノズル10を、水供給源に接続され可撓性部材で形成されると共に外部に向けて水を噴出する先端開口部13Fを有するフレキシブルチューブ部13Cを備えた構成とし、フレキシブルチューブ部13Cの先端開口部13Fに、水が層流状態から脈動流を含む乱流を発生させる乱流発生手段T・Gとして、1枚のフラップ状片13Eを設けて構成した。
【選択図】図2
Description
これらは、表土の流失実験であるとか、視界距離や降雨中でも視認性確認、建物や車輌の防水試験、降り始めを検知する検知器の開発、降り始めにおいて傘を差すとか、軒先を探す等の人の行動の観察により建物の軒先や広場の雨宿り空間を検討すること等、防災や検出器開発、街つくりに至る広い範囲で降雨模擬実験の必要性が高まっている。
この対策として、霧より粒径が大きく、一度に路面を濡らさないパラパラ雨程度の散水による冷却が望まれている。
従来、清涼感を与える水の装置として噴水があるが、新たな親水装置として疑似降雨に関心が高い。植物の葉に雨滴が当たるかすかな音や水溜りの水面の波紋を楽しめる雨滴粒径分布や、ほぼ空中に葉を伸ばした緑のカーテンへの散水など、降雨エリアが四角ではない異形エリアでも対応できることが求められる。
地面を濡らし過ぎると水溜りによる地面の汚れとなり、付近の通行人などに迷惑を掛けることになるため、小雨程度の水滴が防塵したい境界を降雨エリアとしできる散水装置が求められている。
その理由は、粒径分布を構成するために粒径の異なる複数種類のノズルを組み合わせることは当然として、多数の水噴出孔を持つシャワーヘッド状のノズルや、噴流水をデフューザーに衝突させて水滴化するスプリンクラー等のノズルでは、流量を少なくすると水がボタ落ちとなり、反対に大雨や豪雨の再現で流水量を無闇に増やすと噴霧状態となり、いずれも水滴粒径や降雨エリアを満たせなくなるため、数多くのノズルを備えて流量範囲に対応して通水を切り替える必要があった。
この切り替え時にも、水圧不足が発生するとボタ落ちを起こすが、表土の実験などではボタ落ちの水塊によって落下地点の表土を窪ませてしまうため、この対策として散水ノズルの直前に弁を設けて水の流れをON、OFFすることが必要となっている(特許文献2参照)。
更に詳しくは、止水してノズル100の空洞部に残った水Wが、右端の水噴出孔から空気が吸い込まれた結果、隣接する水噴出孔から染みだした水が集まってノズル表面に付着した大きな水塊となり、重力に逆らえなくなって大きな水滴W1として滴り落ちる瞬間を表している。
流量が少ない場合も、水噴出孔を出る噴流の質量運動量が小さいため、水噴出孔周囲の壁にまとわりつくことが起こり、噴出方向が水噴出孔の延長線上から外れることとなり、この噴流が隣接する噴流と合流して太い液柱となったり、数本の水噴出孔の水Wがノズル100の表面に付着した流れとなり、集まって大きな水塊となって滴り落ちることとなり、これがボタ落ちと呼ばれる現象となる。
このため、自然降雨に近い降雨を再現した降雨装置は、重いノズルやノズル内の弁を切り替えるための動力や制御装置を備えるために、強固な建物に備え付けるのが一般的であった。従って、実際の屋外に存在する斜面などでの繰り返し再現実験による研究では、簡易的な降雨装置に頼らざるを得ず、正確な再現実験のためには現場の一部を切り取って前記の強固な建物の実験室に持ち込んで実験しなければならなかった。
この特許文献1に開示された人工降雨用ノズルは、水供給源に連結された細管と、この細管に連結され先端に噴出口を有するフレキシブルチューブとを備え、このフレキシブルチューブの前記細管側にフレキシブルチューブの自励振動をする運動方向を制御するためのガイドフィンを備えた構成となっている。
液体を微粒化する原理としては、次にあげる4つに大別されると言われている。
1)液体の圧力(運動エネルギー)の利用
2)気流の運動エネルギーの利用
3)回転運動による遠心力の利用
4)その他、静電気、超音波の利用
そして、上記特許文献1に記載の人工降雨用ノズルは、この中で主に1)の液体圧力(運動エネルギー)を利用した方式である。
a)表面張力
b)液体の自由振動
c)液柱のレイリー(RaYleigh)不安定
d)相対速度に基づく不安定(Kelvin-HelmholtZ不安定問題)
e)液体噴流の内在不安定性と乱れ
f)加速度に基づく不安定性
などが働くことによって分散流(Dispresed Flow)に変化するとされていることを利用したものである。
ここで、液体を噴出するノズルが固定されている場合、ノズルの先端開口部に至る流路の流体と接する壁が滑らかであり、流れがレイノルズ数(Re)で乱流を示さないような範囲、一般的には、Re<2310 の流路長さと流速であれば、先端開口部を出た液体の噴流は、層流を保った液柱となって噴出する。
λ=4.44D
になるとされ、くびれが成長して液柱が分裂を引き起こし、分裂した液滴が表面張力によって球形になると、その液滴の直径dは、
d=1.88D
になるとされている。
図27のような平面状のシート110の場合、シート110の端の表面張力が大きいために縮流を起こして厚みが増すために、分裂して得られる液滴の粒径はシート110の端で生成されたものは大粒となりがちである。そこで、多くの場合は、図示しないが、シートを円環状または扇状にして噴出させる方法がとられる。
噴流の断面形状が円形ではない場合には、シート状噴流の場合と同様に表面張力によって表面積を小さくする力が発生し噴流の不安定性が増すために、分裂して水滴を得る典型例がシート状噴流と言える。
更に流速を上げると、先端開口部内部で乱流状態となり、先端開口部を出た瞬間に流体は微細な分裂を起こし、噴霧状と言われる状態になるとされている。
工業的には、単一噴孔ノズルを使った場合、噴霧状態を得る為には15MPa以上の高い圧力を掛けている。
可橈性材料として、例えばシリコンゴムなどを用いると、たとえ円管形状であっても、円管の軸方向に圧力を掛けると、いわゆる挫屈限界値としての長さと直径の比が、金属製や硬質プラスチック製などの高剛性材料製のものに比べて小さい。
従って、前記特許文献1に開示された人工降雨用ノズルに用いられているような、例えばフレキシブルチューブ長さが30mmで、内径1mm、外径2mmのような場合、先端開口部に軸方向の力を加えるとフレキシブルチューブが挫屈することは容易に理解できる。
前述した、降雨エリアの幅方向を「X」、奥行き方向を「Z」、平面XZに垂直方向即ち高さ方向と「Y」と設定する。
人工降雨用ノズル120をY軸に沿って下向きに噴出するように、床面から例えば2mの位置に設置する。前記フレキシブルチューブ120Aの側面に配されたガイドフィン120Bも、フレキシブルチューブ120Aと同じ材料で構成し、取り付ける向きはガイドフィン120Bの屈曲が容易となる厚み方向をZ軸に垂直となるように設置すると、ガイドフィン120BはYX平面と平行な面内で撓みやすくなるため、その先端に伸びるフレキシブルチューブ120Aの動きをも、ガイドフィン120Bの曲がり易い平面に納めるような働きをすることになる。
人工降雨用ノズル120に水道栓から水圧レギュレーターを介して給水すると、およそ0.05MPa以下ではフレキシブルチューブ120Aは概ね静止しているが、更に圧力を高めると唐突に振動を始める。その結果、ZX平面の底部に水滴が不規則な軌跡を描いて落下することになる。
水圧が0.17MPaで実験すると、散水される形状はX方向に7000mm、Z方向に200mmの範囲であった。この時の水滴の粒径は中央値d=1.012mmであった。なお、詳しい粒径分布は後述する。
フレキシブルチューブの先端開口部から液体が噴出すると、液体の噴出する運動量の反力が先端開口部を通してノズルに働く。
図29(A)で説明をすると、初期状態では噴流の反力が前記フレキシブルチューブ120Aの先端にY軸に沿って働き、フレキシブルチューブに圧縮圧力として働く状態を示している。フレキシブルチューブは自身の剛性で該反力に対抗するが、フレキシブルチューブが容易に挫屈してしまい、図29(B)の状態になる(なお、図29(B)〜(D)ではチューブ内部を図示していない)。
他方、第1屈曲点では、流体の向きがθ1変えられることによる遠心力が発生し、質量運動量のsinθ1が水平分力となるが、働く向きはX軸のプラス方向となる。
移動方向に対して反対向きの力(=抗力)が掛ると振動が持続することになるとされ、強制加振ではないため、このような持続的振動は自励振動と呼ばれる。
フレキシブルチューブ120Aの振動面は理想的にはYX平面内であるが、円柱が気流と相対速度を持つと円柱の回りに渦を生じ、この渦が円柱を不規則に揺らす力を発生する。従ってフレキシブルチューブ120Aは、Z軸方向にも加振力を受けるために、X軸方向に振動しながらもZ軸方向にも振動する。この事に依って散水エリアがZ軸方向にも幅を持つことになる。
スローシャッターによる長時間露光による画像では、人工降雨用ノズル120の振動の振幅が凡そ180度まで開いたものであることが分かり、得られた水滴の飛翔が放射状に軌跡を残していることが分かる。更にストロボ発光によって得られた瞬間画像では、人工降雨用ノズル120のS字状の瞬間姿勢と、このノズル120から噴出されて蛇行した液柱や液柱の分裂や分断されて生じた液滴の列が記録されている。
そのため、前述したRaYleighの理論による単一の先端開口部の噴流によって得られる水滴の粒径d=1.88Dよりも小径の水滴が多く得られるものと考えられる。
このことも、人工降雨用ノズルを使った人工降雨が、自然雨に非常に類似していると言える特徴となっている。
自然雨の粒径分布を表すものとして、マーシャル&パルマー分布が挙げられる。これは次式で与えられている。
N(D)=0.08×exp(-4.1×R-0.21×D)
N(D):粒径分布
D:雨滴の粒径(m)
R:降雨強度(mm/hr)
図32のグラフで粒径が0.5mm以下ではマーシャル&パルマー分布から大きくずれているのは、計測に使ったJoss型ディスドロメータは、1mm以下の粒径での精度劣化が指摘されているので参考とされている。
尚、人工降雨用ノズルによる実験で粒径計測に使用した計測器は、計測下限閾値が0.5mmであり、参考値とする。また、計測器として下記文献に有るものを使用した。
即ち、
「Nanko, K., Hotta, N., SuZuki, M. (2006) Evaluating the influence of canopYspecies and meteorological facT・Grs on throughfall drop siZe distribution.Journal of HYdrologY 329: 422-431. DOI:10.1016/j.jhYdrol.2006.02.036」
傾向が逆の粒径が大きいほど分布が大きくなるような人工降雨用ノズルを用いる場合は、マーシャル&パルマー分布を近似させるためには、より多くの種類のノズルで構成しなければならない。この点でも、フレキシブルチューブの単純な先端開口部を持つ人工降雨用ノズルは自然雨の再現について有利である。
上記人工降雨用ノズル120の散水エリアの奥行きは、ノズル120を真下に向けた時に200mmであるが、図34(A)のように横向きや迎え角を持って取り付けると散水エリアの奥行きは増大するので、この実施例では縦横夫々5本のノズル120を配置して構成した。
降雨強度が増すと大きな雨滴粒径が増えるため、これに対応可能なように先端開口部の大きなノズルを組み合わせてある(図34では先端開口部の大きさの違いを区別して描いていない)。
ここで、従来例の人工降雨用ノズルの散水エリアの大きさが、奥行き200mm、幅7000mmだった場合、一辺が2000mmの降雨エリアの1/3以下であるため、降雨エリアを超えてしまう水滴をキャッチする板125と、この板125に当たった水を集める樋126と、この樋126に集まった水を排出するホース127などを装着してある。
尚、水滴をキャッチする板125は、図34(B)では1辺のみ表示したが、本来は4辺に取り付けられているものである。
また、先端開口部が隣接していないため、他の先端開口部の水と合流することもなく、このノズルにおいては散水の開始や終止時、少流量から大流量に渡ってリニアに流量を可変として使うことができる。そのため、従来型のノズル(特許文献2)のようにON、OFF制御をしなくても良いという利点があり、前記したように複数のノズルを組み合わせて使う場合でも、ボタ落ち対策が不要なため簡単な制御で十分な利点がある。
該人工降雨用ノズルは、構成上ではガイドフィンによる細管への固定によってフレキシブルチューブの動作方向の安定が確保されている。このガイドフィンによって先端の首振り範囲が一方向に制御されることから、1本のノズルが提供する人工降雨エリアの幅が広く奥行きが狭い明瞭な帯状を呈しており、ノズルの組み合わせによって目的とする降雨エリアを構成することができていた。
また、雨滴粒径分布についても、人工降雨用ノズルで自然雨に近似させることは先端開口部の径の異なるものを組み合わせることで容易に実現できるが、涼感を演出する装置や打ち水効果で冷却を目的とするような自然雨の再現以外の要求では、もっと違った粒径分布を好む要求もあり、より簡便な方法で実現が望まれていた。
本発明は、かかる従来例が有する不都合を改善し、人工降雨エリアの多様な形状を得ると共に人工降雨の面積拡大を容易にすることを可能とした人工降雨用ノズルおよび人工降雨用装置を提供することを、その目的とする。
水供給源に接続され可撓性部材で形成されると共に外部に向けて水を噴出する先端開口部を有するフレキシブルチューブ部を備え、
前記フレキシブルチューブ部の先端開口部に、前記水が層流状態から脈動流を含む乱流を発生させる乱流発生手段を設けたことを特徴とする。
前記各取付部材を、前記各人工降雨用ノズルがそれぞれの乱流発生手段の先端同士が相互に干渉し合わない間隔をあけて、前記支持機構に配設した構成を採っている。
刻々と変わる反力の大きさのピークは、乱流発生手段が無いものに比べて大きくなり、フレキシブルチューブの運動を制御するチューブ振動制御部(ガイドフィン)の抑制力にある程度抗して運動できるようになる。これにより、本発明の人工降雨ノズルが実現する散水エリアは、チューブ振動制御部によって抑制されていた奥行き方向にも散水エリアを広げられることが可能となり、この結果、人工降雨の面積全体を大幅に拡大することが可能となった。
乱流発生の反動は、大きさや向きは不規則に変化するため、噴流の反動との合力の大きさと向きも不規則に変化する。その結果、フレキシブルチューブを挫屈させようとする力は向きと大きさが刻々とかわるので、フレキシブルチューブが振動する方向も刻々と変わる。
乱流発生手段によって増加するエネルギー増加分は振動する運動量が増加でき、結果として振幅の空間が広がって、散水エリアの面積も広がったと言える。
以下に、図1〜図12に基づいて、本発明に係る人工降雨用ノズルの第1実施形態を説明する。
ノズル10は、図1に示すように、水供給源(図略)に連結部材であるクイックソケット15を介して着脱可能に連結される継手部11、およびこの継手部11に一体的に設けられた細管部12と、可撓性部材、例えばシリコンゴムで形成されると共に、細管部12に連結され当該細管部12内を流れる水を案内して外部に噴出するフレキシブルチューブ部13Cとを備えている。また、上記クイックソケット15にはホース16が連結され、このホース16が水道等の水供給源に接続されるようになっている。
なお、継手部11と細管部12とは、例えば、合成樹脂製とされ、上述のようにノズル10と一体的に形成されていてもよい。
なお、内径寸法が小さいほど、水滴の粒径が小さな人工降雨を実現でき、例えば、霧に近い状態の人工降雨も実現できる。これに対して、内径寸法が大きくなればなるほど、水滴の粒径が大きな人工降雨を実現でき、例えば、豪雨状態の人工降雨も実現できる。
また、細管挿入部13Aの他端を底部としてノズル本体13の先端側には、フレキシブルチューブ部13Cの自励振動の運動方向を制御する薄板状のチューブ振動制御部であるガイドフィン13Bが設けられており、このガイドフィン部13Bは、フレキシブルチューブ部13Cの一部を内包した状態で細管挿入部13Aから先端側に所定長さ突き出した形状で設けられている。
フレキシブルチューブ部13Cの先端は図2(B)に示すように先端開口部13Fとなっており、前述のように、先端開口部13Fに乱流発生手段T・Gとして1枚のフラップ状片13Eが設けられている。
なお、ノズル本体13の材質は、シリコンゴムに限定されるものではなく、ポリ塩化ビニル、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリウレタン等でもよい。要は、可撓性、つまり柔軟性を有するものであればよい。
また、ガイドフィン部13Bの側面形状は、そのガイドフィン部13Bの底部において厚さ寸法が細管部12の外径寸法と同じ厚さ寸法の肉厚部とされ、そこから先端側に伸びるに従って滑らかに薄くなり、且つフレキシブルチューブ部13Cが突出する部分に於いて、当該フレキシブルチューブ部13Cの外径寸法とほぼ同じ厚さ寸法のくさび状に形成されている。
なお、ガイドフィン部13Bは対称形でなくても良く、ねじれているものや厚みは幅寸法が逆くさび状でも良いし、枚数も1枚や3枚などでも構わなく、前記フレキシブルチューブ部13Cの振動方向を散水エリアの形状に合わせる向きに制御できる形状を与えられれば良い。
ここで、フレキシブルチューブ部13Cの長さt(図2(A)参照)は、前記ガイドフィン部13Bの付け根から前記フラップ状片13Eの先端までと定義すると、内径が1mm、外径が2mmのフレキシブルチューブ部13Cの長さが30mmに設定されたとき良好な自励振動を得ている。
散水エリアが広いほど良いということではなく、降雨エリアの要求を満たし易い特性を選べばよいため、金型で予め数種類の長さのものを準備するだけでなく、例えば要求の降雨エリアを満たすのに都合のよい散水エリアのノズルとするための調整代と考えて、先端開口部13Fのフラップ状片13Eを形成する加工を、レーザーカッターなどで後加工する方法も採用してもよい。
この固有振動数は、フラップ状片13Eの回りの液体や気体の密度や粘性によって一定の振動モード(節の数)と振動数を持つ。
なお、後述するように、先端開口部13Fの内壁の一部を薄肉部として円環状の変形振動を促進させて、前記フラップ状片13Eと同等の効果を得る構成も取り得る。
そして、フラップ状片13Eの先端側の外方への広がり角度α°(図3参照)は、フレキシブルチューブ部13Cの内周面の延長線上と、この延長線上の交点M1から、水がフラップ状片13Eから離れるようにコアンダ効果の限界を生じる境界層剥離部の接線に向かって延びた角度α°に設定されている。
また、フラップ状片13Eの内周面が曲面であれば、噴流もその局面に沿って流れる。そして、フラップ状片13Eの内周面の曲率が大きいと、噴流はその曲面に沿って流れたり離れたりを周期的に起こしながら流れ、フラップ状片13Eをパタパタ引き込み振動させるようになる。
図4において、フラップ状片13Eを設けない場合のフレキシブルチューブ部を仮想線(二点差線)で示し、フラップ状片13Eの広がり角度(開度)が狭い場合を点線で示し、フラップ状片13Eの広がり角度を大きくした場合を実線で示す。
これに対して、フラップ状片13Eの広がり角度(開度)が狭い場合、先端開口部13Fから噴出された水流Wはフラップ状片13Eの先端まではフラップ状片13Eの内壁を追従している。そして、その後、水流Wは一旦広がってから収束する。
フラップ状片13Eの開角度を大きくした場合、水流Wはフラップ状片13Eの曲率に追従しきれず、前記コアンダ効果の限界を超えることにより、フラップ状片13Eの内周面の途中から剥離して流れる。
前述のように、噴流が、流体の粘性によって周囲の物体を引きこむことをコアンダ効果と言う。
本第1実施形態では、乱流発生手段T・Gが1枚のフラップ状片13Eで構成されており、このフラップ状片13Eを通過する噴流の液柱の片側側面がフラップ状片13Eに接し、残り半分が空気に接しているため、フラップ状片13E側の粘性抵抗が大きく反対側は小さい。噴流は粘性の大きい側で流速が落ちるため、フラップ状片13E側に曲がろうとする。
噴流が曲がると、遠心力によってフラプ状片13Eを元に戻す方向の力が発生するためフラップ状片13Eが振動を始める。振動の周波数はフラップ状片13Eが短いと高い周波数で持続し、フラップ状片13Eが長くなるに従って周波数が下がるが、2次モードの振動を起こすために高い周波数で安定することも起こる。
従って、フラップ状片13Eの長さに反比例して周波数が下がる一方ということは無く、ノコギリ波のように周波数が階段状に上がってから長さの増加に伴って周波数が下がり、そこから再び階段状に上がるような変化をする。これは振動体の一般的な特徴である。
このフラップ状片13Eの振動は、噴流への不安定エネルギーとして伝わると共に、フラップ状片13Eに繋がるフレキシブルチューブ部13Cの加振源となり先端開口部13Fの向きを振動に合わせて変化させる。
他方、フラップ状片13Eの振動によってフレキシブルチューブ13Cが受ける影響はZ軸方向への加振力が増す為に相対的にX軸方向への加振力が減少して散水エリアの形状を変化させることになる。
このことを実験結果から確認できるのが、後で詳細を述べる図11,12のグラフである。
図7(B)、(C)から、水がフレキシブルチューブ部13Cの先端開口部13Fから層流状態を保って噴出するのではなく、層流状態から脈動流を含む乱流状態に変化して噴出していることが分かる。
図8(B)は、フラップ状片13Eの開角度を大きくした場合であり、前述のように、水流はフラップ状片13Eの先端に追従しきれず、噴流はフラップ状片13Eの途中から剥離して流れている様子が分かる。
図10は、前述した従来例の図30(ストロボ撮影の写真)と同様に、本第1実施形態のノズル10に所定の水圧の水が供給され、その水の噴出の反動によりノズル10のフレキシブルチューブ部13Cが蛇行状の自励振動をしている状態を示す図である。
なお、図10において、ノズル10の実線はある瞬間の状態を示し、破線は別の瞬間の状態を示す。
すなわち、図11のグラフは、1枚のフラップ状片13Eの長さと粒径分布の比較で、乱流発生手段が無いノズルの粒径分布に対して、分散が大きくなりかつ中央値が小径側や大径側に寄ることが分かる。尚、このグラフの縦軸は存在比率である。
図12のグラフは、1枚のフラップ状片13Eの長さと散水エリアの比較であり、散水エリアの形状が変わり得ることが確認できる。
以上のような構成の第1実施形態のノズル10によれば、次のような効果が得られる。
刻々と変わる反力の大きさのピークは、フラップ状片13Eが無いものに比べて大きくなり、フレキシブルチューブ13Cの運動を制御するガイドフィン部13Bの抑制力にある程度抗して運動できるようになる。これにより、本発明の人工降雨ノズル10が実現する散水エリアは、ガイドフィン部13Bによって抑制されていた奥行き方向にも散水エリアを広げられることが可能となり、この結果、人工降雨の面積全体を大幅に拡大することが可能となり、より大型の建造物、装置、車両等の耐久性、耐水性、視認性、および感知性等を人工的な降雨を用いて調べることが可能となった。
次に、図13〜図17に基づいて、本発明に係る人工降雨用ノズルの第2実施形態を説明する。
図13(A)は、ノズル20の斜視図であり、図13(B)は、該ノズル20の乱流発生手段T・Gを構成する2枚のフラップ状片23E,23Eの拡大図である。
フラップ状片23E,23Eは、フレキシブルチューブ部23Cの先端開口部23Fの部分に、その長手方向中心線に沿って先端から鉈で竹を縦に割るように1本の切込みC2を所定の長さで入れて形成された2枚の半割り円管状のものである。
散水エリアが広いほど良いということではなく、降雨エリアの要求を満たし易い特性を選べばよいため、金型で予め数種類の長さのものを準備するだけでなく、例えば要求の降雨エリアを満たすのに都合のよい散水エリアのノズルとするための調整代と考えて、先端開口部23Fに設けられたフラップ状片23E,23Eを形成する加工をレーザーカッターなどで後加工する方法も採用してもよい。
そして、フラップ状片23E,23Eの先端側の外方への広がり角度α°は、フレキシブルチューブ部23Cの内周面の延長線上と、この延長線上の交点M1から、水がフラップ状片23E,23Eから離れるようにコアンダ効果の限界を生じる境界層剥離部の接線に向かって延びた角度α°に設定されている。
更に、上記台形形状を非対象としてもよい。フラップ状片23Eが台形の場合、台形の斜辺が噴流に対して旋回力を与える効果も生じるので、乱流の程度が増すという効果が得られる。
図15において、フラップ状片等の乱流発生手段T・Gを設けない場合のフレキシブルチューブ部を仮想線(二点差線)で示し、フラップ状片23E,23Eの広がり角度(開度)が狭い場合を点線で示し、フラップ状片23E,23Eの広がり角度を大きくした場合を実線で示す。
これに対して、フラップ状片23E,23Eの広がり角度(開度)が狭い場合、先端開口部23Fから噴出された水流Wは、フラップ状片23E,23Eの先端までは追従している。そして、その後、水流Wは一旦広がってから収束する。
フラップ状片23E,23Eの開角度を大きくした場合、水流Wはフラップ状片23E,23Eの曲率に追従しきれず、前記コアンダ効果の限界を超えることにより、フラップ状片23E,23Eの内周面の途中から剥離して流れる。
なお、フレキシブルチューブ部23Cの噴孔にフラップ状片を設けない場合は、前記第1実施形態のノズル10において、フレキシブルチューブ部23Cの先端開口部にフラップ状片を設けない場合を説明した図6の説明と同様であり、噴出された水流がほぼ層流状態のまま噴出している。
図16(B)は、フラップ状片23E,23Eの開角度を更に大きくした場合であり、上述のように、水流はフラップ状片23E,23Eの内壁に追従しきれず、噴流はフラップ状片23E,23Eの途中から剥離して流れている様子が分かる。
図17のグラフは、散水エリアの比較であり、フラップ状片23E,23Eの長さで散水エリアの形状が変わり得ることが確認できる。また、この図17のグラフと、図12のグラフのフラップ状片13Eが1枚の場合との散水エリアと比較しても、散水エリアの形状が変わることが分かる。
即ち、X軸方向の振動数は専らフレキシブルチューブ23Cの振動に依り、Z軸方向の振動数が主にフラップ状片の振動数に依ると考えれば、X軸とZ軸に夫々異なる振動数の波形を入れて得られるリサージュ図形に対応すると考えられる。
このように、本第2実施形態のノズル20を用いれば、先端開口部23Fに形成された乱流発生手段T・Gを設けることでも散水エリアを変えることが可能となり、設計の自由度が高まった。
次に、図18,19に基づいて、本発明に係る人工降雨用ノズルの第3実施形態を説明する。
図18(A)は、ノズル30の斜視図であり、図18(B)は、該ノズル30の乱流発生手段T・Gを構成する4枚のフラップ状片33Eの拡大図である。
4枚のフラップ状片33Eは、フレキシブルチューブ部33Cの先端部の先端開口部33Fの部分に、その長手方向中心線に沿って先端から鉈で竹を縦に割るように2本の切込みを、所定の長さで入れて形成された4枚の半割り円管状のものである。
そして、各フラップ状片33Eの先端側の外方への広がり角度が、図3に示すのと同じように、フレキシブルチューブ部33Cの内周面の延長線上と、この延長線上の交点から、水がフラップ状片33Eから離れるようにコアンダ効果の限界を生じる境界層剥離部の接線に向かって延びた角度に設定されている。
また、各フラップ状片33Eを、図9に示すのと同様に、台形状に形成してもよい。
この例でも、各フラップ状片33Eの長さの違いによって、散水エリアの形状や面積が異なることが分かる。また、前記図12に示すようなフラップ状片13Eの枚数が1枚の場合と、図17に示すようなフラップ状片23E,23Eが2枚の場合と、図19に示すようなフラップ状片33Eが4枚の場合との、それぞれの散水エリアの形状が異なることも分かる。
以上に説明したように、ノズル30の乱流発生手段T・Gを4枚のフラップ状片33Eで構成した第3実施形態でも、前記(1)〜(6)と略同様の効果を得ることができる。
乱流発生原理の一つとして、先端開口部の先端に、当該先端開口部の壁の延長する壁面を持つフラップ状片を1枚以上設け、先端開口部から噴出する噴流とフラップ状片とが接触し、流体の粘性力やベルヌーイの定理に基づく速度を持つ流体の圧力が下がることと、噴流が周囲の物体を引きこむコアンダ効果による吸引と、その力に抗するフラップ状片の弾力性との拮抗が自励振動を起こし、この自励動によって、接触している流体に振動が伝搬することとで、噴出する液柱に乱れを発生させ、連続流れを分裂流れに変えることを促進することが挙げられる。
コアンダ効果によって、液柱が曲げられる際に発生する遠心力や、曲げられる液柱が相対的に末広がりの壁を液柱側に引きこむ力の反力によって、液柱に不安定さを増して液柱の断裂を促進する。
また、先端開口部の先を末広がりに延長した壁が全周に渡ってあるのではなく部分的に1枚以上に分かれて末広がりとなる場合、噴流がコアンダ効果によってこの壁に沿って流れると、壁に接している液柱が引き延ばされる格好となり液柱は末広がりで続く壁面の葉数に対応した角を持つ形状を断面とした液柱となり、液柱には表面張力によって円形断面に戻る力が働くために、不安定となり液柱の断裂が促進される。
この時、前記フレキシブルチューブの先端の軌跡に注目すると、従来例のノズルではその軌跡のエリアは凡そX軸に70mm、Z軸に5mm以下となっており、このノズルを密集配置すると、Z軸方向はガイドフィンの幅の20mmに規制されるので、Z軸方向に20mm、X軸方向に70mmのピッチで配列できる。
Z軸方向はやはりガイドフィンの20mmで規制されるため、このノズルを密集配置すると、Z軸方向は20mm、X軸方向は50mmのピッチで配列が可能となり、約40%密集した設置が可能となる利点がある。
従来例のノズルでは、前記フレキシブルチューブの振動数は数十Hzであり、噴出する液柱のくびれや分裂した液滴の個数を計数すると2000個/secである。液柱に生じるくびれが起点となって分裂を起こすほどの乱れエネルギーの変化周期は2000Hz前後と仮定できる。これは、液柱が分裂する際に、くびれから分裂するときに副次的に小さな液滴を生じることがあるが、これは針先に付着した水滴が自然落下する際にも観察される現象であるため、液柱表面に発生するくびれを生じさせる乱れエネルギーの周期から除外して良いと考えられる。
乱流発生手段が液柱に与える乱れエネルギー、例えば前述のようにフラップ状片によって機械的な振動を与える場合では、フラップ状片の振動数が、前記した乱れエネルギーの周波数の約2000HZより高いか低いいかで、乱流発生手段が無い場合の粒径分布に対して、粒径を小径側に偏るか大径側に偏る分布特性に変え得る。
その他、広範囲への散水、および不規則性による防塵効果アップや、自然降雨に近い散水による景観、演出効果への応用等が容易に実現できる。
人工降雨用装置50は、以上に説明したノズル10,20,30のいずれかを、複数個、例えば4個設けて構成されたものである。なお、図20では、第1実施形態のノズル10を4個装備した人工降雨用装置50となっている。
そして、取付部材54には、各フラップ状片13Eの先端同士が干渉し合わない間隔をあけて各ノズル10が設けられている。なお、図20では、ノズル本体13のフラップ状片13Eの振れ方向は、符号Aで示すように、紙面直交方向である。
(1)4個のノズル10が、それぞれのノズル本体13におけるフラップ状片13Eの先端同士が干渉し合わない間隔をあけて配置して設けられているので、一度の実施で、より広範囲に人工的に雨を降らすことができる。
その結果、より大型の建造物、装置、車両等の耐久性、耐水性、視認性、および感知性等を人工的な降雨を用いて調べることが可能となった。
また、図21(C)に示すように、乱流発生手段T・Gとして、フレキシブルチューブ部65C等の先端の内周面に、内側溝Dを例えば4箇所に設けてもよい。このようにすると、フレキシブルチューブ部65Cの先端内周面の断面が非円形流れとなり、断続流を発生させる起点となり易く、これにより、容易に液滴を発生させることができる。
例えば、図22に示すように、フレキシブルチューブ部43Cの先端部近傍に、外気と繋がる少なくとも1個の孔43aをあけ、この孔43aを乱流発生手段T・Gとしてもよい。
このようにすると、内部流によるベルヌーイの定理により周囲より減圧となるため、この孔から空気が巻き込まれることになる。そうすると、この空気の巻き込みが流体の噴流に混入するが、空気は気泡として混入し流体の流れに溝を付ける結果となり、その気泡は流体の断続の起点となる。そのため、容易に液滴を発生させることができる。
なお、実験の結果、上記孔43aはフレキシブルチューブ部の端部から、例えば口径の3/4の位置に、口径の半分の寸法の孔径とすることで、上記効果を得ることができた。
そして、このようにしても、第1実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
そして、このようにしても、第2実施形態と同様の作用、効果を得ることができる。
即ち、噴孔の断面形状を非円形とし、噴口を噴出した異形断面の液柱が円形断面液柱に戻ろうとする力が働くようにすることで、液柱に不安定を与え分裂流への移行を促進することができる。
この時、液体又はノズルの不均一性によって、ノズルの断面形状変化するように変形するが、周囲の長さが同じまま断面形状が変わると断面積が減少することになり、流れ抵抗が増して流体の圧力が増し変形したノズルを元の円形に近い形に戻す力が働く。
ノズルが変形する向きと、これに抗する力の向きが反対方向であるため、断面が変形することを繰り返す振動が持続する。この振動も噴流の液柱に伝わり、液柱に不安定さを増して液柱の断裂を促進することになる。
また、屋外で使用される種々の建造物の降雨に対する耐久性や耐水性等を確認するための検査(或いはテスト)用や、表土の流失実験、建物や車輌の防水試験、降り始めを検知する検知器の開発、防災や検出器開発や、水の気化潜熱を利用したヒートアイランド現象の対策用等として、利用される。
11 継手部
12,22,32 細管部
13,23,33 ノズル本体
13A,23A,33A 細管挿入部
13B,23B,33B チューブ振動制御部であるガイドフィン
13C,23C,33C フレキシブルチューブ部
13E,23E,33E 乱流発生手段であるフラップ状片
15 クイックソケット
16 ホース
50 人工降雨用装置
T・G 乱流発生手段
Claims (5)
- 人工的に雨を降らせる際に使用される人工降雨用ノズルであって、
水供給源に接続され可撓性部材で形成されると共に外部に向けて水を噴出する先端開口部を有するフレキシブルチューブ部を備え、
前記フレキシブルチューブ部の先端開口部に、前記水が層流状態から脈動流を含む乱流を発生させる乱流発生手段を設けたことを特徴とする人工降雨用ノズル。 - 請求項1に記載の人工降雨用ノズルにおいて、
前記乱流発生手段を、
前記フレキシブルチューブ部先端部に加工形成された1本以上のフラップ状片をもって構成したことを特徴とする人工降雨用ノズル。 - 請求項2に記載の人工降雨用ノズルにおいて、
前記フラップ状片の先端側を外方に広がった形状としたことを特徴とする人工降雨用ノズル。 - 請求項3に記載の人工降雨用ノズルにおいて、
前記フラップ状片の先端側の外方への広がり角度を、前記フレキシブルチューブ部内を流れる水が前記フラップ状片に沿って流れるとき境界層剥離が起こる角度以上に広がる壁面を持って設定したことを特徴とする人工降雨用ノズル。 - 請求項1ないし請求項4のいずれか一つに記載の人工降雨用ノズルを複数設け、前記各人工降雨用ノズルを取付ける複数の取付部材とこれらの各取付部材を支持する支持機構とを備えて構成すると共に、
前記各取付部材を、前記各人工降雨用ノズルがそれぞれの乱流発生手段の先端同士が相互に干渉し合わない間隔をあけて、前記支持機構に配設したことを特徴とする人工降雨用装置。
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