以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.二次電池用非水電解液
2.二次電池用非水電解液を用いた二次電池
2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
2−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)
3.二次電池の用途
3−1.電池パック
3−2.電動車両
3−3.電力貯蔵システム
3−4.電動工具
<1.二次電池用非水電解液>
まず、本技術の一実施形態の二次電池用非水電解液(以下、単に「電解液」または「本技術の電解液」という。)について説明する。
ここで説明する電解液は、リチウムイオン二次電池などの二次電池に用いられるものである。もちろん、電解液が用いられる二次電池の種類は、リチウムイオン二次電池に限らず、他の二次電池でもよい。
[環状エーテル化合物]
電解液は、以下で説明する環状エーテル化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。
「環状エーテル化合物」とは、全体として環状となるように炭素鎖とエーテル結合(すなわち酸素原子)とが結合された酸素含有環を含む化合物である。炭素鎖の数は、1または2以上であると共に、エーテル結合の数も同様に、1または2以上である。酸素含有環の数は、1つでもよいし、2つ以上でもよい。ただし、酸素含有環は、酸素原子以外の構成原子として、窒素原子および硫黄原子などの非酸素原子のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
炭素鎖は、炭素間単結合(−C−C−)だけを含んでいてもよいし、1または2以上の炭素間多重結合(炭素間二重結合である−C=C−または炭素間三重結合である−C≡C−)だけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。すなわち、上記した酸素含有環は、炭素間多重結合を含んでいる不飽和酸素含有環でもよいし、炭素間多重結合を含んでいない飽和酸素含有環でもよい。なお、炭素鎖が炭素間多重結合を含んでいる場合には、その炭素鎖は、炭素間多重結合として、炭素間二重結合だけを含んでいてもよいし、炭素間三重結合だけを含んでいてもよいし、双方を含んでいてもよい。
また、炭素鎖は、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。分岐状の炭素鎖では、側鎖同士が結合していてもよい。
より具体的には、環状エーテル化合物は、骨格と、その骨格に導入される置換基とを含んでいる。この置換基の数は、1つだけでもよいし、2つ以上でもよい。
「骨格」とは、環状エーテル化合物のうちの土台となる部分である。「置換基」とは、骨格のうちの少なくとも一部の水素基が置換されることで、その骨格(炭素鎖中の炭素原子など)に導入される基である。
[環状エーテル化合物の骨格]
骨格は、四員環以上の酸素含有環を含んでおり、その骨格に含まれる四員環以上の酸素含有環の数は、1つだけでもよいし、2つ以上でもよい。酸素含有環の数が2以上である場合、その酸素含有環の種類は、1種類だけでもよいし、2種類以上でもよい。
「四員環以上の酸素含有環」とは、炭素鎖中の炭素原子とエーテル結合中の酸素原子と非酸素原子とにより画定される形状が四角形以上の多角形になる酸素含有環である。このため、四員環である1.3−プロピレンオキシドおよび五員環であるテトラヒドロフランなどは、「四員環以上の酸素含有環」に含まれるが、三員環であるエチレンオキシドは、「四員環以上の酸素含有環」に含まれない。
骨格に2つ以上の四員環以上の酸素含有環が含まれる場合において、隣り合う酸素含有環同士の結合態様は、特に限定されない。このため、隣り合う酸素含有環のうちの炭素原子同士は、単結合を形成していてもよいし、多重結合を形成していてもよい。また、隣り合う酸素含有環同士は、縮合環を形成していてもよいし、スピロ構造を形成(1つの炭素原子を共有)していてもよい。さらに、隣り合う酸素含有環同士は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびエーテル結合などの連結基を介して結合されていてもよい。この2価の鎖状飽和炭化水素基の詳細に関しては、後述する。
なお、骨格は、1または2以上の四員環以上の酸素含有環を含んでいれば、さらに、1または2以上の四員環未満の酸素含有環(三員環の酸素含有環)を含んでいてもよい。この場合においても、隣り合う酸素含有環同士(四員環以上の酸素含有環および四員環未満の酸素含有環)は、単結合を形成していてもよいし、多重結合を形成していてもよいし、縮合環を形成していてもよいし、スピロ構造を形成していてもよい。また、四員環未満の酸素含有環は、飽和酸素含有環でもよいし、不飽和酸素含有環でもよい。
また、骨格は、1または2以上の四員環以上の酸素含有環を含んでいれば、さらに、1または2以上の非酸素含有環を含んでいてもよい。この「非酸素含有環」とは、全体として環状となるように炭素鎖が結合された化合物であり、その炭素鎖に関する詳細は、上記した通りである。酸素含有環と非酸素含有環との結合態様は、上記した酸素含有環同士の結合態様と同様に、特に限定されない。非酸素含有環の具体例は、シクロヘキサンおよびベンゼンなどのうちのいずれかである。
骨格に含まれる四員環以上の酸素含有環の具体例は、以下の通りである。
飽和酸素含有環の具体例は、式(2−1)〜式(2−12)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれかである。
(R81は、水素基および1価の鎖状飽和炭化水素基のうちのいずれかである。)
不飽和酸素含有環の具体例は、式(3−1)〜式(3−12)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれかである。
(R82は、水素基および1価の鎖状飽和炭化水素基のうちのいずれかである。)
骨格の具体例は、以下の通りである。
骨格が1つの四員環以上の酸素含有環からなる場合の具体例は、上記した式(2−1)〜式(2−12)および式(3−1)〜式(3−12)のそれぞれに示した化合物のうちのいずれかである。
この他、骨格が1つ以上の四員環以上の飽和酸素含有環を含む場合の具体例は、式(2−13)〜式(2−61)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれかである。
(R81は、水素基および1価の鎖状飽和炭化水素基のうちのいずれかである。)
また、骨格が1つ以上の四員環以上の酸素含有環を含む場合の他の具体例は、式(3−13)〜式(3−15)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれかである。
(R82は、水素基および1価の鎖状飽和炭化水素基のうちのいずれかである。)
[環状エーテル化合物の置換基]
置換基は、式(1)で表される1価の基である。置換基の数が2以上である場合には、その2以上の置換基は、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。もちろん、2以上の置換基は、2種類以上の置換基を含んでいてもよい。
−X−O−R ・・・(1)
(Xは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、Xはなくてもよい。Rは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、Rのうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR中の炭素間多重結合(−C=C−または−C≡C−)は、エーテル結合(−O−)に結合されている。)
「2価の鎖状飽和炭化水素基」とは、炭素(C)および水素(H)により形成されていると共に炭素間多重結合を含んでいない2価の鎖状の基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。この2価の鎖状飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜4のアルキレン基などである。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。アルキレン基の具体例は、メチレン基(−CH2 −)、エチレン基(−C2 H4 −)、プロピレン基(−C3 H6 −)およびブチレン基(−C4 H8 −)などである。
上記したように、Xはなくてもよい。すなわち、Xは、置換基中に含まれていてもよいし、含まれていなくてもよい。Xが含まれていない場合の置換基は、−O−Rで表される。
Rの種類は、上記した1価の鎖状飽和炭化水素基などのうちのいずれかであれば、特に限定されない。置換基の数が2以上である場合には、2以上のRは、同じ種類でもよいし、異なる種類でもよい。もちろん、2以上のRは、上記した1価の鎖状飽和炭化水素基などのうちの2種類以上でもよい。
「1価の鎖状飽和炭化水素基」とは、炭素および水素により形成されていると共に炭素間多重結合を含んでいない1価の鎖状の基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。この1価の鎖状飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜8のアルキル基などである。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。アルキル基の具体例は、メチル基(−CH3 )、エチル基(−C2 H5 )、プロピル基(−C3 H7 )、n−ブチル基(−C4 H8 )およびt−ブチル基(−C(−CH3 )2 −CH3 )などである。
「1価の鎖状不飽和炭化水素基」とは、炭素および水素により形成されていると共に1または2以上の炭素間多重結合を含んでいる1価の鎖状の基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。この1価の鎖状不飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=2〜8のアルケニル基、および炭素数=2〜8のアルキニル基などのうちのいずれかある。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。アルケニル基の具体例は、ビニル基(−CH=CH2 )およびアリル基(−CH2 −CH=CH2 )などである。アルキニル基の具体例は、エチニル基(−C≡CH)などである。
「1価の環状飽和炭化水素基」とは、炭素および水素により形成されていると共に1または2以上の炭素間多重結合を含んでいない1価の環状の基の総称であり、1または2以上の側鎖を有していてもよい。この1価の環状飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=3〜8のシクロアルキル基などである。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。シクロアルキル基の具体例は、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基およびシクロオクチル基などである。
「1価の環状不飽和炭化水素基」とは、炭素および水素により形成されていると共に1または2以上の炭素間多重結合を含んでいる1価の環状の基の総称であり、1または2以上の側鎖を有していてもよい。この1価の環状不飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=6〜18のアリール基などである。この他、1価の環状不飽和炭化水素基は、例えば、式(30−1)で表される基などでもよい。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。アリール基の具体例は、フェニル基およびナフチル基などである。
「1価の酸素含有環状飽和炭化水素基」とは、上記した1価の環状飽和炭化水素基において、環を形成する複数の炭素原子のうちの1つまたは2つ以上が酸素原子により置換されたものである。この1価の酸素含有環状飽和炭化水素基は、例えば、式(30−2)〜式(3−4)のそれぞれで表される基などのうちのいずれかである。
「1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基」とは、上記した1価の環状不飽和炭化水素基において、環を形成する複数の炭素原子のうちの1つまたは2つ以上が酸素原子により置換されたものである。この1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基は、例えば、式(30−5)〜式(30−7)のそれぞれで表される基などのうちのいずれかである。
「ハロゲン化基」とは、上記した2価の鎖状飽和炭化水素基などの一連の炭化水素基のうちの少なくとも1つの水素基(−H)がハロゲン基により置換されたものである。このハロゲン基は、例えば、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)およびヨウ素(−I)などのうちのいずれか1種類または2種類以上である。
「2種類以上が結合された1価の基」とは、上記した1価の鎖状飽和炭化水素基などの一連の基のうちの2種類以上が全体として1価となるように結合された基である。この2種類以上が結合された1価の基は、例えば、アルキル基とアリール基とが結合された基(ベンジル基)、アルキル基とシクロアルキル基とが結合された基などである。
なお、Rは、上記以外の基でもよい。具体的には、Rは、例えば、1価の酸素含有鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基などでもよい。「1価の酸素含有鎖状飽和炭化水素基」とは、炭素および水素と共に酸素(O)により形成されていると共に1または2以上の炭素間多重結合を含んでいない1価の鎖状の基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。この1価の酸素含有鎖状飽和炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜8のアルコキシ基などである。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。アルコキシ基の具体例は、メトキシ基(−OCH3 )およびエトキシ基(−OC2 H5 )などである。「ハロゲン化基」に関する詳細は、上記した通りである。
ただし、Rのうちの1つまたは2つ以上は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。以下では、「1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基」を総称して、単に「1価の鎖状不飽和炭化水素基など」という。すなわち、置換基の数が1つである場合、その置換基を構成するRは、上記した1価の鎖状不飽和炭化水素基などを含んでいる。または、置換基の数が2つ以上である場合、2つ以上のRのうちの1つまたは2つ以上は、上記した1価の鎖状不飽和炭化水素基などを含んでいる。中でも、Rのうちの1つまたは2つ以上は、1価の鎖状不飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかを含んでいることが好ましい。
「Rのうちの1つまたは2つ以上は1価の鎖状飽和炭化水素基などを含んでいる」とは、そのRのうちの1つまたは2つ以上は、1価の鎖状不飽和炭化水素基でもよいし、1価の環状不飽和炭化水素基でもよいし、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基でもよいし、それらのハロゲン化基でもよいし、それらの2種類以上が結合された1価の基でもよいし、それらのうちのいずれかの基を含む基でもよいことを意味している。
しかも、Rのうちの1つまたは2つ以上が1価の鎖状飽和炭化水素基などを含んでいるだけでなく、そのR中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。
「炭素間多重結合はエーテル結合に結合されている」とは、エーテル結合のすぐ隣りに炭素間多重結合が位置していること、言い替えれば、炭素間多重結合がエーテル結合に対して直接的に結合されていることを意味している。より具体的には、エーテル結合とR(−C=C−または−C≡C−を含む)との結合関係に着目した場合、−O−C=C−または−O−C≡C−で表される結合が形成されている場合には、「炭素間多重結合はエーテル結合に結合されている」という条件を満たしている。炭素間多重結合(−C=C−または−C≡C−)とエーテル結合との間に他の基が介在していないため、その炭素間多重結合がエーテル結合に対して直接的に結合されているからである。これに対して、−O−C−C=C−または−O−C−C≡C−などで表される結合が形成されている場合には、「炭素間多重結合はエーテル結合に結合されている」という条件を満たしていない。炭素間多重結合(−C=C−または−C≡C−)とエーテル結合との間に余計な炭素原子が介在しているため、その炭素間多重結合は、エーテル結合に対して直接的に結合されておらず、間接的に結合されているからである。
なお、2つ以上のRのうちの一部が1価の鎖状不飽和炭化水素基などを含んでいる場合には、残りのRの種類は、特に限定されない。具体的には、残りのRは、水素基でもよいし、1価の鎖状飽和炭化水素基でもよいし、1価の環状飽和炭化水素基でもよいし、1価の酸素含有環状炭化水素基でもよいし、それらのハロゲン化基でもよいし、それらの2種類以上が結合された1価の基でもよい。もちろん、残りのRは、炭素間多重結合がエーテル結合に結合されていない1価の鎖状不飽和炭化水素基などでもよい。
ここで、電解液が環状エーテル化合物を含んでいるのは、置換基中において炭素間多重結合がエーテル結合に結合されているため、その炭素間多重結合の反応性が向上するからである。この場合には、充放電時において、環状エーテル化合物の重合反応に起因する被膜が電極の表面に形成されるため、電解液の分解反応が抑制される。これにより、充放電を繰り返しても、放電容量が低下しにくくなると共に、電解液の分解反応に起因するガスの発生が抑制される。しかも、置換基中において炭素間多重結合がエーテル結合に結合されていると、エーテル結合(酸素原子)と酸素含有環中の酸素原子との間に電極反応物質が配位しやすくなる。これにより、被膜の抵抗増加が抑制されると共に、充放電時において被膜を経由する電極反応物質の出入りが阻害されにくくなる。
「電極反応物質」とは、充放電反応に関わる物質であり、例えば、リチウムイオン二次電池ではリチウム(Li)である。
中でも、置換基の数が2つ以上である場合には、2つ以上のRのうちの全てが1価の鎖状不飽和炭化水素基などを含んでいることが好ましい。炭素間多重結合の反応性がより向上すると共に、エーテル結合(酸素原子)と酸素含有環中の酸素原子との間に電極反応物質がより配位しやすくなるため、より高い効果が得られるからである。
置換基が骨格に導入される位置は、特に限定されない。このため、骨格が四員環以上の酸素含有環、四員環未満の酸素含有環、および非酸素含有環を含んでいる場合、置換基は、四員環以上の酸素含有環だけに導入されていてもよいし、四員環未満の酸素含有環だけに導入されていてもよいし、非酸素含有環だけに導入されていてもよいし、それらのうちの2種類以上に導入されていてもよい。
中でも、置換基のうちの1つまたは2つ以上は、四員環以上の酸素含有環に導入されていることが好ましい。すなわち、置換基の数が1つである場合には、その置換基が四員環以上の酸素含有環に導入されていると共に、置換基の数が2つ以上である場合には、その置換基のうちの1つまたは2つ以上が四員環以上の酸素含有環に導入されていることが好ましい。この場合には、全ての置換基が四員環以上の酸素含有環に導入されていることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
[環状エーテル化合物の具体例]
中でも、環状エーテル化合物は、式(4)〜式(6)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。環状エーテル化合物を製造しやすいと共に、優れた利点が得られるからである。
(X1は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X1はなくてもよい。R1は、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。aは、1以上の整数である。Y1およびY2のそれぞれは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、R1のうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR1中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X2は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X2はなくてもよい。R2は、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化物、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。bは、1以上の整数である。ただし、R2のうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR2中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X3は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X3はなくてもよい。R3は、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。cは、1以上の整数である。ただし、R3のうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された基のうちの少なくとも1種を含み、そのR3中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
式(4)に示した環状エーテル化合物は、式(2−1)〜式(2−5)のそれぞれに示した化合物を骨格として含んでいる。式(4)に示した骨格は、2つの四員環以上の酸素含有環を含んでおり、その酸素含有環同士は縮合環を形成している。各酸素含有環は、Y1およびY2のそれぞれの炭素数によっては、五員環に限らず、六員環以上になる場合もある。
X1に関する詳細は、上記したXに関する詳細と同様であると共に、R1に関する詳細は、上記したR1に関する詳細と同様である。
Y1およびY2のそれぞれは、例えば、炭素数=1〜4のアルキレン基などである。環状エーテル化合物の相溶性などが確保されるからである。アルキレン基の具体例は、メチレン基、エチレン基、プロピレン基およびブチレン基などである。
置換基の数を決定するaの値は、1以上の整数であれば、特に限定されない。
なお、式(4)に示しているように、置換基が骨格に導入される位置は、特に限定されない。すなわち、骨格のうちの水素基が置換基に置換されていれば、その置換基の位置はどこでもよい。
式(5)に示した環状エーテル化合物は、式(2−6)に示した化合物を骨格として含む化合物である。X2、R2およびbのそれぞれに関する詳細は、上記したX1、R1およびaのそれぞれに関する詳細と同様である。また、置換基の位置が特に限定されないことは、式(4)に関して説明した場合と同様である。
式(6)に示した環状エーテル化合物は、式(2−1)に示した化合物を骨格として含む化合物である。X3、R3およびcのそれぞれに関する詳細は、上記したX1、R1およびaのそれぞれに関する詳細と同様である。また、置換基の位置が特に限定されないことは、式(4)に関して説明した場合と同様である。
より具体的には、上記した環状エーテル化合物は、式(7)〜式(9)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。環状エーテル化合物をより製造しやすいと共に、より優れた利点が得られるからである。
(R4およびR5のそれぞれは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、R4およびR5のうちの少なくとも一方は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された基のうちの少なくとも1種を含み、そのR4およびR5のうちの少なくとも一方中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X4は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X4はなくてもよい。R6およびR7のそれぞれは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、R6およびR7のうちの少なくとも一方は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR6およびR7のうちの少なくとも一方中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X5およびX6のそれぞれは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X5およびX6のそれぞれはなくてもよい。R8およびR9のそれぞれは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、R8およびR9のうちの少なくとも一方は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR8およびR9のうちの少なくとも一方中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
式(7)に示した環状エーテル化合物は、式(4)に示した化合物において、骨格に含まれる2つの酸素含有環の形状(五員環)を限定すると共に、その骨格に導入される置換基の数および種類を限定したものである。R5およびR6のそれぞれに関する詳細は、上記したR1に関する詳細と同様である。
式(8)に示した環状エーテル化合物は、式(5)に示した化合物において、骨格に導入される置換基の数および種類を限定したものである。X4に関する詳細は、上記したX2に関する詳細と同様であると共に、R6およびR7のそれぞれに関する詳細は、上記したR2に関する詳細と同様である。
式(9)に示した環状エーテル化合物は、式(6)に示した化合物において、骨格に導入される置換基の数および位置を限定したものである。X5およびX6のそれぞれに関する詳細は、上記したX3に関する詳細と同様であると共に、R8およびR9のそれぞれに関する詳細は、上記したR3に関する詳細と同様である。
環状エーテル化合物の具体例は、式(10−1)〜式(10−15)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。
また、環状エーテル化合物の具体例は、式(11−1)〜式(11−10)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。
さらに、環状エーテル化合物の具体例は、式(12−1)〜式(12−6)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。
電解液中における環状エーテル化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜3重量%であることが好ましい。電解液に本来的に要求される性質(例えば導電性など)を確保しつつ、上記した利点が得られるからである。なお、電解液が2種類以上の環状エーテル化合物を含む場合における含有量とは、それぞれの環状エーテル化合物の含有量の合計である。
なお、電解液中に含まれている環状エーテル化合物は、炭素間多重結合を含んでいるため、その電解液中に含まれている微量の酸の存在に起因して、意図せずに重合しやすい傾向にある。この酸は、例えば、フッ化水素(HF)などのプロトン酸、および五フッ化リン(PF5 )などのルイス酸である。そこで、環状エーテル化合物の重合反応を抑制するために、電解液は、重合防止剤のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。この重合防止剤は、例えば、アミン類、アミド類および窒素化合物(尿素類など)などである。アミン類は、例えば、トリメチルアミン、トリエチルアミン、トリ−n−プロピルアミン、トリ−n−ブチルアミン、トリ−iso−ブチルアミン、トリ−n−ペンチルアミン、トリ−n−ヘキシルアミン、トリ−n−オクチルアミン、トリフェニルアミン、トリベンジルアミン、1−メチルピロリジン、1−メチルピロール、1−メチルピペリジン、ピリジン、キノリン、およびN,N−ジメチルアニリンなどである。アミド類は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルベンズアミド、1−メチル−2−ピロリドン、およびN−メチル−ε−カプロラクタムなどである。尿素類は、例えば、1,1,3,3−テトラメチル尿素、1,1,3,3−テトラエチル尿素、1,3−ジメチル−2−イミダゾリジノン、および1,3−ジメチル−3,4,5,6−テトラヒドロ−2(1H)−ピリミジノンなどである。電解液中における重合防止剤の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.05重量%〜10重量%であることが好ましい。電池特性にほとんど影響を与えずに、環状エーテル化合物の重合反応が抑制されるからである。
[他の材料]
この電解液は、上記した環状エーテル化合物と一緒に、他の材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
他の材料は、例えば、非水溶媒などの溶媒のいずれか1種類または2種類以上である。
非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルおよびニトリルなどである。優れた溶解性および相溶性などが得られるからである。環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンおよび炭酸ブチレンなどであり、鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルおよび炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンおよびγ−バレロラクトンなどである。カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルおよびトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリルおよび3−メトキシプロピオニトリルなどである。
また、非水溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチルおよびジメチルスルホキシドなどである。同様の利点が得られるからである。
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちのいずれか1種類または2種類以上が好ましい。この場合には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解液において、電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
この他、非水溶媒は、不飽和環状炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上でもよい。充放電時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。
この不飽和環状炭酸エステルとは、1または2以上の不飽和結合(炭素間二重結合)を含む環状炭酸エステルである。より具体的には、式(13)で表される炭酸ビニレン系化合物、式(14)で表される炭酸ビニルエチレン系化合物、および式(15)で表される炭酸メチレンエチレン系化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上である。R21およびR22は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R23〜R26に関しても同様である。溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。なお、不飽和環状炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
(R21およびR22は水素基またはアルキル基である。)
(R23〜R26は水素基、アルキル基、ビニル基またはアリル基であり、R23〜R26のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
炭酸ビニレン系化合物は、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
炭酸ビニルエチレン系化合物は、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R32〜R35としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
炭酸メチレンエチレン系化合物は、例えば、炭酸メチレンエチレン(4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、および4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。この炭酸メチレンエチレン系化合物は、式(15)に示したように1つのメチレン基を有する化合物の他、2つのメチレン基を有する化合物でもよい。なお、R27は、>CR2 (Rはアルキル基)で表される2価の基でもよい。
この他、不飽和環状炭酸エステルは、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などでもよい。
また、非水溶媒は、ハロゲン化炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上でもよい。充放電時において電極の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。このハロゲン化炭酸エステルとは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。より具体的には、環状ハロゲン化炭酸エステルは、式(16)で表される化合物であると共に、鎖状ハロゲン化炭酸エステルは、式(17)で表される化合物。R28〜R31は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、R28〜R31のうちの一部が同じ種類の基でもよい。このことは、R32〜R37に関しても同様である。溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。なお、ハロゲン化炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
(R28〜R31は水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、R28〜R31のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
(R32〜R37は水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、R32〜R37のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素のいずれか1種類または2種類以上が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
環状ハロゲン化炭酸エステルは、例えば、下記の式(16−1)〜式(16−21)のそれぞれで表される化合物などであり、その環状ハロゲン化炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(16−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(16−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、後者がより好ましい。また、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。一方、鎖状ハロゲン化炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)または炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。
また、非水溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)でもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンは、例えば、プロパンスルトンまたはプロペンスルトンなどである。溶媒中におけるスルトンの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。なお、スルトンの具体例は、上記した化合物に限られない。
さらに、非水溶媒は、酸無水物でもよい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物は、例えば、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物、またはカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸または無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸または無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。なお、酸無水物の具体例は、上記した化合物に限られない。
[電解質塩]
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の他の塩を含んでいてもよい。この「他の塩」とは、例えば、リチウム塩以外の軽金属塩などである。
このリチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、または臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。ただし、リチウム塩の具体例は、上記した化合物に限られない。
中でも、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 およびLiAsF6 のうちの少なくとも1種類が好ましく、LiPF6 がより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
特に、リチウム塩は、式(18)〜式(20)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。より高い効果が得られるからである。なお、R41およびR43は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R51〜R53、R61およびR62に関しても同様である。なお、式(18)〜式(20)のそれぞれに示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
(X41は長周期型周期表における1族元素または2族元素、またはアルミニウムである。M41は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。R41はハロゲン基である。Y41は−C(=O)−R42−C(=O)−、−C(=O)−CR43
2 −、または−C(=O)−C(=O)−である。ただし、R42はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基である。R43はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基である。なお、a4は1〜4の整数であり、b4は0、2または4の整数であり、c4、d4、m4およびn4は1〜3の整数である。)
(X51は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M51は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Y51は−C(=O)−(CR51
2 )
b5−C(=O)−、−R53
2 C−(CR52
2 )
c5−C(=O)−、−R53
2 C−(CR52
2 )
c5−CR53
2 −、−R53
2 C−(CR52
2 )
c5−S(=O)
2 −、−S(=O)
2 −(CR52
2 )
d5−S(=O)
2 −、または−C(=O)−(CR52
2 )
d5−S(=O)
2 −である。ただし、R51およびR53は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、e5およびn5は1または2の整数であり、b5およびd5は1〜4の整数であり、c5は0〜4の整数であり、f5およびm5は1〜3の整数である。)
(X61は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M61は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y61は−C(=O)−(CR61
2 )
d6−C(=O)−、−R62
2 C−(CR61
2 )
d6−C(=O)−、−R62
2 C−(CR61
2 )
d6−CR62
2 −、−R62
2 C−(CR61
2 )
d6−S(=O)
2 −、−S(=O)
2 −(CR61
2 )
e6−S(=O)
2 −、または−C(=O)−(CR61
2 )
e6−S(=O)
2 −である。ただし、R61は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R62は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a6、f6およびn6は1または2の整数であり、b6、c6およびe6は1〜4の整数であり、d6は0〜4の整数であり、g6およびm6は1〜3の整数である。)
なお、1族元素とは、H、Li、Na、K、Rb、CsおよびFrである。2族元素とは、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびRaである。13族元素とは、B、Al、Ga、InおよびTlである。14族元素とは、C、Si、Ge、SnおよびPbである。15族元素とは、N、P、As、SbおよびBiである。
式(18)に示した化合物は、例えば、式(18−1)〜式(18−6)のそれぞれで表される化合物などである。式(19)に示した化合物は、例えば、式(19−1)〜式(19−8)のそれぞれで表される化合物などである。式(20)に示した化合物は、例えば、式(20−1)で表される化合物などである。
また、リチウム塩は、式(21)で表される鎖状イミド化合物、式(22)で表される環状イミド化合物、および式(23)で表される鎖状メチド化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。より高い効果が得られるからである。なお、mおよびnは、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。このことは、p、qおよびrについても同様である。なお、式(21)〜式(23)のそれぞれに示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
LiN(Cm F2m+1SO2 )(Cn F2n+1 SO2 ) …(21)
(mおよびnは1以上の整数である。)
(R71は炭素数=2〜4の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(Cp F2p+1SO2 )(Cq F2q+1SO2 )(Cr F2r+1SO2 ) …(23)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
鎖状イミド化合物は、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 F5 SO2 ))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 F7 SO2 ))、または(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 F9 SO2 ))などである。
環状イミド化合物は、例えば、式(22−1)〜式(22−4)のそれぞれで表される化合物などである。
鎖状メチド化合物は、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 )3 )などである。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
[電解液の製造方法]
この電解液を製造する場合には、例えば、環状エーテル化合物と、必要に応じて非水溶媒および電解質塩などの他の材料とを混合したのち、その混合物を撹拌する。
[電解液の作用および効果]
本技術の電解液は、上記した環状エーテル化合物を含んでいる。この場合には、電解液が環状エーテル化合物を含んでいない場合、および電解液が環状エーテル化合物以外の他の化合物を含んでいる場合と比較して、電極反応物質の移動性を維持しつつ、電解液の分解反応が抑制されると共に、被膜の抵抗増加も抑制される。よって、電解液を用いた二次電池の電池特性を向上させることができる。
なお、上記した「他の化合物」とは、環状エーテル化合物に類似した化学的構造を有する化合物であり、具体的には、下記の式(24−1)〜式(24−6)のそれぞれで表される化合物などである。
これらの他の化合物が環状エーテル化合物に該当しない理由は、以下の通りである。式(24−1)に示した化合物は、Rとして1価の鎖状不飽和炭化水素基を含んでいない。式(24−2)に示した化合物は、置換基を含んでいない。式(24−3)に示した化合物では、炭素間多重結合がエーテル結合に結合されていない。式(24−4)に示した化合物は、四員環以上の酸素含有環を含んでいない。式(24−5)に示した化合物では、四員環以上の酸素含有環を含んでいるが、炭素間多重結合がエーテル結合に結合されていない。式(24−6)に示した化合物は、四員環以上の酸素含有環を含んでいない。
本技術の電解液では、置換基のうちの少なくとも1つが四員環以上の酸素含有環に導入されていれば、より高い効果を得ることができる。また、置換基の数が2以上である場合において、2以上のRのうちの全てが1価の鎖状不飽和炭化水素基などを含み、その全てのR中の炭素間多重結合がエーテル結合に結合されていれば、より高い効果を得ることができる。
また、環状エーテル化合物が式(4)〜式(6)のそれぞれに示した化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上であり、または式(7)〜式(9)のそれぞれに示した化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、より高い効果を得ることができる。
また、環状エーテル化合物が式(10−1)〜式(10−15)、式(11−1)〜式(11−10)および式(12−1)〜式(12−6)のそれぞれに示した化合物のうちのいずれか1種類または2種類以上であれば、さらに高い効果を得ることができる。
この他、電解液中における環状エーテル化合物の含有量が0.01重量%〜3重量%であれば、より高い効果得ることができる。
<2.二次電池用非水電解液を用いた二次電池>
次に、上記した電解液を用いた二次電池について説明する。
<2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
図1および図2は、本技術の一実施形態の二次電池の断面構成を表しており、図2では、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大している。
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、電極反応物質であるリチウムの吸蔵放出により負極22の容量が得られるリチウム二次電池(リチウムイオン二次電池)である。
この二次電池は、例えば、いわゆる円筒型の二次電池であり、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されている。巻回電極体20は、例えば、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層されてから巻回されたものである。
電池缶11は、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有しており、例えば、鉄(Fe)、アルミニウム(Al)またはそれらの合金などにより形成されている。なお、電池缶11の表面にニッケル(Ni)などが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を挟むと共にその巻回周面に対して垂直に延在するように配置されている。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子(PTC素子)16がガスケット17を介してかしめられており、その電池缶11は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により形成されている。安全弁機構15および熱感抵抗素子16は、電池蓋14の内側に設けられており、その安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、大電流に起因する異常な発熱を防止するものであり、その熱感抵抗素子16の抵抗は、温度の上昇に応じて増加するようになっている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により形成されており、その表面にアスファルトが塗布されていてもよい。
巻回電極体20の中心には、例えば、センターピン24が挿入されている。ただし、センターピン24は、巻回電極体20の中心に挿入されていなくてもよい。正極21には、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード25が接続されていると共に、負極22には、例えば、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード26が接続されている。正極リード25は、安全弁機構15に溶接などされていると共に、電池蓋14と電気的に接続されている。負極リード26は、電池缶11に溶接などされており、その電池缶11と電気的に接続されている。
[正極]
正極21は、正極集電体21Aの片面または両面に正極活物質層21Bを有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムを吸蔵放出可能である正極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、正極活物質層21Bは、さらに、正極結着剤および正極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物またはリチウム遷移金属リン酸化合物などである。リチウム遷移金属複合酸化物とは、リチウムと1または2以上の遷移金属元素とを構成元素として含む酸化物であり、リチウム遷移金属リン酸化合物は、リチウムと1または2以上の遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物である。中でも、遷移金属元素は、コバルト(Co)、ニッケル、マンガン(Mn)および鉄(Fe)などのうちのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 またはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素である。xおよびyの値は、充放電状態に応じて異なるが、通常、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウム遷移金属複合酸化物の具体例は、LiCoO2 、LiNiO2 、および式(30)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などである。リチウム遷移金属リン酸化合物の具体例は、LiFePO4 およびLiFe1-u Mnu PO4 (u<1)などである。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。
LiNi1-z Mz O2 …(30)
(Mは、コバルト、マンガン、鉄、アルミニウム、バナジウム(V)、スズ(Sn)、マグネシウム(Mg)、チタン(Ti)、ストロンチウム(Sr)、カルシウム(Ca)、ジルコニウム(Zr)、モリブデン(Mo)、テクネチウム(Tc)、ルテニウム(Ru)、タンタル(Ta)、タングステン(W)、レニウム(Re)、イッテルビウム(Yb)、銅(Cu)、亜鉛(Zn)、バリウム(Ba)、ホウ素(B)、クロム(Cr)、ケイ素(Si)、ガリウム(Ga)、リン(P)、アンチモン(Sb)およびニオブ(Nb)のうちの少なくとも1種であり、zは、0.005<z<0.5を満たす。)
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物および導電性高分子などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムおよび二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンおよび硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンおよびポリチオフェンなどである。ただし、正極材料は、上記以外の材料でもよい。
正極結着剤は、例えば、合成ゴムおよび高分子材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムおよびエチレンプロピレンジエンなどである。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデンおよびポリイミドなどである。この高分子材料として用いられるポリフッ化ビニリデンの結晶構造は、特に限定されない。
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックおよびケチェンブラックなどである。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料および導電性高分子などでもよい。
[負極]
負極22は、負極集電体22Aの片面または両面に負極活物質層22Bを有している。
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルおよびステンレスなどの導電性材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。この電解処理とは、電解槽中において電解法を用いて負極集電体22Aの表面に微粒子を形成することで、その負極集電体22Aの表面に凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、負極活物質層22Bは、さらに、負極結着剤および負極導電剤などの他の材料のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤に関する詳細は、例えば、正極結着剤および正極導電剤に関する詳細と同様である。
ただし、充電途中において意図せずにリチウム金属が負極22に析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量は、正極21の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量は、正極21の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
負極材料は、例えば、炭素材料のうちのいずれか1種類または2種類以上である。リチウムの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度が安定して得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するため、負極活物質層22Bの導電性が向上するからである。
炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、難黒鉛化性炭素および黒鉛などである。ただし、難黒鉛化性炭素における(002)面の面間隔は、0.37nm以上であることが好ましいと共に、黒鉛における(002)面の面間隔は、0.34nm以下であることが好ましい。より具体的には、炭素材料は、例えば、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭およびカーボンブラック類などである。このコークス類には、ピッチコークス、ニードルコークスおよび石油コークスなどが含まれる。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂およびフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素でもよいし、非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状および鱗片状のいずれでもよい。
また、負極材料は、例えば、金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含む材料(金属系材料)である。高いエネルギー密度が得られるからである。
金属系材料は、単体、合金および化合物のいずれでもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。ただし、合金には、2種類以上の金属元素からなる材料に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、合金は、非金属元素を含んでいてもよい。この金属系材料の組織は、例えば、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、およびそれらの2種類以上の共存物などである。
上記した金属元素および半金属元素は、例えば、リチウムと合金を形成可能である金属元素および半金属元素のうちのいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、マグネシウム、ホウ素、アルミニウム、ガリウム、インジウム(In)、ケイ素、ゲルマニウム(Ge)、スズ(Sn)、鉛(Pb)、ビスマス(Bi)、カドミウム(Cd)、銀(Ag)、亜鉛、ハフニウム(Hf)、ジルコニウム、イットリウム(Y)、パラジウム(Pd)および白金(Pt)などである。
中でも、ケイ素およびスズのうちの一方または双方が好ましい。リチウムを吸蔵放出する能力が優れているため、著しく高いエネルギー密度が得られるからである。
ケイ素およびスズのうちの一方または双方を構成元素として含む材料は、ケイ素の単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、スズの単体、合金および化合物のうちのいずれでもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。なお、単体とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)を意味しており、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
ケイ素の合金は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、スズ、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ケイ素の化合物は、例えば、Si以外の構成元素として、炭素(C)および酸素(O)などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、ケイ素の化合物は、例えば、ケイ素以外の構成元素として、ケイ素の合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
ケイ素の合金の具体例およびケイ素の化合物の具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、およびLiSiOなどである。なお、SiOv におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
スズの合金は、例えば、スズ以外の構成元素として、ケイ素、ニッケル、銅、鉄、コバルト、マンガン、亜鉛、インジウム、銀、チタン、ゲルマニウム、ビスマス、アンチモンおよびクロムなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、炭素および酸素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、スズの化合物は、例えば、スズ以外の構成元素として、スズの合金に関して説明した一連の元素のうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
スズの合金の具体例およびスズの化合物の具体例は、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOおよびMg2 Snなどである。
特に、スズを構成元素として含む材料は、例えば、スズ(第1構成元素)と共に第2および第3構成元素を構成元素として含む材料であることが好ましい。第2構成元素は、例えば、コバルト、鉄、マグネシウム、チタン、バナジウム、クロム、マンガン、ニッケル、銅、亜鉛、ガリウム、ジルコニウム、ニオブ、モリブデン、銀、インジウム、セシウム(Ce)、ハフニウム(Hf)、タンタル、タングステン、ビスマスおよびケイ素などのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第3構成元素は、例えば、ホウ素、炭素、アルミニウムおよびリンなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。第2および第3構成元素を含むことで、高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
中でも、スズ、コバルトおよび炭素を構成元素として含む材料(SnCoC含有材料)が好ましい。このSnCoC含有材料では、例えば、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
SnCoC含有材料は、スズ、コバルトおよび炭素を含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相は、リチウムと反応可能な反応相であるため、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この反応相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅(回折角2θ)は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合において、1°以上であることが好ましい。リチウムがより円滑に吸蔵放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部が含まれている相を含んでいる場合もある。
X線回折により得られた回折ピークがリチウムと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、リチウムとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断できる。例えば、リチウムとの電気化学的反応の前後において回折ピークの位置が変化すれば、リチウムと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記した各構成元素を含んでおり、主に、炭素の存在に起因して低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
SnCoC含有材料では、構成元素である炭素のうちの少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。スズなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態に関しては、例えば、XPSを用いて確認可能である。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。炭素のうちの少なくとも一部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、炭素の1s軌道(C1s)の合成波のピークが284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、金原子の4f軌道(Au4f)のピークは、84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、その表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとして、そのピークをエネルギー基準とする。XPS測定において、C1sのピークの波形は、表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られる。このため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することで、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
このSnCoC含有材料は、構成元素がスズ、コバルトおよび炭素だけである材料(SnCoC)に限られない。このSnCoC含有材料は、例えば、スズ、コバルトおよび炭素に加えて、さらにケイ素、鉄、ニッケル、クロム、インジウム、ニオブ、ゲルマニウム、チタン、モリブデン、アルミニウム、リン、ガリウムおよびビスマスなどのうちのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
SnCoC含有材料の他、スズ、コバルト、鉄および炭素を構成元素として含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意である。一例を挙げると、鉄の含有量を少なめに設定する場合は、炭素の含有量が9.9質量%〜29.7質量%、鉄の含有量が0.3質量%〜5.9質量%、スズおよびコバルトの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%〜70質量%である。また、鉄の含有量を多めに設定する場合は、炭素の含有量が11.9質量%〜29.7質量%、スズ、コバルトおよび鉄の含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%〜48.5質量%、コバルトおよび鉄の含有量の割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%〜79.5質量%である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。なお、SnCoFeC含有材料の物性(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料の物性と同様である。
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物および高分子化合物などのうちのいずれか1種類または2種類以上でもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムおよび酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンおよびポリピロールなどである。
中でも、負極材料は、以下の理由により、炭素材料および金属系材料の双方を含んでいることが好ましい。
金属系材料、特に、ケイ素およびスズのうちの一方または双方を構成元素として含む材料は、理論容量が高いという利点を有する反面、電極反応時において激しく膨張収縮しやすいという懸念点を有する。一方、炭素材料は、理論容量が低いという懸念点を有する反面、電極反応時において膨張収縮しにくいという利点を有する。よって、炭素材料および金属系材料の双方を用いることで、高い理論容量(言い替えれば電池容量)を得つつ、電極反応時の膨張収縮が抑制される。
負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法および焼成法(焼結法)などのうちのいずれか1種類または2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子(粉末)状の負極活物質を負極結着剤などと混合したのち、その混合物を有機溶剤などの溶媒に分散させてから負極集電体22Aに塗布する方法である。気相法は、例えば、物理堆積法および化学堆積法などである。より具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法およびプラズマ化学気相成長法などである。液相法は、例えば、電解鍍金法および無電解鍍金法などである。溶射法とは、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を負極集電体22Aに噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法を用いて、溶媒に分散された混合物を負極集電体22Aに塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。この焼成法としては、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法およびホットプレス焼成法などを用いることができる。
この二次電池では、上記したように、充電途中において負極22にリチウム金属が意図せずに析出することを防止するために、リチウムを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量は正極の電気化学当量よりも大きい。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより、高いエネルギー密度が得られる。
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離して、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、合成樹脂またはセラミックなどの多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜が積層された積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどである。
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)と、その基材層の片面または両面に設けられた高分子化合物層とを含んでいてもよい。正極21および負極22に対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回電極体20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても抵抗が上昇しにくくなると共に、電池膨れが抑制される。
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子材料は、ポリフッ化ビニリデン以外の他の材料でもよい。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、高分子材料が溶解された溶液を準備したのち、その溶液を基材層に塗布してから乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させてから乾燥させてもよい。
[電解液]
巻回電極体20には、液状の電解質である電解液が含浸されている。この電解液の構成は、本技術の電解液の構成と同様である。
[二次電池の動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極21からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。放電時には、負極22からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
正極21を作製する場合には、最初に、正極活物質と、必要に応じて正極結着剤および正極導電剤などとを混合して、正極合剤とする。続いて、正極合剤を有機溶剤などに分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。続いて、必要に応じて加熱しながら、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
負極22を作製する場合には、上記した正極21とほぼ同様の手順により、負極集電体22Aに負極活物質層22Bを形成する。具体的には、負極活物質と、負正極結着剤および負極導電剤などとを混合して、負極合剤としたのち、その負極合剤を有機溶剤などに分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極集電体22Aの両面に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成したのち、ロールプレス機などを用いて負極活物質層22Bを圧縮成型する。
正極21および負極22を用いて二次電池を組み立てる場合には、溶接法などを用いて正極集電体21Aに正極リード25を取り付けると共に、溶接法などを用いて負極集電体22Aに負極リード26を取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層してから巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で巻回電極体20を挟みながら、その巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード25の先端部を安全弁機構15に取り付けると共に、溶接法などを用いて負極リード26の先端部を電池缶11に取り付ける。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。続いて、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。
[二次電池の作用および効果]
この円筒型の二次電池によれば、電解液が本技術の電解液と同様の構成を有しているので、上記したように、リチウムイオンの移動性を維持しつつ、電解液の分解反応が抑制されると共に、被膜の抵抗増加も抑制される。よって、充放電を繰り返しても、放電容量が低下しにくくなると共に、ガスが発生しにくくなる。よって、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、本技術の電解液と同様である。
<2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
図3は、本技術の一実施形態の他の二次電池の分解斜視構成を表しており、図4は、図3に示した巻回電極体30のIV−IV線に沿った断面を拡大している。以下では、既に説明した円筒型の二次電池の構成要素を随時引用する。
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、例えば、いわゆるラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池である。この二次電池は、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30を収納しており、その巻回電極体30は、セパレータ35および電解質層36を介して正極33と負極34とが積層されてから巻回されたものである。正極リード31は、正極33に取り付けられていると共に、負極リード32は、負極34に取り付けられている。この巻回電極体30の最外周部は、保護テープ37により保護されている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成されていると共に、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。これらの導電性材料は、例えば、薄板状または網目状になっている。
外装部材40は、例えば、融着層、金属層および表面保護層がこの順に積層されたラミネートフィルムである。このラミネートフィルムでは、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように、2枚のフィルムの融着層における外周縁部同士が融着されている。ただし、2枚のフィルムは、接着剤などにより貼り合わされていてもよい。融着層は、例えば、ポリエチレンおよびポリプロピレンなどのいずれか1種類または2種類以上のフィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などである。表面保護層は、例えば、ナイロンおよびポリエチレンテレフタレートなどのいずれか1種類または2種類以上のフィルムである。
中でも、外装部材40は、ポリエチレンフィルム、アルミニウム箔およびナイロンフィルムがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。ただし、外装部材40は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルムでもよいし、金属フィルムでもよい。
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、外気の侵入を防止するために密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により形成されている。この密着性を有する材料は、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどのいずれか1種類または2種類以上のポリオレフィン樹脂である。
正極33は、例えば、正極集電体33Aの片面または両面に正極活物質層33Bを有していると共に、負極34は、例えば、負極集電体34Aの片面または両面に負極活物質層34Bを有している。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、例えば、それぞれ正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。セパレータ35の構成は、例えば、セパレータ23の構成と同様である。
電解質層36は、電解液および高分子化合物を含んでおり、その電解液は、高分子化合物により保持されている。この電解質層36は、いわゆるゲル状の電解質である。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。この電解質層36は、必要に応じて、添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
高分子化合物は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、およびフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。中でも、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。電気化学的に安定だからである。
電解液の構成は、例えば、円筒型の二次電池における電解液の構成と同様である。ただし、ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液の溶媒とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、ゲル状の電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液が巻回電極体30に含浸される。
[二次電池の動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極33からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵される。放電時には、負極34からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
ゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
第1手順では、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極33および負極34を作製する。この場合には、正極集電体33Aの両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などの溶媒とを含む前駆溶液を調製したのち、その前駆溶液を正極33および負極34に塗布して、ゲル状の電解質層36を形成する。続いて、溶接法などを用いて正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、溶接法などを用いて負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、正極33と負極34とをセパレータ35を介して積層してから巻回させて巻回電極体30を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40の外周縁部同士を接着させて、その外装部材40の内部に巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入する。
第2手順では、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード52を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33および負極34を積層してから巻回させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を挟み込んだのち、熱融着法などを用いて一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。続いて、モノマーを熱重合させて、高分子化合物を形成する。これにより、ゲル状の電解質層36が形成される。
第3手順では、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2手順と同様に、巻回体を作製して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布される高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体または多元共重合体)などである。具体的には、ポリフッ化ビニリデンや、フッ化ビニリデンおよびヘキサフルオロプロピレンを成分とする二元系共重合体や、フッ化ビニリデン、ヘキサフルオロプロピレンおよびクロロトリフルオロエチレンを成分とする三元系共重合体などである。なお、フッ化ビニリデンを成分とする重合体と一緒に、他の1種類または2種類以上の高分子化合物を用いてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40の開口部を密封する。続いて、外装部材40に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、電解液が高分子化合物に含浸すると共に、その高分子化合物がゲル化するため、電解質層36が形成される。
この第3手順では、第1手順よりも二次電池の膨れが抑制される。また、第3手順では、第2手順と比較して、高分子化合物の原料であるモノマーまたは溶媒などが電解質層36中にほとんど残らないため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質層36とが十分に密着する。
[二次電池の作用および効果]
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、電解質層36に含まれている電解液が本技術の電解液と同様の構成を有しているので、円筒型の二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、円筒型の二次電池と同様である。
<2−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)>
ここで説明する二次電池は、リチウム金属の析出溶解により負極22の容量が表される円筒型のリチウム二次電池(リチウム金属二次電池)である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により形成されていることを除き、上記したリチウムイオン二次電池(円筒型)と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属が用いられているため、高いエネルギー密度が得られる。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に存在してもよいが、組み立て時には存在しておらず、充電時に析出したリチウム金属により形成されてもよい。また、集電体として負極活物質層22Bを利用して、負極集電体22Aを省略してもよい。
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極21からリチウムイオンが放出されると、そのリチウムイオンが電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。放電時には、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって電解液中に溶出すると、そのリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
この円筒型のリチウム金属二次電池によれば、電解液が本技術の電解液と同様の構成を有しているので、リチウムイオン二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、リチウムイオン二次電池と同様である。
なお、ここで説明したリチウム金属二次電池の構成は、円筒型の二次電池に限らず、ラミネートフィルム型の二次電池に適用されてもよい。この場合においても、同様の効果を得ることができる。
<3.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例について説明する。
二次電池の用途は、その二次電池を駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして利用可能な機械、機器、器具、装置およびシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。電源として使用される二次電池は、主電源(優先的に使用される電源)でもよいし、補助電源(主電源に代えて、または主電源から切り換えて使用される電源)でもよい。二次電池を補助電源として使用する場合には、主電源の種類は二次電池に限られない。
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビおよび携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源およびメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルおよび電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに用いられる電池パックである。ペースメーカおよび補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、上記以外の用途でもよい。
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具および電子機器などに適用されることが有効である。優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることで、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源であり、いわゆる組電池などである。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されているため、その電力を利用して家庭用の電気製品などを使用可能になる。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
ここで、二次電池のいくつかの適用例について具体的に説明する。なお、以下で説明する各適用例の構成はあくまで一例であるため、適宜変更可能である。
<3−1.電池パック>
図5は、電池パックのブロック構成を表している。この電池パックは、例えば、プラスチック材料などにより形成された筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。電源62は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源62は、例えば、2以上の二次電池を含む組電池であり、それらの二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて電源62の使用状態(電源62と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオード(いずれも図示せず)などを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものである。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力する。この温度測定結果は、例えば、異常発熱時において制御部61が充放電制御を行う場合や、制御部61が残容量の算出時において補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定して、その測定電圧をアナログ−デジタル変換して制御部61に供給するものである。
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66から入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御するものである。
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に充電電流が流れないように制御する。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れた場合に、充電電流を遮断する。
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に放電電流が流れないようにする。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れた場合に、放電電流を遮断する。
なお、二次電池では、例えば、過充電検出電圧は4.20V±0.05Vであり、過放電検出電圧は2.4V±0.1Vである。
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどである。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値や、製造工程段階で測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握可能になる。
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共にその測定結果を制御部61に出力するものであり、例えば、サーミスタなどである。
正極端子71および負極端子72は、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)や、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62の充放電は、正極端子71および負極端子72を介して行われる。
<3−2.電動車両>
図6は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
この電動車両は、例えば、エンジン75またはモータ77のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合、そのエンジン75の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力は発電機79にも伝達され、その回転力を利用して発電機79が交流電力を発生させると共に、その交流電力はインバータ83を介して直流電力に変換され、電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換され、その交流電力を利用してモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。
なお、図示しない制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達され、その回転力を利用してモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換され、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
制御部74は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続され、その外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積可能になっていてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御すると共に、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサおよびエンジン回転数センサなどを含んでいる。
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合について説明したが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
<3−3.電力貯蔵システム>
図7は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅および商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続可能である。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続可能である。
なお、電気機器94は、例えば、1または2以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビおよび給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機および風力発電機などのいずれか1種類または2種類以上である。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクおよびハイブリッド自動車などのいずれか1種類または2種類以上である。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所および風力発電所などのいずれか1種類または2種類以上である。
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能である。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、外部と通信しながら、家屋89における需要・供給のバランスを制御することで、効率的で安定したエネルギー供給を可能とする。
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部91の指示に応じて電気機器94および電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
電源91に蓄積された電力は、任意に利用可能である。このため、例えば、電気使用料が安い深夜に集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、その電源91に蓄積しておいた電力を電気使用料が高い日中に用いることができる。
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
<3−4.電動工具>
図8は、電動工具のブロック構成を表している。この電動工具は、例えば、電動ドリルであり、プラスチック材料などにより形成された工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この制御部99は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、電源100からドリル部101に電力を供給する。
本技術の具体的な実施例について、詳細に説明する。
(実験例1−1〜1−51)
以下の手順により、図3および図4に示したラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極33を作製する場合には、最初に、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン)3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合して、正極合剤とした。この正極活物質(LiCoO2 )を得る場合には、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とをLi2 CO3 :CoCO3 =0.5:1のモル比となるように混合したのち、その混合物を大気中において焼成(900℃×5時間)した。続いて、正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、正極合剤スラリーとした。続いて、帯状の正極集電体33A(12μm厚のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布したのち、その正極合剤スラリーを乾燥させて、正極活物質層33Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて、正極活物質層33Bを圧縮成型した。
負極34を作製する場合には、最初に、負極活物質(炭素材料である黒鉛)97質量部と、負極結着剤(スチレンとブタジエンとの共重合体のアクリル酸変性体)1.5質量部と、増粘剤(カルボキシメチルセルロース)1.5質量部とを混合して、負極合剤とした。この負極活物質として用いた黒鉛(黒鉛粉末)の平均粒径(メジアン径D50)は、20μmである。続いて、負極合剤を水に分散させて、負極合剤スラリーとした。続いて、帯状の負極集電体34A(15μm厚の銅箔)の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させて、負極活物質層34Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて、負極活物質層34Bを圧縮成型した。
液状の電解質である電解液を調製する場合には、混合溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸エチルメチル)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させて、混合溶液を調製した。この場合には、混合溶媒の組成を重量比で炭酸エチレン:炭酸エチルメチル=35:65、電解質塩の含有量を混合溶媒に対して1.2mol/dm3 (=1mol/l)とした。続いて、混合溶液に環状エーテル化合物を添加したのち、その混合溶液を撹拌した。環状エーテル化合物の種類および含有量(重量%)は、表1および表2に示した通りである。なお、比較のために、表1および表2に示したように、環状エーテル化合物を含んでいない電解液を調製すると共に、その環状エーテル化合物に代えて他の化合物を含む電解液も調整した。
二次電池を組み立てる場合には、正極33の正極集電体33Aにアルミニウム製の正極リード25を溶接すると共に、負極34の負極集電体34Aに銅製の負極リード26を溶接した。続いて、セパレータ35(20μm厚のポリエチレンフィルム)を介して正極33と負極34とを積層してから長手方向に巻回させて巻回電極体30を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付けた。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、外装部材40の3辺における外周縁部同士を熱融着して、その外装部材40を袋状にした。この外装部材40は、25μm厚のナイロンフィルムと、40μm厚のアルミニウム箔と、30μm厚のポリプロピレンフィルムとが外側からこの順に積層された耐湿性のアルミラミネートフィルムである。最後に、外装部材40の内部に電解液を注入して、その電解液をセパレータ35に含浸させたのち、減圧環境中において外装部材40の残りの1辺を熱融着した。この場合には、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41(50μm厚の酸変性プロピレンフィルム)を挿入した。
なお、二次電池を作製する場合には、完全充電時の開回路電圧が表1および表2に示した充電電圧(上限電圧)に等しくなるように、正極活物質の量と負極活物質の量とを調整した。
この二次電池の電池特性として、低温サイクル特性および高温膨れ特性を調べたところ、表1および表2に示した結果が得られた。
低温サイクル特性を調べる場合には、最初に、電池状態を安定化させるために、常温環境中(23℃)において二次電池を1サイクル充放電させた。続いて、常温環境中において二次電池を充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、常温環境中において充電させた二次電池を低温環境中(−5℃)に保存(3時間)したのち、その低温環境中において二次電池を放電させた。最後に、低温環境中においてサイクル数の合計が50サイクルになるまで充放電を繰り返して、50サイクル目の放電容量を測定した。この結果から、容量維持率(%)=(50サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充電時には、1mA/cm2 の電流密度で電池電圧が上限電圧(表1および表2参照)に到達するまで充電したのち、さらに上限電圧のままで電流密度が0.02mA/cm2 に到達するまで充電した。放電時には、1mA/cm2 の電流密度で電池電圧が終止電圧(3V)に到達するまで放電した。
高温膨れ特性を調べる場合には、最初に、電池状態を安定化させるために、常温環境中(23℃)において二次電池を2サイクル充放電させた。続いて、二次電池を充電させたのち、その二次電池の厚さを測定した。続いて、充電状態の二次電池を高温環境中(70℃)に保存(200時間)したのち、その二次電池の厚さを測定した。この結果から、膨れ率(%)=(保存後の厚さ/保存前の厚さ)×100を算出した。充放電条件は、低温サイクル特性を調べた場合と同様にした。
環状エーテル化合物を用いた場合(実験例1−1〜1−44)には、その環状エーテル化合物を用いない場合(実験例1−45)と比較して、容量維持率が大幅に増加すると共に、膨れ率が大幅に減少した。なお、他の化合物を用いた場合(実験例1−46〜1−51)には、その他の化合物を用いない場合(実験例1−41)と比較して、膨れ率は減少したが、容量維持率は同等であるか、大幅に減少した。
特に、環状エーテル化合物を用いた場合には、以下の傾向も得られた。第1に、環状エーテル化合物の含有量が0.01重量%〜3重量%であると、高い容量維持率が得られると共に、膨れ率が十分に抑えられた。第2に、式(1)に示した置換基(−X−O−R)の数が2以上である場合には、炭素間多重結合がエーテル結合に結合されている基の数が2以上であると(例えば実験例1−9〜1−12)、その数が1である場合(例えば実験例1−1〜1−4)と比較して、容量維持率がより増加すると共に、膨れ率がより減少した。
(実験例2−1〜2−51)
表3および表4に示したように、上限電圧を変更したことを除き、実験例1−1〜1−51と同様の手順により二次電池を作製すると共に電池特性を調べた。
上限電圧を高くしても(表3および表4)、その上限電圧を低くした場合(表1および表2)と同様の結果が得られた。すなわち、環状エーテル化合物を用いた場合(実験例2−1〜2−44)には、その環状エーテル化合物を用いない場合(実験例2−45〜2−51)と比較して、容量維持率が大幅に増加すると共に、膨れ率が大幅に減少した。これ以外の傾向に関しては、ここでは説明を省略する。
(実験例3−1〜3−51)
表5および表6に示したように、液状の電解質である電解液に代えて、ゲル状の電解質である電解質層36を用いたことを除き、実験例1−1〜1−51と同様の手順により二次電池を作製すると共に電池特性を調べた。
電解質層36を形成する場合には、最初に、混合溶媒(炭酸エチレンおよび炭酸プロピレン)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させて、ゾル状の混合溶液を調製した。この場合には、混合溶媒の組成を重量比で炭酸エチレン:炭酸プロピレン=50:50、電解質塩の含有量を混合溶媒に対して1mol/kgとした。続いて、表5および表6に示したように、必要に応じて、混合溶液に環状エーテル化合物または他の化合物を添加した。続いて、電解液30質量部と、高分子化合物(フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとの共重合体)10質量部と、有機溶剤(炭酸ジメチル)60質量部とを混合して、前駆溶液を調製した。この共重合体におけるヘキサフルオロプロピレンの共重合量は、6.9重量%である。最後に、正極33および負極34のそれぞれの表面および裏面に前駆溶液を塗布したのち、その前駆溶液を乾燥させた。これにより、ゲル状の電解質層36が形成された。
ゲル状の電解質(電解質層36)を用いても(表5および表6)、液状の電解質(電解液)を用いた場合(表1および表2)と同様の結果が得られた。すなわち、環状エーテル化合物を用いた場合(実験例3−1〜3−44)には、その環状エーテル化合物を用いない場合(実験例3−45〜3−51)と比較して、容量維持率が大幅に増加すると共に、膨れ率が大幅に減少した。これ以外の傾向に関しては、ここでは説明を省略する。
(実験例4−1〜4−51)
表7および表8に示したように、負極活物質として炭素材料(黒鉛)に代えて金属系材料(ケイ素:Si)を用いたことを除き、実験例1−1〜1−51と同様の手順により二次電池を作製すると共に電池特性を調べた。
負極活物質層34Bを形成する場合には、最初に、負極活物質(金属系材料であるケイ素)90質量部と、結着剤用材料(ポリイミドの前駆体であるポリアミック酸)5質量部と、負極導電剤(黒鉛)5質量部とを混合して、負極合剤とした。この負極活物質として用いたケイ素(ケイ素粉末)の平均粒径(メジアン径D50)は、5μmである。続いて、負極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン)に分散させて、負極合剤スラリーとした。続いて、帯状の負極集電体34A(15μm厚の銅箔)の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布したのち、その負極合剤スラリーを乾燥させて、合剤層を形成した。続いて、ロールプレス機を用いて合剤層を圧縮成型した。最後に、真空雰囲気中において合剤層を加熱(400℃×12時間)した。これにより、負極結着剤(ポリイミド)が形成されたため、負極活物質層34Bが形成された。
負極活物質として金属系材料を用いても(表7および表8)、炭素材料を用いた場合(表1および表2)と同様の結果が得られた。すなわち、環状エーテル化合物を用いた場合(実験例4−1〜4−44)には、その環状エーテル化合物を用いない場合(実験例4−45〜4−51)と比較して、容量維持率が大幅に増加すると共に、膨れ率が大幅に減少した。これ以外の傾向に関しては、ここでは説明を省略する。
(実験例5−1〜5−51,6−1〜6−51)
表9〜表12に示したように、正極活物質の種類を変更すると共に上限電圧を変更したことを除き、実験例1−1〜1−51と同様の手順により二次電池を作製すると共に電池特性を調べた。
正極活物質(Li1.13(Mn0.60Ni0.20Co0.20)0.86Al0.01O2 )を得る場合には、最初に、硫酸ニッケル(NiSO4 )と、硫酸コバルト(CoSO4 )と、硫酸マンガン(MnSO4 )と、アルミン酸ナトリウム(NaAlO2 )とを混合した。この場合には、主要元素の混合比(モル比)をMn:Ni:Co=60:20:20、Al:(Mn+Ni+Co)=1:86とした。続いて、混合物を水に分散させて、水溶液を調製した。続いて、水溶液を十分に攪拌しながら、その水溶液に水酸化ナトリウム(NaOH)を添加して、共沈物(マンガン・ニッケル・コバルト・アルミニウム複合共沈水酸化物)を得た。続いて、共沈物を水洗してから乾燥させたのち、その共沈物に水酸化リチウム一水和塩を添加して、前駆体を得た。この場合には、主要元素の混合比(モル比)をLi:(Mn+Ni+Co+Al)=113:87とした。最後に、大気中において前駆体を焼成(800℃×10時間)した。
正極活物質(LiNi0.50Mn1.50O4 )を得る場合には、最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と、酸化マンガン(MnO2 )と、酸化ニッケル(NiO)とを秤量したのち、ボールミルを用いて秤量物を混合した。この場合には、主要元素の混合比(モル比)をNi:Mn=25:75とした。続いて、大気中において混合物を焼成(800℃×10時間)したのち、その混合物を冷却した。最後に、ボールミルを用いて焼成物を再混合したのち、大気中において焼成物を再焼成(700℃×10時間)した。
正極活物質の種類を変更しても(表9〜表12)、変更前(表1および表2)と同様の結果が得られた。すなわち、環状エーテル化合物を用いた場合(実験例5−1〜5−44,6−1〜6−44)には、その環状エーテル化合物を用いない場合(実験例5−45〜5−51,6−45〜6−51)と比較して、容量維持率が大幅に増加すると共に、膨れ率が大幅に減少した。これ以外の傾向に関しては、ここでは説明を省略する。
表1〜表12の結果から、二次電池の電解液が環状エーテル化合物を含んでいると、低温サイクル特性および高温膨れ特性の双方が改善された。よって、優れた電池特性が得られた。
以上、実施形態および実施例を挙げながら本技術を説明したが、本技術は実施形態および実施例において説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、電池構造が円筒型およびラミネートフィルム型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げて説明したが、これらに限られない。本技術の二次電池は、角型、コイン型およびボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合に関しても、同様に適用可能である。
また、本技術の二次電池用電極は、二次電池に限らず、他の電気化学デバイスに適用されてもよい。この他の電気化学デバイスは、例えば、キャパシタなどである。
また、例えば、電極反応物質は、ナトリウム(Na)およびカリウム(K)などの他の1族元素や、マグネシウムおよびカルシウムなどの2族元素や、アルミニウムなどの他の軽金属でもよい。本技術の効果は、電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても同様の効果を得ることができる。
また、環状エーテル化合物の含有量に関して、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明しているが、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本技術の効果を得る上で特に好ましい範囲であるため、本技術の効果が得られるのであれば、上記した範囲から含有量が多少外れてもよい。
なお、本技術は、以下のような構成を取ることも可能である。
(1)
正極および負極と共に非水電解液を備え、
前記非水電解液は、環状エーテル化合物を含み、
前記環状エーテル化合物は、骨格と、その骨格に導入される1または2以上の置換基とを含み、
前記骨格は、1または2以上の四員環以上の酸素含有環を含み、
前記置換基は、式(1)で表される1価の基である、
二次電池。
−X−O−R ・・・(1)
(Xは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、Xはなくてもよい。Rは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、Rのうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR中の炭素間多重結合(−C=C−または−C≡C−)は、エーテル結合(−O−)に結合されている。)
(2)
前記1または2以上の置換基のうちの少なくとも1つは、前記骨格のうち、前記四員環以上の酸素含有環に導入されている、
上記(1)に記載の二次電池。
(3)
前記置換基の数は、2以上であり、
2以上のRのうちの全ては、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、
その全てのR中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている、
上記(1)または(2)に記載の二次電池。
(4)
前記四員環以上の酸素含有環は、式(2−1)〜式(2−12)および式(3−1)〜式(3−12)のそれぞれで表される化合物のうちのいずれかである、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の二次電池。
(R81は、水素基および1価の鎖状飽和炭化水素基のうちのいずれかである。)
(R82は、水素基および1価の鎖状飽和炭化水素基のうちのいずれかである。)
(5)
前記2価の鎖状飽和炭化水素基は、炭素数=1〜4のアルキレン基であり、
前記1価の鎖状飽和炭化水素基は、炭素数=1〜8のアルキル基であり、
前記1価の鎖状不飽和炭化水素基は、炭素数=2〜8のアルケニル基、および炭素数=2〜8のアルキニル基のうちのいずれかであり、
前記1価の環状飽和炭化水素基は、炭素数=3〜18のシクロアルキル基であり、
前記1価の環状不飽和炭化水素基は、炭素数=6〜18のアリール基、および式(30−1)で表される基であり、
前記1価の酸素含有環状飽和炭化水素基は、式(30−2)〜式(30−4)のそれぞれで表される基のうちのいずれかであり、
前記1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基は、式(30−5)〜式(30−7)のそれぞれで表される基のうちのいずれかであり、
前記ハロゲン化基は、前記2価の鎖状飽和炭化水素基、前記1価の鎖状飽和炭化水素基、前記1価の鎖状不飽和炭化水素基、前記1価の環状飽和炭化水素基、前記1価の環状不飽和炭化水素基、前記1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、および前記1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基のそれぞれのうちの少なくとも1つの水素基がハロゲン基により置換されたものであり、
前記ハロゲン基は、フッ素基、塩素基、臭素基およびヨウ素基のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の二次電池。
(6)
前記環状エーテル化合物は、式(4)〜式(6)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の二次電池。
(X1は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X1はなくてもよい。R1は、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。aは、1以上の整数である。Y1およびY2のそれぞれは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、R1のうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR1中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X2は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X2はなくてもよい。R2は、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化物、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。bは、1以上の整数である。ただし、R2のうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR2中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X3は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X3はなくてもよい。R3は、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。cは、1以上の整数である。ただし、R3のうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された基のうちの少なくとも1種を含み、そのR3中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(7)
前記環状エーテル化合物は、式(7)〜式(9)のそれぞれで表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の二次電池。
(R4およびR5のそれぞれは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、R4およびR5のうちの少なくとも一方は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR4およびR5のうちの少なくとも一方中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X4は、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X4はなくてもよい。R6およびR7のそれぞれは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、R6およびR7のうちの少なくとも一方は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR6およびR7のうちの少なくとも一方中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(X5およびX6のそれぞれは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、X5およびX6のそれぞれはなくてもよい。R8およびR9のそれぞれは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、R8およびR9のうちの少なくとも一方は、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR8およびR9のうちの少なくとも一方中の炭素間多重結合は、エーテル結合に結合されている。)
(8)
前記電解液中における前記環状エーテル化合物の含有量は、0.01重量%〜3重量%である、
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の二次電池。
(9)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の二次電池。
(10)
環状エーテル化合物を含み、
前記環状エーテル化合物は、骨格と、その骨格に導入される1または2以上の置換基とを含み、
前記骨格は、1または2以上の四員環以上の酸素含有環を含み、
前記置換基は、式(1)で表される1価の基である、
二次電池用非水電解液。
−X−O−R ・・・(1)
(Xは、2価の鎖状飽和炭化水素基およびそのハロゲン化基のうちのいずれかである。ただし、Xはなくてもよい。Rは、1価の鎖状飽和炭化水素基、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、それらの2種類以上が結合された1価の基、および水素基のうちのいずれかである。ただし、Rのうちの少なくとも1つは、1価の鎖状不飽和炭化水素基、1価の環状不飽和炭化水素基、1価の酸素含有環状不飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、およびそれらの2種類以上が結合された1価の基のうちの少なくとも1種を含み、そのR中の炭素間多重結合(−C=C−または−C≡C−)は、エーテル結合(−O−)に結合されている。)
(11)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池の動作を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記二次電池の動作を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(12)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記二次電池の動作を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(13)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(14)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池と、
その二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(15)
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。