以下、本技術の実施形態について、図面を参照して詳細に説明する。なお、説明する順序は、下記の通りである。
1.第1実施形態/非水二次電池用電解液および非水二次電池
(シアノ化合物:シアノ基の数に制限あり)
1−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
1−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
1−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)
2.第2実施形態/非水二次電池
(シアノ化合物:シアノ基の数に制限なし+金属系材料)
2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
3.第3実施形態/非水二次電池用電解液および非水二次電池
(シアノ化合物:シアノ基の数に制限なし+分解物)
3−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)
3−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)
3−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)
4.非水二次電池の用途
4−1.電池パック
4−2.電動車両
4−3.電力貯蔵システム
4−4.電動工具
<1.第1実施形態/非水二次電池用電解液および非水二次電池(シアノ化合物:シアノ基の数に制限あり)>
まず、本技術の第1実施形態の非水二次電池用電解液および非水二次電池について説明する。
<1−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
図1および図2は、本実施形態の非水二次電池用電解液(以下、単に「電解液」ともいう。)を用いた非水二次電池(以下、単に「二次電池」ともいう。)の断面構成を表している。なお、図2では、図1に示した巻回電極体20の一部を拡大している。
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、電極反応物質であるLiの吸蔵放出により負極22の容量が得られるリチウム二次電池(リチウムイオン二次電池)であり、いわゆる円筒型である。
この二次電池では、例えば、ほぼ中空円柱状の電池缶11の内部に、巻回電極体20と、一対の絶縁板12,13とが収納されている。巻回電極体20は、例えば、セパレータ23を介して正極21と負極22とが積層されたのち、その積層体が巻回されたものである。
電池缶11は、例えば、一端部が閉鎖されると共に他端部が開放された中空構造を有していると共に、鉄、アルミニウムまたはそれらの合金などにより形成されている。この電池缶11の表面には、ニッケルなどが鍍金されていてもよい。一対の絶縁板12,13は、巻回電極体20を挟むように配置されていると共に、その巻回電極体20の巻回周面に対して垂直に延在している。
電池缶11の開放端部には、電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子(PTC素子)16がガスケット17を介してかしめられているため、その電池缶11は密閉されている。電池蓋14は、例えば、電池缶11と同様の材料により形成されている。安全弁機構15および熱感抵抗素子16は、電池蓋14の内側に設けられており、その安全弁機構15は、熱感抵抗素子16を介して電池蓋14と電気的に接続されている。この安全弁機構15では、内部短絡、または外部からの加熱などに起因して内圧が一定以上になると、ディスク板15Aが反転して電池蓋14と巻回電極体20との電気的接続を切断するようになっている。熱感抵抗素子16は、大電流に起因する異常な発熱を防止するものであり、その熱感抵抗素子16の抵抗は、温度の上昇に応じて増加するようになっている。ガスケット17は、例えば、絶縁材料により形成されており、その表面にアスファルトが塗布されていてもよい。
巻回電極体20の巻回中心には、センターピン24が挿入されている。ただし、センターピン24は挿入されていなくてもよい。正極21には、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成された正極リード25が接続されていると共に、負極22には、例えば、ニッケルなどの導電性材料により形成された負極リード26が接続されている。正極リード25は、例えば、安全弁機構15に溶接されていると共に、電池蓋14と電気的に接続されている。負極リード26は、例えば、電池缶11に溶接されることで、その電池缶11と電気的に接続されている。
[正極]
正極21は、正極集電体21Aの片面または両面に正極活物質層21Bを有している。正極集電体21Aは、例えば、アルミニウム、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。
正極活物質層21Bは、正極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である正極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、必要に応じて、正極結着剤または正極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。
正極材料は、リチウム含有化合物であることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。このリチウム含有化合物は、例えば、リチウム遷移金属複合酸化物またはリチウム遷移金属リン酸化合物などである。リチウム遷移金属複合酸化物とは、Liと1または2以上の遷移金属元素とを構成元素として含む酸化物であり、リチウム遷移金属リン酸化合物とは、Liと1または2以上の遷移金属元素とを構成元素として含むリン酸化合物である。中でも、遷移金属元素は、Co、Ni、MnまたはFeなどのいずれか1種類または2種類以上であることが好ましい。より高い電圧が得られるからである。その化学式は、例えば、Lix M1O2 またはLiy M2PO4 で表される。式中、M1およびM2は、1種類以上の遷移金属元素である。xおよびyの値は、充放電状態に応じて異なるが、例えば、0.05≦x≦1.10、0.05≦y≦1.10である。
リチウム遷移金属複合酸化物は、例えば、LiCoO2 、LiNiO2 、または下記の式(30)で表されるリチウムニッケル系複合酸化物などである。リチウム遷移金属リン酸化合物は、例えば、LiFePO4 またはLiFe1-u Mnu PO4 (u<1)などである。高い電池容量が得られると共に、優れたサイクル特性も得られるからである。
LiNi1-z Mz O2 …(30)
(MはCo、Mn、Fe、Al、V、Sn、Mg、Ti、Sr、Ca、Zr、Mo、Tc、Ru、Ta、W、Re、Yb、Cu、Zn、Ba、B、Cr、Si、Ga、P、SbおよびNbのうちの少なくとも1種、zは0.005<z<0.5を満たす。)
この他、正極材料は、例えば、酸化物、二硫化物、カルコゲン化物または導電性高分子などでもよい。酸化物は、例えば、酸化チタン、酸化バナジウムまたは二酸化マンガンなどである。二硫化物は、例えば、二硫化チタンまたは硫化モリブデンなどである。カルコゲン化物は、例えば、セレン化ニオブなどである。導電性高分子は、例えば、硫黄、ポリアニリンまたはポリチオフェンなどである。ただし、正極材料は、上記以外の他の材料でもよい。
正極結着剤は、例えば、合成ゴムまたは高分子材料などのいずれか1種類または2種類以上である。合成ゴムは、例えば、スチレンブタジエン系ゴム、フッ素系ゴムまたはエチレンプロピレンジエンなどである。高分子材料は、例えば、ポリフッ化ビニリデンまたはポリイミドなどである。
正極導電剤は、例えば、炭素材料などのいずれか1種類または2種類以上である。この炭素材料は、例えば、黒鉛、カーボンブラック、アセチレンブラックまたはケチェンブラックなどである。なお、正極導電剤は、導電性を有する材料であれば、金属材料または導電性高分子などでもよい。
[負極]
負極22は、負極集電体22Aの片面または両面に負極活物質層22Bを有している。
負極集電体22Aは、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。この負極集電体22Aの表面は、粗面化されていることが好ましい。いわゆるアンカー効果により、負極集電体22Aに対する負極活物質層22Bの密着性が向上するからである。この場合には、少なくとも負極活物質層22Bと対向する領域において、負極集電体22Aの表面が粗面化されていればよい。粗面化の方法は、例えば、電解処理を利用して微粒子を形成する方法などである。この電解処理とは、電解槽中で電解法を用いて負極集電体22Aの表面に微粒子を形成することで、その負極集電体22Aの表面に凹凸を設ける方法である。電解法により作製された銅箔は、一般的に、電解銅箔と呼ばれている。
負極活物質層22Bは、負極活物質として、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでおり、必要に応じて、負極結着剤または負極導電剤などの他の材料を含んでいてもよい。負極結着剤および負極導電剤の詳細は、例えば、正極結着剤および正極導電剤と同様である。ただし、充電途中に意図せずにリチウム金属が負極22に析出することを防止するために、負極材料の充電可能な容量は正極21の放電容量よりも大きいことが好ましい。すなわち、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量は正極21の電気化学当量よりも大きいことが好ましい。
負極材料は、例えば、炭素材料である。リチウムイオンの吸蔵放出時における結晶構造の変化が非常に少ないため、高いエネルギー密度および優れたサイクル特性が得られるからである。また、炭素材料は負極導電剤としても機能するからである。この炭素材料は、例えば、易黒鉛化性炭素、(002)面の面間隔が0.37nm以上である難黒鉛化性炭素、または(002)面の面間隔が0.34nm以下である黒鉛などである。より具体的には、熱分解炭素類、コークス類、ガラス状炭素繊維、有機高分子化合物焼成体、活性炭またはカーボンブラック類などである。このコークス類は、ピッチコークス、ニードルコークスまたは石油コークスなどを含む。有機高分子化合物焼成体は、フェノール樹脂またはフラン樹脂などの高分子化合物が適当な温度で焼成(炭素化)されたものである。この他、炭素材料は、約1000℃以下の温度で熱処理された低結晶性炭素または非晶質炭素でもよい。なお、炭素材料の形状は、繊維状、球状、粒状または鱗片状などである。
また、負極材料は、例えば、金属元素または半金属元素のいずれか1種類または2種類を構成元素として含む材料(金属系材料)である。高いエネルギー密度が得られるからである。この金属系材料は、単体、合金または化合物でもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有するものでもよい。この「合金」には、2種類以上の金属元素からなる材料に加えて、1種類以上の金属元素と1種類以上の半金属元素とを含む材料も含まれる。また、「合金」は、非金属元素を含んでいてもよい。その組織には、固溶体、共晶(共融混合物)、金属間化合物、またはそれらの2種類以上の共存物などがある。
上記した金属元素または半金属元素は、例えば、Liと合金を形成可能である金属元素または半金属元素のいずれか1種類または2種類以上である。具体的には、例えば、Mg、B、Al、Ga、In、Si、Ge、Sn、Pb、Bi、Cd、Ag、Zn、Hf、Zr、Y、PdまたはPtなどである。中でも、SiおよびSnのうちの少なくとも一方が好ましい。リチウムイオンを吸蔵放出する能力が優れているため、高いエネルギー密度が得られるからである。
SiおよびSnのうちの少なくとも一方を構成元素として含む材料は、SiまたはSnの単体、合金または化合物でもよいし、それらの2種類以上でもよいし、それらの1種類または2種類以上の相を少なくとも一部に有する材料でもよい。ただし、ここでいう「単体」とは、あくまで一般的な意味合いでの単体(微量の不純物を含んでいてもよい)であり、必ずしも純度100%を意味しているわけではない。
Siの合金は、例えば、Si以外の構成元素として、Sn、Ni、Cu、Fe、Co、Mn、Zn、In、Ag、Ti、Ge、Bi、SbまたはCrなどのいずれか1種類または2種類以上の元素を含んでいる。Siの化合物は、例えば、Si以外の構成元素として、CまたはOなどのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、Siの化合物は、例えば、Si以外の構成元素として、Siの合金について説明した元素のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。
Siの合金または化合物の具体例は、SiB4 、SiB6 、Mg2 Si、Ni2 Si、TiSi2 、MoSi2 、CoSi2 、NiSi2 、CaSi2 、CrSi2 、Cu5 Si、FeSi2 、MnSi2 、NbSi2 、TaSi2 、VSi2 、WSi2 、ZnSi2 、SiC、Si3 N4 、Si2 N2 O、SiOv (0<v≦2)、またはLiSiOなどである。なお、SiOv におけるvは、0.2<v<1.4でもよい。
Snの合金は、例えば、Sn以外の構成元素として、Si、Ni、Cu、Fe、Co、Mn、Zn、In、Ag、Ti、Ge、Bi、SbまたはCrなどのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。Snの化合物は、例えば、Sn以外の構成元素として、CまたはOなどのいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。なお、Snの化合物は、例えば、Sn以外の構成元素として、Snの合金について説明した元素のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。Snの合金または化合物の具体例は、SnOw (0<w≦2)、SnSiO3 、LiSnOまたはMg2 Snなどである。
また、Snを構成元素として含む材料としては、例えば、Snを第1構成元素とし、それに加えて第2および第3構成元素を含む材料が好ましい。第2構成元素は、例えば、Co、Fe、Mg、Ti、V、Cr、Mn、Ni、Cu、Zn、Ga、Zr、Nb、Mo、Ag、In、Ce、Hf、Ta、W、BiまたはSiなどのいずれか1種類または2種類以上である。第3構成元素は、例えば、B、C、AlおよびPなどのいずれか1種類または2種類以上である。第2および第3構成元素を含むことで、高い電池容量および優れたサイクル特性などが得られるからである。
中でも、Sn、CoおよびCを構成元素として含む材料(SnCoC含有材料)が好ましい。このSnCoC含有材料では、例えば、Cの含有量が9.9質量%〜29.7質量%、SnおよびCoの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が20質量%〜70質量%である。高いエネルギー密度が得られるからである。
SnCoC含有材料は、Sn、CoおよびCを含む相を有しており、その相は、低結晶性または非晶質であることが好ましい。この相はLiと反応可能な反応相であるため、その反応相の存在により優れた特性が得られる。この相のX線回折により得られる回折ピークの半値幅は、特定X線としてCuKα線を用いると共に挿引速度を1°/minとした場合、回折角2θで1°以上であることが好ましい。リチウムイオンがより円滑に吸蔵放出されると共に、電解液との反応性が低減するからである。なお、SnCoC含有材料は、低結晶性または非晶質の相に加えて、各構成元素の単体または一部を含む相を含んでいる場合もある。
X線回折により得られた回折ピークがLiと反応可能な反応相に対応するものであるか否かは、Liとの電気化学的反応の前後におけるX線回折チャートを比較すれば容易に判断できる。例えば、Liとの電気化学的反応の前後で回折ピークの位置が変化すれば、Liと反応可能な反応相に対応するものである。この場合には、例えば、低結晶性または非晶質の反応相の回折ピークが2θ=20°〜50°の間に見られる。このような反応相は、例えば、上記した各構成元素を有しており、主に、Cの存在に起因して低結晶化または非晶質化しているものと考えられる。
SnCoC含有材料では、構成元素であるCのうちの少なくとも一部が他の構成元素である金属元素または半金属元素と結合していることが好ましい。Snなどの凝集または結晶化が抑制されるからである。元素の結合状態については、例えば、X線光電子分光法(XPS)を用いて確認できる。市販の装置では、例えば、軟X線としてAl−Kα線またはMg−Kα線などが用いられる。Cのうちの少なくとも一部が金属元素または半金属元素などと結合している場合には、Cの1s軌道(C1s)の合成波のピークは284.5eVよりも低い領域に現れる。なお、Au原子の4f軌道(Au4f)のピークが84.0eVに得られるようにエネルギー較正されているものとする。この際、通常、物質表面に表面汚染炭素が存在しているため、表面汚染炭素のC1sのピークを284.8eVとし、それをエネルギー基準とする。XPS測定では、C1sのピークの波形が表面汚染炭素のピークとSnCoC含有材料中の炭素のピークとを含んだ形で得られるため、例えば、市販のソフトウエアを用いて解析することで、両者のピークを分離する。波形の解析では、最低束縛エネルギー側に存在する主ピークの位置をエネルギー基準(284.8eV)とする。
なお、SnCoC含有材料は、構成元素がSn、CoおよびCだけである材料(SnCoC)に限られない。このSnCoC含有材料は、例えば、Sn、CoおよびCに加えて、さらにSi、Fe、Ni、Cr、In、Nb、Ge、Ti、Mo、Al、P、GaまたはBiなどのいずれか1種類または2種類以上を構成元素として含んでいてもよい。
SnCoC含有材料の他、Sn、Co、FeおよびCを構成元素として含む材料(SnCoFeC含有材料)も好ましい。このSnCoFeC含有材料の組成は、任意である。一例を挙げると、Feの含有量を少なめに設定する場合は、Cの含有量が9.9質量%〜29.7質量%、Feの含有量が0.3質量%〜5.9質量%、SnおよびCoの含有量の割合(Co/(Sn+Co))が30質量%〜70質量%である。また、Feの含有量を多めに設定する場合は、Cの含有量が11.9質量%〜29.7質量%、Sn、CoおよびFeの含有量の割合((Co+Fe)/(Sn+Co+Fe))が26.4質量%〜48.5質量%、CoおよびFeの含有量の割合(Co/(Co+Fe))が9.9質量%〜79.5質量%である。このような組成範囲において、高いエネルギー密度が得られるからである。なお、SnCoFeC含有材料の物性(半値幅など)は、上記したSnCoC含有材料と同様である。
この他、負極材料は、例えば、金属酸化物または高分子化合物などでもよい。金属酸化物は、例えば、酸化鉄、酸化ルテニウムまたは酸化モリブデンなどである。高分子化合物は、例えば、ポリアセチレン、ポリアニリンまたはポリピロールなどである。
負極活物質層22Bは、例えば、塗布法、気相法、液相法、溶射法、焼成法(焼結法)、またはそれらの2種類以上の方法により形成されている。塗布法とは、例えば、粒子(粉末)状の負極活物質を負極結着剤などと混合したのち、その混合物を有機溶剤などの溶媒に分散させてから負極集電体22Aに塗布する方法である。気相法は、例えば、物理堆積法または化学堆積法などである。より具体的には、例えば、真空蒸着法、スパッタ法、イオンプレーティング法、レーザーアブレーション法、熱化学気相成長、化学気相成長(CVD)法またはプラズマ化学気相成長法などである。液相法は、例えば、電解鍍金法または無電解鍍金法などである。溶射法とは、溶融状態または半溶融状態の負極活物質を負極集電体22Aに噴き付ける方法である。焼成法とは、例えば、塗布法を用いて負極集電体22Aに塗布したのち、負極結着剤などの融点よりも高い温度で熱処理する方法である。この焼成法としては、例えば、雰囲気焼成法、反応焼成法またはホットプレス焼成法などを用いることができる。
この二次電池では、上記したように、充電途中に意図せずにリチウム金属が負極22に析出することを防止するために、リチウムイオンを吸蔵放出可能である負極材料の電気化学当量が正極の電気化学当量よりも大きくなっている。また、完全充電時の開回路電圧(すなわち電池電圧)が4.25V以上であると、4.20Vである場合と比較して、同じ正極活物質を用いても単位質量当たりのリチウムイオンの放出量が多くなるため、それに応じて正極活物質と負極活物質との量が調整されている。これにより、高いエネルギー密度が得られるようになっている。
[セパレータ]
セパレータ23は、正極21と負極22とを隔離することで、両極の接触に起因する電流の短絡を防止しながらリチウムイオンを通過させるものである。このセパレータ23は、例えば、合成樹脂またはセラミックなどの多孔質膜であり、2種類以上の多孔質膜が積層された積層膜でもよい。合成樹脂は、例えば、ポリテトラフルオロエチレン、ポリプロピレンまたはポリエチレンなどである。
特に、セパレータ23は、例えば、上記した多孔質膜(基材層)の片面または両面に高分子化合物層を有していてもよい。正極21および負極22に対するセパレータ23の密着性が向上するため、巻回電極体20の歪みが抑制されるからである。これにより、電解液の分解反応が抑制されると共に、基材層に含浸された電解液の漏液も抑制されるため、充放電を繰り返しても抵抗が上昇しにくくなると共に、電池膨れが抑制される。
高分子化合物層は、例えば、ポリフッ化ビニリデンなどの高分子材料を含んでいる。物理的強度に優れていると共に、電気化学的に安定だからである。ただし、高分子材料は、ポリフッ化ビニリデンに限られない。この高分子化合物層を形成する場合には、例えば、高分子材料が溶解された溶液を準備したのち、その溶液を基材層に塗布してから乾燥させる。なお、溶液中に基材層を浸漬させてから乾燥させてもよい。
[電解液]
セパレータ23には、液状の電解質である電解液が含浸されており、その電解液は、シアノ化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。このシアノ化合物は、下記の式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含んでいる。ただし、電解液は、溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
(R1およびR2は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R1およびR2のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。シアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子(O)に対して、1または2以上の炭素原子(C)を介して結合されている。ただし、(A)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基を含まないが不飽和炭素結合を含むと共に、他方がシアノ基含有基を含む場合、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。(B)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含まないと共に、他方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含む場合、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。(C)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含まないと共に、他方がシアノ基含有基を含むが不飽和炭素結合を含まない場合、その他方におけるシアノ基の数は2以上である。)
(R3は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R4は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。シアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。ただし、(D)R3が不飽和炭素結合を含む場合、R4におけるシアノ基の数は1以上である。(E)R3が不飽和炭素結合を含まないと共に、R4が不飽和炭素結合を含む場合、そのR4におけるシアノ基の数は1以上である。(F)R3が不飽和炭素結合を含まないと共に、R4が不飽和炭素結合を含まない場合、そのR4におけるシアノ基の数は2以上である。)
ここで、「シアノ基含有基」とは、上記したように、1または2以上のシアノ基を一部として含む基の総称であり、シアノ基(−CN)は、ここで説明する「シアノ基含有基」に含まれない。また、「ハロゲン化基」とは、飽和炭化水素基などのうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である。
このシアノ化合物は、1または2以上のシアノ基(−CN)を含む化合物の総称である。より具体的には、式(1)に示した化合物は、炭酸エステル型の結合(−O−C(=O)−O−)を骨格として含んでいると共に、式(2)に示した化合物は、エステル型の結合(−C(=O)−O−)を骨格として含んでいる。以下では、前者の化合物を「炭酸エステル型シアノ化合物」、後者の化合物を「エステル型シアノ化合物」とそれぞれ呼称すると共に、必要に応じて両者を「シアノ化合物」と総称する。
電解液がシアノ化合物を含んでいるのは、そのシアノ化合物を含んでいない場合と比較して化学的安定性が向上するため、分解反応が抑制されるからである。詳細には、充放電時にシアノ化合物に起因する強固な被膜が主に負極22の表面に形成されるため、高反応性の負極22の存在に起因する電解液の分解反応が抑制される。これにより、二次電池を繰り返して充放電させると共に保存しても、放電容量の低下が抑制される。このような傾向は、特に、高温などの厳しい温度環境中で二次電池を充放電または保存させた場合に顕著となる。
式(1)において、R1およびR2の種類は、上記したように、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。なお、R1およびR2は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。また、R1とR2とが互いに結合されており、その結合されたR1およびR2により環が形成されていてもよい。
ただし、下記の2つの条件を要する。1つ目の条件は、R1およびR2のうちの少なくとも一方がシアノ基含有基(すなわちシアノ基)を含んでいることである。このため、R1だけがシアノ基を含んでいてもよいし、R2だけがシアノ基を含んでいてもよいし、R1およびR2の双方がシアノ基を含んでいてもよい。2つ目の条件は、シアノ基含有基におけるシアノ基が、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されていることである。すなわち、シアノ基は、酸素原子に対して直接的に結合されておらず、炭素原子を介して間接的に結合されている。後述するように、炭酸エステル型シアノ化合物が所定数のシアノ基を含んでいると共に、そのシアノ基が炭素原子を介して酸素原子に対して間接的に結合されていることで、R1およびR2の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。このシアノ基と酸素原子との間に介在する炭素原子の数は、特に限定されないが、多すぎないことが好ましい。シアノ化合物の溶解性および相溶性などが確保されるからである。より具体的には、炭素原子の数は、20以下であることが好ましい。
さらに、上記したシアノ基の数については、下記の場合分け(場合A〜C)による制限を受ける。すなわち、R1およびR2の双方がシアノ基を含んでいる場合には、そのシアノ基の数(総数)に制限はない。一方、R1またはR2のいずれか一方だけがシアノ基を含んでいる場合、そのシアノ基の数(総数)は、場合A〜Cで異なる。
場合Aとして、R1またはR2のいずれか一方がシアノ基を含んでいないが不飽和炭素結合(1または2以上の炭素間二重結合または炭素間三重結合)を含んでいる場合には、シアノ基を含んでいる他方におけるシアノ基の数は1以上である。一方が不飽和炭素結合を含んでいると、シアノ化合物に起因する被膜が本来的に形成されやすくなるため、そのシアノ化合物の反応性に寄与するシアノ基が少なくとも1つあれば済むからである。この場合における一方の種類は、例えば、不飽和炭化水素基、そのハロゲン化基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。シアノ基を含んでいる他方は、不飽和炭素結合を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
場合Bとして、R1またはR2のいずれか一方がシアノ基および不飽和炭素結合を含んでいないと共に、シアノ基を含んでいる他方が不飽和炭素結合を含んでいる場合には、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。一方が不飽和炭素結合を含んでいなくても、他方が不飽和炭素結合を含んでいると、シアノ化合物に起因する被膜が本来的に形成されやすくなるため、そのシアノ化合物の反応性に寄与するシアノ基が少なくとも1つあれば済むからである。この場合における一方の種類は、例えば、飽和炭化水素基、酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。シアノ基および不飽和炭素結合を含んでいる他方の種類については、後述する。
場合Cとして、R1またはR2のいずれか一方がシアノ基および不飽和炭素結合を含んでいないと共に、シアノ基を含んでいる他方が不飽和炭素結合を含んでいない場合には、その他方におけるシアノ基の数は2以上である。一方および他方がいずれも不飽和炭素結合を含んでいないと、シアノ化合物に起因する被膜が本来的に形成されにくくなるため、そのシアノ化合物の反応性に寄与するシアノ基を2つ以上要するからである。この場合における一方の種類は、例えば、飽和炭化水素基、酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。シアノ基を含んでいるが不飽和炭素結合を含んでいない他方の種類については、後述する。
式(2)において、R3の種類は、上記したように、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。また、R4の種類は、上記したように、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。なお、R3とR4とが互いに結合されており、その結合されたR3およびR4により環が形成されていてもよい。
ただし、炭酸エステル型シアノ化合物と同様に、シアノ基含有基におけるシアノ基が−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して1または2以上の炭素原子を介して結合されていることを条件とする。後述するように、エステル型シアノ化合物が所定数のシアノ基を含んでいると共に、そのシアノ基が炭素原子を介して酸素原子に対して間接的に結合されていることで、R3の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
さらに、上記したシアノ基の数については、下記の場合分け(場合D〜F)による制限を受ける。すなわち、シアノ基を含んでいるR4におけるシアノ基の数(総数)は、場合D〜Fで異なる。
場合Dとして、R3が不飽和炭素結合(1または2以上の炭素間二重結合または炭素間三重結合)を含んでいる場合には、R4におけるシアノ基の数は1以上である。R3が不飽和炭素結合を含んでいると、シアノ化合物に起因する被膜が本来的に形成されやすくなるため、そのシアノ化合物の反応性に寄与するシアノ基が少なくとも1つあれば済むからである。この場合におけるR3の種類は、例えば、不飽和炭化水素基、そのハロゲン化基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。シアノ基を含んでいるR4は、不飽和炭素結合を含んでいてもよいし、含んでいなくてもよい。
場合Eとして、R3が不飽和炭素結合を含んでいないと共に、R4が不飽和炭素結合を含んでいる場合には、そのR4におけるシアノ基の数は1以上である。R3が不飽和炭素結合を含んでいなくても、R4が不飽和炭素結合を含んでいると、シアノ化合物に起因する被膜が本来的に形成されやすくなるため、そのシアノ化合物の反応性に寄与するシアノ基が少なくとも1つあれば済むからである。この場合におけるR3の種類は、例えば、飽和炭化水素基、酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。シアノ基および不飽和炭素結合を含んでいるR4の種類については、後述する。
場合Fとして、R3が不飽和炭素結合を含んでいないと共に、R4も不飽和炭素結合を含んでいない場合には、そのR4におけるシアノ基の数は2以上である。R3およびR4がいずれも不飽和炭素結合を含んでいない場合には、シアノ化合物に起因する被膜が本来的に形成されにくくなるため、そのシアノ化合物の反応性に寄与するシアノ基を2つ以上要するからである。この場合におけるR3の種類は、例えば、飽和炭化水素基、酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。シアノ基を含んでいるが不飽和炭素結合を含んでいないR4の種類については、後述する。
ここで、R1〜R3の詳細は、以下の通りである。「炭化水素基」とは、炭素(C)および水素(H)により構成される基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。このうち、「不飽和炭化水素基」とは、1または2以上の不飽和炭素結合(炭素間二重結合または炭素間三重結合)を有する炭化水素基であり、「飽和炭化水素基」とは、上記した不飽和炭素結合を有していない炭化水素基である。
「酸素含有炭化水素基」とは、炭素および水素と共に酸素(O)により構成される基の総称であり、直鎖状でもよいし、1または2以上の側鎖を有する分岐状でもよい。
「ハロゲン化基」におけるハロゲン基の種類は、特に限定されないが、例えば、フッ素基(−F)、塩素基(−Cl)、臭素基(−Br)またはヨウ素基(−I)などのいずれか1種類または2種類以上であり、中でも、フッ素基が好ましい。シアノ化合物に起因する被膜が形成されやすくなるからである。
「それらの2種類以上が結合された基」とは、上記した飽和炭化水素基などの1価の基のうちの2種類以上が全体として1価となるように結合された基である。
飽和炭化水素基の具体例は、アルキル基、シクロアルキル基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。中でも、アルキル基の炭素数は1〜12、シクロアルキル基の炭素数は3〜18であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
不飽和炭化水素基の具体例は、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基などである。中でも、アルケニル基の炭素数は2〜12、アルキニル基の炭素数は2〜12、アリール基の炭素数は6〜18であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
酸素含有飽和炭化水素基の具体例は、アルコキシ基、またはそれを含む2種類以上が結合された基などである。中でも、アルコキシ基の炭素数は1〜12であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
ハロゲン化基の具体例は、上記したアルキル基、シクロアルキル基、アルケニル基、アルキニル基、アリール基、アルコキシ基、またはそれらを含む2種類以上が結合された基のうちの少なくとも一部の水素基がハロゲン基により置換された基である。
2種類以上が結合された基の具体例は、アルキル基とアリール基とが結合された基(ベンジル基)などである。
より具体的には、アルキル基は、例えば、メチル基(−CH3 )、エチル基(−C2 H5 )またはプロピル基(−C3 H7 )などである。アルケニル基は、例えば、ビニル基(−C2 H3 )またはアリル基(−C3 H5 )などである。アルキニル基は、例えば、エチニル基(−C2 H1 )などである。アリール基は、例えば、フェニル基またはナフチル基などである。シクロアルキル基は、例えば、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基またはシクロオクチル基などである。アルコキシ基は、例えば、メトキシ基(−OCH3 )またはエトキシ基(−OC2 H5 )などである。ハロゲン化基は、例えば、トリフルオロメチル基(−CF3 )またはペンタフルオロエチル基(−C2 F5 )などである。
なお、R1〜R3は、上記した一連の基の誘導体でもよい。この誘導体とは、一連の基に1または2以上の置換基が導入されたものであり、その置換基の種類は、任意でよい。
シアノ基含有基の種類は、上記したように、1または2以上のシアノ基を含んでいると共に、そのシアノ基が−O−C(=O)−O−結合または−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して炭素原子を介して結合されていれば、特に限定されない。上記した条件を満たしていれば、シアノ基含有基の化学的構造に依存せずに上記した利点が得られるからである。
このシアノ基含有基の具体例は、飽和炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がシアノ基により置換された基、または不飽和炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がシアノ基により置換された基などである。中でも、上記した飽和炭化水素基はアルキル基であると共に、不飽和炭化水素基はアリール基であることが好ましい。また、アルキル基の炭素数は1〜12であると共に、アリール基の炭素数は6〜18であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。ただし、シアノ基含有基は、上記以外の他の基でもよい。
シアノ化合物の具体例は、以下の通りである。炭酸エステル型シアノ化合物は、例えば、下記の式(1−1)〜式(1−25)で表される化合物などである。また、エステル型シアノ化合物は、例えば、下記の式(2−1)〜式(2−21)で表される化合物などである。ただし、シアノ化合物は、式(1)または式(2)に示した条件を満たす他の化合物でもよい。
電解液中におけるシアノ化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜20重量%であることが好ましく、0.1重量%〜10重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
[非シアノ化合物]
電解液は、シアノ化合物と一緒に非シアノ化合物を含んでいることが好ましい。この非シアノ化合物は、例えば、下記の式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物、式(6)で表される化合物および式(7)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含んでいる。電解液の化学的安定性がより向上するため、その電解液の分解反応がより抑制されるからである。
(R11およびR13は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R12は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
(R14およびR16は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R15は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。nは、1以上の整数である。)
(R17およびR19は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R18は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
LiPF2 O2 …(6)
Li2 PFO3 …(7)
式(3)に示した化合物は、両末端に炭酸エステル基(−O−C(=O)−O−R11および−O−C(=O)−O−R13)を有するジ炭酸エステル化合物である。R11およびR13は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。
R11およびR13の種類は、上記したように、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。「炭化水素基」、「酸素含有炭化水素基」、「ハロゲン化基」および「それらの2種類以上が結合された基」の意味するところは、シアノ化合物について説明した場合と同様である。ジ炭酸エステル化合物が上記した炭酸エステル基を有していることで、R11およびR13の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
1価の炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、炭素数=1〜12のアルコキシ基、またはそれらの2種類以上が結合された基などである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。なお、上記したアルキル基などの詳細は、シアノ化合物について説明した場合と同様である。
R12の種類は、上記したように、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基であれば、特に限定されない。「ハロゲン化基」の意味するところは、シアノ化合物について説明した場合と同様である。上記したR11およびR13と同様の理由により、R12の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
2価の炭化水素基は、例えば、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、それらの2種類以上が結合された基、またはそれらの1種類以上とエーテル結合(−O−)とが結合された基などである。ジ炭酸エステル化合物の溶解性および相溶性などを確保しつつ、上記した利点が得られるからである。
「それらの2種類以上が結合された基」とは、上記したアルキレン基などのうちの2種類以上が全体として2価となるように結合された基であり、例えば、アルキレン基とアリーレン基とが結合された基である。このアルキレン基とアリーレン基とが結合された基は、1つのアリーレン基と1つのアルキレン基とが結合された基でもよいし、2つのアルキレン基がアリーレン基を介して結合された基(アラルキレン基)でもよい。
「それらの1種類以上とエーテル結合とが結合された基」とは、上記したアルキレン基などのうちの1種類以上と1または2以上のエーテル結合とが全体として2価となるように結合された基である。例えば、アルキレン基とエーテル結合とが結合された基などである。このアルキレン基とエーテル結合とが結合された基は、1つのアルキレン基と1つのエーテル結合とが結合された基でもよいし、2つのアルキレン基が1つのエーテル結合を介して結合された基でもよいし、複数のアルキレン基がエーテル結合を介して交互に結合された基でもよい。
R12の具体例は、下記の式(3−13)〜式(3−19)で表される直鎖状のアルキレン基、式(3−20)〜式(3−28)で表される分岐状のアルキレン基、式(3−29)〜式(3−31)で表されるアリーレン基、または式(3−32)〜式(3−34)で表されるベンジリデン基などである。
なお、アルキレン基とエーテル結合とが結合された2価の基としては、少なくとも2つのアルキレン基がエーテル結合を介して交互に連結されると共に両末端が炭素原子である基が好ましい。このような基の炭素数は、4〜12であることが好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。ただし、エーテル結合の数などは、任意でよい。
この場合におけるR12の具体例は、例えば、下記の式(3−35)〜式(3−47)で表される2価の基などである。また、式(3−35)〜式(3−47)に示した2価の基がフッ素化された場合には、例えば、式(3−48)〜式(3−56)で表される基などでもよい。中でも、式(3−40)〜式(3−42)に示した基が好ましい。
ジ炭酸エステル化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
ジ炭酸エステル化合物の具体例は、下記の式(3−1)〜式(3−12)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、ジ炭酸エステル化合物は、式(3)に示した化学式の条件を満たす他の化合物でもよい。
式(4)に示した化合物は、両末端にカルボン酸基(−O−C(=O)−R14および−O−C(=O)−R16)を有するジカルボン酸化合物である。nの値は、1以上の整数であれば、特に限定されない。R14およびR16は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。R14〜R16の詳細は、例えば、それぞれ上記したR11〜R13と同様である。
ジカルボン酸化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、162〜1000が好ましく、162〜500がより好ましく、162〜300がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
ジカルボン酸化合物の具体例は、下記の式(4−1)〜式(4−17)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、ジカルボン酸化合物は、式(4)に示した化学式の条件を満たす他の化合物でもよい。
式(5)に示した化合物は、両末端にスルホン酸基(−O−S(=O)2 −R17および−O−S(=O)2 −R19)を有するジスルホン酸化合物である。R17およびR19は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。R17〜R19の詳細は、例えば、それぞれR11〜R13と同様である。
ジスルホン酸化合物の分子量は、特に限定されないが、中でも、200〜800が好ましく、200〜600がより好ましく、200〜450がさらに好ましい。優れた溶解性および相溶性が得られるからである。
ジスルホン酸化合物の具体例は、下記の式(5−1)〜式(5−9)で表される化合物などである。十分な溶解性および相溶性が得られると共に、電解液の化学的安定性が十分に向上するからである。ただし、ジスルホン酸化合物は、式(5)に示した化学式の条件を満たす他の化合物でもよい。
式(6)に示した化合物は、ジフルオロリン酸リチウムであると共に、式(7)に示した化合物は、モノフルオロリン酸リチウムである。
電解液中における非シアノ化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.001重量%〜2重量%であることが好ましい。より高い効果が得られるからである。
[溶媒]
溶媒は、有機溶媒などの非水溶媒のいずれか1種類または2種類以上(上記したシアノ化合物および非シアノ化合物を除く)を含んでいる。
この非水溶媒は、例えば、環状炭酸エステル、鎖状炭酸エステル、ラクトン、鎖状カルボン酸エステルまたはニトリルなどである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。環状炭酸エステルは、例えば、炭酸エチレン、炭酸プロピレンまたは炭酸ブチレンなどであると共に、鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸ジメチル、炭酸ジエチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸メチルプロピルなどである。ラクトンは、例えば、γ−ブチロラクトンまたはγ−バレロラクトンなどである。カルボン酸エステルは、例えば、酢酸メチル、酢酸エチル、プロピオン酸メチル、プロピオン酸エチル、酪酸メチル、イソ酪酸メチル、トリメチル酢酸メチルまたはトリメチル酢酸エチルなどである。ニトリルは、例えば、アセトニトリル、グルタロニトリル、アジポニトリル、メトキシアセトニトリルまたは3−メトキシプロピオニトリルなどである。
この他、非水溶媒は、例えば、1,2−ジメトキシエタン、テトラヒドロフラン、2−メチルテトラヒドロフラン、テトラヒドロピラン、1,3−ジオキソラン、4−メチル−1,3−ジオキソラン、1,3−ジオキサン、1,4−ジオキサン、N,N−ジメチルホルムアミド、N−メチルピロリジノン、N−メチルオキサゾリジノン、N,N’−ジメチルイミダゾリジノン、ニトロメタン、ニトロエタン、スルホラン、燐酸トリメチル、またはジメチルスルホキシドなどでもよい。同様の利点が得られるからである。
中でも、炭酸エチレン、炭酸プロピレン、炭酸ジメチル、炭酸ジエチルおよび炭酸エチルメチルのうちの少なくとも1種が好ましい。より優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。この場合には、炭酸エチレンまたは炭酸プロピレンなどの高粘度(高誘電率)溶媒(例えば比誘電率ε≧30)と、炭酸ジメチル、炭酸エチルメチルまたは炭酸ジエチルなどの低粘度溶媒(例えば粘度≦1mPa・s)との組み合わせがより好ましい。電解質塩の解離性およびイオンの移動度が向上するからである。
特に、溶媒は、不飽和環状炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。充放電時に主に負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。この不飽和環状炭酸エステルとは、1または2以上の不飽和結合(炭素間二重結合)を有する環状炭酸エステルである。より具体的には、下記の式(8)で表される炭酸ビニレン系化合物、式(9)で表される炭酸ビニルエチレン系化合物、および式(10)で表される炭酸メチレンエチレン系化合物のうちの少なくとも1種である。R21およびR22は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R23〜R26についても同様である。溶媒中における不飽和環状炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜10重量%である。なお、不飽和環状炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
(R21およびR22は水素基またはアルキル基である。)
(R23〜R26は水素基、アルキル基、ビニル基またはアリル基であり、R23〜R26のうちの少なくとも1つはビニル基またはアリル基である。)
炭酸ビニレン系化合物は、例えば、炭酸ビニレン(1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸メチルビニレン(4−メチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、炭酸エチルビニレン(4−エチル−1,3−ジオキソール−2−オン)、4,5−ジメチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4,5−ジエチル−1,3−ジオキソール−2−オン、4−フルオロ−1,3−ジオキソール−2−オン、または4−トリフルオロメチル−1,3−ジオキソール−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。
炭酸ビニルエチレン系化合物は、例えば、炭酸ビニルエチレン(4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−エチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4−n−プロピル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、5−メチル−4−ビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、4,4−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,5−ジビニル−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。中でも、炭酸ビニルエチレンが好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。もちろん、R32〜R35としては、全てがビニル基でもよいし、全てがアリル基でもよいし、ビニル基とアリル基とが混在してもよい。
炭酸メチレンエチレン系化合物は、例えば、炭酸メチレンエチレン(4−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン)、4,4−ジメチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オン、または4,4−ジエチル−5−メチレン−1,3−ジオキソラン−2−オンなどである。この炭酸メチレンエチレン系化合物は、式(10)に示したように1つのメチレン基を有する化合物の他、2つのメチレン基を有する化合物でもよい。
なお、不飽和環状炭酸エステルは、ベンゼン環を有する炭酸カテコール(カテコールカーボネート)などでもよい。
また、溶媒は、ハロゲン化炭酸エステルのいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。充放電時に主に負極22の表面に安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応が抑制されるからである。このハロゲン化炭酸エステルとは、1または2以上のハロゲンを構成元素として含む環状または鎖状の炭酸エステルである。より具体的には、環状のハロゲン化炭酸エステルは下記の式(11)で表されると共に、鎖状のハロゲン化炭酸エステルは下記の式(12)で表される。R28〜R31は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよいし、R28〜R31のうちの一部が同じ種類の基でもよい。このことは、R32〜R37についても同様である。溶媒中におけるハロゲン化炭酸エステルの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.01重量%〜50重量%である。なお、ハロゲン化炭酸エステルの具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
(R28〜R31は水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、R28〜R31のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
(R32〜R37は水素基、ハロゲン基、アルキル基またはハロゲン化アルキル基であり、R32〜R37のうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。)
ハロゲンの種類は、特に限定されないが、中でも、フッ素、塩素、臭素またはヨウ素が好ましく、フッ素がより好ましい。他のハロゲンよりも高い効果が得られるからである。ただし、ハロゲンの数は、1つよりも2つが好ましく、さらに3つ以上でもよい。保護膜を形成する能力が高くなり、より強固で安定な保護膜が形成されるため、電解液の分解反応がより抑制されるからである。
環状のハロゲン化炭酸エステルは、例えば、下記の式(11−1)〜式(11−21)で表される化合物などであり、その環状のハロゲン化炭酸エステルには、幾何異性体も含まれる。中でも、式(11−1)に示した4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンまたは式(11−3)に示した4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンが好ましく、後者がより好ましい。または、4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オンとしては、シス異性体よりもトランス異性体が好ましい。容易に入手できると共に、高い効果が得られるからである。一方、ハロゲン化鎖状炭酸エステルは、例えば、炭酸フルオロメチルメチル、炭酸ビス(フルオロメチル)または炭酸ジフルオロメチルメチルなどである。
また、溶媒は、スルトン(環状スルホン酸エステル)を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。このスルトンは、例えば、プロパンスルトンまたはプロペンスルトンなどである。溶媒中におけるスルトンの含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。なお、スルトンの具体例は、上記した化合物に限られない。
さらに、溶媒は、酸無水物を含んでいることが好ましい。電解液の化学的安定性がより向上するからである。この酸無水物は、例えば、カルボン酸無水物、ジスルホン酸無水物、またはカルボン酸スルホン酸無水物などである。カルボン酸無水物は、例えば、無水コハク酸、無水グルタル酸または無水マレイン酸などである。ジスルホン酸無水物は、例えば、無水エタンジスルホン酸または無水プロパンジスルホン酸などである。カルボン酸スルホン酸無水物は、例えば、無水スルホ安息香酸、無水スルホプロピオン酸または無水スルホ酪酸などである。溶媒中における酸無水物の含有量は、特に限定されないが、例えば、0.5重量%〜5重量%である。なお、酸無水物の具体例は、上記した化合物に限られない。
[電解質塩]
電解質塩は、例えば、リチウム塩などの塩のいずれか1種類または2種類以上を含んでいる。ただし、電解質塩は、例えば、リチウム塩以外の他の塩を含んでいてもよい。この「他の塩」とは、例えば、リチウム塩以外の軽金属塩などである。
このリチウム塩は、例えば、六フッ化リン酸リチウム(LiPF6 )、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、過塩素酸リチウム(LiClO4 )、六フッ化ヒ酸リチウム(LiAsF6 )、テトラフェニルホウ酸リチウム(LiB(C6 H5 )4 )、メタンスルホン酸リチウム(LiCH3 SO3 )、トリフルオロメタンスルホン酸リチウム(LiCF3 SO3 )、テトラクロロアルミン酸リチウム(LiAlCl4 )、六フッ化ケイ酸二リチウム(Li2 SiF6 )、塩化リチウム(LiCl)、または臭化リチウム(LiBr)などである。優れた電池容量、サイクル特性および保存特性などが得られるからである。ただし、リチウム塩の具体例は、上記した化合物に限られない。
中でも、LiPF6 、LiBF4 、LiClO4 およびLiAsF6 のうちの少なくとも1種類が好ましく、LiPF6 がより好ましい。内部抵抗が低下するため、より高い効果が得られるからである。
特に、電解質塩は、下記の式(13)で表される化合物、式(14)で表される化合物、および式(15)で表される化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、R41およびR43は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。このことは、R51〜R53、R61およびR62についても同様である。なお、式(13)〜式(15)に示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
(X41は長周期型周期表における1族元素または2族元素、またはアルミニウムである。M41は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。R41はハロゲン基である。Y41は−C(=O)−R42−C(=O)−、−C(=O)−CR43
2 −、または−C(=O)−C(=O)−である。ただし、R42はアルキレン基、ハロゲン化アルキレン基、アリーレン基またはハロゲン化アリーレン基である。R43はアルキル基、ハロゲン化アルキル基、アリール基またはハロゲン化アリール基である。なお、a4は1〜4の整数であり、b4は0、2または4の整数であり、c4、d4、m4およびn4は1〜3の整数である。)
(X51は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M51は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Y51は−C(=O)−(CR51
2 )
b5−C(=O)−、−R53
2 C−(CR52
2 )
c5−C(=O)−、−R53
2 C−(CR52
2 )
c5−CR53
2 −、−R53
2 C−(CR52
2 )
c5−S(=O)
2 −、−S(=O)
2 −(CR52
2 )
d5−S(=O)
2 −、または−C(=O)−(CR52
2 )
d5−S(=O)
2 −である。ただし、R51およびR53は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、それぞれのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R52は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a5、e5およびn5は1または2の整数であり、b5およびd5は1〜4の整数であり、c5は0〜4の整数であり、f5およびm5は1〜3の整数である。)
(X61は長周期型周期表における1族元素または2族元素である。M61は遷移金属、または長周期型周期表における13族元素、14族元素または15族元素である。Rfはフッ素化アルキル基またはフッ素化アリール基であり、いずれの炭素数も1〜10である。Y61は−C(=O)−(CR61
2 )
d6−C(=O)−、−R62
2 C−(CR61
2 )
d6−C(=O)−、−R62
2 C−(CR61
2 )
d6−CR62
2 −、−R62
2 C−(CR61
2 )
d6−S(=O)
2 −、−S(=O)
2 −(CR61
2 )
e6−S(=O)
2 −、または−C(=O)−(CR61
2 )
e6−S(=O)
2 −である。ただし、R61は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。R62は水素基、アルキル基、ハロゲン基またはハロゲン化アルキル基であり、そのうちの少なくとも1つはハロゲン基またはハロゲン化アルキル基である。なお、a6、f6およびn6は1または2の整数であり、b6、c6およびe6は1〜4の整数であり、d6は0〜4の整数であり、g6およびm6は1〜3の整数である。)
なお、1族元素とは、H、Li、Na、K、Rb、CsおよびFrである。2族元素とは、Be、Mg、Ca、Sr、BaおよびRaである。13族元素とは、B、Al、Ga、InおよびTlである。14族元素とは、C、Si、Ge、SnおよびPbである。15族元素とは、N、P、As、SbおよびBiである。
式(13)に示した化合物は、例えば、式(13−1)〜式(13−6)で表される化合物などである。式(14)に示した化合物は、例えば、式(14−1)〜式(14−8)で表される化合物などである。式(15)に示した化合物は、例えば、式(15−1)で表される化合物などである。
また、電解質塩は、下記の式(16)で表される鎖状イミド化合物、式(17)で表される環状イミド化合物、および式(18)で表される鎖状メチド化合物のいずれか1種類または2種類以上を含んでいることが好ましい。より高い効果が得られるからである。なお、mおよびnは、同じ値でもよいし、異なる値でもよい。このことは、p、qおよびrについても、同様である。なお、式(16)〜式(18)に示した化合物の具体例は、以下で説明する化合物に限られない。
LiN(Cm F2m+1SO2 )(Cn F2n+1 SO2 ) …(16)
(mおよびnは1以上の整数である。)
(R71は炭素数=2〜4の直鎖状または分岐状のパーフルオロアルキレン基である。)
LiC(Cp F2p+1SO2 )(Cq F2q+1SO2 )(Cr F2r+1SO2 ) …(18)
(p、qおよびrは1以上の整数である。)
鎖状イミド化合物は、例えば、ビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 )、ビス(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(C2 F5 SO2 )2 )、(トリフルオロメタンスルホニル)(ペンタフルオロエタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C2 F5 SO2 ))、(トリフルオロメタンスルホニル)(ヘプタフルオロプロパンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C3 F7 SO2 ))、または(トリフルオロメタンスルホニル)(ノナフルオロブタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )(C4 F9 SO2 ))などである。
環状イミド化合物は、例えば、式(17−1)〜式(17−4)で表される化合物などである。
鎖状メチド化合物は、例えば、リチウムトリス(トリフルオロメタンスルホニル)メチド(LiC(CF3 SO2 )3 )などである。
電解質塩の含有量は、特に限定されないが、中でも、非水溶媒に対して0.3mol/kg〜3.0mol/kgであることが好ましい。高いイオン伝導性が得られるからである。
[二次電池の動作]
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極21から放出されたリチウムイオンが電解液を介して負極22に吸蔵される。一方、放電時には、負極22から放出されたリチウムイオンが電解液を介して正極21に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
この二次電池は、例えば、以下の手順により製造される。
最初に、正極21を作製する。正極活物質と、必要に応じて正極結着剤などとを混合して、正極合剤とする。続いて、有機溶剤などに正極合剤を分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとする。続いて、正極集電体21Aの両面に正極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成する。続いて、必要に応じて、ロールプレス機などを用いて正極活物質層21Bを圧縮成型する。この場合には、正極活物質層21Bを加熱しながら圧縮成型してもよいし、圧縮成型を複数回繰り返してもよい。
また、上記した正極21と同様の手順により、負極22を作製する。負極活物質と、必要に応じて負極結着剤などとが混合された負極合剤を有機溶剤などに分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとする。続いて、負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを塗布してから乾燥させて負極活物質層22Bを形成したのち、必要に応じて負極活物質層22Bを圧縮成型する。
また、溶媒に電解質塩を分散させたのち、シアノ化合物を加えて電解液を調製する。この場合には、必要に応じて非シアノ化合物を加えてもよい。
最後に、正極21および負極22を用いて二次電池を組み立てる。溶接法などを用いて正極集電体21Aに正極リード25を取り付けると共に、同様に溶接法などを用いて負極集電体22Aに負極リード26を取り付ける。続いて、セパレータ23を介して正極21と負極22とを積層してから巻回させて巻回電極体20を作製したのち、その巻回中心の空洞にセンターピン24を挿入する。続いて、一対の絶縁板12,13で挟みながら巻回電極体20を電池缶11の内部に収納する。この場合には、溶接法などを用いて正極リード25の先端部を安全弁機構15に取り付けると共に、同様に溶接法などを用いて負極リード26の先端部を電池缶11に取り付ける。続いて、電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させる。続いて、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめる。
[二次電池の作用および効果]
この円筒型の二次電池によれば、電解液が上記したシアノ化合物を含んでいる。この場合には、電解液がシアノ化合物を含んでいない場合、または他のシアノ化合物を含んでいる場合と比較して、特に高温などの厳しい温度環境中でも電解液の分解反応が抑制される。この「他のシアノ化合物」とは、例えば、下記の式(18−1)で表される炭酸エステル型シアノ化合物、または式(18−2)で表されるエステル型シアノ化合物である。式(18−1)に示した化合物では、式(1)のうち、R1が飽和炭化水素基(メチル基)、R2がシアノ基含有基であるにもかかわらず、そのR2におけるシアノ基の数が1つである。式(18−2)に示した化合物では、式(2)のうち、R3が飽和炭化水素基(メチル基)であるにもかかわらず、R4におけるシアノ基の数が1つである。よって、厳しい温度環境中で二次電池が充放電または保存されても電解液が分解しにくくなるため、優れた電池特性を得ることができる。
特に、電解液中におけるシアノ化合物の含有量が0.01重量%〜20重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
また、電解液が非シアノ化合物を含んでいれば、より高い効果を得ることができる。この場合には、電解液中における非シアノ化合物の含有量が0.001重量%〜2重量%であれば、さらに高い効果を得ることができる。
<1−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
図3は、本実施形態における他の二次電池の分解斜視構成を表しており、図4は、図3に示した巻回電極体30のIV−IV線に沿った断面を拡大して示している。以下では、既に説明した円筒型の二次電池の構成要素を随時引用する。
[二次電池の全体構成]
ここで説明する二次電池は、いわゆるラミネートフィルム型のリチウムイオン二次電池であり、例えば、フィルム状の外装部材40の内部に巻回電極体30が収納されている。この巻回電極体30は、セパレータ35および電解質層36を介して正極33と負極34とが積層されたのち、その積層体が巻回されたものである。正極33に正極リード31が取り付けられていると共に、負極34に負極リード32が取り付けられている。巻回電極体30の最外周部は、保護テープ37により保護されている。
正極リード31および負極リード32は、例えば、外装部材40の内部から外部に向かって同一方向に導出されている。正極リード31は、例えば、アルミニウムなどの導電性材料により形成されていると共に、負極リード32は、例えば、銅、ニッケルまたはステンレスなどの導電性材料により形成されている。これらの導電性材料は、例えば、薄板状または網目状である。
外装部材40は、例えば、融着層と、金属層と、表面保護層とがこの順に積層されたラミネートフィルムである。この外装部材40は、例えば、融着層が巻回電極体30と対向するように2枚のラミネートフィルムが重ねられたのち、各融着層の外周縁部同士が融着されたものである。ただし、2枚のラミネートフィルムは、接着剤などを介して貼り合わされていてもよい。融着層は、例えば、ポリエチレンまたはポリプロピレンなどのフィルムである。金属層は、例えば、アルミニウム箔などである。表面保護層は、例えば、ナイロンまたはポリエチレンテレフタレートなどのフィルムである。
中でも、外装部材40は、ポリエチレンフィルムと、アルミニウム箔と、ナイロンフィルムとがこの順に積層されたアルミラミネートフィルムであることが好ましい。ただし、外装部材40は、他の積層構造を有するラミネートフィルムでもよいし、ポリプロピレンなどの高分子フィルム、または金属フィルムでもよい。
外装部材40と正極リード31および負極リード32との間には、例えば、外気の侵入を防止するために密着フィルム41が挿入されている。この密着フィルム41は、正極リード31および負極リード32に対して密着性を有する材料により形成されている。この密着性材料は、例えば、ポリオレフィン樹脂などであり、より具体的には、ポリエチレン、ポリプロピレン、変性ポリエチレンまたは変性ポリプロピレンなどである。
正極33は、例えば、正極集電体33Aの片面または両面に正極活物質層33Bを有していると共に、負極34は、例えば、負極集電体34Aの片面または両面に負極活物質層34Bを有している。正極集電体33A、正極活物質層33B、負極集電体34Aおよび負極活物質層34Bの構成は、それぞれ正極集電体21A、正極活物質層21B、負極集電体22Aおよび負極活物質層22Bの構成と同様である。また、セパレータ35の構成は、セパレータ23の構成と同様である。
電解質層36は、高分子化合物により電解液が保持されたものであり、いわゆるゲル状の電解質である。高いイオン伝導率(例えば、室温で1mS/cm以上)が得られると共に、電解液の漏液が防止されるからである。この電解質層36は、必要に応じて、添加剤などの他の材料を含んでいてもよい。
高分子化合物は、例えば、ポリアクリロニトリル、ポリフッ化ビニリデン、ポリテトラフルオロエチレン、ポリヘキサフルオロプロピレン、ポリエチレンオキサイド、ポリプロピレンオキサイド、ポリフォスファゼン、ポリシロキサン、ポリフッ化ビニル、ポリ酢酸ビニル、ポリビニルアルコール、ポリメタクリル酸メチル、ポリアクリル酸、ポリメタクリル酸、スチレン−ブタジエンゴム、ニトリル−ブタジエンゴム、ポリスチレン、ポリカーボネート、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体などのいずれか1種類または2種類以上である。中でも、ポリフッ化ビニリデン、またはフッ化ビニリデンとヘキサフルオロピレンとの共重合体が好ましく、ポリフッ化ビニリデンがより好ましい。電気化学的に安定だからである。
電解液の組成は、円筒型の場合と同様であり、その電解液は、上記したシアノ化合物を含んでいる。ただし、ゲル状の電解質である電解質層36において、電解液の「溶媒」とは、液状の溶媒だけでなく、電解質塩を解離させることが可能なイオン伝導性を有する材料まで含む広い概念である。よって、イオン伝導性を有する高分子化合物を用いる場合には、その高分子化合物も溶媒に含まれる。
なお、ゲル状の電解質層36に代えて、電解液をそのまま用いてもよい。この場合には、電解液がセパレータ35に含浸される。
[二次電池の動作]
この二次電池では、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極33から放出されたリチウムイオンが電解質層36を介して負極34に吸蔵される。一方、放電時には、負極34から放出されたリチウムイオンが電解質層36を介して正極33に吸蔵される。
[二次電池の製造方法]
ゲル状の電解質層36を備えた二次電池は、例えば、以下の3種類の手順により製造される。
第1手順では、正極21および負極22と同様の作製手順により、正極33および負極34を作製する。すなわち、正極集電体33Aの片面または両面に正極活物質層33Bを形成して正極33を作製すると共に、負極集電体34Aの片面または両面に負極活物質層34Bを形成して負極34を作製する。続いて、電解液と、高分子化合物と、有機溶剤などの溶媒とを含む前駆溶液を調製したのち、その前駆溶液を正極33および負極34に塗布して、ゲル状の電解質層36を形成する。続いて、溶接法などを用いて正極集電体33Aに正極リード31を取り付けると共に、同様に溶接法などを用いて負極集電体34Aに負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層してから巻回させて巻回電極体30を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回電極体30を挟み込んだのち、熱融着法などを用いて外装部材40の外周縁部同士を接着させて、その外装部材40の内部に巻回電極体30を封入する。この場合には、正極リード31および負極リード32と外装部材40との間に密着フィルム41を挿入する。
第2手順では、正極33に正極リード31を取り付けると共に、負極34に負極リード32を取り付ける。続いて、セパレータ35を介して正極33と負極34とを積層してから巻回させて、巻回電極体30の前駆体である巻回体を作製したのち、その最外周部に保護テープ37を貼り付ける。続いて、2枚のフィルム状の外装部材40の間に巻回体を配置したのち、熱融着法などを用いて一辺の外周縁部を除いた残りの外周縁部を接着させて、袋状の外装部材40の内部に巻回体を収納する。続いて、電解液と、高分子化合物の原料であるモノマーと、重合開始剤と、必要に応じて重合禁止剤などの他の材料とを含む電解質用組成物を調製して袋状の外装部材40の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40を密封する。続いて、モノマーを熱重合させて高分子化合物を形成する。これにより、高分子化合物に電解液が含浸され、その高分子化合物がゲル化するため、電解質層36が形成される。
第3手順では、高分子化合物が両面に塗布されたセパレータ35を用いることを除き、上記した第2手順と同様に、巻回体を作製して袋状の外装部材40の内部に収納する。このセパレータ35に塗布する高分子化合物は、例えば、フッ化ビニリデンを成分とする重合体(単独重合体、共重合体または多元共重合体)などである。具体的には、単独重合体は、ポリフッ化ビニリデンである。共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとを成分とする二元系の共重合体などである。多元共重合体は、例えば、フッ化ビニリデンとヘキサフルオロプロピレンとクロロトリフルオロエチレンとを成分とする三元系の共重合体などである。なお、フッ化ビニリデンを成分とする重合体と一緒に、他の1種類または2種類以上の高分子化合物を用いてもよい。続いて、電解液を調製して外装部材40の内部に注入したのち、熱融着法などを用いて外装部材40の開口部を密封する。続いて、外装部材40に加重をかけながら加熱して、高分子化合物を介してセパレータ35を正極33および負極34に密着させる。これにより、高分子化合物に電解液が含浸され、その高分子化合物がゲル化するため、電解質層36が形成される。
この第3手順では、第1手順よりも二次電池の膨れが抑制される。また、第3手順では、第2手順よりも高分子化合物の原料であるモノマーまたは溶媒などが電解質層36中にほとんど残らないため、高分子化合物の形成工程が良好に制御される。このため、正極33、負極34およびセパレータ35と電解質層36との間で十分な密着性が得られる。
[二次電池の作用および効果]
このラミネートフィルム型の二次電池によれば、電解質層36の電解液が上記したシアノ化合物を含んでいるので、円筒型の二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、円筒型と同様である。
<1−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)>
ここで説明する二次電池は、負極22の容量がリチウム金属の析出溶解により表されるリチウム二次電池(リチウム金属二次電池)である。この二次電池は、負極活物質層22Bがリチウム金属により形成されていることを除き、上記したリチウムイオン二次電池(円筒型)と同様の構成を有していると共に、同様の手順により製造される。
この二次電池では、負極活物質としてリチウム金属を用いているため、高いエネルギー密度が得られるようになっている。負極活物質層22Bは、組み立て時から既に存在してもよいが、組み立て時には存在せず、充電時に析出したリチウム金属により形成されるようにしてもよい。また、負極活物質層22Bを集電体として利用することで、負極集電体22Aを省略してもよい。
この二次電池は、例えば、以下のように動作する。充電時には、正極21からリチウムイオンが放出され、そのリチウムイオンが電解液を介して負極集電体22Aの表面にリチウム金属となって析出する。一方、放電時には、負極活物質層22Bからリチウム金属がリチウムイオンとなって電解液中に溶出し、その電解液を介して正極21に吸蔵される。
このリチウム金属二次電池によれば、電解液が上記したシアノ化合物を含んでいるので、リチウムイオン二次電池と同様の理由により、優れた電池特性を得ることができる。これ以外の作用および効果は、円筒型と同様である。なお、上記したリチウム金属二次電池は、円筒型に限らず、ラミネートフィルム型でもよい。この場合でも同様の効果を得ることができる。
<2.第2実施形態/非水二次電池(シアノ化合物:シアノ基の数に制限なし+金属系材料)>
次に、本技術の第2実施形態の非水二次電池について説明する。
<2−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
本実施形態の二次電池は、負極22の構成および電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態の二次電池と同様の構成を有している。すなわち、ここで説明する二次電池は、円筒型のリチウムイオン二次電池である。以下では、既に説明した第1実施形態の二次電池の構成要素を随時引用する。
負極22の負極活物質層22Bは、負極活物質として金属系材料を含んでおり、その金属系材料の詳細は、第1実施形態と同様である。中でも、金属系材料は、SiおよびSnのうちの少なくとも一方を構成元素として含んでいることが好ましい。高いエネルギー密度が得られるからである。
なお、負極活物質層22Bは、負極活物質として上記した負極材料(金属系材料)を含んでいれば、さらにリチウムイオンを吸蔵放出可能である他の負極材料のいずれか1種類または2種類以上を含んでいてもよい。他の負極材料は、例えば、炭素材料、金属酸化物または高分子化合物などであり、それらの詳細は、第1実施形態と同様である。
電解液は、シアノ化合物を含んでおり、そのシアノ化合物は、下記の式(19)で表される化合物および式(20)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含んでいる。ただし、電解液は、溶媒(上記したシアノ化合物を除く。)および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。溶媒および電解質塩の詳細は、第1実施形態と同様である。
(R5およびR6は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R5およびR6のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。ただし、R5およびR6のうちの少なくとも一方のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。)
(R7は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R8は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。ただし、R8のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。)
ここで説明するシアノ化合物は、式(1)および式(2)により規定される第1実施形態の化合物とは異なり、式(19)および式(20)により規定される化合物である。式(19)に示した化合物は、炭酸エステル型の結合(−O−C(=O)−O−)を骨格として含む化合物(炭酸エステル型シアノ化合物)である。また、式(20)に示した化合物は、エステル型の結合(−C(=O)−O−)を骨格として含む化合物(エステル型シアノ化合物)である。
電解液がシアノ化合物を含んでいるのは、負極22が負極活物質として金属系材料を含んでいても、電解液の化学的安定性が飛躍的に向上するからである。これにより、電解液の分解反応が著しく抑制されるため、二次電池を繰り返して充放電させると共に保存しても、放電容量の低下が抑制される。
詳細には、負極活物質が低反応性の非金属系材料(例えば炭素材料)である場合には、充放電時に炭素材料の反応性に起因する電解液の分解反応が生じにくい傾向にあるため、放電容量は、電解液中におけるシアノ化合物の有無に応じて影響を受けにくい。
これに対して、負極活物質が高反応性の金属系材料である場合には、高いエネルギー密度が得られる反面、充放電時に金属系材料の反応性に起因する電解液の分解反応が顕著になる。このため、放電容量は、電解液中におけるシアノ化合物の有無に応じて大きく変化する。すなわち、金属系材料を用いた場合には、電解液がシアノ化合物を含んでいないと、負極活物質の反応性に起因する電解液の分解反応が進行しやすいため、放電容量も低下しやすくなる。この傾向は、特に、高温環境などの厳しい条件下で顕著になる。しかしながら、電解液がシアノ化合物を含んでいると、充放電時にシアノ化合物に起因する強固な被膜が負極22の表面に形成されるため、その負極22が電解液から保護される。これにより、負極活物質の反応性に起因する電解液の分解反応が進行しにくくなるため、放電容量が維持されやすくなる。このような傾向は、特に、高温などの厳しい温度環境中で二次電池を充放電および保存させた場合に顕著となる。
式(19)において、R5およびR6の種類は、上記したように、炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。
ただし、R5およびR6のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基(すなわちシアノ基)を含んでいることを条件とする。R5およびR6のうちの少なくとも一方がシアノ基を含んでいることで、R5およびR6の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
また、シアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されていることを条件とする。すなわち、シアノ基は、酸素原子に対して直接的に結合されておらず、炭素原子を介して間接的に結合されていなければならない。シアノ基が酸素原子に対して間接的に結合されていることで、R5およびR6の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
なお、R5およびR6は、同じ種類の基でもよいし、異なる種類の基でもよい。また、R5とR6とが互いに結合されており、その結合されたR5およびR6により環が形成されていてもよい。
式(20)において、R7の種類は、上記したように、炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。また、R8の種類は、上記したように、シアノ基含有基、ハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であれば、特に限定されない。
ただし、炭酸エステル型シアノ化合物と同様に、シアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されていることを条件とする。シアノ基が酸素原子に対して間接的に結合されていることで、R7の種類に依存せずに上記した利点が得られるからである。
なお、R7とR8とが互いに結合されており、その結合されたR7およびR8により環が形成されていてもよい。
ここで、R5〜R8の詳細、すなわち「炭化水素基」、「酸素含有炭化水素基」、「シアノ基含有基」、「ハロゲン化基」および「それらの2種類以上が結合された基」の意味するところは、第1実施形態におけるR1〜R4と同様である。このうち、炭化水素基が飽和炭化水素基および不飽和炭化水素基を含むと共に、酸素含有炭化水素基が酸素含有飽和炭化水素基に該当することは、言うまでもない。
シアノ化合物の具体例は、以下の通りである。炭酸エステル型シアノ化合物は、例えば、下記の式(19−1)〜式(19−31)で表される化合物などである。また、エステル型シアノ化合物は、例えば、下記の式(20−1)〜式(20−28)で表される化合物などである。ただし、シアノ化合物は、式(19)または式(20)に示した条件を満たす他の化合物でもよい。
電解液中におけるシアノ化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜20重量%であることが好ましく、0.5重量%〜20重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
この二次電池の動作および製造方法の詳細は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態(円筒型)と同様である。
この円筒型の二次電池によれば、負極22の負極活物質層22Bが金属系材料を含んでいると共に、電解液がシアノ化合物を含んでいる。この場合には、上記したように、電解液の化学的安定性が特異的に向上するため、負極活物質として高反応性の金属系材料を用いても電解液の分解反応が著しく抑制される。よって、二次電池が充放電または保存されても電解液が分解しにくくなるため、優れた電池特性を得ることができる。
特に、金属系材料がSiの単体、合金および化合物、ならびにSnの単体、合金および化合物のうちの少なくとも1種であれば、より高い効果を得ることができる。また、電解液中におけるシアノ化合物の含有量が0.01重量%〜20重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
<2−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
なお、本実施形態の二次電池は、上記した円筒型に代えて、ラミネートフィルム型でもよい。このラミネートフィルム型の二次電池の構成は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも優れた電池特性を得ることができる。
<3.第3実施形態/非水二次電池用電解液および非水二次電池(シアノ化合物:シアノ基の数に制限なし+分解物)>
次に、本技術の第3実施形態の非水二次電池用電解液および非水二次電池について説明する。
<3−1.リチウムイオン二次電池(円筒型)>
本実施形態の二次電池は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態の二次電池と同様の構成を有している。すなわち、ここで説明する二次電池は、円筒型のリチウムイオン二次電池である。以下では、既に説明した第1実施形態の二次電池の構成要素を随時引用する。
電解液は、シアノ化合物のいずれか1種類または2種類以上と、非シアノ化合物のいずれか1種類または2種類以上とを含んでいる。シアノ化合物の詳細は、第2実施形態のシアノ化合物と同様であると共に、非シアノ化合物の詳細は、第1実施形態の非シアノ化合物と同様であるため、それらの説明を省略する。ただし、電解液は、溶媒および電解質塩などの他の材料を含んでいてもよい。
電解液がシアノ化合物と非シアノ化合物とを一緒に含んでいるのは、両者の相乗作用により、いずれか一方だけを含む場合と比較して化学的安定性が向上するため、分解反応が抑制されるからである。詳細には、充放電時にシアノ化合物および非シアノ化合物に起因する強固な被膜が主に負極22の表面に形成されるため、高反応性の負極22の存在に起因する電解液の分解反応が抑制される。これにより、二次電池を繰り返して充放電または保存しても、放電容量の低下が抑制される。このような傾向は、特に、高温などの厳しい温度環境中で二次電池を充放電または保存させた場合に顕著となる。
電解液中におけるシアノ化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.01重量%〜20重量%であることが好ましく、0.5重量%〜20重量%であることがより好ましい。より高い効果が得られるからである。
電解液中における非シアノ化合物の含有量は、特に限定されないが、中でも、0.001重量%〜2重量%であることが好ましい。より高い効果が得られるからである。
この二次電池の動作および製造方法の詳細は、例えば、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態(円筒型)と同様である。
この円筒型の二次電池によれば、電解液がシアノ化合物と非シアノ化合物とを一緒に含んでいる。この場合には、上記したように、シアノ化合物と非シアノ化合物との相乗作用により、特に高温などの厳しい温度環境中でも電解液の分解反応が抑制される。よって、厳しい温度環境中で二次電池が充放電または保存されても電解液が分解しにくくなるため、優れた電池特性を得ることができる。
特に、電解液中におけるシアノ化合物の含有量が0.01重量%〜20重量%であり、または電解液中における非シアノ化合物の含有量が0.001重量%〜2重量%であれば、より高い効果を得ることができる。
<3−2.リチウムイオン二次電池(ラミネートフィルム型)>
なお、本実施形態の二次電池は、上記した円筒型に代えて、ラミネートフィルム型でもよい。このラミネートフィルム型の二次電池の構成は、電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも優れた電池特性を得ることができる。
<3−3.リチウム金属二次電池(円筒型,ラミネートフィルム型)>
また、本実施形態の二次電池は、上記したリチウムイオン二次電池に代えて、リチウム金属二次電池でもよい。この場合の電池構造は、円筒型またはラミネートフィルム型のいずれでもよい。このリチウム金属二次電池の構成は、負極の構成および電解液の組成が異なることを除き、第1実施形態と同様である。この場合でも優れた電池特性を得ることができる。
<4.二次電池の用途>
次に、上記した二次電池の適用例について説明する。
二次電池の用途は、その二次電池を駆動用の電源または電力蓄積用の電力貯蔵源などとして使用可能な機械、機器、器具、装置またはシステム(複数の機器などの集合体)などであれば、特に限定されない。なお、電源として使用される二次電池は、主電源(優先的に使用される電源)でもよいし、補助電源(主電源に代えて、または主電源から切り換えて使用される電源)でもよい。二次電池を補助電源として使用する場合、主電源の種類は二次電池に限られない。
二次電池の用途は、例えば、以下の通りである。ビデオカメラ、デジタルスチルカメラ、携帯電話機、ノート型パソコン、コードレス電話機、ヘッドホンステレオ、携帯用ラジオ、携帯用テレビまたは携帯用情報端末などの電子機器(携帯用電子機器を含む)である。電気シェーバなどの携帯用生活器具である。バックアップ電源またはメモリーカードなどの記憶用装置である。電動ドリルまたは電動鋸などの電動工具である。着脱可能な電源としてノート型パソコンなどに用いられる電池パックである。ペースメーカまたは補聴器などの医療用電子機器である。電気自動車(ハイブリッド自動車を含む)などの電動車両である。非常時などに備えて電力を蓄積しておく家庭用バッテリシステムなどの電力貯蔵システムである。もちろん、上記以外の用途でもよい。
中でも、二次電池は、電池パック、電動車両、電力貯蔵システム、電動工具または電子機器などに適用されることが有効である。優れた電池特性が要求されるため、本技術の二次電池を用いることで、有効に性能向上を図ることができるからである。なお、電池パックは、二次電池を用いた電源であり、いわゆる組電池などである。電動車両は、二次電池を駆動用電源として作動(走行)する車両であり、上記したように、二次電池以外の駆動源を併せて備えた自動車(ハイブリッド自動車など)でもよい。電力貯蔵システムは、二次電池を電力貯蔵源として用いるシステムである。例えば、家庭用の電力貯蔵システムでは、電力貯蔵源である二次電池に電力が蓄積されており、その電力が必要に応じて消費されるため、家庭用の電気製品などが使用可能になる。電動工具は、二次電池を駆動用の電源として可動部(例えばドリルなど)が可動する工具である。電子機器は、二次電池を駆動用の電源(電力供給源)として各種機能を発揮する機器である。
ここで、二次電池のいくつかの適用例について具体的に説明する。なお、以下で説明する各適用例の構成はあくまで一例であるため、適宜変更可能である。
<4−1.電池パック>
図5は、電池パックのブロック構成を表している。この電池パックは、例えば、プラスチック材料などにより形成された筐体60の内部に、制御部61と、電源62と、スイッチ部63と、電流測定部64と、温度検出部65と、電圧検出部66と、スイッチ制御部67と、メモリ68と、温度検出素子69と、電流検出抵抗70と、正極端子71および負極端子72とを備えている。
制御部61は、電池パック全体の動作(電源62の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、中央演算処理装置(CPU)などを含んでいる。電源62は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源62は、例えば、2以上の二次電池を含む組電池であり、それらの二次電池の接続形式は、直列でもよいし、並列でもよいし、双方の混合型でもよい。一例を挙げると、電源62は、2並列3直列となるように接続された6つの二次電池を含んでいる。
スイッチ部63は、制御部61の指示に応じて電源62の使用状態(電源62と外部機器との接続の可否)を切り換えるものである。このスイッチ部63は、例えば、充電制御スイッチ、放電制御スイッチ、充電用ダイオードおよび放電用ダイオード(いずれも図示せず)などを含んでいる。充電制御スイッチおよび放電制御スイッチは、例えば、金属酸化物半導体を用いた電界効果トランジスタ(MOSFET)などの半導体スイッチである。
電流測定部64は、電流検出抵抗70を用いて電流を測定して、その測定結果を制御部61に出力するものである。温度検出部65は、温度検出素子69を用いて温度を測定して、その測定結果を制御部61に出力するようになっている。この温度測定結果は、例えば、異常発熱時に制御部61が充放電制御を行う場合や、制御部61が残容量の算出時に補正処理を行う場合などに用いられる。電圧検出部66は、電源62中における二次電池の電圧を測定して、その測定電圧をアナログ/デジタル(A/D)変換して制御部61に供給するものである。
スイッチ制御部67は、電流測定部64および電圧検出部66から入力される信号に応じて、スイッチ部63の動作を制御するものである。
このスイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過充電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(充電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に充電電流が流れないように制御する。これにより、電源62では、放電用ダイオードを介して放電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、充電時に大電流が流れた場合に、充電電流を遮断するようになっている。
また、スイッチ制御部67は、例えば、電池電圧が過放電検出電圧に到達した場合に、スイッチ部63(放電制御スイッチ)を切断して、電源62の電流経路に放電電流が流れないように制御する。これにより、電源62では、充電用ダイオードを介して充電のみが可能になる。なお、スイッチ制御部67は、例えば、放電時に大電流が流れた場合に、放電電流を遮断するようになっている。
なお、二次電池では、例えば、過充電検出電圧は4.20V±0.05Vであり、過放電検出電圧は2.4V±0.1Vである。
メモリ68は、例えば、不揮発性メモリであるEEPROMなどである。このメモリ68には、例えば、制御部61により演算された数値や、製造工程段階で測定された二次電池の情報(例えば、初期状態の内部抵抗など)などが記憶されている。なお、メモリ68に二次電池の満充電容量を記憶させておけば、制御部61が残容量などの情報を把握可能になる。
温度検出素子69は、電源62の温度を測定すると共にその測定結果を制御部61に出力するものであり、例えば、サーミスタなどである。
正極端子71および負極端子72は、電池パックを用いて稼働される外部機器(例えばノート型のパーソナルコンピュータなど)や、電池パックを充電するために用いられる外部機器(例えば充電器など)などに接続される端子である。電源62の充放電は、正極端子71および負極端子72を介して行われる。
<4−2.電動車両>
図6は、電動車両の一例であるハイブリッド自動車のブロック構成を表している。この電動車両は、例えば、金属製の筐体73の内部に、制御部74と、エンジン75と、電源76と、駆動用のモータ77と、差動装置78と、発電機79と、トランスミッション80およびクラッチ81と、インバータ82,83と、各種センサ84とを備えている。この他、電動車両は、例えば、差動装置78およびトランスミッション80に接続された前輪用駆動軸85および前輪86と、後輪用駆動軸87および後輪88とを備えている。
この電動車両は、エンジン75またはモータ77のいずれか一方を駆動源として走行可能である。エンジン75は、主要な動力源であり、例えば、ガソリンエンジンなどである。エンジン75を動力源とする場合、エンジン75の駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。なお、エンジン75の回転力は発電機79にも伝達され、その回転力により発電機79が交流電力を発生させると共に、その交流電力はインバータ83を介して直流電力に変換され、電源76に蓄積される。一方、変換部であるモータ77を動力源とする場合、電源76から供給された電力(直流電力)がインバータ82を介して交流電力に変換され、その交流電力によりモータ77が駆動する。このモータ77により電力から変換された駆動力(回転力)は、例えば、駆動部である差動装置78、トランスミッション80およびクラッチ81を介して前輪86または後輪88に伝達される。
なお、図示しない制動機構を介して電動車両が減速すると、その減速時の抵抗力がモータ77に回転力として伝達され、その回転力によりモータ77が交流電力を発生させるようにしてもよい。この交流電力はインバータ82を介して直流電力に変換され、その直流回生電力は電源76に蓄積されることが好ましい。
制御部74は、電動車両全体の動作を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源76は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この電源76は、外部電源と接続され、その外部電源から電力供給を受けることで電力を蓄積可能になっていてもよい。各種センサ84は、例えば、エンジン75の回転数を制御したり、図示しないスロットルバルブの開度(スロットル開度)を制御するために用いられる。この各種センサ84は、例えば、速度センサ、加速度センサ、エンジン回転数センサなどを含んでいる。
なお、電動車両がハイブリッド自動車である場合について説明したが、その電動車両は、エンジン75を用いずに電源76およびモータ77だけを用いて作動する車両(電気自動車)でもよい。
<4−3.電力貯蔵システム>
図7は、電力貯蔵システムのブロック構成を表している。この電力貯蔵システムは、例えば、一般住宅または商業用ビルなどの家屋89の内部に、制御部90と、電源91と、スマートメータ92と、パワーハブ93とを備えている。
ここでは、電源91は、例えば、家屋89の内部に設置された電気機器94に接続されていると共に、家屋89の外部に停車された電動車両96に接続可能になっている。また、電源91は、例えば、家屋89に設置された自家発電機95にパワーハブ93を介して接続されていると共に、スマートメータ92およびパワーハブ93を介して外部の集中型電力系統97に接続可能になっている。
なお、電気機器94は、例えば、1または2以上の家電製品を含んでおり、その家電製品は、例えば、冷蔵庫、エアコン、テレビまたは給湯器などである。自家発電機95は、例えば、太陽光発電機または風力発電機などの1種類または2種類以上である。電動車両96は、例えば、電気自動車、電気バイクまたはハイブリッド自動車などの1種類または2種類以上である。集中型電力系統97は、例えば、火力発電所、原子力発電所、水力発電所または風力発電所などの1種類または2種類以上である。
制御部90は、電力貯蔵システム全体の動作(電源91の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源91は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。スマートメータ92は、例えば、電力需要側の家屋89に設置されるネットワーク対応型の電力計であり、電力供給側と通信可能になっている。これに伴い、スマートメータ92は、例えば、必要に応じて外部と通信しながら、家屋89における需要・供給のバランスを制御することで、効率的で安定したエネルギー供給を可能とする。
この電力貯蔵システムでは、例えば、外部電源である集中型電力系統97からスマートメータ92およびパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積されると共に、独立電源である自家発電機95からパワーハブ93を介して電源91に電力が蓄積される。この電源91に蓄積された電力は、制御部90の指示に応じて、必要に応じて電気機器94または電動車両96に供給されるため、その電気機器94が稼働可能になると共に、電動車両96が充電可能になる。すなわち、電力貯蔵システムは、電源91を用いて、家屋89内における電力の蓄積および供給を可能にするシステムである。
電源91に蓄積された電力は、任意に利用可能である。このため、例えば、電気使用量が安い深夜に集中型電力系統97から電源91に電力を蓄積しておき、その電源91に蓄積しておいた電力を電気使用量が高い日中に用いることができる。
なお、上記した電力貯蔵システムは、1戸(1世帯)ごとに設置されていてもよいし、複数戸(複数世帯)ごとに設置されていてもよい。
<4−4.電動工具>
図8は、電動工具のブロック構成を表している。この電動工具は、例えば、電動ドリルであり、プラスチック材料などにより形成された工具本体98の内部に、制御部99と、電源100とを備えている。この工具本体98には、例えば、可動部であるドリル部101が稼働(回転)可能に取り付けられている。
制御部99は、電動工具全体の動作(電源100の使用状態を含む)を制御するものであり、例えば、CPUなどを含んでいる。電源100は、1または2以上の二次電池(図示せず)を含んでいる。この制御物99は、図示しない動作スイッチの操作に応じて、必要に応じて電源100からドリル部101に電力を供給して可動させるようになっている。
本技術の具体的な実施例について、詳細に説明する。
(1)第1実施形態の実施例
まず、第1実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
(実験例1−1〜1−26)
以下の手順により、図1および図2に示した円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
正極21を作製する場合には、最初に、炭酸リチウム(Li2 CO3 )と炭酸コバルト(CoCO3 )とをモル比でLi2 CO3 :CoCO3 =0.5:1となるように混合した。続いて、空気中で混合物を焼成(900℃×5時間)して、リチウムコバルト複合酸化物(LiCoO2 )を得た。続いて、正極活物質(LiCoO2 )91質量部と、正極結着剤(ポリフッ化ビニリデン(PVDF))3質量部と、正極導電剤(黒鉛)6質量部とを混合して、正極合剤とした。続いて、正極合剤を有機溶剤(N−メチル−2−ピロリドン(NMP))に分散させて、ペースト状の正極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の正極集電体21A(20μm厚のアルミニウム箔)の両面に正極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、正極活物質層21Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて正極活物質層21Bを圧縮成型した。
負極22を作製する場合には、最初に、負極活物質(人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤(PVDF)10質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、負極合剤を有機溶剤(NMP)に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の負極集電体22A(15μm厚の電解銅箔)の両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、負極活物質層22Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
電解液を調製する場合には、溶媒(炭酸エチレン(EC)および炭酸ジメチル(DMC))に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、表1に示したように、必要に応じてシアノ化合物を加えた。この場合には、溶媒の組成を重量比でEC:DMC=50:50、電解質塩の含有量を溶媒に対して1mol/kgとした。なお、比較のために、式(18−1)または式(18−2)に示した他のシアノ化合物も用いた。
二次電池を組み立てる場合には、最初に、正極集電体21Aにアルミニウム製の正極リード25を溶接すると共に、負極集電体22Aにニッケル製の負極リード26を溶接した。続いて、セパレータ23(25μm厚の微多孔性ポリプロピレンフィルム)を介して正極21と負極22とを積層してから巻回させたのち、粘着テープを用いて巻回物の巻き終わり部分を固定して、巻回電極体20を作製した。続いて、巻回電極体20の巻回中心の空洞にセンターピン24を挿入した。続いて、ニッケル鍍金された鉄製の電池缶11の内部に、一対の絶縁板12,13で挟みながら巻回電極体20を収納した。この場合には、正極リード25の一端部を安全弁機構15に溶接すると共に、負極リード26の一端部を電池缶11に溶接した。続いて、減圧方式により電池缶11の内部に電解液を注入してセパレータ23に含浸させた。最後に、ガスケット17を介して電池缶11の開口端部に電池蓋14、安全弁機構15および熱感抵抗素子16をかしめた。これにより、円筒型の二次電池が完成した。なお、二次電池を作製する場合には、満充電時にリチウム金属が負極22に析出しないように正極活物質層21Bの厚さを調節した。
二次電池の諸特性(サイクル特性および保存特性)を調べたところ、表1に示した結果が得られた。
サイクル特性を調べる場合には、電池状態を安定化させるために常温環境中(23℃)で二次電池を1サイクル充放電させたのち、同環境中で二次電池をさらに1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、同環境中でサイクル数の合計が300サイクルになるまで充放電を繰り返して放電容量を測定した。この結果から、サイクル維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充電時には、0.2Cの電流で上限電圧4.2Vまで充電したのち、4.2Vの電圧で電流が0.05Cに到達するまで充電した。放電時には、0.2Cの電流で終止電圧2.5Vに到達するまで放電した。「0.2C」および「0.05C」とは、それぞれ電池容量(理論容量)を5時間および20時間で放電しきる電流値である。
保存特性を調べる場合には、サイクル特性を調べた場合と同様の手順により電池状態を安定化した二次電池を用いて、常温環境中(23℃)で二次電池を1サイクル充放電させて放電容量を測定した。続いて、二次電池を再び充電させた状態で恒温槽中(80℃)に10日間保存したのち、常温環境中(23℃)で二次電池を放電させて放電容量を測定した。この結果から、保存維持率(%)=(保存後の放電容量/保存前の放電容量)×100を算出した。充放電条件は、サイクル特性を調べた場合と同様である。
負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた場合には、電解液中におけるシアノ化合物の有無に応じて、電池特性が大きく変動した。
詳細には、シアノ化合物および他のシアノ化合物を用いていない場合(実験例1−24)を基準とする。他のシアノ化合物を用いた場合(実験例1−25,1−26)には、サイクル維持率および保存維持率がいずれも減少した。これに対して、シアノ化合物を用いた場合(実験例1−1〜1−23)には、保存維持率が維持されつつサイクル維持率が増加した。
この結果は、式(1)に示した炭酸エステル型シアノ化合物を用いる場合には、R1(シアノ基含有基以外の基)の種類に応じて、R2(シアノ基含有基)におけるシアノ基の数が適正化されていると、電解液の分解反応が特異的に抑制されることを表している。
すなわち、R1が不飽和炭素結合を含んでいない飽和炭化水素基(−CH3 )であると共に、R2が不飽和炭素結合を含んでいないシアノ基含有基(−CH2 −CN)である場合には、そのR2におけるシアノ基の数に応じて電池特性が変化する。この場合には、シアノ基の数が1つであると、電解液の分解反応が抑制されないため、サイクル維持率および保存維持率がかえって減少する。これに対して、シアノ基の数が2つ以上(ここでは2つ)であると、電解液の分解反応が特異的に抑制されるため、保存維持率の低下を抑えつつ、サイクル維持率が増加する。
また、R2だけがシアノ基含有基を含んでいると共に、R1またはR2が不飽和炭素結合を含んでいる場合には、そのR2におけるシアノ基の数が1つでも電解液の分解反応が特異的に抑制されるため、やはりサイクル維持率が増加する。
なお、炭酸エステル型シアノ化合物について上記した傾向は、式(2)に示したエステル型シアノ化合物を用いた場合でも同様に得られた。
特に、シアノ化合物を用いた場合には、電解液中におけるシアノ化合物の含有量が0.01重量%〜20重量%であると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
(実験例2−1〜2−23)
表2に示したように、電解液に非シアノ化合物を加えたことを除き、実験例1−1〜1−24と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
電解液がシアノ化合物と共に非シアノ化合物を含んでいても、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、電解液がシアノ化合物を含んでいる場合には、さらに非シアノ化合物を含んでいると、保存維持率がより増加した。この場合には、電解液中における非シアノ化合物の含有量が0.001重量%〜2重量%であると、高い保存維持率が得られた。
(実験例3−1〜3−24)
表3に示したように、溶媒の組成を変更したことを除き、実験例1−1〜1−24と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
溶媒の種類は、以下の通りである。ECと組み合わせた溶媒は、炭酸ジエチル(DEC)、炭酸エチルメチル(EMC)または炭酸プロピル(PC)である。不飽和環状炭酸エステルは、炭酸ビニレン(VC)である。ハロゲン化炭酸エステルは、4−フルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(FEC)、トランス−4,5−ジフルオロ−1,3−ジオキソラン−2−オン(t−DFEC)、または炭酸ビス(フルオロメチル)(DFDMC)である。スルトンは、プロペンスルトン(PRS)である。酸無水物は、無水コハク酸(SCAH)または無水スルホプロピオン酸(PSAH)である。
溶媒の組成は、重量比でEC:PC:DMC=10:20:70とした。また、溶媒中の含有量は、VCを2重量%、FEC、t−DFECまたはDFDMCを5重量%、PRS、SCAHまたはPSAHを1重量%とした。
溶媒の組成を変更しても、電解液がシアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、溶媒の組成によっては、サイクル維持率および保存維持率がより増加した。
(実験例4−1〜4−6)
表4に示したように、電解質塩の組成を変更したことを除き、実験例1−1〜1−23と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
電解質塩の種類は、四フッ化ホウ酸リチウム(LiBF4 )、式(13−6)に示したビス[オキソラト−O,O’]ホウ酸リチウム(LiBOB)、またはビス(トリフルオロメタンスルホニル)イミドリチウム(LiN(CF3 SO2 )2 :LiTFSI)である。溶媒に対する含有量は、LiPF6 を0.9mol/kg、LiBF4 などを0.1mol/kgとした。
電解質塩の組成を変更しても、電解液がシアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。特に、電解液がLiBF4 などを含んでいると、保存維持率がより増加した。
(実験例5−1〜5−26,6−1〜6−23,7−1〜7−24,8−1〜8−6)
表5〜表8に示したように、負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いたことを除き、実験例1−1〜1−26、2−1〜2−23,3−1〜3−24,4−1〜4−6と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
負極22を作製する場合には、電子ビーム蒸着法を用いて負極集電体22Aの両面にケイ素を堆積させて、負極活物質層22Bを形成した。この場合には、堆積工程を10回繰り返して、負極集電体22Aの片面側における負極活物質層22Bの厚さを6μmとした。
負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いても、非金属系材料(炭素材料である人造黒鉛)を用いた場合(表1〜表4)と同様の結果が得られた。すなわち、電解液がシアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。これ以外の傾向は、非金属系材料を用いた場合と同様である。
表1〜表8の結果から、電解液がシアノ化合物を含んでいると、優れた電池特性が得られた。
(2)第2実施形態の実施例
次に、第2実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
(実験例9−1〜9−30)
以下の手順を変更したことを除き、第1実施形態の実施例と同様の手順により円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
負極22を作製する場合には、負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いた。
比較のために、負極活物質として非金属系材料(炭素材料である人造黒鉛)を用いて負極活物質層22Bを形成した。この場合には、負極活物質(人造黒鉛)90質量部と、負極結着剤(PVDF)10質量部とを混合して、負極合剤とした。続いて、負極合剤を有機溶剤(NMP)に分散させて、ペースト状の負極合剤スラリーとした。続いて、コーティング装置を用いて帯状の負極集電体22Aの両面に負極合剤スラリーを均一に塗布してから乾燥させて、負極活物質層22Bを形成した。最後に、ロールプレス機を用いて負極活物質層22Bを圧縮成型した。
電解液を調製する場合には、溶媒(ECおよびDMC)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、表9および表10に示したように、必要に応じてシアノ化合物を加えた。
第1実施形態の実施例と同様の手順により二次電池の諸特性(サイクル特性および保存特性)を調べたところ、表9および表10に示した結果が得られた。
負極活物質として非金属系材料(人造黒鉛)を用いた場合には、電解液中におけるシアノ化合物の有無にかかわらず、良好な電池特性が得られた。具体的には、電解液がシアノ化合物を含んでいると、そのシアノ化合物を含んでいない場合と比較して、サイクル維持率は減少したが、保存維持率は同等であった。
これに対して、金属系材料(ケイ素)を用いた場合には、電解液中におけるシアノ化合物の有無に応じて、電池特性が大きく変動した。具体的には、電解液がシアノ化合物を含んでいると、そのシアノ化合物を含んでいない場合と比較して、サイクル維持率および保存維持率がいずれも増加した。
これらの結果は、以下の傾向を表している。負極活物質として低反応性の非金属系材料(炭素材料)を用いた場合には、その非金属系材料が電解液の化学的安定性(または分解反応の進行性)に影響を与えにくい。これにより、シアノ化合物の有無の影響をほとんど受けずに本来的に高いサイクル維持率および保存維持率が得られるため、そのシアノ化合物を用いてもサイクル維持率および保存維持率が改善されにくい。これに対して、高反応性の金属系材料を用いた場合には、その金属系材料が電解液の化学的安定性に大きな影響を及ぼす。これにより、シアノ化合物を用いないと低いサイクル維持率および保存維持率しか得られないのに対して、シアノ化合物を用いるとサイクル維持率および保存維持率が大幅に改善される。
特に、金属系材料およびシアノ化合物を用いた場合には、電解液中におけるシアノ化合物の含有量が0.01重量%〜20重量%であると、高いサイクル維持率および保存維持率が得られた。
(実験例10−1〜10−26)
表11に示したように、第1実施形態の実施例と同様に溶媒の組成を変更したことを除き、実験例9−1〜9−27と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
溶媒の組成を変更しても、電解液がシアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および高い保存維持率が得られた。特に、溶媒の組成によってはサイクル維持率および保存維持率がより増加した。
(実験例11−1〜11−6)
表12に示したように、第1実施形態の実施例と同様に電解質塩の組成を変更したことを除き、実験例9−1〜9−26と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
電解質塩の組成を変更しても、電解液がシアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および高い保存維持率が得られた。特に、電解液がLiBF4 などを含んでいると、保存維持率がより増加した。
表9〜表12の結果から、負極が金属系材料を含んでいると共に電解液がシアノ化合物を含んでいると、優れた電池特性が得られた。
(3)第3実施形態の実施例
次に、第3実施形態の二次電池の諸特性を調べた。
(実験例12−1〜12−50)
以下の手順を変更したことを除き、第1実施形態の実施例と同様の手順により円筒型のリチウムイオン二次電池を作製した。
電解液を調製する場合には、溶媒(ECおよびDMC)に電解質塩(LiPF6 )を溶解させたのち、表13〜表15に示したように、必要に応じてシアノ化合物および非シアノ化合物を加えた。
二次電池の諸特性(サイクル特性および負荷特性)を調べたところ、表13〜表15に示した結果が得られた。
サイクル特性を調べる場合には、高温環境中(45℃)で二次電池を2サイクル充放電させて、2サイクル目の放電容量を測定した。続いて、同環境中でサイクル数の合計が300サイクルになるまで充放電を繰り返して、300サイクル目の放電容量を測定した。この結果から、容量維持率(%)=(300サイクル目の放電容量/2サイクル目の放電容量)×100を算出した。充放電条件は、第1実施形態の実施例と同様である。
負荷特性を調べる場合には、常温環境中(23℃)で二次電池を充電させたのち、その充電状態の二次電池を恒温器中(0℃)で2時間冷却した。充電時には、0.5Cの電流で上限電圧4.2Vまで充電したのち、4.2Vの電圧で4時間充電した。「0.5C」とは、電池容量を2時間で放電しきる電流値である。続いて、15Wの電力で終止電圧3.0Vに到達するまで放電した。この際、放電開始時から放電開始後5分経過時までの電圧を測定して、その最小値(最小電圧(V))を求めた。
負極活物質として炭素材料(人造黒鉛)を用いた場合には、電解液がシアノ化合物および非シアノ化合物を一緒に含んでいると、高い容量維持率が得られると共に、最小電圧が上昇した。
詳細には、シアノ化合物も非シアノ化合物も用いていない場合(実験例12−43)を基準とする。シアノ化合物だけを用いた場合(実験例12−44,12−45)には、最小電圧は同等であったが、容量維持率は減少した。一方、非シアノ化合物だけを用いた場合(実験例12−46〜12−50)には、容量維持率が増加すると共に、最小電圧も非シアノ化合物の種類によっては僅かに増加した。これらの結果から、シアノ化合物と非シアノ化合物とを組み合わせると、容量維持率は増加するが、その値は非シアノ化合物だけを用いた場合よりも低くなると共に、最小電圧は非シアノ化合物の種類によって僅かに増加するにすぎないと予想される。
しかしながら、シアノ化合物と非シアノ化合物とを組み合わせると(実験例12−1〜12−42)、容量維持率は著しく増加し、その値は非シアノ化合物だけを用いた場合を遙かに上回った。また、最小電圧も増加し、その値は非シアノ化合物だけを用いた場合よりも高くなった。この結果は、シアノ化合物と非シアノ化合物とを組み合わせると、両者の相乗作用により、電解液の分解反応が特異的に抑制されることを表している。すなわち、シアノ化合物および非シアノ化合物のそれぞれの有無が容量維持率および最小電圧に及ぼす影響を実際に調べてみると、双方を組み合わせることで、いずれか一方だけを単独で用いた場合に得られる傾向からは予測できない有利な傾向を見出すことができた。
特に、シアノ化合物の含有量が0.01重量%〜20重量%であり、または非シアノ化合物の含有量が0.001重量%〜2重量%であると、高い容量維持率および最小電圧が得られた。この場合には、シアノ化合物の含有量が0.5重量%〜20重量であり、または非シアノ化合物の含有量が0.1重量%〜2重量%であると、より良好な結果が得られた。
(実験例13−1〜13−24)
表16に示したように、第1実施形態の実施例と同様に溶媒の組成を変更したことを除き、実験例12−1〜12−50と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
溶媒の組成を変更しても、電解液がシアノ化合物および非シアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および最小電圧が得られた。特に、溶媒の組成によっては、サイクル維持率および最小電圧がより増加した。
(実験例14−1〜14−6)
表17に示したように、第1実施形態の実施例と同様に電解質塩の組成を変更したことを除き、実験例12−1〜12−50と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。
電解質塩の組成を変更しても、電解液がシアノ化合物および非シアノ化合物を含んでいると、高いサイクル維持率および最小電圧が得られた。特に、電解液がLiBF4 などを含んでいると、サイクル維持率および最小電圧がより高くなった。
(実験例15−1〜15−50,16−1〜16−24,17−1〜17−6)
表18〜表20に示したように、負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いたことを除き、実験例12−1〜12−50、13−1〜13−24,14−1〜14−6と同様の手順により二次電池を作製して諸特性を調べた。負極22の作製手順は、第1実施形態の実施例と同様である。
負極活物質として金属系材料(ケイ素)を用いても、非金属系材料(炭素材料である人造黒鉛)を用いた場合(表13〜表17)と同様の結果が得られた。すなわち、電解液がシアノ化合物と非シアノ化合物とを一緒に含んでいると、高いサイクル維持率および最小電圧が得られた。これ以外の傾向は、非金属系材料を用いた場合と同様である。
表13〜表22の結果から、電解液がシアノ化合物および非シアノ化合物の双方を含んでいると、優れた電池特性が得られた。
以上、実施形態および実施例を挙げて本技術を説明したが、本技術は実施形態および実施例で説明した態様に限定されず、種々の変形が可能である。例えば、電池構造が円筒型またはラミネートフィルム型であると共に、電池素子が巻回構造を有する場合を例に挙げたが、これに限られない。本技術の非水二次電池は、角型、コイン型またはボタン型などの他の電池構造を有する場合や、電池素子が積層構造などの他の構造を有する場合についても、同様に適用可能である。
また、電極反応物質としてLiを用いる場合について説明したが、これに限られない。この電極反応物質は、例えば、NaまたはKなどの他の1族元素でもよいし、MgまたはCaなどの2族元素でもよいし、Alなどの他の軽金属でもよい。本技術の効果は、電極反応物質の種類に依存せずに得られるはずであるため、その電極反応物質の種類を変更しても同様の効果を得ることができる。
また、シアノ化合物の含有量について、実施例の結果から導き出された適正範囲を説明している。しかしながら、その説明は、含有量が上記した範囲外となる可能性を完全に否定するものではない。すなわち、上記した適正範囲は、あくまで本技術の効果を得る上で特に好ましい範囲であるため、本技術の効果が得られるのであれば、上記した範囲から含有量が多少外れてもよい。このことは、非シアノ化合物の含有量についても同様である。
なお、本技術は以下のような構成を取ることも可能である。
1.第1実施形態/非水二次電池用電解液および非水二次電池(シアノ化合物:シアノ基の数に制限あり)
(1)
正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、シアノ化合物を含み、
前記シアノ化合物は、下記の式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む、
非水二次電池。
(R1およびR2は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R1およびR2のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。シアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子(O)に対して、1または2以上の炭素原子(C)を介して結合されている。ただし、(A)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基を含まないが不飽和炭素結合を含むと共に、他方がシアノ基含有基を含む場合、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。(B)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含まないと共に、他方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含む場合、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。(C)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含まないと共に、他方がシアノ基含有基を含むが不飽和炭素結合を含まない場合、その他方におけるシアノ基の数は2以上である。)
(R3は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R4は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。シアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。ただし、(D)R3が不飽和炭素結合を含む場合、R4におけるシアノ基の数は1以上である。(E)R3が不飽和炭素結合を含まないと共に、R4が不飽和炭素結合を含む場合、そのR4におけるシアノ基の数は1以上である。(F)R3が不飽和炭素結合を含まないと共に、R4が不飽和炭素結合を含まない場合、そのR4におけるシアノ基の数は2以上である。)
(2)
前記シアノ基含有基は、飽和炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がシアノ基により置換された基、または不飽和炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がシアノ基により置換された基である、
上記(1)に記載の非水二次電池。
(3)
前記飽和炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基であり、
前記不飽和炭化水素基は、炭素数=6〜18のアリール基である、
上記(2)に記載の非水二次電池。
(4)
前記飽和炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基または炭素数=3〜18のシクロアルキル基であり、
前記不飽和炭化水素基は、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基または炭素数=6〜18のアリール基であり、
前記酸素含有飽和炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基であり
前記ハロゲン化基は、ハロゲン基として、フッ素基、塩素基、臭素基およびヨウ素基のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の非水二次電池。
(5)
前記式(1)に示した化合物は、下記の式(1−1)〜式(1−25)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(2)に示した化合物は、下記の式(2−1)〜式(2−21)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の非水二次電池。
(6)
前記電解液中における前記シアノ化合物の含有量は、0.01重量%〜20重量%である、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の非水二次電池。
(7)
前記電解液は、非シアノ化合物を含み、
前記非シアノ化合物は、下記の式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物、式(6)で表される化合物および式(7)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の非水二次電池。
(R11およびR13は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R12は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
(R14およびR16は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R15は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。nは、1以上の整数である。)
(R17およびR19は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R18は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
LiPF
2 O
2 …(6)
Li
2 PFO
3 …(7)
(8)
前記1価の炭化水素基または1価の酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、炭素数=3〜18のシクロアルキル基、または炭素数=1〜12のアルコキシ基であり、
前記2価の炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、炭素数=3〜18のシクロアルキレン基、それらの2種類以上が結合された基、またはそれらの1種類以上とエーテル結合(−O−)とを含む基であり、
前記ハロゲン化基は、ハロゲン基として、フッ素基、塩素基、臭素基およびヨウ素基のうちの少なくとも1種を含む、
上記(7)に記載の非水二次電池。
(9)
前記式(3)に示した化合物は、下記の式(3−1)〜式(
3−12)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(4)に示した化合物は、下記の式(4−1)〜式(4−17)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(5)に示した化合物は、下記の式(5−1)〜式(5−9)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、
上記(7)または(8)に記載の非水二次電池。
(10)
前記電解液中における前記非シアノ化合物の含有量は、0.001重量%〜2重量%である、
上記(7)ないし(9)のいずれかに記載の非水二次電池。
(11)
リチウム二次電池である、
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の非水二次電池。
(12)
シアノ化合物を含み、
前記シアノ化合物は、下記の式(1)で表される化合物および式(2)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む、
非水二次電池用電解液。
(R1およびR2は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R1およびR2のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。シアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子(O)に対して、1または2以上の炭素原子(C)を介して結合されている。ただし、(A)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基を含まないが不飽和炭素結合を含むと共に、他方がシアノ基含有基を含む場合、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。(B)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含まないと共に、他方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含む場合、その他方におけるシアノ基の数は1以上である。(C)R1またはR2のいずれか一方がシアノ基含有基および不飽和炭素結合を含まないと共に、他方がシアノ基含有基を含むが不飽和炭素結合を含まない場合、その他方におけるシアノ基の数は2以上である。)
(R3は、飽和炭化水素基、不飽和炭化水素基、酸素含有飽和炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R4は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。シアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。ただし、(D)R3が不飽和炭素結合を含む場合、R4におけるシアノ基の数は1以上である。(E)R3が不飽和炭素結合を含まないと共に、R4が不飽和炭素結合を含む場合、そのR4におけるシアノ基の数は1以上である。(F)R3が不飽和炭素結合を含まないと共に、R4が不飽和炭素結合を含まない場合、そのR4におけるシアノ基の数は2以上である。)
(13)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記非水二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(14)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記非水二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(15)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記非水二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(16)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(17)
上記(1)ないし(11)のいずれかに記載の非水二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。
2.第2実施形態/非水二次電池(シアノ化合物:シアノ基の数に制限なし+金属系材料)
(1)
正極および負極と共に電解液を備え、
前記負極は、金属系材料を含み、
前記金属系材料は、ケイ素(Si)およびスズ(Sn)のうちの少なくとも一方を構成元素として含み、
前記電解液は、シアノ化合物を含み、
前記シアノ化合物は、下記の式(19)で表される化合物および式(20)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含む、
非水二次電池。
(R5およびR6は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R5およびR6のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。R5およびR6のうちの少なくとも一方のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子(O)に対して、1または2以上の炭素原子(C)を介して結合されている。)
(R7は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R8は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。R8のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。)
(2)
前記シアノ基含有基は、炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がシアノ基により置換された基である、
上記(1)に記載の非水二次電池。
(3)
前記炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基または炭素数=6〜18のアリール基である、
上記(2)に記載の非水二次電池。
(4)
前記炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、または炭素数=3〜18のシクロアルキル基であり、
前記酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基であり、
前記ハロゲン化基は、ハロゲン基として、フッ素基、塩素基、臭素基およびヨウ素基のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の非水二次電池。
(5)
前記式(19)に示した化合物は、下記の式(19−1)〜式(19−31)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(20)に示した化合物は、下記の式(20−1)〜式(20−28)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の非水二次電池。
(6)
前記電解液中における前記シアノ化合物の含有量は、0.01重量%〜20重量%である、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の非水二次電池。
(7)
前記金属系材料は、Siの単体、合金および化合物、ならびにSnの単体、合金および化合物のうちの少なくとも1種である、
上記(1)ないし(6)のいずれか1項に記載の非水二次電池。
(8)
リチウムイオン二次電池である、
上記(1)ないし(7)のいずれか1項に記載の非水二次電池。
(9)
上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の非水二次電池と、
その非水二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記非水二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(10)
上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記非水二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(11)
上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記非水二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(12)
上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(13)
上記(1)ないし(8)のいずれか1項に記載の非水二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。
3.第3実施形態/非水二次電池用電解液および非水二次電池(シアノ化合物:シアノ基の数に制限なし+分解物)
(1)
正極および負極と共に電解液を備え、
前記電解液は、シアノ化合物および非シアノ化合物を含み、
前記シアノ化合物は、下記の式(19)で表される化合物および式(20)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含み、
前記非シアノ化合物は、下記の式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物、式(6)で表される化合物および式(7)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
非水二次電池。
(R5およびR6は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R5およびR6のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。R5およびR6のうちの少なくとも一方のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子(O)に対して、1または2以上の炭素原子(C)を介して結合されている。)
(R7は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R8は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。R8のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。)
(R11およびR13は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R12は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
(R14およびR16は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R15は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。nは、1以上の整数である。)
(R17およびR19は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R18は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
LiPF
2 O
2 …(6)
Li
2 PFO
3 …(7)
(2)
前記シアノ基含有基は、炭化水素基のうちの少なくとも一部の水素基がシアノ基により置換された基である、
上記(1)に記載の非水二次電池。
(3)
前記炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基または炭素数=6〜18のアリール基である、
上記(2)に記載の非水二次電池。
(4)
前記式(19)および式(20)において、
前記炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、または炭素数=3〜18のシクロアルキル基であり、
前記酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基であり、
前記ハロゲン化基は、ハロゲン基として、フッ素基、塩素基、臭素基およびヨウ素基のうちの少なくとも1種を含む、
上記(1)ないし(3)のいずれかに記載の非水二次電池。
(5)
前記式(3)〜式(5)において、
前記1価の炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキル基、炭素数=2〜12のアルケニル基、炭素数=2〜12のアルキニル基、炭素数=6〜18のアリール基、または炭素数=3〜18のシクロアルキル基であり、
前記1価の酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルコキシ基であり、
前記2価の炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、または炭素数=3〜18のシクロアルキレン基であり、
前記2価の酸素含有炭化水素基は、炭素数=1〜12のアルキレン基、炭素数=2〜12のアルケニレン基、炭素数=2〜12のアルキニレン基、炭素数=6〜18のアリーレン基、または炭素数=3〜18のシクロアルキレン基のうちの1種類以上と1または2以上のエーテル結合(−O−)とを含む基である、
上記(1)ないし(4)のいずれかに記載の非水二次電池。
(6)
前記式(19)に示した化合物は、下記の式(19−1)〜式(19−31)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(20)に示した化合物は、下記の式(20−1)〜式(20−28)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、
上記(1)ないし(5)のいずれかに記載の非水二次電池。
(7)
前記式(3)に示した化合物は、下記の式(3−1)〜式(3−12)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(4)に示した化合物は、下記の式(4−1)〜式(4−17)で表される化合物のうちの少なくとも1種であり、
前記式(5)に示した化合物は、下記の式(5−1)〜式(5−9)で表される化合物のうちの少なくとも1種である、
上記(1)ないし(6)のいずれかに記載の非水二次電池。
(8)
前記電解液中における前記シアノ化合物の含有量は、0.01重量%〜20重量%である、
上記(1)ないし(7)のいずれかに記載の非水二次電池。
(9)
前記電解液中における前記非シアノ化合物の含有量は、0.001重量%〜2重量%である、
上記(1)ないし(8)のいずれかに記載の非水二次電池。
(10)
リチウム二次電池である、
上記(1)ないし(9)のいずれかに記載の非水二次電池。
(11)
シアノ化合物および非シアノ化合物を含み、
前記シアノ化合物は、下記の式(19)で表される化合物および式(20)で表される化合物のうちの少なくとも一方を含み、
前記非シアノ化合物は、下記の式(3)で表される化合物、式(4)で表される化合物、式(5)で表される化合物、式(6)で表される化合物および式(7)で表される化合物のうちの少なくとも1種を含む、
非水二次電池用電解液。
(R5およびR6は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R5およびR6のうちの少なくとも一方は、シアノ基含有基を含む。R5およびR6のうちの少なくとも一方のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−O−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子(O)に対して、1または2以上の炭素原子(C)を介して結合されている。)
(R7は、炭化水素基、酸素含有炭化水素基、シアノ基含有基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R8は、シアノ基含有基、そのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基である。R8のシアノ基含有基におけるシアノ基は、−C(=O)−O−結合における末端の酸素原子に対して、1または2以上の炭素原子を介して結合されている。)
(R11およびR13は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R12は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
(R14およびR16は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R15は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。nは、1以上の整数である。)
(R17およびR19は、1価の炭化水素基、1価の酸素含有炭化水素基、それらのハロゲン化基、またはそれらの2種類以上が結合された基であり、R18は、2価の炭化水素基またはそのハロゲン化基である。)
LiPF
2 O
2 …(6)
Li
2 PFO
3 …(7)
(12)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池の使用状態を制御する制御部と、
その制御部の指示に応じて前記非水二次電池の使用状態を切り換えるスイッチ部と
を備えた、電池パック。
(13)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から供給された電力を駆動力に変換する変換部と、
その駆動力に応じて駆動する駆動部と、
前記非水二次電池の使用状態を制御する制御部と
を備えた、電動車両。
(14)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から電力を供給される1または2以上の電気機器と、
前記非水二次電池からの前記電気機器に対する電力供給を制御する制御部と
を備えた、電力貯蔵システム。
(15)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の非水二次電池と、
その非水二次電池から電力を供給される可動部と
を備えた、電動工具。
(16)
上記(1)ないし(10)のいずれかに記載の非水二次電池を電力供給源として備えた、電子機器。