JP2015083659A - ポリアリーレンスルフィドフィルム、それを用いた複合体 - Google Patents

ポリアリーレンスルフィドフィルム、それを用いた複合体 Download PDF

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Abstract

【課題】本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、金属および/または樹脂成形体との接着性、加工性、フィルムとしての品位に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供すること。【解決手段】融点が265℃以下であるポリアリーレンスルフィドと樹脂(A)と、融点が100〜175℃の熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)からなる、ポリアリーレンスルフィドフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、金属および/または樹脂成形体との接着性、加工性、フィルムとしての品位に優れたポリアリーレンスルフィドフィルム関する。
ポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドは、その電気絶縁性や低吸湿性の高さを活かし、電気絶縁材料への適用が進められている。しかしながら、ポリアリーレンスルフィドフィルムは、一般に金属や他樹脂との接着性、密着性が低く、また、接着剤との反応性が乏しいという欠点を有している。
これらを改善したものとして、例えば、ポリアリーレンスルフィドと融点が100℃以下の樹脂とをブレンドすることでヒートシールによる接着性を改善する技術が開示されている(特許文献1〜3)が、上記原料を製膜に用いた場合は、ポリアリーレンスルフィドの高い押出し温度・長時間の滞留により樹脂の劣化が進み、フィルムとした際に製膜安定性や異物が増加するためフィルムの品位が低下するといった問題があった。
また、パラアリーレンスルフィド単位にメタアリーレンスルフィド単位を共重合により低融点化し低温加工性を付与する技術が開示されているが(特許文献4)、金属および/または樹脂成形体とのヒートシールによる接着性は十分ではなかった。
特開2013−18800号公報 特開2000−309706号公報 特開平02−107666号公報 特開2004−59708号公報
本発明の課題は、上記した問題点を解決することにある。すなわち、異物による欠点が少なくフィルムとしての品位に優れるとともに、金属および樹脂成形体との接着性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することにある。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、融点が265℃以下であるポリアリーレンスルフィドと樹脂(A)と、融点が100〜175℃の熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)からなる、ポリアリーレンスルフィドフィルムである。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムとしての品位および金属および樹脂成形体との接着性に優れることから、自動車用、電気・電子材料の各種部品の金属および樹脂成形体とのヒートシール材として好適に用いることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムはポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)からなる樹脂組成物から構成される。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)とは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するコポリマーである。Arとしては下記の式(1)〜式(11)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2015083659
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の繰り返し単位としては、上記の式(1)で表されるp−アリーレンスルフィド単位が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいp−アリーレンスルフィド単位としては、フィルム物性と経済性の観点から、p−フェニレンスルフィド単位が好ましく例示される。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)は、主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を全繰り返し単位の75モル%以上95モル%以下で構成されていることが好ましい。より好ましくは、85モル%以上、92モル%以下である。かかる主成分が75モル%未満では、耐熱性、耐薬品性が低下する場合があり、95モル%を超えると後述する共重合単位の含有量が少なくなり、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点を十分低下することができず、金属および/または樹脂成形体との低温での加工性が低下する場合がある。
Figure 2015083659
また、繰り返し単位の5モル%以上25モル%以下、好ましくは8モル%以上20モル%以下の範囲で共重合単位と共重合することにより、後述する範囲の融点を有するポリアリーレンスルフィド樹脂(A)を得ることが可能となる。かかる共重合単位が5モル%未満では、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点を後述する範囲とすることができず、低温加工での接着性が低下する場合がある。また、共重合単位が25モル%を超えると、耐熱性が低下する場合がある。
好ましい共重合単位は、
Figure 2015083659
Figure 2015083659
Figure 2015083659
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2015083659
Figure 2015083659
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、特に好ましい共重合単位は、m−フェニレンスルフィド単位である。
共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点は265℃以下である。ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を上記の範囲とすることで、金属や樹脂との低温での加工性および接着性を発現することができる。また、後述する熱可塑性樹脂からなる可塑剤との溶融混練によるブレンドを良好にすること、製膜時の加工温度を低下できることから、可塑剤の劣化を抑制することで異物を低減でき、フィルムとしての品位を向上することができる。融点が265℃より高いと金属および樹脂との接着や可塑剤との溶融混練・製膜加工温度が高くなり、フィルム原料に含まれる可塑剤(B)の劣化を促進し機械強度が低下する場合や異物が増加する場合がある。また220℃より低いと、ポリアリーレンスルフィド樹脂としての耐熱性が低下する場合がある。ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点は前述する組成を用いることで制御できる。ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点はより好ましくは200℃以上260℃以下であり、さらに好ましくは220℃以上260℃以下である。ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点は、後述する手法を用いて測定できる。
本発明において、熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)とは、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と溶融混合されることで、ポリアリーレンスルフィド樹脂の柔軟性や溶融時の流動性を向上させることができる物質を指す。
本発明に用いる熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)の融点は100〜175℃である。融点が上記の範囲にあることでポリアリーレンスルフィドとブレンドした際にした際に製膜時の滞留による異物の発生を抑制しフィルムとしての品位を保てると共に、優れた接着性と耐熱性を発現することができる。可塑剤(B)の融点が100℃より低いとポリアリーレンスルフィドフィルムを製膜する際の熱安定性が低く、異物の混入頻度が高くなる場合や、可塑剤の劣化が進み機械特性や接着性が低下する場合がある。また、融点が175℃より高いと、ポリアリーレンスルフィドとブレンドした際の可塑化の効果が低くなり接着性が十分に発現しない場合がある。可塑剤の融点の範囲は110〜175℃であることがより好ましく、120〜170℃であることがさらに好ましい。可塑剤(B)の融点は、単体またはポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と溶融混合された状態の何れでも、後述する手法を用いて確認できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに用いる可塑剤(B)の例としては、上記範囲に融点を持つ熱可塑性樹脂(例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンなどのオレフィン系樹脂、アクリルニトリルスチレン、ABS、フッ素系樹脂、ポリカーボネートなど)やその共重合体、各種熱可塑性エラストマー(ポリエステル系、アクリル系、オレフィン系、スチレン系)があげられる。また、上記から1種類のみを用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いることもできる。上記の中でもオレフィン系樹脂およびオレフィン系熱可塑性エラストマーがPPSの流動性向上の観点から好ましく、さらにオレフィン系樹脂の共重合体が、接着性向上の観点から好ましい。
本発明において可塑剤(B)として好ましく用いられるオレフィン系樹脂の共重合体としては、オレフィン骨格としてプロピレン、エチレン、イソブチレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン等の炭素数2〜6のオレフィン類にアクリレート共重合体や不飽和カルボン酸骨格を導入した変性オレフィン樹脂が挙げられる。中でも不飽和カルボン酸骨格を導入した酸変性オレフィン樹脂は高い結着性を示す観点からより好ましい。不飽和カルボン酸骨格としては分子内に少なくとも1個のカルボキシル基または酸無水物基を有する化合物であり、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、無水マレイン酸、イタコン酸、無水イタコン酸、フマル酸、クロトン酸等のほか、不飽和ジカルボン酸のハーフエステル、ハーフアミド等が挙げられる。
本発明において可塑剤(B)の含有量は、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、1〜25質量部であることが好ましく、1〜12質量部であることがより好ましく、2〜8質量部であることがさらに好ましい。可塑剤(B)の含有量を上記の範囲とすることで、ポリアリーレンスルフィドとしての機械物性を損なうことなく、接着性を改善することができる。可塑剤(B)の含有量が1質量部未満では可塑剤(B)の添加による接着性改善効果が低い場合がある。含有量が25質量部より大きいと機械物性が低下する場合がある。可塑剤(B)の含有量は、赤外分光分析やGC−MSなどの有機分析により確認することができる。
本発明に用いるポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂組成物の溶融粘度は、融点+50℃、剪断速度200(1/sec)の条件で測定したときに、500〜3500ポイズの範囲であることが好ましく、より好ましくは1200〜3000ポイズで、さらに好ましくは1500〜3000ポイズ、より好ましくは1800〜2500ポイズの範囲である。上記の粘度とすることで、製膜安定性を確保することができ、金属や樹脂との接着の際の表面転写によりアンカー効果を向上させることで接着性を高めることができる。ポリアリーレンスルフィド樹脂の溶融粘度が500ポイズ未満であるとポリアリーレンスルフィド樹脂溶融時の粘度が低すぎ、口金から吐出した樹脂を安定してキャスティングできず、シートの厚み斑、幅変動を引き起こす場合や、分子鎖の絡み合いや分子間相互作用が小さく、機械強度が低下する場合がある。3500ポイズより大きいと、溶融樹脂の流動性を十分確保できず金属との接着性を十分高められない場合や、製膜工程の溶融押出で安定してTダイから吐出することが困難となる場合がある。樹脂組成物の粘度を上記の範囲にするには前述するポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)を後述する組成比にてブレンドすることで達成できる。溶融粘度は後述する手法にて評価できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの破断伸度は、40〜180%であることが好ましく、50〜180%がより好ましく、85〜180%がさらに好ましい。また、破断強度は50〜250MPaであることが好ましく、60〜200MPaがより好ましく、95〜200MPaがさらに好ましい。破断伸度および破断強度を上記範囲とすることで、フィルムを任意の形状に加工しやすくなり、成形性を向上させることができる。ポリアリーレンスルフィドフィルムの破断伸度および破断強度を上記の範囲にするには、前述した組成物を用いて後述する製膜条件にてフィルムとすることで達成できる。ポリアリーレンスルフィドフィルムの破断伸度および破断強度は後述する手法にて評価できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは未延伸フィルムまたは二軸延伸フィルムの何れでもよく、生産性の観点からは二軸延伸フィルムが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの厚みは特に制限はないが、製膜性の観点から5〜200μmが好ましく、25〜100μmがより好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムの樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲で他の成分を配合して使用することも可能である。かかる成分の具体例としては酸化珪素、酸化マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化チタン、酸化アルミニウム、架橋ポリエステル、架橋ポリスチレン、マイカ、タルクおよびカオリンなどの無機や有機化合物や熱分解防止剤、熱安定剤および酸化防止剤などが挙げられる。特に、可塑剤(B)の溶融混練・溶融押出時の熱履歴による酸化劣化を抑制する目的で、酸化防止剤を添加することが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに含まれる酸化防止剤の添加量は、樹脂組成物を安定して溶融押出するために、ポリアリーレンスルフィド樹脂組成物100質量%中、2.0質量%以下とすることが好ましく、より好ましくは0.001〜1.0質量%部、更に好ましくは0.001〜0.7質量%である。
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂組成物に用いることができる酸化防止剤としては
フェノール系酸化防止剤、リン系酸化防止剤、硫黄系酸化防止剤、ヒドロキシルアミン系酸化防止剤、ヒンダードアミン系安定剤、アクリレート系酸化防止剤、金属不活性化剤等があげられるが、中でもフェノール系および/またはリン系酸化化合物系からなる酸化防止剤を用いることがポリアリーレンスルフィドフィルムのフィルムとしての品位を向上させるために好ましい。フェノール系酸化防止剤の例としてはペンタエリスリトールテトラキス〔3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピネート〕、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、4,4’−メチレン−ビス(2,6−ジ−t−ブチル)フェノール、4,4’−ブチリデン−ビス(6−t−ブチル−3−メチル)フェノール、2,2−メチレン−ビス(6−t−ブチル−3−メチル)フェノール、2,2−メチレン−ビス(4−メチル−6−t−ブチル)フェノール、4,4’−チオビス(2−メチル−6−t−ブチル)フェノール、4,4’−チオビス(3−メチル−2−t−ブチル)フェノール、1,3,5−トリメチル−2,4,6−トリス(3,5−ジ−t−ブチル−4ヒドロキシベンジル)ベンゼン、3,5−t−ブチル−4−ヒドロキシ−α−ヒドロキシベンゼン、n−オクタデシル−3−(3,5−ジ−t−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネート、3,6−ビス{2−[3−(3−tert−ブチル−4−ヒドロキシ−5−メチルフェニル)プロピオニルオキシ]−1,1−ジメチルエチル}−2,4,8,10−テトラオキサスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。
また、リン系酸化防止剤の例としてはトリフェニルホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、トリス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ホスファイト、トリラウリルホスファイト、トリオクタデシルホスファイト、ジステアリルペンタエリスリトールジホスファイト、ジイソデシルペンタエリスリトールジホスファイト、ビス(2,4−ジ−t−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト、3,9−ビス(2,6−ジ−tert−ブチル−4−メチルフェノキシ)−2,4,8,10−テトラオキサ−3,9−ジホスファスピロ[5.5]ウンデカン等が挙げられる。酸化防止剤は上記の1種を単独で用いても、複数種を混合して使用してもかまわない。 酸化防止剤の含有の有無は、ポリアリーレンスルフィドフィルムを有機分析することで確認することができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、樹脂組成物にポリアリーレンスルフィド樹脂としてp−フェニレンスルフィドとm−フェニレンスルフィドを共重合させた共重合フェニレンスルフィド樹脂(以下共重合PPS樹脂と省略する場合がある)と可塑剤にオレフィン系樹脂の共重合体を用いた場合を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されるものではない。
硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよびm−ジクロロベンゼンを本発明でいう比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を含ませることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、200〜290℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマーを冷却し、ポリマーを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマーを得る。これを30〜100℃の高温水で洗浄した後、酢酸ナトリウムを添加し、2回以上、より好ましくは3回以上洗浄処理し、30〜80℃のイオン交換水にて洗浄、乾燥して共重合PPSの粒状ポリマーを得る。
ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)として上記で得られた共重合PPSの粒状ポリマーと、可塑剤(B)として酸変性オレフィン樹脂をドライブレンド(未溶融状態で混合)した後、ベント付き押出機に投入してストランド状に溶融押出し、温度25℃の水で冷却した後、カッティングしてチップを作製する。このチップを、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給し、フィルターに通過させた後、その溶融ポリマーをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。このシート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸フィルムを得る。
次いで、二軸延伸する場合は、上記で得られた未延伸フィルムを、共重合PPS樹脂のガラス転移点以上冷結晶化温度以下の範囲で、逐次二軸延伸機または同時二軸延伸機により二軸延伸した後、150〜250℃の範囲の温度で1段もしくは多段熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を例示する。未延伸フィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)に2.8〜3.6倍、より好ましくは3.0〜3.3倍、1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg(共重合PPSのガラス転移温度)〜(Tg+50)℃、好ましくは(Tg+5)〜(Tg+40)℃の範囲である。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。
MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg(共重合PPSのガラス転移温度)〜(Tg+40)℃が好ましく、より好ましくは(Tg+5)〜(Tg+30)℃の範囲である。金属との接着性向上の観点から2.8〜3.6倍、好ましくは3.0〜3.3倍が好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定する操作(熱固定処理)を行う。熱固定処理の温度は熱処理ゾーンの始終で同一温度で加熱処理を行うか、1段熱固定または熱処理ゾーンの前半と後半で異なる温度で加熱処理を行う多段熱固定の何れかで処理を行う。多段熱固定で熱処理を行う場合、1段目(前半)の熱固定温度は150℃〜190℃であり、好ましくは150℃〜180℃である。1段目熱固定温度を前記範囲とすることで、フィルムの平面性を保持したまま、面積倍率を低下することが可能となる。2段目(後半)の熱固定温度は200〜250℃であり、より好ましくは210〜250℃である。ここで、2段目熱固定温度が200℃未満の場合、フィルムの熱寸法安定性が悪化する場合があり、250℃を超えるとポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するPPS樹脂の融解温度に近づくため、製膜の際にフィルムの両端を固定するクリップに融着し、延伸装置からフィルムを採取することが困難となる場合がある。熱固定処理後は、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸配向フィルムを得る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属および樹脂とのヒートシール性に優れる。ヒートシールが可能な金属または樹脂の種類は特に限定されないが、金属としては銅、アルミ、SUSなどの板あるいは箔、鋼板、珪素鋼板、鉄板等、が挙げられるが、樹脂成形体に用いる樹脂としてはポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶樹脂などの押出成形品または射出成形品が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムと金属および/または樹脂成形体とをヒートシールする方法としては、熱融着(熱圧着)、レーザー溶着、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着 スピン溶着などが挙げられるが、方法は特に限定されない。本発明のポリアリーレンスルフィドシートは、上記金属とのシール材として好適に用いることが可能であり、例えば、コネクタ、プリント基板、封止成形品などの電子・電気用シール材、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などに使用される駆動モータ用絶縁材用シール材、電池用シール材、金属腐食予防用の内張り材として有用である。
[特性の測定方法]
(1)溶融粘度
東洋精機社製キャピログラフC1(ダイス長10mm、ダイス穴直径1mm)を用い、ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)の融点+50℃の条件で測定を行い、剪断速度200/sでの溶融粘度を測定した。
(2)融点
JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温する。同試料を取り出し急冷したのち、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とする。
(3)破断強度および伸度
ASTM−D882に規定された方法に従って、インストロンタイプの引張試験機を用いて測定した。測定は下記の条件で行い、シートあるいはフィルムのMD方向およびTD方向について、それぞれn=10測定し、下記式で平均値をとった。
破断強度(MPa)=((MD方向に10回測定した平均値)+(TD方向に10回測定した平均値))/2
破断伸度(%)=((MD方向に10回測定した平均値)+(TD方向に10回測定した平均値))/2
測定装置:オリエンテック(株)製フィルム強伸度自動測定装置“テンシロンAMF/RTA−100”
試料サイズ:幅10mm×試長間100mm
引張り速度:300mm/分
測定環境:23℃、65%RH。
(4)接着性
1.金属との接着性
横30mm×縦150mmサイズのアルミニウム板(厚さ:0.7mm)2枚を、縦方向の先端から15mmの部分で90℃に折り曲げた。また、PPSフィルムを横30mm×縦15mmサイズにサンプリングし、前記アルミニウム板の折り曲げ部分に縦横が合わさるように重ね合わせ2枚のアルミ板にはさんだ。PPSフィルムをはさんだ部分のみをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムとアルミニウム板との積層体を作製した。作製した積層体のフィルムと貼り合わせをしていない金属板の端部を、各々引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が300N/30mm以上
A:接着強度が200N/30mm以上、300N/30mm未満
B:接着強度が150N/30mm以上、200N/30mm未満
C:接着強度が150N/30mm未満。
2.樹脂成形体との接着性
140℃で3時間静置乾燥したPPS樹脂(A310M、東レ(株)製)を、射出成形機を用いて射出温度330℃、金型温度140℃、射出圧力40MPaで射出し、横10mm×縦130mm、厚み4mmの樹脂成形体を作製した。また、PPSフィルムを横10mm×縦130mmサイズにサンプリングし、両サンプルの先端部分10mm×15mmのみをプレス機にて250℃で5秒間予熱した後、1MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムと樹脂成形体との積層体を作製した。フィルムと貼り合わせをしていない樹脂成形体の端部およびフィルムの端部それぞれを引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が100N/10mm以上
A:接着強度が70N/10mm以上、100N/10mm未満
B:接着強度が50N/10mm以上、70N/10mm未満
C:接着強度が50N/10mm未満。
(5)フィルム品位
1mのフィルムの表面を目視で観察し、同面内で目視にて確認できる大きさの異物の個数について次の基準で評価した。
A 異物なし
B 異物数が1個以上5個未満
C 異物数が5個以上。
(6)加工性
フィルムを幅22cm、長さ30cm(A4版サイズ)に切断し、真空圧空成型機(浅野製作所社製)を用いてシート温度200℃になるよう予熱し、φ20mm、高さ10mmの円柱金型で加熱成形し、目視でフィルム割れの発生の有無を下記基準により判定した。なお、加工個数は各試料100枚成型を行った。
AA:フィルムの破れや亀裂の発生数が5%未満
A:フィルムの破れや亀裂の発生数が5%以上、20%未満
B:フィルムの破れや亀裂の発生数が20%以上、40%未満
C:フィルムの破れや亀裂の発生数が40%以上。
(参考例1)PPS樹脂1(共重合PPS)の製造方法
オートクレ−ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドン(以下、NMPと略称する。)を仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして90モルのp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして10モルのm−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマーを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマーを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマーを90℃の蒸留水により2回洗浄した後、酢酸ナトリウム水溶液で3回洗浄した後、蒸留水により1回洗浄し、減圧下120℃の温度にて乾燥して融点が255℃のPPS樹脂1を得た。PPS樹脂1の305℃で測定した溶融粘度は2900ポイズであった。
(参考例2)PPS樹脂2の製造
主成分モノマとして100モルのp−ジクロベンゼンを用い、副成分モノマを用いないこと以外は参考例1と同様に実施して融点が280℃のPPS樹脂2を得た。PPS樹脂2の330℃で測定した溶融粘度は4500ポイズであった。
(実施例1〜4)
参考例1で作製したPPS樹脂1と可塑剤1を表1に示す組成比でドライブレンドした後に300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製した。得られたチップの305℃で測定した溶融粘度は表1に示すとおりであった。得られたチップを、150℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に50kg/時間の吐出量で供給した。
押出機で溶融した樹脂を温度300℃に過熱した16μmカットフィルターで濾過した後、温度300℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み1100μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、表面温度90℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度110℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.3倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に95℃の温度で3.3倍に延伸し、続いて1段目熱固定を180℃、2段目熱固定を230℃で熱処理を行い、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(実施例5〜7)
表1に示す可塑剤を用いた以外は実施例1と同様にして、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(実施例8)
参考例1で作製したPPS樹脂1 94.75質量%と可塑剤4 4.75質量%とフェノール系酸化防止剤((株)アデカ製、AO80)0.5質量%をドライブレンドした後に300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機荷投入し、実施例7と同様にして、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(実施例9)
参考例1で作製したPPS樹脂1 94.75質量%と可塑剤4 4.75質量%とリン系酸化防止剤((株)アデカ製、PEP−36)0.5質量%をドライブレンドした後に300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機荷投入し、実施例7と同様にして、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(比較例1)
可塑剤5を用いた以外は表2に示す組成比でドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(比較例2)
可塑剤6を用いた以外は表2に示す組成比でドライブレンドした以外は実施例1と同様にして、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(比較例3)
参考例2で作製したPPS樹脂2と可塑剤1を表2に示す組成比でドライブレンドした後に320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてチップを作製した。得られたチップの320℃で測定した溶融粘度は表1に示すとおりであった。得られたチップを、150℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が320℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に50kg/時間の吐出量で供給した。
押出機で溶融した樹脂を温度320℃に過熱した16μmカットフィルターで濾過した後、温度320℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み1100μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、表面温度90℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度110℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.3倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に95℃の温度で3.3倍に延伸し、続いて1段目熱固定を180℃、2段目熱固定を230℃で熱処理を行い、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
可塑剤1 マレイン酸変性ポリプロピレン、融点160℃
可塑剤2 シンジオタクチック1,2−ポリブタジエン、融点120℃
可塑剤3 ポリエーテルエステルブロック共重合体、融点160℃
可塑剤4 エチレン酢酸ビニルコポリマー、融点105℃
可塑剤5 マレイン酸変性ポリエチレン、融点90℃
可塑剤6 ポリエーテルエステルブロック共重合体、融点190℃
Figure 2015083659
Figure 2015083659
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属および/または樹脂成形体との接着性に優れることから、各種部品のヒートシール材として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 融点が265℃以下であるポリアリーレンスルフィド樹脂(A)と、融点が100〜175℃の熱可塑性樹脂からなる可塑剤(B)とを用いてなるポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. 前記可塑剤(B)が不飽和カルボン酸骨格を導入したオレフィン系樹脂の共重合体である請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. ポリアリーレンスルフィド樹脂(A)100質量部に対して、可塑剤(B)の含有量が1〜25質量部である請求項1または2に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. 酸化防止剤を含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  5. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いた、金属/ポリアリーレンスルフィドフィルム複合体。
  6. 請求項1〜4のいずれかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルムを用いた、樹脂成形体/ポリアリーレンスルフィドフィルム複合体。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
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