JP2016069445A - ポリアリーレンスルフィドフィルム - Google Patents

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隆 田中
葉子 若原
Yoko Wakahara
葉子 若原
東大路 卓司
Takuji Higashioji
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Abstract

【課題】 金属および/または樹脂成形体との接着性およびフィルムとしての品位(厚み斑)、熱収縮特性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供すること。【解決手段】 融点が260〜275℃であり、厚み斑が0.01〜10%であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルム。【選択図】 なし

Description

本発明は、ポリアリーレンスルフィドフィルムに関するものである。
ポリアリーレンスルフィドは優れた耐熱性、難燃性、剛性、耐薬品性、電気絶縁性および低吸湿性などの性質を有しており、特に電気・電子機器、電池用部材、機械部品および自動車部品などに好適に使用されている。
近年、ポリフェニレンスルフィド(以下、PPSと略称することがある。)に代表されるポリアリーレンスルフィドフィルムは、その電気絶縁性や低吸湿性を活かし、電気絶縁材料への適用が進められている。しかしながら、ポリアリーレンスルフィドフィルムは、一般に金属や他樹脂との接着性、密着性が低いことが課題であった。
この課題を解決するために、例えばp−フェニレンスルフィドに共重合ポリフェニレンスルフィドを混合する技術が開示されている(特許文献1)。しかし、同原料を用いて作製したフィルムは結晶化度が高くなり、金属およびまたは樹脂成形体との接着性が低下するといった問題があった。また、表層に共重合ポリフェニレンスルフィドを配置したフィルムが開示されている(特許文献2)が、表層と芯層/もしくはもう片方の表層の樹脂組成が異なることから延伸による各層の均一延伸が困難であり、ヒートシール性は保持できるが、品位、とくに厚み斑において満足のいくものではなかった。また、共重合ポリフェニレンスルフィドの単膜フィルムが開示されているが(特許文献3)、ヒートシール性は担保できるが結晶性が低いことから高温での熱収縮が大きいといった課題があった。
特開昭63−33427号公報 特開2007−326362号公報 特開2014−1363号公報
本発明の課題は、上記した問題を解決することにある。すなわち金属または/および樹脂成形体との接着性と、フィルムとしての品位(厚み斑)、熱収縮特性に優れたポリアリーレンスルフィドフィルムを提供することにある。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、上記課題を解決するために次の構成を有する。すなわち、融点が260〜275℃であり、厚み斑が0.01〜10%であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルムである。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは金属および/または樹脂成形体との接着性と品位(厚み斑)、熱収縮特性に優れることから、ヒートシール材として電気・電子機器、電池用部材、機械部品および自動車部品として好適に用いることができる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムはポリアリーレンスルフィド樹脂を主成分とする。ここで主成分とは、ポリアリーレンスルフィドフィルムを構成する原料の80質量%以上を占めることをいう。
本発明で用いるポリアリーレンスルフィド樹脂とは、−(Ar−S)−の繰り返し単位を有するコポリマーである。Arとしては下記の式(A)〜式(K)などであらわされる単位などがあげられる。
Figure 2016069445
(R1,R2は、水素、アルキル基、アルコキシ基、ハロゲン基から選ばれた置換基であり、R1とR2は同一でも異なっていてもよい)
本発明に用いるポリアリーレンスルフィド樹脂の繰り返し単位としては、上記の式(A)で表される構造式が好ましく、これらの代表的なものとして、ポリフェニレンスルフィド、ポリフェニレンスルフィドスルホン、ポリフェニレンスルフィドケトンなどが挙げられ、特に好ましいポリアリーレンスルフィドとしては、フィルム物性と経済性の観点から、ポリフェニレンスルフィド(PPS)が好ましく例示される。PPSの主要構成単位として下記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を全繰り返し単位の80モル%以上、95モル%以下で構成されていることが好ましい。より好ましくは、85モル%以上、92モル%以下である。かかるp−フェニレンスルフィド単位が80モル%未満では、厚み斑が低下する場合があり、95モル%を超えると金属との接着強度を十分高められない場合がある。
Figure 2016069445
本発明のポリアリーレンスルフィド樹脂にはm−フェニレンスルフィドを共重合成分として含むことが好ましい。m−フェニレンスルフィドを共重合成分として含有する場合、ポリアリーレンスルフィドを構成する繰り返し単位の5モル%以上、20モル%以下、好ましくは8モル%以上、15モル%以下の範囲の中でm−フェニレンスルフィド単位以外の構成単位を共重合せしめることで融点を所定範囲とすることができる。かかる共重合単位が5モル%未満では、ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を十分低下できず、金属との接着性を十分高められない場合があり、20モル%を超えると、共重合成分の含有により結晶性が著しく低下し、延伸性や厚み斑が低下する場合がある。
好ましい共重合単位は、下記式に示す共重合単位、
Figure 2016069445
Figure 2016069445
Figure 2016069445
(ここでXは、アルキレン、CO、SO単位を示す。)
Figure 2016069445
Figure 2016069445
(ここでRはアルキル、ニトロ、フェニレン、アルコキシ基を示す。)が挙げられ、金属との接着性を向上する点からm−フェニレンスルフィド単位が好ましい。
共重合成分との共重合の態様は特に限定はないが、ランダムコポリマーであることが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂には樹脂組成の合計を100質量%とした際に直鎖状ポリアリーレンスルフィドを15〜80質量%を含むことが好ましく、35〜60質量%含むことがより好ましい。ここで直鎖状ポリアリーレンスルフィドとは主要構成単位として上記構造式で示されるp−フェニレンスルフィド単位を全繰り返し単位の99モル%以上で構成されている樹脂をさす。上記の樹脂組成物含むことでポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂の熱特性を制御することが可能となり、熱収縮特性および品位(厚み斑)を向上させることができる。
直鎖状ポリアリーレンスルフィドの含有量が15質量%より小さいと、熱収縮特性が低下する場合がある。また60質量%を上回ると、共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む層の融点が上昇し、ヒートシール性が低下し接着性が低くなる場合がある。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムに含まれる直鎖状ポリアリーレンスルフィドの末端としては、例えばカルシウムやナトリウムなどの金属を含む場合や、金属を含まないカルボン酸末端が上げられるが、冷結晶化温度を低下させ、結晶化を促進させる観点からカルボン酸末端であることが好ましい。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムを構成するポリアリーレンスルフィド樹脂の融点は260〜275℃である。より好ましくは、268〜275℃あり、さらに好ましくは、268〜273℃である。表層融点が260℃未満では、延伸時の厚み斑が悪化し、275℃を超えると金属および/または樹脂成形体との接着強度が低下する場合がある。ポリアリーレンスルフィド樹脂の融点を上記範囲とするためには、上述する原料処方を用いることで達成できる。共重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む層の融点は後述する手法にて評価することができる。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、フィルムの厚み斑が0.01〜10%である。厚み斑を上記の範囲とすることで、ヒートシール時の接着斑を抑制でき、加工性を改善することができる。厚み斑が10%より大きいと、ヒートシール加工時の加熱斑や圧力斑がおき均一な接着性を得ることが困難となる。厚み斑の下限は特に設けないが、実現可能な範囲を考慮すると、0.01%以上である。厚み斑はより好ましくは0.01〜5%、さらに好ましくは0.01〜3%である。厚み斑を上記の範囲とするには、前述する処方を用いることで達成できる。厚み斑は後述する手法にて評価できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、150℃におけるフィルムの長手方向と幅方向の熱収縮率の平均値が0.00〜1.5%であることが好ましく、0.00〜1.0%がより好ましく、0.00〜0.7%であることがさらに好ましい。熱収縮率が1,5%より大きいと、ポリアリーレンスルフィドフィルムと金属および/または樹脂成形体をヒートシールする際に収縮が大きくなり加工性や接着性が低下する場合がある。また、熱収縮率が0.00を下回るとフィルムの膨張により接着時に樹脂が流れ出る場合があり、接着に要する樹脂量が低下し接着性が低下する場合がある。ポリアリーレンスルフィドフィルムの熱収縮率を上記範囲とするためには、前述する処方を用いて、製膜時に後述する熱固定温度の範囲で熱処理することで達成できる。フィルムの熱収縮率は後述する手法にて評価できる。また、フィルムの長手方向、幅方向が不明なときは、長手方向及び幅方向とはフィルム表面の任意の点を基準に面内360°に亘って屈折率を測定したとき最も屈折率が高い方向とそれに直交する方向をそれぞれ長手方向、幅方向とみなすことで評価できる。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属および/または樹脂成形体との接着強度の観点から、ヒートシール性を発現する重合ポリアリーレンスルフィド樹脂を含む層の冷結晶化温度(Tcc)が145〜160℃であることが好ましく、145〜150℃がより好ましい。冷結晶化温度を上述の範囲とすることで、製膜時に結晶化による構造固定が促進され、熱収縮率を良化することが可能となる。冷結晶化温度が145℃より低いとフィルムを製膜する際に結晶化の進行が早くなり、延伸性が低下する場合がある。また160℃より高いと延伸後の熱処理により結晶化が進みにくいため、熱収縮特性が低下する場合がある。冷結晶化温度を上記の範囲とするためには、前述する処方を用いることで達成できる。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムの厚みは、金属との接着強度の観点から、5〜300μmが好ましく、より好ましくは、10〜250μm以下である。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、本発明の効果を阻害しない範囲内で、熱安定剤、酸化防止剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、難燃剤。また、シート表面に易滑性や耐磨耗性や耐スクラッチ性等を付与するために、無機粒子や有機粒子などを含むこともできる。そのような添加物としては、例えば、クレー、マイカ、酸化チタン、炭酸カルシウム、カオリン、タルク、湿式または乾式シリカ、コロイド状シリカ、リン酸カルシウム、硫酸バリウム、アルミナおよびジルコニア等の無機粒子、アクリル酸類、スチレン等を構成成分とする有機粒子、ポリアリーレンスルフィドの重合反応時に添加する触媒等によって析出する、いわゆる内部粒子や、界面活性剤などが挙げられる。
本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムは、コロナ放電処理やプラズマ処理を施すことも本発明の好ましい態様に含まれる。コロナ放電処理時の雰囲気ガスとしては、特に限定されないが空気(EC処理)、酸素(OE処理)、窒素(NE処理)、炭酸ガス(CE処理)等から選ばれる少なくとも1種のガスが挙げられる。
次いで、本発明の二軸延伸ポリアリーレンスルフィドフィルムを製造する方法について、ポリアリーレンスルフィド樹脂としてp−フェニレンスルフィドにm−ジクロロベンゼンを共重合させた共重合フェニレンスルフィド樹脂(以下共重合PPS樹脂と略記する場合がある)を用いた場合を例にとって説明するが、本発明は、この例に限定されないことは無論である。
共重合PPS樹脂の製造方法としては、例えば、次のような方法が挙げられる。硫化ナトリウムとp−ジクロロベンゼンおよびm−フェニレンスルフィドを本発明でいう比率で配合し、N−メチル−2−ピロリドン(NMP)などのアミド系極性溶媒中で重合助剤の存在下、高温高圧下で反応させる。必要によって、トリハロベンゼンなどの共重合成分を用いることもできる。重合度調整剤として、苛性カリやカルボン酸アルカリ金属塩などを添加し、230〜280℃の温度で重合反応させる。重合後にポリマを冷却し、ポリマを水スラリーとしてフィルターで濾過後、粒状ポリマを得る。これを蒸留水などの水溶液中で30〜100℃の温度で10〜60分間攪拌処理し、イオン交換水にて30〜80℃の温度で数回洗浄、乾燥して共重合PPSの粒状ポリマを得る。得られた粒状ポリマを、酸素分圧10トール以下、好ましくは5トール以下でNMPにて洗浄後、30〜80℃の温度のイオン交換水で数回洗浄し、副生塩、重合助剤および未反応モノマ等を分離し、共重合PPS樹脂を得る。上記で得られたポリマには必要に応じて、無機または有機の添加剤等を本発明の目的に支障を与えない程度添加することができる。
その後、押出機を経た溶融ポリマをフィルターに通過させた後、その溶融ポリマをTダイの口金を用いてシート状に吐出する。シート状物を表面温度20〜70℃の冷却ドラム上に密着させて冷却固化し、実質的に無配向状態の未延伸ポシートを得る。
次いで、このようにして得られた非晶状態の未延伸シートを共重合PPS樹脂のガラス転移点(Tg)以上、冷結晶化温度(Tcc)以下の範囲で、従来公知の逐次二軸延伸機や同時二軸延伸機により二軸延伸した後、Tcc〜(融点−5℃)の範囲の温度で1段もしくは2段以上の多段熱処理を行い、二軸配向フィルムを得る。延伸方法としては、逐次二軸延伸法(長手方向に延伸した後に幅方向に延伸を行う方法などの一方向ずつの延伸を組み合わせた延伸法)、同時二軸延伸法(長手方向と幅方向を同時に延伸する方法)、又はそれらを組み合わせた方法を用いることができる。ここでは、最初に長手方向、次に幅方向の延伸を行う逐次二軸延伸法を用いる。まず、未延伸ポリフェニレンスルフィドフィルムを加熱ロール群で加熱し、長手方向(MD方向)に3.0〜4.5倍、好ましくは3.2〜4.0倍、1段もしくは2段以上の多段で延伸する(MD延伸)。延伸温度は、Tg〜Tccの範囲ある。その後20〜50℃の冷却ロール群で冷却する。 MD延伸に続く幅方向(TD方向)の延伸方法としては、例えば、テンターを用いる方法が一般的である。このフィルムの両端部をクリップで把持して、テンターに導き、幅方向の延伸を行う(TD延伸)。延伸温度はTg
〜Tccの範囲が好ましい。延伸倍率は3.0〜4.5倍が好ましい。
次に、この延伸フィルムを緊張下で熱固定処理を施す。熱固定処理時の温度としては熱収縮を上述する範囲とするためにTcc〜(融点−5℃)、より好ましくは(Tcc+10℃)〜(融点―5℃)、さらに好ましくは(Tcc+20℃)〜(融点−5℃)である。熱固定処理を2段で行う場合の熱固定処理の1段目の熱固定温度は150℃〜200℃であり、好ましくは180℃〜200℃である。1段目熱固定温度を前記範囲とすることで、フィルム平面性を保持することが可能となる。2段目熱固定の好ましい熱固定温度は180〜(融点−5℃)℃であり、好ましくは200〜(融点−5℃)℃であり、さらに好ましくは、230〜(融点−5℃)℃である。ここで、2段目熱固定温度が180℃未満の場合、熱収縮率が大きくなる場合があり、(融点−5℃)℃を超えると横延伸機への軟化した樹脂が付着し製膜性が低下する場合がある。さらに、フィルムを室温まで、必要ならば、長手および幅方向に0〜15%の範囲で弛緩処理を施しながら、フィルムを冷やして巻き取り、二軸延伸フィルムを得る。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、金属または/および樹脂成形体とのヒートシール性に優れる。ヒートシールが可能な金属または樹脂の種類は特に限定されないが、金属としては銅、アルミ、SUSなどの板あるいは箔、鋼板、珪素鋼板、鉄板等、が挙げられるが、樹脂成形体に用いる樹脂としてはポリエステル樹脂、ナイロン樹脂、ポリアリーレンスルフィド、ポリスルホン、ポリエーテルイミド、ポリアミドイミド、液晶樹脂などの押出成形品または射出成形品が挙げられるがこれに限定されるものではない。
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムと金属および/または樹脂成形体とをヒートシールする方法としては、熱融着(熱圧着)、レーザー溶着、超音波溶着、振動溶着、誘導溶着、高周波溶着 スピン溶着などが挙げられるが、方法は特に限定されない。
本発明のポリアリーレンスルフィドシートは、上記金属とのシール材として好適に用いることが可能であり、例えば、コネクタ、プリント基板、封止成形品などの電子・電気用シール材、ハイブリッド自動車、電気自動車、燃料電池自動車などに使用される駆動モータ用絶縁材用シール材、電池用シール部材、金属腐食予防用の内張り材として有用である。
[特性の測定方法]
(1)融点
JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温する。同試料を取り出し急冷したのち、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される融解の吸熱ピークのピーク温度を融点(Tm)とする。
(2)冷結晶化温度
JIS K7121−1987に従って示差走査熱量計として、セイコーインスツルメンツ社製DSC(RDC220)、データ解析装置として同社製ディスクステーション(SSC/5200)を用いて、試料5mgをアルミニウム製受皿上、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温する。同試料を取り出し急冷したのち、室温から350℃まで昇温速度20℃/分で昇温し、そのとき、観測される結晶化の発熱ピークのピーク温度を冷結晶化温度(Tcc)とする。
(3)熱収縮率
フィルムをMD方向あるいはTD方向に幅10mm、長さ200mmに切り、150mm間隔にマーキングし支持板に一定張力(5g)下で固定した後、マーキング間隔の原長a(mm)を測定する。次に、3g荷重下で150℃の熱風オーブン中で10分間静置処理し、原長測定と同様にしてマーキング間隔b(mm)を測定する。下記の式により熱収縮率を求め、MD方向、TD方向の5本の平均値を求める。さらに、MD方向、TD方向の平均値の和を平均とする。
熱収縮率(%)=(a−b)/a×100。
(4)接着性
1.金属との接着性
横30mm×縦150mmサイズの銅板(厚さ:0.7mm)2枚を、縦方向の先端から15mmの部分で90℃に折り曲げた。また、PPSフィルムを横30mm×縦15mmサイズにサンプリングし、前記銅板の折り曲げ部分に縦横が合わさるように重ね合わせ、2枚の銅板にはさんだ。PPSフィルムをはさんだ部分のみをプレス機にて270℃で5秒間予熱した後、2MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムと銅板との積層体を作製した。作製した積層体のフィルムと貼り合わせをしていない銅板の端部を、各々引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が500N/30mm以上
A:接着強度が300N/30mm以上、500N/30mm未満
B:接着強度が150N/30mm以上、300N/30mm未満
C:接着強度が150N/30mm未満。
2.樹脂成形体との接着性
140℃で3時間静置乾燥したPPS樹脂(A310M、東レ(株)製)を、射出成形機を用いて射出温度330℃、金型温度140℃、射出圧力40MPaで射出し、横10mm×縦130mm、厚み4mmの樹脂成形体を作製した。また、PPSフィルムを横10mm×縦130mmサイズにサンプリングし、両サンプルの先端部分10mm×15mmのみをプレス機にて270℃で5秒間予熱した後、2MPaの押圧の下で3分間加熱・加圧して、フィルムと樹脂成形体との積層体を作製した。フィルムと貼り合わせをしていない樹脂成形体の端部およびフィルムの端部それぞれを引張試験機のチャックに挟み、チャック間距離10mm、引張速度20mm/分で引張試験を行い、最大接着強度を求め、n=5の平均値を下記基準で評価した。
AA:接着強度が150N/10mm以上
A:接着強度が100N/10mm以上、150N/10mm未満
B:接着強度が100N/10mm以上、50N/10mm未満
C:接着強度が50N/10mm未満。
(5)品位(厚み斑)
厚み斑の測定は、アンリツ株式会社製電子マイクロメーター「K351C」を用い、フィルム長手方向に1m長、幅方向に1m長でサンプリングしたフィルムについて、フィルム長手方向に沿って30cm間隔に、幅方向に沿って10cm間隔に計30点の厚みを測定し、最大値Ta、最小値Tb、平均値Tcから、次式により算出した。
厚み斑=(Ta−Tb)/Tc×100(%)
(6)加工時の不良率
熱プレス機(GONO社製、型番2043)にて、金属との接着により樹脂のはみ出し、接着斑が発生したものを不合格とし、不合格となったものの数の全体数30に対する割合を百分率で示し、加工時の不良率とした。プレス加工条件は、プレス表面温度250℃、予熱5秒、プレス圧4MPa、プレス時間1分間で実施。
加工時の不良率(%)=(全加工数30−加工不合格数)/全加工数×100
A:加工時の不良率が5%未満
B:加工時の不良率が5%以上、10%未満
C:加工時の不良率が10%以上
(参考例1)PPS樹脂チップ1の製造
オートクレ−ブに100モルの硫化ナトリウム9水塩、45モルの酢酸ナトリウムおよび25リットルのN−メチル−2−ピロリドンを仕込み、撹拌しながら徐々に220℃の温度まで昇温して、含有されている水分を蒸留により除去した。脱水の終了した系内に、主成分モノマとして90モルのp−ジクロロベンゼン、副成分モノマとして10モルのm−ジクロロベンゼンを5リットルのNMPとともに添加し、170℃の温度で窒素を3kg/cmで加圧封入後、昇温し、260℃の温度にて4時間重合した。重合終了後冷却し、蒸留水中にポリマを沈殿させ、150メッシュ目開きを有する金網によって、小塊状ポリマを採取した。このようにして得られた小塊状ポリマを90℃の蒸留水により5回洗浄した後、減圧下120℃の温度にて乾燥して、300℃のMFRが110g/10minであり、融点が250℃のPPS樹脂1を作製した。
次いでPPS樹脂1を300℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機(日本製鋼所製、スクリュー直径30mm、スクリュー長さ/スクリュー直径=45.5)に投入し、滞留時間90秒、スクリュー回転数150回転/分で溶融押出してストランド状に吐出し、温度25℃の水で冷却した後、直ちにカッティングしてPPS樹脂チップ1を作製した。
(参考例2)PPS樹脂チップ2の製造
主成分モノマとして100モルのp−ジクロベンゼンを用い、副成分モノマを用いないこと以外は参考例1と同様に実施して、315℃のMFRが70g/10minであり、融点が280℃のPPS樹脂2を作製した。
次いでPPS樹脂2を320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、参考例1と同様にしてPPS樹脂チップ2を作製した。
(参考例3)PPS樹脂3の製造
重合終了後冷却し、酢酸水溶液中にポリマを沈殿させる以外は参考例2と同様に実施して、315℃のMFRが126g/10minであり、融点が280℃のカルボン酸末端PPS樹脂3を作製した。
次いでPPS樹脂3を320℃に加熱されたベント付き同方向回転式二軸混練押出機に投入し、参考例1と同様にしてPPS樹脂チップ3を作製した。
(実施例1〜5、比較例3)
参考例1〜3で作製した得られたPPS樹脂チップ1〜3を、表1に示す処方に計量後、ドライブレンドし、180℃で3時間減圧乾燥した後、溶融部が300℃に加熱されたフルフライトの単軸押出機に供給して押出し、溶融した樹脂を温度300℃に過熱した16μmカットフィルターで濾過した後、温度300℃に設定したTダイの口金から溶融押出した後、表面温度25℃のキャストドラムに静電荷を印加させながら密着冷却固化し、厚み1100μmの未延伸フィルムを得た。次いで、得られた未延伸フィルムを、表面温度95℃に加熱された複数の加熱ロールで予熱した後、表面温度95℃に加熱された加熱ロールと、加熱ロールの次に設けられた周速の異なる30℃の冷却ロールとの間で長手方向(MD方向)に3.3倍延伸した。このようにして得られた1軸延伸シートを、テンターを用いて長手方向と垂直方向(TD方向)に90℃の温度で3.3倍に延伸し続いて1段目熱固定を200℃、2段目熱固定を250℃で熱処理を行い、引き続き、250℃の弛緩処理ゾーンで4秒間横手方向(TD方向)に5%弛緩処理を行った後、室温まで冷却した後、フィルムエッジを除去し、厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(比較例1)
参考例1のPPS樹脂チップ1のみを使う以外は実施例1と同様にして厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
(比較例2)
参考例2のPPS樹脂チップ2のみを使う以外は実施例1と同様にして厚み100μmの二軸延伸フィルムを得た。
Figure 2016069445
本発明のポリアリーレンスルフィドフィルムは、電気・電子機器、電池用部材、機械部品および自動車部品として好適に用いることができる。

Claims (6)

  1. 融点が260〜275℃であり、厚み斑が0.01〜10%であることを特徴とするポリアリーレンスルフィドフィルム。
  2. 150℃における熱収縮率の長手方向と幅方向の平均が0.00〜1.5%であることを特徴とする請求項1に記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  3. 冷結晶化温度が145〜160℃である、請求項1または2の何れかに記載のポリアリーレンスルフィドフィルム。
  4. 請求項1〜3の何れかのポリアリーレンスルフィドフィルムと、金属または樹脂またはフィルムの何れか1種以上との複合体からなる電池用部材。
  5. 請求項1〜3の何れかのポリアリーレンスルフィドフィルムと、金属または樹脂またはフィルムの何れか1種以上との複合体からなる、自動車用部材。
  6. 請求項1〜3の何れかのポリアリーレンスルフィドフィルムと、金属または樹脂またはフィルムの何れか1種以上との複合体からなる、電気または電子用部材。
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