JP2015081319A - コーティング剤、コーティング膜、およびコーティング剤の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
本発明のコーティング剤の一成分であるオルガノシロキサン組成物(A)は、上記フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを加水分解縮合することによって得られる。また、オルガノシロキサン組成物(B)は、上記フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを加水分解縮合することによって得られる。以下の製造例に記述するが、これらオルガノシロキサン組成物(A)と(B)は同様の方法により別々に製造される。その理由として、オルガノシロキサン組成物(A)を構成するグリシドキシ基とオルガノシロキサン組成物(B)を構成するメルカプト基とがオルガノシロキサン組成物の製造工程中で反応する可能性が挙げられ、グリシドキシ基とメルカプト基のオルガノシロキサン組成物中での存在濃度が減少してしまい、それぞれの期待される機能を発揮できなくなるおそれがあると考えたからである。なお、本明細書では、上記4種、またはそれぞれについて「原料アルコキシシラン」ということがある。また、上記フェニルトリメトキシシラン、ジフェニルジメトキシシラン、グリシドキシアルキルトリアルコキシシラン、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン以外のアルコキシシラン化合物は通常使用しなくてもよいが、本発明のコーティング剤およびそれから得られるコーティング膜の特性に悪影響を及ぼさない量であれば、加水分解縮合の際に併用しても構わない。
上記原料アルコキシシランの加水分解縮合は、原料アルコキシシランを極性有機溶媒に溶解し、水および酸触媒を加えて行うことができる。
上記原料アルコキシシランの加水分解縮合に用いられる水の量は、原料アルコキシシランが有するアルコキシシリル基のモル量の半分〜同量とすることが好ましい。
本発明においては、コーティング剤の硬化を促進するためにアルミニウム系触媒やスズ系触媒を用いることができる。該アルミニウム系触媒としては、例えば、アルミニウムトリスアセチルアセトネート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、エチルアセトアセテートアルミニウムジイソプロピレート、アルミニウムイソプロピレートビス(オレイルアセトアセテート)等が挙げられる。該スズ系触媒としては、例えば、ジブチルスズジアセテート、ビス(アセトキシジブチルスズ)オキサイド、ビス(ラウロキシジブチルスズ)オキサイド、ジブチルスズビスアセチルアセトナート、ジブチルスズビスマレイン酸モノブチルエステル、ジオクチルビスマレイン酸モノブチルエステル等が挙げられる。
本発明の表面被覆金属の製造方法では、上記で得られたオルガノシロキサン組成物(A)と(B)を混合し、加熱硬化触媒(C)を添加して得られるコーティング剤を金属表面に塗工する。金属としては、特に限定されず、金、銀、銅、合金等が挙げられるが、本発明によれば、オルガノシロキサン組成物(B)中にメルカプト基を有しており、金属に直接化学結合しうるため、金属が金や銀等の貴金属であっても強固な被膜が得られる。また、オルガノシロキサン組成物(A)中にグリシドキシ基を有しており、金属部のみならずセラミックやガラスなどの金属酸化物やエポキシ樹脂基板などの部材にも高い密着性をもって塗工できる。塗工する方法としては特に限定されず、公知の方法を採用できる。例えば、ディッピング法、スプレー法、スピンコーター法などが挙げられる。前記オルガノシロキサン組成物(A)と(B)を混合し、加熱硬化触媒(C)を添加して得られるコーティング剤を金属に塗布した後に、加熱することにより縮合反応を完全に進行させ、同時に、溶媒を除去することにより硬い被膜が形成される。被膜の厚みは、目的に応じて適宜選択できるが、本発明によれば、1〜5μm、特に1〜3μmという薄い被膜であっても、充分に金属の防錆機能を持つという利点がある。
以下、実施例に基づいて本発明をより詳細に説明するが、本発明はこれらの実施例により何ら限定されるものではない。
[耐蝕性試験]
実施例で得られた被膜の性能を耐蝕性試験により評価した。具体的には、被覆した金属を、硫化ナトリウム5重量%水溶液を入れたデシケータの中板の上に室温で1ヶ月放置した。
実施例で得られた被膜の性能をJIS−K5600に準拠した環境サイクル試験により評価した。具体的には、被覆した金属を、恒温恒湿機に入れ、50℃90%RHで18時間、続いて−20℃で3時間、さらに25℃50%RHで3時間の環境を10回繰り返した。
実施例で得られた被膜の性能をJIS−K5400に準拠した鉛筆引っかき試験により評価した。具体的には、被覆した金属に、各硬度の鉛筆を45°に当て、芯が折れない程度にできる限り強く塗面に押し付け、前方に均一な速さで引っかいた(各鉛筆につき位置を変えて5回)。下地の金属に届く被膜の破れが、5回の引っかきのうち1回以下である鉛筆のうち、最も高い硬度をもって、当該被覆の強度の指標とした。
オルガノシロキサン組成物(A)
フェニルトリメトキシシラン13.88g、ジフェニルジメトキシシラン7.33g、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン2.36gをイソプロピルアルコールとメチルイソブチルケトンとの2/1(質量比)混合物40gに溶解した。0.07N塩酸5.94gを滴下し、40℃で2時間攪拌し、さらに80℃で3時間攪拌を行った後、濃縮してオルガノシロキサン組成物(A)を得た。計算上、フェニルトリメトキシシラン:ジフェニルジメトキシシラン:グリシドキシプロピルトリメトキシシラン=7:3:1、モル比である。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、グリシドキシプロピルトリメトキシシラン由来のエポキシ基が残存していることを確認した。粘度調整のため、得られたオルガノシロキサン組成物(A)にエトキシエタノールを加え、80wt%のオルガノシロキサン組成物(A)溶液とした。
オルガノシロキサン組成物(B)
フェニルトリメトキシシラン13.88g、ジフェニルジメトキシシラン7.33g、メルカプトアルキルトリアルコキシシラン1.96gをイソプロピルアルコールとメチルイソブチルケトンとの2/1(質量比)混合物40gに溶解した。0.07N塩酸5.94gを滴下し、40℃で2時間攪拌し、さらに80℃で3時間攪拌を行った後、濃縮してオルガノシロキサン組成物(B)を得た。計算上、フェニルトリメトキシシラン:ジフェニルジメトキシシラン:メルカプトプロピルトリメトキシシラン=7:3:1、モル比である。IRによる分析で、メトキシシリル基に基づくC−Hの吸収は確認されなかった。H−NMRによる分析で、メルカプトプロピルトリメトキシシラン由来のメルカプト基が残存していることを確認した。粘度調整のため、得られたオルガノシロキサン組成物(B)にエトキシエタノールを加え、80wt%のオルガノシロキサン組成物(B)溶液とした。
製造例1のオルガノシロキサン組成物(A)溶液5.00gと製造例2のオルガノシロキサン組成物(B)溶液5.00gを混合し、加熱硬化触媒としてのジブチルスズジアセテート0.25g加え、よく撹拌しコーティング剤とした。
製造例1のオルガノシロキサン組成物(A)溶液5.00gと製造例2のオルガノシロキサン組成物(B)溶液2.50gを混合し、ジブチルスズジアセテート0.25g加え、よく撹拌しコーティング剤とした。
製造例1のオルガノシロキサン組成物(A)溶液5.00gと製造例2のオルガノシロキサン組成物(B)溶液0.25gを混合し、ジブチルスズジアセテート0.25g加え、よく撹拌しコーティング剤とした。
Claims (4)
- フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを加水分解縮合して得られるオルガノシロキサン組成物(A)と、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランとメルカプトアルキルトリアルコキシシランとを加水分解縮合して得られるオルガノシロキサン組成物(B)と、加熱硬化触媒(C)とを含むコーティング剤。
- 前記オルガノシロキサン組成物(A)がエポキシ基を有し、前記オルガノシロキサン組成物(B)がメルカプト基を有する請求項1記載のコーティング剤。
- 請求項1または2に記載のコーティング剤により金属表面に形成されるコーティング膜。
- フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランとグリシドキシアルキルトリアルコキシシランとを酸触媒として無機酸またはルイス酸を用いて加水分解縮合を行ってオルガノシロキサン組成物(A)を得る工程と、フェニルトリメトキシシランとジフェニルジメトキシシランとメルカプトアルキルトリアルコキシシランとを酸触媒として無機酸またはルイス酸を用いて加水分解縮合を行ってオルガノシロキサン組成物(B)を得る工程と、前記オルガノシロキサン組成物(A)とオルガノシロキサン組成物(B)とを混合した混合物を得る工程と、前記混合物に加熱硬化触媒を加える工程とを含む、コーティング剤の製造方法。
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