JP2015076355A - スパークプラグ - Google Patents

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Abstract

【課題】貴金属チップの接合強度を高めつつ、貴金属チップの脱落を抑制する。
【解決手段】貴金属チップ70と母材32とを有する電極30であって、母材から貴金属チップにわたって溶融領域60が形成されている電極を備えるスパークプラグにおいて、貴金属チップの直径は2mm以上であり、貴金属チップの中心軸CL1に直交し、溶融領域のうち中心軸CL1に最も近い点を通る断面において、溶融領域は、貴金属チップの外形線の同心円であって貴金属チップの直径の90%の長さの直径を有する同心円Aの円周よりも中心側の領域に形成された複数の中心側溶融部を備え、同心円A上に位置する溶融領域における同心円A上の長さの合計が、同心円Aの円周の長さの30%以上であり、貴金属チップの外形線の直径と同じ直径を有する同心円B上に位置する溶融領域における同心円B上の長さの合計が、同心円Bの円周の長さの30%以上である。
【選択図】図2

Description

本発明は、スパークプラグに関するものである。
スパークプラグとして、中心電極や接地電極(以下、まとめて単に「電極」とも呼ぶ)に、耐火花消耗性や耐酸化性に優れた貴金属(例えば白金やイリジウム、ルテニウム、ロジウム)あるいは貴金属を主成分とする合金により形成された電極チップ(以下、「貴金属チップ」と呼ぶ)が接合されたスパークプラグが知られている(例えば、特許文献1参照)。一般に、貴金属チップは、レーザ溶接によって母材(電極、あるいは電極に接合するための中間部材)に接合される。具体的には、貴金属チップの外周に沿ってレーザを照射することにより、貴金属チップが母材に接合される。
特許第4705129号公報 特開2002−93547号公報 特開2005−183167号公報 特開2007−87969号公報 特開2005−50732号公報
貴金属チップとして、特に、直径が2mm以上であるような比較的大型のチップを用いる場合には、貴金属チップの外周全体に沿って連続的にレーザを照射するのではなく、貴金属チップの外周に沿った複数箇所に対してレーザ照射が行なわれる場合がある。このような場合に、貴金属チップの接合強度を向上させる方法として、1箇所当たりのレーザ照射出力を増大させる方法、あるいは、レーザ照射を行なう箇所の数を増加させる方法が考えられる。これらの方法を採用することにより、レーザ照射によって形成される貴金属チップと母材とが溶け合った溶融領域を拡大することが可能になる。
しかしながら、上記のようにレーザ照射により加えるエネルギ量を増加させて溶融領域を拡大し、貴金属チップの接合強度を高めようとしても、スパークプラグの使用に伴って電極が冷熱サイクルに晒された際の貴金属チップの耐久性を十分に確保することが困難となる場合があった。例えば、レーザ照射により加えるエネルギ量を増加させると、一般に溶融領域における貴金属の含有量が増加するが、溶融領域における貴金属の含有量が増加した結果、溶融領域と母材との間で線膨張係数差が大きくなり、電極が冷熱サイクルに晒されたときに貴金属チップが母材から脱落し易くなる。
また、母材として中間部材を用いる場合には、レーザ照射により加えるエネルギ量を増加させることによりレーザ照射時の母材温度が上昇し、母材が変形し易くなる。このように変形した母材に溶接された貴金属チップを電極に接合すると、母材と電極との間に隙間が生じることにより、貴金属チップから電極への熱伝導効率が低下する。貴金属チップから電極への熱伝導効率が低下すると、スパークプラグで火花が形成された際に貴金属チップおよび母材が過熱状態となり、貴金属チップが脱落し易くなる。そのため、貴金属チップの接合強度を高めつつ、冷熱サイクルに晒される電極における貴金属チップの脱落を抑制することが望まれていた。
本発明は、上述の課題を解決するためになされたものであり、以下の形態として実現することが可能である。
(1)本発明の一形態によれば、貴金属を含有する断面円形の貴金属チップと、該貴金属チップの外周を囲むように配置された母材と、を有する電極であって、前記貴金属チップが前記母材に溶接されており、前記母材から前記貴金属チップにわたって、前記母材と前記貴金属チップとが溶け合った溶融領域が形成されている電極を備えるスパークプラグが提供される。このスパークプラグでは、前記貴金属チップの直径は2mm以上であり、前記貴金属チップの中心軸CL1に直交し、前記溶融領域のうち前記中心軸CL1に最も近い点を通る断面において、前記溶融領域は、前記貴金属チップの外形線の同心円であって、前記貴金属チップの直径の90%の長さの直径を有する同心円Aの円周よりも、前記貴金属チップの中心側の領域に形成された複数の中心側溶融部を備え、前記同心円A上に位置する前記溶融領域における前記同心円A上の長さの合計が、前記同心円Aの円周の長さの30%以上であり、前記貴金属チップの前記外形線の直径と同じ直径を有する同心円B上に位置する前記溶融領域における前記同心円B上の長さの合計が、前記同心円Bの円周の長さの30%以上であることを特徴とする。
この形態のスパークプラグによれば、直径が2mm以上という比較的大きな直径の貴金属チップを用いて、複数の中心側溶融部を備える形状の溶融領域を形成することによって貴金属チップと母材とを溶接する場合であっても、貴金属チップ内に形成される溶融領域の体積を確保して、貴金属チップと母材との間の接合強度を高めることができる。また、貴金属チップが母材からの脱落することを抑制することができる。
(2)上記形態のスパークプラグは、前記溶融領域において、前記断面における前記同心円Bの円周と重なる部分における前記貴金属チップを構成する金属の含有割合が、10質量%以下であることとしてもよい。
この形態のスパークプラグによれば、溶融領域と貴金属チップとの間で線膨張係数差がより大きくなり、溶融領域と母材との間で線膨張係数差がより小さくなる。そのため、スパークプラグが冷熱サイクルに晒されてクラックが生じるときには、貴金属チップの内部に形成される貴金属チップと溶融領域との境界部において、他の場所よりもクラックが生じ易くなり、貴金属チップの脱落を抑制することができる。
(3)上記形態のスパークプラグにおいて、前記溶融領域は、前記中心側溶融部のいずれかを含み互いに離間する複数の独立溶融部を備え、前記断面において、各々の前記独立溶融部の中心軸CL2が、該中心軸CL2に平行で前記貴金属チップの中心軸CL1を通る直線から離間していることとしてもよい。
この形態のスパークプラグによれば、個々の独立溶融部において、同心円A上の長さや同心円B上の長さがより長くなるため、形成すべき独立溶融部の数を削減することができる。そのため、溶融領域を形成する際に貴金属チップや母材の全体に加えられるエネルギ量(熱量)を抑制し、溶融領域の形成に伴う母材の変形を抑制して、電極の耐久性を高めることができる。
(4)上記形態のスパークプラグにおいて、各々の前記独立溶融部における前記中心軸CL2は、該各々の中心軸CL2に平行で前記貴金属チップの中心軸CL1を通る各々の直線に対して、いずれも同じ側に離間していることとしてもよい。
この形態のスパークプラグによれば、電極全体で、各々の独立溶融部における同心円B上の長さの合計や、同心円A上の長さの合計を確保することがより容易になる。また、溶融領域を形成するための動作を簡素化し、加工性を向上させることができる。
(5)上記形態のスパークプラグにおいて、前記貴金属チップは、イリジウムまたはイリジウム合金により形成されることとしてもよい。
この形態のスパークプラグによれば、貴金属チップと、溶融領域および母材との間の線膨張係数の差が大きくなるため、貴金属チップと母材との間の接合強度を高めて電極の耐久性を高める効果を特に顕著に得ることができる。
本発明は、上記以外の種々の形態で実現可能であり、例えば、スパークプラグの製造方法などの形態で実現することが可能である。
スパークプラグの部分断面図である。 接地電極の先端部の構成を示す断面図である。 貴金属チップを基部に取り付ける工程を示す説明図である。 接地電極の先端部の様子を表わす平面図である。 チップ接合体におけるTP含有断面の様子を表わす断面図である。 接地電極における特徴を説明するための説明図である。 接地電極における特徴を説明するための説明図である。 貴金属チップと第1の溶融領域との境界である境界部Eを示す説明図である。 貴金属チップと保持部材との間の接合強度を調べた結果を示す説明図である。 貴金属チップと保持部材との間の接合強度を調べた結果を示す説明図である。 第1の溶融領域の形状を示す説明図である。 貴金属チップと保持部材との間の接合強度を調べた結果を示す説明図である。 チップ接合体の様子を模式的に表わす断面図である。 TP含有断面の様子を表わす断面図である。 TP含有断面の様子を表わす断面図である。 TP含有断面の様子を表わす断面図である。 TP含有断面の様子を表わす断面図である。 TP含有断面の様子を表わす断面図である。 チップ中心軸CL1を含む断面の様子を表わす断面図である。 中心電極の先端部の様子を表わす断面図である。 チップ中心軸CL1を含む断面の様子を表わす断面図である。
A.第1の実施形態:
A−1.スパークプラグの構成:
図1は、本発明の実施形態としてのスパークプラグの製造方法により製造されるスパークプラグ100の部分断面図である。スパークプラグ100は、図1に示すように、軸線Axに沿って伸長する細長形状を有している。図1において、一点破線で示す軸線Axの右側は、外観正面図を示し、軸線Axの左側は、スパークプラグ100の中心軸を通る断面でスパークプラグ100を切断した断面図を示している。以下の説明では、軸線Axに平行な方向において、図1の下方側を先端側と呼び、図1の上方側を後端側と呼ぶ。
スパークプラグ100は、絶縁碍子10と、中心電極20と、接地電極30と、端子金具40と、主体金具50とを備える。絶縁碍子10の一端から突出する棒状の中心電極20は、絶縁碍子10の内部を通じて、絶縁碍子10の他端に設けられた端子金具40に電気的に接続されている。中心電極20の外周は、絶縁碍子10によって保持され、絶縁碍子10の外周は、端子金具40から離れた位置で主体金具50によって保持されている。
主体金具50に電気的に接続された接地電極30は、火花を発生させる隙間である火花ギャップを中心電極20の先端との間に形成する。スパークプラグ100は、内燃機関のエンジンヘッド200に設けられた取付ネジ孔201に主体金具50を介して取り付けられる。端子金具40に2万〜3万ボルトの高電圧が印加されると、中心電極20と接地電極30との間に形成された火花ギャップに火花が発生する。
絶縁碍子10は、アルミナを始めとするセラミックス材料を焼成して形成された絶縁体である。絶縁碍子10は、中心電極20および端子金具40を収容する軸孔12が中心に形成された筒状の部材である。絶縁碍子10の軸方向中央には外径を大きくした中央胴部19が形成されている。中央胴部19よりも端子金具40側には、端子金具40と主体金具50との間を絶縁する後端側胴部18が形成されている。中央胴部19よりも中心電極20側には、後端側胴部18よりも外径が小さい先端側胴部17が形成され、先端側胴部17の更に先には、先端側胴部17よりも小さい外径であって先端側へ向かうほど外径が小さくなる脚長部13が形成されている。
主体金具50は、絶縁碍子10の後端側胴部18の一部から脚長部13に亘る部位を包囲して保持する円筒状の金具である。本実施形態では、主体金具50は、低炭素鋼により形成され、全体にニッケルめっきや亜鉛めっき等のめっき処理が施されている。主体金具50は、工具係合部51と、取付ネジ部52と、ガスケット受け部54とを備える。
主体金具50の工具係合部51は、スパークプラグ100をエンジンヘッド200に取り付ける工具(図示せず)が嵌合する。主体金具50の取付ネジ部52は、エンジンヘッド200の取付ネジ孔201に螺合するネジ山を有する。主体金具50のガスケット受け部54は、取付ネジ部52の後端側において、取付ネジ部52よりも径方向の外周側に張り出して、鍔状に形成されている。
また、主体金具50には、ガスケット受け部54の先端側端部に接するように、中実の略円環状部材であるガスケット5が嵌挿される。このガスケット5によって、スパークプラグ100のガスケット受け部54とエンジンヘッド200との間のシール性が確保される。ガスケット5の詳しい構造及びその製造方法については、後に説明する。なお、主体金具50の先端面57は、中央部に開口を有する円形状に形成されており、その中央部では、絶縁碍子10の脚長部13から中心電極20が突出する。
主体金具50の工具係合部51より後端側には薄肉の加締部53が設けられている。また、ガスケット受け部54と工具係合部51との間には、加締部53と同様に薄肉の圧縮変形部58が設けられている。工具係合部51から加締部53にかけての主体金具50の内周面と絶縁碍子10の後端側胴部18の外周面との間には、円環状のリング部材6,7が介在されており、さらに両リング部材6,7間にタルク(滑石)9の粉末が充填されている。
スパークプラグ100の製造時には、加締部53を内側に折り曲げるようにして先端側に押圧することにより圧縮変形部58を圧縮変形させる加締加工を行なう。加締加工を行なうことで、リング部材6,7およびタルク9を介し、絶縁碍子10が主体金具50内で先端側に向け押圧される。この押圧により、タルク9が軸線Ax方向に圧縮されて主体金具50内の気密性が高められる。
また、主体金具50の内周においては、取付ネジ部52の位置に形成された金具内段部56に、環状の板パッキン8を介し、絶縁碍子10の脚長部13の基端に位置する碍子段部15が押圧されている。この板パッキン8は、主体金具50と絶縁碍子10との間の気密性を保持する部材であり、燃焼ガスの流出が防止される。
中心電極20は、有底筒状に形成された電極母材21の内部に、電極母材21よりも熱伝導性に優れる芯材25を埋設した棒状の部材である。本実施形態では、電極母材21は、ニッケルを主成分とするニッケル合金から成り、芯材25は、銅または銅を主成分とする合金から成る。中心電極20は、電極母材21の先端が絶縁碍子10の軸孔12から突出した状態で絶縁碍子10の軸孔12に挿入され、セラミック抵抗3およびシール体4を介して端子金具40に電気的に接続されている。
接地電極30は、棒状の部材であり、その基端は、主体金具50の先端面57に溶接されている。接地電極30の先端側は、軸線Axと交差する方向に屈曲されており、接地電極30の先端部が、中心電極20の先端面と軸線Ax上で対向している。接地電極30の先端部における中心電極20と対抗する位置には、耐火花消耗性や耐酸化消耗性を向上させるために、貴金属チップ70が配置されている。
A−2.接地電極の詳細構成:
図2は、接地電極30の先端部の構成を示す断面図である。図2に示すように、接地電極30は、基部32と、貴金属チップ70と、保持部材76とを備えている。
基部32は、棒状の部材であって、例えばニッケルやニッケル合金のような耐腐食性の高い金属によって形成されている。基部32の先端部であって、中心電極20と対向する位置(図2に示す火花ギャップSGを形成する位置)には、凹部35が形成されており(図2参照)、凹部35内で、基部32に対して貴金属チップ70および保持部材76が接合されている。凹部35は、断面が円形であって、平坦面である底面36を有している。
貴金属チップ70は、略円柱形状であり、耐火花消耗性や耐酸化性に優れた貴金属で形成されている。本実施形態では、貴金属として、イリジウムまたはイリジウムを主成分とするイリジウム合金を用いている。本実施形態では、貴金属チップ70として、直径が2mm以上のチップを用いている。貴金属チップ70の直径の上限は、例えば、10mmとすることができる。なお、本実施形態では、貴金属チップ70の中心軸(以下、「チップ中心軸CL1」と呼ぶ)は、スパークプラグ100の軸線Axと略一致しているが、一致しない形状とすることも可能である。
保持部材76は、貴金属チップ70を接地電極30に接合するための中間部材である。保持部材76は、略円筒形状に形成されており、その中空部分に貴金属チップ70が挿入されている。保持部材76は、例えば、ニッケルまたはニッケルを主成分とするニッケル合金により形成することができる。なお、本実施形態の保持部材76は、本願の特許請求の範囲における「母材」に相当する。
なお、本実施形態では、保持部材76の中空部分の内径と貴金属チップ70の直径との差Δd1は、0.01ミリメートル以上、0.1ミリメートル以下とすることが好ましい。Δd1が0.1ミリメートルより大きいと、貴金属チップ70の外周面と保持部材76の内周面との隙間が過大となり、貴金属チップ70と保持部材76との接合強度の低下や、貴金属チップ70から基部32側への熱伝導効率の低下が生じ得る。一方、Δd1が0.01ミリメートルより小さいと、貴金属チップ70を保持部材76の中空部分に挿入する際に保持部材76の内壁が削られてバリが発生して、貴金属チップ70と保持部材76との位置関係にずれが生じ、貴金属チップ70と保持部材76との接合強度の低下が生じ得る。
図2に示すように、本実施形態では、保持部材76の厚さ(チップ中心軸CL1方向の長さ)T1は、貴金属チップ70の厚さT0より小さい。また、貴金属チップ70および保持部材76はいずれも、基部32の凹部35内において、凹部35の底面36に接するように配置されている。また、凹部35の深さは、保持部材76の厚さT1と略同一である。そのため、貴金属チップ70の一部(中心電極20に対向する側の部分)は、保持部材76および基部32の表面から突出している。なお、凹部35の内径と保持部材76の直径との差Δd2は、既述したΔd1と同様に、0.01ミリメートル以上、0.1ミリメートル以下とすることが好ましい。
図3は、貴金属チップ70を基部32に取り付ける工程を示す説明図である。図3(A)では、貴金属チップ70と保持部材76とを接合する様子を、レーザ照射の方向(矢印α)と共に示している。以下の説明では、一体接合された貴金属チップ70および保持部材76を、「チップ接合体31」と呼ぶ。図3(A)では、さらに、チップ接合体31を基部32の凹部35内に嵌め込む様子を、白抜き矢印によって示している。図3(B)では、チップ接合体31と基部32とを接合する様子を、レーザ照射の方向(矢印β)と共に示している。
このように、本実施形態では、貴金属チップ70がレーザ溶接により保持部材76に接合されて、チップ接合体31が形成される。そして、チップ接合体31が基部32に接合されることによって、貴金属チップ70が間接的に(保持部材76を介して)基部32に接合される。
図3(A)に示すように、本実施形態では、貴金属チップ70と保持部材76とは、貴金属チップ70が保持部材76の中空部分に挿入された状態で、チップ中心軸CL1に向かって外周側からチップ中心軸CL1に垂直な方向にレーザ照射するレーザ溶接によって、互いに接合されている。より具体的には、保持部材76の外周に沿った複数の位置で行われるレーザ溶接により形成されて、保持部材76の外周面から貴金属チップ70内部まで達する複数の溶融領域60(以後、「第1の溶融領域60」と呼ぶ)により、貴金属チップ70と保持部材76とが一体となっている。第1の溶融領域60が、本願の特許請求の範囲における「溶融領域」に相当する。
図3(B)に示すように、本実施形態では、チップ接合体31は、凹部35内に挿入されて、抵抗溶接によって凹部35の底面36に接合される。さらに、チップ接合体31と基部32とは、保持部材76の外周と凹部35の内周との境界付近において、中心電極20に対向する面に向かってチップ中心軸CL1に平行にレーザ照射することによって、レーザ溶接されている。より具体的には、レーザ溶接により形成される複数の溶融領域65(以後、「第2の溶融領域65」とも呼ぶ)により、チップ接合体31が接地電極30に接合される。
図4は、接地電極30の先端部であって、中心電極20と対向する側の面の様子を表わす平面図である。図4では、図2に示す断面の位置を、2−2断面として示している。図4では、接地電極の30表面に表われない第1の溶融領域60の位置を、破線で示している。図4に示すように、本実施形態では、16個の第1の溶融領域60が設けられており、各々の第1の溶融領域60は、ほぼ等間隔に形成されている。
また、本実施形態では、16個の第2の溶融領域65が設けられている。図4に示すように、各々の第2の溶融領域65は、第1の溶融領域60に干渉しないような位置に、略均等に(チップ中心軸CL1を中心として22.5°ずつずれた位置に)配置されている。なお、図2では、断面における第1の溶融領域60と第2の溶融領域65との位置関係等を示すために、2−2断面には表れない第1の溶融領域60や第2の溶融領域65を破線で示している。
図2に示すように、第1の溶融領域60は、保持部材76の外周面から貴金属チップ70内部に延びるように形成されている。図2では、第1の溶融領域60において、チップ中心軸CL1に最も近い点を、点TPとして示している。
図5は、チップ接合体31の断面であって、チップ中心軸CL1に直交し、点TPを通る断面の様子を表わす断面図である。以下の説明では、チップ中心軸CL1に直交して点TPを通る断面を、「TP含有断面」とも呼ぶ。図5では、第2の溶融領域65の記載は省略している。また、図2では、図5に示すTP含有断面の位置を、5−5断面として示している。
既述したように、本実施形態では、各々の第1の溶融領域60は、レーザ照射により形成されると共に、略均等に(チップ中心軸CL1を中心として一定角度θずつずれた位置に)配置されている。このような第1の溶融領域60を形成するには、例えば、貴金属チップ70と保持部材76との接合の際に、貴金属チップ70および保持部材76をチップ中心軸CL1を中心に回転させて、所定の角度だけ回転させるごとにレーザ照射を行なえばよい。このとき、レーザ照射高さ(貴金属チップ70の底面からレーザ照射軸までの、チップ中心軸CL1方向に沿った距離)は、各々の第1の溶融領域60において同じとすればよい。
図5では、TP含有断面上の各々の第1の溶融領域60におけるレーザの照射軸に一致する直線を、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2として示している。図5に示すように、隣り合う第1の溶融領域60の中心軸CL2間の角度は、本実施形態ではθ=22.5°で均一であるが、不均一とすることも可能である。ただし、チップ接合体31全体を通じて均一とする方が、接合強度がチップ接合体31全体で均一となるため望ましい。
既述したように、チップ中心軸CL1に向かって保持部材76の外周側からチップ中心軸CL1に垂直な方向にレーザ照射することにより第1の溶融領域60を形成する場合には、レーザ照射軸上に点TPが形成される。なお、図2では、貴金属チップ70の外周と点TPとの距離を、溶け込み深さkとして示している。本実施形態では、各々の第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射のエネルギは略均一であって、各々の第1の溶融領域60における溶け込み深さkは、均一となっている。
図6および図7は、本実施形態の接地電極30における特徴を説明するための説明図である。図6および図7は、図5と同様に、チップ接合体31におけるTP含有断面の様子を表わしている。図6および図7では、さらに、貴金属チップ70の外形線(貴金属チップ70の溶接前の仮想的な外周)の同心円であって、貴金属チップ70の直径の90%の長さの直径を有する同心円を同心円Aとして示している。また、図6および図7では、貴金属チップ70の外形線と同じ直径を有する同心円(すなわち、貴金属チップ70の溶接前の仮想的な外周)を、同心円Bとして示している。
本実施形態では、各々の第1の溶融領域60は、上記同心円Aを超えてチップ中心軸CL1方向に伸長して形成されている。図7では、各々の第1の溶融領域60の一部分であって、同心円Aよりもチップ中心軸CL1側に形成された部分を、中心側溶融部62としてハッチを付して示している。
なお、スパークプラグにおいてTP含有断面の様子を観察するには、チップ接合体31を、中心電極20に対向する面側からチップ中心軸CL1に沿って、チップ中心軸CL1に垂直な面が常に露出されるように少しずつ削って、同心円Bと第1の溶融領域60の最も深い部分との距離を測定し、最も深い部分の深さが最も深くなるまでこの動作を繰り返せばよい。チップ接合体を少しずつ削るときには、例えば、5μmの厚さずつ削れば良い。
第1の溶融領域60が露出する貴金属チップ70の断面において、同心円Bと第1の溶融領域60の最も深い部分との距離を測定するには、上記断面を撮像して、第1の溶融領域60について画像処理により細線化を行ない、最小二乗法等により直線に近似して、第1の溶融領域60の中心軸CL2を導出すればよい。このようにして求めた中心軸CL2上の距離を測定することにより、同心円Bと第1の溶融領域60の最も深い部分との距離を求めることができる。
図6では、各々の第1の溶融領域60において、上記同心円A上に位置する部分(同心円Aの円周のうちで各々の第1の溶融領域60を通過する部分)を、「第1溶融外周部分C」として太線で示している。本実施形態では、各々の第1の溶融領域60における第1溶融外周部分Cの長さの合計が、同心円Aの円周の長さの30%以上となっている。各々の第1の溶融領域60における第1溶融外周部分Cの長さの合計の、同心円Aの円周の長さに対する割合(以後、「同心円A上部割合」とも呼ぶ)を30%以上とすることで、第1の溶融領域60が貴金属チップ70内に伸長して形成される程度を十分に確保して、貴金属チップ70と保持部材76との接合強度を高めることができる。
ただし、同心円A上部割合が大きくなるほど、レーザ照射して第1の溶融領域60を形成する際にチップ接合体31に加えられるエネルギ量が多くなり、チップ接合体31が過熱状態となる傾向にある。そのため、チップ接合体31が過熱状態となり変形する不都合を抑制するためには、同心円A上部割合は90%以下であることが望ましく、85%以下であることがさらに望ましい。
図7では、各々の第1の溶融領域60において、上記同心円B上に位置する部分(同心円Bの円周のうちで各々の第1の溶融領域60を通過する部分)を、「第2溶融外周部分D」として太線で示している。本実施形態では、各々の第1の溶融領域60における第2溶融外周部分Dの長さの合計が、同心円Bの円周の長さの30%以上となっている。各々の第1の溶融領域60における第2溶融外周部分Dの長さの合計の、同心円Bの円周の長さに対する割合(以後、「同心円B上部割合」とも呼ぶ)を30%以上とすることで、第1の溶融領域60が貴金属チップ70内に伸長して形成される程度を十分に確保して、貴金属チップ70と保持部材76との接合強度を高めることができる。
ただし、同心円B上部割合が大きくなるほど、レーザ照射して第1の溶融領域60を形成する際にチップ接合体31に加えられるエネルギ量が多くなり、チップ接合体31がよる高温となる傾向にある。そのため、チップ接合体31が過熱状態となり変形する不都合を抑制するためには、同心円B上部割合は90%以下であることが望ましく、85%以下であることがさらに望ましい。
また、本実施形態では、第1の溶融領域60において、TP含有断面の第2溶融外周部分Dにおける貴金属チップ70を構成する金属の含有割合が、10質量%以下となっている。この含有割合は、貴金属チップ70を構成する金属が合金である場合には、当該合金の個々の成分元素の質量%の合計を指す。上記した「TP含有断面の第2溶融外周部分Dにおける貴金属チップ70を構成する金属の含有割合」を、以下では、単に「第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合」とも呼ぶ。
第1の溶融領域60において、上記第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合を求めるには、まず、既述したようにチップ接合体31を表面から削る動作と、同心円Bと第1の溶融領域60の最も深い部分との距離を測定する動作とを繰り返し、TP含有断面を露出させる。そして、加速した電子線を、TP含有断面における第1の溶融領域60の第2溶融外周部分Dの部分に照射し、EPMA(電子線マイクロアナライザ)/WDS(波長分散型X線分光器)を用いて第1の溶融領域60の組成を測定すればよい。本実施形態では、チップ接合体31に形成された各々の第1の溶融領域60において、第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合が10質量%以下となっている。
なお、第1の溶融領域60における組成は、通常は第1の溶融領域60全体で、ほぼ一定である。例えば、第1の溶融領域60において、チップ中心軸CL1に最も近い(最も深い)部位と、上記最も深い部位から最も離間した保持部材76の外周近傍との間で、貴金属チップ70を構成する金属の含有割合を比較しても、通常は、バラツキは2質量%未満となる。本実施形態では、第1の溶融領域60における貴金属チップ70を構成する金属の含有割合を測定するための基準の位置として、TP含有断面の第2溶融外周部分Dを規定している。
上記のようなチップ接合体31において、第1の溶融領域60における溶け込み深さk(貴金属チップ70の外周と点TPとの距離)が大きいほど、第1の溶融領域60を形成することによる接合強度は強まる。そのため、第1の溶融領域60における溶け込み深さkの大きさは、同心円B(貴金属チップ70の断面における溶融前の仮想的な外周)の直径の5%を超えることが望ましい。
ただし、溶接時のレーザ照射のエネルギを抑える観点から、溶け込み深さkの大きさは、同心円Bの直径の50%未満であることが好ましく、40%以下であることがより好ましい。一般に、直径が2〜10mm程度の貴金属チップ70を用いる場合には、第1の溶融領域60における第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合を10質量%以下に抑えると、溶け込み深さkの大きさは、同心円Bの直径の30%以下になる。
以上のように構成された本実施形態のスパークプラグによれば、(i)各々の第1の溶融領域60における第2溶融外周部分Dの長さの合計の、同心円Bの円周の長さに対する割合(同心円B上部割合)が、30%以上となっており、(ii)各々の第1の溶融領域60における第1溶融外周部分Cの長さの合計の、同心円Aの円周の長さに対する割合(同心円A上部割合)が、30%以上となっている。そのため、直径が2mm以上という比較的大きな直径の貴金属チップ70を用いる際に、互いに離間した第1の溶融領域60を複数設ける場合であっても、貴金属チップ70内に形成される第1の溶融領域60の体積を確保して、貴金属チップ70と保持部材76との間の接合強度を高めることができる。
チップ接合体31においては、溶接のためのレーザ照射の発数をより増加させて、例えば、第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射の位置を互いに近づけることによって隣り合う第1の溶融領域60同士が重なるように形成し、第1の溶融領域60を、同心円Aの全周にわたって同心円Aの円周よりもチップ中心軸CL1側にまで広がる形状とすることも可能である。しかしながら、このようにレーザ照射の発数を増加させると、照射によってチップ接合体31に加えられるエネルギが過剰となってチップ接合体31が過熱されることに起因する不都合が生じ得る。
本実施形態では、上記(i)および(ii)の構成を採用することにより、直径が2mm以上という比較的大きな直径の貴金属チップ70を用いる場合であっても、レーザ照射の発数を抑制しつつ、貴金属チップ70内に形成される第1の溶融領域60の体積を確保して、貴金属チップ70と保持部材76との間の接合強度を高めることができる。
また、本実施形態によれば、チップ接合体31において、互いに離間する複数の中心側溶融部62が形成されると共に、上記(i)および(ii)の構成を備えるという構成要件を満たすため、貴金属チップ70の保持部材76からの脱落を抑える効果を高めることができる。
すなわち、貴金属チップ70の構成材料と第1の溶融領域60の構成材料とは、線膨張係数が異なっているため、スパークプラグ100の使用に伴って冷熱サイクルに晒されると、貴金属チップ70と第1の溶融領域60との境界部分にクラックが生じ得る。本実施形態では、上記構成要件を満たすことにより、貴金属チップ70内に複数の第1の溶融領域60が潜り込んで形成されると共に、溶融していない貴金属チップ70の部分と第1の溶融領域60との境界の面積をより広く確保して、貴金属チップ70の脱落を抑制することができる。
図8は、貴金属チップ70と第1の溶融領域60との境界である境界部Eを示す説明図である。図8(A)は、TP含有断面の様子を表わし、図8(B)は、第1の溶融領域60およびチップ中心軸CL1を含む断面の様子を表わす。境界部Eが貴金属チップ70内で図8に示す形状(貴金属チップ70内に嵌まり込む形状)で形成されることにより、スパークプラグ100が冷熱サイクルに晒されて境界部Eにクラックが生じたとしても、第1の溶融領域60が楔のように貴金属チップ70に係合することができる、そのため、貴金属チップ70の脱落を抑制することができる。
特に、本実施形態では、(iii)第1の溶融領域60において、TP含有断面の第2溶融外周部分Dにおける貴金属チップ70を構成する金属の含有割合(第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合)が、10質量%以下となっている。その結果、第1の溶融領域60の構成材料と貴金属チップ70の構成材料との間で線膨張係数差がより大きくなっており、第1の溶融領域60の構成材料と保持部材76の構成材料の間で線膨張係数差がより小さくなっている。
そのため、スパークプラグ100が冷熱サイクルに晒されたときには、図7に示す第2溶融外周部分Dに対応する位置(貴金属チップ70の溶接前の仮想的な外周)よりも、図8に示す境界部Eにおいてクラックがより生じやすくなる。図7に示す第2溶融外周部分Dにおいてクラックが生じると、貴金属チップ70が保持部材76から脱落し易くなるが、境界部Eでクラックが生じ易くなることにより、既述したように第1の溶融領域60が貴金属チップ70に係合して、貴金属チップ70の脱落が抑制される。
また、本実施形態では、上記(iii)の構成要件を満たすことにより、貴金属チップ70と保持部材76とを溶接するためのレーザの照射エネルギが抑えられている。そのため、溶接の工程でチップ接合体31が過熱になることが抑えられ、過熱に起因する保持部材76の変形などの不都合を抑制することができる。
図9は、同心円B上部割合と、同心円Bの直径に対する溶け込み深さkの割合とを、種々異ならせた複数の接地電極30を作製し、貴金属チップ70と保持部材76との間の接合強度を調べた結果を示す説明図である。図9に示すように、チップ接合体31として、同心円B上部割合が、20%、30%、および50%の3種類を用意した。また、チップ接合体31として、同心円Bの直径に対する溶け込み深さkの割合が、2%、5%、および10%のものを用意した。
一つのチップ接合体31に形成される第1の溶融領域60の数は、16で統一した。上記接合強度を調べるためには、貴金属チップ70として、イリジウム製の貴金属チップを用い、保持部材76としてニッケル製の保持部材を用いた。
同心円B上部割合、および同心円Bの直径に対する溶け込み深さkの割合は、第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射時の出力、およびレーザ照射時間を調節することにより制御することができる。レーザ照射の出力および照射時間を種々変更して異なるサンプルを作製し、各サンプルについて、TP含有断面における同心円B上部割合および同心円Bの直径に対する溶け込み深さkを調べた。そして、図9に示す同心円B上部割合、および同心円Bの直径に対する溶け込み深さkとなる照射条件を決定し、決定した条件で新たに作製したサンプルを用いて、接合強度を調べた。
接合強度は、図9に示した複数種類の接地電極30の各々を備えるスパークプラグを作製し、これらのスパークプラグについて振動試験を行なうことにより評価した。すなわち、作製した各スパークプラグを、エンジンヘッドと同様のアルミ材を用いて作製したアルミブッシュに締付トルク20N・mで取り付け、ISO11565の3.4.4項に示される振動試験を実施した。具体的には、加速度30G±2G、周波数50〜500Hz、スイープ率1オクターブ/分の振動を、スパークプラグの軸線Ax方向に与えた。その際、バーナを用いてスパークプラグを加熱する動作と、加熱を停止してスパークプラグを冷却する動作とを1サイクルとして、これらの動作を繰り返した。
1サイクル当たりの上記加熱の動作は、800℃にて2分間であり、1サイクル当たりの上記冷却の動作は、1分間とした。そして、貴金属チップ70が脱落するまでのサイクル数を測定した。図9では、貴金属チップ70の脱落までのサイクル数が500未満の場合を「×」としており、脱落までのサイクル数が500以上1000未満の場合を「○」としており、脱落までのサイクル数が1000以上の場合を「◎」としている。
図9に示すように、同心円B上部割合を30%以上とすることで、接合強度を顕著に向上させることができることが確認された。ただし、同心円Bの直径に対する溶け込み深さkの割合が2%のときには、同心円B上部割合を50%以上にしても、接合強度は不十分であった。そして、同心円Bの直径に対する溶け込み深さkの割合を5%以上にすることで、より十分な接合強度を実現することができた。
図10は、同心円B上部割合を30%で一定にすると共に、同心円A上部割合を種々異ならせた複数の接地電極30を作製し、貴金属チップ70と保持部材76との間の接合強度を調べた結果を示す説明図である。図10に示すように、チップ接合体31として、同心円A上部割合が、20%、30%、および50%の3種類を用意した。用いた貴金属チップ70および保持部材76の条件は、図9に結果を示したサンプルと同様であり、一つのチップ接合体31に形成される第1の溶融領域60の数は、16で統一した。また、接合強度は、図9に結果を示した接合強度の評価方法と同じ方法により調べており、接合強度の評価結果の記載方法も、図9と同様である。
図11は、図10に結果を示したサンプル(同心円A上部割合が20%および30%のサンプル)における第1の溶融領域60の形状を示す説明図である。同心円A上部割合が50%のサンプルは、第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射を一定の出力で行なったため、第1の溶融領域60は、図5に模式的に示したように、先端部(チップ中心軸CL1に近接する部分)以外は幅が略一定となる形状を有している。これに対して、同心円A上部割合が20%および30%のサンプルは、図11に示すように、先端部(同心円Bよりもチップ中心軸CL1に近い側の部分)の幅がより細い形状となっている。
このような形状の第1の溶融領域60を形成するには、最初に、より大きな出力である第1の出力でレーザ照射して、貴金属チップ70のより深い位置にまで溶融領域を形成して、上記した幅がより細い先端部を含む部分を形成した。その後、レーザ照射の出力を、より低い第2の出力に低下させて、貴金属チップ70の溶融を抑制しつつ、貴金属チップ70よりも融点が低い保持部材76の溶融を促進し、第1の溶融領域60のうちの保持部材76に形成される部分の幅を広くした。
上記第1の出力と第2の出力、および、各々の出力でレーザ照射する時間を調節することにより、同心円B上部割合および同心円A上部割合を制御することができる。上記第1の出力と第2の出力、および、各々の出力でレーザ照射する時間を種々変更して異なるサンプルを作製し、各サンプルについて、TP含有断面における同心円B上部割合および同心円A上部割合を調べた。そして、同心円B上部割合が30%であって、同心円A上部割合が図11に示す各値となる照射条件を決定し、決定した条件で新たに作製したサンプルを用いて、接合強度を調べた。
図10に示すように、同心円A上部割合を30%以上とすることにより、接合強度を顕著に高めることができることが確認された。
図12は、同心円B上部割合が30%、且つ、同心円Bの直径に対する溶け込み深さkの割合が5%であって、第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合を異ならせた複数の接地電極30を作製し、貴金属チップ70と保持部材76との間の接合強度を調べた結果を示す説明図である。図12に示すように、チップ接合体31として、第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合が、5質量%、10質量%、および11質量%の3種類を用意した。
用いた貴金属チップ70の条件、および保持部材76の構成材料は、図9に結果を示したサンプルと同様であり、一つのチップ接合体31に形成される第1の溶融領域60の数は、16で統一した。また、接合強度は、図9に結果を示した接合強度の評価方法と同じ方法により調べており、接合強度の評価結果の記載方法も、図10と同様である。
同心円B上部割合、同心円Bの直径に対する溶け込み深さk、および第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合は、第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射時の出力、レーザ照射時間、および保持部材76の厚みを調節することにより制御することができる。
レーザの出力、照射時間、および保持部材76の厚みを種々変更した異なるサンプルを作製し、各サンプルについて、TP含有断面における同心円B上部割合、同心円Bの直径に対する溶け込み深さk、および第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合を調べた。そして、同心円B上部割合および同心円Bの直径に対する溶け込み深さkが既述した値となり、第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合が図12に示す値となる条件を決定し、決定した条件で新たに作製したサンプルを用いて、接合強度を調べた。図12における加熱温度は、図9に結果を示した接合強度の評価方法と同様の評価方法における加熱の動作時の加熱温度を示す。
図12に示すように、第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合を10質量%以下とすることで、加熱温度が1000℃という極めて厳しい冷熱サイクルに晒しても、接合強度を顕著に高めることができることが確認された。
B.第2の実施形態:
図13は、第2の実施形態のスパークプラグが備えるチップ接合体31の、TP含有断面の様子を模式的に表わす断面図である。第2の実施形態を含む以後の実施形態の説明では、第1実施形態と共通する部分には同じ参照番号を付して詳しい説明は省略する。
第2の実施形態では、第1の実施形態と同様に、互いに離間する複数の第1の溶融領域60が形成されているが、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2は、第1の実施形態とは異なりチップ中心軸CL1と交わらない。すなわち、第1の溶融領域60の中心軸CL2と、この中心軸CL2に平行であってチップ中心軸CL1を通過する直線CL3とが離間している。
第2の実施形態では、上記中心軸CL2と上記直線CL3との距離D1(以下、オフセット量D1とも呼ぶ)は、各々の第1の溶融領域60において一定の値となっている。具体的には、図13では、オフセット量D1は、貴金属チップ70の半径R(同心円Bの半径R)の4分の3となっている。
また、第2の実施形態では、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2は、対応する直線CL3に対して、同じ側に配置している(オフセットの向きが同じである)。すなわち、TP含有断面において、チップ中心軸CL1を中心とする一定の回転方向ですべての直線CL3を順次辿ると、各々の直線CL3に対応する中心軸CL2は、常に、上記回転方向に対して同じ側に配置されている。
このような第2の実施形態では、レーザ照射の出力、レーザ照射の時間、および保持部材76の厚みを調節することにより、第1の実施形態と同様に、既述した(i)〜(iii)の構成要件が満たされている。すなわち、(i)第1の溶融領域60の同心円B上部割合が、30%以上となっており、(ii)第1の溶融領域60の同心円A上部割合が、30%以上となっており、(iii)第1の溶融領域60の第2溶融外周部分Dにおける貴金属割合が、10質量%以下となっている。
なお、第2の実施形態のように、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2がチップ中心軸CL1と交わらない場合には、通常は、第1の溶融領域60においてチップ中心軸CL1に最も近い点である点TPは、第1の溶融領域60の中心軸CL2上に無い(図13参照)。ただし、一定の出力でのレーザ照射により第1の溶融領域60を形成する場合には、通常は、チップ中心軸CL1に直交する断面のうち、点TPを通る断面と、第1の溶融領域60の中心軸CL2を通る断面とは一致する。
以上のように構成された第2の実施形態のスパークプラグによれば、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。さらに、第2の実施形態では、第1の溶融領域60の中心軸CL2と、中心軸CL2に平行であってチップ中心軸CL1を通過する直線CL3とが離間しているため、第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射によってチップ接合体31全体に加えられるエネルギ量(熱量)を抑制することができる。
これは、中心軸CL2とチップ中心軸CL1とが交わる場合(図5に示す第1の実施形態)に比べて、上記(i)および(ii)の構成要件を満たすために必要な第1の溶融領域60の数が少なくなり、第1の溶融領域60を形成するために要するレーザ照射の発数がより少なくて済むためである。すなわち、中心軸CL2がチップ中心軸CL1と交わらない角度で形成されることにより、同じ幅の第1の溶融領域60を形成する場合であっても、各々の第1の溶融領域60における第2溶融外周部分Dの長さ(図7参照)および第1溶融外周部分Cの長さ(図6参照)が、中心軸CL2とチップ中心軸CL1とが交わる場合(図5に示す第1の実施形態)に比べて、より長くなるためである。
上記のように第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射時にチップ接合体31に加えられるエネルギ量が削減されると、保持部材76の過熱による変形を抑えて、接地電極30の耐久性を高めることができる。
すなわち、保持部材76が変形すると、チップ接合体31を基部32に溶接して接地電極30を作製する際に、チップ接合体31と基部32(凹部35の内壁面)との間に隙間が生じ得る。チップ接合体31と基部32との間に隙間が生じると、チップ接合体31と基部32との間の伝熱効率が低下するため、スパークプラグの使用に伴って接地電極30が冷熱サイクルに晒されたときに、貴金属チップ70あるいはチップ接合体31が過熱状態になり得る。
上記過熱状態が引き起こされると、構成材料が異なる(線膨張係数が異なる)部位間にクラックが生じたり、構成材料の酸化が進行することにより、貴金属チップ70やチップ接合体31が脱落し易くなる。あるいは、保持部材76が変形すると、貴金属チップ70を接合した保持部材76を基部32の凹部35に取り付ける際の精度が低下して、チップ接合体31の接合強度(耐久性)が低下し得る。第2の実施形態では、レーザ照射時にチップ接合体31に加えられるエネルギ量を削減することにより、上記不都合を抑えることができる。
なお、中心軸CL2と直線CL3との距離D1(オフセット量D1)が大きいほど、個々の第1の溶融領域60における第2溶融外周部分Dおよび第1溶融外周部分Cの長さが長くなるため、既述した(i)および(ii)の構成要件を満たすために必要なレーザ照射の発数を減らすことができる。レーザ照射の発数を抑えて保持部材76の変形を抑える観点からは、オフセット量D1は、貴金属チップ70の半径R(同心円Bの半径R)の2分の1以上とすることが好ましい。オフセット量D1は、貴金属チップ70の半径Rよりも小さい値であって、既述した(i)および(ii)の構成要件を満たすならば、大きい方が望ましい。
図14は、オフセット量D1が貴金属チップ70の半径Rの2分の1であるサンプルにおけるTP含有断面の様子を表わす断面図である。また、図15は、オフセット量D1が貴金属チップ70の半径Rの3分の1であるサンプルにおけるTP含有断面の様子を表わす断面図である。
図13、図14、および図15に示すサンプルでは、オフセット量D1が各々の値を満たしつつ、いずれのサンプルにおいても既述した(i)および(ii)の構成要件を満たすように、1つの第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射の条件として共通する条件を設定した。また、いずれのサンプルにおいても、オフセット量D1が上記した値を満たしつつ、隣り合う第1の溶融領域60間の距離が均等となるように、第1の溶融領域60を形成した。
C.第3の実施形態:
図16は、第3の実施形態のチップ接合体31におけるTP含有断面の様子を表わす断面図である。第3の実施形態では、第2の実施形態と同様に、構成要件(i)〜(iii)を満たすと共に、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2と、この中心軸CL2に平行であってチップ中心軸CL1を通過する直線CL3とが離間している。ただし、第3の実施形態では、各々の第1の溶融領域60におけるオフセット量D1が、チップ接合体31全体として不均一となっている。
このような構成としても、第2の実施形態と同様の効果を奏することができる。ただし、チップ接合体31全体で、貴金属チップ70と保持部材76との間の接合強度を均等に確保する観点からは、第2の実施形態のように、オフセット量D1はチップ接合体31全体で均一であることが望ましい。
D.第4の実施形態:
図17は、第4の実施形態のチップ接合体31におけるTP含有断面の様子を表わす断面図である。第4の実施形態では、第2および第3の実施形態と同様に、構成要件(i)〜(iii)を満たすと共に、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2と、この中心軸CL2に平行であってチップ中心軸CL1を通過する直線CL3とが離間している。
ただし、第4の実施形態では、第2および第3の実施形態のように、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2が対応する直線CL3に対して同じ側に配置しているのではなく、対応する直線CL3に対して異なる側に中心軸CL2が配置されている第1の溶融領域60を備えている。すなわち、オフセットの向きが異なる第1の溶融領域60を備えている。
このような構成としても、第2および第3の実施形態と同様の効果を奏することができる。ただし、オフセットの向きが異なる第1の溶融領域60を設けると、特に保持部材76と貴金属チップ70との境界の近傍において、第1の溶融領域60同士が重なる部分が生じ得る。このような部分では、貴金属比率が大きく変更されて線膨張係数差がより大きくなることに起因して、クラックが生じ易くなる。
これを避けるために、第1の溶融領域60同士が重ならないように、オフセットの向きが異なる第1の溶融領域60を設けようとすると、チップ接合体31全体で、第1の溶融領域60の密度や接合強度が不均一になる。また、既述した(i)および(ii)の構成要件を満たすことも困難となる。また、オフセットの向きが同じであれば、複数の第1の溶融領域60を形成するためのレーザ照射の際に、例えば、貴金属チップ70を嵌め込んだ保持部材76を一定の方向に回転させながらレーザ照射すればよいため加工性が高まるが、オフセットの向きを異ならせる場合には、レーザ照射の動作がより複雑化する。
従って、オフセットの向きは、第1〜第3の実施形態のように、同じ向きであることが望ましい。
E.第5の実施形態:
図18は、第5の実施形態のチップ接合体31におけるTP含有断面の様子を表わす断面図である。第5の実施形態では、第2および第3の実施形態と同様に、構成要件(i)〜(iii)を満たすと共に、各々の第1の溶融領域60の中心軸CL2と、この中心軸CL2に平行であってチップ中心軸CL1を通過する直線CL3とが離間している。ただし、第5の実施形態では、貴金属チップ70は、円柱状ではなく、円環状に形成されている。このような構成としても、第2および第3の実施形態と同様の効果を奏することができる。
F.第6の実施形態:
図19は、第6の実施形態の接地電極130の先端部における、チップ中心軸CL1を含む断面の様子を表わす断面図である。第6の実施形態の接地電極130では、第1〜第5の実施形態とは異なり、貴金属チップ70は保持部材を間に介することなく基部32に直接溶接されている。すなわち、第6の実施形態では、貴金属チップ70を溶接する母材が、保持部材76ではなく基部32となっている。
具体的には、貴金属チップ70は、基部32の凹部35内に挿入された状態で、チップ中心軸CL1に向かって外周側から照射されるレーザによって基部32に溶接され、これによって第1の溶融領域160が形成される。このような構成としても、既述した構成要件(i)および(ii)、さらに(iii)を満たすことにより、第1の実施形態と同様の効果を奏することができる。
G.第7の実施形態:
図20は、第7の実施形態の中心電極220の先端部の様子を表わす断面図である。図20に示すように、電極チップの溶接に係る構成は、接地電極30に代えてあるいは接地電極30に加えて、中心電極側に適用しても良い。図20に示す中心電極220では、貴金属チップ270は、電極母材21(図1参照)の先端部に設けられた凹部235内に配置され、チップ中心軸CL1に向かって外周側から照射されるレーザによって電極母材21に溶接されている。そして、レーザ溶接によって、貴金属チップ270と電極母材21との間には第1の溶融領域260が形成されている。
このような構成としても、既述した構成要件(i)および(ii)、さらに(iii)を満たすことにより、既述した実施形態と同様の効果を奏することができる。なお、図20では、貴金属チップ270と電極母材21とを直接接触させて溶接しているが、第1〜第5の実施形態と同様に、貴金属チップ270と電極母材21との間に保持部材76を配置して、貴金属チップを溶接する母材として保持部材76を用いてもよい。
H.変形例:
なお、この発明は上記の実施例や実施形態に限られるものではなく、その要旨を逸脱しない範囲において種々の態様において実施することが可能であり、例えば次のような変形も可能である。
・変形例1(貴金属チップの構成金属の変形):
上記各実施形態では、貴金属チップは、イリジウムまたはイリジウム合金により形成したが、異なる貴金属あるいは貴金属合金を用いて貴金属チップを形成しても良い。例えば、白金、ルテニウム、およびロジウムから選択される貴金属、あるいはこのような貴金属を主成分とする合金により形成してもよい。
ただし、これら貴金属の中ではイリジウムが最も線膨張係数が小さいため、イリジウムあるいはイリジウム合金を用いる場合には、貴金属チップと、貴金属チップを溶接する母材や第1の溶融領域との間で線膨張係数の差が特に大きくなり、貴金属チップの外周近傍でクラックが生じやすくなる。そのため、イリジウムまたはイリジウム合金により貴金属チップを構成する場合には、既述した構成要件(i)および(ii)、あるいはさらに(iii)を備えることにより、貴金属チップの脱落を抑制する効果を、特に顕著に得ることができる。
・変形例2(溶接方法の変形):
貴金属チップと母材との間の溶接は、既述した各実施形態で示したレーザ溶接の他、例えば、アーク溶接、あるいは電子ビーム溶接により行なってもよい。母材の外周から貴金属チップ側に向かってエネルギを照射することにより溶接し、照射軸に沿った第1の溶融領域を形成することができるならば、各実施形態と同様に本願発明を適用できる。
・変形例3(第1の溶融領域の組成の変形):
上記各実施形態では、第1の溶融領域において、TP含有断面の第2溶融外周部分Dにおける貴金属チップ70を構成する金属の含有割合を10質量%以下としたが(構成要件(iii))異なる構成としてもよい。構成要件(iii)を満たさなくても、少なくとも構成要件(i)および(ii)を満たすことにより、直径が2mm以上という比較的大きな直径の貴金属チップを用いる場合であっても、貴金属チップの接合強度を高めて耐久性を向上させる既述した効果が得られる。
・変形例4(第1の溶融領域の形状の変形):
上記各実施形態では、第1の溶融領域は、互いに離間する複数の独立溶融部によって構成されることとしたが、第1の溶融領域同士が完全に離間するのではなく、第1の溶融領域同士が重なる領域があってもよい。具体的には、例えば、保持部材76などの母材において、隣り合う第1の溶融領域同士が重なって形成されていてもよく、チップ接合体31全体で第1の溶融領域が連続して設けられていてもよい。また、貴金属チップ全体で、各々の第1の溶融領域における溶け込み深さk(図2参照)を不均一とすることも可能である。
いずれの場合であっても、第1の溶融領域が、同心円Aよりもチップ中心軸CL1側の領域に形成された複数の中心側溶融部を備え、既述した構成要件(i)および(ii)、あるいはさらに(iii)を満たすことにより、実施形態と同様の効果を得ることができる。
・変形例5(第1の溶融領域の配置の変形):
図21は、他の変形例としての中心電極320におけるチップ中心軸CL1を含む断面の様子を表わす断面図である。既述した各実施形態では、第1の溶融領域として、レーザ照射高さ(貴金属チップの底面からレーザ照射軸までの、チップ中心軸CL1方向に沿った距離)が同じである複数の第1の溶融領域が設けられている。これに対して図21に示す変形例では、レーザ照射高さが同じである複数の第1の溶融領域のグループを、チップ中心軸CL1に沿って複数段備えている。
このような場合であっても、レーザ照射高さが共通する各々のグループにおいて、既述した構成要件(i)および(ii)、あるいはさらに(iii)を備えることにより、実施形態と同様の効果を得ることができる。このような構成は、接地電極に適用しても良く、また、溶接のための母材として保持部材を用いてもよい。
本発明は、上述の実施形態や実施例、変形例に限られるものではなく、その趣旨を逸脱しない範囲において種々の構成で実現することができる。例えば、発明の概要の欄に記載した各形態中の技術的特徴に対応する実施形態、実施例、変形例中の技術的特徴は、上述の課題の一部又は全部を解決するために、あるいは、上述の効果の一部又は全部を達成するために、適宜、差し替えや、組み合わせを行うことが可能である。また、その技術的特徴が本明細書中に必須なものとして説明されていなければ、適宜、削除することが可能である。
3…セラミック抵抗
4…シール体
5…ガスケット
6…リング部材
8…板パッキン
9…タルク
10…絶縁碍子
12…軸孔
13…脚長部
15…碍子段部
17…先端側胴部
18…後端側胴部
19…中央胴部
20,220,320…中心電極
21…電極母材
25…芯材
30,130…接地電極
31…チップ接合体
32…基部
33…穴
35,235…凹部
36…底面
40…端子金具
50…主体金具
51…工具係合部
52…取付ネジ部
53…加締部
54…ガスケット受け部
56…金具内段部
57…先端面
58…圧縮変形部
60,160,260…第1の溶融領域
62…中心側溶融部
65…第2の溶融領域
70,270…貴金属チップ
76…保持部材
80…ピン
82…バーナ
100…スパークプラグ
200…エンジンヘッド
201…取付ネジ孔

Claims (5)

  1. 貴金属を含有する断面円形の貴金属チップと、該貴金属チップの外周を囲むように配置された母材と、を有する電極であって、前記貴金属チップが前記母材に溶接されており、前記母材から前記貴金属チップにわたって、前記母材と前記貴金属チップとが溶け合った溶融領域が形成されている電極を備えるスパークプラグにおいて、
    前記貴金属チップの直径は2mm以上であり、
    前記貴金属チップの中心軸CL1に直交し、前記溶融領域のうち前記中心軸CL1に最も近い点を通る断面において、
    前記溶融領域は、前記貴金属チップの外形線の同心円であって、前記貴金属チップの直径の90%の長さの直径を有する同心円Aの円周よりも、前記貴金属チップの中心側の領域に形成された複数の中心側溶融部を備え、
    前記同心円A上に位置する前記溶融領域における前記同心円A上の長さの合計が、前記同心円Aの円周の長さの30%以上であり、
    前記貴金属チップの前記外形線の直径と同じ直径を有する同心円B上に位置する前記溶融領域における前記同心円B上の長さの合計が、前記同心円Bの円周の長さの30%以上であることを特徴とする
    スパークプラグ。
  2. 請求項1記載のスパークプラグであって、
    前記溶融領域において、前記断面における前記同心円Bの円周と重なる部分における前記貴金属チップを構成する金属の含有割合が、10質量%以下である
    スパークプラグ。
  3. 請求項1または2に記載のスパークプラグであって、
    前記溶融領域は、前記中心側溶融部のいずれかを含み互いに離間する複数の独立溶融部を備え、
    前記断面において、各々の前記独立溶融部の中心軸CL2が、該中心軸CL2に平行で前記貴金属チップの中心軸CL1を通る直線から離間している
    スパークプラグ。
  4. 請求項3記載のスパークプラグであって、
    各々の前記独立溶融部における前記中心軸CL2は、該各々の中心軸CL2に平行で前記貴金属チップの中心軸CL1を通る各々の直線に対して、いずれも同じ側に離間している
    スパークプラグ。
  5. 請求項1から4のいずれか1項に記載のスパークプラグであって、
    前記貴金属チップは、イリジウムまたはイリジウム合金により形成される
    スパークプラグ。
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