JP2015072997A - 電子部品加工用粘着シートおよび半導体装置の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】有機溶剤と接触しても、粘着剤層の粘着力を維持でき、また基材にしわが発生することがなく、チップのピックアップ性に優れる電子部品加工用粘着シートを提供する。【解決手段】本発明の電子部品加工用粘着シートは、基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなり、基材がポリブチレンテレフタレートフィルムまたはその積層物であり、粘着剤層が、エネルギー線硬化性重合体を含み、該エネルギー線硬化性重合体が、その構成する単量体の全質量中、メチル(メタ)アクリレートの質量割合が8質量%以上であるアクリル系重合体にエネルギー線硬化性基を付加したものである。【選択図】なし

Description

本発明は、半導体ウエハを回路毎に個片化し、半導体チップを作成する際に、半導体ウエハを固定するために使用されるダイシングシート、あるいは個片化されたチップが転写され、その後にピックアップするためのピックアップシートとして好ましく用いられる電子部品加工用粘着シートに関し、特に有機溶剤、とりわけ低極性有機溶剤への耐性に優れた電子部品加工用粘着シートに関する。また、本発明は該電子部品加工用粘着シートを使用した半導体装置の製造方法に関する。特に本発明の電子部品加工用粘着シートは、表面に突起状電極を有する半導体ウエハあるいはチップ、たとえばいわゆる貫通電極(TSV/Through Silicon Via)を有する半導体ウエハ、チップを固定し、低極性有機溶剤により洗浄する工程を含む半導体装置の製造方法に好ましく用いられる。
半導体ウエハは表面に回路が形成された後、ウエハの裏面側に研削加工を施し、ウエハの厚さを調整する裏面研削工程およびウエハをダイシングシート上に固定し、所定のチップサイズに個片化するダイシング工程が行われる。チップサイズに個片化された半導体チップは、ダイシングシートからピックアップされ、次の工程に移送される。
半導体チップの薄型化に伴い、従来350μm程度の厚みであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。
また、電子回路の大容量化、高機能化に対応して、複数の半導体チップを立体的に積層した積層回路の開発が進んでいる。このような積層回路においては、従来は半導体チップの導電接続をワイヤボンディングにより行うことが一般的であったが、近年の小型化・高機能化の必要性により、ワイヤボンディングをすることなく、半導体チップに回路形成面から裏面に貫通する電極(TSV)を設けて、直接上下のチップ間を導電接続する方法が効果的な手法として開発されている。貫通電極付チップの製造方法としては、例えば、半導体ウエハの所定の位置にプラズマ等により貫通孔を設け、この貫通孔に銅等の導電体を流し込んだ後、エッチング等を施して半導体ウエハの表面に回路と貫通電極とを設ける方法等が挙げられる。
このような極薄ウエハや、TSVウエハは、極めて割れやすいため、裏面研削工程や、その後の加工工程や移送工程で破損することがある。このため、これらの工程中、ウエハはガラスなどの硬質支持体上に接着剤層を介して保持される。
ウエハの裏面研削およびその後の加工の終了後、ウエハは硬質支持体から、ダイシングシートと呼ばれる粘着シート上に転着され、ダイシングシートの外周部をリングフレームにより固定した後、ウエハを回路毎に切断してチップ化し、その後ダイシングシートからチップがピックアップされることがある。ウエハをダイシングシートに転着する際には、ウエハが固定された硬質支持体のウエハ側の面をダイシングシート上に貼着し、硬質支持体をウエハから剥離して、ウエハをダイシングシートに転着する。硬質支持体を剥離する際には、加熱して接着剤を軟化させて硬質支持体をスライドさせる熱スライドや、レーザー光照射により接着剤を分解して硬質支持体の剥離を行う。しかし、硬質支持体を剥離した後のウエハ面には、接着剤やその分解物が残着することがあった。
また、硬質支持体上にウエハを保持し、ブレードを用いたダイシング等の手段によりこれを個片化してチップとした後に、ピックアップシートと呼ばれる粘着シート上に転写し、チップのピックアップを行うことも提案されている。硬質支持体からチップを直接ピックアップすることは困難であるため、軟質なピックアップシート上にチップを転写することで、チップのピックアップが容易になる。しかし、ピックアップシート上に転写されたチップにも、上記と同様に接着剤やその分解物が残着することがあった。
残着した接着剤残渣を洗浄除去するため、ダイシングシートやピックアップシート(以下、粘着シートと総称する)上に固定されたウエハやチップ(以下、被着体と総称する)はオレフィン系、テルペン誘導体系等の低極性有機溶剤により洗浄されることがある。この洗浄は、たとえば粘着シートと被着体との積層物を低極性有機溶剤に浸漬したり、あるいは被着体よりやや大きな枠を、被着体を囲繞するように粘着シート上に配置し、枠内に低極性有機溶剤を投入して被着体を洗浄している。なお、被着体がチップである場合には、チップ群の外径寸法よりもやや大きな枠を使用する。
有機溶剤を用いた被着体の剥離あるいは洗浄に際しては、被着体のみでなく、粘着シートも有機溶剤が接触する。この際、有機溶剤により粘着シートの粘着剤層が膨潤または溶解し、粘着力が失われ、被着体が粘着シートから脱落することがあった。また、有機溶剤により粘着シートの基材にしわが発生し、その後の加工工程(ダイシングやピックアップ)が困難になることがあった。
また、特許文献1(特開2009−177033号公報)では、以下のような方法によりチップを得ている。まず、硬質支持体上に接着剤層を介してウエハを保持してウエハの裏面研削を行う。そして、硬質支持体側にダイシングシートと呼ばれる粘着シートを貼付し、ウエハのダイシングを行い、ウエハをチップ化する。次いで、硬質支持体側に貼付したダイシングシートを剥離した後、チップに別のダイシングシートを貼付し、紫外線照射によりダイシングシートの粘着剤層を硬化する。そして、有機溶剤により接着剤層を溶かして硬質支持体の剥離を行い、ダイシングシート上に貼付されたチップを得ている。
特開2009−177033号公報
しかしながら、特許文献1に記載された方法では、硬質支持体を剥離する際に硬質支持体と共にチップがダイシングシートから剥離することがあった。
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、有機溶剤と接触しても、粘着剤層の粘着力を維持でき、また基材にしわが発生することがなく、チップのピックアップ性に優れる電子部品加工用粘着シートを提供することを目的としている。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなり、
基材がポリブチレンテレフタレートフィルムまたはその積層物であり、
粘着剤層が、エネルギー線硬化性重合体を含み、
該エネルギー線硬化性重合体が、その構成する単量体の全質量中、メチル(メタ)アクリレートの質量割合が8質量%以上であるアクリル系重合体にエネルギー線硬化性基を付加したものである、電子部品加工用粘着シート。
〔2〕粘着剤層表面において、25℃における水に対する接触角が82.5°以上である〔1〕に記載の電子部品加工用粘着シート。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の電子部品加工用粘着シート上に半導体ウエハを保持した状態で、該粘着シートとウエハとの積層物を有機溶剤に接触させる工程を含む、半導体装置の製造方法。
〔4〕有機溶剤のSP値が9 (cal/cm3)1/2以下である〔3〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔5〕接触工程が接着剤、または接着剤および支持体の除去工程である〔3〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔6〕半導体ウエハが、その表面に有機膜が形成されたウエハである〔3〕〜〔5〕のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
本発明に係る電子部品加工用粘着シートによれば、粘着剤層は有機溶剤、とりわけ低極性有機溶剤(以下、単に「低極性溶剤」と記載することがある。)に対し優れた耐性を示す。このため、支持体からウエハを剥離する際、あるいはその後の洗浄工程において粘着剤層が有機溶剤に接触しても、粘着剤層の膨潤や溶解は抑制され、粘着力が維持される。したがって、剥離工程や洗浄工程における被着体(ウエハ、チップ)の脱落、破損がない。また、基材も有機溶剤に対し優れた耐性を示す。このため、基材が有機溶剤に接触しても、しわの発生が抑制される。さらにまた、ピックアップ工程においてチップ割れの発生を抑制し、優れたピックアップ力を示す。
その結果、洗浄工程後においても、ダイシング工程やピックアップ工程等を良好に行うことができ、半導体装置の生産効率の向上に寄与しうる。
以下、本発明に係る電子部品加工用粘着シートについて、具体的に説明する。本発明に係る電子部品加工用粘着シートは、基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなる。
(基材)
基材はポリブチレンテレフタレートフィルムまたはその積層物である。ポリブチレンテレフタレートからなる基材は、d−リモネン、1−ドデセンやメンタンなどの低極性溶剤に耐性を有し、低極性溶剤に接触しても溶解、膨潤ないし変形しにくい。そのため、基材の変形に伴う粘着剤層の変形を抑制し、ウエハやチップなどの被着体が脱落することを防止できる。また、ポリブチレンテレフタレートからなる基材を用いることで、基材の剛性が過度に大きくなることを抑制し、被着体のピックアップを行うことが容易になる。
また、基材の破断伸度は好ましくは400%以上、より好ましくは550〜1000%である。基材の破断伸度を上記範囲にすることで、後述する半導体装置の製造工程において行われるエキスパンドの際に、基材が破断しにくく、被着体同士を離間しやすくなる。
基材のd−リモネンへの浸漬後の破断伸度Aと、浸漬前の破断伸度Bとの比率A/Bに関して、A/B≧0.9であることが好ましい。基材のd−リモネンへの浸漬後の破断伸度の、初期の破断伸度に対する比率が高いことは、基材の低極性溶剤に対する耐性が高いことを示す。AとBとの関係について、A/B≧0.97であることがより好ましい。
また、後述する半導体装置の製造工程において、エネルギー線として紫外線を用いる場合には、紫外線に対して透過性を有する基材が好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には基材に光線透過性は必要ない。被着体面の視認性が求められる場合、基材は透明であることが好ましい。基材は着色されていてもよい。
また、基材の上面、すなわち後述する粘着剤層が設けられる側の基材表面には粘着剤層との密着性を向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー層を設けてもよい。また、粘着剤層が設けられる側とは反対側の基材表面に各種の塗膜を塗工してもよく、有機溶剤に対する耐性の高い他のフィルムを積層してもよい。
基材の厚みは特に限定されず、好ましくは25〜90μm、より好ましくは40〜85μmである。基材の厚みが小さい場合には、製膜が困難となる場合がある。
(粘着剤層)
本発明における粘着剤層は、エネルギー線硬化性重合体を含む。エネルギー線硬化性重合体は、重合体の主鎖または側鎖にエネルギー線硬化性基が結合されてなり、粘着性およびエネルギー線照射(たとえば、紫外線照射や電子線照射)により硬化する性質を有する。エネルギー線硬化性重合体は高分子量体であるため、有機溶剤と接触しても有機溶剤中に溶出し難い。そのため、配合することによる粘着剤層の有機溶剤に対する耐性の低下が起こりにくい。
エネルギー線硬化性基は、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合を含む基である。エネルギー線硬化性基として、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。また、エネルギー線硬化性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基を介して重合体に結合していてもよい。
エネルギー線硬化性重合体は、その構成する単量体の全質量中、メチル(メタ)アクリレートの質量割合が8質量%以上、好ましくは9〜35質量%、より好ましくは9〜30質量%であるアクリル系重合体にエネルギー線硬化性基を付加したものである。
メチル(メタ)アクリレートの質量割合を前記範囲とすることで、粘着剤層の極性が高くなり、低極性溶剤への耐性が向上し、かつ粘着剤層に十分な粘着力が付与される。また、メチル(メタ)アクリレートの質量割合を前記範囲の上限以下とすることで、粘着剤層表面における接触角を後述の範囲に調整することが容易となる。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタクリルの両者を包含した意味で用いる。
また、アクリル系重合体を構成する単量体として、メチル(メタ)アクリレート以外の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましい。
このような(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、エチル(メタ)アクリレート、プロピル(メタ)アクリレート、ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート、オクチル(メタ)アクリレート、イソオクチル(メタ)アクリレート、ノニル(メタ)アクリレート、デシル(メタ)アクリレート、ウンデシル(メタ)アクリレート、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレートなどが挙げられる。上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルは1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いることができる。
アクリル系重合体を構成する単量体の全質量中、上記の(メタ)アクリル酸アルキルエステルの質量割合は、好ましくは40〜80質量%、より好ましくは50〜70質量%である。
これらの(メタ)アクリル酸アルキルエステルの中でも、粘着剤層表面における接触角を後述の範囲に調整することが容易になるという観点から、アルキル基の炭素数が12以上の(メタ)アクリル酸アルキルエステルを用いることが好ましく、具体的には、ドデシル(メタ)アクリレート、トリデシル(メタ)アクリレート、テトラデシル(メタ)アクリレート、ペンタデシル(メタ)アクリレート、ヘキサデシル(メタ)アクリレートを用いることが好ましく、ドデシル(メタ)アクリレートを用いることがより好ましい。
また、アクリル系重合体を構成する単量体として、上記単量体以外の官能基含有単量体を用いることが好ましい。アクリル系重合体を構成する単量体の全質量中、官能基含有単量体の質量割合は、好ましくは5〜40質量%、より好ましくは10〜30質量%である。
このような官能基含有単量体は、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基やエポキシ基等の官能基を分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物が用いられる。
ヒドロキシル基含有不飽和化合物のさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシメチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート等のヒドロキシル基含有(メタ)アクリレートが挙げられる。
カルボキシル基含有不飽和化合物のさらに具体的な例としては、(メタ)アクリル酸、イタコン酸等が挙げられる。
上記の官能基含有単量体は、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
さらに、アクリル系重合体は上記単量体の他にも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有単量体以外の(メタ)アクリル酸エステル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルアセテート等を単量体として含んでいてもよい。
本発明におけるエネルギー線硬化性重合体は、上記の単量体を重合して得られるアクリル系重合体に、エネルギー線硬化性基を付加することで得られる。アクリル系重合体にエネルギー線硬化性基を付加する方法としては、例えば、アクリル系重合体を構成する官能基含有単量体の官能基と、該官能基と反応する置換基を有する重合性基含有化合物とを反応させる方法が挙げられる。この反応の際、アクリル系重合体を構成する官能基含有単量体の官能基の一部が、重合性基含有化合物と反応し、置換される。
得られるエネルギー線硬化性重合体には、後述する架橋剤との反応点とするために、未反応の官能基を少量残留させることが好ましい。すなわち、アクリル系重合体の官能基含有単量体から導かれる構成単位100モル中、通常50〜100モル、好ましくは60〜95モル、より好ましくは70〜90モルが重合性基含有化合物により置換される。重合性基含有化合物は、アクリル系重合体の官能基含有単量体から導かれる構成単位100モル当たり、上記範囲で用いることが好ましく、重合性基含有化合物の使用量を上記範囲とすることで、粘着剤層の粘着力を制御することができる。
エネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、好ましくは100,000〜1,500,000であり、特に好ましくは150,000〜1,000,000である。またエネルギー線硬化性重合体のガラス転移温度は、通常−70〜30℃程度である。
このようなエネルギー線硬化性重合体の具体例は、以下に説明するエネルギー線硬化性重合体の製法からさらに明らかになる。
エネルギー線硬化性重合体は、官能基を含有する重合体であるアクリル系重合体(a1)と、該官能基と反応する置換基を有する重合性基含有化合物(a2)とを反応させて得られる。
以下、エネルギー線硬化性重合体の製法について詳述するが、本発明において好ましく用いられるエネルギー線硬化性重合体は下記製法により得られるものに限定はされない。
アクリル系重合体(a1)は、メチル(メタ)アクリレートと官能基含有単量体と必要に応じ共重合される上記単量体を、共重合することにより得られる。この際、前記した所定の組成を満足するように単量体の配合量を調整することが好ましい。
アクリル系重合体(a1)の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば溶剤、連鎖移動剤、重合開始剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、分散剤等の存在下の水系でエマルション重合する方法にて製造される。
アクリル系重合体(a1)を、重合性基含有化合物(a2)と反応させることにより、エネルギー線硬化性基が結合されたエネルギー線硬化性重合体が得られる。
重合性基含有化合物(a2)には、アクリル系重合体(a1)中の官能基と反応しうる置換基が含まれている。この置換基は、前記官能基の種類により様々である。たとえば、官能基がヒドロキシル基またはカルボキシル基の場合、置換基としてはイソシアネート基、エポキシ基等が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはイソシアネート基、エポキシ基等が好ましく、官能基がアミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基等が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはカルボキシル基が好ましい。このような置換基は、重合性基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
また、重合性基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような重合性基含有化合物(a2)の具体例としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物などが挙げられる。
アクリル系重合体(a1)と重合性基含有化合物(a2)との反応は、通常は、室温程度の温度で、常圧にて、24時間程度行なわれる。この反応は、例えば酢酸エチル等の溶液中で、ジブチル錫ラウレート等の触媒を用いて行なうことが好ましい。
この結果、アクリル系重合体(a1)中の官能基と、重合性基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、エネルギー線硬化性基がアクリル系重合体(a1)中に導入され、エネルギー線硬化性重合体が得られる。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性重合体が架橋された架橋構造を有していてもよい。エネルギー線硬化性重合体を架橋構造とすることで、有機溶剤に対する耐性が向上する。また、電子部品加工用粘着シートの粘着力を制御することが可能である。
架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられ、有機多価イソシアネート化合物が好ましい。
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
架橋剤の使用量は、一般的には、エネルギー線硬化性重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜8質量部、特に好ましくは0.5〜7質量部の比率で用いられる。架橋剤の使用量が過大であると、粘着剤層が過度に硬化し、十分な粘着力が得られないことがあり、また架橋が不十分であると、電子部品加工用粘着シートの剥離後に、ウエハに粘着剤が残着することがある。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性重合体と必要に応じ光重合開始剤とを配合した粘着剤組成物を用いて形成される。さらに、上記粘着剤組成物には、各種物性を改良するため、必要に応じ、その他の成分(例えば上述した架橋剤)が含まれていてもよい。エネルギー線硬化性重合体は、光重合開始剤の存在下でエネルギー線照射を受けると、硬化し、粘着力が低下する。エネルギー線としては、具体的には、紫外線、電子線等が用いられる。
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。エネルギー線として紫外線を用いる場合に、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
また、光重合開始剤として、重量平均分子量400〜100000、好ましくは500〜50000、さらに好ましくは600〜10000の光重合開始剤を用いることもできる。
このような高分子量の光重合開始剤を用いると、光などの放射線を照射して粘着剤層を硬化させる際に、この粘着剤層が発熱したときでも、熱による揮散や分散などに起因した臭気の発生がみられなくなり、また粘着剤層が適度な凝集力を有するものとなって、剥離時にウエハへの糊残りが少なくなり、ウエハ汚染が防がれる。
このような光重合開始剤としては、ベンゾイン型、カルボニル型などを用いるのが好ましく、これらの基が高分子中に複数個あるもの、たとえば、ポリビニルベンゾイン系、ポリビニルケトン系などが好適に用いられる。市販品としては、シーベルヘグナー社の「ESACURE KIP100」、「ESACURE KIP150」などが挙げられる。「ESACURE KIP150」は、下記の構造式(1)で表される、オリゴ{2−ヒドロキシ−2−メチル−1−[4−(1−メチルビニル)フェニル]プロパノン}である。
Figure 2015072997
上記以外の光重合開始剤として、下記の構造式(2)〜(7)で表される化合物も使用することができる。これらの詳細は、たとえばJ.Polyme.Sci Apolymer chem 24.875(‘86)、Tetrahedron Lett 323(‘74)、Eur.Polymer J.14.317(‘78)、J.Polyme.Sci chem,ed.,19.855(‘81)などに記載されている。
Figure 2015072997
Figure 2015072997
Figure 2015072997
Figure 2015072997
Figure 2015072997
Figure 2015072997
光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化性重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が前記範囲を上回ると光重合に寄与しない残留物が生成し、粘着剤層の硬化性が不充分となることがある。
また、光重合開始剤に代えて、エネルギー線硬化性重合体の主鎖または側鎖にラジカル発生基を導入してもよい。具体的には、エネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合と、エネルギー線による励起下で重合反応を開始させる遊離基(ラジカル)を発生する基(ラジカル発生基)を有するラジカル発生基含有モノマーを、前記のメチル(メタ)アクリレート等とともに共重合してアクリル系重合体を得る。次いで、該アクリル系重合体にエネルギー線硬化性基を付加することで、エネルギー線硬化性重合体中にラジカル発生基を導入できる。このようなラジカル発生基含有モノマーの詳細は、たとえば特開2010−215769号公報に記載されている。
さらに、粘着剤層には、有機溶剤に対する耐性が過度に損なわれない範囲で、上記以外の重合体、エネルギー線重合性化合物、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等を添加してもよい。
上記成分から構成される粘着剤層表面において、25℃における水に対する接触角は、好ましくは82.5°以上、より好ましくは87°以上、特に好ましくは87〜110°である。粘着剤層表面の25℃における水に対する接触角を上記範囲とすることで、有機膜に対する電子部品加工用粘着シートの接着性を低下させることができる。メチル(メタ)アクリレートから導かれる構成単位を有するエネルギー線硬化性重合体が粘着剤層に含まれると、粘着剤層の極性が高くなると共に、有機膜に対する親和性も高くなる。そのため、本発明の電子部品加工用粘着シートを、表面に有機膜が形成された半導体ウエハの加工に用いる場合、粘着剤層と有機膜とが接着し、チップをピックアップする際にチップ割れや、ピックアップ性の低下の原因となることがある。粘着剤層表面における接触角を上記範囲とすることで、表面に有機膜が形成された半導体ウエハの加工に際して、電子部品加工用粘着シートの有機膜に対する接着性を低下させることができるため、チップ割れを抑制し、チップのピックアップ性が向上する。
有機膜としては、ポリイミド膜やエポキシ膜が挙げられる。
粘着剤層表面における接触角は、エネルギー線硬化性重合体を構成する単量体の種類や配合比により制御できる。具体的には、メチル(メタ)アクリレートの配合比を調整する方法や、アルキル基の炭素数の比較的大きな(メタ)アクリル酸アルキルエステル(具体的には、アルキル基の炭素数が12以上)を用いる方法が挙げられる。
また、粘着剤層の厚みは特に限定されず、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲にあることで、被着体に対する接着性が高くなり、被着体と粘着シートとの間が密封されるため、有機溶剤で洗浄した場合であっても、有機溶剤が被着体と粘着剤層との間に侵入することもなくなり、粘着剤層の溶解、膨潤も起こり難くなる。
また、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
上記基材の表面に粘着剤層を設ける方法は、上記粘着剤を、必要に応じ適当な溶剤で希釈して粘着剤組成物とし、剥離シート上に所定の乾燥膜厚になるように塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、上記基材の表面に転写しても構わないし、上記基材の表面に粘着剤組成物を直接塗布、乾燥して粘着剤層を形成しても構わない。このようにして本発明に係る電子部品加工用粘着シートが得られる。
粘着剤層へのエネルギー線照射前における電子部品加工用粘着シートのシリコンミラーウエハを被着体とした粘着力は、好ましくは2000mN/25mm以上であり、より好ましくは2500〜30000mN/25mmであり、特に好ましくは5000〜30000mN/25mmである。エネルギー線照射前における粘着力が、このような範囲にあることで、粘着剤層と被着体表面との界面の密着性が高いものとなり、電子部品加工用粘着シートの有機溶剤への耐性をより高めることが可能となる。エネルギー線照射前における粘着力は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの種類および配合比や、架橋剤の使用量により調整することができる。
また、粘着剤層へのエネルギー線照射後における電子部品加工用粘着シートのシリコンミラーウエハを被着体とした粘着力は、好ましくは10〜500mN/25mmであり、より好ましくは10〜300mN/25mmである。粘着剤層の粘着力を上記範囲とすることで、ダイシング性とピックアップ性に優れる。エネルギー線照射後における粘着力は、エネルギー線硬化性重合体に導入されるエネルギー線硬化性基の量により制御できる。
(半導体装置の製造方法)
本発明に係る電子部品加工用粘着シートは、ウエハを個片化する際にウエハおよび生成するチップを保持するために用いられるダイシングシート、あるいは個片化されたチップ群が転写され、その後にチップをピックアップするために用いられるピックアップシートとして好ましく用いられる。チップはダイシングシートやピックアップシートから剥離された後、常法にしたがって、回路基板等に組み込まれ、半導体装置が得られる。
特に、本発明の粘着シートは、シート上に保持された被着体(ウエハ、チップ)が有機溶剤、とりわけ低極性溶剤と接触する工程を含む半導体装置製造プロセスに好ましく適用される。この接触工程は、粘着シート上に被着体を保持した状態で、粘着シートと被着体との積層物を有機溶剤に接触させる工程であれば特に限定されず、例えば、被着体上に残着した接着剤の洗浄工程(接着剤の除去工程)や、接着剤により被着体が固定された支持体からの被着体の剥離(接着剤および支持体の除去工程)が挙げられる。
極薄ウエハや、TSVウエハは、極めて割れやすいため、裏面研削工程や、その後の加工工程や移送工程で破損することがある。このため、これらの工程中、ウエハはガラスなどの硬質支持体上に接着剤層(例えばアクリル系の接着剤により構成される接着剤層)を介して保持される。
所定の工程が終了したウエハは、ダイシングシートと呼ばれる粘着シート上に転着され、ダイシングシートの外周部をリングフレームにより固定した後、ウエハを回路毎に切断してチップ化し、その後ダイシングシートからチップがピックアップされる。ウエハを硬質支持体からダイシングシートに転着する際には、たとえばダイシングシート、被着体(ウエハ)、および硬質支持体からなる積層物を有機溶剤に浸漬したり、あるいは被着体よりやや大きな枠を、被着体を囲繞するように粘着シート上に配置し、枠内に有機溶剤を投入したりすることにより接着剤に有機溶剤を接触させ、溶解または膨潤させて硬質支持体から剥離する。この際に、ダイシングシート(粘着シート)とウエハからなる積層物が有機溶剤と接触するため、本発明の粘着シートを好ましく使用できる。また、別の方法として、ウエハが固定された硬質支持体のウエハ側の面をダイシングシート上に貼着し、硬質支持体をウエハから剥離して、ウエハをダイシングシートに転着する。硬質支持体を剥離する際には、加熱して接着剤を軟化させて硬質支持体をスライドさせる熱スライドや、レーザー光照射により接着剤を分解して硬質支持体の剥離を行う場合もある。この場合は、被着体の支持体からの剥離に際しては粘着シートとウエハの積層物は有機溶剤と接触しない。しかし、硬質支持体を剥離した後のウエハ面には、接着剤やその分解物が残着することがある。
本発明の粘着シートは、上記のような接着剤が残着したウエハを有機溶剤で洗浄する工程を含む半導体装置の製造プロセスにおいても好ましく使用できる。ウエハは、本発明の粘着シート上に保持された状態で、有機溶剤により洗浄される。この洗浄においても、上述した硬質支持体の剥離においてと同様の方法などにより有機溶剤を粘着シートとウエハからなる積層物に接触させて洗浄を行う。なお、この際、粘着シートの外周部にはリングフレームが貼着されていてもよい。
また、硬質支持体上にウエハを保持し、裏面研削や加工工程後に、ブレードを用いたダイシング等の手段によりウエハを個片化してチップとした後に、ピックアップシートと呼ばれる粘着シート上に転写し、チップのピックアップを行うことも提案されている。硬質支持体からチップを直接ピックアップすることは困難であるため、軟質なピックアップシート上にチップを転写することで、チップのピックアップが容易になる。このプロセスにおいても、上述したダイシングシートを用いるプロセスと同様に、硬質支持体を剥離する際にピックアップシート(粘着シート)と被着体(チップ)が有機溶剤と接触する工程を含むことがある。また、ピックアップシート上に転写されたチップにも、上記と同様に接着剤やその分解物が残着することがあり、洗浄工程を行うことがある。これらの工程を含む製造方法におけるピックアップシートとして、本発明の粘着シートは好ましく用いられる。
さらにまた、被着体がその表面に有機膜を有する場合(例えば、被着体がその表面に有機膜が形成されたウエハの場合)、上記の工程を含む半導体装置の製造方法に本発明の粘着シートを用いると、粘着剤層と有機膜との親和性に起因して、粘着剤層と有機膜とが過度に接着することがある。そのため、ウエハを個片化して得られるチップをピックアップする際に、チップ割れやピックアップ性の低下の原因となることがある。しかしながら、粘着剤層表面における接触角が制御された本発明の粘着シートによれば、粘着剤層と有機膜との接着性を低下させることができ、チップ割れを防止し、チップのピックアップ性に優れる。
洗浄に用いる有機溶剤は、ウエハを硬質支持体上に固定するために用いられた接着剤の組成等により様々である。有機溶剤としては、酢酸エチル、アセトン、メチルエチルケトン、N−メチルピロリドン、d−リモネンや1−ドデセンを例示できる。たとえば接着剤としてアクリル系、エポキシ系、無機系などの接着剤が使用された場合には、有機溶剤としてはSP値が9(cal/cm3)1/2以下、6〜9(cal/cm3)1/2、さらには7〜8.5(cal/cm3)1/2の有機溶剤(低極性有機溶剤)を使用することが好ましく、特にd−リモネン(SP値:8.2(cal/cm3)1/2)や1−ドデセン(SP値:7.9(cal/cm3)1/2)を使用することが好ましい。
なお、本明細書におけるSP値(溶解度パラメータ値)は、有機物質の相溶性についての特性値であり、その詳細についてはたとえば、溶剤ハンドブック(松田種光 1962 産業図書株式会社)に記載されている。
このような本発明の粘着シートおよび該粘着シートを用いた半導体装置の製造方法は、特に接着剤が残着しやすい突起状電極が設けられたウエハあるいはチップや、その表面に有機膜が形成されたウエハあるいはチップに好ましく適用できる。突起状電極としては、円柱型電極、球状電極等が挙げられる。また、特に近年使用の増えている貫通電極を有するウエハあるいはチップに好適に用いることができる。
粘着シートからチップをピックアップする際には、必要に応じて本発明に係る粘着シートをエキスパンドして各半導体チップの間隔を離間させた後、吸引コレット等の汎用手段により各半導体チップのピックアップを行う。また、粘着剤層にエネルギー線を照射し、粘着力を低下させた後、エキスパンド、ピックアップを行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例における「ピックアップ力」、「チップ割れ」、「接触角」及び「耐溶剤性:浸込幅と外観変化」は下記のように評価した。
<ピックアップ力>
2μmの厚さのポリイミド膜の形成されたシリコンウエハ(直径12インチ、厚み50μm)と、ポリイミド膜の形成されていないシリコンウエハ(ドライポリッシュ仕上げ、直径8インチ、厚み50μm)を準備した。
各シリコンウエハを実施例および比較例で作成した粘着シートの粘着剤層に貼付した。なお、ポリイミド膜の形成されたシリコンウエハに対しては、ポリイミド膜面に粘着シートの粘着剤層を貼付した。また、粘着シートの外周部をリングフレームに貼付した。
次いで、シリコンウエハをダイシングし、8mm×8mmのチップを得た。その後、窒素雰囲気下にて紫外線を照射(照度230mW/cm、光量190mJ/cm)し、その後、粘着シートをエキスパンド(エキスパンド量:5mm)した。1ピン突き上げを行い、チップが粘着シートから剥離する際の応力(ピックアップ力)をプッシュプルゲージで測定した。
<チップ割れ>
ポリイミド膜の形成されたTSVウエハ(ウエハの厚み:40μm、ウエハ表面からのTSVの高さ:5μm)と、ポリイミド膜の形成されていないTSVウエハ(ウエハの厚み:40μm、ウエハ表面からのTSVの高さ:5μm)を準備した。
各TSVウエハを実施例および比較例で作成した粘着シートの粘着剤層に貼付した。また、粘着シートの外周部をリングフレームに貼付した。その後、各TSVウエハのダイシングを行い、8mm×8mmのチップを得た。
なお、ポリイミド膜の形成されたウエハについては、ポリイミド膜面に粘着剤層を貼付した。
次いで、窒素雰囲気下にて紫外線を照射(照度230mW/cm、光量190mJ/cm)して粘着剤層を硬化し、チップを5ピンでピックアップした。20個のチップのピックアップを行い、チップ割れの発生したチップの個数を数えた。
<接触角>
滴下溶剤として水を用い、実施例および比較例で作成した粘着シートの粘着剤層に、2μlの量の水を滴下した。なお、滴下前に粘着剤層に紫外線照射を行った。粘着剤層表面において、25℃における水に対する接触角を、自動接触角計(株式会社アールデック製 Kruss DSA100)を用いて測定した。
<耐溶剤性:浸込幅と外観変化>
実施例および比較例で作成した粘着シートの粘着剤層に、片面がミラー研磨されたシリコンウエハ(直径8インチ、厚み50μm)のミラー面を貼付した(23℃、貼付圧0.3MPa、貼付速度5mm/秒)。また、粘着シートの外周部にリングフレームを同条件で貼付した。
低極性溶剤としてd−リモネン(SP値:8.2(cal/cm3)1/2)を用い、上記のシリコンウエハとリングフレームと粘着シートとの積層体を低極性溶剤に、室温で10分、60分の条件で浸漬した。その後、ウエハと粘着シートの間における低極性溶剤の浸み込み幅を測定し、テープの厚みに関する外観変化の観察を行った。なお、粘着シートのリングフレームに貼付した部分の全部又は一部が剥がれた場合には、「脱落」とした。
(実施例1)
〔粘着剤組成物の作製〕
ドデシルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸=69/10/20/1(質量比)を反応させ、エネルギー線硬化性重合体の前駆体としてアクリル系重合体を得た。
次いで、該アクリル系重合体100g当たり21.4g(アクリル系重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性重合体(重量平均分子量:60万)を得た。
上記で得られたエネルギー線硬化性重合体100質量部に対して、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184)3質量部、及び、架橋剤(TDI−TMP トルエンジイソシアネートとトリメチロールプロパントリアクリレートとの付加物)7質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。
なお、重量平均分子量は、市販の分子量測定機(本体製品名「HLC−8220GPC」、東ソー(株)製;カラム製品名「TSKGel SuperHZM-M」、東ソー(株)製;展開溶媒 テトラヒドロフラン)を用いて得た値である(以下、同様。)。また、質量部数は溶媒希釈された荷姿のものであっても、すべて固形分換算の値である(以下、同様。)。
〔粘着シートの作製〕
剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET381031)に、上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布・乾燥(乾燥条件:100℃、1分間)して、剥離フィルム上に形成された粘着剤層を得た。次いで、粘着剤層と基材(ポリブチレンテレフタレートフィルム、厚さ80μm)とを貼り合せ、剥離フィルムを除去して粘着シートを得た。得られた粘着シートについて、各評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例2)
粘着剤組成物として、以下の粘着剤組成物を用いたこと以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=52/28/20(質量比)を反応させ、エネルギー線硬化性重合体の前駆体としてアクリル系重合体を得た。
次いで、該アクリル系重合体100g当たり21.4g(アクリル系重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)を反応させて、エネルギー線硬化性重合体(重量平均分子量:60万)を得た。
上記で得られたエネルギー線硬化性重合体100質量部に対して、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184)3質量部、及び、架橋剤(TDI−TMP トルエンジイソシアネートとトリメチロールプロパントリアクリレートとの付加物)1質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。実施例2の粘着シートは、「ピックアップ力」の評価においてポリイミド膜の形成されたシリコンウエハに対して貼付した場合に「固着」が発生した。「固着」とは、チップのポリイミド膜と粘着シートの粘着剤層が強固に接着して、剥離が不可能となった状態をいう。「固着」が発生すると、チップを粘着シートから剥離することができない。また、実施例2の粘着シートは、「チップ割れ」の評価においても「固着」が生じたため、チップ割れの評価を行うことができなかった。
(実施例3)
アクリル系重合体を、ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸=69/10/20/1(質量比)を反応させて得られたアクリル系重合体に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
(実施例4)
アクリル系重合体を、ブチルアクリレート/ドデシルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸=39/30/10/20/1(質量比)を反応させて得られたアクリル系重合体に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例1)
基材をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。
(比較例2)
基材をエチレン・メタクリル酸共重合体フィルム(厚さ50μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。比較例2の粘着シートは、「外観変化」の評価において「たるみ」が発生した。「たるみ」とは、基材のしわに起因して、粘着シートにたるみが発生したことをいう。「たるみ」が発生すると、粘着シートの搬送が困難になることや、硬質支持体を剥離する際にウエハ割れの原因となることがある。
(比較例3)
アクリル系重合体を、ドデシルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート/アクリル酸=74/5/20/1(質量比)を反応させて得られたアクリル系重合体に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得、各評価を行った。結果を表1に示す。比較例3の粘着シートは、ウエハと粘着シートの間における低極性溶剤の浸み込み幅が実施例の粘着シートと比較して大きいため、粘着力が失われ、ウエハが粘着シートから脱落することがある。
Figure 2015072997

Claims (6)

  1. 基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなり、
    基材がポリブチレンテレフタレートフィルムまたはその積層物であり、
    粘着剤層が、エネルギー線硬化性重合体を含み、
    該エネルギー線硬化性重合体が、その構成する単量体の全質量中、メチル(メタ)アクリレートの質量割合が8質量%以上であるアクリル系重合体にエネルギー線硬化性基を付加したものである、電子部品加工用粘着シート。
  2. 粘着剤層表面において、25℃における水に対する接触角が82.5°以上である請求項1に記載の電子部品加工用粘着シート。
  3. 請求項1または2に記載の電子部品加工用粘着シート上に半導体ウエハを保持した状態で、該粘着シートとウエハとの積層物を有機溶剤に接触させる工程を含む、半導体装置の製造方法。
  4. 有機溶剤のSP値が9 (cal/cm3)1/2以下である請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
  5. 接触工程が接着剤、または接着剤および支持体の除去工程である請求項3に記載の半導体装置の製造方法。
  6. 半導体ウエハが、その表面に有機膜が形成されたウエハである請求項3〜5のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
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