JP6009189B2 - 電子部品加工用粘着シートおよび半導体装置の製造方法 - Google Patents

電子部品加工用粘着シートおよび半導体装置の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、半導体ウエハを回路毎に個片化し、半導体チップを作成する際に、半導体ウエハを固定するために使用されるダイシングシート、あるいは個片化されたチップが転写され、その後にピックアップするためのピックアップシートとして好ましく用いられる電子部品加工用粘着シートに関し、特に有機溶剤、とりわけ低極性有機溶剤への耐性に優れた電子部品加工用粘着シートに関する。また、本発明は該電子部品加工用粘着シートを使用した半導体装置の製造方法に関する。特に本発明の電子部品加工用粘着シートは、表面に突起状電極を有する半導体ウエハあるいはチップ、たとえばいわゆる貫通電極(TSV)を有する半導体ウエハ、チップを固定し、低極性有機溶剤により洗浄する工程を含む半導体装置の製造方法に好ましく用いられる。
半導体ウエハは表面に回路が形成された後、ウエハの裏面側に研削加工を施し、ウエハの厚さを調整する裏面研削工程およびウエハをダイシングシート上に固定し、所定のチップサイズに個片化するダイシング工程が行われる。チップサイズに個片化された半導体チップは、ダイシングシートからピックアップされ、次の工程に移送される。
近年のICカードの普及にともない、その構成部材である半導体チップの薄型化が進められている。このため、従来350μm程度の厚みであったウエハを、50〜100μmあるいはそれ以下まで薄くすることが求められるようになった。また裏面研削工程に続いて、さらに裏面にエッチング処理などの発熱を伴う加工処理や、裏面への金属膜の蒸着のように高温で行われる処理が施されることがある。
また、電子回路の大容量化、高機能化に対応して、複数の半導体チップを立体的に積層した積層回路の開発が進んでいる。このような積層回路においては、従来は半導体チップの導電接続をワイヤボンディングにより行うことが一般的であったが、近年の小型化・高機能化の必要性により、ワイヤボンディングをすることなく、半導体チップに回路形成面から裏面に貫通する電極(TSV)を設けて、直接上下のチップ間を導電接続する方法が効果的な手法として開発されている。貫通電極付チップの製造方法としては、例えば、半導体ウエハの所定の位置にプラズマ等により貫通孔を設け、この貫通孔に銅等の導電体を流し込んだ後、エッチング等を施して半導体ウエハの表面に回路と貫通電極とを設ける方法等が挙げられる。この際、ウエハは加熱されることになる。
このような極薄ウエハや、TSVウエハは、極めて割れやすいため、裏面研削工程や、その後の加工工程や移送工程で破損することがある。このため、これらの工程中、ウエハはガラスなどの硬質支持体上に接着剤層を介して保持される。
ウエハの裏面研削および加工の終了後、ウエハは硬質支持体から、ダイシングシートと呼ばれる粘着シート上に転着され、ダイシングシートの外周部をリングフレームにより固定した後、ウエハを回路毎に切断してチップ化し、その後ダイシングシートからチップがピックアップされる。ウエハをダイシングシートに転着する際には、ウエハが固定された硬質支持体のウエハ側の面をダイシングシート上に貼着し、硬質支持体をウエハから剥離して、ウエハをダイシングシートに転着する。硬質支持体を剥離する際には、加熱して接着剤を軟化させて硬質支持体をスライドさせる熱スライドや、レーザー光照射により接着剤を分解して硬質支持体の剥離を行う。しかし、硬質支持体を剥離した後のウエハ面には、接着剤やその分解物が残着することがあった。
また、硬質支持体上にウエハを保持し、これを個片化してチップとした後に、ピックアップシートと呼ばれる粘着シート上に転写し、チップのピックアップを行うことも提案されている。硬質支持体からチップを直接ピックアップすることは困難であるため、軟質なピックアップシート上にチップを転写することで、チップのピックアップが容易になる。しかし、ピックアップシート上に転写されたチップにも、上記と同様に接着剤やその分解物が残着することがあった。
残着した接着剤残渣を洗浄除去するため、ダイシングシートやピックアップシート(以下、粘着シートと総称する)上に固定されたウエハやチップ(以下、被着体と総称する)はオレフィン系、テルペン誘導体系等の低極性有機溶剤により洗浄されることがある。この洗浄は、たとえば粘着シートと被着体との積層物を低極性有機溶剤に浸漬したり、あるいは被着体よりやや大きな枠を、被着体を囲繞するように配置し、枠内に低極性有機溶剤を投入して被着体を洗浄している。なお、被着体がチップである場合には、チップ群の外径寸法よりもやや大きな枠を使用する。
有機溶剤を用いた被着体の剥離あるいは洗浄に際しては、被着体のみでなく、粘着シートも有機溶剤が接触する。この際、有機溶剤により粘着シートの粘着剤層が膨潤または溶解し、粘着力が失われ、被着体が粘着シートから脱落することがあった。また、有機溶剤により粘着シートの基材にしわが発生し、その後の加工工程(ダイシングやピックアップ)が困難になることがあった。
特許文献1(特開2007−73798号公報)には、粘着シートに有機溶剤が接触しないように接着剤残渣を洗浄除去する方法が記載されている。
特開2007−73798号公報
しかしながら、特許文献1では、有機溶剤が粘着シートに接触しないようにするための設備が必要となるとともに、接着剤残渣を洗浄除去する工程が煩雑であった。
本発明は、上記のような従来技術に伴う問題を解決しようとするものである。すなわち、本発明は、極性の低い有機溶剤と接触しても、粘着剤層の粘着力を維持でき、また基材にしわが発生することのない電子部品加工用粘着シートを提供することを目的としている。
このような課題の解決を目的とした本発明の要旨は以下の通りである。
〔1〕基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなり、
基材が、ポリエステル系フィルム又は厚さ120μm以上のポリプロピレンフィルムから選ばれる1種単独または2種以上の組み合わせであり、
d−リモネンに対する粘着剤層の膨潤度が125%以下である、電子部品加工用粘着シート。
〔2〕基材のd−リモネンへの浸漬後の破断伸度Aと、浸漬前の破断伸度Bとの比率A/Bに関して、A/B≧0.9である〔1〕に記載の電子部品加工用粘着シート。
〔3〕上記〔1〕または〔2〕に記載の電子部品加工用粘着シート上に半導体ウエハを保持した状態で、該粘着シートとウエハとの積層物を有機溶剤に接触させる工程を含む、半導体装置の製造方法。
〔4〕有機溶剤のSP値が9 (cal/cm3)1/2以下であり、接触工程がウエハの接着剤、または接着剤および支持体の除去工程である〔3〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔5〕半導体ウエハが、突起状電極が設けられたウエハである〔3〕または〔4〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔6〕上記〔1〕または〔2〕に記載の電子部品加工用粘着シート上に半導体チップを保持した状態で、該粘着シートとチップとの積層物を有機溶剤に接触させる工程を含む、半導体装置の製造方法。
〔7〕有機溶剤のSP値が9(cal/cm3)1/2以下であり、接触工程がチップの接着剤、または接着剤および支持体の除去工程である〔6〕に記載の半導体装置の製造方法。
〔8〕半導体チップが、突起状電極が設けられたチップである〔6〕または〔7〕に記載の半導体装置の製造方法。
本発明に係る電子部品加工用粘着シートによれば、粘着剤層は低極性有機溶剤に対し優れた耐性を示す。このため、支持体からウエハを剥離する際、あるいはその後の洗浄工程において粘着剤層が低極性有機溶剤に接触しても、粘着剤層の膨潤や溶解は抑制され、粘着力が維持される。したがって、剥離工程や洗浄工程における被着体(ウエハ、チップ)の脱落、破損がない。また、基材も低極性有機溶剤に対し優れた耐性を示す。このため、基材が低極性有機溶剤に接触しても、しわの発生が抑制される。その結果、洗浄工程後においても、ダイシング工程やピックアップ工程等を良好に行うことができ、半導体装置の生産効率の向上に寄与しうる。
以下、本発明に係る電子部品加工用粘着シートについて、具体的に説明する。本発明に係る電子部品加工用粘着シートは、基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなる。
(基材)
基材は、ポリエステル系フィルム又は厚さ120μm以上のポリプロピレンフィルムから選ばれる1種単独または2種以上の組み合わせである。上記のような基材は、d−リモネン、1−ドデセンやメンタンなどの低極性溶剤に耐性を有し、低極性溶剤に接触しても溶解、膨潤ないし変形しにくい。そのため、基材の変形に伴う粘着剤層の変形を抑制し、ウエハやチップなどの被着体が脱落することを防止できる。ポリエステル系フィルムとしては、ポリエチレンテレフタレートフィルム、ポリエチレンナフタレートフィルム、ポリブチレンテレフタレートフィルム、ポリブチレンナフタレートフィルム等が挙げられる。
また、基材の破断伸度は好ましくは400%以上、より好ましくは550〜1000%である。基材の破断伸度を上記範囲にすることで、後述する半導体装置の製造工程において行われるエキスパンドの際に、基材が破断しにくく、被着体同士を離間しやすくなる。
基材のd−リモネンへの浸漬後の破断伸度Aと、浸漬前の破断伸度Bとの比率A/Bに関して、A/B≧0.9であることが好ましい。基材のd−リモネンへの浸漬後の破断伸度の、初期の破断伸度に対する比率が高いことは、基材の低極性溶剤に対する耐性が高いことを示す。AとBとの関係について、A/B≧0.97であることがより好ましい。
また、後述する粘着剤層を構成する粘着剤としてエネルギー線硬化型粘着剤を用い、エネルギー線として紫外線を用いる場合には、紫外線に対して透過性を有する基材が好ましい。なお、エネルギー線として電子線を用いる場合には基材に光線透過性は必要ない。被着体面の視認性が求められる場合、基材は透明であることが好ましい。基材は着色されていてもよい。
また、基材の上面、すなわち後述する粘着剤層が設けられる側の基材表面には粘着剤層との密着性を向上させるために、コロナ処理を施したり、プライマー層を設けてもよい。また、粘着剤層とは反対面に各種の塗膜を塗工してもよく、低極性溶剤に対する耐性の高い他のフィルムを積層してもよい。
基材をポリエステル系フィルムのみで構成する場合、基材の厚みは特に限定されず、好ましくは25〜90μm、より好ましくは25〜60μmである。また、基材をポリプロピレンフィルムのみで構成する場合、基材の厚みは120μm以上であり、好ましくは130〜200μmである。さらにまた、基材をポリエステル系フィルムまたはポリプロピレンフィルムと、それとは異なるフィルムの一種以上を組み合わせて構成する場合は、ポリエステル系フィルムまたはポリプロピレンフィルムの厚みを、基材をそれぞれの単独のフィルムのみで構成する場合の好ましい範囲とすることが好ましい。基材全体の総厚は、280μm以下であることが好ましく、25μm〜250μmであることがより好ましい。基材の総厚が大きいと、基材の曲げに対抗する力が大きくなり、ピックアップ時の剥離角度が大きくなりにくい。このため、ピックアップに要する力が増加し、ピックアップ性に劣る場合がある。基材の厚みが小さい場合には、材料によっては製膜が困難となる場合がある。
(粘着剤層)
本発明における粘着剤層は、d−リモネン、1−ドデセン、メンタン、イソドデカン、メシチレンなどの低極性溶剤に耐性のある粘着剤により構成され、d−リモネンに対する粘着剤層の膨潤度が125%以下、好ましくは110%以下、より好ましくは95〜105%である。粘着剤層の膨潤度を上記範囲にすることで、低極性溶剤と接触しても、溶解、膨潤せずに、被着体に対する粘着力を維持できる。
粘着剤層は、上記の物性を満たすものであれば、従来より公知の種々の粘着剤により形成され得る。このような粘着剤としては、何ら限定されるものではないが、たとえばゴム系、アクリル系、シリコーン系、ポリビニルエーテル等の粘着剤が用いられる。また、粘着剤としては、エネルギー線硬化性を有するエネルギー線硬化型粘着剤を用いることが好ましい。
エネルギー線硬化型粘着剤から形成される粘着剤層は、エネルギー線硬化性重合体を含むことが好ましい。エネルギー線硬化性重合体は、主鎖または側鎖に、エネルギー線重合性基が結合された重合体であり、それ自体が粘着性およびエネルギー線照射(たとえば、紫外線照射、電子線照射)により硬化する性質を有する。エネルギー線硬化性重合体は、高分子量体であるため、低極性溶剤と粘着剤層が接触しても、低極性溶剤中に溶出し難い。そのため、配合することによる粘着剤層の低極性溶剤に対する耐性の低下が起こりにくい。エネルギー線硬化性重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位を、好ましくは50〜95質量%、さらに好ましくは60〜90質量%含有する。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部中、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが、好ましくは80質量部以上を占め、より好ましくは90質量部以上、さらに好ましくは95〜99質量部を占める。なお、本明細書において、(メタ)アクリルは、アクリルおよびメタアクリルの両者を包含した意味で用いる。また、(メタ)アクリル酸アルキルエステルにおいて、その100質量部中、アルキル基の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが10質量部以上を占めることが好ましく、15〜40質量部を占めることが好ましい。これにより、粘着剤層の極性が高いものとなり、低極性溶剤への耐性が向上し、かつ粘着剤層に十分な粘着力が付与される。
(メタ)アクリル酸アルキルエステルとしては、たとえば、メチルアクリレート、メチルメタクリレート、エチルアクリレート、エチルメタクリレート、プロピルアクリレート、プロピルメタクリレート、ブチルアクリレート、ブチルメタクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、オクチルアクリレート、オクチルメタクリレート、イソオクチルアクリレート、イソオクチルメタクリレート、ノニルアクリレート、ノニルメタクリレート、デシルアクリレート、デシルメタクリレート、ウンデシルアクリレート、ウンデシルメタクリレート、ドデシルアクリレート、ドデシルメタクリレート、ラウリルアクリレート、ラウリルメタクリレート、などが挙げられる。d−リモネンに対する粘着剤層の膨潤度は、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位またはアルキル基の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位を用い、その含有割合により調整することができる。
また、エネルギー線硬化性重合体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル以外の重合性モノマーから導かれる構造単位を、好ましくは5〜40質量%、さらに好ましくは10〜30質量%含有する。
このような他の重合性モノマーは、後述する重合体(官能基を含有する重合体)にエネルギー線重合性基を結合するために、重合体中に予め導入される官能基含有モノマーが挙げられる。官能基含有モノマーは、重合性の二重結合と、ヒドロキシル基、カルボキシル基、アミノ基、置換アミノ基、エポキシ基等の官能基を分子内に有するモノマーであり、好ましくはヒドロキシル基含有不飽和化合物、カルボキシル基含有不飽和化合物が用いられる。
このような官能基含有モノマーのさらに具体的な例としては、2−ヒドロキシメチルアクリレート、2−ヒドロキシメチルメタクリレート、2−ヒドロキシエチルアクリレート、2−ヒドロキシエチルメタクリレート、2−ヒドロキシプロピルアクリレート、2−ヒドロキシプロピルメタクリレート、2−ヒドロキシブチルアクリレート、2−ヒドロキシブチルメタクリレート等のヒドロキシル基含有アクリレート、アクリル酸、メタクリル酸、イタコン酸等のカルボキシル基含有化合物が挙げられる。上記の官能基含有モノマーは、1種単独で、または2種以上を組み合わせて用いてもよい。
官能基を含有する重合体には、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位が、好ましくは5〜40質量%、特に好ましくは10〜30質量%の割合で含まれる。官能基を含有する重合体にエネルギー線重合性基を導入することで、エネルギー線硬化性重合体が得られる。この際、官能基含有モノマー単位の官能基と、該官能基と反応する置換基を有する重合性基含有化合物が反応して、エネルギー線重合性基が導入される。この反応の際、官能基含有モノマー単位の官能基の一部が、重合性基含有化合物と反応し、置換される。得られるエネルギー線硬化性重合体には、後述する架橋剤との反応点とするために、未反応の官能基含有モノマー単位を少量残留させることが好ましい。すなわち、エネルギー線硬化性重合体の官能基含有モノマー単位は、上記官能基含有モノマーから導かれる構成単位100モルが通常50〜100モル、好ましくは60〜95モル、特に好ましくは70〜90モルの割合で置換される。上記のヒドロキシ基含有アクリレートおよび/またはカルボキシル基自体が重合性基含有化合物と反応した分子構造は、一般にエネルギー線硬化性重合体の極性を上げる傾向がある。したがって、官能基を含有する重合体中の官能基含有モノマーから導かれる構成単位の質量割合が上記の範囲にあることで、粘着剤層の低極性溶剤への耐性を高める効果もある。
エネルギー線硬化性重合体は、これらモノマーの他にも、(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステル、蟻酸ビニル、酢酸ビニル、スチレン、ビニルアセテート等を単量体として含んでいてもよい。(メタ)アクリル酸アルキルエステルおよび官能基含有モノマー以外の(メタ)アクリル酸エステルとしては、粘着剤層の極性を高いものとする観点から、(メタ)アクリル酸アルコキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸アルキレンオキシアルキルエステル、(メタ)アクリル酸ノニルフェノキシポリエチレングリコール、アクリル酸テトラヒドロフランフルフリル、ポリエーテルとアクリル酸とのエステルであるジアクリレート類等を用いてもよい。
重合体の主鎖または側鎖に結合するエネルギー線重合性基は、たとえばエネルギー線重合性の炭素−炭素二重結合を含む基であり、具体的には(メタ)アクリロイル基等を例示することができる。エネルギー線重合性基は、アルキレン基、アルキレンオキシ基、ポリアルキレンオキシ基を介して重合体に結合していてもよい。
重合性基が結合されたエネルギー線硬化性重合体の重量平均分子量は、好ましくは100,000以上であり、好ましくは100,000〜1,500,000であり、特に好ましくは150,000〜1,000,000である。またエネルギー線硬化性重合体のガラス転移温度は、通常−70〜30℃程度である。
このようなエネルギー線硬化性重合体の具体例は、以下に説明するエネルギー線硬化性重合体の製法からさらに明らかになる。
エネルギー線硬化性重合体は、官能基を含有する重合体(a1)と、該官能基と反応する置換基を有する重合性基含有化合物(a2)とを反応させて得られる。
以下、エネルギー線硬化性重合体の製法について詳述するが、本発明において好ましく用いられるエネルギー線硬化性重合体は下記製法により得られるものに限定はされない。
官能基を含有する重合体(a1)は、上記のような(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーと官能基含有モノマーと、必要に応じ共重合されるその他単量体を、共重合することにより得られる。この際、前記した所定の組成を満足するように単量体の配合量を調整することが好ましい。
重合体(a1)の製造方法については、特に限定されるものではなく、例えば溶剤、連鎖移動剤、重合開始剤等の存在下で溶液重合する方法や、乳化剤、連鎖移動剤、重合開始剤、分散剤等の存在下の水系でエマルション重合する方法にて製造される。
上記官能基を含有する重合体(a1)を、該官能基に反応する置換基を有する重合性基含有化合物(a2)と反応させることにより、重合性基が結合されたエネルギー線硬化性重合体が得られる。
重合性基含有化合物(a2)には、重合体(a1)中の官能基と反応しうる置換基が含まれている。この置換基は、前記官能基の種類により様々である。たとえば、官能基がヒドロキシル基またはカルボキシル基の場合、置換基としてはイソシアネート基、エポキシ基等が好ましく、官能基がカルボキシル基の場合、置換基としてはイソシアネート基、エポキシ基等が好ましく、官能基がアミノ基または置換アミノ基の場合、置換基としてはイソシアネート基等が好ましく、官能基がエポキシ基の場合、置換基としてはカルボキシル基が好ましい。このような置換基は、重合性基含有化合物(a2)1分子毎に一つずつ含まれている。
また重合性基含有化合物(a2)には、エネルギー線重合性炭素−炭素二重結合が、1分子毎に1〜5個、好ましくは1〜2個含まれている。このような重合性基含有化合物(a2)の具体例としては、メタクリロイルオキシエチルイソシアネート、メタ−イソプロペニル−α,α−ジメチルベンジルイソシアネート、メタクリロイルイソシアネート、アリルイソシアネート、グリシジル(メタ)アクリレート;(メタ)アクリル酸等が挙げられる。また、ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物;ジイソシアネート化合物またはポリイソシアネート化合物と、ポリオール化合物と、ヒドロキシエチル(メタ)アクリレートとの反応により得られるアクリロイルモノイソシアネート化合物などが挙げられる。
また重合性基含有化合物(a2)としては、下記式(1)のような重合性基含有ポリアルキレンオキシ化合物も使用することができる。
Figure 0006009189
式中、Rは水素またはメチル基、好ましくはメチル基であり、R〜Rはそれぞれ独立に水素または炭素数1〜4のアルキル基であり、好ましくは水素であり、またnは2以上の整数であり、好ましくは2〜4である。複数存在するR〜Rは互いに同一であっても異なっていてもよい。すなわち、nが2以上であるため、上記(1)式で表される重合性基含有ポリアルキレンオキシ基には、Rが2以上含まれる。この際、2以上存在するRは、互いに同一であっても異なっていてもよい。R〜Rについても同様である。NCOはイソシアネート基を示す。
重合性基含有化合物(a2)は、上記重合体(a1)の官能基含有モノマー100モル当たり、通常10〜100モル、好ましくは15〜95モル、特に好ましくは20〜90モルの割合で用いられる。重合体中の官能基の一部を未反応の状態で残すことで、粘着力が発現することがあるため、重合性基含有化合物(a2)の導入量を調整することで、粘着剤層の粘着力を制御できる。
重合体(a1)と重合性基含有化合物(a2)との反応は、通常は、室温程度の温度で、常圧にて、24時間程度行なわれる。この反応は、例えば酢酸エチル等の溶液中で、ジブチル錫ラウレート等の触媒を用いて行なうことが好ましい。
この結果、重合体(a1)中の側鎖に存在する官能基と、重合性基含有化合物(a2)中の置換基とが反応し、重合性基が重合体(a1)中の側鎖に導入され、エネルギー線硬化性重合体が得られる。
また、重合性基含有ポリアルキレンオキシ化合物を使用した場合には、重合性基がポリアルキレンオキシ基を介して結合したエネルギー線硬化性重合体が得られる。エネルギー線硬化性重合体中にポリアルキレンオキシ基を導入することにより、エネルギー線硬化性重合体のエネルギー線硬化後の破断伸度が向上し、電子部品加工用粘着シートの剥離時における糊残りが低減する。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性重合体が架橋された架橋構造を有していてもよい。エネルギー線硬化性重合体を架橋構造とすることで、低極性溶剤に対する耐性が向上する。また、電子部品加工用粘着シートの粘着力を制御することが可能である。
架橋剤としては、有機多価イソシアネート化合物、有機多価エポキシ化合物、有機多価イミン化合物等が挙げられ、有機多価イソシアネート化合物(イソシアネート系架橋剤)が好ましい。
有機多価イソシアネート化合物としては、芳香族多価イソシアネート化合物、脂肪族多価イソシアネート化合物、脂環族多価イソシアネート化合物およびこれらの有機多価イソシアネート化合物の三量体、ならびにこれら有機多価イソシアネート化合物とポリオール化合物とを反応させて得られる末端イソシアネートウレタンプレポリマー等を挙げることができる。
有機多価イソシアネート化合物のさらに具体的な例としては、2,4−トリレンジイソシアネート、2,6−トリレンジイソシアネート、1,3−キシリレンジイソシアネート、1,4−キシレンジイソシアネート、ジフェニルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジフェニルメタン−2,4’−ジイソシアネート、3−メチルジフェニルメタンジイソシアネート、ヘキサメチレンジイソシアネート、イソホロンジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−4,4’−ジイソシアネート、ジシクロヘキシルメタン−2,4’−ジイソシアネート、トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネートおよびリジンイソシアネートが挙げられる。
有機多価エポキシ化合物の具体的な例としては、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシリレンジアミン、エチレングリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、ジグリシジルアミンなどが挙げられる。
有機多価イミン化合物の具体的な例としては、N,N’−ジフェニルメタン−4,4’−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)、トリメチロールプロパン−トリ−β−アジリジニルプロピオネート、テトラメチロールメタン−トリ−β−アジリジニルプロピオネートおよびN,N’−トルエン−2,4−ビス(1−アジリジンカルボキシアミド)トリエチレンメラミン等を挙げることができる。
架橋剤の使用量は、上述したアルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルや、アルキル基の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位の含有量に応じて適宜に設定されるが、一般的には、エネルギー線硬化性重合体100質量部に対して、好ましくは0.01〜10質量部、より好ましくは0.1〜5質量部、特に好ましくは0.5〜3質量部の比率で用いられる。架橋剤の使用量が過大であると、粘着剤層が過度に硬化し、十分な粘着力が得られないことがあり、また架橋が不十分であると、粘着剤層の耐溶剤性が低下したり、あるいは電子部品加工用粘着シートの剥離後に、ウエハに粘着剤が残着することがある。
粘着剤層は、エネルギー線硬化性重合体と必要に応じ光重合開始剤とを配合した粘着剤組成物を用いて形成される。さらに、上記粘着剤組成物には、各種物性を改良するため、必要に応じ、その他の成分(例えば上述した架橋剤)が含まれていてもよい。エネルギー線硬化性重合体は、光重合開始剤の存在下でエネルギー線照射を受けると、硬化し、粘着力が低下する。エネルギー線としては、具体的には、紫外線、電子線等が用いられる。
光重合開始剤としては、ベンゾイン化合物、アセトフェノン化合物、アシルフォスフィンオキサイド化合物、チタノセン化合物、チオキサントン化合物、パーオキサイド化合物等の光開始剤、アミンやキノン等の光増感剤などが挙げられ、具体的には、1−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン、ベンゾイン、ベンゾインメチルエーテル、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソプロピルエーテル、ベンジルジフェニルサルファイド、テトラメチルチウラムモノサルファイド、アゾビスイソブチロニトリル、ジベンジル、ジアセチル、β−クロールアンスラキノン、2,4,6−トリメチルベンゾイルジフェニルフォスフィンオキサイドなどが例示できる。エネルギー線として紫外線を用いる場合に、光重合開始剤を配合することにより照射時間、照射量を少なくすることができる。
光重合開始剤の含有量は、理論的には、粘着剤層中に存在する不飽和結合量(エネルギー線硬化性二重結合量)やその反応性及び使用される光重合開始剤の反応性に基づいて決定されるべきであるが、複雑な混合物系においては必ずしも容易ではない。一般的な指針として、光重合開始剤の含有量は、エネルギー線硬化性重合体100質量部に対して、好ましくは0.1〜10質量部、より好ましくは1〜5質量部である。光重合開始剤の含有量が前記範囲を下回ると光重合の不足で満足なピックアップ性が得られないことがあり、前記範囲を上回ると光重合に寄与しない残留物が生成し、粘着剤層の硬化性が不充分となることがある。
また、光重合開始剤に代えて、エネルギー線硬化性重合体の主鎖または側鎖にラジカル発生基を導入してもよい。具体的には、重合性の二重結合と、エネルギー線による励起下で重合反応を開始させる遊離基(ラジカル)を発生する基(ラジカル発生基)を有するラジカル発生基含有モノマーを、前記のアクリル酸アルキルエステル等とともに共重合することで、エネルギー線硬化性重合体中にラジカル発生基を導入できる。このようなラジカル発生基含有モノマーの詳細は、たとえば特開2010−215769号公報に記載されている。




さらに、粘着剤層には、極性溶剤に対する耐性が過度に損なわれない範囲で、上記以外の重合体、エネルギー線重合性化合物、染料、顔料、劣化防止剤、帯電防止剤、難燃剤、シリコーン化合物、連鎖移動剤等を添加してもよい。
上記成分から構成される粘着剤層の厚みは特に限定されず、好ましくは3〜50μm、より好ましくは5〜20μmである。粘着剤層の厚みが上記範囲にあることで、被着体に対する密着性が高くなり、被着体と粘着シートとの間が密封されるため、低極性溶剤で洗浄した場合であっても、低極性溶剤が被着体と粘着剤層との間に侵入することもなくなり、粘着剤層の溶解、膨潤も起こり難くなる。
また、粘着剤層には、その使用前に粘着剤層を保護するために剥離シートが積層されていてもよい。剥離シートは、特に限定されるものではなく、例えば、ポリエチレンテレフタレート、ポリプロピレン、ポリエチレン等の樹脂からなるフィルムまたはそれらの発泡フィルムや、グラシン紙、コート紙、ラミネート紙等の紙に、シリコーン系、フッ素系、長鎖アルキル基含有カルバメート等の剥離剤で剥離処理したものを使用することができる。
上記基材の表面に粘着剤層を設ける方法は、上記粘着剤を、必要に応じ適当な溶剤で希釈して粘着剤組成物とし、剥離シート上に所定の乾燥膜厚になるように塗布、乾燥して粘着剤層を形成し、上記基材の表面に転写しても構わないし、上記基材の表面に粘着剤組成物を直接塗布、乾燥して粘着剤層を形成しても構わない。このようにして本発明に係る電子部品加工用粘着シートが得られる。
粘着剤層へのエネルギー線照射前における電子部品加工用粘着シートのシリコンミラーウエハを被着体とした粘着力は、好ましくは2000mN/25mm以上であり、より好ましくは2500〜30000mN/25mmであり、特に好ましくは5000〜30000mN/25mmである。エネルギー線照射前における粘着力が、このような範囲にあることで、粘着剤層と被着体表面との界面の密着性が高いものとなり、電子部品加工用粘着シートの低極性溶剤への耐性をより高めることが可能となる。エネルギー線照射前における粘着力は、(メタ)アクリル酸アルキルエステルの種類および配合比や、架橋剤の使用量により調整することができる。
また、粘着剤層へのエネルギー線照射後における電子部品加工用粘着シートのシリコンミラーウエハを被着体とした粘着力は、好ましくは10〜500mN/25mmであり、より好ましくは10〜300mN/25mmである。粘着剤層の粘着力を上記範囲とすることで、ダイシング性とピックアップ性に優れる。エネルギー線照射後における粘着力は、エネルギー線硬化性重合体に導入されるエネルギー線重合性基の量により制御できる。
(半導体装置の製造方法)
本発明に係る電子部品加工用粘着シートは、ウエハを個片化する際にウエハおよび生成するチップを保持するために用いられるダイシングシート、あるいは個片化されたチップ群が転写され、その後にチップをピックアップするために用いられるピックアップシートとして好ましく用いられる。チップはダイシングシートやピックアップシートから剥離された後、常法にしたがって、回路基板等に組み込まれ、半導体装置が得られる。
特に、本発明の粘着シートは、シート上に保持された被着体(ウエハ、チップ)が低極性溶剤と接触する工程を含む半導体装置製造プロセスに好ましく適用される。この接触工程は、具体的には、被着体上に残着した接着剤の洗浄工程(接着剤の除去工程)や、接着剤により被着体が固定された支持体からの被着体の剥離(接着剤および支持体の除去工程)を意味する。
極薄ウエハや、TSVウエハは、極めて割れやすいため、裏面研削工程や、その後の加工工程や移送工程で破損することがある。このため、これらの工程中、ウエハはガラスなどの硬質支持体上に接着剤層(例えばアクリル系の接着剤により構成される接着剤層)を介して保持される。
所定の工程が終了したウエハは、ダイシングシートと呼ばれる粘着シート上に転着され、ダイシングシートの外周部をリングフレームにより固定した後、ウエハを回路毎に切断してチップ化し、その後ダイシングシートからチップがピックアップされる。ウエハを硬質支持体からダイシングシートに転着する際には、たとえばダイシングシート、被着体(ウエハ)、および硬質支持体の積層物を有機溶剤に浸漬したり、あるいは被着体よりやや大きな枠を、被着体を囲繞するように配置し、枠内に有機溶剤を投入したりすることにより接着剤に有機溶剤を接触させ、溶解または膨潤させて硬質支持体から剥離する。この際に、ダイシングシート(粘着シート)とウエハの積層物が有機溶剤と接触するため、本発明の粘着シートを好ましく使用できる。また、別の方法として、ウエハが固定された硬質支持体のウエハ側の面をダイシングシート上に貼着し、硬質支持体をウエハから剥離して、ウエハをダイシングシートに転着する。硬質支持体を剥離する際には、加熱して接着剤を軟化させて硬質支持体をスライドさせる熱スライドや、レーザー光照射により接着剤を分解して硬質支持体の剥離を行う場合もある。この場合は、被着体の支持体からの剥離に際しては粘着シートとウエハの積層物は有機溶剤と接触しない。しかし、硬質支持体を剥離した後のウエハ面には、接着剤やその分解物が残着することがあった。
本発明の粘着シートは、上記のような接着剤が残着したウエハを有機溶剤で洗浄する工程を含む半導体装置の製造プロセスにおいても好ましく使用できる。ウエハは、本発明の粘着シート上に保持された状態で、有機溶剤により洗浄される。この洗浄においても、上述した硬質支持体の剥離においてと同様の方法などにより有機溶剤を粘着シートとウエハの積層物に接触させて洗浄を行う。なお、この際、粘着シートの外周部にはリングフレームが貼着されていてもよい。
また、硬質支持体上にウエハを保持し、裏面研削や加工工程後に、ウエハを個片化してチップとした後に、ピックアップシートと呼ばれる粘着シート上に転写し、チップのピックアップを行うことも提案されている。硬質支持体からチップを直接ピックアップすることは困難であるため、軟質なピックアップシート上にチップを転写することで、チップのピックアップが容易になる。このプロセスにおいても、上述したダイシングシートを用いるプロセスと同様に、硬質支持体を剥離する際にピックアップシート(粘着シート)と被着体(チップ)が有機溶剤と接触する工程を含むことがある。また、ピックアップシート上に転写されたチップにも、上記と同様に接着剤やその分解物が残着することがあり、洗浄工程を行うことがある。これらの工程を含む製造方法におけるピックアップシートとして、本発明の粘着シートは好ましく用いられる。
洗浄に用いる低極性溶剤は、ウエハを硬質支持体上に固定するために用いられた接着剤の組成等により様々である。たとえば接着剤としてアクリル系、エポキシ系、無機系などの接着剤が使用された場合には、有機溶剤としてはSP値が9(cal/cm3)1/2以下、6〜9(cal/cm3)1/2、さらには7〜8.5(cal/cm3)1/2の有機溶剤を使用することが好ましく、特にd−リモネン(SP値:8.2(cal/cm3)1/2)や1−ドデセン(SP値:7.9(cal/cm3)1/2)を使用することが好ましい。
なお、本明細書におけるSP値(溶解度パラメータ値)は、有機物質の相溶性についての特性値であり、その詳細についてはたとえば、溶剤ハンドブック(松田種光 1962 産業図書株式会社)に記載されている。
このような本発明の粘着シートおよび方法は、特に接着剤が残着しやすい突起状電極が設けられたウエハあるいはチップに好ましく適用できる。突起状電極としては、円柱型電極、球状電極等が挙げられる。また、特に近年使用の増えている貫通電極を有するウエハチップに好適に用いることができる。
粘着シートからチップをピックアップする際には、必要に応じて本発明に係る粘着シートをエキスパンドして各半導体チップの間隔を離間させた後、吸引コレット等の汎用手段により各半導体チップのピックアップを行う。また、粘着剤層にエネルギー線を照射し、粘着力を低下させた後、エキスパンド、ピックアップを行うことが好ましい。
以下、本発明を実施例により説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。以下の実施例および比較例における「基材の破断伸度」、「粘着剤層の膨潤度」、「RF脱落、ウエハ脱落、浸み込み量」及び「粘着力」は下記のように評価した。
<基材の破断伸度>
基材の破断伸度は、 万能引張試験機(オリエンテック社製テンシロンRTA−T−2M)を用いて、JIS K7161:1994に準拠して、チャックにつかまれた部分に挟まれた領域の形状が、幅15mm、長さ100mmである試験片について、23℃、湿度50%の環境下において引張速度200mm/分で測定した。浸漬後の破断伸度については、上記の試験片を室温(25℃)で30分間d−リモネンに浸漬した後、23℃50%相対湿度の環境下に24時間静置することで乾燥したものについて測定を行った。
<粘着剤層の膨潤度>
粘着剤層の膨潤度は、粘着剤層の面積(a)と、25℃においてd−リモネン中に10分間浸漬した後の粘着剤層の面積(b)を測定し、以下の式より求める。
膨潤度(%)=100×[((b)−(a))/(a)]
面積の測定は具体的には次のように行った。まず、実施例および比較例で用いた粘着剤組成物から2枚の剥離フィルムに挟持された厚さ10μmの粘着剤層を作製し、2cm×2cmの正方形(4cm:粘着剤層の面積(a))に切り取り試料とした。試料の一方の剥離フィルムを除去して露出した粘着剤層の面を、予め方眼紙上に置いたシャーレの内部底面に貼付した。もう一方の剥離フィルムを除去してシャーレをd−リモネンで満たし、25℃で10分間静置した。方眼紙の目盛から、各辺の長さを読み取り、浸漬後の粘着剤層の面積(b)を計算した。
<RF剥離、ウエハ剥離、しわ、ラビング、浸み込み量>
実施例および比較例で作成した粘着シートの粘着剤層を、片面がミラー研磨されたシリコンウエハ(直径8インチ、厚み50μm)のミラー面に貼付した。また、粘着シートの外周部をリングフレーム(RF)に貼付した。リングフレーム、シリコンウエハおよび粘着シートの積層体を、d−リモネン(SP値:8.2(cal/cm3)1/2)および1−ドデセン(SP値:7.9(cal/cm3)1/2)に浸漬した。浸漬条件は、室温(25℃)で30分とした。
浸漬終了後、リングフレーム(RF)およびウエハの剥離の有無を確認した。表中、「○」は、剥離が無いことを示し、「×」は剥離したことを示す。
また、粘着シートの基材に発生した「しわ」の有無を目視にて確認した。
また、粘着シートの粘着剤層を指でこすり、粘着剤層のはがれの有無を確認した(ラビング)。表中、「○」は粘着剤層のはがれが無いことを示し、「△」は一部剥離が見られたことを示し、「×」は粘着剤層のはがれが発生したことを示す。
また、ウエハの剥離が起こらなかったものについて、ウエハと粘着剤層との界面を目視にて観察し、ウエハと粘着剤層との間に浸みこんだd−リモネンの浸入距離を測定した。
<粘着力>
粘着シートを25mmの幅に裁断して試料とし、23℃50%相対湿度の環境下で、0.3MPaの圧力でミラー研磨されたシリコンウエハのミラー面に貼付した。23℃50%相対湿度の環境下に20分間静置した後、引張速度300mm/分、180°での剥離における粘着力を測定した。また、20分間静置後の、ウエハに貼付された試料に、紫外線照射装置(リンテック社製 RAD−2000m/12)を用い、窒素雰囲気下にて紫外線を照射した(照度230mW/cm、光量190mJ/cm)。その後上記と同じ条件で粘着力を測定した。
(実施例1)
〔粘着剤組成物の作製〕
ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=65/15/20(質量比)を反応して得られたアクリル重合体と、該アクリル重合体100g当たり26.75g(アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たり80モル)のメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)とを反応させて得られたエネルギー線硬化性重合体(重量平均分子量:60万)100質量部、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び、架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート)2質量部を溶媒中で混合し、粘着剤組成物を得た。なお、重量平均分子量は、市販の分子量測定機(本体製品名「HLC−8220GPC」、東ソー(株)製;カラム製品名「TSKGel SuperHZM-M」、東ソー(株)製;展開溶媒 テトラヒドロフラン)を用いて得た値である(以下、同様。)。また、質量部数は溶媒希釈された荷姿のものであっても、すべて固形分換算の値である(以下、同様。)。
〔粘着シートの作製〕
剥離フィルム(リンテック社製 SP−PET3811(S))に、上記粘着剤組成物を、乾燥後の厚みが10μmとなるように塗布・乾燥(乾燥条件:100℃、1分間)して、剥離フィルム上に形成された粘着剤層を得た。次いで、粘着剤層と基材(ポリブチレンテレフタレートフィルム、厚さ80μm)とを貼り合わせて、剥離フィルムを除去して粘着シートを得た。各評価を行った。結果を表1に示す。
また、以下の実施例および比較例において、アクリル重合体に対するメタクリロイルオキシエチルイソシアネート(MOI)の付加率は、アクリル重合体の2−ヒドロキシエチルアクリレート単位100モル当たりMOIの付加率が80モルとなるように設定した。
(実施例2)
アクリル重合体を、ブチルアクリレート/メチルメタクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=52/28/20(質量比)を反応して得られたアクリル重合体に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例3)
基材をポリエチレンテレフタレートフィルム(厚さ50μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
(実施例4)
基材をポリプロピレンフィルム(厚さ140μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
(比較例1)
基材をエチレン・メタクリル酸共重合体フィルム(厚さ80μm)に代えた以外は、実施例1と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
(比較例2)
アクリル重合体を、ブチルアクリレート/2−ヒドロキシエチルアクリレート=80/20(質量比)を反応して得られたアクリル重合体に代えた以外は、比較例1と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
(比較例3)
粘着剤組成物を、ブチルアクリレート/アクリル酸=91/9(質量比)を反応して得られたアクリル重合体100質量部に対し、5〜9官能ウレタンアクリレート(重量平均分子量:約1500)60質量部を配合した混合物100質量部に、光重合開始剤(α−ヒドロキシシクロヘキシルフェニルケトン(チバ・スペシャリティ・ケミカルズ株式会社製 イルガキュア184))3質量部、及び、架橋剤(トリメチロールプロパンアダクトトリレンジイソシアネート)1.6質量部を溶媒中で混合して得られた粘着剤組成物に代えた以外は、比較例1と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
(比較例4)
基材をポリプロピレンフィルム(厚さ80μm)に代えた以外は、実施例2と同様にして粘着シートを得た。結果を表1に示す。
Figure 0006009189

Claims (8)

  1. 電子部品加工用粘着シート上に半導体ウエハを保持した状態で、該粘着シートとウエハとの積層物を有機溶剤に接触させる工程を含む、半導体装置の製造方法であって、
    電子部品加工用粘着シートが、基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなり、
    基材が、ポリエステル系フィルム又は厚さ120μm以上のポリプロピレンフィルムから選ばれる1種単独または2種以上の組み合わせであり、
    d−リモネンに対する粘着剤層の膨潤度が125%以下である、半導体装置の製造方法
  2. 基材のd−リモネンへの浸漬後の破断伸度Aと、浸漬前の破断伸度Bとの比率A/Bに関して、A/B≧0.9である請求項1に記載の半導体装置の製造方法
  3. 有機溶剤のSP値が9 (cal/cm3)1/2以下であり、接触工程が接着剤、または接着剤および支持体の除去工程である請求項1または2に記載の半導体装置の製造方法。
  4. 半導体ウエハが、突起状電極が設けられたウエハである請求項1〜3のいずれかに記載の半導体装置の製造方法。
  5. 電子部品加工用粘着シート上に半導体チップを保持した状態で、該粘着シートとチップとの積層物を有機溶剤に接触させる工程を含む、半導体装置の製造方法であって、
    電子部品加工用粘着シートが、基材と、その片面に設けられた粘着剤層とからなり、
    基材が、ポリエステル系フィルム又は厚さ120μm以上のポリプロピレンフィルムから選ばれる1種単独または2種以上の組み合わせであり、
    d−リモネンに対する粘着剤層の膨潤度が125%以下である、半導体装置の製造方法
  6. 有機溶剤のSP値が9(cal/cm3)1/2以下であり、接触工程が接着剤、または接着剤および支持体の除去工程である請求項5に記載の半導体装置の製造方法。
  7. 半導体チップが、突起状電極が設けられたチップである請求項5または6に記載の半導体装置の製造方法。
  8. 粘着剤層が、アクリル重合体を含有するエネルギー線硬化性重合体を含み、
    エネルギー線硬化性重合体が(メタ)アクリル酸アルキルエステルから導かれる構造単位を50〜95質量%含有し、
    (メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部中、アルキル基の炭素数が1〜4の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが80質量部以上であり、
    (メタ)アクリル酸アルキルエステル100質量部中、アルキル基の炭素数が1または2の(メタ)アクリル酸アルキルエステルが10質量部以上であり、
    d−リモネンに対する粘着剤層の膨潤度が95〜105%である、請求項1〜7のいずれかに記載の半導体装置の製造方法
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