JP2015062948A - スカム堰、薄肉鋳片の製造方法及び薄肉鋳片の製造装置 - Google Patents
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Abstract
Description
また、特許文献4,5には、溶鋼溜まり部にスカム堰を配設することによって、スカムの巻き込みや凝固開始点における溶鋼面の高さの変動を抑制する技術が提案されている。
そこで、例えば特許文献6,7には、Al及びSiを含有する電磁鋼を、双ドラム連続鋳造方法によって製造することが開示されている。
なお、溶鋼溜まり部の上部空間は、Ar等の不活性ガス雰囲気とするのが一般的であるが、Alは極わずかな酸素分圧で酸化してアルミナ皮膜を生成するので、0.02mass%以上のAlを含有するAl含有鋼において、溶鋼溜まり部の溶鋼面にアルミナ皮膜を生じさせないようにすることは実質的に困難であった。
よって、本発明のスカム堰を用いることにより、アルミナ皮膜の断続的な巻き込みを抑制し、凝固開始点における溶融金属面の高さの変動、及び、凝固シェルの不均一及び鋳片厚みの不均一を抑制することができ、高品質な薄肉鋳片を安定して製造することが可能となる。
一方、前記CaO含有耐火材におけるCaOの含有量が50mass%を超える場合には、CaO含有耐火材自体の強度が不足し、スカム堰が早期に溶損してしまうおそれがある。
以上のことから、本発明に係るスカム堰においては、前記CaO含有耐火材におけるCaOの含有量を10mass%以上50mass%以下の範囲内に設定している。
この場合、上述のようにCaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内で含有しているので、溶融金属面上に形成されたアルミナ皮膜を低融点化してアルミナ皮膜の断続的な巻き込みを抑制することができる。また、MgOを20mass%以上90mass%以下の範囲内で含有しているので、スカム堰自体の強度を確保することができ、スカム堰が早期に溶損することを抑制できる。さらに、フリーCは、耐熱衝撃性を向上させる作用効果を有するため適宜添加してもよい。なお、フリーCを添加する場合には、グラファイト粒子の脱落を防止するために、フリーCの含有量を40mass%以下に制限することが好ましい。なお、本発明において、フリーCとは、化合物を形成していない炭素のことである。
この場合、上述の(CaO)/(MgO)が0.2以上とされているので、CaOの含有量が確保され、溶融金属面上に形成されたアルミナ皮膜を確実に低融点化することが可能となる。また、上述の(CaO)/(MgO)が1.5以下とされているので、MgOの含有量が確保され、スカム堰が早期に溶損することを抑制できる。
この場合、上述のようにCaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内で含有しているので、溶融金属面上に形成されたアルミナ皮膜を低融点化してアルミナ皮膜の断続的な巻き込みを抑制することができる。また、ZrO2を20mass%以上85mass%以下の範囲内で含有しているので、スカム堰自体の強度を確保することができ、スカム堰が早期に溶損することを抑制できる。さらに、フリーCを5mass%以上40mass%以下の範囲内で含有しているので、鋳造開始時の熱膨張ひずみによる割れの発生を抑制できるとともにグラファイト粒子の脱落を抑制でき、スカム堰の寿命延長を図ることができる。
この場合、上述の(CaO)/(ZrO2)が0.2以上とされているので、CaOの含有量が確保され、溶融金属面上に形成されたアルミナ皮膜を確実に低融点化することが可能となる。また、上述の(CaO)/(ZrO2)が1.5以下とされているので、ZrO2の含有量が確保され、スカム堰が早期に溶損することを抑制できる。
この場合、スカム堰の前記冷却ドラム側を向く面のうち前記溶融金属溜まり部の溶融金属面と接触する領域を前記CaO含有耐火材で構成することにより、冷却ドラム側に位置するアルミナ皮膜を局所的に低融点化することができ、アルミナ皮膜の断続的な巻き込みを抑制することができる。また、スカム堰のうち浸漬ノズル側を向く面には、浸漬ノズルから吐出される溶融金属が衝突することから、前記CaO含有耐火材よりも耐溶損性に優れた耐火材で構成することによって、スカム堰の寿命延長を図ることができる。なお、耐溶損性については、浸漬ノズルから吐出される溶融金属に所定時間保持した後の損耗量等で評価することができる。
なお、上述の作用効果を確実に奏功せしめるためには、スカム堰と冷却ドラムとの間における前記溶融金属の流速を10cm/sec以上とすることが好ましい。
Alを0.1mass%以上4.5mass%以下の範囲内で含むAl含有鋼は、溶融金属面(溶鋼面)にアルミナ皮膜が形成されやすいため、少なくとも前記冷却ドラム側を向く面のうち前記溶融金属溜まり部の溶融金属面と接触する領域が、CaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内で含有するCaO含有耐火材で構成されたスカム堰を用いることで、アルミナ皮膜の断続的な巻き込みを抑制でき、上述のAl含有鋼からなる薄肉鋳片を安定して鋳造することが可能となる。
本実施形態である薄肉鋳片の製造装置10は、図1に示すように、一対の冷却ドラム11、11と、薄肉鋳片1を曲げるベンダーロール12、12と、薄肉鋳片1を支持するピンチロール13、13と、一対の冷却ドラム11、11の幅方向端部に配設されたサイド堰15と、これら一対の冷却ドラム11、11とサイド堰15とによって画成された溶鋼溜まり部16に対して溶鋼3を供給するタンディッシュ18及び浸漬ノズル19と、を備えている。
ここで、図2に示すように、溶鋼溜まり部16には、溶鋼3が貯留されており、溶鋼面Hには、アルミナ皮膜Xが形成されている。
以下に、CaO含有耐火材の組成を上述のように規定した理由について説明する。
CaOは、溶鋼溜まり部16の溶鋼面Hに形成されたアルミナ皮膜Xの融点を低下させる作用効果を有する。よって、スカム堰20のうち冷却ドラム11側に形成された第1層21をCaO含有耐火材で構成することにより、スカム堰20と冷却ドラム11との間の溶鋼面Hに形成されたアルミナ皮膜Xの融点を局所的に低下させて、破断しやすくすることが可能となる。
ここで、CaO含有耐火材におけるCaOの含有量が10mass%未満の場合には、アルミナ皮膜Xの融点を低下させる作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、CaO含有耐火材におけるCaOの含有量が50mass%を超える場合には、スカム堰20(第1層21)が早期に劣化してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、CaO含有耐火材におけるCaOの含有量を10mass%以上50mass%以下の範囲内に設定している。
MgOは、上述のCaO粒子を保持して、CaO粒子の脱落や過剰な溶損を抑制する作用効果を有する。よって、MgOを含有することにより、スカム堰20(第1層21)の寿命延長を図ることが可能となる。
ここで、CaO含有耐火材におけるMgOの含有量が20mass%未満の場合には、CaO粒子を十分に保持することができずスカム堰20(第1層21)が早期に劣化するおそれがある。一方、CaO含有耐火材におけるMgOの含有量が90mass%を超える場合には、CaOの含有量が確保されず、アルミナ皮膜Xを低融点化することができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、CaO含有耐火材におけるMgOの含有量を20mass%以上90mass%以下の範囲内に設定している。
CaOの含有量(mass%)とMgOの含有量(mass%)との比である(CaO)/(MgO)が0.2未満の場合には、MgOの影響によりCaOの供給速度が低下し、溶鋼面Hに形成されたアルミナ皮膜Xを低融点化させることができないおそれがある。一方、(CaO)/(MgO)が1.5を超える場合には、MgOの含有量が不足し、スカム堰20(第1層21)が早期に劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、(CaO)/(MgO)を0.2以上1.5以下の範囲内に設定している。
フリーCは、化合物を形成せずに単独で存在している炭素のことである。このフリーCを含有すると、耐熱衝撃性が向上することになるため、適宜添加してもよい。
ここで、CaO含有耐火材におけるフリーCの含有量が40mass%を超える場合には、グラファイト粒子の脱落が発生しやすくなり、溶損量が大きくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、CaO含有耐火材におけるフリーCの含有量を0mass%以上40mass%以下の範囲内に設定している。
一対の冷却ドラム11、11を回転方向Rに向けて、すなわち、一対の冷却ドラム11、11同士が近接する領域が鋳片の引抜方向(図1においては下方向)に向かうように、それぞれの冷却ドラム11、11を回転させる。
なお、本実施形態においては、溶鋼3は、Alを0.1mass%以上4.5mass%以下の範囲内、Caを0.0020mass%以下の範囲内で含有するAl含有鋼とされている。
また、スカム堰20と冷却ドラム11との間の空間を含む溶鋼溜まり部16の上部空間は、雰囲気がArガス雰囲気とされており、冷却ドラム11と凝固シェル5との間にArガスを介在させている。
さらに、本実施形態では、浸漬ノズル19とスカム堰20との間で測定される溶鋼の過熱度(溶鋼温度と液相線温度の差)が5℃以上50℃以下の範囲内になるように、好ましくは10℃以上50℃以下の範囲内になるように溶鋼温度を調整している。
このとき、溶鋼溜まり部16に浸漬されたスカム堰20により、溶鋼溜まり部16に貯留された溶鋼3の上部に浮遊する介在物(スカム)が冷却ドラム11側へと混入することが防止され、薄肉鋳片1へのスカムの巻き込みが抑制される。また、スカム堰20により、冷却ドラム11の凝固開始点Sにおける溶鋼面Hの高さの変動が抑制される。
よって、アルミナ皮膜Xの断続的な巻き込みを抑制し、凝固開始点Sにおける溶鋼面Hの高さが上下に大きく変動することを抑制できるので、凝固シェルの不均一及び鋳片厚みの不均一を抑制でき、高品質な薄肉鋳片を安定して製造することが可能となる。
さらに、CaOの含有量(mass%)とMgOの含有量(mass%)との比である(CaO)/(MgO)が0.2以上1.5以下の範囲内とされているので、CaO及びMgOをバランス良く含有しており、溶鋼面Hに形成されたアルミナ皮膜Xを低融点化してアルミナ皮膜Xの断続的な巻き込みを抑制することができるともに、スカム堰20(第1層21)の寿命延長を図ることができる。
また、本実施形態においては、第1層21を構成するCaO含有耐火材が、フリーCを0mass%以上40mass%以下の範囲内で含有する場合には、耐熱衝撃性を向上させることができ、鋳造開始時における割れの発生を抑制することができる。
さらに、本実施形態では、浸漬ノズル19とスカム堰20との間で測定される溶鋼の過熱度(溶鋼温度と液相線温度の差)が5℃以上50℃以下の範囲内になるように、好ましくは10℃以上50℃以下の範囲内となるように溶鋼温度を調整しているので、低融点化したアルミナ皮膜Xの破断を促進することができ、アルミナ皮膜Xの断続的な巻き込みを抑制し、薄肉鋳片を安定して鋳造することができる。ここで、浸漬ノズル19とスカム堰20との間で測定される溶鋼の過熱度が50℃を超えると、ノズルからの吐出流が凝固シェルを再溶解するおそれがあるので、50℃以下とすることが好ましい。
本実施形態であるスカム堰120は、第一の実施形態と同様に、図1に示す薄肉鋳片の製造装置10において用いられるものである。
ここで、上述のブロック材121が、CaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内で含有するCaO含有耐火材で構成されており、ブロック材121を支持する堰本体122が、CaO含有耐火材よりも溶鋼に対する耐溶損性に優れた耐火材(本実施形態においてはBN)で構成されている。
以下に、各成分を上述のように規定した理由について説明する。
CaOについては、第1の実施形態において説明したとおり、アルミナ皮膜Xの融点を低下させる作用効果を有するものである。
ここで、CaO含有耐火材におけるCaOの含有量が10mass%未満の場合には、アルミナ皮膜Xの融点を低下させる作用効果を十分に奏功せしめることができないおそれがある。一方、CaO含有耐火材におけるCaOの含有量が50mass%を超える場合には、スカム堰120(ブロック材121)が早期に劣化してしまうおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、CaO含有耐火材におけるCaOの含有量を10mass%以上50mass%以下の範囲内に設定している。
ZrO2は、上述のCaO粒子を保持して、CaO粒子の脱落や過剰な溶損を抑制する作用効果を有する。よって、ZrO2を含有することにより、スカム堰120(ブロック材121)の寿命延長を図ることが可能となる。
ここで、CaO含有耐火材におけるZrO2の含有量が20mass%未満の場合には、CaO粒子を十分に保持することができずスカム堰120(ブロック材121)が早期に劣化するおそれがある。一方、CaO含有耐火材におけるZrO2の含有量が85mass%を超える場合には、CaOの含有量が確保されず、アルミナ皮膜Xを低融点化することができなくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、CaO含有耐火材におけるZrO2の含有量を20mass%以上85mass%以下の範囲内に設定している。
CaOの含有量(mass%)とZrO2の含有量(mass%)との比である(CaO)/(ZrO2)が0.2未満の場合には、ZrO2の影響によりCaOの供給速度が低下し、アルミナ皮膜Xを低融点化させることができないおそれがある。一方、(CaO)/(ZrO2)が1.5を超える場合には、ZrO2の含有量が不足し、スカム堰120(ブロック材121)が早期に劣化するおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、(CaO)/(ZrO2)を0.2以上1.5以下の範囲内に設定している。
フリーCは、化合物を形成せずに単独で存在している炭素のことである。このフリーCを含有すると、耐熱衝撃性が向上することになる。
ここで、CaO含有耐火材におけるフリーCの含有量が5mass%未満の場合には、耐熱衝撃性を向上させることができず、鋳造開始時にスカム堰120(ブロック材121)に割れが発生するおそれがある。一方、CaO含有耐火材におけるフリーCの含有量が40mass%を超える場合には、グラファイト粒子の脱落が発生しやすくなり、溶損量が大きくなるおそれがある。
以上のことから、本実施形態では、CaO含有耐火材におけるフリーCの含有量を5mass%以上40mass%以下の範囲内に設定している。
さらに、ブロック材121を構成するCaO含有耐火材が、フリーCを5mass%以上40mass%以下の範囲内で含有しているので、耐熱衝撃性を向上させることができ、鋳造開始時における割れの発生を抑制することが可能となる。
さらに、本実施形態においては、ブロック材121が堰本体122に対して着脱可能に装着されているので、ブロック材121が早期に溶損した場合には、ブロック材121のみを交換して使用することができる。
例えば、本実施形態では、ベンダーロール及びピンチロールを配設したもので説明したが、これらのロール等の配置に限定はなく、適宜設計変更してもよい。また、タンディシュ、浸漬ノズル等の構成は、本実施形態に限定されるものではなく、適宜設計変更してもよい。
また、本実施形態では、図4及び図5に示すように、スカム堰の一部分をCaO含有耐火材で構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、図6に示すように、スカム堰220全体をCaO含有耐火材で構成したものであってもよい。
同様に、第二の実施形態において、スカム堰120のブロック材121を、CaOとZrO2とフリーCとを含む耐火材で構成するものとして説明したが、これに限定されることはなく、CaOとMgOとを含有する耐火材で構成してもよいし、他のCaO含有耐火材で構成してもよい。
同様に、第二の実施形態において、スカム堰120の堰本体122を、CaO含有耐火材よりも溶鋼に対する耐溶損性に優れたBNで構成したものとして説明したが、これに限定されることはなく、他の耐火材で構成してもよい。
ここで、後述するすべての耐火材において、グラファイト粒子の最大粒径は300μm以下、平均粒径100μm以下、酸化物の最大粒径は100μm以下、平均粒径50μm以下とした。
鋳造幅 : 1300mm
鋳造速度 : 平均60m/min
スカム堰の浸漬深さ : 30mm
スカム堰の幅 : 1250mm
スカム堰の全厚み : 30mm
スカム堰/冷却ドラム間の間隔 : 30mm
スカム堰/冷却ドラム間の流速 : 5cm/sec以上
溶鋼溜まり部内の過熱度 : 25℃目標、15〜35℃の範囲内
鋳造雰囲気 : Ar
鋳造厚み : 平均1.8mm
鋳造量 : 10ton
また、スカム堰と冷却ドラムの間の溶鋼の流速は、湯面モニター画像で溶鋼面に浮遊するスカムの移動速度より算出することができる。
幅方向1/4、1/2、3/4位置と両エッジから10mm位置の溶損量の平均値で評価した。鋳造量100tonあたりの溶損量に換算し、以下の基準で評価した。
◎;10mm以下
○;15mm以下
×;15mm超
鋳造中の湯面高さ制御のためのモニター画面から測定した。定常部鋳造時間において溶鋼面のアルミナ皮膜が巻き込まれて生じる溶鋼面の高さの変動のうち、大きなものから10回の平均値を求め、以下の基準で評価した。なお、他の要因によって突発的に生じる大きな変動については測定しなかった。
◎;4mm以下
○;6mm以下
×;6mm超
定常部から2m長さの鋳片を3枚抜き出し、酸洗後、目視、および8倍ルーペで表面割れの有無を調査した。なお、割れは、アルミナ皮膜を巻き込んだ領域で多く観察された。長さ1mm以上の割れをカウントし、鋳片1m当たりの個数で、以下の基準で評価した。
◎;3個/m以下
○;5個/m以下
×;5個/m超
定常部5ton鋳片について、X線板厚計で幅中央部厚みを、鋳造方向に100mm間隔で測定した。標準偏差を算出し、以下の基準で評価した。
◎;25μm以下
○;50μm以下
×;50μm超
CaOの含有量が50mass%を超える比較例No.A13においては、スカム堰の溶損量が15mmを超えていた。CaOが優先的に溶損したためと推測される。
BNで構成された比較例No.14においては、溶鋼面の高さの変動が6mmを超えていた。また、鋳片の表面性状が悪く、鋳片の厚みの変動も大きかった。アルミナ皮膜が低融点化されず、アルミナ皮膜の巻き込みが断続的に発生したためと推測される。
特に、CaOの含有量(mass%)とMgOの含有量(mass%)との比である(CaO)/(MgO)が0.2以上1.5以下の範囲内とされた本発明例No.A1〜A7においては、スカム堰の溶損量が10mm以下、溶鋼面の高さの変動量が4mm以下に抑えられていた。
(CaO)/(MgO)が0.2未満とされた実施例No.A8においては、溶鋼面の高さの変動量が4mmを超えており、評価は○であった。CaOの供給速度が低下したためと推測される。
(CaO)/(MgO)が1.5を超えた実施例No.A9においては、スカム堰の溶損量がやや大きく10mmを超えており、評価は○であった。CaOに対してMgOが不足し、スカム堰自体の強度が不足したためと推測される。
MgOの含有量が20mass%未満とされた実施例No.A10においては、スカム堰の溶損量が10mmを超えており、評価は○であった。MgOが不足し、スカム堰自体の強度が不足したためと推測される。
フリーCの含有量が40mass%を超える実施例No.A11においては、スカム堰の溶損量が10mmを超えており、評価は○であった。グラファイト粒子が部分的に脱落したためと推測される。この場合、スカム堰に付着したアルミナ皮膜は、CaOによる低融点化に加えて、グラファイト粒子がスカム堰本体から脱落する事によっても、冷却ドラムに容易に巻込まれることになる。
CaOの含有量が50mass%を超える比較例No.B14においては、スカム堰の溶損量が15mmを超えていた。CaOが優先的に溶損したためと推測される。
特に、CaOの含有量(mass%)とZrO2の含有量(mass%)との比である(CaO)/(ZrO2)が0.2以上1.5以下の範囲内とされた本発明例No.B1〜B7においては、スカム堰の溶損量が10mm以下、溶鋼面の高さの変動量が4mm以下に抑えられていた。
(CaO)/(ZrO2)が0.2未満とされた実施例No.B8においては、溶鋼面の高さの変動量が4mmを超えており、評価は○であった。CaOの供給速度が低下したためと推測される。
(CaO)/(ZrO2)が1.5を超えた実施例No.B9においては、スカム堰の溶損量がやや大きく10mmを超えており、評価は○であった。CaOに対してZrO2が不足し、スカム堰自体の強度が不足したためと推測される。
ZrO2の含有量が20mass%未満とされた実施例No.B10においては、スカム堰の溶損量が10mmを超えており、評価は○であった。ZrO2が不足し、スカム堰自体の強度が不足したためと推測される。
フリーCの含有量が5mass%未満とされた実施例No.B11においては、スカム堰の溶損量が10mmを超えており、評価は○であった。鋳造開始時に割れが発生して部分的に脱落したためと推測される。
フリーCの含有量が40mass%を超える実施例No.B12においては、スカム堰の溶損量が10mmを超えており、評価は○であった。グラファイト粒子が部分的に脱落したためと推測される。
No.C1〜C9においては、実施例1のNo.A5の組成の耐火材(MgO−CaO系耐火材)を用いた。
No.D1〜D9においては、実施例1のNo.B5の組成の耐火材(ZrO2−CaO系耐火材)を用いた。
ここで、溶鋼溜まり部内の溶鋼温度は、鋳造開始以降、徐々に低下することから、表7,8においては、鋳造の定常部(全鋳造量10tの中間部)において測定した値を記載した。
鋳造幅 : 1300mm
鋳造速度 : 平均60m/min
スカム堰の浸漬深さ : 30mm
スカム堰の幅 : 1250mm
スカム堰の全厚み : 30mm
スカム堰/冷却ドラム間の間隔 : 30mm
スカム堰/冷却ドラム間の流速 : 表7,8に記載の条件
溶鋼溜まり部内の過熱度 : 表7,8に記載の条件
鋳造雰囲気 : Ar
鋳造厚み : 平均1.8mm
鋳造量 : 10ton
スカム堰/冷却ドラム間の溶鋼の流速が5cm/sec未満とされた比較例No.C9及び比較例No.D9においては、溶鋼面高さの変動量が6mmを超えていた。また、鋳片の表面性状が悪く、鋳片の厚みの変動も大きかった。スカム堰と冷却ドラムとの間に位置する溶鋼温度が低くなりアルミナ皮膜を十分に溶融できず、アルミナ皮膜の巻き込みが断続的に発生したためと推測される。
また、各種組成の溶鋼を用いた場合であっても、同様な作用効果が得られることが確認された。
3 溶鋼(溶融金属)
5 凝固シェル
10 薄肉鋳片の製造装置
11 冷却ドラム
15 サイド堰
16 溶鋼溜まり部(溶融金属溜まり部)
19 浸漬ノズル
20,120,220 スカム堰
Claims (9)
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に、浸漬ノズルを介して溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法において、前記溶融金属溜まり部に配設されるスカム堰であって、
少なくとも前記冷却ドラム側を向く面のうち前記溶融金属溜まり部の溶融金属面と接触する領域が、CaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内で含有するCaO含有耐火材で構成されていることを特徴とするスカム堰。 - 前記CaO含有耐火材は、CaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内、MgOを20mass%以上90mass%以下の範囲内、フリーCを0mass%以上40mass%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載のスカム堰。
- 前記CaO含有耐火材において、CaOの含有量(mass%)とMgOの含有量(mass%)との比である(CaO)/(MgO)が0.2以上1.5以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項2に記載のスカム堰。
- 前記CaO含有耐火材は、CaOを10mass%以上50mass%以下の範囲内、ZrO2を20mass%以上85mass%以下の範囲内、フリーCを5mass%以上40mass%以下の範囲内で含有することを特徴とする請求項1に記載のスカム堰。
- 前記CaO含有耐火材において、CaOの含有量(mass%)とZrO2の含有量(mass%)との比である(CaO)/(ZrO2)が0.2以上1.5以下の範囲内とされていることを特徴とする請求項4に記載のスカム堰。
- 前記冷却ドラム側を向く面のうち前記溶融金属溜まり部の溶融金属面と接触する領域が前記CaO含有耐火材で構成されており、
前記浸漬ノズル側を向く面は、前記CaO含有耐火材よりも溶融金属に対する耐溶損性に優れた耐火材で構成されていることを特徴とする請求項1から請求項5のいずれか一項に記載のスカム堰。 - 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に、浸漬ノズルを介して溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造方法であって、
前記溶融金属溜まり部に、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のスカム堰を配置し、
前記浸漬ノズルと前記スカム堰との間で測定される溶融金属の過熱度を5℃以上に設定するとともに、
前記冷却ドラムと前記スカム堰との間における前記溶融金属の流速を5cm/sec以上とすることを特徴とする薄肉鋳片の製造方法。 - 前記溶融金属は、Alを0.1mass%以上4.5mass%以下の範囲内で含むAl含有鋼であることを特徴とする請求項7に記載の薄肉鋳片の製造方法。
- 回転する一対の冷却ドラムと一対のサイド堰によって形成された溶融金属溜まり部に、浸漬ノズルを介して溶融金属を供給し、前記冷却ドラムの周面に凝固シェルを形成・成長させて薄肉鋳片を製造する薄肉鋳片の製造装置であって、
前記溶融金属溜まり部には、請求項1から請求項6のいずれか一項に記載のスカム堰が配設されていることを特徴とする薄肉鋳片の製造装置。
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