JP2008212972A - 高Ni含有鋼鋳片の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】Niを5mass%以上含有する炭素鋼の連続鋳造に際し、鋳片の表面縦割れ、横割れ、コーナー近傍に発生するコーナー割れおよび表層下割れなどの発生を防止する。
【解決手段】高Ni含有鋼の連続鋳造に際し、鋳片表層の凝固組織のデンドライトの二次アーム間隔を40μm未満に制御し、ついで連鋳鋳型より下流に設置された二次冷却帯の一部ゾーンにおいて、スプレー直下の水量密度を3000 L/(min・m2)以上として、該二次冷却帯におけるスラブ表面の平均熱伝達係数が1000 kcal/(m2・hr・℃)以上の強冷却を実施し、ついで鋳片の矯正を行う。
【選択図】図4

Description

本発明は、連続鋳造を利用した高Ni含有鋼鋳片の製造方法に関し、特に連続鋳造鋳片の冷却の際における冷却速度と冷却能力を規定し、連続鋳造鋳片の組織制御を行うことにより、鋳片表層部における割れの発生を防止しようとするものである。
鋼の連続鋳造に際しては、図1に示すように、取鍋(図示せず)からタンディッシュ1に注入した溶鋼を、タンディッシュ1の底部に設置した浸潰ノズル(図示せず)を介して水冷式の連続鋳造鋳型(以下、単に鋳型という)2に注入し、ついで鋳型によって形成された凝固シェルを外殻とする鋳片を、冷却しながら鋳型下方に連続的に引き抜くことにより、連続鋳造鋳片(以下、単に鋳片という)を製造している。
この場合、溶鋼は、まず鋳型2と接することによって冷却され、凝固シェルを形成する。その後、鋳型2を抜けた鋳片は、鋳型直下でクーリンググリッドまたはサポートロールからなる鋳型直下鋳片支持装置3によって支持され、さらにその下方ではガイドロール4-1によって支持されながら、ピンチロール4-2によって鋳造方向に引き抜かれる。これらの鋳型直下鋳片支持装置3、ガイドロール4-1およびピンチロール4-2は、鋳片支持・案内装置と呼ばれている。鋳片は、この鋳片支持・案内装置によって支持されることにより、鋳片の厚み方向への膨らみ(バルジングという)が防止される。
図中、番号5は鋳片切断機(カッター)、そして6が鋳片である。
この鋳片支持・案内装置には、図2に示すように、スプレーノズル(8または9)が配置されており、このスプレーノズル(8または9)から噴霧される冷却水によって冷却されながら鋳片6は引き抜かれ、やがて中心部までの凝固を完了させる。その後、連続鋳造機の機端に設置された鋳片切断機5によって所定の長さに切断され、鋳片となる。スプレーノズル(8または9)が配置されている鋳片支持・案内装置の領域は、一般に二次冷却帯と呼ばれている。
図中、番号7は、特に鋳型直下において凝固シェルが薄くバルジングしやすい鋳片6をサポートするためのウエアプレートであり、8でスプレーノズルのうちの円錐ノズルを、また9で多孔ノズルを示す。
これまでNiを5mass%以上含有する高Ni含有鋼の連続鋳造に際しては、鋳片の表面縦割れ、横割れ、コーナー近傍に発生するコーナー割れおよび表層下割れなどが発生するため、これらの発生を防止すべく、様々な対策が採られてきた。
鋳片の表面縦割れは、鋳型内において、デンドライト部で割れが発生する場合が多いため、初期凝固制御の手法として、鋳型での抜熱の小さい緩冷却パウダーを使用して凝固シェルの厚み差を小さくすることにより、熱応力割れを防止していた。
また、鋳片の横割れやコーナー割れは、垂直曲げまたは湾曲曲げ連鋳機の矯正帯において鋳片に歪みがかかる時に鋳片が脆性温度域に入らないように、鋳造速度や二次冷却を調整することにより防止してきた。
さらに、鋳片の表層下割れに関しては、主に鋳片幅方向の冷却不均一に起因していると考えられるため、二次冷却スプレーとして、より均一な冷却が可能と言われている水とエアーの二流体スプレーであるミストスプレーを採用することにより、防止を図ってきた。
なお、Niをさほど含有しない一般の炭素鋼の表面割れは、粒界近傍部分または粒界の初析フェライト部分で発生しており、その原因は、鋳片の表面温度が熱間延性の低下するγ→α変態温度近傍(約600〜850℃)の時に鋳片の矯正が行われるためと考えられている。
そこで、特許文献1では、鋳片表面温度を650〜700℃以下まで一旦冷却した後に、緩冷却を行い、ついで700〜800℃に復熱させることにより、鋳片表層を組織的に強くする方法を提案している。
しかしながら、この方法では、復熱させる温度が脆性温度を高温側に回避することは難しいこと、またγ→α変態をする鋼種にしか適用できず、本発明で対象とするγ単相凝固の鋼種に対しては適用できないという問題があった。
特許文献2には、鋳片表層部分をオーステナイト単相域温度以上から10℃/s以上の冷却速度で冷却し、表層のオーステナイト粒径を細かくする手法が提案されている。この場合、確かにオーステナイト粒径は小さくなるが、冷却媒体としてHeガスを使用するためコストの上昇が避けられず、鉄鋼業の生産プロセスとしては適切でない。
特許文献3には、同様に表層をAr3変態点以下に冷却した後に、Ar3変態点以上に復熱させ、表面温度が850℃未満の温度で矯正する手法が記載されている。
しかしながら、この手法も、特許文献1と同様、γ→α変態する鋼種にしか適用できないという問題があった。
特許文献4には、鋳片の表層部を300〜500℃の温度に1分以上、冷却−保持することにより、表層を変態させて、割れを防止する方法が記載されている。
しかしながら、この方法は、鋳片をカッターで切断した後に冷却する技術であり、連鋳機内での鋳片表層組織制御を意図したものではないため、連鋳機内での割れを防止することは不可能であった。
特公昭58−3790号公報 特開昭63−63559号公報 特開2002−86252号公報 特開平5−329505号公報
本発明は、上記の現状に鑑み開発されたもので、高Ni含有鋼の連続鋳造に際し、発生が懸念される鋳片の表面縦割れ、横割れ、コーナー割れおよび表層下割れなどを効果的に防止することができる、高Ni含有鋼鋳片の有利な製造方法を提案することを目的とする。
すなわち、本発明の要旨構成は次のとおりである。
(1)Niを5mass%以上含有する炭素鋼を連続鋳造するに際し、鋳片表層の凝固組織のデンドライトの二次アーム間隔を40μm未満に制御し、ついで連鋳鋳型より下流に設置された二次冷却帯の一部ゾーンにおいて、スプレー直下の水量密度を3000 L/(min・m2)以上として、該二次冷却帯におけるスラブ表面の平均熱伝達係数が1000 kcal/(m2・hr・℃)以上の強冷却を実施し、ついで鋳片の矯正を行うことを特徴とする高Ni含有鋼鋳片の製造方法。
(2)前記二次冷却帯の一部ゾーンにおけるスプレー冷却に際し、多孔ノズルを用いて鋳片を冷却することを特徴とする請求項1記載の高Ni含有鋼鋳片の製造方法。
(3)前記鋳片の表層を一旦マルテンサイト変態させた後、復熱させて、鋳片の表層割れを防止することを特徴とする請求項2記載の高Ni含有鋼鋳片の製造方法。
本発明によれば、鋳型および鋳型直下の二次冷却帯での冷却条件の適正化、およびそれに伴う鋳片表層部の組織制御により、高Ni含有鋼において鋳片の表層割れをなくすことができ、鋳片手入れの省略や圧延以降の工程省略が可能となる。その結果、割れ感受性の高い高Ni含有鋼においても、操業トラブルを招くことなく高品質の鋳片を安定して製造することができ、工業上極めて有益である。
以下、図面を参照して、本発明を具体的に説明する。
最初に、初期凝固シェルの冷却速度の制御について説明する。まず、鋳型内での冷却コントロールとしては、ラボ実験において、溶鋼を鋳込む鋳型の厚みを変化させて行った。具体的には、緩冷却、つまりデンドライトの二次アーム間隔が40μm以上となる初期凝固速度を得るためには、鋳型の厚みを厚くし、他方、強冷却、つまりデンドライトの二次アーム間隔が40μm未満となる初期凝固速度を得るために鋳型の厚みを薄くした。すなわち、強冷却の実験の場合は、鋳型の厚みを5mmとし、一方緩冷却の実験の場合には、鋳型の厚みを15mmとして実験を行った。
また、デンドライトの二次アーム間隔を測定する場合は、その後の二次冷却を付与しないでそのまま凝固させて測定した。測定に当たっては、表面から10mm以内の表層部分での割れの制御が本発明の目的であることから、表面から10mm以内の表層部分内で、20ヶ所のデンドライトの二次アーム間隔の平均値を求め、本発明のデンドライト二次アーム間隔とした。
図3に、実際の鋳片の組織写真を示す。
図3の写真は、鋳片の断面(幅方向のC断面)を、研削、研磨した後に、ピクリン酸で腐食し、凝固組織を抽出したものであるり、同図(a)は緩冷却の場合、同図(b)は強冷却の場合である。一般に、凝固組織であるデンドライトの二次アーム間隔が小さいほど冷却速度が速いことを示しており、実際、同図(a)の場合、デンドライトの二次アーム間隔は46μm、一方同図(b)の場合、デンドライトの二次アーム間隔は38μmであった。
そこで、次に、デンドライトの二次アーム間隔が種々の鋳片を作製し、この二次アーム間隔と鋳片の割れとの関係について調査した。
その結果、5mass%以上のNiを含有する高Ni含有鋼では、デンドライトの二次アーム間隔が40μmをしきい値として割れの発生形態に差が生じることが判明した。
すなわち、デンドライトの二次アーム間隔が40μm以上の場合は、凝固時の冷却速度が遅いことを意味しているのに対し、デンドライトの二次アーム間隔が40μm未満になると凝固時の冷却速度が速く、核生成の起点が多くなるため、凝固組織が細かくなって鋳片の強度が増し、割れにくくなることが究明されたのである。
上述したとおり、鋳片の割れを防止するためには、デンドライトの二次アーム間隔を40μm未満にすることが有効であることが判明した。なお、後述する二次冷却帯における冷却の条件が適正であっても、鋳型での冷却は初期凝固を決定する重要な因子であり、従って、初期凝固の制御をデンドライトの二次アーム間隔で評価することは極めて重要である。
なお、鉄鋼便覧などによれば、このデンドライトの二次アーム間隔より冷却速度に換算する式も提案されているが、本発明の対象としている高Ni含有鋼では、現段階では正しい換算式は見出されていない。
しかしながら、この点に関する発明者らの実験によれば、鋳片表層すなわち鋳片の表面から10mmまでの領域のデンドライトの二次アーム間隔を40μm未満に制御するには、モールドパウダーとして強抜熱のものを用いるのが有効であることが判明した。
(1) 一般的には、鋳型/鋳片間の伝熱挙動については、鋳型/鋳片間の界面熱抵抗を小さくすることが重要であり、界面熱抵抗を小さくするためには、鋳型と接し、パウダーが凝固する面の表面粗度を小さくするとよい。そのためには、結晶が析出しないガラス化するパウダーを用いればよい。一般には冷却速度が速い場合、結晶が析出しないことがあるため、一旦溶融されたパウダーを5℃/分で冷却した時に結晶析出のピークがDTA(示差熱分析:Differential Thermal Analysis)などで検出されないパウダーを用いる。
(2) また、界面熱抵抗以外にも、鋳型と鋳片の間に流れ込むパウダーフィルム厚みが薄いと当然抜熱能が上昇する。そのため、パウダーフィルム厚みを薄くするためには、高粘度パウダーを用いることが重要であり、好ましくは2ポイズ以上のものを用いるのがよい。
(3) 特に好適には、上記(1)と(2)の両者を満たすモールドパウダーを使用することが望ましい。
次に、図2に基づき、鋳型直下の二次冷却帯での鋳片の冷却要領について説明する。
連鋳機では、鋳型直下に、すぐロールを設置し、鋳片をロールでサポートするいわゆるサポートロール方式のものと、鋳片を面で固定する方式すなわちクーリンググリッドを用いる方式がある。クーリンググリッドは、ウェアープレート7と二次冷却スプレー(8または9)で構成されている。このクーリンググリッド方式は、鋳型直下のシェル厚みの薄い領域を、ロールのような線で固定するのではなく、鋳片表面を面で固定するため、鋳型直下の鋳片厚みが薄くバルジングが起きやすい領域においても、安定操業が可能という利点がある。
このクーリンググリッド方式の場合、ウエアプレート7は千鳥に配置するため、連鋳機トータルでは幅方向の冷却は均一になっているものの、厳密にいえば、ウエアプレート7の存在しない領域に設置された二次冷却スプレーにより冷却が行われる。本来、鋳片から見た場合、平均水量密度は、ウエアプレート7も含めた面積で割った値を採用するが、冷却単体での能力を見る場合、スプレーノズル直下の領域での実際の冷却能力が大きく左右することは言うまでもない。
そこで、ウエアプレート7の存在しない部分(図2に丸で表示している冷却スプレーの水があたる領域)の冷却能力の値を、局所水量密度とし、またその領域の熱伝達係数の値を局所熱伝達係数と定義する。
平均熱伝達係数は、ウエアプレートの面積も考慮して算出する必要があり、一般にはウエアプレートからの冷却は少ないため、平均熱伝達係数は局所熱伝達係数よりも小さくなる。また、局所冷却、つまりウエアプレート間の冷却は、一流体である水スプレーでもよいし、水とエアーの混合の二流体であるミストでもよい。それぞれのニーズに沿った適切な冷却方式を選定すればよい。
一般には、水スプレーやミストスプレーは一つのノズルチップから冷却面積全体に均一に冷却水がかかるように噴霧される。しかしながら、冷却のためにはノズルチップは一つでなく、家庭用のシャワーのような複数の孔が空いている多孔ノズルで冷却する方式が有利である。勿論、スプレーの配置が可能なら、ウエアプレート間の隙間にスプレーを複数並べてもよい。
次に、鋳片表面の熱伝達係数について説明する。
実際の連鋳機の鋳片の中に熱電対を組み込み、正しい熱伝達係数を測定することは事実上不可能である。そこで、冷却能力のみ評価する実験を、以下の手順で行った。
まず、所定の成分組成に調整したの溶鋼を、必要量だけ溶解炉にて溶製した後、インゴット(断面積:100mm×120mm)に約25kg鋳込み、表層:15mmのシェルが固まったのちに、インゴットの一面を解放し、スプレーにて冷却した。この場合、解放するインゴットの一面に対して垂直方向に熱電対を表面から10,20,30mmの位置に設置し、これらの熱電対の温度履歴から熱伝達係数を算出した。この際、鋳片の温度は1500℃を超えるため、熱電対としてはRタイプを採用した。また、鋳片表面の冷却は、一流体である水スプレーにて行い、通常使用される1本のノズルから冷却する手法と、多孔ノズルで冷却したものとの2種類で行った。冷却の幅は、水スプレーが円錐ノズルの場合、直径:90mmの円錐の領域を冷却できるノズルを使用した。また多孔ノズルは、90×90mmの板に、孔径が3mmのものを30mmピッチに配置したものを用いた。従って、水圧が適正圧力で実験をしていれば、実際の冷却面積は90×90mmであり、円錐ノズルとほぼ同等の面積を冷却していると言える。そして、この面積を、それぞれの局所水量密度を求める際の面積として使用した。
また、本発明は、鋳型直下の冷却をイメージしていることから、連続鋳造機の垂直部を模擬するため、冷却面は鋳片面に対して垂直とした。また、実機で対象とする矯正までの二次冷却帯の一部を冷却することから、冷却時間は60秒とした。
実験は、表面から10mm位置の熱電対が1200℃になった瞬間より冷却を開始し、0.1秒毎にパーソナルコンピューターに取り込み、実験後、計測した温度履歴によりそれぞれの熱電対の熱伝達係数を算出した。この熱伝達係数は、熱電対が深さ方向に3点であるが、約90mm角の冷却面積では、熱電対の設置は1ヶ所のみであり、本発明の熱伝達係数は、局所熱伝達係数を求めたことになる。
ここで注意すべきことは、実機の場合、図2より分かるように、ウェアープレートの部分は、上述のラボ実験で求めた局所熱伝達係数では冷却されないことである。従って、平均熱伝達係数を採用する必要がある。
以下、平均熱伝達係数の算出方法を簡単に述べる。まず、クーリンググリッドのゾーン面積内でのウエアプレートの面積率とウエアプレートの熱伝達係数を求め、ゾーン全体での平均熱伝達係数を算出する。ウエアプレート部分の熱伝達係数は、同様の実験で求めたところ、約300kcal/(m2・hr・℃)であり、本発明を後述の実施例に示すように実際の連鋳機に適用した時の、クーリンググリッド内でウエアプレートの占める割合は53%であった。そのため、この割合を用いて、平均熱伝達係数を算出した。
また、熱伝達係数は、温度によって変化するため、本発明では連続鋳造鋳片の表面温度の平均に近いと推定される850℃における熱伝達係数を用いて冷却能力を比較した。
図4に、水スプレーノズルとして円錐ノズルと多孔ノズルを用いて上述のラボ実験で求めた局所熱伝達係数を、それぞれのノズルの水量密度との関係で示す。
同図から、多孔ノズルの場合、水量密度は3000 L/(min・m2)以上とするのが望ましいことが分かる。また、4000 L/(min・m2)以上にすると、さらに冷却能力は増すものの、水量密度を増やしたほど、冷却能力は向上しない。従って、水量密度は3000 L/(min・m2)以上好ましくは3000〜4000 L/(min・m2)の範囲である。
この点、円錐ノズルでも、水量を増やせば多孔ノズルなみの冷却は得られるが、非常に大量の水量が必要となる。よって、冷却能力の優れた多孔ノズルを使用することが望ましい。また、90mm×90mmのエリアを冷却するだけなら、一本の水スプレーでも問題ないが、幅方向に均一に冷却するという観点からは、多孔ノズルを用いることにより、より均一な冷却となる。
また、水量については、多孔ノズルでは、水量を減らしすぎると、結局、鋳片表面に衝突する流速を減じ、鋳片表面の蒸気膜を除去することができなくなる。
図4の結果から分かるように、多孔ノズルを使用する場合には、水量密度:3000 L/(min・m2)以上が流速確保のために必要である。
また、凝固組織を観察したところ、本発明で対象とする高Ni含有鋼においては、γ単相凝固であるため、γ→α変態をしない。しかしながら、鋳片をマクロエッチングしたところ、表層に微細化相が観察された。鋳片厚み方向に3点設置した熱電対から推定すると、微細化層厚みの境界温度はマルテンサイト変態温度であることが分かった。従って、γ→α変態をしない鋼種においては、マルテンサイト変態まで冷却することが有効である。
図5に、マルテンサイト変態により表層が微細化した凝固組織の一例(マクロ写真)を示す。
なお、本発明で対象とする高Ni含有鋼としては、鋼中にNiを5mass%以上含有する炭素鋼であればいずれもが適合する。
しかしながら、Niが45mass%を超えて多量に含有される鉄−ニッケル合金は需要が少なく、連続鋳造するメリットに乏しいので、Ni含有量の上限は45mass%程度とするのが好適である。
また、その他の、成分については特に限定されることはないが、代表的な成分およびその好適含有量について述べると、次のとおりである。
C:0.03〜0.07mass%、Si:0.1〜0.5mass%、Mn:0.3〜0.8mass%、P:0.01mass%以下、S:0.01mass%以下、Al:0.005〜0.006mass%。
また、モールドパウダーとしては、SiO2:30〜45mass%、CaO:20〜40mass%、Al2O3:1〜20mass%、Na2O:0.5〜15mass%、Li2O:4mass%未満、F:10mass%未満で、かつ CaO/SiO2<1.2の組成で、粘度が2ポイズ以上のものが有利に適合する。
以上説明したように、本発明によれば、鋳型直下のクーリンググリッド部分において、ウエアプレートの間から冷却する際に、所定の水量密度を確保することによって、鋳片表層:10mmの凝固組織を微細化することができ、これにより表層に割れの生じない鋳片を得ることができる。すなわち、安定してかつ操業トラブルを生じることなしに、高品質の鋳片を安定して製造することができる。
短辺(スラブ厚みに相当):250mm、長辺(スラブ幅に相当):1750mmの鋳型寸法で、鋳型直下にクーリンググリッドを有する連続鋳造機を用い、表1に示す鋼材1,2および3の成分の溶鋼を連続鋳造した。この際、鋳造速度は0.7m/min、溶鋼過熱度は32℃とし、また二次冷却を種々に変化させて鋳造した。また、クーリンググリッド部分には、片方のストランドには、多孔ノズルを組み込み、もう一方のストランドには従来から使用している円錐ノズルを用いて鋳造した。
鋳型内冷却のコントロールは、異なる2種類のモールドパウダーを使用することにより行った。使用したパウダーの組成を表2に示す。パウダーAは緩冷却、つまりデンドライト二次アーム間隔が40μm以上を想定し、パウダーBは強冷却、つまりデンドライト二次アーム間隔が40μm未満になることを想定した。
なお、パウダーの粘度は、1300℃において白金引き上げ法によって測定された測定値である。また、結晶化温度は、溶融状態から5℃/分で冷却し、DTAによって表われる結晶析出の第1ピークが出現する温度である。
さらに、矯正までのクーリンググリッド部の強冷却には、鋳造中に1本当たりのノズルの水量を12,25,48 L/minと変化させた。クーリンググリッドの鋳造方向の長さ、つまりゾーン長さは0.79mである。クーリンググリッドは、図2に示したように、ノズルは3列で、千鳥配置とした。なお、ノズルの本数は、片面当たり幅方向に1,3列目に18個、2列目に19個としている。つまり、表3の実験条件では、クーリンググリッド部分だけの比水量は0.55〜2.21 L/kgの変化になる。ただし、それ以降の下部の二次冷却ゾーンは変更させることなく、またクーリンググリッド部分の冷却能力より緩冷却になるようにして、鋳片表面温度が復熱できるように二次冷却水量を設定した。比水量換算では0.6 L/kgである。
鋳片はカッタートーチで切断したスラブを一度、室温まで冷却して切断加工後、マクロエッチングを実施し、スラブのC断面(幅方向断面)を観察して表層10mm以内の凝固組織について調査して、以下の評価により、合否を判定した。
×:表層10mmの中に3mm以上の割れがあるもの・・・不合格
△:表層10mmの中に1〜3mmの割れがあるもの・・・不合格
〇:表層10mmの中に1mm以上の割れがないもの・・・合格
◎:表層10mmの中に一切の割れがないもの・・・・・合格
表3にその結果を示す。
表3に示したとおり、鋳片表層の凝固組織のデンドライトの二次アーム間隔を40μm未満にして、かつ、スプレー直下の水量密度を3000 L/(min・m2)以上とし、鋳型直下の二次冷却帯における平均熱伝達係数を1000 kcal/(m2・hr・℃)以上とすることにより、表層:10mmの凝固組織を微細化して、鋳片の割れを防止することができた。
連続鋳造機の概略図である。 連続鋳造機の鋳型直下のクーリンググリッドの構造と多孔ノズルまたは円錐ノ ズルで鋳片を冷却している様子を示す概略図である。 鋳片表層部の凝固組織を示したもので、(a)は緩冷却の場合、(b)は強冷却の場合である。 ラボ実験における水量密度と熱伝達係数との関係を示した図である。 マルテンサイト変態により表層が微細化した凝固組織のマクロ写真である。
符号の説明
1 タンディッシュ
2 鋳型
3 鋳型直下鋳片支持装置
4-1 ガイドロール
4-2 ピンチロール
5 鋳片切断機(カッター)
6 鋳片
7 ウエアプレート
8 円錐ノズル
9 多孔ノズル

Claims (3)

  1. Niを5mass%以上含有する炭素鋼を連続鋳造するに際し、鋳片表層の凝固組織のデンドライトの二次アーム間隔を40μm未満に制御し、ついで連鋳鋳型より下流に設置された二次冷却帯の一部ゾーンにおいて、スプレー直下の水量密度を3000 L/(min・m2)以上として、該二次冷却帯におけるスラブ表面の平均熱伝達係数が1000 kcal/(m2・hr・℃)以上の強冷却を実施し、ついで鋳片の矯正を行うことを特徴とする高Ni含有鋼鋳片の製造方法。
  2. 前記二次冷却帯の一部ゾーンにおけるスプレー冷却に際し、多孔ノズルを用いて鋳片を冷却することを特徴とする請求項1記載の高Ni含有鋼鋳片の製造方法。
  3. 前記鋳片の表層を一旦マルテンサイト変態させた後、復熱させて、鋳片の表層割れを防止することを特徴とする請求項2記載の高Ni含有鋼鋳片の製造方法。
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