JPH0810919A - 含ニッケル鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

含ニッケル鋼の連続鋳造方法

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JPH0810919A
JPH0810919A JP14449994A JP14449994A JPH0810919A JP H0810919 A JPH0810919 A JP H0810919A JP 14449994 A JP14449994 A JP 14449994A JP 14449994 A JP14449994 A JP 14449994A JP H0810919 A JPH0810919 A JP H0810919A
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Abstract

(57)【要約】 【目的】本発明の目的とするところは、連続鋳造したス
ラブ表面に従来の表面割れ、表面下割れはもとより、微
細な割れの発生をも完全に防止する5〜10%Ni鋼の
連続鋳造方法を提供することである。 【構成】ニッケルを5〜10重量%含有する溶鋼を連続
鋳造するに際して、該溶鋼を燐が0.006重量%以
下、硫黄が0.003重量%以下になるよう溶製して鋳
造し、2次冷却帯では、鋳片の液相線温度から1050
℃までの温度領域は3.0℃/秒以上の速度で冷却する
とともに、該鋳片の矯正点通過終了時の表面温度を85
0℃以上に維持することを特徴とする含ニッケル鋼の連
続鋳造方法である。

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、含ニッケル(以下、N
iで表わす)鋼の連続鋳造方法に関し、詳しくは5〜1
0重量%(以下、重量を省略する)のNiを含有する溶
鋼を連続鋳造するに際して、スラブ表面近傍に発生する
割れを安定して抑制する技術に係わる。
【0002】
【従来の技術】連続鋳造は、鉄鋼製造工程のなかで従来
行われていた造塊から分塊圧延までの工程省略、省エネ
ルギー、省力化、歩留向上等をもたらすので、その実用
化以来、研究開発が盛んに行われ、質的にも量的にもそ
の適用分野が拡大し、9%Ni鋼を始めとする一連の低
温用含Ni鋼の鋳造にも適用されるようになった。
【0003】ところが、上記低温用含Ni鋼の連続鋳造
には一つの重要な問題があった。それは、5〜10%N
iを含有する鋼が他の低合金鋼に比べて鋳片に表面割れ
や表面下割れが発生し易く、圧延の前工程として煩雑な
手入れや軽分塊を必要とすることであった。そのため、
上記した連鋳化メリットが十分に達成できなかったので
ある。
【0004】そこで、5〜10%Ni鋼の連続鋳造にお
ける表面割れの原因追及に関する研究が盛んに行われ、
一般的な結論として、鋳片のオーステナイト粒界に析出
した硫化物、窒化物によって粒界が脆弱になった状態に
おいて、ある限界値以上の引張り応力が表面近傍に負荷
されると、上記硫化物等を囲むようにボイドが生じ、そ
のボイドが凝集、連結して最終的に割れに至るというこ
とであった。この結論を踏まえて、該表面割れの防止技
術の開発も行われ、多数の特許出願等も見られるように
なった。
【0005】例えば、特開昭58−77756号公報
は、Niを7.5〜10%含有する鋼の連続鋳造にあた
り、該鋼中に混入するPを0.007%以下、Sを0.
003%以下と制限し、且つ鋳造に際しては鋳型直下か
ら鋳片の矯正点開始位置に至る間にわたり(通常の垂直
曲げ型、湾曲型連鋳機では鋳片の曲がり矯正が必要)、
該鋳片表面に吹き付ける冷却水量を(二次冷却帯とい
う)制限する方法を開示した。また、特開平1−228
644号公報は、5〜10%Ni鋼の連続鋳造におい
て、鋳片の表面温度が1150℃から950℃の領域
で、該表面温度の冷却速度を20℃/分以下と緩和する
方法を提案し、一方特開昭57−26141公報は、
5.5〜10%鋼の連続鋳造に先立ち、該鋼のS,N,
Ca含有量をそれぞれある値以下に制限する方法を開示
している。その他にも鋼材の靭性を高めるため、Tiや
Ca等を添加する方法(特開昭57−26141号公
報)あるいは二次冷却帯において950℃以下の領域を
20℃/分以下の冷却速度で緩冷する方法等、多々の技
術が開示されている。その結果、含Ni鋼の連続鋳造時
の表面割れは以前に比べ大幅に改善された。しかしなが
ら、5〜10%Ni鋼には、以上述べた各種の対策でも
改善できない問題が存在していた。それは、スラブ表面
に上記割れよりも細かい所謂微細割れが存在し、上記技
術ではその微細割れを安定して抑制することができない
ということであった。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、かかる事情
を鑑み、その目的とするところは、連続鋳造したスラブ
表面に従来の表面割れ、表面下割れはもとより、微細な
割れの発生をも完全に防止する5〜10%Ni鋼の連続
鋳造方法を提供することである。
【0007】
【課題を解決するための手段】発明者は、上記目的を達
成するため、従来技術の見直しに加え、従来技術は2次
冷却帯での冷却速度が総じて小さいことに着眼した。そ
して、その問題を是正するためには、むしろ冷却速度を
早める方が良いと考え、種々の実験を行った結果に基づ
き本発明を創案した。すなわち、本発明は、ニッケルを
5〜10重量%含有する溶鋼を連続鋳造するに際して、
該溶鋼を燐が0.006重量%以下、硫黄が0.003
重量%以下になるよう溶製して鋳造し、2次冷却帯で
は、鋳片の液相線温度から1050℃までの温度領域は
3.0℃/秒以上の速度で冷却するとともに、該鋳片の
矯正点通過終了時の表面温度を850℃以上に維持する
ことを特徴とする含ニッケル鋼の連続鋳造方法である。
【0008】また、本発明は、該鋳片の矯正点通過終了
直前に、鋳片表面への冷却水の噴射を停止することを特
徴とする請求項1記載の含有ニッケル鋼の連続鋳造方法
でもある。
【0009】
【作用】本発明では、ニッケルを5〜10重量%含有す
る溶鋼を連続鋳造するに際して、該溶鋼を燐が0.00
6重量%以下、硫黄が0.003重量%以下になるよう
溶製して鋳造し、2次冷却帯では、鋳片の液相線温度か
ら1050℃までの温度領域は3.0℃/秒以上の速度
で冷却するとともに、該鋳片の矯正点通過終了時の表面
温度を850℃以上に維持するようにしたので、従来発
生した表面割ればかりか微細な割れも抑制できるように
なる。また、本発明では、該鋳片の矯正点通過終了直前
に、鋳片表面への冷却水の噴射を停止するようにしたの
で、上記効果は一層促進できた。以下、図1〜7に基づ
き、本発明をするに至った実験結果と着想内容を説明す
る。
【0010】図1は、9%Ni鋼を連続鋳造した際に生
じた表面割れと鋳片中のP,S濃度との関係を整理した
ものである。図1より、溶鋼中のP,Sをそれぞれ0.
006%以下、0.003%以下とした場合には、表面
割れが皆無となることが明らかである。それは、溶鋼中
のP,Sが上記条件を満たすと、鋳片の結晶粒界での割
れが抑制されるからである。なお、図1で(内R)、
(外R)の記号は連鋳機の湾曲する内側、外側の位置を
表わし、その部分の鋳片表面に微細割れが発生すること
の意味である。
【0011】図2は、実験1として、成分を表1に示す
9%Ni鋼を連続鋳造し、2次冷却帯での鋳片表面温度
の変化を示したものである。その際の鋳造速度は0.9
0m/分、比水量1.25リットル/鋳片kg,液相温
度1489℃、初期の冷却速度3.3℃/秒である。こ
の場合の鋳片には表面欠陥は発生しなかった。一方、図
3は、実験2として、成分を表2に示す別の9%Ni鋼
の鋳片表面温度の変化である。その際の鋳造速度は、
0.90m/分、比水量1.0リットル/鋳片kg、液
相温度1489℃、初期の冷却速度1.3℃/秒であ
る。この場合は、鋳片表面に割れが相当量発生した。そ
の様子は、図5に両ケースを比較して示す。図5では、
縦軸は単位面積当たりの欠陥数(鋼板の欠陥評価指数)
であり、横軸は鋼板表面からの位置(研削量)である。
冷却速度が遅いケースが欠陥が多く、3.0℃/秒以上
の冷却速度では欠陥が存在しないことが明らかである。
【0012】
【表1】
【0013】
【表2】
【0014】そこで、表面微細割れの発生原因を追及す
るため、各ケースで鋳片最表面からの結晶粒径を調べ、
冷却速度に対応させたところ図4の関係を得た。これら
の結果から、液相線温度から1050℃までの冷却を
3.0℃/秒以上とすれば、鋳片表面のオーステナイト
粒径を2.0mm以下に調整でき、3.0℃/秒以下だ
と粒径が2.0mmを越え、粒界が粗大化し、P,Sを
それぞれ0.006%以下、0.003%以下にしても
表面微細割れが抑えられないことがわかった。つまり、
冷却速度が3.0℃/秒以上では鋳片組織が微細化し、
不純成分(P,S等)の集積帯である結晶粒界を微細に
すると共に、表面のオーステナイト粒径は2.0mm以
下になることが表面微細割れ抑制に効果があるようであ
る。
【0015】さらに、図6は、9%Ni鋼の歪速度及び
鋳片温度とその圧延鋼材の絞り値(RA)との関係を示
したものである。通常使用される垂直曲げ型あるいは湾
曲型の連鋳機では、鋳片矯正時の歪速度εは10-2〜1
-3のオーダであるから、図6より矯正終了時点の鋳片
温度は850℃以上とする必要があるようだ。この温度
以下は、鋳片の脆化温度域になり、表面微細割れが発生
すると考えられるからである。
【0016】図7は、前記2つの実験鋳造における冷却
時の水量密度変化である。表面微細割れの発生しなかっ
た場合は、矯正点での2次冷却水噴射を停止したので、
スプレーノズルの詰まり、あるいはロールと鋳片間との
滞留水に起因した鋳片幅方向の表面温度の不均一が解消
できるのである。
【0017】
【実施例】本発明に係る5〜10%Ni鋼の連続鋳造方
法の効果を確認するため、表1に示した組成の溶鋼を再
度溶製し、湾曲型連鋳機で鋳造し、幅1500mm,厚
み150mm,長さ4000mmのスラブを製造した。
その途上、2次冷却帯では、液相線温度から900℃ま
でを3.0℃/秒の冷却速度になるようスプレー水をス
ラブ表面に噴射し、矯正点通過4m前にはスプレー水の
噴射を停止することで、矯正終了時のスラブ温度を86
0℃に維持した。その後、該スラブは熱間圧延を経て鋼
板にされたが、鋼板の一部より試験片を取り、表面より
2mmから8mmまでの欠陥を磁粉探傷法で調査した。
その結果、欠陥は0個/m2 と全く発見できなかった。
【0018】一方、上記と同じ組成の溶鋼を溶製し、同
じ連鋳機でスラブを製造し、2時冷却帯での冷却速度を
液相線温度から900℃まで1.3℃/秒とし、スプレ
ー水の停止をせずに、矯正点終了時温度を850℃とし
た。そして、同様の欠陥調査で欠陥が5個/m2 あるこ
とが分かった。
【0019】
【発明の効果】以上述べたように、本発明により、5〜
10%Ni鋼を連続鋳造してスラブを製造したが、従来
の表面割れ、表面下割ればかりか微細な表面割れも防止
でき、連鋳化のメリットが十分達成できるようになっ
た。
【図面の簡単な説明】
【図1】9%Ni鋼の連続鋳造における鋼中P,S濃度
と鋳片表面割れ発生の関係を示す図である。
【図2】9%Ni鋼の連続鋳造におけるメニスカス部か
らの距離に対する鋳片表面温度の変化を示す図である
(実験1の結果)。
【図3】9%Ni鋼の連続鋳造におけるメニスカス部か
らの距離に対する鋳片表面温度の変化を示す図である
(実験2の結果)。
【図4】9%Ni鋼の連続鋳造における鋳片の冷却速度
と鋳片最表面から1mmの深さでの結晶粒径との関係を
示す図である。
【図5】実験1と実験2の結果を示す図であり、連鋳鋳
片の圧延後鋼板の欠陥数を示す図である。
【図6】9%Ni鋼の連続鋳造における歪速度及び鋳片
温度と鋼板の絞り値との関係を示す図である。
【図7】実験1、2における2次冷却帯での水量密度の
変化を示す図である。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 奈良 正功 倉敷市水島川崎通1丁目(番地なし) 川 崎製鉄株式会社水島製鉄所内 (72)発明者 小日向 忠 倉敷市水島川崎通1丁目(番地なし) 川 崎製鉄株式会社水島製鉄所内

Claims (2)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 ニッケルを5〜10重量%含有する溶鋼
    を連続鋳造するに際して、 該溶鋼を燐が0.006重量%以下、硫黄が0.003
    重量%以下になるよう溶製して鋳造し、2次冷却帯で
    は、鋳片の液相線温度から1050℃までの温度領域は
    3.0℃/秒以上の速度で冷却するとともに、該鋳片の
    矯正点通過終了時の表面温度を850℃以上に維持する
    ことを特徴とする含ニッケル鋼の連続鋳造方法。
  2. 【請求項2】 該鋳片の矯正点通過終了直前に、鋳片表
    面への冷却水の噴射を停止することを特徴とする請求項
    1記載の含有ニッケル鋼の連続鋳造方法。
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* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP2008212972A (ja) * 2007-03-02 2008-09-18 Jfe Steel Kk 高Ni含有鋼鋳片の製造方法
JP2009248099A (ja) * 2008-04-02 2009-10-29 Jfe Steel Corp Ni含有鋼鋳片及びNi含有鋼の連続鋳造方法
JP2017100180A (ja) * 2015-12-04 2017-06-08 株式会社神戸製鋼所 連続鋳造方法
JP2019022911A (ja) * 2018-09-03 2019-02-14 株式会社神戸製鋼所 鋼の連続鋳造方法
WO2024053276A1 (ja) * 2022-09-09 2024-03-14 Jfeスチール株式会社 鋼鋳片、連続鋳造方法及び、鋼鋳片の製造方法

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