JP2024047886A - 連続鋳造用鋳型及び連続鋳造用鋳型の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】凝固シェル厚みの不均一による表面割れを抑制できる連続鋳造用鋳型を提供する。【解決手段】連続鋳造において、鋳型内に注入された溶鋼を冷却し、凝固させる鋳型冷却板10を有する連続鋳造用鋳型であって、メニスカスよりも20mm以上上方の位置から、メニスカスよりも下記(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの鋳型冷却板の内壁面には鍍金部20が、鋳型冷却板の内壁面の幅方向及び鋳造方向に空間周期的に設けられ、鍍金部の平均厚みとなる仮想平面が、鍍金部の表面と交差して生じる仮想切断面の円相当径、幅方向周期及び鋳造方向周期は下記(2)~(4)式を満たす、連続鋳造用鋳型。R=2×Vc/60×1000(1)、1.0≦d≦10(2)、0.2≦d/W≦1.0(3)、0.2≦d/L≦1.0(4)。[式中、Rは長さmm、Vcは鋳片引き抜き速度m/分、dは円相当径mm、Wは幅方向周期mm、Lは鋳造方向周期mm。]【選択図】図3
Description
本発明は、鋳型内での凝固シェルの不均一冷却に起因する鋳片表面割れを抑制できる連続鋳造用鋳型及び連続鋳造用鋳型の製造方法に関する。
鋼の連続鋳造においては、鋳型内に注入された溶鋼は水冷式鋳型によって冷却され、鋳型との接触面で溶鋼が凝固して凝固層(以下、「凝固シェル」と記載する。)が生成される。凝固シェルが、鋳型下流側に設置した水スプレーや気水スプレーによって冷却されながら、内部の未凝固層とともに鋳型下方に連続的に引き抜かれ、水スプレーや気水スプレーによる冷却によって中心部まで凝固して鋳片が製造される。
鋳型内における冷却が不足すると、凝固シェルの厚みが薄くなり、鋳型下流側でロールでのサポートに切り替わった際に、鋳片内部の溶鋼から生じる溶鋼静圧に耐えられず、凝固シェルが破断し溶鋼が流出するブレークアウトが生じる。一方、鋳型内を強冷却にすると、冷却の不均一が生じやすくなる。鋳型内における冷却が不均一になると、凝固シェルの厚みが鋳造方向及び鋳片幅方向で不均一となる。凝固シェルには、凝固シェルの収縮や変形に起因する応力が作用し、凝固初期においては、この応力が凝固シェルの薄肉部に集中し、この応力によって凝固シェルの表面に割れが発生する。この割れは、その後の熱応力や連続鋳造機のロールによる曲げ応力及び矯正応力などの外力により拡大し、大きな表面割れとなる。凝固シェル厚みの不均一度が大きい場合には、鋳型内での縦割れとなり、この縦割れから溶鋼が流出するブレークアウトが発生する場合もある。鋳片に存在する割れは、次工程の圧延工程で表面欠陥となることから、鋳片の段階において、鋳片の表面を手入れして表面割れを除去することが必要となる。
鋳型内の不均一凝固は、特に、炭素含有量が0.08~0.17質量%の範囲内の、包晶反応によるγ鉄(オーステナイト)への変態時の体積収縮による変態応力に起因する歪みによって凝固シェルが変形し、この変形により鋳型内壁面から離れた部位の凝固シェルの凝固厚みが薄くなり、この部分に上記応力が集中することによって表面割れが発生すると考えられる。特に、鋳片の引き抜き速度を増加させると、凝固シェルから鋳型冷却水への平均熱流束が増加し、熱流束の分布が不規則で且つ不均一になることから、鋳片表面割れが増加する傾向がある。具体的には、鋳片厚みが200mm以上のスラブ連続鋳造機においては、鋳片の引き抜き速度が1.5m/分以上になると表面割れが発生しやすくなる。
上記の包晶反応を伴う鋼種(以下、「中炭素鋼」と記載する。)の表面割れを防止するために、特許文献1には、結晶化しやすい組成のモールドパウダーを使用し、モールドパウダー層の熱抵抗を増大させて凝固シェルを緩冷却することが開示されている。しかしながら、モールドパウダーによる緩冷却効果のみでは、十分な不均一凝固の改善は得られず、変態量の大きい鋼種では表面割れを抑制できない。
そこで、連続鋳造用鋳型自体を緩冷却化する手法が多数提案されている。特許文献2には、表面割れを防止するために、鋳型内壁面に溝や丸孔を設け、当該溝や丸孔によるエアギャップを形成させることによって緩冷却を図る方法が開示されている。さらに、特許文献3には、鋳型内壁面の凹加工面の溝幅や丸孔を小さくする方法が開示されている。
特許文献2に開示された方法は、溝や丸孔のピッチが細かく、ランダムなため、凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束や変態応力、熱応力を規則的且つ周期的に分散することができず、凝固シェル厚みを均一化する効果が小さいという課題がある。特許文献3に開示された方法は、界面張力作用により、モールドパウダーが凹加工面の溝幅や丸孔に流入せずエアギャップが保たれるものの、鋳造方向に対して直線的に溝が形成されているため、該当箇所での凝固遅れが助長され、縦割れの起因、ひどい場合にはブレークアウトを引き起こす可能性があるという課題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、凝固初期の凝固シェルの不均一冷却、並びに、包晶反応を伴う中炭素鋼でのδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みの不均一による表面割れを抑制できる連続鋳造用鋳型及び当該連続鋳造用鋳型の製造方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]連続鋳造において、鋳型内に注入された溶鋼を冷却し、凝固させる鋳型冷却板を有する連続鋳造用鋳型であって、メニスカスよりも20mm以上上方の位置から、前記メニスカスよりも下記(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの前記鋳型冷却板の内壁面には鍍金部が、前記鋳型冷却板の内壁面の幅方向及び鋳造方向に空間周期的に設けられ、前記鍍金部の平均厚みとなる仮想平面が、前記鍍金部の表面と交差して生じる仮想切断面の円相当径、幅方向周期及び鋳造方向周期は下記(2)~(4)式を満たす、連続鋳造用鋳型。
R=2×Vc/60×1000・・・(1)
1.0≦d≦10・・・(2)
0.2≦d/W≦1.0・・・(3)
0.2≦d/L≦1.0・・・(4)
上記(1)~(4)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)であり、dは前記円相当径(mm)であり、Wは前記幅方向周期(mm)であり、Lは前記鋳造方向周期(mm)である。
[2]前記鋳型冷却板の外壁面には複数のスリット溝が鋳造方向に沿って設けられ、前記スリット溝のメニスカス部分に相当する領域に突起が設けられる、[1]に記載の連続鋳造用鋳型。
[3]前記突起は、前記鋳造方向周期以下の周期で設けられる、[2]に記載の連続鋳造用鋳型。
[4][1]から[3]の何れかに記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、鍍金手段及び溶射手段の少なくとも一方の手段で前記鍍金部を前記鋳型冷却板の内壁面に設ける、連続鋳造用鋳型の製造方法。
[1]連続鋳造において、鋳型内に注入された溶鋼を冷却し、凝固させる鋳型冷却板を有する連続鋳造用鋳型であって、メニスカスよりも20mm以上上方の位置から、前記メニスカスよりも下記(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの前記鋳型冷却板の内壁面には鍍金部が、前記鋳型冷却板の内壁面の幅方向及び鋳造方向に空間周期的に設けられ、前記鍍金部の平均厚みとなる仮想平面が、前記鍍金部の表面と交差して生じる仮想切断面の円相当径、幅方向周期及び鋳造方向周期は下記(2)~(4)式を満たす、連続鋳造用鋳型。
R=2×Vc/60×1000・・・(1)
1.0≦d≦10・・・(2)
0.2≦d/W≦1.0・・・(3)
0.2≦d/L≦1.0・・・(4)
上記(1)~(4)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)であり、dは前記円相当径(mm)であり、Wは前記幅方向周期(mm)であり、Lは前記鋳造方向周期(mm)である。
[2]前記鋳型冷却板の外壁面には複数のスリット溝が鋳造方向に沿って設けられ、前記スリット溝のメニスカス部分に相当する領域に突起が設けられる、[1]に記載の連続鋳造用鋳型。
[3]前記突起は、前記鋳造方向周期以下の周期で設けられる、[2]に記載の連続鋳造用鋳型。
[4][1]から[3]の何れかに記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、鍍金手段及び溶射手段の少なくとも一方の手段で前記鍍金部を前記鋳型冷却板の内壁面に設ける、連続鋳造用鋳型の製造方法。
本発明によれば、鋳型冷却板の内壁面の鍍金部に流れ込むモールドパウダーの厚みが異なるので、連続鋳造用鋳型の熱抵抗が規則的且つ周期的に増減する。これにより、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化されるとともに、発生する応力が分散されて、凝固シェルにかかる歪量が小さくなる。この結果、凝固シェルの表面割れが抑制され、連続鋳造されるスラブ鋳片の表面割れ個数を低減できる。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の一例を具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造用鋳型100を示す斜視模式図である。図2は、連続鋳造用鋳型100の一部を構成する鋳型長辺冷却板10であって、鋳型長辺冷却板10を鍍金部20が形成された内壁面側から視た側面模式図である。図3は、鋳型長辺冷却板10のA-A断面模式図である。図4は、図3のB部拡大図である。図5は、鋳型長辺冷却板10のC-C断面模式図である。
図1に示すように、スラブ鋳片を連続鋳造するための連続鋳造用鋳型100は、一対の鋳型長辺冷却板10と一対の鋳型短辺冷却板12とを組み合わせて構成される。鋳型長辺冷却板10及び鋳型短辺冷却板12は、連続鋳造用鋳型100が有する鋳型冷却板の例である。本実施形態においては、鋳型長辺冷却板10及び鋳型短辺冷却板12の材質は、100質量%の銅からなる純銅であってもよいし、銅を90質量%以上含有し、残部として、例えば、アルミニウム、クロム、ジルコニウムなどを含有する銅合金でもよい。
図2に示すように、鋳型長辺冷却板10において、鋼を連続鋳造する際に定まるメニスカス(溶鋼湯面)よりも所定長さU以上上方の位置から、メニスカスよりも所定長さR以上下方の位置までの、鋳型長辺冷却板10の内壁面の範囲には、鍍金部20が、幅方向及び鋳造方向に一定の周期で空間周期的に設けられている。
鍍金部20は、鍍金手段や溶射手段、レーザー加工や機械加工などによって作製され、鋳型長辺冷却板10の内壁面に、鋳型長辺冷却板10の幅方向及び鋳造方向に空間周期的に設けられる。この空間周期的な凹凸を形成する鍍金部20によって、当該凸凹に流れ込むモールドパウダーの厚みが異なり、これにより、メニスカス近傍の幅方向及び鋳造方向における鋳型長辺冷却板10の熱抵抗が規則的且つ周期的に増減する。この結果、メニスカス近傍つまり凝固初期の凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が規則的且つ周期的に増減し、δ鉄からγ鉄への変態による応力や熱応力によって生じる凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化されるとともに、発生する応力が分散されて、凝固シェルにかかる歪量が小さくなり、凝固シェルの表面割れが抑制される。鍍金部20は、Ni、Cu、Cr、Feのうちの1種からなる金属又は2種以上からなる合金によって形成される。鍍金部20の材質は、連続鋳造時において、鍍金部20が設けられる領域の熱伝達率が、鍍金部20が設けられていない領域の熱伝達率に対して75%以下、もしくは125%以上になるように定めることが好ましい。なお、図2~5では、鍍金部20の形状が円錐形である例を示したが、鍍金部20の形状は円錐形に限定されるものではない。
鋳型短辺冷却板12にも、鋳型長辺冷却板10と同様にその内壁面に鍍金部20が形成されるものとして、ここでは、鋳型短辺冷却板12についての説明は省略する。但し、スラブ鋳片は、その形状に起因して長辺面側の凝固シェルに応力集中が起こりやすくなる。このため、凝固シェルの表面割れは、長辺面側で発生しやすい。このため、連続鋳造用鋳型100の鋳型短辺冷却板12には、鍍金部20を設けなくてもよい。
鋳造中のメニスカスの上下方向の変動及び初期凝固への影響を勘案すると、鋳型長辺冷却板10の内壁面において、メニスカスから鍍金部20が形成されている範囲の上端は、20mm以上上方である必要がある。すなわち、図2における長さUは20mmである。また、鍍金部20が形成されている範囲の下端は、メニスカスよりも長さR以上下方である必要がある。ここで、長さRは下記(1)式によって算出される長さである。
R=2×Vc/60×1000・・・(1)
上記(1)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)である。
上記(1)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)である。
δ/γ変態による応力や熱応力によって生じる凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が溶鋼に生じている間は、鍍金部20が設けられることよって、鋳型短辺冷却板12の内壁面で、熱流束の周期的な変動が生じている必要がある。このため、溶鋼が凝固を開始し始めてから少なくとも2秒間、溶鋼が存在している内壁面の範囲に、鍍金部20が設けられている必要がある。したがって、図2に示す長さRは、2×Vc/60×1000mm以上である必要がある。長さRが2×Vc/60×1000mm未満になると、鍍金部20による熱流束の周期的な変動の効果が不十分となり、表面割れが発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時において、スラブ鋳片の表面割れの抑制効果が不十分になる。
まず、鍍金部20の円相当径dについて説明する。鍍金部20の円相当径dは、鍍金部20が鍍金部20の平均厚みとなる仮想平面が当該鍍金部20の表面と交差して生じる仮想切断面の円相当径で評価する。すなわち、図4に示した破線が鍍金部20の平均厚さの等厚面とすると、鍍金部20の円相当径dは、図4に示したdとなる。鍍金部20の円相当径dは、下記(2)式を満たす必要がある。
1.0≦d≦10・・・(2)
上記(2)式において、dは円相当径(mm)である。円相当径dは下記(5)式で算出する。
上記(2)式において、dは円相当径(mm)である。円相当径dは下記(5)式で算出する。
円相当径d=(4×S/π)1/2・・・(5)
上記(5)式において、Sは、鍍金部20が鍍金部20の平均厚みとなる仮想平面が当該鍍金部20の表面と交差して生じる仮想切断面の面積(mm2)である。
上記(5)式において、Sは、鍍金部20が鍍金部20の平均厚みとなる仮想平面が当該鍍金部20の表面と交差して生じる仮想切断面の面積(mm2)である。
鍍金部20の円相当径dが1.0mm未満になると、熱流束の変動が生じなくなり、スラブ鋳片の表面割れの抑制効果が不十分になる。一方、円相当径dが10mmより大きくなると、凝固シェルの凝固遅れ部が大きくなり、かえってスラブ鋳片の表面割れを増大させる。したがって、円相当径dは上記(2)式を満たす必要がある。
次に、円相当径dと、鋳造方向に同じ位置となり幅方向に互いに隣り合う幅方向周期Wとの比d/Wについて説明する。幅方向周期Wは、鍍金部20が鍍金部20の平均厚みとなる仮想平面が当該鍍金部20の表面と交差して生じる仮想切断面における幅方向の中心間距離である。
図6は、d/Wと表面割れ個数密度との関係を示すグラフである。図6において、横軸はd/W(-)であり、縦軸はスラブ鋳片の表面割れ個数密度(個/m2)である。なお、(-)は無次元であることを意味する。
図6に示すように、d/Wを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、表面割れ個数密度が著しく低下した。この結果から、d/Wを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、幅方向の周期的な熱流束分布周期が凝固不均一に対し適正となり、これにより、スラブ鋳片の表面割れ割れが抑制できたものと考えられる。一方、d/Wが1.0を超えると、隣接している鍍金部20が一部重なってしまい、幅方向の周期的な熱流束分布がうまく生成せず、凝固不均一抑制の効果が小さくなる。また、d/Wが0.2未満になると、幅方向の熱流束周期が大きくなりすぎ、緩冷却領域において凝固遅れが大きくなり、かえってスラブ鋳片の表面割れを増大させる。したがって、円相当径dと幅方向周期Wとの比d/Wは下記(3)式を満たす必要がある。
0.2≦d/W≦1.0・・・(3)
上記(3)式において、dは円相当径(mm)であり、Wは幅方向周期(mm)である。
上記(3)式において、dは円相当径(mm)であり、Wは幅方向周期(mm)である。
次に、鍍金部20の円相当径dと、幅方向に同じ位置となり鋳造方向に互いに隣り合う鍍金部20の鋳造方向周期Lとの比d/Lについて説明する。鋳造方向周期Lは、鍍金部20の平均厚みとなる仮想平面が当該鍍金部20の表面と交差して生じる仮想切断面における鋳造方向の中心間距離である。
図7は、d/Lと表面割れ個数密度との関係を示すグラフである。図7において、横軸はd/L(-)であり、縦軸はスラブ鋳片の表面割れ個数密度(個/m2)である。
図7に示すように、d/Lを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、表面割れ個数密度が著しく低下した。この結果から、d/Lを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、鋳造方向の周期的な熱流束分布周期が凝固不均一に対し適正となり、これにより、スラブ鋳片の表面割れ割れが抑制できたものと考えられる。一方、d/Lが1.0を超えると、鋳造方向に隣接している鍍金部20が一部重なってしまい、鋳造方向の周期的な熱流束分布がうまく生成せず、凝固不均一抑制の効果が小さくなる。また、d/Lが0.2未満になると、鋳造方向の熱流束周期が大きくなりすぎ、緩冷却領域において凝固遅れが大きくなり、かえってスラブ鋳片の表面割れを増大させる。したがって、鍍金部20の円相当径dと鍍金部20の鋳造方向周期Lとの比d/Lは下記(4)式を満たす必要がある。
0.2≦d/L≦1.0・・・(4)
上記(4)式において、dは円相当径(mm)であり、Lは鋳造方向周期(mm)である。
上記(4)式において、dは円相当径(mm)であり、Lは鋳造方向周期(mm)である。
鍍金部20は、連続鋳造用鋳型100の鋳型長辺冷却板10と鋳型短辺冷却板12の双方に設けることが好ましい。しかしながら、鋳片短辺長さに対して鋳片長辺長さの比が大きいスラブ鋳片を鋳造する場合には、鍍金部20を鋳型長辺冷却板10のみに設置しても、十分に凝固シェルの表面割れを抑制でき、連続鋳造されるスラブ鋳片の表面割れ個数を低減できる。また、鍍金部20における頂点部分は、円弧などの滑らかな曲線であることが好ましい。鍍金部20の頂点部分の形状が鋭いと、その部分でのモールドパウダーや凝固シェルが拘束され、鍍金部20の先端の欠けにつながる恐れがある。
次に、スラブ鋳片の生産性について説明する。スラブ鋳片の生産性を向上させるには、鋳片引き抜き速度を増加させる必要がある。しかしながら、凝固シェルが薄い状態で鋳型から引き抜かれると、凝固シェルの強度が不足しブレークアウトが発生する懸念が高まる。このため、鋳片引き抜き速度を増加させるには、鋳型長辺冷却板10の冷却強化が必要になる。冷却強化のためには、メニスカス部分に相当する鋳型長辺冷却板10の外壁面に鋳造方向に沿って設けられる複数のスリット溝22に突起24を設置することが好ましい。複数のスリット溝22に突起24を設置することでスリット溝22の伝熱面積が広がるので、鋳型長辺冷却板10での冷却を強化できる。なお、メニスカス部分に相当するとは、メニスカス位置から、鋳型下方に向かってδ-γの包晶反応(δ+L→δ+γ)が生じる温度(1494℃)に対応した位置までを意味する。また、突起24の形状と大きさは、スリット溝22の形状を特定するために必要な解像度(ピクセル/m)と同等の解像度で突起24を描いた際、当該突起24によって冷却水の主流に縮流が生じるような形状、大きさであればよい。具体的に、突起24の幅方向の大きさは、スリット溝22の幅の1/3以上、スリット溝22の幅以下の大きさにすることが好ましい。また、突起24の高さは、スリット溝22の底面から1mm以上、スリット溝22の溝深さの1/2以下の高さとすることが好ましい。
さらに、図5に示した突起24の設置周期Fが鍍金部20の鋳造方向周期L以下になるように突起24をスリット溝22に設け、当該スリット溝22を流れる冷却水を高臨界レイノルズ数以上にし、冷却水を乱流化させることがより好ましい。ここで、高臨界レイノルズ数とは、水流が層流から乱流に遷移するときのレイノルズ数をいう。これにより、熱伝達率が高められ、鋳型長辺冷却板10での冷却をさらに強化できる。このようにして、鋳型長辺冷却板10での冷却を強化できれば、ブレークアウトを発生させることなく鋳片引き抜き速度を増加させることができ、スラブ鋳片の生産性向上が実現できる。
中炭素鋼(C:0.08~0.17質量%、Si:0.10~0.30質量%、Mn:0.50~1.20質量%、P:0.010~0.030質量%、S:0.005~0.015質量%、Al:0.020~0.040質量%)を、鋳型長辺冷却板の内壁面に鍍金部を設けた連続鋳造用鋳型を用いて、スラブ鋳片を連続鋳造した実施例を説明する。スラブ鋳片を連続鋳造する際に、鋳型内壁面に形成した鍍金部の形状や周期、鋳片引き抜き速度Vcなどを変更した各条件でスラブ鋳片を連続鋳造し、鋳造後のスラブ鋳片の表面割れを調査した。
鋳型長辺冷却板の上端から下端までの長さは900mmであり、鋳型長辺冷却板の上端から80mm下方の位置から、上端から300mm下方の位置までの範囲の内壁面に、図2~5に示した鍍金部を設けた鋳型長辺冷却板を有する連続鋳造用鋳型を準備し、当該連続鋳造用鋳型を用いて鋼の連続鋳造を行った。
実施例では、モールドパウダーとして、塩基度(質量%CaO/質量%SiO2)が1.1であり、凝固温度が1210°Cであり、1300°Cでの粘性率が1.5Poiseのモールドパウダーを使用した。また、タンディッシュ内の溶鋼過熱度は25~35℃とした。鋳型内のメニスカス位置(湯面位置)は、定常鋳込み状態で鋳型上端から100mmとし、鍍金部の設置範囲がメニスカスよりも上方に20mmからメニスカスから下方に2×Vc/60×1000までの範囲を含むようにメニスカスの位置を制御した。
また、連続鋳造用鋳型の冷却能力を向上させるために、鋳型稼働面の施工は同一とし、鋳型外壁面にあるスリット溝に複数の突起を設け、スリット溝を流れる冷却水を高臨界レイノルズ数以上にして乱流化できる連続鋳造用鋳型も準備し、鋼の連続鋳造を行った。連続鋳造用鋳型の冷却能力の評価は、総抜熱量Qにより評価した。総抜熱量Qは下記(6)式を用いて算出した。
Q=冷却水の比熱×冷却水流量×(冷却水出側温度-冷却水入り側温度)・・・(6)
上記(6)式において、Qは総抜熱量(MW/m2)である。
上記(6)式において、Qは総抜熱量(MW/m2)である。
実施例の鋳造条件及び評価結果を下記表1に示す。
No.1~5は図4に示した鍍金部の表面厚さtを変更してスラブ鋳片を鋳造した鋳造例である。No.6、7は鋳片引き抜き速度Vcを増加させ、突起設置の効果を確認した鋳造例である。No.7では、突起の設置周期Fを鍍金部の鋳造方向周期L以下とし、スリット溝を流れる冷却水を乱流化させている。これにより、凝固シェルから鋳型冷却水への熱流束が増大し、No.6よりも総抜熱量Qを増大させることができた。
No.8~12は鍍金部の円相当径dを変更してスラブ鋳片を鋳造した鋳造例である。No.8では円相当径dが小さいために、熱流束の変動が小さくなり、凝固シェルの割れ抑制効果が発現しなかった。このため、No.8では、スラブ鋳片の表面割れが発生し、割れ個数密度が高くなった。No.11、12では円相当径dが大きく、鋳造方向周期も長いため、凝固遅れ部が発達してしまった。これにより、No.11、12では凝固シェルの割れが増大し、スラブ鋳片にも表面割れが発生し、割れ個数密度が高くなった。一方、No.9、10は、本発明の範囲内となる発明例であり、これら鋳造例では、表面割れ個数密度の低いスラブ鋳片が鋳造できた。
10 鋳型長辺冷却板
12 鋳型短辺冷却板
20 鍍金部
22 スリット溝
24 突起
100 連続鋳造用鋳型
12 鋳型短辺冷却板
20 鍍金部
22 スリット溝
24 突起
100 連続鋳造用鋳型
Claims (4)
- 連続鋳造において、鋳型内に注入された溶鋼を冷却し、凝固させる鋳型冷却板を有する連続鋳造用鋳型であって、
メニスカスよりも20mm以上上方の位置から、前記メニスカスよりも下記(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの前記鋳型冷却板の内壁面には鍍金部が、前記鋳型冷却板の内壁面の幅方向及び鋳造方向に空間周期的に設けられ、
前記鍍金部の平均厚みとなる仮想平面が、前記鍍金部の表面と交差して生じる仮想切断面の円相当径、幅方向周期及び鋳造方向周期は下記(2)~(4)式を満たす、連続鋳造用鋳型。
R=2×Vc/60×1000・・・(1)
1.0≦d≦10・・・(2)
0.2≦d/W≦1.0・・・(3)
0.2≦d/L≦1.0・・・(4)
上記(1)~(4)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)であり、dは前記円相当径(mm)であり、Wは前記幅方向周期(mm)であり、Lは前記鋳造方向周期(mm)である。 - 前記鋳型冷却板の外壁面には複数のスリット溝が鋳造方向に沿って設けられ、
前記スリット溝のメニスカス部分に相当する領域に突起が設けられる、請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。 - 前記突起は、前記鋳造方向周期以下の周期で設けられる、請求項2に記載の連続鋳造用鋳型。
- 請求項1から請求項3の何れか一項に記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、
鍍金手段及び溶射手段の少なくとも一方の手段で前記鍍金部を前記鋳型冷却板の内壁面に設ける、連続鋳造用鋳型の製造方法。
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