JP2024047887A - 連続鋳造用鋳型、連続鋳造用鋳型の製造方法及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

連続鋳造用鋳型、連続鋳造用鋳型の製造方法及び鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Tomoya Odagaki
陽一 伊藤
Yoichi Ito
孝平 古米
Kohei Furumai
則親 荒牧
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【課題】高生産性とスラブ鋳片の表面割れを抑制できる連続鋳造用鋳型及びこの連続鋳造用鋳型の製造方法を提供する。【解決手段】鋳型冷却板のメニスカスよりも上方の位置から、メニスカスよりも(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの内壁面には、鋳型冷却板の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下あるいは125%以上である金属によって形成される異種金属層が周期的に設けられ、異種金属層厚みt(mm)、異種金属層直径又は円相当径d(mm)、異種金属層幅方向周期W(mm)及び異種金属層鋳造方向周期L(mm)が(2)~(5)式を満たし、鋳型冷却板に設けられる冷却用の孔又は溝には突起が設けられる連続鋳造用鋳型。R=2×Vc×1000/60(1)[Rは長さ(mm)、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)]、0.5≦t≦d(2)、1.0≦d≦10(3)、0.2≦d/W≦1.0(4)、0.2≦d/L≦1.0(5)。【選択図】図2

Description

本発明は、高熱流束による鋼の連続鋳造鋳片に生じる表面割れを抑制できる連続鋳造用鋳型、この連続鋳造用鋳型の製造方法及び鋼の連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造においては、鋳型内に注入された溶鋼は水冷式鋳型によって冷却され、鋳型との接触面で溶鋼が凝固して凝固層(以下、「凝固シェル」と記載する。)が生成される。凝固シェルが、鋳型下流側に設置した水スプレーや気水スプレーによって冷却されながら、内部の未凝固層とともに鋳型下方に連続的に引き抜かれ、水スプレーや気水スプレーによる冷却によって中心部まで凝固して鋳片が製造されている。
鋳型内における冷却が不足すると、凝固シェルの厚みが薄くなり、鋳型下流側でロールでのサポートに切り替わった際に、鋳片内部の溶鋼から生じる溶鋼静圧に耐えられず、凝固シェルが破断し溶鋼が流出するブレークアウトが生じる。一方、鋳型内を強冷却にすると、冷却の不均一が生じやすくなる。鋳型内における冷却が不均一になると、凝固シェルの厚みが鋳造方向及び鋳片幅方向で不均一となる。凝固シェルには、凝固シェルの収縮や変形に起因する応力が作用し、凝固初期においては、この応力が凝固シェルの薄肉部に集中し、この応力によって凝固シェルの表面に割れが発生する。この割れは、その後の熱応力や連続鋳造機のロールによる曲げ応力及び矯正応力などの外力により拡大し、大きな表面割れとなる。凝固シェルの厚みの不均一度が大きい場合には、鋳型内での縦割れとなり、この縦割れから溶鋼が流出するブレークアウトが発生する場合もある。鋳片に存在する割れは、次工程の圧延工程で表面欠陥となることから、鋳片の段階において、鋳片の表面を手入れして表面割れを除去することが必要となる。
鋳型内の不均一凝固は、特に、炭素含有量が0.08~0.17質量%の範囲内の、包晶反応によるγ鉄(オーステナイト)への変態時の体積収縮による変態応力に起因する歪みによって凝固シェルが変形し、この変形により鋳型内壁面から離れた部位の凝固シェルの凝固厚みが薄くなり、この部分に上記応力が集中することによって表面割れが発生すると考えられる。特に、鋳片の引き抜き速度を増加させると、凝固シェルから鋳型冷却水への平均熱流束が増加し、熱流束の分布が不規則で且つ不均一になることから、鋳片表面割れが増加する傾向になる。具体的には、スラブ連続鋳造機においては、鋳型の総抜熱量が2.0MW/m以上になると表面割れが発生しやすくなる。
上記の包晶反応を伴う鋼種(以下、「中炭素鋼」と記載する。)の表面割れを防止するために、特許文献1には、結晶化しやすい組成のモールドパウダーを使用し、モールドパウダー層の熱抵抗を増大させて凝固シェルを緩冷却することが開示されている。しかしながら、モールドパウダーによる緩冷却効果のみでは、十分な不均一凝固の改善は得られず、変態量の大きい鋼種では表面割れを抑制できない。
そこで、連続鋳造用鋳型自体を緩冷却化する手法が多数提案されている。特許文献2、3には、表面割れを防止するために、鋳型内壁面に溝や丸孔を設け、エアギャップを形成させることによって緩冷却を図る方法が開示されている。
特開2005-297001号公報 特開平6-297103号公報 特開平10-296399号公報
しかしながら、特許文献2、3に開示された方法は、緩冷却による凝固シェル成長の抑制を目的としており、これらの方法では高生産性を両立することができない。本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的は、連続鋳造用鋳型の冷却用溝及び孔内部の冷却水を乱流化させることにより溶鋼から鋳型冷却水への熱流束を増大させ、さらに、鋳型内壁面に銅との熱伝導率に差がある丸溝を形成することで、凝固シェル厚みの増大と凝固シェル厚みの均一化を両立し、高生産性とスラブ鋳片の表面割れを抑制できる連続鋳造用鋳型、当該連続鋳造用鋳型の製造方法及び当該連続鋳造鋳型を用いた鋼の連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための手段は、以下の通りである。
[1]連続鋳造において、鋳型内に注入された溶鋼を冷却し、凝固させる鋳型冷却板を有する連続鋳造用鋳型であって、前記鋳型冷却板のメニスカスよりも上方の位置から、前記メニスカスよりも下記(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの、内壁面の範囲には、前記鋳型冷却板の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下あるいは125%以上である金属によって形成される異種金属層が、前記内壁面に周期的に設けられ、前記異種金属層の厚み、前記異種金属層の直径又は円相当径、前記異種金属層の幅方向周期及び前記異種金属層の鋳造方向周期が下記(2)~(5)式を満たし、前記鋳型冷却板に設けられる冷却用の孔又は溝には突起が設けられる、連続鋳造用鋳型。
R=2×Vc×1000/60・・・(1)
0.5≦t≦d・・・(2)
1.0≦d≦10・・・(3)
0.2≦d/W≦1.0・・・(4)
0.2≦d/L≦1.0・・・(5)
上記(1)~(5)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)であり、tは前記異種金属層の厚み(mm)であり、dは前記異種金属層の直径(mm)又は円相当径(mm)であり、Wは前記異種金属層の幅方向周期(mm)であり、Lは前記異種金属層の鋳造方向周期(mm)である。
[2] 前記突起は、前記鋳造方向周期以下の周期で設けられる、[1]に記載の連続鋳造用鋳型。
[3] [1]又は[2]に記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、鍍金手段及び溶射手段の少なくとも一方の手段で前記異種金属層を設ける、連続鋳造用鋳型の製造方法。
[4] 鋼の連続鋳造方法であって、下記(6)式で算出されるQが2.0MW/mを超える場合に、[1]又は[2]に記載の連続鋳造用鋳型を用いて連続鋳造する、鋼の連続鋳造方法。
Q=冷却水の比熱×冷却水の流量×(冷却水出側温度-冷却水入り側温度)・・・(6)
上記(6)式において、Qは総抜熱量(MW/m)である。
本発明によれば、鋳型の冷却用溝、又は孔に突起を設けることで、冷却水を乱流化し、銅板内壁面(溶鋼側)から冷却水への熱流束が増大する。これにより、高生産性を維持しつつの鋳型出側での凝固シェル厚み不足によるブレークアウトを防止できる。また、鋳型冷却板に異種金属層を設けることで、高熱流束時に生じる凝固シェル表面における割れの発生を抑制でき、高生産性とスラブ鋳片の表面割れ抑制の両立が実現できる。
図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造用鋳型を示す斜視模式図である。 図2は、連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺冷却板であって、鋳型長辺冷却板を異種金属層が形成された内壁面側から視た側面模式図である。 図3は、鋳型長辺冷却板のA-A断面模式図である。 図4は、鋳型長辺冷却板のB-B断面模式図である。 図5は、d/Wと表面割れ個数密度との関係を示すグラフである。 図6は、d/Lと表面割れ個数密度との関係を示すグラフである。
以下、添付図面を参照して、本発明の実施形態の一例を具体的に説明する。図1は、本発明の一実施形態に係る連続鋳造用鋳型100を示す斜視模式図である。図2は、連続鋳造用鋳型100の一部を構成する鋳型長辺冷却板10であって、鋳型長辺冷却板10を異種金属層が形成された内壁面側から視た側面模式図である。図3は、鋳型長辺冷却板10のA-A断面模式図である。図4は、鋳型長辺冷却板10のB-B断面模式図である。
図1に示すように、スラブ鋳片を連続鋳造するための連続鋳造用鋳型100は、一対の鋳型長辺冷却板10と一対の鋳型短辺冷却板12とを組み合わせて構成される。鋳型長辺冷却板10及び鋳型短辺冷却板12は、連続鋳造用鋳型100が有する鋳型冷却板の例である。本実施形態においては、鋳型長辺冷却板10及び鋳型短辺冷却板12は、100質量%の銅からなる純銅であってもよいし、銅を90質量%以上含有し、残部として、例えば、アルミニウム、クロム、ジルコニウムなどを含有する銅合金でもよい。
図2に示すように、鋳型長辺冷却板10において、鋼を連続鋳造する際に定まるメニスカス(溶鋼湯面)よりも上方の任意の位置から、メニスカスよりも所定長さ下方の位置までの、鋳型長辺冷却板10の内壁面の範囲には、凹溝が幅方向及び鋳造方向に一定の周期で周期的に設けられている。
凹溝には、鋳型長辺冷却板10の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下あるいは125%以上である金属が充填され、これにより、鋳型長辺冷却板10の内壁面の幅方向及び鋳造方向に周期的に異種金属層20が形成される。ここでいう周期的とは、空間に配置した複数の異種金属層20の配置によって決まる空間的周期を意味する。充填金属は、鍍金手段や溶射手段などによって凹溝に充填される。鍍金手段や溶射手段などによって異種金属層20を形成することで、凹溝との間に空隙が生じることなく、異種金属層20を形成できる。幅方向及び鋳造方向に周期的に異種金属層20を設けることで、メニスカス近傍の幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が規則的且つ周期的に増減する。よって、メニスカス近傍、すなわち、凝固初期の凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が規則的且つ周期的に増減し、δ鉄からγ鉄への変態による応力や熱応力によって生じる凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化されるとともに、発生する応力が分散されて歪量が小さくなり、凝固シェル表面における表面割れが抑制される。なお、図2~4には、丸溝形の凹溝に異種金属層20が設けられる例を示したが、凹溝は丸溝形に限定されるものではない。
鋳型短辺冷却板12にも、鋳型長辺冷却板10と同様にその内壁面に異種金属層20が形成されるものとして、ここでは、鋳型短辺冷却板12についての説明は省略する。但し、スラブ鋳片は、その形状に起因して長辺面側の凝固シェルに応力集中が起こりやすくなる。このため、凝固シェルの表面割れは、長辺面側で発生しやすい。このため、連続鋳造用鋳型100の鋳型短辺冷却板12には、異種金属層20を設けなくてもよい。
鋳造中のメニスカスの上下方向の変動及び初期凝固への影響を勘案すると、鋳型長辺冷却板10の内壁面において、メニスカスから異種金属層20が形成されている範囲の上端は、メニスカスよりも上方である必要がある。また、メニスカスから異種金属層20が形成されている範囲の下端は、メニスカスよりも長さR以上下方である必要がある。ここで、長さRは下記(1)式によって算出される長さである。
R=2×Vc×1000/60・・・(1)
上記(1)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)である。
δ/γ変態による応力や熱応力によって生じる凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が溶鋼に生じている間は、異種金属層20が設けられることよって、鋳型短辺冷却板12の内壁面で、熱流束の周期的な変動が生じている必要がある。このため、溶鋼が凝固を開始し始めてから少なくとも2秒間、溶鋼が存在している内壁面の範囲に、異種金属層20が設けられている必要がある。したがって、図2に示す長さRは、2×Vc/60×1000mm以上である必要がある。長さRが2×Vc/60×1000mm未満になると、異種金属層20による熱流束の周期的な変動の効果が不十分となり、表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時において、スラブ鋳片の表面割れの抑制効果が不十分になる。
異種金属層20に充填される金属の熱伝導率は、鋳型長辺冷却板10の熱伝導率に対する熱伝導率が80%以下あるいは125%以上である必要がある。異種金属層20の熱伝導率が鋳型長辺冷却板10の熱伝導率に対して80%より大きい、もしくは、125%未満でると、低熱伝導金属充填部による熱流束の周期的な変動の効果が不十分であるために、スラブ鋳片の表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時において、スラブ鋳片の表面割れの抑制効果が不十分になる。特に、異種金属層20を形成する金属としては、鍍金や溶射のしやすいNi(熱伝導率:約80W/(m・K))、Ni合金もしくは純銅を用いることが好ましい。
次に、異種金属層20の充填厚みtについて説明する。図3に示す異種金属層20の充填厚みtは、下記(2)式を満たす必要がある。
0.5≦t≦d・・・(2)
上記(2)式において、tは異種金属層20の充填厚みt(mm)であり、dは異種金属層20の直径(mm)である。
異種金属層20の充填厚みtが小さすぎると、異種金属層20における熱流束の低下が不十分となる可能性がある。一方、異種金属層20の充填厚みtが厚すぎると、熱流束の低下は十分であるにもかかわらず、凹溝への金属の充填が難しくなること、及び熱流束の低下が大きいためシェル厚の成長が不足しブレークアウト等のトラブルが発生したり、充填金属の亀裂や剥離が生じやすくなって連続鋳造用鋳型100の寿命低下につながる。よって異種金属層20の充填厚みtは、上記(2)式を満たす必要がある。
次に、異種金属層20の直径dについて説明する。図2に示す異種金属層20の直径dは、下記(3)式を満たす必要がある。
1.0≦d≦10・・・(3)
上記(3)式において、dは直径(mm)である。なお、異種金属層20の断面が円形でない場合、直径dに代えて、下記(7)式で算出される円相当径dを用いてもよい。
円相当径d=(4×S/π)1/2・・・(7)
上記(7)式において、Sは異種金属層20の面積(mm)である。
異種金属層20の直径dが1.0mm未満になると、熱流束の変動が生じなくなり、スラブ鋳片の表面割れの抑制効果が不十分になる。一方、直径dが10mmより大きくなると、凝固シェルの凝固遅れ部が大きくなり、かえってスラブ鋳片の表面割れを増大させる。したがって、異種金属層20の直径dは上記(3)式を満たす必要がある。
次に、異種金属層20の直径dと、鋳造方向に同じ位置となり幅方向に互いに隣り合う異種金属層20の幅方向周期Wとの比d/Wについて説明する。幅方向周期Wは、異種金属層20の幅方向の中心間距離である。
図5は、d/Wと表面割れ個数密度との関係を示すグラフである。図5において、横軸はd/W(-)であり、縦軸はスラブ鋳片の表面割れ個数密度(個/m)である。なお、(-)は無次元であることを意味する。
図5に示すように、d/Wを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、表面割れ個数密度が著しく低下した。この結果から、d/Wを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、幅方向の周期的な熱流束分布周期が凝固不均一に対し適正となり、これにより、スラブ鋳片の表面割れ割れが抑制できたものと考えられる。一方、d/Wが1.0を超えると、隣接している異種金属層20が一部重なってしまい、幅方向の周期的な熱流束分布がうまく生成せず、凝固不均一抑制の効果が小さくなる。また、d/Wが0.2未満になると、幅方向の熱流束周期が大きくなりすぎ、緩冷却領域において凝固遅れが大きくなり、かえってスラブ鋳片の表面割れを増大させる。したがって、異種金属層20の直径dと異種金属層20の幅方向周期Wとの比d/Wは下記(4)式を満たす必要がある。
0.2≦d/W≦1.0・・・(4)
上記(4)式において、dは異種金属層20の直径(mm)であり、Wは異種金属層20の幅方向周期(mm)である。
次に、異種金属層20の直径dと、幅方向に同じ位置となり鋳造方向に互いに隣り合う異種金属層20の鋳造方向周期Lとの比d/Lについて説明する。鋳造方向周期Wは、異種金属層20の鋳造方向の中心間距離である。
図6は、d/Lと表面割れ個数密度との関係を示すグラフである。図6において、横軸はd/L(-)であり、縦軸はスラブ鋳片の表面割れ個数密度(個/m)である。
図6に示すように、d/Lを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、表面割れ個数密度が著しく低下した。この結果から、d/Lを0.2以上1.0以下の範囲内とすることで、鋳造方向の周期的な熱流束分布周期が凝固不均一に対し適正となり、これにより、スラブ鋳片の表面割れ割れが抑制できたものと考えられる。一方、d/Lが1.0を超えると、鋳造方向に隣接している異種金属層20が一部重なってしまい、鋳造方向の周期的な熱流束分布がうまく生成せず、凝固不均一抑制の効果が小さくなる。また、d/Lが0.2未満になると、鋳造方向の熱流束周期が大きくなりすぎ、緩冷却領域において凝固遅れが大きくなり、かえってスラブ鋳片の表面割れを増大させる。したがって、異種金属層20の直径dと異種金属層20の鋳造方向周期Lとの比d/Lは下記(5)式を満たす必要がある。
0.2≦d/L≦1.0・・・(5)
上記(5)式において、dは異種金属層20の直径(mm)であり、Lは異種金属層20の鋳造方向周期(mm)である。
異種金属層20は、連続鋳造用鋳型100の鋳型長辺冷却板10と鋳型短辺冷却板12の双方に設けることが好ましい。しかしながら、鋳片短辺長さに対して鋳片長辺長さの比が大きいスラブ鋳片を鋳造する場合には、異種金属層20を鋳型長辺冷却板10のみに設置しても、十分に凝固シェルの表面割れを抑制でき、連続鋳造されるスラブ鋳片の表面割れ個数を低減できる。また、異種金属層20における直線状の辺と辺とを結ぶ部分(頂点部分)は、円弧などの滑らかな曲線であることが好ましい。異種金属層20の頂点部分の形状が直角であると、その部分での金属と銅との熱歪差による応力がその部分に集中し、鋳型に亀裂が入りやすくなるので好ましくない。
また、異種金属層20を形成させた鋳型長辺冷却板10の内壁面には、鍍金層26を設けることが好ましい。鍍金層26によって、凝固シェルによる磨耗や熱履歴による鋳型表面割れを抑制できる。鍍金層26は一般的に用いられるNi系合金(Ni-Co合金など)を形成する。鍍金層26の厚みが2.0mmを超えると、異種金属層20による熱流束の周期的な変動の効果が不十分になることから、鍍金層26の厚みは2.0mm以下であることが好ましい。
次に、スラブ鋳片の生産性について説明する。スラブ鋳片の生産性を向上させるには、鋳片引き抜き速度を増加させる必要がある。しかしながら、凝固シェルが薄い状態で鋳型から引き抜かれると、凝固シェルの強度が不足しブレークアウトが発生する懸念が高まる。このため、鋳片引き抜き速度を増加させるには、鋳型長辺冷却板10の冷却を強化し、連続鋳造用鋳型100からの総抜熱量Qを2.0MW/mより大きくする必要がある。ここで、総抜熱量Qは下記(6)式で算出できる。
Q=冷却水の比熱×冷却水の流量×(冷却水出側温度-冷却水入り側温度)・・・(6)
上記(6)式において、Qは総抜熱量(MW/m)である。
上記(6)式で算出される総抜熱量Qが2.0MW/mを超えるように鋳型長辺冷却板10の冷却を強化することで、ブレークアウトが発生する懸念を抑制しつつスラブ鋳片の生産性を向上できる。このため、上記(6)式で算出される総抜熱量Qが2.0MW/mを超える場合に、連続鋳造用鋳型100を用いて鋼の連続鋳造を実施することが好ましい。
鋳型長辺冷却板10の冷却を強化するには、鋳型長辺冷却板10に設けられる冷却用の孔22に突起24を設置することが好ましい。複数の孔22に突起24を設置することで、孔22の伝熱面積が広がるので、鋳型長辺冷却板10での冷却を強化できる。突起24の形状と大きさは、孔22の形状を特定するために必要な解像度(ピクセル/m)と同等の解像度で突起24を描いた際、当該突起24によって冷却水の主流に縮流が生じるような形状、大きさであればよい。
さらに、図4に示した突起24の設置周期Fが異種金属層20の鋳造方向周期L以下になるように突起24を孔22に設け、当該孔22を流れる冷却水を高臨界レイノルズ数以上にし、冷却水を乱流化させることがより好ましい。ここで、高臨界レイノルズ数とは、水流が層流から乱流に遷移するときのレイノルズ数をいう。これにより、熱伝達率が高められ、鋳型長辺冷却板10での冷却をさらに強化できる。このようにして、鋳型長辺冷却板10での冷却を強化できれば、ブレークアウトを発生させることなく鋳片引き抜き速度を増加させることができ、スラブ鋳片の生産性向上が実現できる。突起24は、機械加工等により作製、予め作製した突起24が設けられた銅管を溶接等で冷却用の孔22に固定してもよい。なお、鋳型長辺冷却板10に設けられる冷却用の孔22に代えて、鋳型長辺冷却板10の外面側に冷却用の溝を設けてもよい。鋳型長辺冷却板10に冷却用の溝が設けられる場合には、当該溝に突起24が設けられる。溝に突起24が設けられる場合、突起24の幅方向の大きさは、溝の幅の1/3以上であって溝の幅以下の大きさにすることが好ましい。また、突起24の高さは、溝の底面から1mm以上であって溝の深さの1/2以下の高さとすることが好ましい。
中炭素鋼(C:0.08~0.17質量%、Si:0.10~0.30質量%、Mn:0.50~1.20質量%、P:0.010~0.030質量%、S:0.005~0.015質量%、Al:0.020~0.040質量%)を、鋳型長辺冷却板の内壁面に異種金属層を設けた連続鋳造用鋳型を用いて、スラブ鋳片を連続鋳造した実施例を説明する。スラブ鋳片を連続鋳造する際に、鋳型内壁面に形成した異種金属層の形状や周期、鋳片引き抜き速度などを変更した各条件でスラブ鋳片を連続鋳造し、鋳造後のスラブ鋳片の表面割れを評価した。
鋳型長辺冷却板の上端から下端までの長さは900mmであり、鋳型長辺冷却板の上端から80mm下方の位置から、上端から300mm下方の位置までの範囲の内壁面に、図2~4に示した異種金属層を設けた鋳型長辺冷却板を有する連続鋳造用鋳型を準備し、当該連続鋳造用鋳型を用いて鋼の連続鋳造を行った。
実施例では、モールドパウダーとして、塩基度(質量%CaO/質量%SiO)が1.1であり、凝固温度が1210°Cであり、1300°Cでの粘性率が1.5Poiseのモールドパウダーを使用した。また、タンディッシュ内の溶鋼過熱度は25~35℃とした。鋳型内のメニスカス位置(湯面位置)は、定常鋳込み状態で鋳型上端から100mmとし、メニスカスが異種金属層の設置範囲に含まれるようにメニスカスの位置を制御した。
また、連続鋳造用鋳型の冷却能力を向上させるために、鋳型稼働面の施工は同一とし、鋳型の孔に複数の突起を設け、当該孔を流れる冷却水を高臨界レイノルズ数以上にして乱流化できる連続鋳造用鋳型も準備し、鋼の連続鋳造を行った。連続鋳造用鋳型の冷却能力の評価は、総抜熱量Qにより評価した。連続鋳造用鋳型の総抜熱量Qは上記(6)式を用いて算出した。
実施例の鋳造条件及び評価結果を下記表1に示す。
Figure 2024047887000002
No.1~6は異種金属層の厚さtを変更してスラブ鋳片を鋳造した鋳造例である。No.1は異種金属層の厚さtが薄く、熱流束の均一化の効果が出なかったため、スラブ鋳片に表面割れが発生した。No.6は異種金属層の厚さtが厚く、凝固シェルが過剰に薄くなってしまったため、スラブ鋳片に表面割れが発生した。No.2~5は本発明の範囲内となる発明例であり、これら鋳造例では、表面割れ個数密度の低いスラブ鋳片が鋳造できた。
No.7~11は異種金属層の直径dを変更してスラブ鋳片を鋳造した鋳造例である。No.7は異種金属層の直径dが小さいために、熱流束の変動が生じなくなり、凝固シェルの割れ抑制効果が見られず、スラブ鋳片の表面割れが発生した。No.10、11では直径dが大きく、鋳造方向周期も長いため、凝固遅れ部が発達してしまい、凝固シェルの割れが増大しスラブ鋳片にも表面割れが発生した。No.8、9は、本発明の範囲内となる発明例であり、これら鋳造例では、表面割れ個数密度の低いスラブ鋳片が鋳造できた。
No.12~16は鋳片引き抜き速度Vcを増加させ、突起設置の効果を確認した鋳造例である。No.12は、突起を設置しておらず、抜熱量が足りずに連続鋳造中にブレークアウト(BO)が発生した。No.16は、突起の設置周期Fが異種金属層の鋳造方向周期Lよりも長く、これにより冷却ムラが生じてしまいスラブ鋳片に表面割れが発生した。No.13~15は、本発明の範囲内となる発明例であり、これら鋳造例では、生産性を高めつつ、表面割れ個数密度の低いスラブ鋳片が鋳造できた。
10 鋳型長辺冷却板
12 鋳型短辺冷却板
20 異種金属層
22 孔
24 突起
100 連続鋳造用鋳型

Claims (4)

  1. 連続鋳造において、鋳型内に注入された溶鋼を冷却し、凝固させる鋳型冷却板を有する連続鋳造用鋳型であって、
    前記鋳型冷却板のメニスカスよりも上方の位置から、前記メニスカスよりも下記(1)式で算出される長さ以上下方の位置までの、内壁面の範囲には、前記鋳型冷却板の熱伝導率に対して熱伝導率が80%以下あるいは125%以上である金属によって形成される異種金属層が、前記内壁面に周期的に設けられ、
    前記異種金属層の厚み、前記異種金属層の直径又は円相当径、前記異種金属層の幅方向周期及び前記異種金属層の鋳造方向周期が下記(2)~(5)式を満たし、
    前記鋳型冷却板に設けられる冷却用の孔又は溝には突起が設けられる、連続鋳造用鋳型。
    R=2×Vc×1000/60・・・(1)
    0.5≦t≦d・・・(2)
    1.0≦d≦10・・・(3)
    0.2≦d/W≦1.0・・・(4)
    0.2≦d/L≦1.0・・・(5)
    上記(1)~(5)式において、Rは長さ(mm)であり、Vcは鋳片引き抜き速度(m/min)であり、tは前記異種金属層の厚み(mm)であり、dは前記異種金属層の直径(mm)又は円相当径(mm)であり、Wは前記異種金属層の幅方向周期(mm)であり、Lは前記異種金属層の鋳造方向周期(mm)である。
  2. 前記突起は、前記鋳造方向周期以下の周期で設けられる、請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。
  3. 請求項1又は請求項2に記載の連続鋳造用鋳型の製造方法であって、
    鍍金手段及び溶射手段の少なくとも一方の手段で前記異種金属層を設ける、連続鋳造用鋳型の製造方法。
  4. 鋼の連続鋳造方法であって、
    下記(6)式で算出されるQが2.0MW/mを超える場合に、請求項1又は請求項2に記載の連続鋳造用鋳型を用いて連続鋳造する、鋼の連続鋳造方法。
    Q=冷却水の比熱×冷却水の流量×(冷却水出側温度-冷却水入り側温度)・・・(6)
    上記(6)式において、Qは総抜熱量(MW/m)である。
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