JP6428721B2 - 連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 - Google Patents

連続鋳造用鋳型及び鋼の連続鋳造方法 Download PDF

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Description

本発明は、鋳型内での凝固シェルの不均一冷却に起因する鋳片表面割れを抑制して溶鋼を連続鋳造することのできる連続鋳造用鋳型、及び、この鋳型を使用した鋼の連続鋳造方法に関する。
鋼の連続鋳造では、鋳型内に注入された溶鋼は水冷式鋳型によって冷却され、鋳型との接触面で溶鋼が凝固して凝固層(以後、「凝固シェル」という)が生成される。この凝固シェルを外殻とし、内部を未凝固層とする鋳片は、鋳型下流側に設置された水スプレーや気水スプレーによって冷却されながら鋳型下方に連続的に引き抜かれる。鋳片は、水スプレーや気水スプレーによる冷却によって中心部まで凝固し、その後、ガス切断機などによって切断されて、所定長さの鋳片が製造されている。
鋳型内における冷却が不均一になると、凝固シェルの厚みが鋳片の鋳造方向及び鋳型幅方向で不均一となる。凝固シェルには、凝固シェルの収縮や変形に起因する応力が作用し、凝固初期においては、この応力が凝固シェルの薄肉部に集中し、この応力によって凝固シェルの表面に割れが発生する。この割れは、その後の熱応力や連続鋳造機のロールによる曲げ応力及び矯正応力などの外力により拡大し、大きな表面割れとなる。凝固シェル厚みの不均一度が大きい場合には、鋳型内での縦割れとなり、この縦割れから溶鋼が流出するブレークアウトが発生する場合もある。鋳片に存在する割れは、次工程の圧延工程で表面欠陥となることから、鋳造後の鋳片の段階において、鋳片の表面を手入れして表面割れを除去することが必要となる。
鋳型内の不均一凝固は、特に、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の鋼(中炭素鋼という)で発生しやすい。炭素含有量が0.08〜0.17質量%の鋼では、凝固時に包晶反応が起こる。鋳型内の不均一凝固は、この包晶反応によるδ鉄(フェライト)からγ鉄(オーステナイト)への変態時の体積収縮による変態応力に起因すると考えられている。つまり、この変態応力に起因する歪みによって凝固シェルが変形し、この変形によって凝固シェルが鋳型内壁面から離れる。鋳型内壁面から離れた部位は鋳型による冷却が低下し、この鋳型内壁面から離れた部位(この鋳型内壁面から離れた部位を「デプレッション」という)の凝固シェル厚みが薄くなる。凝固シェル厚みが薄くなることで、この部分に上記応力が集中し、表面割れが発生すると考えられている。
特に、鋳片引き抜き速度を増加した場合には、凝固シェルから鋳型冷却水への平均熱流束が増加する(凝固シェルが急速冷却される)のみならず、熱流束の分布が不規則で且つ不均一になることから、鋳片表面割れの発生が増加傾向となる。具体的には、鋳片厚みが200mm以上のスラブ連続鋳造機においては、鋳片引き抜き速度が1.5m/min以上になると表面割れが発生しやすくなる。
そこで、従来、表面割れが発生しやすい鋼種の表面割れ(特に縦割れ)を抑制するために、種々の手段が提案されている。
例えば、特許文献1には、結晶化しやすい組成のモールドパウダーを使用し、モールドパウダー層の熱抵抗を増大させて凝固シェルを緩冷却することが提案されている。これは、緩冷却によって凝固シェルに作用する応力を低下させて表面割れを抑制するという技術である。しかしながら、モールドパウダーによる緩冷却効果のみでは、不均一凝固を十分に改善するまでには至っておらず、特に凝固に伴う僅かな温度低下で変態が生じる中炭素鋼では、表面割れの発生を防止することはできないのが実情である。
特許文献2には、鋳型内壁面に縦溝と横溝とを設け、これら縦溝及び横溝の内部にモールドパウダーを流入させ、これにより、鋳型の冷却を緩冷却化すると同時に鋳型幅方向で均一化し、鋳片の縦割れを防止する技術が提案されている。しかしながら、鋳片との接触によって鋳型内壁面は摩耗し、鋳型内壁面に設けた溝が浅くなると、モールドパウダーの流れ込み量が少なくなって緩冷却効果が低減するという問題、つまり、緩冷却効果が持続しないという問題がある。また、鋳造開始時の空の鋳型空間内への溶鋼注入時に、注入した溶鋼が鋳型内壁面に設けた溝の内部に侵入して凝固し、鋳型銅板と凝固シェルとが固着して、凝固シェルの引き抜きができなくなり、拘束性ブレークアウトが発生する虞があるという問題もある。
特許文献3には、鋳型内壁面の幅方向中央部に、溝幅及び溝深さをモールドパウダーの粘度に応じて設定した、鋳造方向に平行な縦溝または格子溝を設け、設けた溝をモールドパウダーで充填することなく、溝の内部に空隙部を形成させ、この空隙部に空気を流入させ、これにより、鋳型の冷却を緩冷却化すると同時に鋳型幅方向で均一化し、鋳片の縦割れを防止する技術が提案されている。しかしながら、この場合も鋳型内壁面に溝が露出しており、特許文献2と同様に、鋳型内壁面の摩耗によって、緩冷却効果が持続しないという問題がある。また、鋳造開始時に溶鋼が鋳型内壁面に設けた溝の内部に侵入して凝固し、凝固シェルの引き抜きができなくなり、拘束性ブレークアウトが発生する虞があるという問題もある。
特許文献4には、鋳型内壁面に格子状の溝を設けた鋳型、及び、前記格子状の溝に異種金属(Ni,Cr)またはセラミックス(BN、AlN、ZrO)を充填した鋳型が提案されている。この技術は、溝部と溝部以外の部分とで抜熱量に差を生じさせ、凝固に伴う変態や熱収縮による応力を低抜熱の領域に分散させることで、鋳片の縦割れを抑制するという技術である。しかしながら、溝が格子状であり、格子溝形状では、鋳型内壁面の溝部と鋳型銅板(銅または銅合金)との境界が直線であり、熱膨張差に起因して境界面に割れが発生し且つ伝播しやすく、鋳型寿命が低下するという問題がある。
特許文献5には、鋳型内壁面に鋳造方向と平行な縦溝を設けた鋳型、及び、前記縦溝に異種金属(Ni,Cr)またはセラミックス(BN、AlN、ZrO)を充填した鋳型を用い、鋳片引き抜き速度と鋳型振動周期とを所定の範囲に規定する連続鋳造方法が提案されている。特許文献5によれば、鋳片引き抜き速度に応じて鋳型振動周期を適正化することで、鋳片に形成されるオシレーションマークが横溝を付与したように働き、縦溝のみでも、特許文献4と同様の表面割れ低減効果が認められるとしている。しかしながら、特許文献4と同様に、鋳型内壁面の溝部と鋳型銅板(銅または銅合金)との境界が直線であり、熱膨張差に起因して境界面に割れが発生し且つ伝播しやすく、鋳型寿命が低下するという問題がある。
特許文献6には、鋳型内壁面の鋳型内溶鋼湯面(以下、「メニスカス」とも記す)近傍に、直径2〜10mmの凹溝を設け、この凹溝の内部に異種金属(Ni、ステンレス鋼)またはセラミックス(BN、AlN、ZrOなど)を埋め込み、埋め込んだ間隔を5〜20mmとする鋳型が提案されている。この技術も、特許文献4、5と同様に、規則的な熱伝達分布を与えて不均一凝固を低減し、鋳片の縦割れを抑制する技術である。しかしながら、特許文献6では、鋳型銅板表面にドリル穴を開口し、そこにドリル穴の形状に成形した異種金属またはセラミックスを埋め込んでおり、埋め込んだ異種金属の背面またはセラミックスの背面と鋳型銅板との接触状態は一定ではなく、接触部分に間隙が形成されることもあり、これによって凹溝部位の抜熱量が大幅に変化し、凝固シェルの冷却を適正に制御することができないという問題がある。また、埋め込んだ異種金属またはセラミックスが鋳型銅板から剥離しやすいという問題もある。
特開2005−297001号公報 特開平9−276994号公報 特開平10−193041号公報 特開平1−289542号公報 特開平2−6037号公報 特開平1−170550号公報
本発明は、上記事情に鑑みてなされたもので、その目的とするところは、鋳造開始時での拘束性ブレークアウトの発生及び鋳型銅板表面の割れによる鋳型寿命低下を起こすことなく、凝固初期の凝固シェルの不均一冷却による表面割れ、及び、包晶反応を伴う中炭素鋼でのδ鉄からγ鉄への変態に起因する凝固シェル厚みの不均一による表面割れを長期間に亘って抑制できる連続鋳造用鋳型を提供することであり、また、この連続鋳造用鋳型を使用した鋼の連続鋳造方法を提供することである。
上記課題を解決するための本発明の要旨は以下のとおりである。
[1]水冷式銅合金製鋳型の内壁面のメニスカスよりも上方の任意の位置から、メニスカスよりも、下方の任意の位置までの銅合金製鋳型銅板の内壁面の範囲に設けられた凹溝の内部に、鋳型銅板の熱伝導率λに対してその熱伝導率λを80%以下とする低熱伝導金属が充填されてなる複数個の低熱伝導金属充填部を有する連続鋳造用鋳型であって、
下記の(2)式により定義される、前記低熱伝導金属充填部と前記鋳型銅板との熱抵抗比Rが5%以上であることを特徴とする、連続鋳造用鋳型。
R={(T−H)/(1000×λ)+H/(1000×λ)−T/(1000×λ)}/{T/(1000×λ)}×100・・・(2)
但し、(2)式において、Rは低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との熱抵抗比(%)、Tは鋳型冷却水の流路となる鋳型銅板のスリットの底面から鋳型銅板表面までの距離(mm)、Hは低熱伝導金属の充填厚み(mm)、λは鋳型銅板の熱伝導率(W/(m×K))、λは低熱伝導金属の熱伝導率(W/(m×K))である。
[2]前記凹溝は、メニスカスよりも上方の任意の位置から、鋳片引き抜き速度Vによって下記の(1)式で算出される長さL以上下方の任意の位置までの銅合金製鋳型銅板の内壁面の範囲に設けられたことを特徴とする、[1]に記載の連続鋳造用鋳型。
=2×V×1000/60・・・(1)
但し、(1)式において、Lは長さ(mm)、Vは鋳片引き抜き速度(m/min)である。
[3]前記連続鋳造用鋳型は、前記低熱伝導金属充填部が設けられた銅合金製鋳型銅板の内壁面の範囲において、周期的な熱抵抗分布または熱流束分布を有することを特徴とする、[1]または[2]に記載の連続鋳造用鋳型。
[4]前記低熱伝導金属充填部は、円形凹溝または擬似円形凹溝の内部に前記低熱伝導金属が充填されて形成され、前記円形凹溝の直径が2〜20mmまたは前記擬似円形凹溝の円相当径が2〜20mmであることを特徴とする、[1]から[3]の何れか1つに記載の連続鋳造用鋳型。
[5]前記低熱伝導金属充填部同士の間隔が、該低熱伝導金属充填部の前記直径または前記円相当径に対して下記の(3)式の関係を満足することを特徴とする、[4]に記載の連続鋳造用鋳型。
P≧0.25×d・・・(3)
但し、(3)式において、Pは、低熱伝導金属充填部同士の間隔(mm)、dは、低熱伝導金属充填部の直径(mm)または円相当径(mm)である。
[6]前記低熱伝導金属充填部が形成された範囲内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm)に対する、全ての低熱伝導金属充填部の面積の総和B(mm)の比である面積率S(S=(B/A)×100)が10%以上であり、且つ、前記面積A(mm)に対する、全ての低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との境界長さの総和C(mm)の比ε(ε=C/A)が下記(4)式の関係を満足することを特徴とする、[1]から[6]の何れか1つに記載の連続鋳造用鋳型。
0.07≦ε≦0.60・・・(4)
[7]前記低熱伝導金属充填部がそれぞれ独立して形成されていることを特徴とする、[6]に記載の連続鋳造用鋳型。
[8]前記低熱伝導金属は、鍍金処理または溶射処理によって前記凹溝の内部に充填されることを特徴とする、[1]から[7]の何れか1つに記載の連続鋳造用鋳型。
[9]前記鋳型銅板の内壁面には、厚みが2.0mm以下のニッケルまたはニッケルを含有する合金の鍍金層が形成されており、前記低熱伝導金属充填部は前記鍍金層で覆われていることを特徴とする、[1]から[8]の何れか1つに記載の連続鋳造用鋳型。
[10][1]から[9]の何れか1つに記載の連続鋳造用鋳型を用い、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の中炭素鋼を、鋳片厚みが200mm以上のスラブ鋳片として1.5m/min以上の鋳片引き抜き速度で連続鋳造することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
本発明によれば、低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との熱抵抗比Rが5%以上である複数個の低熱伝導金属充填部を、メニスカス位置を含んでメニスカス近傍の連続鋳造用鋳型の幅方向及び鋳造方向に設置するので、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が周期的に増減し、これによって、メニスカス近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する。この熱流束の周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態による応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなり、凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における割れの発生が抑制される。
本発明に係る連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺銅板を内壁面側から見た概略側面図である。 図1に示す鋳型長辺銅板のX−X’断面図である。 低熱伝導金属充填部を設置した鋳型長辺銅板の三箇所の位置における熱抵抗を、低熱伝導金属充填部の位置に対応して概念的に示す図である。 鋳型長辺銅板の内壁面に鋳型表面の保護のための鍍金層を設けた例を示す概略図である。 低熱伝導金属充填部に充填した低熱伝導金属の熱伝導率の影響を調査した結果を示す図である。 低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との熱抵抗比Rの影響を調査した結果を示す図である。 低熱伝導金属充填部の面積率S、及び、境界長さの比εの影響を調査した結果を示す図である。 低熱伝導金属充填部の直径dの影響を調査した結果を示す図である。 試験No.40〜44における低熱伝導金属充填部の配置を示す概略側面図である。 試験No.45における低熱伝導金属充填部の配置を示す概略図である。 試験No.46における低熱伝導金属充填部の配置を示す概略図である。
以下、発明の実施の形態を通じて本発明を具体的に説明する。図1は、本施形態に係る連続鋳造用鋳型の一部を構成する鋳型長辺銅板であって、内壁面側に低熱伝導金属充填部が形成された鋳型長辺銅板を内壁面側から見た概略側面図である。また、図2は、図1に示す鋳型長辺銅板のX−X’断面図である。
図1に示す連続鋳造用鋳型は、スラブ鋳片を鋳造するための連続鋳造用鋳型の一例である。スラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型は、一対の銅合金製の鋳型長辺銅板と一対の銅合金製の鋳型短辺銅板とを組み合わせて構成される。図1は、そのうちの鋳型長辺銅板1を示している。鋳型短辺銅板も鋳型長辺銅板1と同様に、その内壁面側に低熱伝導金属充填部3が形成されるとして、ここでは、鋳型短辺銅板についての説明は省略する。但し、スラブ鋳片においては、スラブ厚みに対してスラブ幅が極めて大きいという形状に起因して、鋳片長辺面側の凝固シェルで応力集中が起こりやすく、鋳片長辺面側で表面割れが発生しやすい。したがって、スラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型の鋳型短辺銅板には、低熱伝導金属充填部を設置しなくてもよい。
図1に示すように、鋳型長辺銅板1における定常鋳造時のメニスカスの位置よりも長さQ(長さQは、ゼロより大きい任意の値)離れた上方の位置から、メニスカスよりも長さLだけ下方の位置までの鋳型長辺銅板1の内壁面の範囲には、直径をdとする複数個の低熱伝導金属充填部3が、低熱伝導金属充填部同士の間隔をPとして設置されている。ここで、「メニスカス」とは「鋳型内溶鋼湯面」であり、非鋳造中にはその位置は明確でないが、通常の鋼の連続鋳造操業では、メニスカス位置を鋳型銅板の上端から50mmないし200mm程度下方の任意の位置としている。したがって、メニスカス位置が鋳型長辺銅板1の上端から50mm下方の位置であっても、また、上端から200mm下方の位置であっても、長さQ及び長さLが、以下に説明する条件を満足するように、低熱伝導金属充填部3を配置すればよい。
低熱伝導金属充填部3は、図2に示すように、鋳型長辺銅板1の内壁面側にそれぞれ独立して加工された、直径dが2〜20mmの円形凹溝2の内部に、鍍金処理または溶射処理によって、鋳型長辺銅板1を構成する銅合金の熱伝導率λに対してその熱伝導率λが80%以下である金属(以下、「低熱伝導金属」と記す)が充填されて形成されたものである。ここで、図2における符号4は、鋳型冷却水の流路となる、鋳型長辺銅板1の背面側に設置されたスリットで、符号5は、鋳型長辺銅板1の背面と密着するバックプレートである。
図3は、低熱伝導金属充填部3を設置した鋳型長辺銅板1の三箇所の位置における熱抵抗を、低熱伝導金属充填部3の位置に対応して概念的に示す図である。図3に示すように、低熱伝導金属充填部3の設置位置では熱抵抗が相対的に高くなる。
複数の低熱伝導金属充填部3を、メニスカス位置を含んでメニスカス近傍の連続鋳造用鋳型の幅方向及び鋳造方向に設置することにより、メニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が周期的に増減する分布が形成される。これによって、メニスカス近傍、つまり、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する分布が形成される。
この熱流束の周期的な増減により、δ鉄からγ鉄への変態(以下「δ/γ変態」と記す)によって発生する応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなる。凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における表面割れの発生が抑制される。
本実施形態においては、凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する分布を形成させるために、換言すれば、低熱伝導金属充填部3を設置した部位の熱抵抗と、低熱伝導金属充填部3を設置していない部位の熱抵抗と、に明確な違いを生じさせるために、下記の(2)式によって定義される低熱伝導金属充填部3と鋳型銅板との熱抵抗比Rが5%以上となるように、鋳型銅板の形状に応じて低熱伝導金属充填部3を設置する。ここで、低熱伝導金属充填部3と鋳型銅板との熱抵抗比Rは、(2)式に示すように、鋳型冷却水の流路となる鋳型銅板のスリット4の底面4aから鋳型銅板表面までの距離Tと、低熱伝導金属充填部3での低熱伝導金属の充填厚みHと、鋳型銅板の熱伝導率λと、低熱伝導金属の熱伝導率λとで定義される。
R={(T−H)/(1000×λ)+H/(1000×λ)−T/(1000×λ)}/{T/(1000×λ)}×100・・・(2)
但し、(2)式において、Rは低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との熱抵抗比(%)、Tは鋳型銅板のスリットの底面から鋳型銅板表面までの距離(mm)、Hは低熱伝導金属の充填厚み(mm)、λは鋳型銅板の熱伝導率(W/(m×K))、λは低熱伝導金属の熱伝導率(W/(m×K))である。
尚、熱抵抗比Rが100%よりも大きくなると、低熱伝導金属充填部3での凝固が著しく遅れることから、不均一凝固が助長されて、鋳片の表面割れやブレークアウトが発生する可能性があるので、熱抵抗比Rは100%以下とすることが好ましい。
初期凝固への影響を勘案すれば、低熱伝導金属充填部3の設置位置は、定常鋳造時の鋳片引き抜き速度Vに応じて、下記の(1)式から算出される長さL以上メニスカスよりも下方の位置までとすることが好ましい。つまり、図1に示す、メニスカス位置からの長さLは、長さL以上とすることが好ましい。
=2×V×1000/60・・・(1)
但し、(1)式において、Lは長さ(mm)、Vは定常鋳造時の鋳片引き抜き速度(m/min)である。
長さLは、凝固開始した後の鋳片が低熱伝導金属充填部3の設置された範囲を通過する時間に関係しており、鋳片の表面割れを抑制するためには、凝固開始後から少なくとも2秒間は、鋳片が低熱伝導金属充填部3の設置された範囲内に滞在することが好ましい。鋳片が凝固開始後から少なくとも2秒間は低熱伝導金属充填部3の設置された範囲に存在するためには、長さLは(1)式を満たすことが必要となる。
凝固開始した後の鋳片が低熱伝導金属充填部3の設置された範囲内に滞在する時間を2秒以上確保することで、低熱伝導金属充填部3による熱流束の周期的な変動の効果が十分に得られ、表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時に、鋳片の表面割れ抑制効果を高めることができる。低熱伝導金属充填部3による熱流束の周期的な変動の効果を安定して得るには、鋳片が低熱伝導金属充填部3の設置された範囲を通過する時間を4秒以上確保することがより好ましい。一方、長さLに上限を定める必要はないが、低熱伝導金属充填部3を設置するための鋳型銅板表面の凹溝加工費用と鍍金処理費用または溶射処理費用とを抑える観点から、長さLの5倍以内とするのが好ましい。
一方、低熱伝導金属充填部3の上端部の位置はメニスカス位置よりも上方であればどこの位置であっても構わず、従って、図1に示す長さQは、ゼロを超えた任意の値であればよい。但し、鋳造中にメニスカスは上下方向に変動するので、低熱伝導金属充填部3の上端部が常にメニスカスよりも上方位置となるように、低熱伝導金属充填部3の上端部をメニスカスよりも10mm程度上方位置とすることが好ましく、低熱伝導金属充填部3の上端部をメニスカスよりも20mm〜50mm程度上方位置とすることがより好ましい。
図1及び図2では、低熱伝導金属充填部3の鋳型長辺銅板1の内壁面における形状が円形である例を示したが、当該形状は円形に限られない。例えば楕円形のような、所謂「角」を有していない、円形に近い形状であれば、どのような形状であってもよい。以下、円形に近いものを「擬似円形」と称する。低熱伝導金属充填部3の形状が擬似円形の場合には、低熱伝導金属充填部3を形成させるための鋳型長辺銅板1の内壁面に加工される凹溝を「擬似円形凹溝」と称する。擬似円形とは、例えば楕円形や、角部を円や楕円とする長方形などの角部を有していない形状であり、更には、花びら模様のような形状であってもよい。擬似円形の大きさは、擬似円形の面積から求められる円相当径で評価する。
特許文献4及び特許文献5のように、縦溝或いは格子溝を施し、この溝に低熱伝導金属を充填した場合には、低熱伝導金属と銅との境界面及び格子部の直交部において、低熱伝導金属と銅との熱歪差による応力が集中し、鋳型銅板表面に割れが発生するという問題が起こる。これに対して、本実施形態に係る連続鋳造用鋳型は、低熱伝導金属充填部3の形状を円形または擬似円形にしている。これにより、低熱伝導金属と銅との境界面は曲面状となるので、境界面で応力が集中しにくく、鋳型銅板表面に割れが発生しにくいという利点が発現する。
低熱伝導金属充填部3の直径d及び円相当径dは、2〜20mmであることが好ましい。低熱伝導金属充填部3の直径d及び円相当径dを2mm以上とすることで、低熱伝導金属充填部3における熱流束の低下が十分となり、鋳片の表面割れ抑制効果を高めることができる。また、2mm以上とすることで、低熱伝導金属を鍍金処理や溶射処理によって円形凹溝2や擬似円形凹溝(図示せず)の内部に充填することが容易となる。一方、低熱伝導金属充填部3の直径及び円相当径を20mm以下とすることで、低熱伝導金属充填部3における熱流束の低下が抑制され、つまり、低熱伝導金属充填部3での凝固遅れが抑制されて、その位置での凝固シェルへの応力集中が防止され、凝固シェルでの表面割れ発生を抑制できる。即ち、直径d及び円相当径dが20mmを超えると表面割れが増加する傾向があることから、低熱伝導金属充填部3の直径及び円相当径は20mm以下にすることが好ましい。尚、低熱伝導金属充填部3の形状が擬似円形の場合は、この擬似円形の円相当径は下記の(5)式で算出される。
円相当径=(4×S/π)1/2・・・(5)
但し、(5)式において、Sは低熱伝導金属充填部3の面積(mm)である。
円形凹溝及び擬似円形凹溝に充填して使用する低熱伝導金属の熱伝導率λは、鋳型銅板を構成する銅合金の熱伝導率λに対して80%以下である必要がある。銅合金の熱伝導率に対して80%以下の低熱伝導金属を使用することで、低熱伝導金属充填部3による熱流束の周期的な変動の効果が十分となり、鋳片表面割れの発生しやすい高速鋳造時や中炭素鋼の鋳造時においても、鋳片の表面割れ抑制効果が十分に得られる。
本実施形態に係る連続鋳造用鋳型において使用する低熱伝導金属としては、鍍金処理や溶射処理によって容易に充填することができるニッケル(Ni、熱伝導率;90.5W/(m×K))、ニッケル系合金、クロム(Cr、熱伝導率;67W/(m×K))、コバルト(Co、熱伝導率;70W/(m×K))などが好適である。
また、鋳型銅板として使用する銅合金としては、一般的に連続鋳造用鋳型として使用されている、クロムやジルコニウム(Zr)などを微量添加した銅合金を用いればよい。近年では、鋳型内の凝固の均一化または溶鋼中介在物の凝固シェルへの捕捉を防止するために、鋳型内の溶鋼を攪拌する電磁攪拌装置が設置されていることが一般的であり、電磁コイルから溶鋼への磁場強度の減衰を抑制するために、導電率を低減した銅合金が用いられている。この場合、導電率の低下に応じて熱伝導率も低減し、純銅の1/2前後の熱伝導率の銅合金製鋳型銅板も存在する。このような鋳型では、鋳型銅板と低熱伝導金属との熱伝導率差が小さくなるが、上記の(2)式に示す熱抵抗比Rを5%以上とすることで、鋳片の表面割れ抑制効果が発揮される。
低熱伝導金属充填部3の充填厚みHは0.5mm以上とすることが好ましい。充填厚みHを0.5mm以上とすることで、低熱伝導金属充填部3における熱流束の低下が十分となり、鋳片の表面割れ抑制効果を得ることができる。
また、低熱伝導金属充填部3の充填厚みHは、低熱伝導金属充填部3の直径d以下及び円相当径d以下にすることが好ましい。充填厚みHを低熱伝導金属充填部3の直径d及び円相当径dと同等、またはそれらよりも小さくするので、鍍金処理や溶射処理による円形凹溝及び擬似円形凹溝への低熱伝導金属の充填が容易となり、且つ、充填した低熱伝導金属と鋳型銅板との間に隙間や割れが生じることもない。低熱伝導金属と鋳型銅板との間に隙間や割れが生じた場合には、充填した低熱伝導金属の亀裂や剥離が生じ、鋳型寿命の低下、鋳片の割れ、更には拘束性ブレークアウトの原因となる。
低熱伝導金属充填部同士の間隔Pは、低熱伝導金属充填部3の直径d及び円相当径dの0.25倍以上であることが好ましい。即ち、低熱伝導金属充填部同士の間隔Pは低熱伝導金属充填部3の直径dまたは円相当径dに対して下記の(3)式の関係を満足することが好ましい。
P≧0.25×d・・・(3)
但し、(3)式において、Pは、低熱伝導金属充填部同士の間隔(mm)、dは、低熱伝導金属充填部の直径(mm)または円相当径(mm)である。
ここで、低熱伝導金属充填部同士の間隔Pとは、図1に示すように、隣り合う低熱伝導金属充填部3の端部間の最短距離である。低熱伝導金属充填部同士の間隔Pを「0.25×d」以上とすることで、低熱伝導金属充填部3同士の間隔が十分に大きく、低熱伝導金属充填部3における熱流束と銅合金部(低熱伝導金属充填部3が形成されていない部位)の熱流束との差が大きくなり、鋳片の表面割れ抑制効果を得ることができる。低熱伝導金属充填部同士の間隔Pの上限値は特に定めなくてよいが、間隔Pが大きくなると、低熱伝導金属充填部3の面積率が低下するので「2.0×d」以下にすることが好ましい。
低熱伝導金属充填部3の配列は、図1に示すような千鳥配列が好ましいが、千鳥配列に限らず、低熱伝導金属充填部同士の上記間隔Pを満たす配列であれば、どのような配列でもよい。
低熱伝導金属充填部3が形成された範囲内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm)に対する、全ての低熱伝導金属充填部3の面積の総和B(mm)の比である面積率S(S=(B/A)×100)は、10%以上であることが好ましい。面積率Sを10%以上確保することで、熱流束の小さい低熱伝導金属充填部3の占める面積が確保され、低熱伝導金属充填部3と銅合金部とで熱流束差が得られ、鋳片の表面割れ抑制効果を安定して得ることができる。尚、低熱伝導金属充填部3の占める面積率Sの上限は特に定めなくてもよいが、前述したように、低熱伝導金属充填部同士の間隔Pを「0.25×d」以上とすることが好ましいことから「P=0.25×d」の条件を最大の面積率Sと考えればよい。
また、低熱伝導金属充填部3が形成された範囲内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm)に対する、全ての低熱伝導金属充填部3と鋳型銅板との境界長さの総和C(mm)の比ε(ε=C/A)は、下記の(4)式を満足することが好ましい。
0.07≦ε≦0.60・・・(4)
比εの鋳片表面割れに及ぼす影響を調査した結果、比εが(4)式の範囲外の場合には、表面割れの低減効果が少なかった。比εは、低熱伝導金属充填部3の直径dまたは円相当径d及び低熱伝導金属充填部3の個数に依存して変化し、比εが0.07未満のときは、低熱伝導金属充填部3の個数が少なく、鋼のδ/γ変態時の体積収縮や熱収縮により生じた応力がシェル全体に均一に分散されにくくなるので鋳片の表面割れ抑制効果が低減する。一方、比εが0.60よりも大きいときは、低熱伝導金属充填部3の個数が多すぎる結果、熱流束の周期的な増減が目的とする水準に達せず、鋳片の表面割れの抑制効果が低減する。また、比εが0.60よりも大きい場合には、鋳型直下での鋳片バルジングも認められた。
尚、低熱伝導金属充填部3は、連続鋳造用鋳型の長辺鋳型銅板と短辺鋳型銅板の双方に設置することを基本とするが、スラブ鋳片のように鋳片短辺長さに対して鋳片長辺長さの比が大きい場合には、鋳片長辺側に表面割れが発生する傾向があり、低熱伝導金属充填部3を長片側のみに設置しても、鋳片の表面割れ抑制効果を得ることができる。
また、図4に示すように、低熱伝導金属充填部3を形成させた鋳型銅板の内壁面に、凝固シェルによる磨耗や熱履歴による鋳型表面の割れを防止することを目的として、鍍金層6を設けることが好ましい。この鍍金層6は、一般的に用いられるニッケルまたはニッケルを含有する合金、例えば、ニッケル−コバルト合金(Ni−Co合金)やニッケル−クロム合金(Ni−Cr合金)などを鍍金処理することで得られる。鍍金層6の厚みhは2.0mm以下とすることが好ましい。鍍金層6の厚みhを2.0mm以下にすることで、熱流束に及ぼす鍍金層6の影響を少なくすることができ、低熱伝導金属充填部3による熱流束の周期的な変動の効果を十分に得ることができる。但し、鍍金層6の厚みhが低熱伝導金属充填部3の充填厚みHの0.5倍よりも大きくなると、低熱伝導金属充填部3による周期的な熱流束分布の差の形成が抑制されるので、鍍金層6の厚みhは、低熱伝導金属充填部3の充填厚みHの0.5倍以下とするのが好ましい。この条件を満たしている限り、鍍金層6は鋳型上端から下端まで同一の厚みであっても、上端から下端にかけて厚みが異なっていてもよい。図4は、鋳型長辺銅板の内壁面に鋳型表面の保護のための鍍金層を設けた例を示す概略図である。
このように構成される連続鋳造用鋳型は、特に、表面割れ感受性が高い、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の中炭素鋼のスラブ鋳片(厚み;200mm以上)を連続鋳造する際に使用することが好ましい。従来、中炭素鋼のスラブ鋳片を連続鋳造する場合は、鋳片の表面割れを抑制するために、鋳片引き抜き速度を低速化することが一般的であるが、上記構成の連続鋳造用鋳型を使用することで鋳片表面割れが抑制できるので、1.5m/min以上の鋳片引き抜き速度であっても、表面割れのない、または表面割れの著しく少ない鋳片を連続鋳造することが実現される。
以上説明したように、本実施形態に係る連続鋳造用鋳型は、(2)式で定義される熱抵抗比Rが5%以上である複数個の低熱伝導金属充填部3がメニスカス位置を含んでメニスカス近傍の連続鋳造用鋳型の幅方向及び鋳造方向に設置されている。これにより、連続鋳造用鋳型のメニスカス近傍の鋳型幅方向及び鋳造方向における連続鋳造用鋳型の熱抵抗が周期的に増減し、凝固初期での凝固シェルから連続鋳造用鋳型への熱流束が周期的に増減する。この熱流束の周期的な増減により、δ/γ変態による応力や熱応力が低減し、これらの応力によって生じる凝固シェルの変形が小さくなり、凝固シェルの変形が小さくなることで、凝固シェルの変形に起因する不均一な熱流束分布が均一化され、且つ、発生する応力が分散されて個々の歪量が小さくなる。その結果、凝固シェル表面における割れの発生が抑制される。
尚、図1では、同一形状の低熱伝導金属充填部3を鋳造方向または鋳型幅方向に設置した例を示したが、低熱伝導金属充填部3の形状は、同一でなくてもよい。低熱伝導金属充填部3の直径dまたは円相当径dが2〜20mmの範囲内であれば、直径の異なる低熱伝導金属充填部3を鋳造方向または鋳型幅方向に設置してもよい。但し、低熱伝導金属充填部3の直径dまたは円相当径dが場所によって大幅に異なると、低熱伝導金属充填部3の面積率が局所的に高い領域で凝固が遅れ、その位置で表面割れが発生する危惧があるので、単一の直径または円相当径とすることが好ましい。
また、図2では、充填厚みHが同一の低熱伝導金属充填部3を鋳造方向に設置した例を示したが、鋳造方向または鋳型幅方向に設置する低熱伝導金属充填部3の充填厚みは、同一としなくてよく、個々の低熱伝導金属充填部3で充填厚みHが異なっていてもよい。但し、いずれの低熱伝導金属充填部3の充填厚みHも0.5mm以上であることが好ましい。
更に、図1では、鋳造方向または鋳型幅方向に同一間隔で低熱伝導金属充填部3を設置した例を示したが、低熱伝導金属充填部3を設置する間隔は、同一でなくてもよい。但し、この場合も、低熱伝導金属充填部同士の間隔Pは(3)式の関係を満足することが好ましい。
また、上記説明はスラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型に関して行ったが、本実施形態に係る連続鋳造用鋳型はスラブ鋳片用の連続鋳造用鋳型に限定されるものではなく、ブルーム鋳片用やビレット鋳片用の連続鋳造用鋳型においても上記に沿って適用することができる。
C;0.05〜0.25質量%、Si;0.10〜0.35質量%、Mn;0.70〜1.30質量%、P;0.010〜0.030質量%、S;0.002〜0.006質量%、Al;0.02〜0.05質量%を含有する溶鋼を、鋳型長辺銅板及び鋳型短辺銅板の内壁面に、種々の条件で低熱伝導金属充填部が設置された水冷式銅合金製鋳型を用いて、鋳片長辺幅が1500〜2450mm、鋳片短辺厚みが220mmのスラブ鋳片に連続鋳造し、鋳造後の鋳片の表面割れを調査する試験を行った。
使用した水冷式銅合金製鋳型の上端から下端までの長さは950mmであり、定常鋳造時のメニスカス(鋳型内溶鋼湯面)の位置は、鋳型上端から100mm下方位置に設定した。鋳型上端から60mm下方の位置から、設定したメニスカス位置から長さL(mm)下方の位置までの範囲の鋳型銅板内壁面に円形凹溝の加工を施し、その後、電気鍍金処理によって円形凹溝に低熱伝導金属を充填させた。電気鍍金処理を施した後、表面研削を行って円形凹溝以外の部位に付着した低熱伝導金属を除去し、再度、電気鍍金処理を施す工程を複数回繰り返して低熱伝導金属を円形凹溝に完全に充填させ、低熱伝導金属充填部を形成した。この場合、低熱伝導金属充填部とその周囲の銅合金部(低熱伝導金属充填部が形成されていない部位)とは段差のない平滑面に形成した。その後、鋳型銅板内壁面の全面にNi−Co合金を鍍金して、鋳型上端での厚み0.2mm、鋳型下端での厚み2.0mmの鍍金層を施工した。
鋳型銅板としては、熱伝導率が298.5W/(m×K)及び120.0W/(m×K)である、熱伝導率の異なる2種類の銅合金を用い、充填用の低熱伝導金属(以下、「充填金属」とも記す)としては、純ニッケル(熱伝導率;90.5W/(m×K))、純コバルト(熱伝導率;70W/(m×K))、純クロム(熱伝導率;67W/(m×K))、純銅(熱伝導率;398W/(m×K))を使用した。
連続鋳造操業においては、モールドパウダーとして、塩基度((質量%CaO)/(質量%SiO))が1.0〜1.5で、1300℃における粘度が0.05〜0.20Pa・sのモールドパウダーを使用した。連続鋳造終了後、鋳片表面の染色浸透探傷検査により、2mm以上の長さの表面割れの個数を測定し、その総和を、表面割れを調査した鋳片の鋳造方向長さ(m)で除した値を表面割れ指数として定義し、この表面割れ指数を用いて表面割れの発生状況を評価した。
表1に、試験No.1〜26の鋳型施工条件及び鋳片表面検査結果を示し、また、表2に、試験No.27〜48の鋳型施工条件及び鋳片表面検査結果を示す。尚、表1及び表2の備考欄には、本発明の範囲内の水冷式銅合金製鋳型を使用した試験を本発明例、低熱伝導金属充填部を有するものの本発明の範囲を満足しない水冷式銅合金製鋳型を使用した試験を比較例、低熱伝導金属充填部を有していない水冷式銅合金製鋳型を使用した試験を従来例と表示している。
Figure 0006428721
Figure 0006428721
試験No.1〜8は、鋳型銅板の熱伝導率λに対する充填金属の熱伝導率λの影響を調査した試験である。図5に、試験No.1〜8の試験結果を示すように、充填金属の熱伝導率λが鋳型銅板の熱伝導率λの80%以下の範囲で、鋳片の表面割れが抑制されることが確認できた。
試験No.9〜19は、低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との熱抵抗比Rの影響を調査した試験である。図6に、試験No.9〜19の試験結果を示すように、熱抵抗比Rが5%以上の範囲で、鋳片表面割れが抑制されることが確認できた。但し、熱抵抗比Rが100%を超えると、表面割れの低減効果が小さくなることがわかった。尚、試験No.9に示すように、充填金属の熱伝導率λが鋳型銅板の熱伝導率λの80%以下の範囲であっても、熱抵抗比Rが5%以上を満足しない場合には、鋳片表面割れの抑制効果は得られないことが確認できた。
試験No.20〜26は、低熱伝導金属充填部が形成された範囲内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm)に対する、全ての低熱伝導金属充填部の面積の総和B(mm)の比である面積率Sの影響、及び、低熱伝導金属充填部が形成された範囲内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm)に対する、全ての低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との境界長さの総和C(mm)の比εの影響を調査した試験である。図7に、試験No.20〜26の試験結果を示すように、面積率Sが10%以上であり、且つ、比εが0.07〜0.60の範囲においては、表面割れが抑制された。面積率Sまたは比εが本発明の好適な条件を外れた場合には、鋳片に軽微な表面割れが発生した。
試験No.27−32は、低熱伝導金属充填部の直径dの影響を調査した試験である。図8に、試験No.27−32の試験結果を示すように、低熱伝導金属充填部の直径dが2〜20mmの範囲において、鋳片表面割れが抑制されることが確認できた。
試験No.33〜36は、低熱伝導金属充填部同士の間隔Pの影響を調査した試験である。「P≧0.25×d」を満足する場合には、鋳片表面割れが抑制されることが確認できた。間隔Pが「P≧0.25×d」を満足しない場合には、鋳片に軽微な表面割れが発生した。
試験No.37〜39は、低熱伝導金属充填部を配置した範囲の長さLの影響を調査した試験である。鋳片引き抜き速度Vによって算出される長さLに対して長さLが大きい範囲で、鋳片表面割れが抑制されることが確認できた。
試験No.40〜46は、複数個の低熱伝導金属充填部が繋がって配置された水冷式銅合金製鋳型、つまり、それぞれの低熱伝導金属充填部が独立していない水冷式銅合金製鋳型を用いた試験である。
このうちの試験No.40〜44は、図9に示すように、直径3mmの低熱伝導金属充填部を3個組み合わせた形状の低熱伝導金属充填部を、組み合わせた3個の低熱伝導金属充填部同士間の間隔Pを変化させて配置した試験である。試験No.40〜44の場合も、充填金属の熱伝導率λが鋳型銅板の熱伝導率λの80%以下であり、熱抵抗比Rが5%以上であり、鋳片引き抜き速度Vによって算出される長さLに対して長さLが大きい場合であって、且つ、好適な条件を満足する場合に鋳片表面割れが抑制されることが確認できた。間隔P、面積率S、または比εが、好適な条件を外れた場合には、鋳片に軽微な表面割れが発生した。
試験No.45は、図10に示すように、鋳型の幅方向で低熱伝導金属充填部が繋がって配置された水冷式銅合金製鋳型を用いた試験であり、試験No.46は、図11に示すように、鋳型の幅方向及び鋳造方向で全ての低熱伝導金属充填部が繋がって配置された水冷式銅合金製鋳型を用いた試験である。尚、図10−(A)及び図11−(A)は、内壁面側に低熱伝導金属充填部が形成された鋳型長辺銅板を内壁面側から見た概略側面図、図10−(B)は、図10−(A)に示す鋳型長辺銅板のY−Y’断面図であり、図11−(B)は、図11−(A)に示す鋳型長辺銅板のY−Y’断面図である。
試験No.45は、鋳型長辺銅板の幅方向に、直径d;8mm、充填厚みH;4mm、間隔P;4mmの低熱伝導金属充填部を設け、この低熱伝導金属充填部の間に、直径d;4mm、充填厚みH;1mmの低熱伝導金属充填部を設けた場合である。直径8mmの低熱伝導金属充填部の方が、充填厚みHが大きいために、その領域の凝固シェル部に鋼のδ/γ変態時の体積収縮や熱収縮により生じた応力が分散されて、鋳片の表面割れが低減したと考えられる。
一方、試験No.46は、全ての低熱伝導金属充填部が繋がっており、連続鋳造時に常に同じ位置で凝固が遅れ、そのために、その箇所にδ/γ変態による応力や熱応力が集中し、軽微な表面割れが発生したものと考えられる。
試験No.47、48は、低熱伝導金属充填部が設置されていない従来の連続鋳造用鋳型を用いた試験である。試験No.47、48では、多数の鋳片表面割れが発生した。
1 鋳型長辺銅板
2 円形凹溝
3 低熱伝導金属充填部
4 スリット
5 バックプレート
6 鍍金層

Claims (9)

  1. 水冷式銅合金製鋳型の内壁面のメニスカスよりも上方の任意の位置から、メニスカスよりも、下方の任意の位置までの銅合金製鋳型銅板の内壁面の範囲に設けられた凹溝の内部に、鋳型銅板の熱伝導率λに対してその熱伝導率λを80%以下とする低熱伝導金属が充填されてなる複数個の低熱伝導金属充填部を有する連続鋳造用鋳型であって、
    下記の(2)式により定義される、前記低熱伝導金属充填部と前記鋳型銅板との熱抵抗比Rが5%以上であり、
    前記低熱伝導金属充填部が形成された範囲内の鋳型銅板内壁面の面積A(mm )に対する、全ての低熱伝導金属充填部の面積の総和B(mm )の比である面積率S(S=(B/A)×100)が10%以上であり、且つ、前記面積A(mm )に対する、全ての低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との境界長さの総和C(mm)の比ε(ε=C/A)が下記(4)式の関係を満足することを特徴とする、連続鋳造用鋳型。
    R={(T−H)/(1000×λ)+H/(1000×λ)−T/(1000×λ)}/{T/(1000×λ)}×100・・・(2)
    0.07≦ε≦0.60・・・(4)
    但し、(2)式において、Rは低熱伝導金属充填部と鋳型銅板との熱抵抗比(%)、Tは鋳型冷却水の流路となる鋳型銅板のスリットの底面から鋳型銅板表面までの距離(mm)、Hは低熱伝導金属の充填厚み(mm)、λは鋳型銅板の熱伝導率(W/(m×K))、λは低熱伝導金属の熱伝導率(W/(m×K))である。
  2. 前記凹溝は、メニスカスよりも上方の任意の位置から、鋳片引き抜き速度Vによって下記の(1)式で算出される長さL以上下方の任意の位置までの銅合金製鋳型銅板の内壁面の範囲に設けられたことを特徴とする、請求項1に記載の連続鋳造用鋳型。
    =2×V×1000/60・・・(1)
    但し、(1)式において、Lは長さ(mm)、Vは鋳片引き抜き速度(m/min)である。
  3. 前記連続鋳造用鋳型は、前記低熱伝導金属充填部が設けられた銅合金製鋳型銅板の内壁面の範囲において、周期的な熱抵抗分布または熱流束分布を有することを特徴とする、請求項1または請求項2に記載の連続鋳造用鋳型。
  4. 前記低熱伝導金属充填部は、円形凹溝または擬似円形凹溝の内部に前記低熱伝導金属が充填されて形成され、前記円形凹溝の直径が2〜20mmまたは前記擬似円形凹溝の円相当径が2〜20mmであることを特徴とする、請求項1から請求項3の何れか一項に記載の連続鋳造用鋳型。
  5. 前記低熱伝導金属充填部同士の間隔が、該低熱伝導金属充填部の前記直径または前記円相当径に対して下記の(3)式の関係を満足することを特徴とする、請求項4に記載の連続鋳造用鋳型。
    P≧0.25×d・・・(3)
    但し、(3)式において、Pは、低熱伝導金属充填部同士の間隔(mm)、dは、低熱伝導金属充填部の直径(mm)または円相当径(mm)である。
  6. 前記低熱伝導金属充填部がそれぞれ独立して形成されていることを特徴とする、請求項1から請求項5の何れか一項に記載の連続鋳造用鋳型。
  7. 前記低熱伝導金属は、鍍金処理または溶射処理によって前記凹溝の内部に充填されることを特徴とする、請求項1から請求項の何れか一項に記載の連続鋳造用鋳型。
  8. 前記鋳型銅板の内壁面には、厚みが2.0mm以下のニッケルまたはニッケルを含有する合金の鍍金層が形成されており、前記低熱伝導金属充填部は前記鍍金層で覆われていることを特徴とする、請求項1から請求項の何れか一項に記載の連続鋳造用鋳型。
  9. 請求項1から請求項の何れか一項に記載の連続鋳造用鋳型を用い、炭素含有量が0.08〜0.17質量%の中炭素鋼を、鋳片厚みが200mm以上のスラブ鋳片として1.5m/min以上の鋳片引き抜き速度で連続鋳造することを特徴とする、鋼の連続鋳造方法。
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