JP2015044985A - ポリスチレン系樹脂発泡体 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】ポリスチレン系樹脂発泡体は、発泡倍率が80〜140倍で融着率が90%以上であり、曲げ強さ(JISK7221−2)が70〜120kPaで、曲げ弾性率(JISK7221−2)が1000〜4000kPaである。これにより、従来のポリスチレン系樹脂発泡体以上の緩衝性能を確保すると同時に、軽量性などのポリスチレン系樹脂発泡体の特徴をそのまま維持する。
【選択図】なし
Description
近年、省資源化や廃棄物処理、環境への配慮の観点から、発泡樹脂系の緩衝材は敬遠され、パルプモールドや段ボールなどの廃棄が容易な非発泡樹脂系の緩衝材が主流となっている。
このポリエチレン発泡体は、衝撃吸収性、柔軟性、割れ性についてはポリスチレン系樹脂発泡体より優れているものの、軽量性やコスト面では劣っている。
例えば曲げ強さや耐衝撃性などに優れたポリスチレン系樹脂発泡体として特許文献1には、ポリスチレン系樹脂を予備発泡させ、型成形して得られるポリスチレン系樹脂発泡体からなる緩衝材で、嵩発泡倍数を50倍に発泡させた予備発泡粒子の状態で、内部平均気泡径が5〜140μmの範囲内で、表層部平均気泡径/内部平均気泡径の値が0.80〜1.20の範囲内であり、かつ連続気泡率が10%以下である気泡構造を有するものが開示されている。
緩衝性能に優れた本願発明の具体的な構成は以下の通りである。
これにより、従来のポリスチレン系樹脂発泡体以上の緩衝性能を確保すると同時に、軽量性などのポリスチレン系樹脂発泡体の特徴をそのまま維持することができる。
本発明におけるポリスチレン系樹脂発泡体は、発泡倍率が80〜140倍で融着率が90%以上であり、曲げ強さ(JISK7221−2)が70〜120kPaの範囲で、曲げ弾性率(JISK7221−2)が1000〜4000kPaの範囲のものである。
これまでのポリスチレン系樹脂発泡体では、発泡倍率が通常、50〜70倍程度の範囲で使用されるのが一般的であるが、本願発明のポリスチレン系樹脂発泡体では、少なくとも80倍であり、80倍から140倍の範囲の発泡倍率とされる。
発泡倍率を高い範囲とすることで、ポリスチレン系樹脂発泡体の軽量性を一層高めることができる。
また、ポリスチレン系樹脂発泡体の発泡倍率を高くすることで、発泡させた後、一旦ポ
リスチレン系樹脂発泡体を収縮させ、これを復元することで柔軟性を向上することを可能とするものである。
なお、本発明における発泡倍率が80〜140倍であるポリスチレン系樹脂発泡体は復元後の最終製品の状態(最終発泡体)での値である。
この融着率は、ポリスチレン系樹脂発泡体を構成する個々の発泡粒子の接着度合いを表すものであり、融着率の測定は、ポリスチレン系樹脂発泡体を板状に加工し、外力を加えて曲げて破断させ、破断面を目視観察することで行う。破断面の任意の範囲において、発泡粒子同士の界面ではなく、粒子内で破断している割合を数えて算出する。例えば50個の粒子について、粒子内で破断しているものが45個以上であれば、45/50×100=90%であり、45個以上であれば融着率が90%以上である。
また、割れ性とは、衝撃時のこわれやすさであるが、従来のポリスチレン系樹脂発泡体では、柔軟性に欠け、小さなたわみ量で亀裂が入り割れやすい性質だったものを、本発明のポリスチレン系樹脂発泡体は、柔軟性に優れ、より大きなたわみ量でも割れにくくなり、割れ性も向上させることができた。
曲げ強さをこのような70〜120kPaの範囲とすることで、これまでのポリスチレン系樹脂発泡体に比べ、柔軟性を向上することができる。
曲げ強さが70kPaより小さくなると、ポリスチレン系樹脂発泡体として機械的な強度が不十分となり、弱い衝撃荷重でポリスチレン系樹脂発泡体自体が破損してしまい、梱包用緩衝材として使用する場合にも問題となる。
一方、曲げ強さが120kPaを越え大きくなると、これまでのポリスチレン系樹脂発泡体と同程度の値となり、ポリスチレン系樹脂発泡体の柔軟性の向上を図ることができなくなる。
曲げ弾性率をこのような1000〜4000kPaの範囲とすることで、これまでのポリスチレン系樹脂発泡体に比べ、柔軟性を向上することができる。
梱包したおもりと供試体を衝撃試験装置(吉田精機(株)製:ASQ−700型)の基板上に設置する。なお、おもりは落下衝撃を加えたときに移動しないよう治具で固定する。
この落下衝撃試験では、衝撃試験装置を使用して高さ60cmからの自由落下と同等の衝撃をおもりに加え、落下衝突時に発生する衝撃作用時間(ms)及び最大加速度(G)を測定した。なお、最大加速度は、値が小さいほど優れた衝撃吸収性を示す。
その結果、本発明のポリスチレン系樹脂発泡体では、従来のものよりも衝撃作用時間が10%以上長くなり、最大加速度も減少し、衝撃吸収性が向上した。
型内発泡法によりポリスチレン系樹脂発泡体を得る方法として2の方法がある。
原料となる発泡性ポリスチレン系樹脂ビーズ(発泡剤が含有されている)を用い、加熱媒体として蒸気を使用し、所定の発泡倍率(密度)まで発泡させることで予備発泡粒子とする。
この予備発泡工程は攪拌装置の付いた円筒形の予備発泡装置を用いて行い、加熱後の予備発泡粒子は送風機によってサイロと呼ばれる通気性の良い布袋に送り、室温下で一定時間貯蔵する。そして、発泡倍率を80〜140倍まで高倍率で発泡させる場合は、予備発泡を2回以上に分けて行い、貯蔵後の予備発泡粒子を、予備発泡装置を用いて再度発泡させる。
得られた予備発泡粒子を型内発泡成形用金型装置に充填後、蒸気を圧入して予備発泡粒子同士を熱融着させることで、発泡倍率が80〜140倍で、融着率が90%以上の型内発泡成形体を得る。
次いで、2段予備発泡粒子を用いて成形した型内発泡成形体に対して圧縮処理を行う。
この圧縮処理では、型内発泡成形体に圧縮荷重をかけ、元の厚さの70〜30%となるように圧縮する。また、圧縮条件として、荷重を開放した後1分後の発泡成形体の復元率が、元の厚さの90〜97%となるように調整する。
なお、圧縮手段としては、高圧プレス機やロールプレス機が用いられて圧縮加工が行われる。
このようにポリスチレン系樹脂を発泡倍率が80〜140倍で、融着率が90%以上の型内発泡成形体を得たのち、圧縮処理を行って復元させることで、ポリスチレン系樹脂発泡体に柔軟性を付与することができ、曲げ強さ(JISK7221−2)が70〜120kPaの範囲で、曲げ弾性率(JISK7221−2)が1000〜4000kPaの範囲のポリスチレン系樹脂発泡体とすることができる。なお、復元後のポリスチレン系樹脂発泡体の発泡倍率は、型内発泡成形体よりも若干小さくなる傾向にあるが、発泡倍率は80〜140倍の範囲となる。
したがって、ブロック状、板状に成形されたポリスチレン系樹脂発泡体を用途に応じて設計された形状、例えばコーナーパッド等の形状に合わせて熱線や抜き型により加工することで、梱包用緩衝材とすることができる。
圧縮成形による場合と同様に、2段発泡させた発泡倍率が80〜140倍の2段予備発泡粒子を用いる。
この2段予備発泡粒子を成形型に充填し、通常の型内発泡成形と同様に、ブローバック工程、真空排気工程を経て、蒸気を用いて加熱する成形工程の総加熱時間を調整して融着率が90%以上の発泡成形体としたのち、水冷と空冷を行って冷却する。
さらに、発泡成形体を成形型に入れたままの状態で、低圧蒸気を用いて再加熱時間を調整して再加熱し、成形型内の発泡成形体に収縮変形が生じるようにした後、真空放冷時間を調整して真空放冷を行って型内から取り出す(脱型)。
そして、成形型内から取り出した圧縮変形が生じている発泡成形体を温度が40〜70℃、好ましくは50℃以上に保たれた乾燥室内で4〜72時間、好ましくは24間程度乾燥する。
すると、高温に保たれた乾燥室に保持することで、収縮変形した発泡成形体の残留ひずみが除去され、ほぼ元の形状に復元される。
したがって、型内発泡成形の成形型を用途に応じて設計された形状、例えば複雑な形状に合わせておくことで、複雑な形状の梱包用緩衝材とすることができる。
[実施例1]
まず、発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡倍率100倍以上に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を室温で24時間以上熟成させた後、型物成形機(DAISEN株式会社製、VS300)を使用して、0.12MPaの蒸気圧力で30秒以上の加熱工程を加え、冷却後に金型から取り出し、型内発泡成形体を得る。
得られた型内発泡成形体から縦300mm×横300mm×厚さ50mmの試験体を作成し、高圧プレス機を使い、縦300mm×横300mmの面に対して約4トンの圧縮荷重を加えた状態で60秒間保持する。
この後、圧縮荷重を取り除いて復元された発泡粒子で構成されるポリスチレン系樹脂発泡成形体に対し、フォーム状態、発泡倍率、曲げ強さ(JISK7221−2)、曲げ弾性率(JISK7221−2)、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価し、その結果を表1に示した。
発泡倍率=1/密度(g/cm3)
なお、密度は、JISA9511に準拠して測定した値である。
〔最大加速度〕
○ 最大加速度が55G以下
△ 最大加速度が56G以上75G以下
× 最大加速度が76G以上
〔融着率〕
◎ 融着率が90%以上
○ 融着率が70%以上90%未満
△ 融着率が50%以上70%未満
〔割れ性〕
◎ 柔軟性に優れ、大きなたわみ量でも割れない
○ 柔軟性を有し、多少のたわみ量でも割れない
△ 柔軟性に欠け、小さなたわみ量で割れてしまう
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡倍率100倍以上に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を室温で24時間以上熟成させた後、型物成形機(DAISEN株式会社製、VS300)を使用して、以下の成形条件でポリスチレン系樹脂発泡成形体を作成した。
成形条件
成形蒸気圧:ゲージ圧0.12MPa、原料充填時間:11秒、ブローバック時間:3秒、真空排気時間:2秒、加熱時間:82秒、水冷時間:10秒、空冷時間:9秒として型成形を行った。
この後、脱型せずに、再加熱蒸気圧:ゲージ圧0.02MPaで、再加熱時間:1200秒、真空放冷時間:600秒として再加熱を行った。
この後、成形金型から脱型した発泡成形体を50℃以上に保たれた乾燥室に24時間保持して、収縮・変形した発泡成形体をほぼ元の形状に復元させた。
得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体に対し、フォーム状態、発泡倍率、曲げ強さ(JISK7221−2)、曲げ弾性率(JISK7221−2)、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価し、その結果を表1に示した。
この実施例2のポリスチレン系樹脂発泡成形体では、フォーム状態は良好であり、発泡倍率は106倍、曲げ強さは113kPa、曲げ弾性率は1399kPa、衝撃作用時間は20.6ms、最大加速度は55G以下の○、融着率は90%以上の◎、割れ性は良好の○であった。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡倍率110倍以上に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を室温で24時間以上熟成させた後、型物成形機(DAISEN株式会社製、VS300)を使用して、以下の成形条件でポリスチレン系樹脂発泡成形体を作成した。
成形条件
成形蒸気圧:ゲージ圧0.12MPa、原料充填時間:11秒、ブローバック時間:3秒、真空排気時間:2秒、加熱時間:82秒、水冷時間:10秒、空冷時間:9秒として型成形を行った。
この後、脱型せずに、600秒間の真空放冷を行った。
この後、成形金型から脱型した発泡成形体を50℃以上に保たれた乾燥室に24時間保持して、収縮・変形した発泡成形体をほぼ元の形状に復元させた。
得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体に対し、フォーム状態、発泡倍率、曲げ強さ(JISK7221−2)、曲げ弾性率(JISK7221−2)、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価し、その結果を表1に示した。
この実施例3のポリスチレン系樹脂発泡成形体では、フォーム状態は良好であり、発泡倍率は115倍、曲げ強さは74kPa、曲げ弾性率は1072kPa、衝撃作用時間は20.7ms、最大加速度は55G以下の○、融着率は90%以上の◎、割れ性は良好の○であった。
実施例1と同様にして、ポリスチレン系樹脂発泡体として発泡倍率が100倍の発泡成形体を作成し、その後の圧縮処理や復元を行わないものを用意した。
得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体に対し、フォーム状態、発泡倍率、曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価し、その結果を表1に示した。
この比較例1のポリスチレン系樹脂発泡成形体では、フォーム状態は良好であり、発泡倍率は107倍、曲げ強さは129kPa、曲げ弾性率は4407kPa、衝撃作用時間は18.2ms、最大加速度は56G以上75G以下の△、融着率は90%以上の◎、割れ性はやや劣る△であった。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡倍率50倍以上に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を室温で24時間以上熟成させた後、型物成形機(DAISEN株式会社製、VS300)を使用して、0.12MPaの蒸気圧力で30秒以上の加熱工程を加え、冷却後に金型から取り出し、ポリスチレン系樹脂発泡体として発泡倍率が50倍の発泡成形体を作成し、その後の圧縮処理や復元を行わないものを用意した。
得られたポリスチレン系樹脂発泡成形体に対し、フォーム状態、発泡倍率、曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価し、その結果を表1に示した。
この比較例2のポリスチレン系樹脂発泡成形体では、フォーム状態は良好であり、発泡倍率は52倍、曲げ強さは285kPa、曲げ弾性率は12316kPa、衝撃作用時間は3.6ms、最大加速度は76G以上の×、融着率は70以上90%未満の○、割れ性はやや劣る△であった。
ポリスチレン・ポリオレフィン共重合体樹脂粒子を発泡倍率50倍以上に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を室温で24時間以上熟成させた後、型物成形機(DAISEN株式会社製、VS300)を使用して、0.12MPaの蒸気圧力で30秒以上の加熱工程を加え、冷却後に金型から取り出し、ポリスチレン・ポリオレフィン複合樹脂発泡体として発泡倍率が50倍の発泡成形体を作成し、その後の圧縮処理や復元を行わないものを用意した。
得られたポリスチレン・ポリオレフィン複合樹脂発泡成形体に対し、フォーム状態、発泡倍率、曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価し、その結果を表1に示した。
この比較例3のポリスチレン・ポリオレフィン複合樹脂発泡成形体では、フォーム状態は良好であり、発泡倍率は51倍、曲げ強さは248kPa、曲げ弾性率は10550kPa、衝撃作用時間は15.5ms、最大加速度は56G以上75G以下の△、融着率は90%以上の◎、割れ性は良好の◎であった。
発泡性ポリスチレン系樹脂粒子を発泡倍率50倍以上に予備発泡させ、得られた予備発泡粒子を室温で24時間以上熟成させた後、型物成形機(DAISEN株式会社製、VS300)を使用して、実施例2と同様の成形条件でポリスチレン系樹脂発泡成形体を作成した。
しかし、得られたポリスチレン樹脂発泡成形体では、完全に復元できず、収縮状態となり、発泡倍率、曲げ強さ、曲げ弾性率、衝撃作用時間、最大加速度、融着率、割れ性について測定・評価することができなかった。
また、落下衝撃試験では、衝撃作用時間が長くなることで、より大きな落下衝撃を緩和することができ、短くなると、衝突箇所の局部的な破損を招くおそれがあるが、実施例1〜3では、衝撃作用時間が比較例1よりも10%以上長くなり、最大加速度(G)も減少したことから、衝撃吸収性が増加したことが確認された。
融着率と割れ性について、発泡倍率を高くしたにもかかわらず、融着度を高くしたことで、割れ性を同一発泡倍率の従来のポリスチレン樹脂発泡体(比較例1)に比べ向上できたことが確認された。
また、実施例1〜3は、低発泡倍率の比較例2、及びポリスチレン・ポリオレフィン複合樹脂発泡体の比較例3と比べても、柔軟性に優れるとともに、衝撃作用時間が長く、最大加速度(G)も減少し、割れ性も同等以上に向上できた。
また、比較例4では、発泡倍率が低く、そのため復元が生じなかったものと考えられる。
Claims (2)
- 発泡倍率が80〜140倍で融着率が90%以上であり、曲げ強さ(JISK7221−2)が70〜120kPaで、曲げ弾性率(JISK7221−2)が1000〜4000kPaであることを特徴とするポリスチレン系樹脂発泡体。
- 前記ポリスチレン系樹脂発泡体で梱包用緩衝材を構成したことを特徴とする請求項1に記載のポリスチレン系樹脂発泡体。
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