JP2015040161A - タングステン化合物の回収方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】タングステンを含有する被処理物から、麹菌を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステン化合物を回収する。【解決手段】タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、タングステン化合物溶液に麹菌を投入し、タングステン化合物溶液を酸性に調整して麹菌にタングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、タングステン化合物イオンを吸着した麹菌を回収し、洗浄する回収洗浄工程とを有するタングステン化合物の回収方法である。【選択図】 図1

Description

本発明は、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物のタングステン成分を簡単な処理工程で効率良く回収するタングステン化合物の回収方法に関する。
超硬質合金は、超硬質な性質に基づいて切削工具などに多く使用されているが、タングステン、コバルト、タンタル、ニオブなどの高価な希少元素を含んでいるので、そのスクラップから上記希少元素をできるだけ多く回収することが望まれている。
スクラップ超硬工具のリサイクル方法は、大きく分けて固形のスクラップを構成成分のまま粉末に再生する直接法と、スクラップを化学的に溶解し、後に構成成分毎に分離回収する間接法の二つに分類される。
直接法の代表例は亜鉛処理法である(たとえば、特許文献1を参照)。この方法は化学薬品や水溶液を使用せず、亜鉛も回収再利用が可能で、エネルギー消費も少ない点で優れおり、処理設備への投資額もあまり大きくなく、小規模で工業生産が成り立つ利点がある。しかし、直接法ではスクラップがそのままの組成で回収されるため、予め選別をしっかりと行う必要があり、選別コストが負担となって、プロセスコストの利点を減じている。また、生産比率が高い切削工具の被覆層成分が同時に回収されるため再生材の品質が低下する問題がある。その為、新粉に混ぜて使用する必要がある等、適用制限があるのが大きな問題であり、適用範囲を拡大できる用途を同時に開発することが課題となっている。
間接法である湿式化学処理法では、スクラップのリサイクル工程に鉱石精錬のプロセスを適用させる方法が一般的である(たとえば、特許文献2を参照)。超硬合金のスクラップはWC、Coを主成分とするため、図3に示すように、アルカリ抽出法やアルカリ溶解法によりNaWOの水溶液を作製し、超硬合金の添加元素として含まれるCo、Ti、Ta、Nb、Cr、V等のタングステン以外の不純物を、pH調整や硫化などにより難溶性の化合物として沈殿させ、ろ過して除去する。ろ過したNaWOの水溶液から、タングステン分離抽出し、アンモニアを加えて加熱、濃縮することによりパラタングステン酸アンモニウム(APT)を晶析し、これを熱分解することにより酸化タングステンを精製する。
なお、アルカリ抽出法は、スクラップを予め酸化焙焼した後にNaOH水溶液でアルカリ抽出するものであり、研削スラッジなどの粉状のソフトスクラップの処理に適している。一方、アルカリ溶解法は、スクラップをNaNO、NaSO、NaCO等のナトリウム塩の溶融塩を用いて酸化すると同時に溶解するものであり、固形のハードスクラップの処理に適している。
アルカリ溶解法を用いた従来工法では、たとえば酸化タングステンを得るために以下のようなプロセスが行われている。
(1)溶融塩溶解により生成したNaWOを水に溶解してNaWO水溶液を得る。なお、鉱石精錬では鉱石中に含まれるSiO、As、P、Mo等も溶解されるので、pH調整や硫化などの方法によりこれらの不純物を難溶性の化合物として沈殿させ、濾過して除去する。また、廃超硬工具のリサイクルでは、超硬合金の添加元素として含まれるCo、Ti、Ta、Nb、Cr、V等のタングステン以外の不純物を、pH調整や硫化などの方法により難溶性の化合物として沈殿させ、ろ過して除去する。
(2)NaWO水溶液にCaClを加え、CaWOの沈殿を形成し、このCaW
のスラリーを水洗してNa成分を除去する。
(3)CaWOのスラリーにHClを加え、タングステン酸(HWO)の沈殿を生成し、このHWOスラリーを水洗してCaイオンを除去する。
(4)HWOにNHOHを加え、(NHWOの水溶液を生成する。
(5)この水溶液を加熱・濃縮することにより、パラタングステン酸アンモニウム(APT)を晶出させる。
(6)APTを熱分解して酸化タングステン(WO)を得る。
なお、NaWO水溶液を(NHWO水溶液に変換する工程として、溶媒抽出法やイオン交換法なども行われている。
湿式化学処理法を用いた場合、亜鉛処理法とは異なり鉱石精錬と同等の品質が得られ、リサイクルしたタングステンを利用制限なしに再使用できる利点がある。
特公平03−020445号公報 特開2004−002927号公報
しかしながら、このような従来工法では、NaWOの水溶液から酸化タングステンを化学的に精製する過程で、種々の化学薬品や水、イオン交換樹脂などを多量に必要とし、工数も多く煩雑なため、環境への負荷とエネルギー消費が多いという問題があった。また廃液量も多く、大規模な廃液処理設備や、イオン交換樹脂の再生工程なども必要となるという問題があった。
本発明は、従来の湿式化学処理法における上記のような問題を解決するものであり、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物から、微生物を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ、効率良くタングステン化合物を回収できるタングステン化合物の回収方法を提供することを目的とする。
本発明のタングステン化合物の回収方法は、タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン溶液を得る工程と、前記タングステン溶液に麹菌を投入し、前記タングステン溶液のpHを酸性に調整して前記麹菌に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、前記タングステン化合物イオンを吸着した前記麹菌を回収し、洗浄する回収洗浄工程とを有することを特徴とするものである。
本発明のタングステン化合物の回収方法によれば、超硬工具などのタングステンを含有する被処理物から麹菌を使用した簡単な処理工程で環境負荷を低減しつつ効率良くタングステン化合物を回収できる。
本発明の第1の実施形態であるタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。 本発明の第2の実施形態であるタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。 従来のタングステン化合物の回収方法の概略を示すフローチャートである。
(第1の実施形態)
以下、本発明の第1の実施形態として、図1に基づいて、超硬質合金スクラップから酸化タングステンを回収する方法について具体的に説明する。超硬質合金スクラップとは、金属タングステンや炭化タングステン(WC)等を主成分とする超硬質合金を用いた超硬工具の製造工程において生じるスクラップや使用済み工具などのハードスクラップのほか、研削スラッジなどの粉状のソフトスクラップが挙げられる。一般に超硬工具は、金属タングステンや炭化タングステン等の複合炭化物を主体とし、鉄、ニッケル、コバルト、銅などを結合相とし、必要に応じて添加物成分としてTiC、TaC、NbC、VC、Cr等を含む超硬合金によって製造されており、具体的には、切削工具(チップ、ドリル、エンドミル等)、金型(成形ロール、成形型等)、土木鉱山用工具(石油掘削用工具、岩石粉砕用工具等)などがある。
まず、このような超硬質合金スクラップの金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る。この時、予め酸化焙焼したスクラップをたとえばNaOH水溶液でアルカリ抽出してもよいし、NaNO、NaSO、NaCO等のナトリウム塩の溶融塩を用いて酸化すると同時に溶解するアルカリ溶解法を用いてもよい。たとえば、ソフトスクラップは反応性が高く制御が難しいためアルカリ抽出法を用いることが好ましく、ハードスクラップは酸化焙焼により表面部分しか酸化できないため、アルカリ溶解法を用いることが好ましい。
このようにして得られたタングステン化合物溶液に、麹菌を投入する。麹菌としては、たとえば、酒類(日本酒、焼酎)を製造する際に使用する麹菌や、味噌、醤油、みりん等の食品類を製造する際に用いられる麹菌が好適に使用できる。中でも、焼酎かすは、アルコール飲料などを製造する工程からの廃棄物として存在するために、資源の有効活用ができるとともに非常に安価に入手でき管理も容易であるため、さらに低コストでタングステンの回収を実現できる。
また、麹菌は胞子と菌糸を有するが、胞子および菌糸のどちらもタングステン化合物イオンを吸着することができる。
たとえば、タングステン濃度を0.1〜10mmol/l(アルカリ溶液1リットルに対して、タングステン濃度が0.1〜10mmol)に調整したタングステン化合物溶液に、麹菌を麹菌濃度1×1014〜1×1017cells/mとなるように投入する。温度は麹菌の活動温度に応じて調整すればよく、室温で構わないが、温度を50〜70℃に高めることによって、タングステン化合物イオンの吸着速度が速くなる。麹菌を投入したタングステン化合物溶液を、塩酸などを添加して酸性に調整することで、麹菌の表面にアニオンであるタングステン化合物イオンを吸着させる(吸着工程)。
ここで、本実施形態では、実験の結果、E.coli等のバクテリアよりも麹菌のほうが、短い反応時間でタングステン化合物イオンを吸着し、かつ麹菌の細胞1つ当たりが吸着できるタングステン量が増すことがわかっている。そのため、麹菌のほうがバクテリアよりもタングステン化合物イオンの回収効率が高い。また、麹菌は、E.coliに比べてタングステン化合物イオンの吸着速度が速い。そのために、回収処理にかかる時間を短縮できるというメリットがある。
次に、タングステン化合物イオンを吸着した麹菌を、遠心分離等の手段により脱水し、純水洗浄するなどして不純物を除去(回収洗浄工程)することで、容易にタングステン化
合物を濃縮することができる。その後、たとえばタングステン化合物イオンを吸着した麹菌を、たとえば大気中で300℃以上の温度で焼却するなどしてタングステン化合物を酸化することで、酸化タングステンが得られる。また、たとえば還元雰囲気にて500℃以上の温度で熱処理することで、タングステン化合物を還元・炭化して炭化タングステンを得ることができる。
このように、本実施形態では、多段階の工程や多量の薬品が必要であった溶媒抽出法や溶離工程や樹脂の再生工程が必要なイオン交換法などのタングステンの分離抽出工程、およびそれに続くAPT化工程に替えて、微生物を用いた吸着法(バイオソープション)を利用することにより、工数を低減することができると同時に、使用する薬品量や廃液量が少ないため低コストでタングステン化合物を回収することができる。特に、酵母はアルコール飲料などを製造する工程からの廃棄物として非常に安価に入手でき管理も容易なため、麹菌として酵母を用いることで、さらに低コストのタングステン化合物回収工程を実現できる。
なお、吸着工程におけるタングステン化合物溶液のpHは酸性(7未満)、特に4以下、さらに好ましくは1〜3とすることで、タングステン化合物の回収率を高めることができる。
(第2の実施形態)
次に、本発明の第2の実施形態として、図2に基づいて、超硬質合金スクラップから酸化タングステンを回収する方法について具体的に説明する。
第1の実施形態と大きく異なる点は、投入した麹菌を回収し、再利用する点である。最初に、第1の実施形態と同様に、超硬質合金スクラップの金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得、この溶液に麹菌を投入し、麹菌を投入したタングステン化合物溶液を、塩酸などを用いて酸性に調整することにより、麹菌の表面にタングステン化合物イオンを吸着させる(吸着工程)。
次に、タングステン化合物イオンを吸着した麹菌を、遠心分離等の手段により脱水するとともに不純物を除去(回収洗浄工程)することで、タングステン化合物イオンを吸着した麹菌を濃縮する。その後、濃縮したタングステン化合物イオンを吸着した麹菌を純水などの脱離用液に投入して懸濁液を作成し、この懸濁液にNHCl等のアンモニア溶液を加えることにより懸濁液を中性またはアルカリ性にする。懸濁液を中性またはアルカリ性、たとえばpH7以上にすることにより、タングステン化合物イオンが麹菌から脱離用液中に脱離する。このとき、懸濁液をpH10以上とすることにより3分以内に80%以上のタングステン化合物イオンを麹菌から脱離させることができる。ここで、タングステン化合物イオンが脱離した麹菌は、回収して再利用することができる。
次に、麹菌と、この麹菌から離脱したタングステン化合物イオンとを含む懸濁液を遠心分離やフィルターろ過を行うことにより、麹菌と、タングステン化合物イオンを含む脱離用液とに分離する。
その後、タングステン化合物イオンを含む脱離用液を加熱濃縮することにより、タングステン化合物をパラタングステン酸アンモニウム(APT)として晶析させる。その後、ATPを熱分解することにより、ATPを酸化して酸化タングステンを得ることができる。また、さらに得られた酸化タングステンを還元雰囲気中で熱処理して炭化することにより、炭化タングステンを得ることができる。
このように、第2の実施形態においては、多段階の工程や多量の薬品が必要であった溶
媒抽出法や溶離工程や樹脂の再生工程が必要なイオン交換法などのタングステンの分離抽出工程に替えて、微生物を用いた吸着法(バイオソープション)および脱着法(デソープション)を利用することにより、工数を低減することができると同時に、使用する薬品量や廃液量が少ないため低コストでタングステン化合物を回収することができる。また、第2の実施形態においては、麹菌を再利用することができるので、麹菌の廃棄に係るコストが不要になる他、麹菌の調達費用(培養)、大量保管も低減することができる。
使用済の超硬合金製の切削インサートを粉砕して酸化焙焼し、酸化焙焼された既焙焼物をアルカリ溶液(NaOH水溶液)に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解した表1の濃度(W濃度と記載)のタングステン化合物含有溶液を得た。溶液の温度は23℃とした。このタングステン化合物含有溶液に塩酸(HCl)を添加して表1のpHに調整し、酒造用(焼酎)の麹菌を7×1014cells/mとなるように投入して、溶液を撹拌した。なお、試料No.9については、麹菌の代わりにE.coliを7×1014cells/m投入した。
微生物(麹菌またはE.coli)を投入してから3分後と60分後の溶液中のタングステン濃度を測定し、微生物を投入する前の溶液中のタングステン濃度に対して減じた割合(微生物投入前の溶液中のタングステン濃度−微生物投入後の溶液中のタングステン濃度)/微生物投入前の溶液中のタングステン濃度×100)(%)を微生物がタングステン化合物イオンを吸着したタングステン化合物の回収率(表中、W回収率と記載)として見積もった。結果は表1に示した。
Figure 2015040161
表1の結果から明らかな通り、麹菌を添加し、溶液を酸性にした試料No.1〜7では、タングステン化合物含有溶液中のタングステン濃度が低くなり、麹菌がタングステン化合物イオンを吸着することがわかった。また、タングステン化合物含有溶液のpHとタングステン濃度が同じである試料No.2、9を比較すると、試料No.9のE.coliを用いたものよりも、試料No.2の麹菌を用いたほうが、高タングステン濃度のタングステン化合物含有溶液から短時間で高いタングステン化合物イオンの吸着ができ、その後のタングステン化合物の回収率も高くなることがわかった。

Claims (5)

  1. タングステンを含有する被処理物の金属成分をアルカリ溶液に溶出させ、タングステン化合物イオンが溶解したタングステン化合物溶液を得る工程と、
    前記タングステン化合物溶液に麹菌を投入し、前記タングステン化合物溶液を酸性に調整して前記麹菌に前記タングステン化合物イオンを吸着させる吸着工程と、
    前記タングステン化合物イオンを吸着した前記麹菌を回収し、洗浄する回収洗浄工程と、を有するタングステン化合物の回収方法。
  2. 前記吸着工程において、前記タングステン化合物溶液のpHを1〜4に調整する請求項1記載のタングステン化合物の回収方法。
  3. 前記被処理物が、超硬合金である請求項1または2に記載のタングステン化合物の回収方法。
  4. 前記回収洗浄工程の後に、さらに回収した前記麹菌を乾燥、熱処理してタングステン化合物を得る工程と、を有する請求項1乃至3の何れかに記載のタングステン化合物の回収方法。
  5. 前記回収洗浄工程の後に、さらに回収した前記麹菌を、脱離用液に投入して中性またはアルカリ性に調整し、前記麹菌から前記タングステン化合物イオンを脱離させる工程と、前記脱離用液から前記麹菌を分離し、前記脱離用液中の前記タングステン化合物イオンを熱分解してタングステン化合物を得る工程と、を有する請求項1乃至4のいずれか記載のタングステン化合物の回収方法。
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JP2015045041A (ja) * 2013-08-27 2015-03-12 京セラ株式会社 タングステン化合物の回収方法
WO2024180901A1 (ja) * 2023-03-01 2024-09-06 京セラ株式会社 タングステン粉末及び炭化タングステン製品の製造方法

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