JP2015038044A - ベンゾジフラン誘導体及び有機薄膜トランジスタ - Google Patents

ベンゾジフラン誘導体及び有機薄膜トランジスタ Download PDF

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Abstract

【課題】 高いキャリア移動度、高耐熱性及び高溶解性を持つ塗布型の有機半導体材料である新規なベンゾジフラン誘導体及びこれを用いた有機半導体層を提供する。
【解決手段】 下記一般式(1)で示されるベンゾジフラン誘導体。
【化1】
Figure 2015038044

(ここで、置換基R及びRは同一又は異なって、水素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜14のアリール基、炭素数2〜14のアルキニル基、炭素数2〜14のアルケニル基を示し、T及びTは同一又は異なって、硫黄、酸素を示す。)
【選択図】 なし

Description

本発明は、有機半導体材料等の電子材料への展開が可能な新規なベンゾジフラン誘導体、これを用いた有機薄膜トランジスタに関するものであり、特に溶媒への溶解性に優れることから容易に製膜用の有機半導体溶液への展開が可能となる新規なベンゾジフラン誘導体及びこれを用いた有機薄膜トランジスタに関するものである。
有機薄膜トランジスタに代表される有機半導体デバイスは、省エネルギー、低コスト及びフレキシブルといった無機半導体デバイスにはない特徴を有することから近年注目されている。この有機半導体デバイスは、有機半導体層、基板、絶縁層、電極等の数種類の材料から構成され、中でも電荷のキャリア移動を担う有機半導体層は該デバイスの中心的な役割を有している。そして、有機半導体デバイス性能は、この有機半導体層を構成する有機半導体材料のキャリア移動度により左右されることから、高キャリア移動度を与える有機半導体材料の出現が所望されている。
また、有機半導体層を作製する方法としては、高温真空下、有機材料を気化させて実施する真空蒸着法、有機材料を適当な溶媒に溶解させその溶液を塗布する塗布法、等の方法が一般的に知られている。そして、塗布法においては、塗布は高温高真空条件を用いることなく印刷技術を用いても実施することができる。そのため、塗布法は印刷によりデバイス作製の大幅な製造コストの削減を図ることができることから、経済的に好ましいプロセスである。そして、このような塗布法に使用される有機半導体材料は、低分子系、高分子系があるが、1.0cm/Vsを超えるキャリア移動度を得ることができる低分子系材料の方が好ましい。さらに室温で1.0重量%以上の溶解度を持ち、130℃以上の耐熱性も合わせ持つことがデバイス作製のプロセス上の観点から好ましい。しかし、高キャリア移動度、高溶解性、及び高耐熱性を兼ね合わせた低分子系の有機半導体材料は知られていないのが現状である。
そして、低分子系材料としては、例えば、ビス((トリイソプロピルシリル)エチニル)ペンタセン(例えば非特許文献1参照。)、ジアルキル置換ベンゾチエノベンゾチオフェン(例えば特許文献1参照。)、ジアルキルジチエノベンゾジチオフェン(例えば特許文献2参照。)、等が提案されている。
再公表特許WO2008/047896号公報(例えば特許請求の範囲参照。) 特表2011/526588号公報(例えば特許請求の範囲参照。)
ジャーナル オブ ポリマー サイエンス: パートB: ポリマー フィジックス、2006年、44巻、3631〜3641頁
しかし、非特許文献1に記載されたビス{(トリイソプロピルシリル)エチニル}ペンタセンは、塗布膜の移動度が0.3から1cm/Vsであったものが、120℃の熱処理後、0.2cm/Vsへ低下することが報告されている。また、特許文献1に記載されたジアルキル置換ベンゾチエノベンゾチオフェンの場合も、130℃に熱処理するとトランジスタ動作が失われることが報告されている。特許文献2に提案のジヘキシルジチエノベンゾジチオフェンは、ドロップキャスト法により0.112cm/Vsの移動度を示すが、室温での溶媒に対する溶解度に課題を有する。
そこで、高キャリア移動度で高耐熱性及び高溶解性を持つ塗布型の有機半導体材料が所望されており、本発明はこれまでの課題を解決する新規な有機半導体材料を提供することを目的とするものである。
本発明者は、上記課題を解決するため鋭意検討の結果、新規なベンゾジフラン誘導体を用いることにより、高キャリア移動度を与えると共に、高溶解性及び高耐熱性を持つ有機薄膜トランジスタが得られることを見出し、本発明を完成するに到った。
即ち、本発明は、下記一般式(1)で示されることを特徴とするベンゾジフラン誘導体及びそれを用いてなる有機薄膜トランジスタに関するものである。
Figure 2015038044
(ここで、置換基R及びRは同一又は異なって、水素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜14のアリール基、炭素数2〜14のアルキニル基、炭素数2〜14のアルケニル基を示し、T及びTは同一又は異なって、硫黄、酸素を示す。)
以下に本発明を詳細に説明する。
本発明のベンゾジフラン誘導体は上記一般式(1)で示される誘導体であり、置換基R及びRは同一又は異なって、水素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜14のアリール基、炭素数2〜14のアルキニル基、炭素数2〜14のアルケニル基を示し、T及びTは同一又は異なって、硫黄、酸素を示す。
置換基R及びRにおける炭素数1〜12のアルキル基は、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、n−ノニル基、n−デシル基、n−ドデシル基、2−エチルヘキシル基、シクロヘキシル基、シクロオクチル基等のアルキル基である。
置換基R及びRにおける炭素数4〜14のアリール基は、例えば2−フリル基、5−フルオロ−2−フリル基、5−メチル−2−フリル基、5−エチル−2−フリル基、5−(n−プロピル)−2−フリル基、5−(n−ブチル)−2−フリル基、5−(n−ペンチル)−2−フリル基、5−(n−ヘキシル)−2−フリル基、5−(n−オクチル)−2−フリル基、5−(2−エチルヘキシル)−2−フリル基、2−チエニル基、5−フルオロ−2−チエニル基、5−メチル−2−チエニル基、5−エチル−2−チエニル基、5−(n−プロピル)−2−チエニル基、5−(n−ブチル)−2−チエニル基、5−(n−ペンチル)−2−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、5−(n−オクチル)−2−チエニル基、5−(2−エチルヘキシル)−2−チエニル基等のアルキル置換カルコゲノフェン基、フェニル基、p−トリル基、p−(n−ヘキシル)フェニル基、p−(n−オクチル)フェニル基、p−(2−エチルヘキシル)フェニル基等のアルキル置換フェニル基を挙げることができる。
置換基R及びRにおける炭素数2〜14のアルキニル基は、例えばエチニル基、n−プロピニル基、n−ブチニル基、n−ペンチニル基、n−ヘキシニル基、n−ヘプチニル基、n−オクチニル基、n−ノニニル基、n−デシニル基、n−ドデシニル基、{5−(n−ブチル)−2−フリル}エチニル基、{5−(n−ペンチル)−2−フリル}エチニル基、{5−(n−ヘキシル)−2−フリル}エチニル基、{5−(n−ヘプチル)−2−フリル}エチニル基、{5−(n−ブチル)−2−チエニル}エチニル基、{5−(n−ペンチル)−2−チエニル}エチニル基、{5−(n−ヘキシル)−2−チエニル}エチニル基、{5−(n−ヘプチル)−2−チエニル}エチニル基、{4−(n−ヘキシル)フェニル}エチニル基等のアルキニル基である。
置換基R及びRにおける炭素数2〜14のアルケニル基は、例えばエテニル基、n−プロペニル基、n−ブテニル基、n−ペンテニル基、n−ヘキセニル基、n−ヘプテニル基、n−オクテニル基、n−ノネル基、n−デセニル基、n−ドデセニル基、2−{5−(n−ブチル)−2−フリル}エテニル基、2−{5−(n−ペンチル)−2−フリル}エテニル基、2−{5−(n−ヘキシル)−2−フリル}エテニル基、2−{5−(n−ヘプチル)−2−フリル}エテニル基、2−{5−(n−ブチル)−2−チエニル}エテニル基、2−{5−(n−ペンチル)−2−チエニル}エテニル基、2−{5−(n−ヘキシル)−2−チエニル}エテニル基、2−{5−(n−ヘプチル)−2−チエニル}エテニル基、2−{4−(n−ヘキシル)フェニル}エテニル基等のアルケニル基である。
その中でも特に高耐熱性及び高溶解性であることから、炭素数1〜6のアルキル基及び炭素数4〜12のアリール基が好ましく、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基、5−エチル−2−フリル基、5−(n−プロピル)−2−フリル基、5−(n−ブチル)−2−フリル基、5−(n−ペンチル)−2−フリル基、5−(n−ヘキシル)−2−フリル基、5−(n−ヘプチル)−2−フリル基、5−(n−オクチル)−2−フリル基、5−(n−プロピル)−2−チエニル基、5−(n−ブチル)−2−チエニル基、5−(n−ペンチル)−2−チエニル基、5−(n−ヘキシル)−2−チエニル基、5−(n−ヘプチル)−2−チエニル基、5−(n−オクチル)−2−チエニル基が特に好ましい。
及びTは同一又は異なって、硫黄、酸素を示し、好ましくは硫黄である。
本発明のベンゾジフラン誘導体の具体的例示としては、以下のものを挙げることができる。
Figure 2015038044
Figure 2015038044
Figure 2015038044
Figure 2015038044
そして、より好ましいものとしては、ジエチルジチエノベンゾジフラン、ジn−プロピルジチエノベンゾジフラン、ジn−ペンチルジチエノベンゾジフラン、ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフラン、ジn−ヘプチルジチエノベンゾジフラン、ジn−オクチルジチエノベンゾジフラン、ビス(5−エチル−2−フリル)ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−プロピル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ブチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ペンチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ヘキシル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ヘプチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−オクチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン、ビス(5−エチル−2−チエニル)ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−プロピル)−2−チエニル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ブチル)−2−チエニル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ペンチル)−2−チエニル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−ヘキシル)−2−チエニル}ジチエノベンゾジフラン、ビス{5−(n−オクチル)−2−チエニル}ジチエノベンゾジフラン等を挙げることができる。
本発明のベンゾジフラン誘導体の内、T及びTが硫黄である化合物、即ちジチエノベンゾジフランの製造方法としては、該ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。置換基R及びRが炭素数1〜12のアルキル基であるジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する場合、下記(A1)〜(E1)の工程を経る製造方法により、ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造することが好ましい。
(A1)工程;パラジウム触媒の存在下、2,3−ジブロモフランから調製した3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程。
(B1)工程;(A1)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンと硫化ナトリウムを用いたモノ分子内環化反応によりブロモハロモノ環化物を合成する工程。
(C1)工程;触媒として塩化アルミニウムの存在下、(B1)工程により得られたブロモハロモノ環化物と塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ブロモハロモノ環化物のジアシル体を製造する工程。
(D1)工程;(C1)工程により得られたブロモモノ環化物のジアシル体を還元反応に供し、ブロモハロモノ環化物のジアルキル体を製造する工程。
(E1)工程;(D1)工程により得られたブロモハロモノ環化物のジアルキル体をn−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる二つ目の環を形成させる方法に供し、ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する工程。
そして、好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム1に示す。
Figure 2015038044
(ここで、置換基Xはフッ素、ヨウ素を示し、置換基Xはフッ素、臭素を示し、置換基Rは水素、炭素数1〜11のアルキル基を示す。)
ここで、(A1)工程は、パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼンのクロスカップリングにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程である。
3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体は、例えばイソプロピルマグネシウムブロマイド、エチルマグネシウムクロライド、フェニルマグネシウムクロライド等の有機金属試薬を用い、2,3−ジブロモフランの2位の臭素をマグネシウムハライドに交換後、塩化亜鉛と金属交換することで調製することができる。また、該有機金属試薬の代わりにマグネシウム金属を用い、2,3−ジブロモフランのグリニャール試薬を調製することも可能である。2,3−ジブロモフランのグリニャール試薬を調製する条件としては、例えばテトラヒドロフラン(以後、THFと記す。)、ジエチルエーテル、又はN,N−ジメチルホルムアミド(以後、DMFと記す。)等の溶媒中、−50〜100℃の温度範囲内で実施することができる。該グリニャール試薬の溶液に塩化亜鉛を反応させることで3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体を調製することができる。塩化亜鉛はそのままの状態でもよいし、THFあるいはジエチルエーテル溶液であってもかまわない。温度としては、−70℃〜30℃の範囲内で実施できる。
パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼンをクロスカップリングすることにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンを合成することができる。その際のパラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム等を挙げることができ、該触媒の使用量は1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼン1モルに対して0.1〜10モル%が好ましく、反応温度は20℃から80℃が好ましい。
(B1)工程の1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンの硫化ナトリウムによるモノ分子内環化反応は、N−メチルピロリドン(以後、NMPと記す)、DMF等の溶媒中、80〜200℃の温度範囲で実施される。なお、硫化ナトリウムは水和物であっても良い。硫化ナトリウムの使用量は、1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼン1当量に対し0.9から1.5当量が好ましい。
(C1)工程は、触媒として塩化アルミニウムの存在下、ブロモハロモノ環化物と塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ブロモハロモノ環化物のジアシル体を製造する工程である。
該塩化アシル化合物としては、例えば塩化ブタノイル、塩化ペンタノイル、塩化ヘキサノイル、塩化ヘプタノイル、塩化オクタノイル等を挙げることができる。該フリーデルクラフツアシル化反応は、例えばジクロロメタン、1,2−ジクロロエタン、トルエン等の溶媒中、−80〜40℃の温度範囲で行うことができる。塩化アルミニウムの使用量は、ブロモハロモノ環化物1当量に対し1.8から3.5当量が好ましく、塩化アシル化合物の使用量は、ブロモハロモノ環化物1当量に対し1.8から3.0当量が好ましい。
(D1)工程は、ブロモハロモノ環化物のジアシル体を還元反応に供し、ブロモモノ環化物のジアルキル体を製造する工程である。
ブロモハロモノ環化物のジアシル体の還元反応は、例えば還元剤としてヒドラジンを用い、ジエチレングリコール、エチレングリコール又はトリエチレングリコール中、水酸化カリウム又は水酸化ナトリウム存在下、80〜250℃の温度範囲で行うことができる。また、例えば還元剤として水素化ホウ素ナトリウム/塩化アルミニウムを用い、ジエチルエーテル、ジイソプロピルエーテル、メチルターシャリーブチルエーテル又はTHFの溶媒中、−10〜80℃の温度範囲で行うこともできる。水素化ホウ素ナトリウムの使用量は、ブロモハロモノ環化物のジアシル体1当量に対し1.8から8.0当量が好ましく、塩化アルミニウムの使用量は、ブロモハロモノ環化物のジアシル体1当量に対し2.0から6.0当量が好ましい。さらに、例えば還元剤としてトリフルオロ酢酸/トリエチルシランを用い、−10〜40℃の温度範囲で行うこともできる。トリフルオロ酢酸の使用量は、ブロモハロモノ環化物のジアシル体1当量に対し10から50当量が好ましく、トリエチルシランの使用量は、ブロモハロモノ環化物のジアシル体1当量に対し1.8から6.0当量が好ましい。
(E1)工程は、ブロモハロモノ環化物のジアルキル体をn−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる環化反応に供し、ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する工程である。
該環化反応は、THF、ジエチルエーテル等の溶媒中、−80〜30℃の温度範囲で行うことができる。n−ブチルリチウムの使用量は、ブロモハロモノ環化物のジアルキル体1当量に対し1.8から2.8当量が好ましく、ビス(フェニルスルホニル)スルフィドの使用量は、ブロモハロモノ環化物のジアルキル体1当量に対し0.9から1.5当量が好ましい。
また、置換基R及びRが炭素数1〜12のアルキル基であるジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する場合、下記(A2)〜(E2)の工程を経る製造方法により、ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造することもできる。
(A2)工程;パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−亜鉛誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジハロベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンを製造する工程。
(B2)工程;(A2)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼンと硫化ナトリウムを用いたモノ分子内環化反応によりブロモハロモノ環化物を製造する工程。
(C2)工程;(B2)工程により得られたブロモハロモノ環化物をn−ブチルリチウムによるジリチオ化/ビス(フェニルスルホニル)スルフィドによる二つ目の環を形成させる方法で一般式(1)で置換基R及びRが水素である化合物(無置換ジチエノベンゾジフラン)を製造する工程。
(D2)工程;触媒として塩化アルミニウムの存在下、(C2)工程により得られた無置換ジチエノベンゾジフランと炭素数1〜12の塩化アシル化合物とのフリーデルクラフツアシル化反応により、ジチエノベンゾジフランのジアシル体を製造する工程。
(E2)工程;(D2)工程により得られたジチエノベンゾジフランのジアシル体を還元反応に供し、ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する工程。
そして、好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム2に示す。
Figure 2015038044
(ここで、置換基Xはフッ素、ヨウ素を示し、置換基Xはフッ素、臭素を示し、置換基Rは水素、炭素数1〜11のアルキル基を示す。)
該製造方法の(A2)工程から(E2)工程の製造条件は、前記製造方法の(A1)工程から(E1)工程の製造条件を適用することができる。
なお、(B2)工程で硫化ナトリウムの使用量を1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジハロベンゼン1当量に対し1.8から3.5当量とし、NMP、DMF等の溶媒中、120〜200℃の温度範囲で実施する方法で無置換ジチエノベンゾジフランを合成することもできる。
置換基R及びRが炭素数4〜14のアリール基であるジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する場合、置換基R及びRが水素原子である化合物(無置換ジチエノベンゾジフラン)を原料に用い、下記(A3)及び(B3)の工程を経る製造方法により該ジチエノベンゾジフラン誘導体を製造することが好ましい。
(A3)工程;無置換ジチエノベンゾジフランのN−ブロモスクシンイミド(以下、NBSと記す。)、臭素による臭素化でジブロモジチエノベンゾジフランを製造する工程。
(B3)工程;パラジウム触媒の存在下、(A3)工程により得られたジブロモジチエノベンゾジフランと炭素数4〜14のアリール亜鉛誘導体のパラジウム触媒クロスカップリングによりジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する工程。
そして、好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム3に示す。
Figure 2015038044
(ここで、置換基Arは炭素数4〜14のアリール基を示す。)
(A3)工程は、無置換ジチエノベンゾジフランの臭素化であり、臭素化剤として、NBSが好ましく、THF、DMF、クロロホルム、酢酸等の溶媒中、−30〜50℃の温度範囲で実施する。該臭素化反応は遮光下で行うことが好ましい。NBSの使用量は無置換ジチエノベンゾジフラン1当量に対し1.8から3.2当量が好ましい。
(B3)工程のパラジウム触媒クロスカップリングでは、例えばTHF、ジエチルエーテル、又はトルエン等の溶媒中、20〜100℃の温度範囲内で実施することができる。パラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム等を挙げることができ、該触媒の使用量はジブロモジチエノベンゾジフラン1モルに対して0.1〜10モル%が好ましい。炭素数4〜14のアリール亜鉛誘導体の使用量は、ジブロモジチエノベンゾジフラン1当量に対し1.8から3.0当量が好ましい。
置換基R及びRが炭素数2〜14のアルキニル基であるジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する場合、前述の(A3)工程で得られたジブロモジチエノベンゾジフランと炭素数2〜14のアルキン誘導体のパラジウム/ヨウ化銅触媒クロスカップリング(薗頭カップリング)によりジチエノベンゾジフラン誘導体を製造することができる。好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム4に示す。
Figure 2015038044
(ここで、置換基Rは水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基を示す。)
該パラジウム/ヨウ化銅触媒クロスカップリングでは、例えばTHF、トルエン、DMF等の溶媒及びトリエチルアミン、ピリジン等のアミン中、0〜80℃の温度範囲内で実施することができる。パラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム等を挙げることができ、該触媒の使用量はジブロモジチエノベンゾジフラン1モルに対して0.1〜10モル%が好ましい。炭素数2〜14のアルキン誘導体の使用量は、ジブロモジチエノベンゾジフラン1当量に対し1.8から3.0当量が好ましい。
置換基R及びRが炭素数2〜14のアルケニル基であるジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する場合、前述の(A3)工程で得られたジブロモジチエノベンゾジフランと炭素数2〜14のアルケン誘導体のパラジウム触媒クロスカップリング(ヘック反応)によりジチエノベンゾジフラン誘導体を製造することができる。好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム5に示す。
Figure 2015038044
(ここで、置換基Rは水素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基を示す。)
該パラジウム触媒クロスカップリングでは、例えばTHF、トルエン、DMF等の溶媒及びトリエチルアミン、トリプロピルアミン、ピリジン等のアミン中、20〜140℃の温度範囲内で実施することができる。パラジウム触媒としては、例えばテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム等を挙げることができ、該触媒はジブロモジチエノベンゾジフラン1モルに対して0.1〜10モル%の範囲内で使用される。炭素数2〜14のアルケン誘導体の使用量は、ジブロモジチエノベンゾジフラン1当量に対し1.8から3.0当量が好ましい。
また、本発明のジチエノベンゾジフランの製造方法としては、メチルスルフィニル基の分子内環化を利用した下記(A6)〜(C6)の工程を経る製造方法により実施することもできる。
(A6)工程;2位にR置換基を持つフランをn−ブチルリチウムによるリチオ化し、塩化亜鉛、トリメトキシボラン等と反応させることにより5位にメタルを導入した化合物を合成する工程。
(B6)工程;パラジウム触媒の存在下、(A6)工程により得られたフラン化合物と1,4−ジブロモ−2,5−ビス(メチルスルフィニル)ベンゼンのパラジウム触媒クロスカップリングによりビス(メチルスルフィニル)誘導体を製造する工程。
(C6)工程;(B6)工程により得られたビス(メチルスルフィニル)誘導体とトリフルオロメタンスルホン酸及び五酸化二リンと反応させた後、ピリジンで処理する分子内環化反応により一般式(1)のジチエノベンゾジフラン誘導体を製造する工程。
好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム6に示す。
Figure 2015038044
本発明のベンゾジフラン誘導体の内、T及びTが酸素である化合物、即ちジフラノベンゾジフランの製造方法としては、該ジフラノベンゾジフラン誘導体を製造することが可能であれば如何なる製造方法を用いることも可能である。例えば、ジフラノベンゾジフラン誘導体を製造する場合、下記(A7)〜(C7)の工程を経る製造方法により、置換基R及びRが水素であるジフラノベンゾジフラン誘導体を製造することができる。
(A7)工程;パラジウム触媒の存在下、3−ブロモフラン−2−ボロン酸誘導体と1,4−ジブロモ−2,5−ジメトキシベンゼンにより1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼンを製造する工程。
(B7)工程;3臭化ホウ素の存在下、(A7)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼンの脱メチル化により1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンを製造する工程。
(C7)工程;パラジウム触媒の存在下、(B7)工程により得られた1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンの分子内環化により置換基R及びRが水素であるジフラノベンゾジフランを製造する工程。
好ましいより具体的な製造方法を以下の反応スキーム7に示す。
Figure 2015038044
ここで、(A7)工程は、前述の反応スキーム1の(A1)工程と同様の反応条件で実施することができる。
(B7)工程は、3臭化ホウ素の存在下、1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジメトキシベンゼンの脱メチル化により1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンを製造する工程である。
該脱メチル化反応は、例えばジクロロメタン,クロロホルム等の溶媒中、0〜30℃の温度範囲で行うことができる。
(C7)工程は、パラジウム触媒の存在下、1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジヒドロキシベンゼンの分子内環化により置換基R及びRが水素であるジフラノベンゾジフランを製造する工程である。
該分子内環化反応は、例えば酢酸パラジウムを触媒とし、2−ジターシャリーブチルホスフィノビフェニル、2−ジターシャリーブチルホスフィノ−2’−メチルビフェニルを配位子とし、2,6−ジターシャリーブチル−4−メチルフェノールを安定剤として使用し、酢酸カリウムの塩基の存在下、トルエン及びジメトキシエタン等の溶媒中、80〜120℃の温度範囲内で実施することができる。
パラジウム触媒の他の例としてはテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム、ビス(トリフェニルホスフィン)ジクロロパラジウム等を挙げることができる。
なお、該環化反応は、例えば、ジャーナル オブ オルガニック ケミストリィー(米国)、2007年、72巻、5119−5128頁に記載してある方法を用いて実施することもできる。
さらに置換基R及びRが水素以外のジフラノベンゾジフランの製造方法に関しては前述の反応スキーム2から5に記載の方法で導入することが可能である。
さらに、製造したベンゾジフラン誘導体は、カラムクロマトグラフィー等に供することにより精製することができ、その際の分離剤としては、例えばシリカゲル、アルミナ、溶媒としては、ヘキサン、ヘプタン、トルエン、クロロホルム等を挙げることができる。
また、製造したベンゾジフラン誘導体は、さらに再結晶により精製してもよく、再結晶の回数としては好ましくは2〜5回である。再結晶の回数を増やすことで純度を向上させることができる。再結晶に用いる溶媒としては、例えばヘキサン、ヘプタン、オクタン、トルエン、キシレン、クロロホルム、クロロベンゼン、ジクロロベンゼン等を挙げることができ、これらの任意の割合の混合物であってもよい。再結晶法としては、加熱によりベンゾジフラン誘導体の溶液を調製し(その際の溶液の濃度は0.01〜10.0重量%の範囲が好ましく、0.05〜5.0重量%の範囲がより好ましい。)、該溶液を冷却することでベンゾジフラン誘導体の結晶を析出させ単離し、単離する際の最終的な冷却温度は−20〜40℃が好ましい。なお、純度を測定する際には液体クロマトグラフィーにより分析することにより測定することが可能である。
本発明の有機半導体層形成用溶液は、前記ベンソフラン誘導体及び溶媒を含むものであり、該溶液中におけるベンゾフラン誘導体の濃度は、ドロップキャスト法、特にインクジェット法又はスリットコート法による製膜に適したものとなることから、室温で溶媒に対し1.0重量%以上の溶解度を示すものであることが好ましい。
用いる溶媒としては、例えばトルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、ヘキシルベンゼン、オクチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、インダン、テトラリン、アニソール、1,2−ジメトキシベンゼン、1,3−ジメトキシベンゼン、1,2−ジメチルアニソール、2,3−ジメチルアニソール、3,4−ジメチルアニソール等の炭素数7〜14の芳香族炭化水素溶媒;ヘキサン、ヘプタン、オクタン、デカン、ドデカン、テトラデカン等の炭素数6〜14の脂肪族炭化水素溶媒;o−ジクロロベンゼン、クロロベンゼン、トリクロロベンゼン、1,2−ジクロロエタン、1,1,2,2−テトラクロロエタン、クロロホルム、ジクロロメタン等の炭素数1〜7のハロゲン系溶媒;THF、1,2−ジメトキシエタン、ジオキサン等のエーテル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソプロピルケトン、アセトフェノン等のケトン系溶媒;酢酸エチル、γ−ブチロラクトン、シクロヘキサノールアセテート、3−メトキシブチルアセテート等のエステル系溶媒;DMF、NMP等のアミド系溶媒;ジプロピレングリコールジメチルエーテル、ジプロピレングリコールジアセテート、ジプロピレングリコールメチル−n−プロピルエーテル、ジプロピレングリコールメチルエーテルアセテート、1,4−ブタンジオールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,3−ブチレングリコールジアセテート、1,6−ヘキサンジオールジアセテート、エチレングリコールモノメチルエーテルアセテート、プロピレングリコールモノメチルエーテルアセテート、エチレングリコールモノブチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノエチルエーテルアセテート、ジエチレングリコールモノブチルエーテルアセテート等のグリコール系溶媒、等が挙げられ、中でも高沸点の溶液を得ることが可能となることから、トルエン、キシレン、メシチレン、エチルベンゼン、ペンチルベンゼン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、3,4−ジメチルアニソール等の炭素数7〜14の芳香族炭化水素溶媒であることが好ましく、特にメシチレン、シクロヘキシルベンゼン、テトラリン、3,4−ジメチルアニソールであることが好ましい。ここで、室温とは、一般的に常温とも称されるものであり、例えば20〜26℃の温度を挙げることができる。
上記に挙げた溶媒と一般式(1)で示されるベンゾジフラン誘導体を混合し、加熱・攪拌することにより、一般式(1)で示されるベンゾジフラン誘導体を含有する有機半導体層形成用溶液を調製することができる。加熱・攪拌する際の温度は15〜70℃が好ましく、特に好ましくは20〜60℃である。加熱・攪拌する際の一般式(1)で示されるベンゾジフラン誘導体の濃度は、0.1〜10.0重量%であることが好ましい。
なお該溶液は、該ベンゾジフラン誘導体自体が適度の凝集性を有することから比較的に低温で調製することが可能、且つ耐酸化性があることから、塗布法による有機薄膜の製造に好適に適用できる。即ち、雰囲気から空気を除く必要がないことから塗布工程を簡略化することができる。さらに該溶液は、例えばポリスチレン、ポリ−α−メチルスチレン、ポリビニルナフタレン、エチレン−ノルボルネンコポリマー、ポリメチルメタクリレート、ポリトリアリールアミン、ポリ(9,9−ジオクチルフルオレン−コ−ジメチルトリアリールアミン)等のポリマーをバインダーとして存在させることもできる。これらのポリマーバインダーの濃度は、0.1〜10.0重量%であることが好ましく、該溶液は、優れた塗布性を有することから、0.5〜50mPa・sの範囲の粘度にあることが好ましい。
本発明の有機半導体層形成用溶液に含まれるベンゾジフラン誘導体は、高いキャリア移動度を与えることから有機半導体材料としての優れた特徴を有すると共に、溶媒への高い溶解性を有することから、ベンゾジフラン誘導体を含有する有機半導体層形成用溶液をドロップキャスト法、特にインクジェット法、等の方法により容易に効率よく、有機半導体層を形成することが可能となる。
そして、有機薄膜トランジスタは、基板上に、ソース電極及びドレイン電極を付設した有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介し積層することにより得られており、該有機半導体層に本発明のベンゾジフラン誘導体よりなる有機半導体層を用いることにより、有機薄膜トランジスタとすることが可能である。
図1に一般的な有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す。ここで、(A)は、ボトムゲート−トップコンタクト型、(B)は、ボトムゲート−ボトムコンタクト型、(C)は、トップゲート−トップコンタクト型、(D)は、トップゲート−ボトムコンタクト型の有機薄膜トランジスタであり、1は有機半導体層、2は基板、3はゲート電極、4はゲート絶縁層、5はソース電極、6はドレイン電極を示し、本発明のベンゾジフラン誘導体よりなる有機半導体層は、いずれの有機薄膜トランジスタにも適用することが可能である。
そして、基板としては、例えばポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリスチレン、環状ポリオレフィン、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリ(ジイソプロピルマレエート)、ポリエーテルスルホン、ポリフェニレンスルフィド、セルローストリアセテート等のプラスチック基板;ガラス、石英、酸化アルミニウム、シリコン、ハイドープシリコン、酸化シリコン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物等の無機材料基板;金、銅、クロム、チタン、アルミニウム等の金属基板、等を挙げることができる。なお、ハイドープシリコンを基板に用いた場合、その基板はゲート電極を兼ねることができる。
ゲート電極としては、例えばアルミニウム、金、銀、銅、ハイドープシリコン、スズ酸化物、酸化インジウム、インジウムスズ酸化物、クロム、チタン、タンタル、クロム、グラフェン、カーボンナノチューブ等の無機材料;ドープされた導電性高分子(例えばPEDOT−PSS)等の有機材料を挙げることができる。
ゲート絶縁層としては、例えば酸化シリコン、窒化シリコン、酸化アルミニウム、窒化アルミニウム、酸化チタン、二酸化タンタル、五酸化タンタル、インジウム錫酸化物、酸化スズ、酸化バナジウム、チタン酸バリウム、チタン酸ビスマス等の無機材料基板;ポリメチルメタクリレート、ポリメチルアクリレート、ポリイミド、ポリカーボネート、ポリビニルフェノール、ポリビニルアルコール、ポリ(ジイソプロピルフマレート)、ポリ(ジエチルフマレート)、ポリエチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリエーテルスルホン、ポリシクロペンタン、ポリシクロヘキサン、ポリシクロヘキサン−エチレン共重合体、ポリフッ素化シクロペンタン、ポリフッ素化シクロヘキサン、ポリフッ素化シクロヘキサン−エチレン共重合体等のプラスチック材料を挙げることができる。また、これらのゲート絶縁層の表面は、例えばオクタデシルトリクロロシラン、デシルトリクロロシラン、デシルトリメトキシシラン、オクチルトリクロロシラン、オクタデシルトリメトキシシラン、β−フェネチルトリクロロシラン、β−フェネチルトリメトキシシラン、フェニルトリクロロシラン、フェニルトリメトキシシラン等のシラン類;オクタデシルホスホン酸、デシルホスホン酸、オクチルホスホン酸等のホスホン酸類、ヘキサメチルジシラザン等のシリルアミン類で修飾処理したものであっても使用することができる。一般的にゲート絶縁層の表面処理を行うことにより、有機半導体材料の結晶粒径の増大及び分子配向の向上のため、キャリア移動度及び電流オン・オフ比の向上、並びに閾値電圧の低下という好ましい結果が得られる。
ソース電極及びドレイン電極の材料としては、ゲート電極と同様の材料を用いることができ、ゲート電極の材料と同じであっても異なっていてもよく、異種材料を積層してもよい。また、キャリアの注入効率を上げるために、これらの電極材料に表面処理を実施することもできる。例えば、ベンゼンチオール、ペンタフルオロベンゼンチオールを挙げることができる。
そして、有機半導体層として、本発明のベンゾジフラン誘導体よりなる有機半導体層とする際には、例えばスピンコート、キャストコート、インクジェット、スリットコート等のドロップキャスト法;ブレードコート;ディップコート、スクリーン印刷、グラビア印刷、フレキソ印刷、等の方法を用いることが可能であり、中でも容易に効率よく有機半導体層とすることが可能となることから、スピンコート、キャストコート、インクジェット等のドロップキャスト法であることが好ましく、特にインクジェットであることが好ましい。また、その際の有機半導体層の膜厚に制限はなく、好ましくは1nm〜1μm、特に好ましくは10〜300nmである。
また、本発明のベンゾジフラン誘導体を含む有機半導体層は塗布乾燥後、40〜200℃にアニール処理することも可能である。
本発明のベンゾジフラン誘導体は、電子ペーパー、有機ELディスプレイ、液晶ディスプレイ、ICタグ(RFIDタグ)用、圧力センサー等のトランジスタの有機半導体層用途;有機ELディスプレイ材料;有機半導体レーザー材料;有機薄膜太陽電池材料;フォトニック結晶材料等の電子材料に利用することができる。
本発明の新規なベンゾジフラン誘導体は、高いキャリア移動度を与えると共に、高耐熱性及び高溶解性を持つ塗布型の有機半導体材料であり、本発明はこれまでの課題を解決する新規な有機半導体材料を提供することが可能となり、有機薄膜トランジスタに代表される半導体デバイス材料としてその効果は極めて高いものである。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
生成物の同定にはH−NMRスペクトル及びマススペクトルを用いた。なお、H NMRスペクトルは日本電子製JEOL GSX−400(400MHz)を用い、マススペクトル(MS)は日本電子製の(商品名)JEOL JMS−700を用いて、試料を直接導入し、電子衝突(EI)法(70エレクトロンボルト)で測定した。
反応の進行の確認等は薄層クロマトグラフィー、ガスクロマトグラフィー(GC)及びガスクロマトグラフィー−マススペクトル(GCMS)分析を用いた。
ガスクロマトグラフィー分析
装置;島津製作所製、(商品名)GC14B
カラム;J&Wサイエンティフィック社製、(商品名)DB−1,30m
ガスクロマトグラフィー−マススペクトル分析
装置;パーキンエルマー製、(商品名)オートシステムXL(MS部;ターボマスゴールド)
カラム;J&Wサイエンティフィック社製、(商品名)DB−1,30m。
ベンゾジフラン誘導体の純度測定は液体クロマトグラフィー分析を用いた。
装置;東ソー製(コントローラー;PX−8020、ポンプ;CCPM−II、デガッサー;SD−8022)
カラム;東ソー製、(商品名)ODS−100V、5μm、4.6mm×250mm
カラム温度;23℃
溶離液;ジクロロメタン:アセトニトリル=3:7(容積比)
流速;1.0ml/分
検出器;UV(東ソー製、(商品名)UV−8020、波長;254nm)。
合成例1 1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンの合成
1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンはジャーナル オブ アメリカン ケミカル ソサイエティー、1997年、119巻、4578−4593頁に記載されている方法を参考に、以下の様に合成を行った。
メカニカルスターラー付き1lの三口フラスコに過ヨウ素酸16.7g(73.0mmol)及び硫酸525mlを加えた。過ヨウ素酸が溶解した後、ヨウ化カリウム36.4g(219mmol)を少しずつ添加した。その内容物の温度を−30℃に冷却し、1,4−ジブロモベンゼン34.5g(146mmol)を5分間かけて添加した。得られた混合物を−25℃で36時間撹拌した。反応混合物を氷(2Kg)中へ注いだ後、濾過し固体を取り出した。その固体をクロロホルムに溶解させ、5%苛性ソーダ水溶液及び水で洗浄し、有機相を無水硫酸マグネシウムで乾燥した。減圧濃縮後、残渣をクロロホルムから再結晶化し、白色結晶36.0gを得た(収率50%)。
H NMR(CDCl,21℃):δ=8.02(s,2H)。
H NMRスペクトルが文献値と一致したことより、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンが得られたことを確認した。
合成例2 (1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジブロモベンゼンの合成(反応スキーム1、(A1)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に2,3−ジブロモフラン(シグマ−アルドリッチ製)2.950g(13.06mmol)及びTHF(脱水グレード)19mlを添加した。この混合物を−20℃とし、エチルマグネシウムクロライド(シグマ−アルドリッチ製、2.0M)のTHF溶液6.6ml(13.2mmol)を滴下した。−20℃で30分間熟成することで3−ブロモ−2−フリルマグネシウムクロライドを調製した。一方、別の100mlシュレンク反応容器に塩化亜鉛(和光純薬工業製)1.83g(13.4mmol)とTHF(脱水グレード)20mlを添加し、−20℃に冷却した。ここへ、先に調製した3−ブロモ−2−フリルマグネシウムクロライドのTHF溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて投入した。−20℃で、30分間反応後、室温で30分間熟成し、3−ブロモ−2−フリルジンククロライドのTHF溶液を調製した。ここに、合成例1で合成した1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼン2.66g(5.45mmol)、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)32.1mg(0.0278mmol、1,4−ジブロモ−2,5−ジヨードベンゼンに対し0.51モル%)を添加した。60℃で8時間反応を実施した後、容器を水冷し3N塩酸3mlを添加することで反応を停止させた。トルエンで抽出し、有機相を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーで精製し(トルエン)、得られた濃縮物をヘキサン洗浄し、さらにヘプタン/トルエン(=2/1vol%)から再結晶精製し、1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジブロモベンゼンの薄黄色固体1.13gを得た(収率39%)。
H−NMR(CDCl,24℃):δ=7.81(s,2H),7.52(d,J=1.9Hz,2H),6.59(d,J=1.9Hz,2H)。
MS m/z: 527(M+2,67%),525(M,100%),523(M−2,69%),446(M−Br+1,5)。
合成例3 (ジブロモモノ環化物の合成(反応スキーム1、(B1)工程))
窒素雰囲気下、200mlシュレンク反応容器に合成例2で合成した1,4−ジ(3−ブロモフリル)−2,5−ジブロモベンゼン1.02g(1.95mmol)及びNMP(脱水グレード)40mlを添加した。この混合物にすり潰した硫化ナトリウム(無水グレード、和光純薬工業製)189mg(2.42mmol)を添加した。得られた混合物を140℃で5時間加熱した。得られた反応液を氷冷し、1N塩酸5mlを添加することで反応を停止させた。トルエンで抽出し、有機相を水で2回洗浄し、有機相を無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘプタン/トルエン(=2/1vol%))、ジブロモモノ環化物の固体596mgを得た(収率77%)。
H−NMR(CDCl,24℃):δ=8.18(s,1H),7.89(s,1H),7.71(d,J=1.9Hz,1H),7.51(d,J=1.9Hz,1H),6.86(d,J=1.9Hz,1H),6.59(d,J=1.9Hz,1H)。
MS m/z: 400(M+2,51%),398(M,100%),396(M−2,49),319(M−Br+1,18)。
合成例4 (ジブロモモノ環化物のジヘキサノイル体の合成(反応スキーム1、(C1)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に塩化ヘキサノイル(シグマ−アルドリッチ製)158mg(1.17mmol)及びジクロロメタン(脱水グレード)10mlを添加した。この混合物を−25℃に冷却し塩化アルミニウム(和光純薬工業製)165mg(1.23mmol)を添加し、5分間攪拌した。得られた混合物を−70℃に冷却し、合成例3で合成したジブロモモノ環化物191mg(0.479mmol)及びジクロロメタン(脱水グレード)4mlからなる溶液を添加した。2時間かけて−20℃まで昇温させた後、水を添加することで反応を停止させた。ジクロロメタンで抽出し、有機相を水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/ジクロロメタン(=5/1vol%から1/2vol%))、ジブロモモノ環化物のジヘキサノイル体199mgを得た(収率70%)。
H−NMR(CDCl,24℃):δ=8.36(s,1H),7.99(s,1H),7.58(s,1H),7.31(s,1H),2.96(t,J=7.1Hz,2H),2.86(d,J=7.1Hz,2H),1.84−1.68(m,4H),1.44−1.25(m,8H),0.98−0.87(m,6H)。
MS m/z: 596(M+2,56%),594(M,100%),592(M−2,51%)。
合成例5 (ジブロモモノ環化物のジヘキシル体の合成(反応スキーム1、(D1)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例4で合成したジブロモモノ環化物のジヘキサノイル体184mg(0.309mmol)及びトリフルオロ酢酸(和光純薬工業製)0.7mlを添加した。この混合物を氷冷し、トリエチルシラン(東京化成工業製)244mg(2.10mmol)を添加した。室温で18時間反応後、氷冷し、炭酸水素ナトリウム水溶液を添加することで反応を停止させた。トルエンで抽出し、有機相を水で2回洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/トルエン(=15/1vol%)、ジブロモモノ環化物のジヘキシル体119mgを得た(収率68%)。
MS m/z: 568(M+2,50%),566(M,100%),564(M−2,53%)。
実施例1 (ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの合成(反応スキーム1、(E1)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例5で合成したジブロモモノ環化物のジヘキシル体119mg(0.210mmol)及びTHF(脱水グレード)5mlを添加した。得られた混合物を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.66M)のヘキサン溶液0.28ml(0.46mmol)を滴下した。−78℃で10分間反応後、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド(アクロス製)72.3mg(0.230mmol)を添加し、徐々に昇温させた。18時間後、5℃まで上昇したところで、水を添加した。トルエン抽出し、有機相を1回水洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/トルエン(=20/1vol%)、さらにヘキサンから2回再結晶精製を行い、ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの白色結晶53.4mgを得た(収率58%)。
融点:141℃
H−NMR(C,24℃):δ=8.01(s,2H),6.05(s,2H),2.54(t,J=7.2Hz,4H),1.58(m,4H),1.24(m,12H),0.88(t,J=7.2Hz,6H)。
MS m/z: 438(M,100%),367(M−C11,49),296(M−2C11,22)。
合成例6 (ジブロモモノ環化物のジブチル体の合成(反応スキーム1、(C1)及び(D1)工程))
合成例4で塩化ヘキサノイルの代わりに塩化ブタノイルを使用した以外は、合成例4と同様の操作を繰り返してジブロモモノ環化物のジブタノイル体を合成した(収率73%)。
さらに、合成例5でジブロモモノ環化物のジヘキサノイル体の代わりにジブロモモノ環化物のジブタノイル体を用いた以外は合成例5と同様の操作を繰り返してジブロモモノ環化物のジブチル体を合成した(収率60%)。
MS m/z: 512(M+2,55%),510(M,100%),508(M−2,52%)。
実施例2 (ジn−ブチルジチエノベンゾジフランの合成(反応スキーム1、(E1)工程))
実施例1でジブロモモノ環化物のジヘキシル体の代わりに合成例6で得られたジブロモモノ環化物のジブチル体を使用した以外は、実施例1と同様の操作を繰り返してジn−ブチルジチエノベンゾジフランを合成した(収率54%)。
融点:152℃
H−NMR(C,24℃):δ=8.02(s,2H),6.06(s,2H),2.54(t,J=7.2Hz,4H),1.58(m,4H),1.35(m,4H),0.96(t,J=7.2Hz,6H)。
MS m/z: 382(M,100%),339(M−C,45),296(M−2C,20)。
実施例3 (ジチエノベンゾジフランの合成(反応スキーム2、(C2)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に合成例3で合成したジブロモモノ環化物80.0mg(0.200mmol)及びTHF(脱水グレード)5mlを添加した。得られた混合物を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.66M)のヘキサン溶液0.27ml(0.45mmol)を滴下した。−78℃で2分間反応後、ビス(フェニルスルホニル)スルフィド(アクロス製)69.7mg(0.221mmol)とTHF(脱水グレード)3mlからなる溶液を添加し、徐々に昇温させた。18時間後、5℃まで上昇したところで、水を添加した。トルエン抽出し、有機相を1回水洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、得られた残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン/トルエン(=3/1vol%)、さらにヘキサンから1回再結晶精製を行い、ジチエノベンゾジフランの白色固体27.7mgを得た(収率51%)。
H−NMR(C,24℃):δ=7.91(s,2H),7.09(d,J=1.6Hz,2H),6.20(d,J=1.6Hz,2H)。
MS m/z: 270(M,100%)。
実施例4 (ジブロモジチエノベンゾジフランの合成(反応スキーム3、(A3)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に実施例3で合成したジチエノベンゾジフラン50.0mg(0.184mmol)及びTHF(脱水グレード)10mlを添加した。得られた混合物を遮光し、NBS(和光純薬工業製)98.2mg(0.552mmol)を添加した。DMF2mlを添加し、室温で18時間攪拌した。水を添加し、トルエン抽出し、有機相を1回水洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮後、得られた残渣をヘキサンで洗浄し、残渣を真空乾燥し、ジブロモジチエノベンゾジフラン61.4mgを得た(収率78%)。
MS m/z: 430(M+2,56%),428(M,100%),426(M−2,51%)。
実施例5 (ビス{5−(n−ペンチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフランの合成(反応スキーム3、(B3)工程))
窒素雰囲気下、100mlシュレンク反応容器に2−ペンチルフラン(和光純薬工業製)59.2mg(0.429mmol)及びTHF(脱水グレード)4mlを添加した。この混合物を−78℃に冷却し、n−ブチルリチウム(関東化学製、1.66M)のヘキサン溶液0.39ml(0.64mmol)を滴下した。この混合物を0℃まで昇温させた後、再度−78℃に冷却した。一方、別の100mlシュレンク反応容器に塩化亜鉛(和光純薬工業製)72.2mg(0.529mmol)とTHF(脱水グレード)4mlを添加し、−78℃に冷却した。ここへ、先に調製した2−ペンチル−5−フリルリチウムのTHF溶液をテフロン(登録商標)キャヌラーを用いて投入した。室温まで徐々に昇温し、熟成することで2−ペンチル−5−フリルジンククロライドのTHF溶液を調製した。ここに、実施例4で合成したジブロモジチエノベンゾジフラン61.4mg(0.143mmol)、触媒としてテトラキス(トリフェニルホスフィン)パラジウム(東京化成工業製)4.6mg(0.00398mmol、ジブロモジチエノベンゾジフラン1モルに対し2.8モル%)を添加した。60℃で5時間反応を実施した後、容器を水冷し1N塩酸3mlを添加することで反応を停止させた。トルエンで抽出し、有機相を食塩水で洗浄し、無水硫酸ナトリウムで乾燥した。減圧濃縮し、得られた残渣をシリカゲルショートカラムクロマトグラフィーで精製し(トルエン)、得られた濃縮物をヘキサン洗浄し、さらにトルエンから再結晶精製し、ビス{5−(n−ペンチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフランの薄黄色結晶32.5gを得た(収率42%)。
融点;216℃
MS m/z: 542(M,100%),485(M−57,32%)。
実施例6
実施例1で合成したジn−ヘキシルジチエノベンゾジフラン12.6mg及びトルエン(和光純薬工業製ピュアーグレード)617mgを添加し、50℃に加熱溶解後、室温下(25℃)に放冷し、ドロップキャスト有機半導体層形成用溶液を調製した。25℃で10時間後も溶液状態を維持しており(ジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの濃度は2.0重量%)、ドロップキャスト、インクジェットによる製膜に適した化合物であることを確認した。
そして、空気下、直径2インチのヒ素でn型にハイドープしたシリコン基板(セミテック製、抵抗値;0.001〜0.004Ω、表面に200nmのシリコン酸化膜付き)上に、得られたドロップキャスト有機半導体層形成用溶液0.2mlをマイクロシリンジに充填しドロップキャストした。室温下(25℃)で自然乾燥し、膜厚58nmのジn−ヘキシルジチエノベンゾジフランの有機半導体層を作製した。
該有機半導体層にチャネル長30μm、チャネル幅250μmのシャドウマスクを置き、金を真空蒸着することでソース/ドレイン電極対を形成し、ボトムゲート−トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。
作製した有機薄膜トランジスタの電気物性を半導体パラメーターアナライザー(ケースレー4200SCS)を用いて、ドレイン電圧(Vd=−50V)で、ゲート電圧(Vg)を+5〜−60Vまで1V刻みで走査し、伝達特性の評価を行った。正孔のキャリア移動度は0.76cm/V・s、電流オン・オフ比は2.1×10であった。
さらにこの有機薄膜トランジスタを130℃で15分間アニール処理した後の電気物性を測定した。正孔のキャリア移動度は0.69cm/V・s、電流オン・オフ比は1.2×10であり、熱処理による性能の低下はほぼ見られなかった。
実施例7
実施例2で合成したジn−ブチルジチエノベンゾジフラン11.5mg及びトルエン(和光純薬工業製ピュアーグレード)563mgを添加し、50℃に加熱溶解後、室温下(25℃)に放冷し、ドロップキャスト有機半導体層形成用溶液を調製した。25℃で10時間後も溶液状態を維持しており(ジn−ブチルジチエノベンゾジフランの濃度は2.0重量%)、ドロップキャスト、インクジェットによる製膜に適した化合物であることを確認した。
そして、実施例6と同様の方法で、膜厚63nmのジn−ブチルジチエノベンゾジフランの有機半導体層を作製し、さらにボトムゲート−トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。正孔のキャリア移動度は0.53cm/V・s、電流オン・オフ比は1.1×10であった。
さらにこの有機薄膜トランジスタを130℃で15分間アニール処理した後の電気物性を測定した。正孔のキャリア移動度は0.50cm/V・s、電流オン・オフ比は7.8×10であり、熱処理による性能の低下はほぼ見られなかった。
実施例8
実施例5で合成したビス{5−(n−ペンチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフラン10.3mg及びトルエン(和光純薬工業製ピュアーグレード)1.02gを添加し、50℃に加熱溶解後、室温下(25℃)に放冷し、ドロップキャスト有機半導体層形成用溶液を調製した。25℃で10時間後も溶液状態を維持しており(ビス{5−(n−ペンチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフランの濃度は1.0重量%)、ドロップキャスト、インクジェットによる製膜に適した化合物であることを確認した。
そして、実施例6と同様の方法で、膜厚42nmのビス{5−(n−ペンチル)−2−フリル}ジチエノベンゾジフランの有機半導体層を作製し、さらにボトムゲート−トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。正孔のキャリア移動度は0.95cm/V・s、電流オン・オフ比は7.9×10であった。
さらにこの有機薄膜トランジスタを130℃で15分間アニール処理した後の電気物性を測定した。正孔のキャリア移動度は0.88cm/V・s、電流オン・オフ比は5.8×10であり、熱処理による性能の低下はほぼ見られなかった。
比較例1 (ジn−オクチルベンゾチエノベンゾチオフェン)
再公表特許WO2008/047896号公報に記載の方法に従い、ジn−オクチルベンゾチエノベンゾチオフェンを以下の様に合成した。
100mlシュレンク反応容器に2,7−ジ(1−オクチニル)[1]ベンゾチエノ[3,2−b][1]ベンゾチオフェン286mg(0.626mmol)、10%Pd/C(和光純薬工業製)62mg、及びトルエン(和光純薬工業製脱水グレード)10mlを添加した。水素バルーンを取り付け、アスピレーターによる減圧−水素置換を3回繰り返した後、10時間室温で攪拌した。溶媒を減圧で留去し、残渣をシリカゲルカラムクロマトグラフィーで精製し(ヘキサン)、ヘキサン(和光純薬工業製ピュアーグレード)から2回再結晶精製し、ジn−オクチルベンゾチエノベンゾチオフェンの白色固体227mgを得た(収率78%)。
MS m/z: 464(M,100%)。
得られたジn−オクチルベンゾチエノベンゾチオフェン12.2mg及びトルエン(和光純薬工業製ピュアーグレード)0.801gを添加し、50℃に加熱溶解後、室温下(25℃)に放冷し、ドロップキャスト有機半導体層形成用溶液を調製した。25℃で10時間後も溶液状態を維持しており(ジn−オクチルベンゾチエノベンゾチオフェンの濃度は1.5重量%)、ドロップキャスト、インクジェットによる製膜に適した化合物であることを確認した。
そして、実施例1と同様の方法で、膜厚51nmのジn−オクチルベンゾチエノベンゾチオフェンの有機半導体層を作製し、さらにボトムゲート−トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。正孔のキャリア移動度は0.167cm/V・s、電流オン・オフ比は1.3×10であった。
さらにこの有機薄膜トランジスタを130℃で15分間アニール処理した後の電気物性を測定した。しかしトランジスタ動作を得ることはできず、耐熱性に劣る材料であった。
比較例2 (6,13−ビス((トリイソプロピルシリル)エチニル)ペンタセン)
6,13−ビス((トリイソプロピルシリル)エチニル)ペンタセン(シグマ−アルドリッチ製)11.8mg及びトルエン(和光純薬工業製ピュアーグレード)0.775gを添加し、50℃で加熱溶解後室温下(25℃)に放冷し、ドロップキャスト有機半導体層形成用溶液を調製した。25℃で10時間後も溶液状態を維持しており(6,13−ビス((トリイソプロピルシリル)エチニル)ペンタセンの濃度は1.5重量%)、ドロップキャスト、インクジェットによる製膜に適した化合物であることを確認した。
そして、実施例1と同様の方法で、膜厚60nmの6,13−ビス((トリイソプロピルシリル)エチニル)ペンタセンの有機半導体層を作製し、さらにボトムゲート−トップコンタクト型のp型有機薄膜トランジスタを作製した。正孔のキャリア移動度は0.0524cm/V・s、電流オン・オフ比は1.2×10であった。
本発明の新規なベンゾジフラン誘導体は、高いキャリア移動度を与えると共に、溶媒への溶解性及びトランジスタ素子の耐熱性に優れることから有機薄膜トランジスタに代表される半導体デバイス材料としての適用が期待できる。
;有機薄膜トランジスタの断面形状による構造を示す図である。
(A):ボトムゲート−トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(B):ボトムゲート−ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(C):トップゲート−トップコンタクト型有機薄膜トランジスタ
(D):トップゲート−ボトムコンタクト型有機薄膜トランジスタ
1:有機半導体層
2:基板
3:ゲート電極
4:ゲート絶縁層
5:ソース電極
6:ドレイン電極

Claims (6)

  1. 下記一般式(1)で示されることを特徴とするベンゾジフラン誘導体。
    Figure 2015038044
    (ここで、置換基R及びRは同一又は異なって、水素、臭素、ヨウ素、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜14のアリール基、炭素数2〜14のアルキニル基、炭素数2〜14のアルケニル基を示し、T及びTは同一又は異なって、硫黄、酸素を示す。)
  2. 置換基R及びRは同一又は異なって、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数4〜14のアリール基であることを特徴とする請求項1に記載のジチエノベンゾジフラン誘導体。
  3. 及びTは硫黄であることを特徴とする請求項1又は2に記載のベンゾジフラン誘導体。
  4. 請求項1〜3のいずれかに記載のベンゾフラン誘導体及び溶媒を含むことを特徴とする有機半導体層形成用溶液。
  5. 請求項4に記載の有機半導体層形成用溶液により形成されることを特徴とする有機半導体層。
  6. 基板上に、ソース電極及びドレイン電極を付設した請求項5に記載の有機半導体層とゲート電極とを絶縁層を介して積層したものであることを特徴とする有機薄膜トランジスタ。
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