JP2015025101A - アクリル系樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(A)と、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(B)と、重合性二重結合を有し、かつメチルメタクリレート単位を75質量%以上有する重合体(C)と、ワックス(D)とを含有し、前記単量体(A)として、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環及びヒドロピラン環からなる群より選ばれるヘテロ環を有する(メタ)アクリレート(a1)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a2)と、メチルメタクリレート(a3)とを含有することよりなる。
【選択図】なし
Description
不飽和ポリエステル系樹脂は、耐溶剤性に優れるものの、耐候性に劣り、硬化時の収縮が大きく、低温施工性が悪い。
エポキシ系樹脂は、耐アルカリ性に優れ、基材との接着性に優れるものの、耐候性に劣り、硬化時間が長く、低温での硬化性に劣る。
ポリウレタン系樹脂は、弾力性、柔軟性に優れるものの、耐薬品性、耐候性に劣る。
また、被覆剤としては、低温硬化性、耐候性、耐薬品性に優れるビニルエステル系樹脂やアクリル系樹脂がよく用いられている。
ビニルエステル系樹脂及びアクリル系樹脂は、スチレン、メチルメタクリレート等の低分子量の単量体に起因する特有の臭気を有するため、作業時の臭気が問題となっている。
こうした問題に対し、分子量130〜300の単量体とガラス転移温度が20〜155℃の樹脂とを含有するシラップ組成物が提案されている(例えば、特許文献1)。特許文献1の発明によれば、臭気の低減が図られている。
また、耐久性を向上させるために、脂環構造を有しないアクリル系単量体と二重結合を有する重合体とを含むシラップ組成物(例えば、特許文献2)、重合性二重結合を有する(メタ)アクリル系重合体と重合性単量体とを含む樹脂組成物(例えば、特許文献3)が提案されている。
従来の樹脂組成物を湿潤状態の基材に塗工した場合、樹脂組成物の硬化物である塗膜は、基材に対する接着性が不十分であった。特に、表面が複雑な凹凸状態の基材や、表面に亀裂を有する基材の場合、窪みや亀裂部分に水分が存在するので樹脂組成物が基材に浸透しにくく、得られる塗膜の接着性が低下しやすかった。
さらに基材から水分の影響を受けた場合の接着性が著しく低下しやすいものであった。
また、特許文献1及び3に記載の樹脂組成物は、重合体のTgが低いため、高温下での耐久性に劣るという問題があり、特許文献2の樹脂組成物は、引火点が低いため、保管数量の制限がある等、取り扱いにくいという問題があった。
前記単量体(A)と前記単量体(B)と前記重合体(C)との合計100質量%に対し、前記重合体(C)を1〜15質量%含有することが好ましい。
「アクリル系」とは、アクリル系とメタクリル系との総称である。
本発明のアクリル系樹脂組成物は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)とワックス(D)とを含有する
なお、アクリル系樹脂組成物の粘度は、23℃においてJIS−Z8803規定のブルックフィールド型粘度計BM型で計測される溶液粘度である。
なお、フロート板ガラスとの接触角は、後述する単量体(a1)〜(a3)の種類や含有量を調整することで、調節される。
アクリル系樹脂組成物の硬化物のTgは、アクリル系樹脂組成物を重合硬化して厚さ1mmの注型板を作製し、この注型板について粘弾性測定(JIS−K7244−2:1998、「プラスチック−動的機械特性の試験方法−第2部:ねじり振り子法」記載のA法)したときのTgである。
なお、硬化物のTgは、後述する単量体(a1)〜(a3)、単量体(B)及び重合体(C)の種類や含有量を調整することで、調節される。
引火点は、後述する単量体(a1)〜(a3)、単量体(B)の種類や含有量を調整することで、調節される。
単量体(A)は、分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体である。アクリル系樹脂組成物は、単量体(A)として、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環及びヒドロピラン環からなる群より選ばれるヘテロ環を有する(メタ)アクリレート(a1)(以下、単量体(a1)ということがある)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a2)(以下、単量体(a2)ということがある)と、メチルメタクリレート(a3)(以下、単量体(a3)ということがある)とを少なくとも含有する。
単量体(a1)は、分子中に(メタ)アクリロイル基を1個のみ有し、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環及びヒドロピラン環からなる群より選ばれるヘテロ環を有する(メタ)アクリレートである。
単量体(a1)は、アクリル系樹脂組成物の粘度、塗膜の機械的強度等の特性、引火点温度、Tgを調整する成分である。
ヒドロフラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばテトラヒドロフリル(メタ)アクリレート、テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ピラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばピラニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。
ヒドロピラン環を有する(メタ)アクリレートとしては、例えばジヒドロピラニル(メタ)アクリレート、テトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニル(メタ)アクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニル(メタ)アクリレート等が挙げられる。これらの単量体(a1)の中でも、分子量130〜300のものが好ましく、テトラヒドロフルフリルメタクリレート、カプロラクトン変性テトラヒドロフルフリル(メタ)アクリレート、ジメチルジヒドロピラニルメタクリレート、ジメチルテトラヒドロピラニルメタクリレートがより好ましい。
これらの単量体(a1)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
単量体(a2)は、1個の(メタ)アクリロイル基と、1個以上のヒドロキシアルキル基とを有するヒドロキシアルキル(メタ)アクリレートである。
単量体(a2)は、基材に対する接着性を付与する成分である。
これらの単量体(a2)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
単量体(a3)は、メチルメタクリレートである。
アクリル系樹脂組成物中の単量体(a3)の含有量は、単量体(a2)の種類等を勘案して決定され、例えば、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量%に対し、5〜25質量%が好ましく、5〜20質量%がより好ましい。上記下限値以上であれば、アクリル系樹脂組成物の表面硬化性、塗膜の強度を高められる。上記上限値以下であれば、樹脂組成物の引火点を高められる。
アクリル系樹脂組成物は、単量体(A)として、単量体(a1)〜(a3)以外に、(メタ)アクリロイル基を1個のみ有する単量体(以下、単量体(a4)ということがある)を、塗膜の強度等の機械的特性、引火点温度、Tgを損なわない範囲で含有してもよい。
単量体(a4)としては、種々の分子量のものが利用できるが、分子量が130〜300のものが好ましい。
分子量の上限は特に制限されないが、1,000以下が好ましい。
単量体(B)は、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する多官能単量体である。
単量体(B)は、塗膜の機械的強度、耐摩耗性、耐薬品性等を向上させる。
単量体(B)としては、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、1,4−シクロヘキサンジメタノールジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAエチレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAプロピレンオキサイド付加物ジ(メタ)アクリレート、ビスフェノールAジグリシジルエーテル(メタ)アクリル酸付加物が好ましい。
これらの単量体(B)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
加えて、アクリル系樹脂組成物中の単量体(B)の含有量は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量%中、下記(1)式を満たす範囲内であることが好ましい。下記(1)式を満たせば、機械的強度と柔軟性のバランスにより優れた塗膜を形成できる。
(1)式中、「単量体(B)の含有量」は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量%に対する単量体(B)の含有量(質量%)である。「T」は、単量体(B)中の炭素数(ただし、(メタ)アクリロイル基の炭素を除く)の合計である。
重合体(C)は、重合性二重結合を有し、かつメチルメタクリレート単位を75質量%以上有する重合体である。重合体(C)は、ビニル基、アリル基、(メタ)アクリロイル基等のラジカル重合反応に関与する重合性二重結合を有するもので、アクリル系樹脂組成物に硬化性を付与し、アクリル系樹脂組成物の硬化塗膜に機械的強度を付与する成分である。
重合体(C)としては、メチルメタクリレート単位を有するものが好ましい。メチルメタクリレート単位以外には、例えば炭素数2個以上のアルキル基を有する単位、アルキル(メタ)アクリレート単位、その他単官能アクリル系単量体、多官能アクリル系単量体、(メタ)アクリル酸等を含むことができる。
重合体(C)中のメチルメタクリレート単位の含有量は、75質量%以上であり、85質量%以上が好ましく、90質量%以上がより好ましい。重合体(C)中のメチルメタクリレート単位の含有量は、99質量%以下が好ましく、97質量%以下がより好ましい。上記下限値以上であれば、湿熱耐久性を高められる。上記上限値以下であれば、アクリル系樹脂組成物を硬化させたときの熱に対する耐久性を高められる。
第1段階の反応として、メチルメタクリレート(c1)及び他のアクリル系単量体(c2)の1種類以上と、エステル結合やウレタン結合等の結合を形成する反応に関与する第1の官能基を有する単量体とを共重合させて、該第1の官能基を有する第1の共重合体(C’)を得る。次いで第2段階の反応として、前記第1の官能基と反応して結合を生成する第2の官能基及び重合性二重結合を有する第2の単量体と、前記第1の共重合体(C’)とを反応させることにより、重合性二重結合を有する重合体(C)を得る。
前記第1の官能基と第2の官能基の組み合わせとしては、カルボキシル基とグリシジル基、ヒドロキシル基とイソシアネート基等が好ましい。
単量体(c2)としては、メチルアクリレート、エチル(メタ)アクリレート、n−ブチル(メタ)アクリレート、i−ブチル(メタ)アクリレート、t−ブチル(メタ)アクリレート、sec−ブチル(メタ)アクリレート、2−エチルヘキシル(メタ)アクリレート等のアルキル(メタ)アクリレート;イソボロニル(メタ)アクリレート、シクロヘキシル(メタ)アクリレート等のシクロアルキル(メタ)アクリレート;上記の炭素数2個以上のアルキル基を有するアルキル(メタ)アクリレート単位、及びシクロアルキル(メタ)アクリレート単位のいずれにも含まれないアクリル系単位としてグリシジル(メタ)アクリレート、又は(メタ)アクリル酸が好ましい。これらは、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
重合体(C)を構成する単量体として、メチルメタクリレート単位を重合体(C)中に75質量%以上有し、炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレート及び/又はイソボルニル(メタ)アクリレートと、グリシジル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸とを用いることが好ましく、メチルメタクリレートと、グリシジル(メタ)アクリレートと、(メタ)アクリル酸とを用いることがより好ましい。
炭素数2〜4のアルキル基を有するアルキルメタクリレートは、n−ブチルメタクリレート、i−ブチルメタクリレート、t−ブチルメタクリレート、sec−ブチルメタクリレートが好ましく、n−ブチルメタクリレートが特に好ましい。
第1段階の反応においてメチルメタクリレート(c1)及び他のアクリル系単量体(c2)の1種以上と、(メタ)アクリル酸とを懸濁重合してカルボキシル基を有する第1の共重合体(C’)を得る。第2段階の反応において、得られた共重合体(C’)を別のメチルメタクリレート(c1)に加えて溶液とし、該溶液中で共重合体(C’)にグリシジル(メタ)アクリレートをエステル化反応により付加させて重合性二重結合を有する重合体(C)を得る。
この場合、第1段階の反応において懸濁重合する際の重合温度は70〜98℃が好ましく、重合時間は2〜5時間程度が好ましい。第2段階の反応における反応温度は90〜95℃が好ましく、反応時間は1〜4時間程度が好ましい。
また、前記懸濁重合時の懸濁液に、炭酸ナトリウム、硫酸ナトリウム、硫酸マンガン等の電解質を含有させることが好ましい。電解質を含有させることにより、分散安定性を向上させることができる。電解質の使用量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
前記懸濁重合において連鎖移動剤を用いることが好ましい。連鎖移動剤を用いると、単官能アクリル系単量体の重合反応を容易に制御できる。
連鎖移動剤としてチオール化合物が好適に用いられる。チオール化合物は特に限定されず、例えば、t−ブチルメルカプタン、n−オクチルメルカプタン、n−ドデシルメルカプタン等のアルキルメルカプタン;チオフェノールチオナフトール等の芳香族メルカプタン:チオグリコール酸、チオグリコール酸オクチル等のチオグリコール酸アルキル等が挙げられる。連鎖移動剤の添加量や添加方法は適宜設定すればよく、特に限定されるものではない。
なお、本明細書における重量平均分子量は、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と記す。)により測定した分子量をポリスチレン換算したものである。
第2段階の反応においては重合禁止剤を添加してもよい。重合禁止剤を添加すると第2段階の反応をより安定に行うことができる。重合禁止剤としては、ヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール等が挙げられる。これらの重合禁止剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。重合禁止剤の添加量は適宜設定すればよく特に限定されるものではない。
本明細書における酸価の値は、重合体(C)をトルエンに溶解し、フェノールフタレインを指示薬として、0.1NのKOHエタノール溶液を用いて滴定して求めた値である。
加えて、アクリル系樹脂組成物中の重合体(C)の含有量は、下記(2)式の関係を満足する範囲が好ましい。
ワックス(D)は、空気遮断作用を利用した表面硬化性向上等の作用を奏する。
ワックス(D)としては、固形ワックス類が挙げられる。固形ワックス類としては、パラフィン類、ポリエチレン類、ステアリン酸等の高級脂肪酸類等が挙げられる。これらの中でも、パラフィン類が好ましい。
ワックス(D)としては、融点の異なる2種以上を併用することが好ましい。融点の異なる2種以上のワックス(D)を併用すると、アクリル系樹脂組成物を硬化させる際に基材温度が変わっても、十分な空気遮断作用が得られ、表面硬化性が良好となる。併用する際には、融点の差が5℃〜20℃のものを併用することが好ましい。
分散状態のワックス(D)は、有機溶剤を全く含有せずに、単量体(A)、(B)にワックス(D)が分散しているものであってもよい。
アクリル系樹脂組成物は、任意成分として有機過酸化物(E)を含有してもよい。有機過酸化物(E)は重合開始剤の役割を果たす。
有機過酸化物(E)としては、例えばメチルエチルケトンパーオキサイド等のケトンパーオキサイド;1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)−3,3,5−トリメチルシクロヘキサン、1,1−ジ(t−ヘキシルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ジ(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン等のパーオキシケタール;1,1,3,3,−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド等のハイドロパーオキサイド;ジクミルパーオキサイド、ジ−t−ブチルパーオキサイド等のジアルキルパーオキサイド、ジラウロイルパーオキサイド、ジベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド;ジ(4−t−ブチルシクロヘキシル)パーオキシジカーボネート、ジ(2−エチルヘキシル)パーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ヘキシルパーオキシイソプロピルモノカーボネート、t−ブチルパーオキシベンゾエート等のパーオキシエステル等が挙げられる。
有機過酸化物(E)としては、ジベンゾイルパーオキサイド、ハイドロパーオキサイドが好ましい。
有機過酸化物(E)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
アクリル系樹脂組成物中の有機過酸化物(E)の含有量は、アクリル系樹脂組成物の可使時間が5〜90分となるように適宜調整することが好ましい。このように有機過酸化物(E)の含有量を調整し添加することで、添加後すみやかに重合反応が開始され、アクリル系樹脂組成物の硬化が進行する。
アクリル系樹脂組成物は、任意成分として分解促進剤(F)を含有してもよい。分解促進剤(F)は、有機過酸化物(E)の分解を促進させ、硬化反応を促す役割を果たす。
分解促進剤(F)としては、多価金属石鹸(f1)及び3級アミン(f2)から選ばれる1種以上が好ましく、多価金属石鹸(f1)及び3級アミン(f2)を併用するのがより好ましい。
分解促進剤(F)として、多価金属石鹸(f1)及び3級アミン(f2)を併用することで、アクリル系樹脂組成物の硬化時間を短縮して硬化性を高められる。従って、乾燥基材はもちろんのこと、湿潤状態の基材に対しても硬化性に優れた塗膜を形成できる。
多価金属石鹸(f1)としては、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルト、アセトアセチル酸コバルト、ナフテン酸マンガン、オクチル酸ニッケル等が挙げられる。
多価金属石鹸(f1)としては、適度な可使時間及び良好な硬化性を得ることができる等の観点から、ナフテン酸コバルト、オクチル酸コバルトが好ましい。
多価金属石鹸(f1)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
ただし、多価金属石鹸(f1)の含有量が多すぎると、多価金属石鹸(f1)を分散溶解している溶剤量が多くなって、硬化性が低下したり、硬化塗膜の強度が低下したりするおそれがある。従って、多価金属石鹸(f1)の含有量の上限値は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量部に対して、1.0質量部以下が好ましく、0.5質量部以下がより好ましく、0.4質量部以下がさらに好ましい。
なお、本発明において、「多価金属石鹸(f1)の含有量」とは、多価金属石鹸(f1)に由来する金属の含有量のこと、即ち金属換算値である。
3級アミン(f2)としては、アニリン、N,N−ジメチルアニリン、N,N−ジエチルアニリン、N,N−ビス(ヒドロキシエチル)アニリン、ジエタノールアニリン等のN,N−置換アニリン;p−トルイジン、m−トルイジン、N,N−ジメチル−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン、N,N−ビス(2−ヒドロキシプロピル)−p−トルイジン、N−エチル−m−トルイジン等のN,N−置換−p−トルイジン;4−(N,N−ジメチルアミノ)ベンズアルデヒド、4−[N,N−ビス(2−ヒドロキシエチル)アミノ]ベンズアルデヒド、4−(N−メチル−N−ヒドロキシエチルアミノ)ベンズアルデヒド等の4−(N,N−置換アミノ)ベンズアルデヒド;トリエタノールアミン、ジエチレントリアミン等の脂肪族アミン;ピリジン、フェニルモルホリン、ピペリジン等の環状アミン等が挙げられる。
3級アミン(f2)は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
本発明のアクリル系樹脂組成物は、本発明の効果を損なわない範囲で、上述した成分以外の成分を含有してもよい。
その他の成分としては、可塑剤、シランカップリング剤、重合禁止剤、重合性二重結合を有しない樹脂、イソシアネートプレポリマー、エポキシ樹脂、オリゴマー、消泡剤等が挙げられる。
可塑剤は、塗膜の柔軟化及び硬化時の収縮の低減目的で配合されるものである。
可塑剤としては、ジブチルフタレート、ジ−2−エチルヘキシルフタレート、ジイソデシルフタレート等のフタル酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアジペート、オクチルアジペート等のアジピン酸エステル類、ジブチルセバケート、ジ−2−エチルヘキシルセバケート等のセバシン酸エステル類、ジ−2−エチルヘキシルアゼレート、オクチルアゼレート等のアゼラインエステル類等の2塩基性脂肪酸エステル類;塩素化パラフィン等のパラフィン類が挙げられる。
可塑剤は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
アクリル系樹脂組成物中の可塑剤の含有量は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましい。上記上限値以下であれば、アクリル系樹脂組成物の硬化収縮が抑制されるとともに塗膜のTgが下がり過ぎることもない。
シランカップリング剤は、基材に対する接着性の安定化、接着強度の耐久性を付与する役割を果たす。
シランカップリング剤としては、例えば、ビニルトリクロルシラン、ビニルトリス(β−メトキシエトキシ)シラン及びγ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン以外のβ−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、γ−グルシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メルカプトプロピルトリメトキシシラン等が挙げられる。
アクリル系樹脂組成物中のシランカップリング剤の含有量は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量部に対して、10質量部以下が好ましく、硬化性、コストの点から、5質量部以下がより好ましい。シランカップリング剤の含有量が上記上限値以下であれば、アクリル系樹脂組成物の基材への接着性の安定化を保持しつつ、表面硬化性が良好となる。
重合禁止剤は、アクリル系樹脂組成物の貯蔵安定性の向上、重合反応の調整の目的で配合されるものである。
重合禁止剤としては、例えばヒドロキノン、2−メチルヒドロキノン、ヒドロキノンモノメチルエーテル、2−6−ジーt−ブチル4ーメチルフェノール等が挙げられる。
アクリル系樹脂組成物中の重合禁止剤の含有量は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量部に対して、0.001〜0.2質量部が好ましく、0.002〜0.18質量部がより好ましい。
重合性二重結合を有しない樹脂としては、Tgが20〜155℃のものが好ましく、20〜105℃のものがより好ましい。
Tgが上記上限値以下であれば、アクリル系樹脂組成物を製造する際、単量体(A)、(B)への溶解性が良好となる。
なお、重合性二重結合を有しない樹脂のTgは、DSCの測定により求めた値である。
重合性二重結合を有しない樹脂のMwは、樹脂を溶剤(テトラヒドロフラン)に溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、「GPC」と記す。)により測定した分子量をポリスチレン換算したものである。
重合性二重結合を有しない樹脂としては、アルキル(メタ)アクリレートの単独重合体又は共重合体、セルロースアセテートブチレート樹脂が好ましい。
重合性二重結合を有しない樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
イソシアネートプレポリマーは、反応性が高く、空気中の水分やアクリル系樹脂組成物中の単量体成分と反応しやすい。従って、アクリル系樹脂組成物がイソシアネートプレポリマーを含有すれば、硬化時間をより短縮できる。
エポキシ樹脂は、無機基材との接着性を向上させる成分である。従って、アクリル系樹脂組成物がエポキシ樹脂を含有すれば、コンクリートやアスファルト舗装に使用されている砕石等への接着を良好にできる。
エポキシ樹脂としては、無機基材との接着性及び硬化性の観点から、ポリサルファイド変性エポキシ樹脂が好ましい。エポキシ樹脂は、1種単独で用いられてもよいし、2種以上が組み合わされて用いられてもよい。
オリゴマーは、表面硬化性の向上目的で配合されるものである。
オリゴマーとしては、ウレタン(メタ)アクリレート、ポリエステル(メタ)アクリレートが挙げられる。
ウレタン(メタ)アクリレートは、例えば、水酸基含有(メタ)アクリレート及び1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート、並びに水酸基含有(メタ)アクリレート、1分子中に2個以上のイソシアネート基を有するポリイソシアネート及び1分子中に2個以上の水酸基を有するポリオールを公知の方法で反応させて得られるものである。
ポリエステル(メタ)アクリレートは、フタル酸、イソフタル酸、テトラヒドロフタル酸、コハク酸、マレイン酸、フマール酸、アジピン酸等の多塩基酸又はその無水物と、エチレングリコール、プロピレングリコール等の多価アルコール化合物と、(メタ)アクリル酸付加物又はグリシジル(メタ)アクリレートと、多塩基酸無水物とからなるものである。
オリゴマーの含有量は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量部に対して、0〜20質量部が好ましく、0〜10質量部がより好ましい。上記上限値以下であれば、アクリル系樹脂組成物の可使時間を十分に確保しつつ、硬化時間を短縮でき、作業性が良好となる。
消泡剤としては、公知の消泡剤が挙げられる。例えば、特殊アクリル系重合物を溶剤に溶解させたアクリル系消泡剤、特殊ビニル系重合物を溶剤に溶解させたビニル系消泡剤等が挙げられ、楠本化成社製ディスパロンシリーズ(製品名:OX−880EF、OX−881、OX−883、OX−77EF、OX−710、OX−8040、1922、1927、1950、P−410EF、P−420、P−425、PD−7、1970、230、230HF、LF−1980、LF−1982、LF−1983、LF−1984、LF−1985等。)等やビックケミー・ジャパン社製BYK−052、BYK−1752等を用いることができる。
消泡剤の含有量は、単量体(A)と単量体(B)と重合体(C)との合計100質量部に対して、0〜3質量部が好ましく、0〜2質量部がより好ましい。上記上限値以下であれば、アクリル系樹脂組成物を撹拌混合した際に混入した気泡を効果的に取り除くことが出来、気泡の混入しない塗膜を得られる。
アクリル系樹脂組成物は、必要に応じて、ベンゾトリアゾール誘導体等の紫外線吸収剤、ヒンダートアミン系光安定剤、酸化防止剤、レベリング剤、アエロジル等のチクソトロピック性付与剤、炭酸カルシウム等の耐湿顔料、酸化クロム、ベンガラ等の無機顔料、フタロシアニンブルー等の有機顔料を含有してもよい。
アクリル系樹脂組成物の製造方法としては、上述した各成分を混合する方法が挙げられる。
なお、分解促進剤(F)のうち、3級アミン(f2)は、アクリル系樹脂組成物を硬化させる直前に添加してもよく、予めアクリル系樹脂組成物に添加しておいてもよい。多価金属石鹸(f1)は、アクリル系樹脂組成物を硬化させる直前に添加するのが好ましい。多価金属石鹸(f1)を予めアクリル系樹脂組成物に添加しておくと、アクリル系樹脂組成物の安定性が低下して、経時的にアクリル系樹脂組成物の粘度が高まったり、アクリル系樹脂組成物がゲル化したりすることがある。
また、重合開始剤は、アクリル系樹脂組成物を硬化させる直前に添加するのが好ましい。
本発明の被覆物は、基材の表面に、本発明のアクリル系樹脂組成物の硬化物からなる塗膜が形成されたものである。
これらの基材は、例えば、建築物の床やプラットホーム、道路、橋、高架橋等の床版等に用いられるものである。建築物の床やプラットホーム及び床版防水構造体においては、既に塗膜を形成した建築物の床材や舗装層を形成した既設の基材や、既設舗装層や既設防水層を剥がした後の構造体を、下塗り層を塗装する前の基材として用いても特に問題は無い。
基材の形状は特に制限されず、例えば、平面、曲面、傾斜面等、どのような形状であってもよい。
塗膜の形成方法としては、本発明のアクリル系樹脂組成物を基材に塗工し、これを硬化する方法が挙げられる。
塗工方法としては、ローラー、金ゴテ、刷毛、自在ボウキ、塗装機(スプレー塗装機等)等を用いる公知の塗工方法が挙げられる。2液エアレス塗装機を用いる場合には、主剤側、硬化剤側の2液に分け、主剤側には硬化促進剤を添加し、硬化剤側に有機過酸化物を添加する方法が望ましい。
本発明のアクリル系樹脂組成物以外の材質としては、溶剤系樹脂及びエマルション系樹脂、並びにエポキシ樹脂、ポリウレタン樹脂、不飽和ポリエステル樹脂及びメタクリル樹脂等の施工後に硬化させる合成樹脂系塗料;樹脂、ゴム、アスファルト等の固体状のものを熱溶融し液状化してから塗工するもの;石油アスファルトやアスファルト乳剤、各種液状合成樹脂等の液体状のもの等が挙げられる。
中塗り層の形成方法は、中塗り層を構成する材質の種類に応じて適宜決定される。
接着層の形成方法としては、接着剤が液状の場合、その液状材料をハケ、ローラー、スプレー等で下塗り層上に塗布すればよい。接着剤が粉状又は粒状の場合には、接着剤を下塗り層の表面に均一に散布してもよいし、アクリル系樹脂組成物を塗工した後、硬化前に散布してもよい。接着剤が固体状の場合は、それを加熱溶融し液状化してから、塗工してもよい。
従来の被膜剤は、湿潤状態の基材に対しての接着性が不十分なものであった。特に、基材に塗工された後に加熱されると、塗膜が軟化するので、基材に対するアンカー効果が低下して、接着性が低下するという問題があった。
本発明のアクリル系樹脂組成物によれば、基材が湿潤状態であっても、基材に対して優れた接着性を有し、耐久性に優れる。
このため、本発明のアクリル系樹脂組成物は、塗工前に湿潤状態の基材を乾燥する必要がなく、作業工程数を簡略化できる。
加えて、本発明のアクリル系樹脂組成物は、引火点が高いため、取り扱いが容易である。
以降の説明において、特に断りがない限り、「部」は質量部を表し、ケン化度と湿度以外の「%」は、「質量%」を表す。
攪拌機、冷却管、温度計を備えた重合装置内に、脱イオン水135部及び分散剤としてポリビニルアルコール(ケン化度80%、重合度1,700)0.4部を投入し、これを攪拌し、ポリビニルアルコールを溶解した。攪拌を停止し、メタクリル酸(以下、「MAA」と略す。)4部、メチルメタクリレート(以下、「MMA」と略す。)96部、重合開始剤として2,2’−アゾビス2−メチルブチロニトリル(以下、「AMBN」と略す。)0.2部、連鎖移動剤としてn−ドデシルメルカプタン(以下、「n−DM」と略す。)0.8部、電解質として炭酸ナトリウム0.1部を加え、再度攪拌した。75℃に昇温して2.5時間反応させ、次いで98℃に昇温して1.5時間保持して第1段階の反応を終了させた。40℃に冷却後、得られた水性懸濁液を目開き45μmのポリアミド製濾過布で濾過した。濾過物を脱イオン水で洗浄し、脱水後、40℃で16時間乾燥して、粒状ビニル系重合体(第1の共重合体(C’))を得た。得られた粒状ビニル系重合体のTgは100℃、重量平均分子量は40,000であった。なお、粒状ビニル系重合体のTgはDSCによって測定した。
得られたS−1及び重合体(C)の組成は次の通りであった。
S−1:重合体(C)/THFMA/MMA=106.6/108.16/54(部)=40/40/20(%)。
重合体(C)=MMA/MAA/GMA=96/4/6.6(部)=90/3.8/6.2(%)。
合成例1の第1段階の反応において、MMAの添加量を96部から60部へ変更し、n−ブチルメタクリレート(以下、「n−BMA」と略す。)36部を添加した以外は合成例1と同様にして、Tg71℃、重量平均分子量40,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体(C’))を得た。
得られた粒状ビニル系重合体を用いて、第2段階の反応を行い、酸価0.3mgKOH/gの重合性二重結合を有する重合体とTHFMA及びMMAを含む組成物S−2(以下、「S−2」と略す。)を得た。
得られたS−2及び重合体の組成は次の通りであった。
S−2:重合体/THFMA/MMA=106.6/108.16/54(部)=40/40/20(%)。
重合体=MMA/n−BMA/MAA/GMA=60/36/4/6.6(部)=56/34/3.8/6.2(%)。
合成例1と同様にして、Tg100℃、重量平均分子量40,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体(C’))を得た。
得られた粒状ビニル系重合体を用いて、第2段階の反応を行う際に、MMAの添加量を54部から0部へ変更し、THFMAの使用量を162.16部に変更した以外は合成例1と同様にして第2段階の反応を行い、酸価0.3mgKOH/gの重合性二重結合を有する重合体(C)とTHFMAを含む組成物S−3(以下、「S−3」と略す。)を得た。
得られたS−3及び重合体(C)の組成は次の通りであった。
S−3:重合体(C)/THFMA=106.6/162.16(部)=40/60(%)。
重合体(C)=MMA/MAA/GMA=96/4/6.6(部)=90/3.8/6.2(%)。
合成例1と同様にして、Tg100℃、重量平均分子量40,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体(C’))を得た。
得られた粒状ビニル系重合体を用いて、第2段階の反応を行う際に、MMAの添加量を54部から162.16部へ変更し、THFMAの使用量を0部に変更した以外は合成例1と同様にして第2段階の反応を行い、酸価0.3mgKOH/gの重合性二重結合を有する重合体(C)とMMAを含む組成物S−4(以下、「S−4」と略す。)を得た。
得られたS−4及び重合体(C)の組成は次の通りであった。
S−3:重合体(C)/MMA=106.6/162.16(部)=40/60(%)。
重合体(C)=MMA/MAA/GMA=96/4/6.6(部)=90/3.8/6.2(%)。
合成例1の第1段階の反応において得られたTg100℃、重量平均分子量40,000の粒状ビニル系重合体(第1の共重合体(C’))を組成物P−1(以下、「P−1」と略す。)として用いた。
得られたP−1の組成は次の通りであった。
P−1:第1の共重合体(C’)=100(部)。
第1の共重合体(C’)=MMA/MAA=96/4(部)=96/4(%)。
表1〜3の配合に従い、攪拌機、温度計、冷却管付きの1Lフラスコに、組成物S−1〜S−4又は組成物P−1、単量体(A)、単量体(B)、ワックス(D)、分解促進剤(F)、消泡剤(ディスパロン230(商品名、楠本化成社製))、重合禁止剤(BHT)、紫外線吸収剤(JF−77(商品名、城北化学工業社製))及び揺変剤(BYK−410(商品名、ビックケミー・ジャパン社製))を投入した。その後、70℃で2時間加熱し、室温に冷却して、表4〜6に示す樹脂組成のアクリル系樹脂組成物を得た。
なお、表中に配合量の記載がない成分は、配合されなかったものとする。
得られたアクリル系樹脂組成物(以下、測定用組成物Iということがある)について、粘度、接触角、引火点を評価し、その結果を表4〜6に示す。
100部の測定用組成物Iに対して、分解促進剤であるナフテン酸コバルト6%溶液(商品名:ナフテックスコバルト6%(T)、コバルト含有量6%、日本化学産業社製)1部、有機過酸化物(E)であるナイパーNS(商品名、日油社製、ジベンゾイルパーオキサイド40%品)3部、硬化速度調整剤XD−7021(商品名:アクリシラップXD−7021、菱晃社製)3部を添加し、混合して有機過酸化物入りアクリル系樹脂組成物(以下、測定用組成物IIということがある)を得た。得られた測定用組成物IIについて、硬化時間、塗工作業性、湿潤塗工作業性を評価した。加えて、硬化させた測定用組成物IIについて、Tg、湿熱耐久性、温冷繰り返し試験を評価し、その結果を表4〜6に示す。
・THFMA:テトラヒドロフルフリルメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルTHF)。
・2−HEMA:2−ヒドロキシエチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルHO)。
・4−HBA:4−ヒドロキシブチルアクリレート(大阪有機化学社製、商品名:4−HBA)。
・MMA:メチルメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルM)、
・KBM−503:γ−メタクリロキシプロピルトリメトキシシラン(信越化学工業社製、商品名:KBM−503)。
・FA−512M:ジシクロペンテニルオキシエチルメタクリレート(日立化成工業社製、商品名ファンクリルFA−512M)。
・CHMA:シクロヘキシルメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルCH)。
・SLMA:アルキル基の炭素数12〜13のアルキルメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルSL)。
・BPE−4:ビスフェノール型ジアクリレート(第一工業製薬社製、商品名;ニューフロンティアBPE4)。
・EDMA:エチレングリコールジメタクリレート(三菱レイヨン社製、商品名:アクリエステルED)。
・P−115:パラフィンワックス(日本精蝋社製)。
・P−130:パラフィンワックス(日本精蝋社製)。
・P−150:パラフィンワックス(日本精蝋社製)。
・DMPT:N,N−ジメチル−p−トルイジン。
・PTEO:N,N−ジ(2−ヒドロキシエチル)−p−トルイジン。
・重合禁止剤:BHT(2,6−ジ−t−ブチル4−メチルフェノール)。
・消泡剤:ディスパロン230(商品名、楠本化成社製)。
・揺変剤:BYK−410(商品名、ビックケミー・ジャパン社製)。
・紫外線吸収剤:JF−77(商品名、城北化学工業社製)。
<粘度>
B型粘度計(BM型、トキメック社製)を用いて、測定用組成物Iの23℃における粘度(60rpmの時の粘度)を測定した。
温度23℃、相対湿度50%の環境可変室(3m×7m×高さ3m)内に、測定用組成物Iを4時間放置して、環境可変室の温度に慣らした。この測定用組成物Iと、ガラス板(JIS−R3202:2011 「フロート板ガラス及び磨き板ガラス」)に記載のフロート板ガラス)とを用い、前記環境可変室内で、協和界面科学社製の自動接触角計DM−500を用いて、ガラス板と測定用組成物Iの接触角を測定した。接触角の測定は「液適法」にて評価した。
得られた接触角を下記評価基準に従って分類した。
◎:接触角20度未満。
○:接触角20度以上35度未満。
×:接触角35度以上。
測定用組成物IIを雰囲気温度23℃で重合硬化して厚さ1mmの注型板を作製した。この注型板の粘弾性測定(JIS−K7244−2:1998 「プラスチック−動的機械特性の試験方法−第2部:ねじり振り子法」記載のA法)により測定した。
測定用組成物Iの引火点をJIS K2265−2:2007 「引火点の求め方−第2部:迅速平衡密閉法」により測定した。
有機過酸化物(E)を添加した直後の測定用組成物IIを直径10mm、長さ120mmの試験管に、底部から70mmの高さにまで入れた。
熱電対を測定用組成物IIの深さ方向中央部に入れた。この試験管を23℃の水中に静置して測定用組成物Iを硬化させつつ、前記熱電対により発熱温度を経時的に測定した。有機過酸化物(E)の添加時から、最高発熱温度になった時点までの時間を求め、この時間を硬化時間とした。
基材であるコンクリート板(30cm×30cm×6cm)の表面に、各例の測定用組成物IIを0.4kg/m2となるように塗工した時の作業性、表面硬化性、接着性について、下記評価基準に基づいて評価した。なお、評価結果は、5枚の基材について試験をした結果の平均である。
良好(○):配合物を刷毛で十分に均すことができ、均一に塗布できた。
不良(×):配合物を刷毛で均す際に、粘度が高く均し難い及び/又は均一な表面を得るのに非常に長い時間を要した。
得られた塗膜の表面の硬化性を指触にて確認し、下記評価基準に基づき評価した。
○:経過時間1時間未満でタックなし。
△:経過時間1〜2時間でタックなし。
×:2時間経過してもタックあり。
<塗工作業性>で評価した基材5枚について、測定用組成物IIを塗工し、硬化した24時間後に、日本塗り床工業会試験方法の塗り床の付着強さ試験方法(NNK−005:2006)に従って評価を行った。なお、評価の異なる領域が混在した場合には、その領域の面積比を併記した。例えば、「80%KH、20SH」は、5枚の基材の評価結果として、KHの領域が80%、SHの領域が20%であったことを意味する。
KH(良好):基材凝集破壊。
SH(不良):基材と下塗り層の層間剥離。
JH(不良):下塗り層の凝集破壊。
予め、基材となるコンクリート板(30cm×30cm×厚さ6cm)を水中に48時間以上浸漬した。コンクリート板を水から取り出し、直ちにコンクリート板の表面をウエスで拭いた。コンクリート板の水分率を水分計(Kett社製、商品名:HI−500)で測定し、水分率が6%以上になっていることを確認した。
水分率を確認した後、直ちに、前述の<塗工作業性>と同様にして、作業性、表面硬化性、接着性について評価した。
温冷繰り返し試験は、JIS−A6909 建築用仕上塗材に従って評価した。
ただし、以下の通り積層したものをサンプルとして用いた。
モルタル板(7cm×7cm×厚み2cm:JIS−A6909 建築用仕上塗材の7.2試験用基材)の表面に、各例の測定用組成物IIを0.4kg/m2となるように、刷毛で塗工して、下塗り層を形成した。
中塗り用樹脂であるアクリシラップXD−3026(商品名、菱晃社製)100部に対して、着色剤であるアクリシラップMRT−40(商品名、菱晃社製)5部を加えて撹拌、混合した。次いで、アクリルシラップXD−3026の100部に対して、重合開始剤としてベンゾイルパーオキサイド50%顆粒品(化薬アクゾ社製、商品名:パーカドックスCH−50L)2部を加え、さらに撹拌、混合した。これに骨材(菱晃社製、商品名:KM−17A)400部を加え、撹拌して中塗り剤を調製した。調製後、直ちに中塗り剤を10kg/m2となるように、下塗り層の表面に塗工して、中塗り層を形成した。
上塗り層として、上塗り用樹脂であるアクリシラップXD−511(商品名、菱晃社製)100部に対して、10部のアクリシラップMRT−40を加え、撹拌、混合した。アクリシラップXD−511の100部に対して、3部のパーカドックスCH−50Lを加え、撹拌、混合して上塗り剤を調製した。調製後、直ちに上塗り剤を0.3kg/m2となるように刷毛で塗工した。上塗り剤が硬化する前に、5号珪砂を0.5kg/m2となるように均一に上塗り剤の表面に散布した。次いで上塗り剤を0.4kg/m2となるように刷毛で塗工して上塗り層を形成した。側面4面にボンドクイックメンダー(エポキシ樹脂、コニシ社製)を2.0kg/m2となるように塗工した。
こうして、基材の表面に、下塗り層と中塗り層と上塗り層とがこの順で積層された被膜を備える被覆物を得た。
良好(○):塗膜にひび割れ、はがれ及び膨れが見られない。
不良(×):塗膜にひび割れ、はがれ及び膨れが見られる。
コンクリート板(30cm×30cm×6cm)の表面に、各例の測定用組成物IIを0.4kg/m2となるように塗工して、被覆物を得た。この被覆物について、JHS−433−2「膨れ負荷方法」に記載の負荷試験方法に従って耐フクレ性を評価して、その結果を湿熱耐久性とした。
負荷試験方法は、以下の手順で行われた。
測定用組成物を硬化した後、24時間室温で養生して、被覆物を得た。被覆物を23±2℃の水に24時間浸漬した。被覆物を水中から取り出し、これを温度60±2℃、湿度80±5%の恒温恒湿槽で24時間静置した後、目視で塗膜を観察した。観察結果を下記評価基準に従って評価した。塗膜が硬くてもろいと、フクレが発生しやすい。
良好(○):塗膜にフクレが発生せず。
不良(×):塗膜にフクレが発生した。
一方、ワックス(D)を含まない比較例1は、硬化しなかった。このため、比較例1については、接着性、温冷繰り返し試験、温熱耐久性について、評価をしなかった。
重合体(C)中のメチルメタクリレート単位が75質量%未満である比較例2、重合物(C)に代えて重合性二重結合を含まない重合体からなる組成物P−1を配合した比較例3、単量体(a3)を欠いた比較例4、単量体(B)を欠いた比較例7、及び単量体(a2)を欠き、重合性二重結合を含む重合体(C)の配合量の多い比較例8は、湿熱耐久性が「×」であった。
単量体(a2)を欠いた比較例5は、湿潤塗工作業性における接着性が「SH」であり、単量体(a1)を欠いた比較例6は、引火点が13℃であった。
これらの結果から本発明を適用することで、湿潤状態の基材に対しても接着性に優れ、かつ耐久性に優れる塗膜を形成できることが判った。
Claims (2)
- 分子中に1個の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(A)と、分子中に2個以上の(メタ)アクリロイル基を有する単量体(B)と、重合性二重結合を有し、かつメチルメタクリレート単位を75質量%以上有する重合体(C)と、ワックス(D)とを含有し、
前記単量体(A)として、フラン環、ヒドロフラン環、ピラン環及びヒドロピラン環からなる群より選ばれるヘテロ環を有する(メタ)アクリレート(a1)と、ヒドロキシアルキル(メタ)アクリレート(a2)と、メチルメタクリレート(a3)とを含有することを特徴とするアクリル系樹脂組成物。 - 前記単量体(A)と前記単量体(B)と前記重合体(C)との合計100質量%に対し、前記重合体(C)を1〜15質量%含有することを特徴とする請求項1に記載のアクリル系樹脂組成物。
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