JP2015021200A - 耐油性を有する紙複合体 - Google Patents
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Abstract
Description
[1]エチレン単位の含有量2〜10モル%、粘度平均重合度300〜2000、けん化度95〜99.5モル%、カルボキシル基とラクトン環との合計含有量0.02〜3モル%、融点が180℃〜230℃、1,2−グリコール結合の含有量1.2〜2モル%、およびビニルアルコール単位に対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率75〜98モル%であるビニルアルコール系重合体(A)および平均アスペクト比20以上の層状無機化合物(B)を含有する耐油層を、
透気抵抗度1000秒以下かつ緊度0.5〜1.0g/cm3以下の基紙の少なくとも一方の表面に乾燥質量換算で0.5〜10.0g/m2設けてなる紙複合体;
[2]前記紙複合体において、上記ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、上記層状無機化合物(B)を10〜200質量部含有し、該耐油層を、透気抵抗度1000秒以下かつ緊度0.5〜1.0g/cm3の基紙の少なくとも一方の表面に乾燥質量換算で1.0〜10.0g/m2設けてなる、上記[1]の紙複合体;
[3]前記層状無機化合物が、カオリンである[1]または[2]の紙複合体;
[4]前記層状無機化合物が、タルクである[1]または[2]の紙複合体;
[5]前記層状無機化合物が、膨潤性粘土鉱物である[1]または[2]の紙複合体;
[6]前記紙複合体において、ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、さらに脂肪酸サイズ剤(C)を50質量部以下含有する、上記[1]〜[5]のいずれかの紙複合体;
[7]前記紙複合体において、ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、さらに架橋剤(D)を30質量部以下含有する、[1]〜[6]のいずれかの紙複合体;
[8]前記紙複合体において、架橋剤(D)がポリアミドエピクロルヒドリン系である、[7]の紙複合体;
[9]前記紙複合体において、架橋剤(D)がオキシ硝酸ジルコニウムである、[7]の紙複合体;
に関する。
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
i)酢酸ビニル等のビニルエステル系単量体とカルボキシル基またはラクトン環を生成する能力を有する単量体とを共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化する方法、
ii)メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのカルボキシル基を含有するチオール化合物の存在下で、ビニルエステル系単量体を重合した後それをけん化する方法、
iii)酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合する際に、ビニルエステル系単量体およびビニルエステル系重合体のアルキル基への連鎖移動反応を起こし、高分岐ビニルエステル系重合体を得た後にけん化する方法、
iv)エポキシ基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をカルボキシル基を有するチオール化合物と反応させた後けん化する方法、
v)PVAとカルボキシル基を有するアルデヒド類とのアセタール化反応による方法、
などが挙げられる。
ラクトン環のメチンピークを用いて常法により含有量を算出する。ii)およびiv)の場合、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.8ppm)を用いて含有量を算出した。iii)の場合、作成した分析用PVAをメタノール−D4/D2O=2/8に溶解しプロトンNMRを用いて80℃で測定する。末端のカルボキシル基もしくはそのアルカリ金属塩のメチレン由来ピークは2.2ppm(積分値A)および2.3ppm(積分値B)に帰属し、末端のラクトン環のメチレン由来ピークは2.6ppm(積分値C)、ビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.5〜4.15ppm(積分値D)に帰属し、下記の式でカルボキシル基およびラクトン環の含有量を算出する。ここでΔは変性量(モル%)を表す。
カルボキシル基およびラクトン環の含有量(モル%)
=50×(A+B+C)×(100−Δ)/(100×D)
1,2−グリコール結合含有量(モル%)=B’(100−Δ)/A’
PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が65モル%未満の場合には、該ビニルアルコール系重合体の結晶性が極度に低下し、本発明の意図する高い耐油性や耐水性が得られない。また得られた紙複合体において、ビニルアルコール系重合体の特長である機械的物性などが損なわれる。一方、該PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が98モル%より大の場合には、ポリマーの結晶性が極めて高くPVAの水溶液を調製するのに大変な労力を要したり、得られた水溶液の粘度が非常に高く、基紙への塗工適性に問題が生じる。
かかる本発明の樹脂組成物を含有する水性塗工液を製造する方法は、特に限定されるものではないが、例えば、(ア)PVA(A)の水溶液と、層状無機化合物(B)を予め分散した水性分散液とを混合する方法、(イ)PVA(A)の水溶液に層状無機化合物(B)を加え、分散させる方法、(ウ)予め層状無機化合物(B)を分散させた水性分散液に、PVA(A)を加え、加熱溶解させる方法、等を挙げることができる。なお、層状無機化合物(B)を水に分散させる際には、公知の撹拌装置や分散装置を用いることができる。
(1)耐油性評価
○キットテスト
一般的な耐油度はTAPPI UM557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」によって測定した。
キットテストは極めて短時間(15秒)で耐油性の指標を得る事が出来る為、耐油度の簡便な評価として広く利用されているが、このテストで得られる評価は必ずしも現実に即さない場合がある。例えばある種の脂肪に対して、室温より高い温度の脂肪の混合物を使用した場合にはキットテストで良い耐油性を示しても、実際には実用に耐えうる耐油度を示さない場合がある。そこで、より実用に即した、次のような一連の性能テストを利用した。
○脂肪酸混合物に対する耐性テスト
脂肪酸の混合物として、以下の組成を有する(A*)、(B*)、(C*)、(D*)、(E*)の5種を、それぞれの純粋な化合物から用意する。
次に、各塗工紙を5cm×5cmの大きさに切り出し、黒色の紙上に各試験片を置き、60℃に熱された乾燥器内に入れた。次いで、試験片上に5滴のテスト混合物の液滴を落とす。乾燥器の扉を閉め、試験片を10分間テスト混合物の液滴と接したまま保存する。10分後、乾燥器の扉を開き、混合液滴を吸い取り紙で除去する。個々のテスト混合物において、浸透が生じないときは陽性、浸透が生じたときは各表面の滴下部分の暗色化により陰性と判断される。混合物に対し、少なくとも2枚の試験片を用い評価する。テスト結果は、試験片を通過する最初のテスト混合物の前のテスト混合物の記号とする。
更に、等しい炭素原子数において、直鎖脂肪酸の構造中の不飽和の存在が、不飽和でない同種の脂肪酸に対して、サイズ処理された紙片の浸透可能性を実質的に変動させないことが分る。
このテストは、ファーストフード用の包装紙について評価する際に使用される手法である。各塗工紙を5cm×5cmの大きさに切り出し、黒色の紙上に各試験片を置き、次いでコーン油1mlを試験片に滴下する。滴下した時間を試験開始時間とし、20分間110℃に設定した乾燥器中に静置し、一定時間間隔で、油が試験片に吸収されるか否かを観察する。油の吸収は、紙が透明になり、試験片に黒色が示されることで吸収の度合いが示される。20分を経過する前に吸収が見られた場合は陰性と判断し、20分を経過しても吸収が見られなかった場合は陽性と判断する。
塗工紙の塗工面上に、中華まん(ニッポンハム製 「天津閣 豊潤肉まん」)一個を置き、電子レンジを用い、600Wで一分加熱調理した。一分後、電子レンジより塗工紙と肉まんを取り出した。肉まんを塗工紙から剥がし、塗工紙表面を目視観察した。食品の剥離性を以下の基準に従って判定した。なお、下記評価がA又はBの場合、実用性に優れると言える。
A:肉まんの皮が全く付着しない
B:肉まんの薄皮が少量付着する
C:大きく剥がれた肉まんの皮が付着する
D:肉まんの底部分が剥がれ、皮と具が付着する
[ビニルアルコール系重合体の製造方法]
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口、開始剤添加口およびディレー溶液添加口を備えた250L加圧反応槽に酢酸ビニル107.2kg、メタノール42.8kgおよび無水マレイン酸15.6gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9Kg/cm2となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。またディレー溶液として無水マレイン酸をメタノールに溶解した濃度5%溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液204mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9Kg/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて640ml/hrでAMVを、また上記ディレー溶液を用いて無水マレイン酸を重合系中の酢酸ビニルと無水マレイン酸の比率が一定となるようにしながら連続添加して重合を実施した。4時間後に重合率が30%となったところで冷却して重合を停止した。この時点でディレーにより添加した無水マレイン酸ディレー溶液の総量は1400mlであった。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が30%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液333g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル単位に対してモル比[MR]0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリ添加後約1分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVA(PVA−1)を得た。
得られたカルボキシル基またはラクトン環を有するビニルアルコール系重合体のけん化度は98.5モル%であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOLGX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレン単位の含有量は7モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5でけん化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置してけん化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたカルボキシル基またはラクトン環を有すエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ1000であった。該精製PVAのカルボキシル基またはラクトン環の含有量、1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を500MHzのプロトンNMR(JEOLGX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ0.246モル%、1.61モル%および87%であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10μmのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ210℃であった。
カオリン−1(株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製「バリサーフHX」:平均粒子径1.5μm、平均アスペクト比100)を40%の濃度になるように水に分散し、家庭用ミキサーに10分かけ、分散液を調製した。
上記で得られたビニルアルコール系重合体の14%水溶液を調製した。上記ビニルアルコール系重合体水溶液の固形分100部に対して、上記カオリン分散液を固形分20部となるように混合し、溶液濃度15%となるよう水を混合し、塗工液を得た。
上記で得られた塗工液を、試験用2−ロールサイズプレス機(熊谷理機工業製)を用いて、基紙A(坪量70g/m2、緊度0.9g/cm3、透気抵抗度15秒の基紙)に塗工した。塗工は50℃にて100m/分の条件で行った後、110℃で1分間乾燥させ、塗工紙を得た。塗工液の固形分換算の塗工量は1.8g/m2(両面)であった。得られた塗工紙を20℃、65%RHで72時間調湿した。
得られた塗工紙について、上記の方法に従って耐油性評価、耐水・剥離性を測定した。耐油性評価においてはキット値8を得た。脂肪酸に対する耐性テストでは動物油を想定した(C*)の混合液までは浸透が観測されず、コーン油に対する耐性テストでは浸透が観測されなかったため、十分な耐性がある陽性と判断した。また耐水・剥離性テストでは肉まんの皮が塗工面に付着しなかっため、いずれも実用上問題の無いレベルと判定した。
表2に示すようにビニルアルコール系重合体の製造方法を変更してPVA2〜PVA9を得た。PVA2〜PVA9の分析結果を表3に示す。得られたPVAを用いて表4に示す様な組成の塗工層を基紙表面に実施例1と同様の方法で作製し、塗工紙の評価を行った。その結果を表4に示す。また、下記に表中の層状無機化合物の詳細を示す。
・カオリン−2(株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製「バリサーフLX」:平均粒子径1.5μm、アスペクト比60)
・カオリン−3(株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製「Eckalite120」:平均粒子径1.6μm、アスペクト比30)
・タルク(株式会社ヤマグチマイカ製「EX−15」:平均粒子径15μm、アスペクト比20)
・モンモリロナイト(クニミネ工業株式会社製「クニピア−F」:平均粒子径0.1〜0.5μm、アスペクト比200)
表5に示すように、ビニルアルコール系重合体の製造方法を変更してPVA10〜PVA22を得た。PVA10〜PVA22の分析結果を表6に示す。得られたPVAを用いて表7に示す様な組成の塗工層を基紙表面に実施例1と同様の方法で作製し、塗工紙の評価を行った。その結果を表7に示す。また、下記に表中の層状無機化合物の詳細を示す。
・カオリン−4(株式会社イメリスミネラルズ・ジャパン製「Flat DS」:平均粒子径4μm、アスペクト比8)
Claims (10)
- エチレン単位の含有量2〜10モル%、粘度平均重合度300〜2000、けん化度95〜99.5モル%、カルボキシル基とラクトン環との合計含有量0.02〜3モル%、融点が180℃〜230℃、1,2−グリコール結合の含有量1.2〜2モル%、およびビニルアルコール単位に対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率75〜98モル%であるビニルアルコール系重合体(A)、および平均アスペクト比20以上である層状無機化合物(B)を含有する耐油層を、
透気抵抗度1000秒以下かつ緊度0.5〜1.0g/cm3の基紙の少なくとも一方の面に乾燥質量換算で0.5〜10.0g/m2設けてなる紙複合体。 - 上記ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、上記層状無機化合物(B)を10〜200質量部含有する耐油層を、透気抵抗度1000秒以下かつ緊度0.5〜1.0g/cm3の基紙の少なくとも一方の面に乾燥質量換算で0.5〜10.0g/m2設けてなる請求項1記載の紙複合体。
- 上記層状無機化合物が、カオリンである請求項1または2記載の紙複合体。
- 上記層状無機化合物が、タルクである請求項1または2記載の紙複合体。
- 上記層状無機化合物が、膨潤性粘土鉱物である請求項1または2記載の紙複合体。
- 上記ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、さらに脂肪酸サイズ剤(C)を50部以下含有する請求項1〜5のいずれかに記載の紙複合体。
- 上記ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、さらに架橋剤(D)を30質量部以下含有する請求項1〜6のいずれかに記載の紙複合体。
- 上記架橋剤(D)が、ポリアミドエピクロルヒドリン系である請求項7記載の紙複合体。
- 上記架橋剤(D)が、ジルコニウム化合物である請求項7記載の紙複合体。
- 上記架橋剤(D)が、オキシ硝酸ジルコニウムである請求項9記載の紙複合体。
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