JP2011184812A - 耐油紙およびその製造方法 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層の耐油層を設けた耐油紙において、前記耐油層のうち少なくとも1層中に使用される耐油剤がポリビニルアルコール系樹脂であり、且つ該耐油層中にポリオキシエチレン(3〜10モル付加)ポリオキシプロピレン(25〜35モル付加)ブロックポリマーをポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、0.01〜1.0質量部を含有させる。また、前記耐油層中に含有するポリビニルアルコール系樹脂がエチレン変性ポリビニルアルコールであることが好ましい。
【選択図】なし
Description
食品に含まれる油類が包装用紙に浸透すると紙の表面にまで油が浸透して表面に油しみができて外観を損ねて商品価値を下げたり、印刷部分が油しみで黒くなり、文字が判読できなかったり、バーコード、QRコード等のOCR適性が低下するおそれがある。また、衣服に油が転移し汚染するなどの問題があるため、食品に接する部分に耐油性を付与した紙や板紙が使用される。
従来、耐油性を発現させるために、フッ素系耐油剤、特にパーフルオロフッ素系の耐油剤が使用されていた。しかし、パーフルオロフッ素系の化合物は加熱処理によってパーフルオロオクタン酸やパーフルオロスルホン酸を発生するため、安全性に懸念が持たれている。そのため、安全性を高めたフッ素系樹脂も各種開発されつつあるが、耐油性が不十分であったり、安全性に不安が残っているのが現状である。
フッ素系耐油剤は、紙中に浸透させてパルプ繊維表面に撥油性を付与することで耐油性を得ていたのに対し、ポリビニルアルコール系樹脂は塗工層皮膜によるバリアー効果により耐油性を得るものであるため、塗工時に塗工欠陥が生じると耐油性が低下してしまう問題がある。
本発明において少なくとも1層の耐油層にはポリビニルアルコール系樹脂とポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを含有させることを特徴とする。ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーについては各種化学構造のブロックポリマーが知られているが、本発明ではポリビニルアルコール系樹脂に対する抑泡性の点から該ブロックポリマーとしてポリオキシエチレン(3〜10モル付加)ポリオキシプロピレン(25〜35モル付加)ブロックポリマーを使用する。なかでも、ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマーがポリビニルアルコール系樹脂の溶解時の起泡や耐油層塗料の塗工時の起泡を効果的に抑制するので特に好ましい。具体的には、例えば東邦化学社製「ペポールB」シリーズ、第一工業製薬社製「エパン」シリーズ、ADEKA社製「プルロニック」シリーズ等が挙げられる。
ポリオキシエチレン(3〜10モル付加)ポリオキシプロピレン(25〜35モル付加)ブロックポリマーの添加量が0.01質量部未満の場合、満足な消泡効果が得られない。また、1.0質量部を超える場合は、塗工面にハジキを発生させて耐油性が低下する。
なかでもエチレン変性ポリビニルアルコール(例えば、商品名:「エクセバール」シリーズ、(株)クラレ製)は耐油性が優れるため好ましい。
また、有機顔料の具体例としては、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等が挙げられる。
顔料成分の使用量は、耐油層全固形分中の75質量%程度までの範囲で調整される。本発明の耐油層塗料には、必要に応じて、ポリカルボン酸などの分散剤、界面活性剤、保水剤等の助剤を添加することができる。
本発明の耐油紙に用いられる紙支持体としては、特に限定するものではないが、例えば植物由来のパルプを主成分とするものとし、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、片艶紙、晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、または段ボール用、建材用、白ボ−ル用、チップボ−ル用などに用いられる板紙、白板紙などが好適である。紙支持体の坪量は特に制限はないが、包装紙用としては20g/m2〜150g/m2、箱等の成型容器用としては150g/m2〜500g/m2が好適である。
耐油層の塗工はオンマシンコーティングがコストの面で好ましい。特に抄紙パートの後半部に位置するキャレンダー部でのニップ塗工では、平滑化ロールの段数に応じて多段塗工ができるため、少ない塗工量で高い耐油性が得られ易く、好ましい実施態様である。
[耐油剤の溶解]
水90.5質量部にエチレン変性ポリビニルアルコール(商品名:「エクセバールHR3010」、クラレ社製 含水率約5%)9.5質量部、ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックプリマー(商品名:「ペポールB−181」、東邦化学工業社製)0.009質量部を添加し、撹拌しながら95℃まで昇温、1時間保持したのち常温まで冷却し、濃度9%のエチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を得た。なお、昇温過程、温度保持中とも起泡は全く観察されなかった。
上記[耐油剤の溶解]で得られた9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を200mlのデスカップに50ml入れ、高剪断撹拌機(商品名:「TKホモディスパfモデル」、インペラー直径:30mm、特殊機化社製)を用いて、1000rpmで1分間撹拌後の液比重を測定して、塗料の起泡性を評価した。
坪量350g/m2の塗工板紙原紙の抄造パート後のマシンキャレンダーにて上記[耐油剤の溶解]で得られた9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を塗工板紙原紙の片面に11.1ml/m2(固形で約1.0g/m2)塗工した後乾燥して、耐油紙を得た。
実施例1の[耐油紙の製造]において、濃度9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を塗工板紙原紙の片面に2段塗工(1段目:11.1ml/m2(固形で約1.0g/m2)、2段目:8.9ml/m2(固形で約0.8g/m2))した後乾燥した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の[耐油紙の製造]において、濃度9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を塗工板紙原紙の両面に各1段塗工(表裏とも11.1ml/m2(固形で約1.0g/m2))した後乾燥した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の[耐油紙の製造]において、濃度9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を塗工板紙原紙の片面に1段塗工(11.1ml/m2(固形で約1.0g/m2))した後、さらにその上に下記耐油層2をバーコーターにて乾燥後の塗工量が5.0g/m2となるように塗工後乾燥させた以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
水42質量部にカオリン(商品名:「ウルトラホワイト90」、BASFジャパン社製)62.5質量部を加えて撹拌し、60%濃度のカオリン分散液を得た。このものにさらに50%濃度のスチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:「OJ−2000H」、JSR社製)25質量部、40%アクリル系耐油剤(商品名:「ジョンクリルPDX−7326」、BASFジャパン社製)62.5質量部、ジオレイン酸ポリエチレングリコール(重合度:8)0.1質量部、さらに調整水40.7質量部を加えて撹拌し、耐油層2塗料を得た。
実施例1の[耐油紙の製造]において、濃度9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液を塗工板紙原紙の片面に1段塗工(11.1ml/m2(固形で約1.0g/m2))した後、さらにその上に下記耐油層3をバーコーターにて乾燥後の塗工量が5.0g/m2となるように塗工後乾燥させた以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
水57質量部にカオリン(商品名:「ウルトラホワイト90」、BASFジャパン社製)85質量部を加えて撹拌し、60%濃度のカオリン分散液を得た。別途溶解した7%濃度のエチレン変性ポリビニルアルコール(商品名:「エクセバールHR3010」、クラレ社製)214.3質量部中に前記カオリン分散液を撹拌しながら投入し混合した。このものにさらにジオレイン酸ポリエチレングリコール(重合度:8)0.1質量部、さらに調整水144質量部を加えて撹拌し、耐油層3塗料を得た。
実施例1の[耐油剤の溶解]において、エチレン変性ポリビニルアルコール(商品名:「エクセバールHR3010」、クラレ社製 含水率約5%)9.5質量部の代わりに珪素変性ポリビニルアルコール(商品名:「R−1130」、クラレ社製、含水率約5%)9.5質量部を使用した以外は実施例1と同様にして耐油剤の溶解を行った。また、この水溶液の起泡テスト、この水溶液を用いて耐油層の形成を実施例1と同様にして行った。
実施例1の[耐油剤の溶解]において、ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマー(商品名:「ペポールB−181」、東邦化学工業社製)0.009質量部の代わりにポリオキシエチレン(10モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマー(商品名:「ペポールB−182」、東邦化学工業社製)0.009質量部を添加して溶解を行い、この水溶液の起泡テスト、この水溶液を用いて耐油層の形成を実施例1と同様にして行った。
実施例1の[耐油剤の溶解]において、ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマー(商品名:「ペポールB−181」、東邦化学工業社製)を添加しなかった以外は実施例1と同様にして耐油剤の溶解を行ったところ、昇温中に起泡による液面上昇が起こり、タンクから溢れそうになるため、溶解量を制限しなければならなかった。また、エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液の起泡性テストも実施例1と同様にして行った。さらに、坪量350g/m2の塗工板紙原紙の抄造パート後のマシンキャレンダーにて上記[耐油剤の溶解]で得られた濃度9%エチレン変性ポリビニルアルコール水溶液(ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマー未添加)を塗工板紙原紙の片面に11.1ml/m2(固形で約1.0g/m2)塗工した後乾燥して、耐油紙を得た。塗工中のエチレン変性ポリビニルアルコール水溶液の起泡が激しく、カラーパンから溢れる状態であった。
実施例1の[耐油剤の溶解]において、ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマー(商品名:「ペポールB−181」、東邦化学工業社製)の添加量を0.0005質量部に減量し、溶解を行ったが、消泡効果は十分でなく、液面上昇が見られた。また、この水溶液の起泡テスト、この水溶液を用いて耐油層の形成を実施例1と同様にして行った。塗工中の消泡効果も十分ではなかった。
実施例1の[耐油剤の溶解]において、ポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマー(商品名:「ペポールB−181」、東邦化学工業社製)の添加量を5.0質量部に増量し、溶解を行い、この水溶液の起泡テスト、この水溶液を用いて耐油層の形成を実施例1と同様にして行った。
各実施例、比較例で得られた耐油紙を以下の方法で評価、結果を表1に示す。
起泡性
起泡性テストで得られた塗料の容積をメスシリンダーで測定し、塗料質量(g)/塗料容積(cm3)で液比重を算出して、起泡性を評価した。また、溶解時および塗工時の起泡状態を下記の基準で評価した。
<ポリビニルアルコール系樹脂溶解時の起泡状態>
○:溶解時、起泡が見られない。
△:起泡が若干見られ、冷却後も液面に泡が残る。
×:昇温中に激しく起泡し、溶解液がタンクから溢れそうになる。
<耐油層塗料塗工中の起泡状態>
○:塗工中のカラーパンに起泡が見られない。
△:カラーパンの耐油層塗料が泡で白濁する。流動性もやや悪い。
×:カラーパン中の耐油層塗料の起泡が激しく、塗料がカラーパンから溢れる。
TAPPI UM−557に準拠して、キット液を用いて耐油性を評価した。
以上の評価結果を表1に示す。
Claims (5)
- 紙支持体の少なくとも片面に少なくとも1層の耐油層を設けた耐油紙において、前記耐油層のうち少なくとも1層中に使用される耐油剤がポリビニルアルコール系樹脂であり、且つ該耐油層中にポリビニルアルコール系樹脂100質量部に対して、ポリオキシエチレン(3〜10モル付加)ポリオキシプロピレン(25〜35モル付加)ブロックポリマーを0.01〜1.0質量部含有させたことを特徴とする耐油紙。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂がエチレン変性ポリビニルアルコールであることを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
- 前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーがポリオキシエチレン(5モル付加)ポリオキシプロピレン(30モル付加)ブロックポリマーである請求項1または請求項2に記載の耐油紙。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂の溶解時において、前記ポリオキシエチレンポリオキシプロピレンブロックポリマーを昇温前、または昇温中に添加することを特徴とする耐油紙の製造方法。
- 前記ポリビニルアルコール系樹脂を耐油剤として使用した耐油層を紙支持体または塗工層上にニップ塗工法によって形成させることを特徴とする請求項4に記載の耐油紙の製造方法。
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