JP2016135932A - 耐油紙及びその製造方法 - Google Patents

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英明 山田
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Abstract

【課題】本発明は、透明性が高く、耐油性に優れ、耐油層を備えた面の光沢度が高い耐油紙及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
【解決手段】紙基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含有する少なくとも1層の耐油層を備えた耐油紙であって、耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであり、耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たし、耐油紙の耐油層を備えた面の75度光沢度が35%以上であることを特徴とする耐油紙。
【選択図】なし

Description

本発明は、動植物性油脂等の油脂成分の浸透を防ぐことができる耐油層を有する耐油紙及びその製造方法に関する。
食品などの包装材料には、紙あるいは板紙が幅広く用いられている。特にチョコレートやピザ、ドーナツなどの動植物性油脂由来の油脂成分が多く含まれる食品の包装紙には、耐油性を有する紙や板紙が使用されており、食品の油脂成分が包装用紙に浸透しないように工夫されている。食品に含まれる油脂成分が包装用紙に浸透すると紙の表面にまで油が浸透し、表面に油しみができて外観を損ねたり、印刷部分が油しみで黒くなり文字が判読できなかったり、バーコード、QRコード(登録商標)等のOCR適性が低下するおそれがある。また、衣服に油が転移し汚染を引き起こす等の問題もある。このため、油脂成分を含む食品の包装用紙には、食品に接する部分に耐油性を付与した紙や板紙が使用されている。
耐油紙は、耐油性を発揮するために耐油剤を含有しており、従来、耐油剤にはフッ素樹脂系の耐油剤が用いられていた(特許文献1参照)。例えば、紙、板紙の表面にフッ素樹脂系耐油剤を塗工して耐油層を設けた耐油紙や、紙層間にフッ素樹脂系耐油剤層を設けた耐油紙が知られている。しかし、フッ素樹脂系耐油剤を使用した耐油紙を100〜180℃の調理温度で加熱した場合、炭素数8〜10のフッ素系アルコール化合物等の長期に残留しやすい成分が発生することが確認されている。また、これらフッ素樹脂系耐油剤を使用した耐油紙を使用後に焼却した際には、パーフルオロオクタン酸やパーフルオロスルホン酸等のフッ素化合物が発生し、健康又は環境に悪影響を及ぼすことが懸念されている。
これらの問題を解決するために、非フッ素系耐油剤としてポリビニルアルコール系樹脂を使用した耐油紙が提案されている(特許文献2及び3参照)。ポリビニルアルコール系樹脂は親水性の強固な皮膜を形成するため、油の浸透を防ぐことができ、優れた耐油性を発揮することができる。フッ素系耐油剤では、フッ素に由来する撥油性を利用して耐油性を発現していたのに対し、ポリビニルアルコール系樹脂は塗工層皮膜によるバリアー効果により耐油性を発揮するものである。非フッ素系耐油剤を含む耐油紙は、加熱した際にフッ素化合物等を発生することがないため、安全性が高く、環境への負荷が少ないという利点を有している。
また、油脂成分を含む食品などの包装材料は、油によって透けてしまうことが多く、油にまみれた内容物が外から見えたり、油が染み出して見えたりして外観を損なわないように、不透明性を高めたものがよく知られている。一方、耐油紙の用途が多様化すると、食品を解凍したり、調理したりする際に、内容物が外から見えて包装を解く必要のない材料が求められるようになる。透明性が高く、しかも食品に触れる面が光沢性を有する耐油紙は、清潔感があり、デザイン性にも優れることから、解凍後や調理後の内容物を他の容器や包装材料に移し替える手間が省け、廃棄物を減らしてリサイクル適性に優れた包装材料として望ましい。しかしながら、従来の片艶紙やグラシン紙では、紙基材を用いた耐油紙に求められる耐油性と透明性に関しては、必ずしも満足すべき結果が得られていないのが現状である。
特開2009−120996号公報 特開2011−26745号公報 特開2011−184812号公報
本発明は、透明性が高く、耐油性に優れ、耐油層を備えた面の光沢度が高い耐油紙及びその製造方法を提供することを主な目的とする。
本発明者らは、上記従来技術に鑑み、鋭意研究を重ねた結果、上記問題点を解決するに至った。即ち、本発明は下記の耐油紙及びその製造方法に係る。
項1:紙基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含有する少なくとも1層の耐油層を備えた耐油紙であって、前記耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであり、前記耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たし、且つ前記耐油紙の耐油層を備えた面の75度光沢度が35%以上であることを特徴とする耐油紙。
項2:前記耐油紙の密度が0.9〜1.2g/cmである、項1に記載の耐油紙。
項3:前記耐油紙の不透明度が45%以下である、項1または2に記載の耐油紙。
項4:前記耐油層がアクリル系撥水剤としてメタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体を耐油層の全固形量中1〜20質量%の割合で含有する、項1〜3のいずれか1項に記載の耐油紙。
項5:前記顔料としてカオリンを耐油層の全固形量中20〜70質量%の割合で含有する、項1〜4のいずれか1項に記載の耐油紙。
項6:前記耐油層が非フッ素系耐油層である、項1〜5のいずれか1項に記載の耐油紙。
項7:金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通して前記式を満たすようになされた、項1〜6のいずれか1項に記載の耐油紙。
項8:前記耐油層がフィルムトランスファーコーターで形成されたものである、項1〜7のいずれか1項に記載の耐油紙。
項9:耐油紙の製造方法において、紙基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含む耐油層用塗工液を塗工する工程、前記耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たすように、前記耐油層の塗工面を金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通す工程を含み、前記耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであり、且つ前記耐油紙の耐油層を備えた面の75度光沢度が35%以上であることを特徴とする耐油紙の製造方法。
項10:前記耐油層用塗工液をフィルムトランスファーコーターで塗工する、項9に記載の耐油紙の製造方法。
本発明の耐油紙は、透明性が高く、耐油性に優れ、耐油層を備えた面の光沢度が高い。
本明細書中において、「含む」なる表現については、「含む」、「実質のみからなる」、及び「のみからなる」旨の概念を含む。
本発明の耐油紙は、油脂成分や水分を含む食品等の包装用紙として用いることができ、食品等に接する側に耐油層がくるようにして食品を包装することにより、食品等の油脂成分や水分が浸み出してくることを抑制することができる。なお、本発明の耐油紙は、高い透明性と光沢性を有することから、包装用紙としての用途のみならず、クッキングペーパー等のシート類や紙製容器、耐油性能が必要とされるキッチン向けの建材用紙等に用いることもできる。
また、本発明の耐油紙は、耐油剤として非フッ素系耐油剤を用いているため、耐油紙を加熱したり、焼却した場合であってもフッ素化合物が発生することがない。このため、本発明の耐油紙は安全性が高く、環境への負荷が少ないという利点を有する。本発明において、非フッ素系耐油層とは、耐油層に対してフッ素系耐油剤の含有率が、5質量%以下ものをいい、好ましくは1質量%以下であり、より好ましくは0質量%である。非フッ素系耐油層は、耐油剤として非フッ素系の耐油剤を用いることが好ましく、非フッ素系の耐油剤として、後述するようなポリビニルアルコール、スチレン−ブタジエン共重合体を含むことが好ましい。
本発明における耐油層は、顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含有している。本発明において用いられるポリビニルアルコールとしては、特に限定されず、例えば未変性の完全ケン化ポリビニルアルコール、部分ケン化ポリビニルアルコールや変性ポリビニルアルコール等のポリビニルアルコール系樹脂が挙げられる。変性ポリビニルアルコールとしては、例えばエチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコール、珪素変性ポリビニルアルコール、アセトアセチル基変性ポリビニルアルコール、ジアセトン基変性ポリビニルアルコール等が挙げられる。なかでも、未変性の完全ケン化ポリビニルアルコール、エチレン変性ポリビニルアルコール、カルボキシ変性ポリビニルアルコールは、耐油性に優れるため好ましい。さらに、エチレン変性ポリビニルアルコールは、耐油層を形成するための塗工液の増粘を抑制することができる。これにより、塗工適性に優れた塗工液を得ることができ、耐油層の塗工面状態を良化させることができる。
ポリビニルアルコール系樹脂の含有率は、特に限定されず、耐油層の全固形量中0.5〜20質量%であることが好ましく、3〜10質量%であることがさらに好ましい。ポリビニルアルコール系樹脂の含有率を上記範囲内とすることにより、耐油層の耐油性をより一層高めることができる。さらに、耐油層を形成するための塗工液の増粘を抑制することができ、塗工欠陥の発生を抑制することができる。
耐油層に含まれる顔料としては、特に限定されず、無機顔料や有機顔料等の各種顔料を使用することができる。無機顔料の具体例としては、カオリン、構造性カオリン、デラミカオリン、焼成カオリン等のカオリン類、合成マイカ、重質炭酸カルシウム、軽質炭酸カルシウム、タルク、硫酸カルシウム、硫酸バリウム、二酸化チタン、酸化亜鉛、アルミナ、水酸化アルミニウム、炭酸マグネシウム、酸化マグネシウム、シリカ、アルミノ珪酸マグネシウム、珪酸カルシウム、ホワイトカーボン、ベントナイト、ゼオライト、セリサイト、スメクタイト等の鉱物等が挙げられる。なかでもカオリンは、優れた耐油性と耐水性を示すため好ましく用いられる。また、カオリンは、耐油紙の密度を高めたときの透明性に優れ、光沢性にも優れた効果を発揮するので好ましい。一方、有機顔料の具体例としては、ポリイソプレン、ポリネオプレン、ポリブタジエン等のポリジエン類、ポリブテン、ポリイソブチレン、ポリプロピレン等のポリアルケン類、酢酸ビニル、スチレン、(メタ)アクリル酸、(メタ)アクリル酸アルキルエステル、(メタ)アクリルアミド、メチルビニルエーテル等のビニル系モノマーの重合体や共重合体類、ポリウレタン系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリアミド系樹脂、尿素系樹脂、メラミン系樹脂、ベンゾグアナミン系樹脂等の密実型、中空型、あるいは貫通孔型粒子等が挙げられる。これらの顔料は、1種のみを用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
なお、カオリンの平均粒子径は0.5〜20μmであることが好ましく、1〜10μmであることがより好ましい。カオリンの平均粒子径を上記範囲内とすることにより、塗工安定性を高めることができ、かつ耐油性と撥水性(耐水性)に優れた耐油層を形成することができる。
なお、平板形状である無機顔料の粒子径の測定方法には、マイクロトラックレーザー回折法や、マイクロシーブ網篩法により平均粒子径を求める方法、電子顕微鏡の観察によって求める方法等がある。測定方法によって粒子径の数値に差があるが、マイクロシーブ網篩法と電子顕微鏡の観察によって求められる粒子径が実際の粒子径に近く、マイクロトラックレーザー回折法によって求められる粒子径は実際よりやや大きい値となる。しかし、本発明では、カオリンの平均粒子径は、測定が容易であり、再現性が高いことからマイクロトラックレーザー回折法により測定した値である。
顔料の含有率は、特に限定されず、耐油層の全固形量中20〜70質量%であることが好ましく、40〜65質量%であることがさらに好ましい。顔料の含有率を上記範囲内とすることにより、耐油性と耐水性に優れた耐油層を形成することができる。
耐油層に用いられるスチレン−ブタジエン共重合体は、高度の耐水性(撥水性)を有する塗被層の形成に寄与するもので、モノマーとしてスチレンとブタジエンを共重合させることにより得られるものである。なお、水不溶性の共重合体を用いるときは、ラテックスの形態で用いればよく、本発明で用いることができるスチレン−ブタジエン共重合体としては、広く使用されているスチレン−ブタジエン共重合体のなかから適宜選択すればよい。例えば旭化成社から市販されている「A6160」等を用いることができる。スチレン−ブタジエン共重合体のガラス転移温度は、30℃以下であることが好ましく、20℃以下がより好ましく、0℃以下が更に好ましい。このように、ガラス転移温度(Tg)を30℃以下とすることにより、耐油層は、高い成膜能力と優れた撥水耐油性を発揮することができる。なお、本発明においてTgは、JIS K7121−1987プラスチックの転移温度測定方法に準じて示差走査熱量測定(DSC)により得られるものである。
本発明において用いられるスチレン−ブタジエン共重合体は、平均粒子径が0.01〜1.0μmであるものが好ましい。平均粒子径がこの範囲にあれば水分散性が良好となる。なお、平均粒子径が0.01μm未満であると、塗工時の機械的安定性が悪くなるおそれがある。一方、1.0μmを超えるとハイシェア粘度が低く、所望の塗布量が得られなかったり、塗工面にストリーク等の塗工欠陥が発生したりするおそれがある。なお、ここでは、スチレン−ブタジエン共重合体の平均粒子径は、光散乱法粒子径分布測定機(HORIBA社製、商品名:LA−950)で測定したものである。
本発明においては、フィルムトランスファーコーターにおける塗工適性を確保するため、耐油層用塗工液の粘度を制御することが好ましい。このため、スチレン−ブタジエン共重合体の分子量(重量平均分子量)を5万〜200万とすることが好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体の分子量は、重合時の反応温度、反応時間、平均粒子径、酸価の制御により適宜調節することができる。さらに、公知の連鎖移動剤を用いてもよい。このような連鎖移動剤としては、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、イソプロピルアルコール、メタノール、四塩化炭素等が挙げられる。その使用量は、モノマー成分100質量部に対して0.001〜2.0質量部であり、好ましくは0.05〜1.0質量部である。
スチレン−ブタジエン共重合体の含有率は、特に限定されず、耐油層の全固形量中20〜50質量%であることが好ましく、25〜45質量%であることがより好ましい。スチレン−ブタジエン共重合体の含有率を上記範囲内とすることにより、耐油性に加えて耐水性(撥水性)も付与することができ、耐油性と耐水性(撥水性)に優れた耐油層を形成することができる。
本発明では、耐油層に含まれるポリビニルアルコールとスチレン−ブタジエン共重合体の質量比は、特に限定されず、1:9〜5:5であることが好ましい。ポリビニルアルコールとスチレン−ブタジエン共重合体の質量比を上記範囲内とすることにより、耐油性と耐水性のバランスに優れ、特に顔料としてカオリンを用いた場合に透明性、光沢性を向上する効果に優れる。また、適正な濃度と粘度範囲の塗工液とすることができ、塗工面質に優れた耐油層を形成することができる。
本発明では、耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであり、耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たすことを特徴とする。本発明の耐油紙には、紙基材のグラシン紙より格段に高い透明性が望まれ、一方で包装用紙や紙容器として折り目、罫線等が耐油性の低下を招かない独自の坪量が透明性との関係で求められる。そこで、上記式は、透明性が高く、耐油紙として十分な性能を有する不透明度と坪量の関係を近似式として表したものである。坪量は、強度とハンドリングを向上する観点から25.0〜70.0g/m程度が好ましい。なお、本発明における不透明度はJIS P8149−2000に準じて測定され、坪量はJIS P8124−1998に準じて測定される値である。本発明における耐油紙の不透明度は、45%以下に抑えることが好ましい。これにより透明性の高い透明耐油紙とすることができる。
本発明では、特定の耐油層を備え、上記式を満たすことにより、耐油層を備えた面のJIS P8142−2005に準じて測定される表面光沢度(75度)は35%以上、好ましくは40%以上と高めることができる。
前記式を満たすように調節する、また不透明度を抑えるためには、上述したように耐油層における顔料の種類と含有率、スチレン−ブタジエン共重合体とポリビニルアルコール系樹脂との質量比、紙基材に使用するパルプのフリーネス等を調整することにより調節することができる。また、後述するように、金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通して前記式を満たすようになされた耐油紙は、耐油層を備えた面の光沢度を効果的に高めることができるため、本発明における好ましい態様のひとつである。
本発明では、耐油紙の撥水性(耐水性)をより一層向上する観点から、耐油層中にアクリル系撥水剤を含有させることが好ましい。本発明でいうアクリル系撥水剤とは、(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーを必須成分として含み、(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマー、(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーから選択される少なくとも1種のモノマーからなる共重合体である。
アクリル系撥水剤において用いられる(a)エチレン性不飽和カルボン酸含有モノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸、クロトン酸、マレイン酸、イタコン酸、フマル酸、モノアルキルマレイン酸、モノアルキルフマル酸、モノアルキルイタコン酸等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、撥水性の点でメタクリル酸が特に好ましい。
アクリル系撥水剤において用いられる(b)(メタ)アクリル酸アルキルエステルモノマーとしては、例えば(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸t−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸n−ノニル、(メタ)アクリル酸イソノニル、(メタ)アクリル酸ラウリル、(メタ)アクリル酸ステアリル、(メタ)アクリル酸デシル、(メタ)アクリル酸ウンデシル、(メタ)アクリル酸ドデシル等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが好ましい。
アクリル系撥水剤において用いられる(c)これらのモノマーと共重合可能な他のモノマーとしては、スチレン、酢酸ビニル、塩化ビニル、塩化ビニリデン、(メタ)アクリロニトリル、エチレン、プロピレン、2−ヒドロキシエチル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシブチル(メタ)アクリレート、4−ヒドロキシプロピル(メタ)アクリレート、ポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、2−ヒドロキシ−3−フェノキシプロピル(メタ)アクリレート、グリセロールモノ(メタ)アクリレート、エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリエチレングリコールジ(メタ)アクリレート、(ポリ)エチレングリコールジ(メタ)アクリレート、ジプロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,2−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−プロピレングリコールジ(メタ)アクリレート、1,3−ブチレングリコールジ(メタ)アクリレート、トリメチロールプロパントリ(メタ)アクリレート、テトラメチロールメタンテトラ(メタ)アクリレート、ジビニルベンゼン、1,4−ブタンジオールジ(メタ)アクリレート、1,6−ヘキサンジオールジ(メタ)アクリレート、ネオペンチルグリコールジ(メタ)アクリレート、ジアリル(メタ)アクリレート、グリシジル(メタ)アクリレート、メチルグリシジル(メタ)アクリレート、N−メチロール(メタ)アクリルアミド、N−メトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N−ブトキシメチル(メタ)アクリルアミド、N,N’−メチレンビス(メタ)アクリルアミド、ビニルスルホン酸ナトリウム、p−スチレンスルホン酸ナトリウム、2−アクリルアミド−2−メチルプロパンスルホン酸、酸ホスホキシエチル(メタ)アクリレートエタノールアミンハーフ塩、3−アリロキシ−2−ヒドロキシプロパンスルホン酸ナトリウム、ポリオキシエチレンスチレン化フェニル硫酸ナトリウム、グリセリンモノアリルエーテルモノスルホコハク酸ナトリウム、2−スルホエチル(メタ)アクリル酸ナトリウム、(メタ)アクリルアミド、n−アミル(メタ)アクリレート、イソアミル(メタ)アクリレート、ベンジル(メタ)アクリレート、2−メトキシエチル(メタ)アクリレート、エチルカルビトール(メタ)アクリレート、カプロラクトン変性(メタ)アクリレート、アクロレイン、ジアセトン(メタ)アクリルアミド、ホルミルスチロール、ビニルメチルケトン、ビニルエチルケトン、(メタ)アクリロオキシアルキルプロペナール、ジアセトン(メタ)アクリレート、アセトニル(メタ)アクリレート、アセトアセトキシエチル(メタ)アクリレート、3,4−エポキシシクロヘキシル(メタ)アクリレート、ジアリルフタレート、トリアリルシアヌレート等が挙げられ、これらのうちから少なくとも1種を用いることが好ましい。なかでも、耐水性の点でスチレンが特に好ましい。
本発明におけるアクリル系撥水剤は、公知の乳化重合法によって得ることができる。例えば、所定の反応容器に上記の各種モノマー類、乳化剤および水を仕込み、ラジカル重合開始剤を加え、攪拌下、加温することにより得られる。
ラジカル重合開始剤としては、過硫酸カリウム、過硫酸ナトリウム、過硫酸アンモニム等の過硫酸塩、過酸化水素、t−ブチルハイドロオキサイド、t−ブチルパーオキシベンゾエート等の過酸化物、2,2−アゾビスイソブチロニトリル、2,2−アゾビス(2−ジアミノプロパン)ハイドロクロライド、2,2−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)等のアゾ系化合物が挙げられる。なお、重合速度の促進や低温反応を望む場合には、重亜硫酸ナトリウム、塩化第一鉄、アスコルビン酸、ホルムアルデヒドスルホオキシレート塩等の還元剤を前記ラジカル重合開始剤と組合せて(レドックス系重合開始剤)用いることができる。
重合開始剤の使用量は、特に限定されず、モノマー成分100質量部に対して、通常0.02〜3質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1質量部である。
使用する乳化剤としては、特に限定はなく、アニオン性乳化剤、ノニオン性乳化剤、反応性乳化剤が挙げられる。アニオン性乳化剤としては、オレイン酸カリウム等の脂肪酸金属塩、ラウリル硫酸ナトリウム等のアルキル硫酸塩、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム等のアルキルベンゼンスルホン酸塩、アルキルナフタレンスルホン酸ナトリウム等のアルキルスルホン酸塩、ジアルキルスルホコハク酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル硫酸ナトリウム、ポリオキシエチレンアルキルエーテルリン酸エステル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。ノニオン性乳化剤としては、ポリオキシエチレンアルキルエーテル、ポリオキシエチレンアルキルアリルエーテル、ポリオキシエチレン−ポリオキシプロピレンブロックコポリマー、ポリエチレングリコール脂肪酸エステル、ポリオキシエチレンソルビタン脂肪酸エステル等が挙げられる。反応性乳化剤としては、種々の分子量(EO付加モル数の異なる)のポリエチレングリコールモノ(メタ)アクリレート、ポリオキシエチレンアルキルフェノールエーテル(メタ)アクリレート、2−(メタ)アクリロイルオキシエチルスルホン酸アンモニウム、ポリエチレングリコールのモノマレイン酸エステルおよびその誘導体、(メタ)アクリロイルポリオキシアルキレンアルキルエーテルリン酸エステル等が挙げられる。
乳化剤の使用量は、特に限定されず、通常、モノマー成分100質量部に対して、0.1〜10質量部程度使用すればよく、好ましくは0.2〜5質量部である。乳化剤の使用量がこの範囲にあることによって、凝固物を生じることなく、適度な平均粒子径のアクリル系撥水剤エマルションが得られる。
本発明におけるアクリル系撥水剤は、前記のように水媒体中で乳化重合法により得られるが、アクリル系撥水剤エマルションの固形分濃度を30〜75質量%、好ましくは40〜65質量%程度として行うことができる。重合反応は単一重合開始の場合では通常40〜95℃、好ましくは60〜90℃程度の反応温度で、1〜10時間、好ましくは4〜8時間程度行えばよい。また、レドックス系重合開始剤の場合では反応温度はより低く、通常5〜90℃、好ましくは20〜70℃程度である。モノマーの添加方法としては、一括添加法、分割添加法、連続添加法等で、モノマータップ法、モノマープレ乳化タップ法等の方法で行うことができる。なかでも、好ましくは連続添加法で、モノマープレ乳化タップ法である。
本発明においては、フィルムトランスファーコーターでの塗工適性を確保するため、耐油層用塗工液のハイシェア粘度を調整することが好ましい。そこで、アクリル系撥水剤を乳化重合する際に分子量(重量平均分子量)を反応温度、反応時間、平均粒子径、酸価の調整等により適宜実施することができる。さらに、公知の連鎖移動剤を用いることは好ましい実施態様である。このような連鎖移動剤としては、ブチルメルカプタン、ドデシルメルカプタン、チオグリコール酸オクチル、イソプロピルアルコール、メタノール、四塩化炭素等が挙げられる。その使用量は、特に限定されず、モノマー成分100質量部に対して0.001〜2.0質量部が好ましく、より好ましくは0.05〜1.0質量部である。
本発明におけるアクリル撥水剤の含有率は、特に限定されず、耐油層の全固形量中1〜20質量%であることが好ましく、更に5〜12質量%が好ましい。1質量%以上とすることにより、撥水度を向上できる。一方、20質量%を超えて添加しても、それ以上の撥水度が得られず不経済であるだけでなく、耐油剤の配合比が下がって耐油性能が落ちる恐れがあるため、20質量%以下とすることが好ましい。
なお、本発明の耐油層用塗工液には、必要に応じて、分散剤、増粘剤、保水剤、消泡剤、着色剤等の通常用いられている各種助剤を添加してもよい。これらの助剤の含有率は、特に限定されず、耐油層の全固形量中10質量%以下であることが好ましく、5質量%以下であることがより好ましく、1質量%以下であることがさらに好ましい。
本発明の耐油紙に用いられる紙基材としては、少なくとも一方の表面に耐油層を設けることができるものであれば良く、特に限定されないが、例えば植物由来のパルプを主成分とするものを用いることが好ましい。例えば、上質紙、中質紙、微塗工紙、塗工紙、片艶紙、晒または未晒クラフト紙(酸性紙又は中性紙)、又は段ボール用、建材用、白ボール用、チップボール用などに用いられる板紙、白板紙などを用いることができる。紙基材の坪量は、特に制限されず、耐油紙として坪量が20.0〜90.0g/mとなるように調整すればよい。
パルプとしては、通常製紙用として使用されるあらゆるものが使用できる。例えば、広葉樹晒クラフトパルプ(LBKP)、針葉樹晒クラフトパルプ(NBKP)、広葉樹晒サルファイトパルプ(LBSP)、針葉樹晒サルファイトパルプ(NBSP)等の化学パルプ、ストーングランドパルプ(GP)、加圧ストーングランドパルプ(PGW)、リファイナーグランドパルプ(RGP)、ケミグランドパルプ(CGP)、サーモメカニカルパルプ(TMP)、ケミサーモメカニカルパルプ(CTMP)等の未晒、半晒、あるいは晒パルプ、亜硫酸パルプ、古紙パルプ等が使用できる。
本発明で用いることができる紙基材の王研式透気度は、70秒以上であることが好ましい。紙基材のJAPAN TAPPI紙パルプ試験方法No.5−2:2000に準じて測定した王研式透気度が70秒未満になると、原紙に対する耐油層用塗工液の浸透が大きくなり、耐油性が低下しやすくなる。なお、王研式透気度の上限値は、特に制限はないが、600秒以下であることが好ましい。
さらに、紙基材の透気度を高めるため、使用するパルプの叩解度をJIS P8121−1995に準じて測定したカナダ標準フリーネスが300ml以下とすることが好ましい。叩解度のより好ましい範囲は80〜250mlである。叩解度を上記範囲内とすることにより耐油層用塗工液の基材への浸透を抑え、耐油紙全体の耐油性を高めることができる。
なお、使用するパルプは、例えばビーター、ジョルダン、シングルディスク・リファイナー、コニカルリファイナー、円筒型リファイナー、デラックス・ファイナー、ダブル・ディスク・リファイナー(DDR)、媒体攪拌ミル、振動式ミル等の叩解機により上述した叩解度となるように調整される。叩解の条件は、特に限定されないが、各種リファイナーの刃の形状、回転数、パルプの濃度、パルプの繊維長、パルプの粗度等が叩解後のパルプ物性に影響するので、所望の叩解度が得られるように適宜叩解条件が選択される。
紙基材にはさらに、添加剤を含有させてもよい。添加剤としてはロジン、アルキルケテンダイマー、アルケニルコハク酸等に代表されるサイズ剤、硫酸バンド、カチオン性高分子電解質等に代表される定着剤、クレー、タルク、炭酸カルシウム、焼成カオリン、酸化アルミニウム、水酸化アルミニウム、酸化チタン、無定形シリカ、尿素−ホルマリン樹脂粒子等に代表される填料類、ポリアクリルアミド系ポリマー、澱粉等に代表される紙力増強剤、メラミン樹脂、尿素樹脂、ポリアミド−ポリアミン−エピクロルヒドリン樹脂等に代表される湿潤紙力増強剤、その他、濾水剤、青み付けなどの色調調整用の染料、顔料、蛍光染料など各種助剤類を挙げることができる。本発明では、透明性を高めるため、填料類を含有させないことが好ましい。
紙基材は、常法により各種抄紙機により抄紙され、湿紙を形成した後、乾燥させることにより得ることができる。なお、紙基材には、必要により澱粉、ポリビニルアルコール、ゼラチン、填料等を含むことが好ましく、表面サイズプレス処理マシンカレンダー等による平滑化処理等、常法による処理工程を経て製造されることが好ましい。
本発明において使用される抄紙機としては、エアクッションヘッドボックスあるいはハイドロリックヘッドボックスを有する長網抄紙機、ツインワイヤー抄紙機、オントップ型ツインワイヤー抄紙機、ヤンキー抄紙機等を挙げることができる。
本発明では、耐油紙の密度を0.9〜1.2g/cmとすることが好ましく、1.0〜1.2g/cmとすることがより好ましい。これにより、透明性と耐油性を向上することができる。密度を上げる方法としては、例えば、紙基材の抄造時に湿紙状態で圧力を加えること、乾燥後にマシンカレンダーやソフトニップカレンダー、グロスカレンダーを使用すること、あるいは紙基材抄造後にスーパーカレンダーを使用すること等が挙げられる。本発明では、耐油層を備えた面の光沢度を向上する観点から、耐油層の塗工面を後述する金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通して、密度を調節することが好ましい。
本発明における耐油紙の製造方法は、紙基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含む耐油層用塗工液を塗工する工程、前記耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たすように、前記耐油層用塗工液の塗工面を金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通す工程を含み、前記耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであることを特徴とする。
金属ロールとしては、例えば鋼鉄チルドロール、合金チルドロール、表面に硬質クロムメッキしたチルドロール等が挙げられる。一方、弾性ロールとしては、例えばウレタンゴム等のゴムロール、ポリアミド樹脂等の樹脂ロール、シリコンロール、コットンロール等の弾性ロールが挙げられる。処理ニップ数は、特に限定されず、通常2〜8ニップで行われる。耐油層の塗工面を、金属ロール及び弾性ロールのいずれに当てて処理してもよい。加圧ニップに通す速度は、例えば金属ロールの表面温度等に応じて適宜選択すれば良いが、5m/分〜1000m/分の範囲で調節することが好ましい。
金属ロールの表面温度は、特に限定されないが、50℃以上が好ましく、60℃以上がより好ましく、100℃以上が更に好ましい。上限は特に設けないが操業面を考慮すると300℃以下が好ましい。表面温度を50℃以上とすることにより、ニップ圧を過剰に加えることなく、上記の式を満たすことが容易となり、透明性、耐油性、光沢性等を向上することができる。
加圧ニップの線圧は、特に限定されず、加圧ニップに通す速度に応じて適宜選択すれば良いが、2kN/m以上が好ましく、15kN/m以上がより好ましく、100kN/m以上が更に好ましく、300kN/m以上が特に好ましい。上限は特に設けないが、操業面と紙基材の腰を維持する観点から500kN/m以下が好ましい。
耐油層の塗工方法としては、一般に公知の塗工装置を用いることができ、例えばバーコーター、ブレードコーター、エアーナイフコーター、ロールコーター、リバースロールコーター、カーテンコーター、スロットダイコーター、グラビアコーター、チャンプレックスコーター、ブラシコーター、スライドビードコーター、ツーロールあるいはメータリングブレード方式のサイズプレスコーター、ビルブレードコーター、ショートドウェルコーター、ゲートロールコーター、キャレンダーによるニップコーター等が適宜用いられる。これらの中でも、生産効率を高めるために、ゲートロールコーター又はロッドメタリングサイズプレスコーターといったフィルムトランスファータイプのコーターを用いることが好ましい。また、塗工は、抄紙工程中のオンマシンで行ってもよいし、抄紙後のオフマシンで行ってもよい。本発明では、生産効率を高める観点からオンマシンで行うことが好ましい。
耐油層の塗工量は、特に限定されず、0.5〜20.0g/mの範囲であることが好ましく、1.0〜18.0g/mの範囲であることがより好ましい。耐油層の塗工量を上記範囲内とすることにより、十分な耐油性能を発揮し得る耐油層を得ることができる。
本発明では、耐油層は、紙基材の少なくとも片面に1層のみ設けられていてもよいが、紙基材の少なくとも片面に複数層設けられていてもよい。同じ塗工量を塗工する場合、複数層構成とした方が単層構成よりも耐油性が得られ易い傾向となる。耐油層を複数層構成とする場合、層数は、2〜5層であることが好ましく、2〜4層であることがより好ましい。複数層構成の場合、各層は同じ構成(組成)でもよいし、異なっていてもよい。なお、耐油層が複数層の場合は、その合計の塗工量が上記範囲内であることが好ましい。
本発明では、耐油層が形成された紙基材を金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通す工程は、紙基材の片面に耐油層用塗液を塗工した後、その塗工面が乾燥された後であってもよく、また乾燥される前の湿潤状態であってもよい。湿潤状態を得るには、乾燥を調節してもよいし、水塗り装置等によって再湿潤させてもよい。再湿潤させる場合、耐油紙の坪量に対して水分を好ましくは5〜15%程度、より好ましく7〜13%程度付けて、加圧ニップを通すことにより、透明性と光沢度を効果的に高めることができる。加圧ニップ装置として通常のスーパーカレンダー、グロスカレンダー、ソフトカレンダー等の平滑化処理装置を用いてもよく、またオンマシン又はオフマシンで行ってもよい。
以下に実施例を挙げて本発明の耐油紙をより具体的に説明するが、勿論これらに限定されるものではない。なお、例中の「部」及び「%」は、特に断らない限り、それぞれ「質量部」及び「質量%」を示す。
実施例1
(耐油層用塗工液の調製)
以下、固形分換算の部数でエチレン変性ポリビニルアルコール(商品名:HR3010、クラレ社製)水溶液の6部、カオリン(商品名:HTクレー、BASFジャパン社製)水分散液の54部、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:A6160、Tg:20℃、平均粒径135nm、旭化成社製)の31部、メタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体であるアクリル系撥水剤(商品名:カルタシールHFU、アークロマジャパン社製)の9部からなる組成物を混合し、調製水を加えて固形分濃度40%の耐油層用塗工液を得た。
(耐油紙の作製)
坪量35g/m、透気度200秒であり、内添填料を含まない非塗工紙の片面に、フィルムトランスファーコーターとしてロッドメタリングサイザーにて上記の耐油層用塗工液を乾燥後の塗工量が3.5g/mとなるように塗工した。その後、乾燥させて得られた塗工面に、耐油紙の坪量に対して水分10%が付くように水塗りを行い、線圧50kN/mで表面温度50℃の金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに塗工面が金属ロールに当たるように通して耐油紙を得た。耐油層用塗工液の塗工は、オンマシンにて行った。耐油紙の坪量は38.5g/m、密度は0.99g/cm、不透明度は38.6%、光沢度は48.3%であった。これは、耐油紙の坪量と不透明度とが前記式を満たし、且つ光沢度を満たすものであった。
実施例2
坪量25g/m、透気度100秒であり、内添填料を含まない非塗工紙の片面に、ブレードコーターにて上記の耐油層用塗工液を乾燥後の塗工量が7.1g/mとなるように塗工した。その後、乾燥させて得られた塗工面に、耐油紙の坪量に対して水分10%が付くように水塗りを行い、線圧50kN/mで表面温度50℃の金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに塗工面が金属ロールに当たるように通して耐油紙を得た。耐油層用塗工液の塗工は、オフマシンにて行った。耐油紙の坪量は32.1g/m、密度は1.07g/cm、不透明度は40.6%、光沢度は64.5%であった。これは、耐油紙の坪量と不透明度とが前記式を満たし、且つ光沢度を満たすものであった。
実施例3
実施例1の耐油層用塗工液の調製において、エチレン変性ポリビニルアルコールの量を6部に代えて10部とし、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの量を31部に代えて27部とした以外は、実施例1と同様にして耐油紙を得た。耐油紙の坪量は38.7g/m、密度は0.98g/cm、不透明度は38.7%、光沢度は46.3%であった。これは、耐油紙の坪量と不透明度とが前記式を満たし、且つ光沢度を満たすものであった。
実施例4
実施例1の耐油層用塗工液の調製において、カオリンの量を54部に代えて44部とし、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスの量を31部に代えて41部とした以外は、実施例1と同様にして耐油紙を得た。耐油紙の坪量は38.6g/m、密度は0.99g/cm、不透明度は38.5%、光沢度は44.2%であった。これは、耐油紙の坪量と不透明度とが前記式を満たし、且つ光沢度を満たすものであった。
比較例1
実施例1の耐油紙の作製において、金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通さなかった以外は、実施例1と同様にして耐油紙を得た。耐油紙の坪量は38.5g/m、密度は0.71g/cm、不透明度は48.1%、光沢度は16.2%であった。これは、光沢度を満たさないものであった。
比較例2
実施例2の耐油紙の作製において、金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通さなかった以外は、実施例2と同様にして耐油紙を得た。耐油紙の坪量は32.1g/m、密度は0.92g/cm、不透明度は46.4%、光沢度は29.9%であった。これは光沢度を満たさないものであった。
かくして得られた耐油紙について、以下の評価を行った。その結果は、表1に示す通りであった。
(坪量)
坪量は、JIS P8124−1998に準じて測定した。
(密度)
密度は、JIS P8118−1998に準じて測定した。
(不透明度)
不透明度は、JIS P8149−2000に準じて測定した。
(光沢度)
光沢度は、耐油層を備えた面のJIS P8142−2005に準じて表面光沢度(75度)を測定した。
(耐油性)
TAPPI UM−557法(キット法)により耐油層の塗工面の耐油度を測定した。なお、本発明において耐油度は6級以上が好ましい。
(撥水性)
JAPAN TAPPI 紙パルプ試験方法No.68:2000紙及び板紙−はっ水性試験方法に準拠して、耐油層の塗工面の撥水性を測定した。なお、本発明において撥水度は5級以上が好ましい。
Figure 2016135932
本発明の耐油紙は、透明性が高く、耐油性に優れ、耐油層を備えた面の光沢度が高い。このため、本発明の耐油紙は、油脂成分や水分を含有する食品の包装用紙や容器の耐油紙として好ましく用いられ、透明耐油紙として産業上の利用可能性が高い。

Claims (10)

  1. 紙基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含有する少なくとも1層の耐油層を備えた耐油紙であって、前記耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであり、前記耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たし、且つ前記耐油紙の耐油層を備えた面の75度光沢度が35%以上であることを特徴とする耐油紙。
  2. 前記耐油紙の密度が0.9〜1.2g/cmである、請求項1に記載の耐油紙。
  3. 前記耐油紙の不透明度が45%以下である、請求項1または2に記載の耐油紙。
  4. 前記耐油層がアクリル系撥水剤としてメタクリル酸−アクリル酸アルキルエステル−スチレン共重合体を耐油層の全固形量中1〜20質量%の割合で含有する、請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐油紙。
  5. 前記顔料としてカオリンを耐油層の全固形量中20〜70質量%の割合で含有する、請求項1〜4のいずれか1項に記載の耐油紙。
  6. 前記耐油層が非フッ素系耐油層である、請求項1〜5のいずれか1項に記載の耐油紙。
  7. 金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通して前記式を満たすようになされた、請求項1〜6のいずれか1項に記載の耐油紙。
  8. 前記耐油層がフィルムトランスファーコーターで形成されたものである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の耐油紙。
  9. 耐油紙の製造方法において、紙基材の少なくとも片面に顔料、スチレン−ブタジエン共重合体及びポリビニルアルコールを含む耐油層用塗工液を塗工する工程、前記耐油紙の坪量と不透明度とが次式、Op≦31.09Ln(Wt)−60.96[式中、Opは不透明度(%)、Wtは坪量(g/m)を表す]を満たすように、前記耐油層の塗工面を金属ロールと弾性ロールとからなる加圧ニップに通す工程を含み、前記耐油紙の坪量が20.0〜90.0g/mであり、且つ前記耐油紙の耐油層を備えた面の75度光沢度が35%以上であることを特徴とする耐油紙の製造方法。
  10. 前記耐油層用塗工液をフィルムトランスファーコーターで塗工する、請求項9に記載の耐油紙の製造方法。
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