JP6020192B2 - 耐油紙およびその製造方法 - Google Patents
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食品に含まれる油類が紙に浸透すると紙の表面にまで油が浸透して表面に油しみができて外観を損ねて商品価値を下げたり、印刷部分が油しみで黒くなり、文字が判読できなかったり、バーコード、QRコード(登録商標)等のOCR適性が低下するおそれがある。また、衣服に油が転移し汚染するなどの問題があるため、食品に接する部分に耐油性を付与した紙や板紙が使用される。
従来、耐油性を発現させるために、フッ素系耐油剤、特にパーフルオロフッ素系の耐油剤が使用されていた。しかし、パーフルオロフッ素系の化合物は、加熱処理によってパーフルオロオクタン酸やパーフルオロスルホン酸を発生するため、安全性に懸念が持たれている。そのため、安全性を高めたフッ素系樹脂も各種開発されつつあるが、耐油性が不十分であったり、安全性に不安が残っているのが現状である。
例えば、ポリビニルアルコール層とシリコーン樹脂層とを有する食品加熱用包装紙が提案されている(特許文献1)。
けん化度が85〜100モル%であり、かつ平均重合度が500〜2500であるポリビニルアルコールに架橋剤を添加したものを使用し、アスペン材が30質量%以上含む木材パルプを主体とした原紙の少なくとも片面に1〜8g/m2の処理層を設けた耐油紙が提案され、その好ましい実施態様としてシラノール変性されたポリビニルアルコールを使用することも提案されている(特許文献2)。
基材シートの少なくとも一方の面に、少なくともポリビニルアルコールとセラック(シェラック)を含む塗工層を有する耐油性・耐水性シートが提案されている(特許文献3)。
基材シートの少なくとも一方の面に、少なくともイソシアネート化合物を用いて硬化させたポリビニルアルコールを含む塗工層を有する耐油性・耐水性シートが提案されている(特許文献4)。
基材シートの少なくとも一方の面に、少なくともポリビニルアルコールとシリコーンオイルを含む塗工層を有する耐油性・耐水性シートが提案されている(特許文献5)。
紙支持体の少なくとも片面に、水素結合性樹脂(ポリビニルアルコール)と吸油性粒子(デンプン粒子)を含む耐油層を有する耐油紙が提案されている(特許文献6)。
α−オレフィンを1〜20モル%含有し、重合度200〜5000、ケン化度80〜100モル%のポリビニルアルコール系樹脂を165〜220℃で加熱して製造する耐油性を有する加工紙の製造技術が提案されている(特許文献7)。
ポリビニルアルコール系樹脂は親水性樹脂であり、強固な皮膜を形成するため、油の浸透を防ぐことによって優れた耐油性が得られることが知られている。
しかし、製造面においては、元々親水性樹脂のため保水性が高く、乾燥し難い傾向がある上、成膜性が優れているために乾燥中に塗工層表面に皮膜を形成してしまうことにより、乾燥性を低下させることが欠点となっている。
特に、板紙のような坪量設定幅が大きい銘柄の場合、通常抄紙パートの坪量で抄紙速度を調節できるが、ポリビニルアルコール樹脂系塗工層をオンマシン塗工する場合は、塗工層の乾燥工程が律速となり、原紙坪量設定値にかかわらず、一定の抄紙速度となる。すなわち、低坪量銘柄では生産効率を著しく低下させ、好ましくないため、満足な非フッ素系耐油紙は得られていないのが実状である。
本発明では、紙支持体の少なくとも片面に少なくとも2層の塗工層を設け、最表層よりも紙支持体に近い少なくとも1層中にデンプン類とスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを特定の比率で含有させるものである。使用するデンプン類としては、特に限定するものではなく、2種以上を併用することもできる。デンプン類の具体例としては、トウモロコシデンプン、小麦デンプン、米デンプン、馬鈴薯デンプン、甘藷デンプン、タピオカデンプン等の非変性デンプン(粳、糯)、または変性デンプン(例えば、酸化デンプン、酵素変性デンプン、リン酸エステル化変性デンプン、エーテル化変性デンプン、架橋エーテル化デンプン、アセチル化変性デンプン、グラフト化デンプン等)が挙げられる。
[下塗り層塗料の調製]
12.0質量%の疎水化デンプン(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)60質量部、48質量%スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:X300B、JSR社製、ガラス転移温度:−13℃、平均粒子径:125nm)40質量部を混合撹拌して、下塗り層塗料を調製した。
70質量%のカオリン(商品名:ウルトラホワイト90、BASFジャパン社製)水分散液142.9質量部に48質量%スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:X300B、JSR社製)28.1質量部、39.5質量%のアクリル系耐油剤ラテックス(商品名:PDX7326N、BASFジャパン社製)49.9質量部、消泡剤(商品名:SNデフォーマーJK、サンノプコ社製)0.3質量部、希釈水45.5質量部を混合撹拌して上塗り層塗料を調製した。
塗工装置を備えた円網多筒式抄紙機にて、7層抄きで坪量350g/m2の板紙支持体を抄造した。なお、表裏層の配合はLBKP100質量部に対して、50質量%のロジン系サイズ剤(商品名:SPN−111、荒川化学工業社製)2質量部、27.0質量%の硫酸バンド4質量部添加した。抄造パート後のカレンダーにて、上記下塗り層塗料を固形分で3.0g/m2ニップ塗工した。さらに、付随するチャンピオンコーターにて上記上塗り層塗料を固形分で4.5g/m2塗工後乾燥して、オンマシンカレンダーにて平滑化処理を行って耐油紙を得た。
[上塗り層塗料の調製]
実施例1の上塗り層塗料の調製において、希釈水を21.3質量部にした以外は実施例1と同様にして上塗り層塗料を得た。
実施例1の耐油紙の製造において、塗工装置を備えた長網多筒式抄紙機にて、LBKP100質量部に対して、50質量%のロジン系サイズ剤(商品名:SPN−111、荒川化学工業社製)2質量部、27.0質量%の硫酸バンド4質量部添加した原料を用いて坪量38g/m2の紙支持体を抄造した。さらに、付随するロールコーターにて、上記下塗り層を固形分で3.0g/m2塗工した。さらに、付随するブレードコーターにて上記上塗り層を固形分で4.5g/m2塗工後乾燥して、オンマシンカレンダーにて平滑化処理を行って耐油紙を得た。
実施例1の下塗り層塗料の調製において、12.0質量%の疎水化デンプン(商品名:GRS−T110、王子コーンスターチ社製)91.5質量部、48質量%スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:X300B、JSR社製)8.5質量部を使用し、下塗り層の塗工量を固形分で1.7g/m2とした以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の耐油紙の製造において、表裏層の50質量%のロジン系サイズ剤(商品名:SPN−111、荒川化学工業社製)の使用量を0.3質量部にした以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の上塗り層塗料の調製において、39.5質量%のアクリル系耐油剤ラテックス(商品名:PDX7326N、BASFジャパン社製)の使用量を7.6質量部とした以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の下塗り層塗料の調製において、48質量%スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:X300B、JSR社製、ガラス転移温度:−13℃、平均粒子径:125nm)40質量部の代わりに50質量%スチレン−ブタジエン共重合体ラテックス(商品名:POT8183、日本ゼオン社製、ガラス転移温度:6℃、平均粒子径:160nm)38.4質量部を用いた以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の耐油紙の製造において、下塗り層塗料を固形分で2.0g/m2ニップ塗工した以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の下塗り層塗料の調製において、スチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを使用しなかった以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の下塗り層塗料の調製において、疎水化デンプンを使用しなかった以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
実施例1の耐油紙の製造において、下塗り層の塗工量を1.0g/m2とした以外は実施例1と同様にして耐油紙を得た。
<耐油性1>
TAPPI UM−557に準拠して、キット液を用いて、耐油性を評価した。
キット5以上が実用上問題ないレベルである。
市販のサラダ油上に各耐油紙の塗工層がサラダ油に接触するように浮かべて15分経過後の裏面の油じみを観察して評価した。
5点: 油じみが全く観察されない。
4点: 油じみのスポットが3個以内
3点: 油じみのスポットが4〜10個
2点: 油じみの面積が全面の25%未満
1点: 油じみの面積が全面の25%以上
3〜5点が実用上問題ないレベルである。
Claims (5)
- 紙支持体の少なくとも片面に少なくとも2層の塗工層を設けた耐油紙において、
前記塗工層のうち最表層よりも紙支持体に近い少なくとも1層中にデンプンおよび/または変性デンプンを該塗工層全固形分の5乃至50質量%含有し、
且つガラス転移温度が、−40乃至0℃であるスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを50乃至95質量%含有し、
デンプンおよび/または変性デンプンを該塗工層全固形分の5乃至50質量%含有し、且つスチレン−ブタジエン共重合体ラテックスを50乃至95質量%含有する層の塗工量が1.5乃至20.0g/m2であり、
最表層がスチレン−ブタジエン共重合体、ジイソブチレン−無水マレイン酸共重合体、スチレン−無水マレイン酸共重合体、エチレン−アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸アルキルエステル共重合体、尿素樹脂、メラミン樹脂、アミド樹脂、ウレタン樹脂、スチレン樹脂、(メタ)アクリル酸系樹脂、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂、メチルビニルエーテル樹脂等のビニル系樹脂から選ばれる少なくとも一種と、顔料を主成分とすることを特徴とする耐油紙。 - 前記紙支持体が単層構造で、且つロジン系サイズ剤を紙支持体全固形分の0.5乃至5.0質量%含有させたことを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
- 前記紙支持体が多層構造で、該塗工層が形成される表層中にロジン系サイズ剤を紙支持体表層の固形分の0.5乃至5.0質量%含有させたことを特徴とする請求項1に記載の耐油紙。
- 前記塗工層のうち最表層がスチレン−(メタ)アクリル酸共重合体、スチレン−(メタ)アクリル酸エステル共重合体、(メタ)アクリル酸系樹脂、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系樹脂、(メタ)アクリルアミド樹脂から選ばれる少なくとも一種を最表層全固形分中5乃至50質量%含有することを特徴とする請求項1〜3のいずれか1項に記載の耐油紙。
- 請求項1〜4のいずれか1項に記載の塗工層が、抄紙機の抄紙パートの後段に設けられた塗工パートでオンマシン塗工によって形成させたことを特徴とする耐油紙の製造方法。
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