JP6085524B2 - 高い耐油性を有する紙複合体 - Google Patents
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Description
透気抵抗度1000秒以下の基紙の少なくとも一方の表面に乾燥質量換算で0.5〜10.0g/m2設けてなり、
1000g/m2・24h以上の水蒸気透過性を有する紙複合体;
P=([η]×103/8.29)(1/0.62)
i)酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体とカルボキシル基またはラクトン環を生成する能力を有する単量体とを共重合して得られたビニルエステル系重合体を、アルコールあるいはジメチルスルホキシド溶液中でけん化する方法、
ii)メルカプト酢酸、3−メルカプトプロピオン酸などのカルボキシル基を含有するチオール化合物の存在下で、ビニルエステル系単量体を重合した後それをけん化する方法、
iii)酢酸ビニルなどのビニルエステル系単量体を重合する際に、ビニルエステル系単量体およびビニルエステル系重合体のアルキル基への連鎖移動反応を起こし、高分岐ビニルエステル系重合体を得た後にけん化する方法、
iv)エポキシ基を有する単量体とビニルエステル系単量体との共重合体をカルボキシル基を有するチオール化合物と反応させた後けん化する方法、
v)PVAとカルボキシル基を有するアルデヒド類とのアセタール化反応による方法、
などが挙げられる。
ラクトン環のメチンピークを用いて常法により含有量を算出する。ii)およびiv)の場合、硫黄原子に結合するメチレンに由来するピーク(2.8ppm)を用いて含有量を算出した。iii)の場合、作成した分析用PVAをメタノール−D4/D2O=2/8に溶解しプロトンNMRを用いて80℃で測定する。末端のカルボキシル基もしくはそのアルカリ金属塩のメチレン由来ピークは2.2ppm(積分値A)および2.3ppm(積分値B)に帰属し、末端のラクトン環のメチレン由来ピークは2.6ppm(積分値C)、ビニルアルコール単位のメチン由来ピークは3.5〜4.15ppm(積分値D)に帰属し、下記の式でカルボキシル基およびラクトン環の含有量を算出する。ここでΔは変性量(モル%)を表す。
カルボキシル基およびラクトン環の含有量(モル%)
=50×(A+B+C)×(100−Δ)/(100×D)
1,2−グリコール結合含有量(モル%)=B'(100−Δ)/A'
PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が65モル%未満の場合には、該ビニルアルコール系重合体の結晶性が極度に低下し、本発明の意図する高い耐油性や耐水性が得られない。また得られた紙複合体において、ビニルアルコール系重合体の特長である機械的物性などが損なわれる。一方、該PVAのトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基の含有量が98モル%より大の場合には、ポリマーの結晶性が極めて高くPVAの水溶液を調整するのに大変な労力を要したり、得られた水溶液の粘度が非常に高く、基紙への塗工適正に問題がある。
(1)耐油性評価
○キットテスト
一般的な耐油度はTAPPI UM557「Repellency of Paper and Board to Grease,Oil,and Waxes(Kit Test)」によって測定した。
耐油層を塗工した紙複合体を、10×10cmの正方形に切り出し、60℃のオーブン中に導入する。次いで、オレイン酸20滴を紙複合体の耐油層面に滴下する。こうして作成した試験片を、60℃のオーブン中に2時間放置する。その後オレイン酸の液滴を吸い取り紙で除去し、試料を黒色紙上へ設置する。紙へオレイン酸が浸透した場合、浸透部分は黒色に観察される。このテストでは、オレイン酸を滴下したすべての部分において浸透が確認されなければ、陽性(すなわち、オレイン酸に対する抵抗が確認された)と判断する。これに反して、浸透が確認されれば、テストは陰性(すなわち、オレイン酸に対する抵抗を示さない)と考えられる。
JIS P8117に準じ王研式滑度透気度試験器を用いて測定した。透気抵抗度の値は、一定面積を空気100ミリリットルが通過する時間を示す。よって、透気抵抗度の値が大きいほど空気が通過し難いことを示す。
JIS Z0208−1976に記載の防湿包装材料の透湿度試験方法(カップ法)に従い、温度40±0.5℃、相対湿度90±2%の条件下で測定した。透湿度1000〜5000g/m2・24hrを袋内部での結露と袋外部からの吸湿の発生がなく、食品包装用適性良好と判定した。
塗工紙の表面に、20℃のイオン交換水約0.1mlを滴下した後、指先でこすり、コーティング剤の溶出状態を観察し、以下の5段階で評価した。
5:耐水性に優れており、ヌメリ感がない。
4:ヌメリ感が有るが、コーティング層には変化はない。
3:コーティング剤の一部が乳化する。
2:コーティング剤の全体が再乳化する。
1:コーティング剤が溶解する。
[ビニルアルコール系重合体の製造方法]
撹拌機、窒素導入口、エチレン導入口、開始剤添加口およびディレー溶液添加口を備えた250L加圧反応槽に酢酸ビニル107.2kg、メタノール42.8kgおよび無水マレイン酸15.6gを仕込み、60℃に昇温した後30分間窒素バブリングにより系中を窒素置換した。次いで反応槽圧力が5.9Kg/cm2となるようにエチレンを導入仕込みした。開始剤として2,2’−アゾビス(4−メトキシ−2,4−ジメチルバレロニトリル)(AMV)をメタノールに溶解した濃度2.8g/L溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。またディレー溶液として無水マレイン酸をメタノールに溶解した濃度5%溶液を調整し、窒素ガスによるバブリングを行って窒素置換した。上記の重合槽内温を60℃に調整した後、上記の開始剤溶液204mlを注入し重合を開始した。重合中はエチレンを導入して反応槽圧力を5.9Kg/cm2に、重合温度を60℃に維持し、上記の開始剤溶液を用いて640ml/hrでAMVを、また上記ディレー溶液を用いて無水マレイン酸を重合系中の酢酸ビニルと無水マレイン酸の比率が一定となるようにしながら連続添加して重合を実施した。4時間後に重合率が30%となったところで冷却して重合を停止した。この時点でディレーにより添加した無水マレイン酸ディレー溶液の総量は1400mlであった。反応槽を開放して脱エチレンした後、窒素ガスをバブリングして脱エチレンを完全に行った。次いで減圧下に未反応酢酸ビニルモノマーを除去しポリ酢酸ビニルのメタノール溶液とした。得られた該ポリ酢酸ビニル溶液にメタノールを加えて濃度が30%となるように調整したポリ酢酸ビニルのメタノール溶液333g(溶液中のポリ酢酸ビニル100g)に、46.5g(ポリ酢酸ビニル中の酢酸ビニル単位に対してモル比[MR]0.10)のアルカリ溶液(NaOHの10%メタノール溶液)を添加してけん化を行った。アルカリ添加後約1分で系がゲル化したものを粉砕器にて粉砕し、40℃で1時間放置してけん化を進行させた後、酢酸メチル1000gを加えて残存するアルカリを中和した。フェノールフタレイン指示薬を用いて中和の終了を確認後、濾別して得られた白色固体のPVAにメタノール1000gを加えて室温で3時間放置洗浄した。上記洗浄操作を3回繰り返した後、遠心脱液して得られたPVAを乾燥機中70℃で2日間放置して乾燥PVA(PVA−1)を得た。
得られたカルボキシル基またはラクトン環を有するビニルアルコール系重合体のけん化度は98.5モル%であった。また、重合後未反応酢酸ビニルモノマーを除去して得られたポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をn−ヘキサンに沈殿、アセトンで溶解する再沈精製を3回行った後、80℃で3日間減圧乾燥を行って精製ポリ酢酸ビニルを得た。該ポリ酢酸ビニルをDMSO−D6に溶解し、500MHzのプロトンNMR(JEOLGX−500)を用いて80℃で測定したところ、エチレン単位の含有量は7モル%であった。上記のポリ酢酸ビニルのメタノール溶液をアルカリモル比0.5でけん化した後、粉砕したものを60℃で5時間放置してけん化を進行させた後、メタノールソックスレーを3日間実施し、次いで80℃で3日間減圧乾燥を行って精製されたカルボキシル基またはラクトン環を有すエチレン変性PVAを得た。該PVAの平均重合度を常法のJIS K6726に準じて測定したところ1000であった。該精製PVAのカルボキシル基またはラクトン環の含有量、1,2−グリコール結合量および水酸基3連鎖の水酸基の含有量を500MHzのプロトンNMR(JEOLGX−500)装置による測定から前述のとおり求めたところ、それぞれ0.246モル%、1.61モル%および87%であった。さらに該精製された変性PVAの5%水溶液を調整し厚み10ミクロンのキャスト製フィルムを作成した。該フィルムを80℃で1日間減圧乾燥を行った後に、DSC(メトラー社、TA3000)を用いて、前述の方法によりPVAの融点を測定したところ210℃であった。
上記で得られたビニルアルコール系重合体の10%水溶液を作成し、試験用2−ロールサイズプレス機(熊谷理機工業製)を用いて、坪量47g/m2、透気抵抗度200秒の基紙に塗工した。塗工は50℃にて100m/分の条件で行った後、110℃で1分間乾燥させ、塗工紙を得た。塗工液の固形分換算の塗工量は1.8g/m2(両面)であった。得られた塗工紙を20℃、65%RHで72時間調湿した。
得られた塗工紙について、上記の方法に従って耐油性評価、透気抵抗度、水蒸気透過性、耐水表面強度を測定した。耐油性評価においてはキット値9を得た。オレイン酸に対する耐性テストでは浸透が観測されず、十分な耐性がある陽性と判断した。透気抵抗度は100,000秒以上、水蒸気透過性は2,630g/m2であり、また耐水表面強度は4であり、いずれも実用上問題の無いレベルと判定した。
表1に示すようにビニルアルコール系重合体の製造方法を変更してPVA2〜PVA9を得た。PVA2〜PVA9の分析結果を表2に示す。得られたPVAを用いて表3に示す様な組成の塗工層を基紙表面に実施例1と同様の方法で作成し、塗工紙の評価を行った。その結果を表3に示す。
表4に示すようにビニルアルコール系重合体の製造方法を変更してPVA10〜PVA22を得た。PVA10〜PVA22の分析結果を表5に示す。得られたPVAを用いて表6に示す様な組成の塗工層を基紙表面に実施例1と同様の方法で作成し、塗工紙の評価を行った。その結果を表6に示す。
Claims (6)
- エチレン単位の含有量2〜10モル%、粘度平均重合度300〜2000、けん化度95〜99.5モル%、カルボキシル基とラクトン環との合計含有量0.02〜3モル%、融点が180℃〜230℃、1,2−グリコール結合の含有量1.2〜2モル%、およびビニルアルコール単位に対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率75〜98モル%であるビニルアルコール系重合体(A)を含有する耐油層を、透気抵抗度1000秒以下の基紙の少なくとも一方の表面に乾燥質量換算で0.5〜10.0g/m2設けてなり、
1000g/m2・24h以上の水蒸気透過性を有する紙複合体。 - エチレン単位の含有量2〜10モル%、粘度平均重合度300〜2000、けん化度95〜99.5モル%、カルボキシル基とラクトン環との合計含有量0.02〜3モル%、融点が180℃〜230℃、1,2−グリコール結合の含有量1.2〜2モル%、およびビニルアルコール単位に対するトライアッド表示による水酸基3連鎖の中心水酸基のモル分率75〜98モル%であるビニルアルコール系重合体(A)を含有する耐油層が、該ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、さらにフッ素系化合物(B)を1〜50質量部含有し、該耐油層を、透気抵抗度1000秒以下の基紙の少なくとも一方の表面に乾燥質量換算で0.1〜3.0g/m2設けてなる紙複合体。
- 上記ビニルアルコール系重合体(A)100質量部に対して、さらに架橋剤(C)を30質量部以下含有する請求項1または2記載の紙複合体。
- 上記架橋剤(C)が、ジルコニウム化合物である請求項3記載の紙複合体。
- 上記架橋剤(C)が、オキシ硝酸ジルコニウムである請求項4記載の紙複合体。
- 上記架橋剤(C)が、ポリアミドエピクロルヒドリン系である請求項3記載の紙複合体。
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