JP2015020970A - 口腔バイオフィルム除去剤及び口腔用組成物 - Google Patents
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即ち、後述する実施例及び比較例に示したように、(A)成分のα−オレフィンスルホン酸塩(A−1)(テトラデセンスルホン酸ナトリウム)の単独使用では、作製したバイオフィルムの除去率は70%未満にとどまる。また、(B)成分のデキストラナーゼによるバイオフィルム除去率は50%に満たないものであり、バイオフィルム除去効果がかなり低く、これを界面活性剤と併用してもバイオフィルム除去効果を向上させるものとは考えられないにもかかわらず、(A−1)成分と(B)成分と(C)成分とを併用し、特に(C)成分の含有量が適切量であると、意外にも(A−1)成分、(B)成分が特異的に相互作用し、十分なバイオフィルム除去効果が得られることを知見した。またこの場合、ラウリル硫酸ナトリウムとデキストラナーゼとを併用しても、十分なバイオフィルム除去効果が得られず、バイオフィルム除去効果は(A−1)成分と(B)成分とを併用した場合の特異的な作用効果であることを知見した。更に、α−オレフィンスルホン酸塩は苦味があり、従来、文献的にはその使用が開示されているものの、実際にはその使用が忌避されていたものであったが、(A−1)成分と(B)成分と(C)成分とを併用すると、バイオフィルム除去効果が向上するだけでなく(A−1)成分に由来する苦味が抑制され、良好な使用感を与え、また(A−1)成分による適度な泡立ちが維持され、実使用に耐えるものとなることを知見し、本発明をなすに至った。
即ち、後述する実施例及び比較例に示したように、(A)成分のアルキルスルホ酢酸塩(A−2)(ラウリルスルホ酢酸ナトリウム)の単独使用では、作製したバイオフィルムの除去率は70%未満にとどまる。また、(B)成分のデキストラナーゼによるバイオフィルム除去率は50%に満たないものであり、バイオフィルム除去効果がかなり低く、これを界面活性剤と併用してもバイオフィルム除去効果を向上させるものとは考えられないにもかかわらず、(A−2)成分と(B)成分とを併用すると、意外にもこれら成分が特異的に相互作用し、十分なバイオフィルム除去効果が得られることを知見した。またこの場合、ラウリル硫酸ナトリウムとデキストラナーゼとを併用しても、十分なバイオフィルム除去効果が得られず、バイオフィルム除去効果は(A−2)成分と(B)成分とを併用した場合の特異的な作用効果であることを知見した。更に、アルキルスルホ酢酸塩は苦味が強く、従来、文献的にはその使用が開示されているものの、実際にはその使用が忌避されていたものであったが、(A−2)成分と(B)成分とを併用すると、バイオフィルム除去効果が向上するだけでなく(A−2)成分に由来する苦味が抑制され、良好な使用感を与え、また(A−2)成分による適度な泡立ちが維持され、実使用に耐えるものとなることを知見し、本発明をなすに至った。
なお、特許文献4〜7は口腔バイオフィルムの分散除去についての言及がない。特許文献7には、デキストラナーゼとα−オレフィンスルフォン酸ナトリウムとを含む組成が実施例に記載されているが、これはデキストラナーゼの口腔内滞留性をカチオン性ポリマー及び特定香料成分で向上した技術であり、かかる特許文献4〜7から、(A)、(B)成分の併用系による口腔バイオフィルムの分散除去は予測できない。
〔1〕(A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとからなる口腔バイオフィルム除去剤。
〔2〕(A)/(B)が質量比として0.65〜130である〔1〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔3〕(A−1)成分のα−オレフィンスルホン酸塩が、炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩である〔1〕又は〔2〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔4〕(A−2)成分のアルキルスルホ酢酸塩が、ラウリルスルホ酢酸塩である〔1〕又は〔2〕に記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔5〕(C)成分の糖アルコールが、キシリトール又はエリスリトールである〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の口腔バイオフィルム除去剤。
〔6〕更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の口バイオフィルム除去剤。
〔7〕(A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを含有してなり、(C)糖アルコールの含有量が組成物全体の5〜35質量%であることを特徴とする口腔用組成物。
〔8〕(A)/(B)が質量比として0.65〜130である〔7〕に記載の口腔用組成物。
〔9〕(A)成分の含有量が0.1〜3質量%、(B)成分の含有量が1〜200単位/gである〔7〕又は〔8〕に記載の口腔用組成物。
〔10〕更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する〔7〕〜〔9〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
〔11〕口腔バイオフィルム除去用である〔7〕〜〔10〕のいずれかに記載の口腔用組成物。
(B)デキストラナーゼとしては、ケトミウム属、ペニシリウム属、アスペルギルス属、スピカリア属、ラクトバチルス属、セルビブリオ属等に属する公知のデキストラナーゼ生産菌より公知の方法により得られるデキストラナーゼを好適に使用できるが、他の微生物より生産されたデキストラナーゼも使用することができる。市販品としては、第一三共プロファーマ(株)製デキストラナーゼなどを用いることができる。
なお、第二発明にも(C)成分を同様に配合することができ、(C)成分を配合することで同様の効果を得ることができる。
なお、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油においては、効果発現の点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数が好ましくは10〜100、より好ましくは20〜60である。ポリオキシエチレンアルキルエーテルにおいては、効果発現の点から、エチレンオキサイドの平均付加モル数が好ましくは2〜50、より好ましくは2〜10である。
なお、第二発明にも(D)成分を同様に配合することができ、(D)成分を配合することで同様の効果を得ることができる。
なお、デキストラナーゼとしては、通常10,000〜14,000単位/gのものが使用され、13,000単位/gのデキストラナーゼを使用すると、その配合量は組成物全体の0.0077〜1.54%、特に0.015〜0.38%が好適である。0.0077%以上であると、十分なバイオフィルム除去効果が得られ、1.54%以下であると、泡立ちへの影響が少なく、使用上好ましい。
ここで、デキストラナーゼ1単位とは、デキストランを基質として酵素反応を行った場合に、1分間あたりにグルコース1μmolに相当する遊離還元糖を生じるデキストラナーゼの量である。
なお、本発明、特に第一発明の口腔バイオフィルム除去剤は、とりわけ(C)成分の配合量が上記範囲内になるように口腔用組成物に配合することが好ましく、これにより口腔バイオフィルム除去効果が向上し、また、苦味が抑制され良好な使用感を与え、かつ適度な泡立ちを付与することができる。
研磨剤としては、結晶性シリカ、非晶性シリカ、シリカゲル、アルミノシリケート等のシリカ系研磨剤、ゼオライト、リン酸水素カルシウム無水和物、リン酸水素カルシウム2水和物、ピロリン酸カルシウム、炭酸カルシウム、水酸化アルミニウム、アルミナ、炭酸マグネシウム、第3リン酸マグネシウム、ケイ酸ジルコニウム、第3リン酸カルシウム、ハイドロキシアパタイト、第4リン酸カルシウム、合成樹脂系研磨剤等が挙げられる。これらの研磨剤は、通常、歯磨剤の場合、組成物全体の5〜70%、特に10〜50%配合することができる。
また、(A)成分以外のアニオン界面活性剤は配合しなくてもよく0%でもよいが、配合する場合は0.1〜1.5%、特に0.1〜1.0%が好ましい。
また、溶剤としてエタノール、水等を配合し得る。
表1〜6に示す組成の歯磨剤組成物を、下記に示す方法で調製し、下記方法で評価した。なお、歯磨剤組成物の共通組成は下記の通りである。結果を表に併記する。
まず、プロピレングリコール等の湿潤剤を含む精製水中に、所用の(B)成分、更には(C)成分などの水溶性成分を常温で混合後、更に粘結剤などを混合し、ディスパーで分散させた。ニーダー中に(A)成分、更には(D)成分、分散液、研磨剤などを入れて混合後、香料、界面活性剤を加えた。ニーダー内を約5kPaまで減圧して脱泡を行い、更に混合を続けて歯磨剤を得た。なお、比較例の組成物は上記方法に準じて調製した。
(1)モデルバイオフィルムの作製方法
直径7mm×厚さ3.5mmのハイドロキシアパタイト(HA)板(旭光学社製)を0.45μmのフィルターでろ過したヒト無刺激唾液で4時間処理したものをモデルバイオフィルム作製の担体に用い、培養液には、ベイサルメディウムムチン培養液(BMM)*1を用いた。モデルバイオフィルムを作製するために使用した菌株は、American Type Culture Collectionより購入したアクチノマイセス ヴィスコサス(Actinomyces viscosus)ATCC43146、ベイヨネラ パルビュラ(Veillonella parvula)ATCC17745、フゾバクテリウム ヌクレアタム(Fusobacterium nucleatum)ATCC10953、ストレプトコッカス オラリス(Streptococcus oralis)ATCC10557、ストレプトコッカス ミュータンス(Streptococcus mutans)ATCC25175を用いた。これら5菌株は予めBMM3,000mLを入れたRotating Disk Reactor(培養槽)にそれぞれ1×107cfu/mL(cfu:colony forming units)になるように接種し、唾液処理したHA担体と共に37℃、嫌気的条件下(5vol%炭酸ガス、95vol%窒素)で24時間培養した。その後、同条件でBMM培地を置換率5vol%/時間の割合で連続的に供給し10日間培養を行い、HA表面に5菌種混合のモデルバイオフィルムを形成させた。
形成させたモデルバイオフィルムは、24穴マルチプレート(住友ベークライト社製)に移し、調製した歯磨剤組成物(健常人より採取した唾液による3倍希釈液の遠心上清(10,000rpm、10分))を2mL加え、3分間浸漬した。その後、PBS(和光純薬工業社製)1mLで6回洗浄し、同バッファー2mLを添加した試験管(直径13mm×100mm)内で超音波処理(200μA、10秒間)により分散した。この分散液の波長550nmでの濁度(OD)を測定しバイオフィルム残存量を測定した。
試験組成物のバイオフィルム除去効果は、下式によりコントロールに対する除去率を求め、この除去率から、下記基準に則り口腔バイオフィルム除去効果を判定した。
バイオフィルム除去率(%)=
(コントロールの濁度−試験組成物処置の濁度)/コントロールの濁度×100
バイオフィルム除去効果の判定基準
◎◎:バイオフィルム除去率が95%以上
◎ :バイオフィルム除去率が90%以上95%未満
○ :バイオフィルム除去率が80%以上90%未満
△ :バイオフィルム除去率が70%以上80%未満
× :バイオフィルム除去率が50%以上70%未満
××:バイオフィルム除去率が50%未満
プロテオースペプトン(Becton and Dickinson社製):4g/L
トリプトン(Becton and Dickinson社製):2g/L
イーストエキス(Becton and Dickinson社製):2g/L
ムチン(Sigma社製):5g/L
ヘミン(Sigma社製):2.5mg/L
ビタミンK(和光純薬工業社製):0.5mg/L
KCl(和光純薬工業社製):1g/L
システイン(和光純薬工業社製):0.2g/L
蒸留水:残
(全量が1Lになるようにメスアップし、121℃で20分間オートクレーブした。)
表に示す歯磨剤組成物の苦味のなさ及び泡立ちのよさを、下記方法で官能評価した。
歯磨剤組成物1gを歯ブラシにとり、3分間ブラッシングすることで下記評点基準により評価した。苦味のなさ及び泡立ちのよさは、評価者6名の平均から下記評価基準に基づき評価した。
評点基準
5:苦味を感じない
4:殆ど苦味を感じない
3:やや苦味を感じる
2:苦味を感じる
1:強い苦味を感じる
評価基準
◎:平均値が4点以上5点以下
○:平均値が3点以上4点未満
△:平均値が2点以上3点未満
×:平均値が1点以上2点未満
評点基準
5:泡立ちがとてもよい
4:泡立ちがややよい
3:普通の泡立ちである
2:泡立ちがやや悪い
1:泡立ちがとても悪い
評価基準
◎:平均値が4点以上5点以下
○:平均値が3点以上4点未満
△:平均値が2点以上3点未満
×:平均値が1点以上2点未満
(A)成分
(A−1)テトラデセンスルホン酸ナトリウム;ライオン(株)製
(A−2)ラウリルスルホ酢酸ナトリウム;日光ケミカルズ(株)製
(B)デキストラナーゼ;第一三共プロファーマ(株)製、13,000単位(unit)/g品を使用
(C);キシリトール;ロケットジャパン(株)製
(C);エリスリトール;三菱化学フーズ(株)製
(C);ソルビトール;東和化成工業(株)製、D−ソルビトール70%水溶液を使用(各例中の配合量は純分換算値)
(D);HCO−40、60;
日光ケミカルズ(株)製、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油、数値の40、60はそれぞれエチレンオキサイドの平均付加モル数。
(D);POEラウリルエーテル;日光ケミカルズ(株)製、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、エチレンオキサイドの付加モル数2
(D);POEステアリルルエーテル;日光ケミカルズ(株)製、ポリオキシエチレンステアリルエーテル、エチレンオキサイドの平均付加モル数2
Claims (11)
- (A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとからなる口腔バイオフィルム除去剤。
- (A)/(B)が質量比として0.65〜130である請求項1記載の口腔バイオフィルム除去剤。
- (A−1)成分のα−オレフィンスルホン酸塩が、炭素数14のα−オレフィンスルホン酸塩である請求項1又は2記載の口腔バイオフィルム除去剤。
- (A−2)成分のアルキルスルホ酢酸塩が、ラウリルスルホ酢酸塩である請求項1又は2記載の口腔バイオフィルム除去剤。
- (C)成分の糖アルコールが、キシリトール又はエリスリトールである請求項1乃至4のいずれか1項記載の口腔バイオフィルム除去剤。
- 更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含む請求項1乃至5のいずれか1項記載の口腔バイオフィルム除去剤。
- (A)α−オレフィンスルホン酸塩(A−1)と(B)デキストラナーゼと(C)糖アルコール、又は(A)アルキルスルホ酢酸塩(A−2)と(B)デキストラナーゼとを含有してなり、(C)糖アルコールの含有量が組成物全体の5〜35質量%であることを特徴とする口腔用組成物。
- (A)/(B)が質量比として0.65〜130である請求項7記載の口腔用組成物。
- (A)成分の含有量が0.1〜3質量%、(B)成分の含有量が1〜200単位/gである請求項7又は8記載の口腔用組成物。
- 更に、(D)ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油及び/又はポリオキシエチレンアルキルエーテルを含有する請求項7乃至9のいずれか1項記載の口腔用組成物。
- 口腔バイオフィルム除去用である請求項7乃至10のいずれか1項記載の口腔用組成物。
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