≪ネガ型感光性樹脂組成物≫
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物は、(A)質量平均分子量が4000〜60000であり、分散度が3.5以下であるポリアミック酸と、(B)光の作用により酸又は塩基を発生する化合物と、(C)N,N,N’,N’−テトラメチルウレアとを少なくとも含有する。
<(A)質量平均分子量が4000〜60000であり、分散度が3.5以下であるポリアミック酸>
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物は、質量平均分子量が4000〜60000であり、分散度が3.5以下であるポリアミック酸(以下、「(A)成分」ともいう。)を含有する。(A)成分は、質量平均分子量が4000〜60000であり、分散度が3.5以下である限り、特に限定されず、従来からポリイミド樹脂の前駆体として知られているポリアミック酸から適宜選択される。(A)成分は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
(A)成分の質量平均分子量は、通常、4000〜60000であり、好ましくは4500〜55000である。(A)成分の質量平均分子量が4000以上であると、形成されるポリイミド樹脂膜の強度が向上しやすい。(A)成分の質量平均分子量が60000以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物のフォトリソグラフィー特性が向上しやすく、高密着性の微小パターンが形成されやすい。
(A)成分の分散度は、通常、3.5以下であり、好ましくは2.7以下である。ここで、分散度とは、質量平均分子量を数平均分子量で除した値のことである。(A)成分の分散度が3.5以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物のフォトリソグラフィー特性が向上しやすく、高密着性の微小パターンが形成されやすい。
特に、(A)成分の質量平均分子量が60000以下であり、かつ、(A)成分の分散度が3.5以下であると、ネガ型感光性樹脂組成物のフォトリソグラフィー特性が更に向上しやすく、高密着性の微小パターンが更に形成されやすい。
なお、本明細書において、質量平均分子量及び数平均分子量とは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)により測定された標準ポリスチレン換算のものをいう。
好適なポリアミック酸としては、例えば、下記式(1)で表されるポリアミック酸が挙げられる。
(式中、R
a1は4価の有機基であり、R
a2は2価の有機基であり、nは、式(1)で表されるポリアミック酸の質量平均分子量が4000〜60000となる数である。)
式(1)中、Ra1は4価の有機基であり、Ra2は2価の有機基であり、これら有機基の炭素数は2〜50が好ましく、2〜30がより好ましい。Ra1及びRa2は、それぞれ、脂肪族基であっても、芳香族基であっても、これらの構造を組合せた基であってもよい。Ra1及びRa2は、炭素原子及び水素原子の他に、ハロゲン原子、酸素原子、及び硫黄原子を含んでいてもよい。Ra1及びRa2が酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子を含む場合、酸素原子、窒素原子、又は硫黄原子は、含窒素複素環基、−CONH−、−NH−、−N=N−、−CH=N−、−COO−、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Ra1及びRa2に含まれてもよく、−O−、−CO−、−SO−、−SO2−、−S−、及び−S−S−から選択される基として、Ra1及びRa2に含まれるのがより好ましい。
上記式(1)で表されるポリアミック酸を加熱や触媒によって閉環させることにより、下記式(2)で表されるポリイミド樹脂が得られる。
(式中、R
a1、R
a2、及びnは式(1)と同義である。)
上記式(1)で表されるポリアミック酸は、溶剤中で、テトラカルボン酸二無水物と、ジアミンとを反応させることにより得られる。ポリアミック酸の合成原料となるテトラカルボン酸二無水物及びジアミンは、酸無水物基とアミノ基との反応によりポリアミック酸を形成可能なものであれば特に限定されない。
ポリアミック酸を合成する際の、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンの使用量は特に限定されないが、テトラカルボン酸二無水物1モルに対して、ジアミンを0.50〜1.50モル用いるのが好ましく、0.60〜1.30モル用いるのがより好ましく、0.70〜1.20モル用いるのが特に好ましい。
テトラカルボン酸二無水物は、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているテトラカルボン酸二無水物から適宜選択することができる。テトラカルボン酸二無水物は、芳香族テトラカルボン酸二無水物であっても、脂肪族テトラカルボン酸二無水物であってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族テトラカルボン酸二無水物が好ましい。テトラカルボン酸二無水物は、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の好適な具体例としては、ピロメリット酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,3,3’,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、及び3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、及びピロメリット酸二無水物が好ましい。
ジアミンは、従来からポリアミック酸の合成原料として使用されているジアミンから適宜選択することができる。ジアミンは、芳香族ジアミンであっても、脂肪族ジアミンであってもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の点から、芳香族ジアミンが好ましい。ジアミンは、2種以上を組合せて用いてもよい。
芳香族ジアミンの好適な具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、4,4’−ジアミノビフェニル、4,4’−ジアミノ−2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ビフェニル、3,3’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフォン、4,4’−ジアミノジフェニルスルフィド、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(3−アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]スルフォン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、及び2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]ヘキサフルオロプロパン等が挙げられる。これらの中では、価格、入手容易性等から、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−ジアミノトルエン、及び4,4’−ジアミノジフェニルエーテルが好ましい。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応は、通常、有機溶剤中で行われる。テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に使用される有機溶剤は、テトラカルボン酸及びジアミンを溶解させることができ、テトラカルボン酸二無水物及びジアミンと反応しないものであれば特に限定されない。有機溶剤は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
テトラカルボン酸二無水物とジアミンとの反応に用いる有機溶剤の例としては、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤;β−プロピオラクトン、γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン、δ−バレロラクトン、γ−カプロラクトン、及びε−カプロラクトン等のラクトン系極性溶剤;ジメチルスルホキシド;アセトニトリル;乳酸エチル、及び乳酸ブチル等の脂肪酸エステル類;ジエチレングリコールジメチルエーテル、ジエチレングリコールジエチルエーテル、ジオキサン、テトラヒドロフラン、メチルセルソルブアセテート、及びエチルセルソルブアセテート等のエーテル類が挙げられる。
これらの有機溶剤の中では、生成するポリアミック酸やポリイミド樹脂の溶解性から、N−メチル−2−ピロリドン、N,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチルホルムアミド、N−メチルカプロラクタム、及びN,N,N’,N’−テトラメチルウレア等の含窒素極性溶剤が好ましく、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の観点から、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアが好ましい。
<(B)光の作用により酸又は塩基を発生する化合物>
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物は、光の作用により酸又は塩基を発生する化合物(以下、「(B)成分」ともいう。)を含有する。(B)成分は単独で又は2種以上を混合して用いることができる。
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物を露光することにより、露光部において(B)成分が分解して酸又は塩基を発生する。このようにして発生した酸又は塩基は、イミド化触媒として作用して、上記ネガ型感光性樹脂組成物中のポリアミック酸の閉環を促進し、露光部は現像液に対して不溶となる。一方、未露光部は、現像液に対して可溶であるため、現像液に溶解させて除去することができる。よって、上記ネガ型感光性樹脂組成物を選択的に露光することにより、所望のパターンを形成することができる。
光の作用により塩基を発生する化合物(以下、「光塩基発生剤」ともいう)としては、特に限定されず、種々のものを用いることができる。
好ましい光塩基発生剤としては、例えば、光の作用によりイミダゾール化合物を発生する化合物(B−1)が挙げられる。化合物(B−1)が発生するイミダゾール化合物は、塩基性のイミド化触媒として、本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物中のポリアミック酸の閉環を促進する。化合物(B−1)が発生するイミダゾール化合物は、イミダゾールであっても、イミダゾール中の炭素原子に結合した水素原子の一部又は全部が置換基で置換された化合物であってもよく、下記式(3)で表されるイミダゾール化合物であることが好ましい。
(式中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。)
Rb1、Rb2、又はRb3により示される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上となり得る。
Rb1及びRb2は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。
Rb1、Rb2、又はRb3により示される有機基がヘテロ原子を含む場合、そのヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、珪素原子が挙げられる。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合(−N=C(−RS)−又は−C(=NRS)−(ただし、RSは水素原子又は有機基を示す))、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。中でも、イミダゾール化合物の耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
Rb1、Rb2、又はRb3により示される、有機基以外の基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。この炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
Rb1、Rb2、及びRb3としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜12のアルキル基、炭素数1〜12のアリール基、炭素数1〜12のアルコキシ基、及びハロゲン原子が好ましく、水素原子がより好ましい。Rb1、Rb2、及びRb3がいずれも水素原子であるイミダゾールは、立体的な障害の少ない単純な構造であるため、イミド化触媒としてポリアミック酸に容易に作用することができる。
化合物(B−1)は、光の作用によりイミダゾール化合物、好ましくは上記式(3)で表されるイミダゾール化合物を発生させることができる化合物であれば特に限定されない。従来から感光性組成物に配合されている、光の作用によりアミンを発生する化合物について、露光時に発生するアミンに由来する骨格を、イミダゾール化合物、好ましくは上記式(3)で表されるイミダゾール化合物に由来する骨格に置換することにより、化合物(B−1)として使用される化合物が得られる。
好適な化合物(B−1)としては、下記式(4)で表される化合物が挙げられる。
(式中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、ホスフィノ基、スルホナト基、ホスフィニル基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
b4及びR
b5は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。R
b6、R
b7、R
b8、R
b9、及びR
b10は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。R
b6、R
b7、R
b8、R
b9、及びR
b10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
式(4)において、Rb1、Rb2、及びRb3は、式(3)について説明したものと同様である。
式(4)において、Rb4又はRb5により示される有機基としては、Rb1、Rb2、及びRb3について例示したものが挙げられる。この有機基は、Rb1、Rb2、及びRb3の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
Rb4及びRb5としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COORT又は−OCORT(ただし、RTは炭化水素基を示す。))、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、Rb4及びRb5の両方が水素原子であるか、又はRb4がメチル基であり、Rb5が水素原子である。
式(4)において、Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、又はRb10により示される有機基としては、Rb1、Rb2、及びRb3において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rb1及びRb2の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10は、それらの2つ以上が結合して、Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
また、Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10としては、それらの2つ以上が結合して、Rb6、Rb7、Rb8、Rb9、及びRb10が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成している場合も、吸収波長が長波長化する点から好ましい。
上記式(4)で表される化合物の中では、下記式(5)で表される化合物が好ましい。
(式中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、式(3)及び(4)と同義である。R
b4〜R
b9は式(4)と同義である。R
b11は、水素原子又は有機基を示す。R
b6及びR
b7が水酸基となることはない。R
b6、R
b7、R
b8、及びR
b9は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
式(5)で表される化合物は、置換基−O−Rb11を有するため、有機溶剤に対する溶解性に優れる。
式(5)において、Rb11が有機基である場合、その有機基としては、Rb1、Rb2、及びRb3において例示したものが挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。Rb11としては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基が好ましく、メチル基がより好ましい。
好適な化合物(B−1)としては、下記式(6)で表される化合物も挙げられる。
(式中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、式(3)と同様である。R
b12は、置換されていてもよい炭化水素基を示す。)
式(6)において、Rb12としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数2〜20のアルキニル基、置換されていてもよい炭素数6〜20のアリール基、置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基が挙げられ、置換されていてもよい炭素数7〜20のアラルキル基が好ましい。上記アリール基又はアラルキル基が置換されている場合、置換基としては、ハロゲン原子、ニトロ基、炭素数1〜4のアルキル基、炭素数1〜4のアルコキシ基が挙げられる。
式(6)で表される化合物は、式(3)で表されるイミダゾール化合物と下記式(7)で表されるクロロギ酸エステルとの反応、式(3)で表されるイミダゾール化合物と下記式(8)で表されるジカーボネートとの反応、又は下記式(9)で表されるカルボニルジイミダゾール化合物と下記式(10)で表されるアルコールとの反応により合成することができる。
(式(7)〜(10)中、R
b1、R
b2、及びR
b3は、式(3)と同義である。R
b12は式(6)と同義である。)
化合物(B−1)として特に好適な化合物の具体例を以下に示す。
好ましい光塩基発生剤としては、例えば、下記式(11)で表される化合物(B−2)も挙げられる。
上記式(11)中、Rb13及びRb14は、それぞれ独立に水素原子又は有機基を示すが、Rb13及びRb14の少なくとも一方は有機基を示す。
Rb13又はRb14により示される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等が挙げられる。この有機基は、ヘテロ原子を含んでいてもよく、置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。この有機基は、通常は1価であるが、環状構造を形成する場合等には、2価以上となり得る。
Rb13及びRb14は、それらが結合して非芳香族複素環を形成していてもよい。Rb13及びRb14が結合して形成される非芳香族複素環の例としては、ピペリジン、ピペラジン、モルホリン、及びチオモルホリンが挙げられる。
Rb13又はRb14により示される有機基がヘテロ原子を含む場合、そのヘテロ原子としては、例えば、酸素原子、窒素原子、珪素原子が挙げられる。ヘテロ原子を含む結合の具体例としては、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合、アゾ結合等が挙げられる。中でも、耐熱性の観点から、エーテル結合、チオエーテル結合、カルボニル結合、チオカルボニル結合、エステル結合、アミド結合、ウレタン結合、イミノ結合、カーボネート結合、スルホニル結合、スルフィニル結合が好ましい。
Rb13又はRb14により示される有機基が置換基を含む場合、その置換基は、炭化水素基であっても炭化水素基以外の置換基であってもよい。炭化水素基以外の置換基は、本発明の効果が損なわれない限り特に限定されない。炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基、アミノ基(−NH2、−NHRU、−NRURV:RU及びRVはそれぞれ独立に炭化水素基を示す)等が挙げられる。上記置換基に含まれる水素原子は、炭化水素基によって置換されていてもよい。また、上記置換基に含まれる炭化水素基は、直鎖状、分岐鎖状、及び環状のいずれでもよい。
Rb13又はRb14により示される有機基が有していてもよい炭化水素基以外の置換基としては、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シアノ基、イソシアノ基、シアナト基、イソシアナト基、チオシアナト基、イソチオシアナト基、シリル基、シラノール基、アルコキシ基、アルコキシカルボニル基、カルバモイル基、チオカルバモイル基、ニトロ基、ニトロソ基、カルボキシル基、カルボキシラート基、アシル基、アシルオキシ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、ヒドロキシイミノ基、アルキルエーテル基、アルケニルエーテル基、アルキルチオエーテル基、アルケニルチオエーテル基、アリールエーテル基、アリールチオエーテル基が好ましい。
以上の中でも、Rb13及びRb14としては、少なくとも一方が炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜12のアリール基であるか、互いに結合して炭素数2〜20のヘテロシクロアルキル基を形成するものであることが好ましい。ヘテロシクロアルキル基としては、ピペリジノ基、モルホリノ基等が挙げられる。
上記式(11)中、Rb15は、単結合又は有機基を示す。
Rb15により示される有機基としては、アルキル基、アルケニル基、シクロアルキル基、シクロアルケニル基、アリール基、アラルキル基等から1個の水素原子を除いた基が挙げられる。この有機基は、該有機基中に置換基を含んでいてもよい。置換基としては、Rb13及びRb14において例示したものが挙げられる。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状のいずれでもよい。
以上の中でも、Rb15としては、単結合、又は炭素数1〜12のアルキル基若しくは炭素数1〜12のアリール基から1個の水素原子を除いた基であることが好ましい。
上記式(11)中、Rb16及びRb17は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基を示す。
Rb16又はRb17により示される有機基としては、Rb13及びRb14において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rb13及びRb14の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
以上の中でも、Rb16及びRb17としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基(−COORW又は−OCORW(ただし、RWは炭化水素基を示す。))、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基であることが好ましい。より好ましくは、Rb16及びRb17の両方が水素原子であるか、又はRb16がメチル基であり、Rb17が水素原子である。
上記式(11)中、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21は、それぞれ独立に水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基を示す。
Rb18、Rb19、Rb20、又はRb21により示される有機基としては、Rb13及びRb14において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rb13及びRb14の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
なお、上記式(11)中、Rb18及びRb19が水酸基となることはない。
Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。環状構造としては、ヘテロシクロアルキル基、ヘテロアリール基等が挙げられ、縮合環であってもよい。例えば、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21は、それらの2つ以上が結合して、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成してもよい。
以上の中でも、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21としては、それぞれ独立に水素原子、炭素数1〜10のアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルキル基、炭素数4〜13のシクロアルケニル基、炭素数7〜16のアリールオキシアルキル基、炭素数7〜20のアラルキル基、シアノ基を有する炭素数2〜11のアルキル基、水酸基を有する炭素数1〜10のアルキル基、炭素数1〜10のアルコキシ基、炭素数2〜11のアミド基、炭素数1〜10のアルキルチオ基、炭素数1〜10のアシル基、炭素数2〜11のエステル基、炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換した炭素数6〜20のアリール基、電子供与性基及び/又は電子吸引性基が置換したベンジル基、シアノ基、メチルチオ基、ニトロ基であることが好ましい。
また、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21としては、それらの2つ以上が結合して、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21が結合しているベンゼン環の原子を共有してナフタレン、アントラセン、フェナントレン、インデン等の縮合環を形成していてもよい。
より好ましくは、Rb18、Rb19、Rb20、及びRb21の全てが水素原子であるか、又はRb6、Rb7、Rb8、及びRb9のいずれか1つがニトロ基であり、残り3つが水素原子である。
上記式(11)中、Rb22は、水素原子又は有機基を示す。
Rb22により示される有機基としては、Rb13及びRb14において例示したものが挙げられる。この有機基は、Rb13及びRb14の場合と同様に、ヘテロ原子を含んでいてもよく、置換基を含んでいてもよい。また、この有機基は、直鎖状、分岐鎖状、環状のいずれでもよい。
上記式(11)で表される化合物は、ベンゼン環のパラ位に−ORb22基を有するため、有機溶剤への溶解性が良好である。
以上の中でも、Rb22としては、水素原子、又は炭素数1〜12のアルキル基であることが好ましく、メチル基であることがより好ましい。
化合物(B−2)のうち、特に好ましい具体例としては、下記式で表される化合物が挙げられる。
好ましい光塩基発生剤としては、例えば、下記式(12)で表されるオキシムエステル化合物(B−3)も挙げられる。
上記式(12)中、Rb23は、炭素数1〜10のアルキル基、又は置換基を有してもよいフェニル基を示す。pは、0又は1である。Rb24は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基を示す。Rb25は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基を示す。
Rb23が、炭素数1〜10のアルキル基である場合、アルキル基は直鎖であっても分岐鎖であってもよい。この場合、アルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
Rb23が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の種類は本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基が有していてもよい置換基の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rb23が、置換基を有してもよいフェニル基であり、フェニル基が複数の置換基を有する場合、複数の置換基は同一であっても異なっていてもよい。
フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合、その炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、アルキル基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合、その炭素数は、1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、アルコキシ基は、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。フェニル基が有する置換基がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチオキシル基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、2−メトキシ−1−メチルエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素数は、3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。フェニル基が有する置換基がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は、2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。フェニル基が有する置換基がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチオキシルカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合、その炭素数は、7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。またフェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合、その炭素数は、11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。フェニル基が有する置換基がフェニルアルキル基又はナフチルアルキル基である場合、置換基は、フェニル基又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、N、S、及びOの合計の個数が1以上である5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。フェニル基が有する置換基がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
フェニル基が有する置換基が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例としては、フェニル基が有する置換基について上記したものと同様のものが挙げられる。1又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基が有する置換基に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
これらの置換基の中では、アルキル基又はアルコキシアルキル基が好ましい。フェニル基が有する置換基がアルキル基である場合、その炭素数は、1〜10が好ましく、1〜6がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。フェニル基が有する置換基がアルコキシアルキル基である場合、−RX−O−RYで表される基が好ましい。RXは、炭素数1〜10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキレン基である。RYは、炭素数1〜10の直鎖でも分岐鎖であってもよいアルキル基である。RXの炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましい。RYの炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましく、1〜3が特に好ましく、1が最も好ましい。
Rb23が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、置換基の数と、置換基の結合位置とは、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。Rb23が、置換基を有してもよいフェニル基である場合、塩基の発生効率に優れる点で、置換基を有してもよいフェニル基は、置換基を有していてもよいo−トリル基であるのが好ましい。
Rb24は、置換基を有してもよいフェニル基、又は置換基を有してもよいカルバゾリル基である。また、Rb24が置換基を有してもよいカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基上の窒素原子は、炭素数1〜6のアルキル基で置換されていてもよい。
Rb24において、フェニル基又はカルバゾリル基が有する置換基は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。フェニル基又はカルバゾリル基が、炭素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数1〜20のアルコキシ基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルコキシ基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいフェニルチオ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基、アミノ基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。
Rb24がカルバゾリル基である場合、カルバゾリル基が窒素原子上に有してもよい好適な置換基の例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。これらの置換基の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
フェニル基又はカルバゾリル基が有してもよい置換基の具体例について、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び1又は2の有機基で置換されたアミノ基に関しては、Rb23が、置換基を有してもよいフェニル基である場合の、フェニル基が有する置換基の例と同様である。
Rb24において、フェニル基又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基の例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。フェニル基又はカルバゾリル基が有する置換基に含まれるフェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
化合物(B−3)の塩基発生効率の点から、Rb24としては、下記式(13):
式(13)中、Rb26は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、AはS又はOであり、qは0〜4の整数である。式(14)中、Rb27及びRb28は、それぞれ1価の有機基であり、rは0又は1である。
式(13)におけるRb26が有機基である場合、Rb26は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。式(13)においてRb26が有機基である場合の好適な例としては、炭素数1〜6のアルキル基;炭素数1〜6のアルコキシ基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基;炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基;炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基;フェニル基;ナフチル基;ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基;炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基;モルホリン−1−イル基;ピペラジン−1−イル基;ハロゲン原子;ニトロ基;シアノ基が挙げられる。
Rb26の中では、ベンゾイル基;ナフトイル基;炭素数1〜6のアルキル基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、及びフェニル基からなる群より選択される基により置換されたベンゾイル基;ニトロ基が好ましく、ベンゾイル基;ナフトイル基;2−メチルフェニルカルボニル基;4−(ピペラジン−1−イル)フェニルカルボニル基;4−(フェニル)フェニルカルボニル基がより好ましい。
また、式(13)において、qは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0、又は1であるのが特に好ましい。qが1である場合、Rb26の結合する位置は、Rb26が結合するフェニル基が原子Aと結合する結合手に対して、パラ位であるのが好ましい。
式(14)におけるRb27は、本発明の目的を阻害しない範囲で、種々の有機基から選択できる。Rb27の好適な例としては、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリルカルボニル基等が挙げられる。
Rb27の中では、炭素数1〜20のアルキル基が好ましく、炭素数1〜6のアルキル基がより好ましく、エチル基が特に好ましい。
式(14)におけるRb28は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、種々の有機基から選択できる。Rb28として好適な基の具体例としては、炭素数1〜20のアルキル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいナフチル基、及び置換基を有してもよいヘテロシクリル基が挙げられる。Rb28として、これらの基の中では置換基を有してもよいフェニル基がより好ましく、2−メチルフェニル基が特に好ましい。
Rb26、Rb27、又はRb28に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rb26、Rb27、又はRb28に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Rb26、Rb27、又はRb28に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
Rb25は、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は置換基を有していてもよいフェニル基である。置換基を有していてもよいフェニル基である場合、フェニル基が有していてもよい置換基は、Rb23が置換基を有していてもよいフェニル基である場合と同様である。Rb25としては、メチル基、エチル基、又はフェニル基が好ましく、メチル基又はフェニル基がより好ましい。
オキシムエステル化合物(B−3)は、pが0である場合、例えば、以下に説明する方法(スキーム1)により合成できる。まず、Rb24−Hで表される芳香族化合物を、Hal−CO−Rb23で表されるハロカルボニル化合物を用いて、フリーデルクラフツ反応によりアシル化して、Rb24−CO−Rb23で表されるケトン化合物を得る。得られたケトン化合物を、ヒドロキシルアミンによりオキシム化して、Rb24−(C=N−OH)−Rb23で表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、Rb25−CO−Hal(Halはハロゲン原子を示す)で表される酸ハロゲン化物や、(Rb25CO)2Oで表される酸無水物によりアシルして、pが0であるオキシムエステル化合物(B−3)が得られる。
また、オキシムエステル化合物(B−3)は、pが1である場合、例えば、以下に説明する方法(スキーム2)により合成できる。まず、Rb24−CO−CH2−Rb23で表されるケトン化合物を、塩酸の存在下に亜硝酸エステルと反応させ、Rb24−CO−(C=N−OH)−Rb23で表されるオキシム化合物を得る。次いで、得られたオキシム化合物を、Rb25−CO−Hal(Halは前記の通りである。)で表される酸ハロゲン化物や、(Rb25CO)2Oで表される酸無水物によりアシルして、pが1であるオキシムエステル化合物(B−3)が得られる。
オキシムエステル化合物(B−3)としては、下記式(15)で表されるオキシムエステル化合物が挙げられる。
(式中、p及びR
b24は式(12)と同義であり、R
b29は、1価の有機基、アミノ基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基からなる群より選択される基であり、sは0〜4の整数であり、R
b30は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。)
式(15)中、Rb24は式(12)と同義であるが、式(15)で表される化合物の塩基発生効率の点から、Rb24としては、上記式(13)又は(14)で表される基が好ましく、上記式(13)で表される基がより好ましく、上記式(13)で表される基であって、AがSである基が特に好ましい。
上記式(15)中、Rb29は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されず、1価の有機基である場合、種々の有機基から適宜選択される。Rb29が有機基である場合の好適な例としては、アルキル基、アルコキシ基、シクロアルキル基、シクロアルコキシ基、飽和脂肪族アシル基、アルコキシカルボニル基、飽和脂肪族アシルオキシ基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいフェノキシ基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよいフェノキシカルボニル基、置換基を有してもよいベンゾイルオキシ基、置換基を有してもよいフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトキシ基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよいナフトキシカルボニル基、置換基を有してもよいナフトイルオキシ基、置換基を有してもよいナフチルアルキル基、置換基を有してもよいヘテロシクリル基、1又は2の有機基で置換されたアミノ基、モルホリン−1−イル基、及びピペラジン−1−イル基等が挙げられる。sが2〜4の整数である場合、Rb29は同一であっても異なっていてもよい。また、置換基の炭素数には、置換基が更に有する置換基の炭素数は含まない。
Rb29がアルキル基である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、Rb29がアルキル基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rb29がアルキル基である場合の具体例としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、イソブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、イソペンチル基、sec−ペンチル基、tert−ペンチル基、n−ヘキシル基、n−ヘプチル基、n−オクチル基、イソオクチル基、sec−オクチル基、tert−オクチル基、n−ノニル基、イソノニル基、n−デシル基、及びイソデシル基等が挙げられる。また、Rb29がアルキル基である場合、アルキル基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルキル基の例としては、メトキシエチル基、エトキシエチル基、メトキシエトキシエチル基、エトキシエトキシエチル基、プロピルオキシエトキシエチル基、及びメトキシプロピル基等が挙げられる。
Rb29がアルコキシ基である場合、その炭素数は1〜20が好ましく、1〜6がより好ましい。また、Rb29がアルコキシ基である場合、直鎖であっても、分岐鎖であってもよい。Rb29がアルコキシ基である場合の具体例としては、メトキシ基、エトキシ基、n−プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、n−ブチルオキシ基、イソブチルオキシ基、sec−ブチルオキシ基、tert−ブチルオキシ基、n−ペンチルオキシ基、イソペンチルオキシ基、sec−ペンチルオキシ基、tert−ペンチルオキシ基、n−ヘキシルオキシ基、n−ヘプチルオキシ基、n−オクチルオキシ基、イソオクチルオキシ基、sec−オクチオキシル基、tert−オクチルオキシ基、n−ノニルオキシ基、イソノニルオキシ基、n−デシルオキシ基、及びイソデシルオキシ基等が挙げられる。また、Rb29がアルコキシ基である場合、アルコキシ基は炭素鎖中にエーテル結合(−O−)を含んでいてもよい。炭素鎖中にエーテル結合を有するアルコキシ基の例としては、メトキシエトキシ基、エトキシエトキシ基、メトキシエトキシエトキシ基、エトキシエトキシエトキシ基、プロピルオキシエトキシエトキシ基、及びメトキシプロピルオキシ基等が挙げられる。
Rb29がシクロアルキル基又はシクロアルコキシ基である場合、その炭素数は3〜10が好ましく、3〜6がより好ましい。Rb29がシクロアルキル基である場合の具体例としては、シクロプロピル基、シクロブチル基、シクロペンチル基、シクロヘキシル基、シクロヘプチル基、及びシクロオクチル基等が挙げられる。Rb29がシクロアルコキシ基である場合の具体例としては、シクロプロピルオキシ基、シクロブチルオキシ基、シクロペンチルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基、シクロヘプチルオキシ基、及びシクロオクチルオキシ基等が挙げられる。
Rb29が飽和脂肪族アシル基又は飽和脂肪族アシルオキシ基である場合、その炭素数は2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。Rb29が飽和脂肪族アシル基である場合の具体例としては、アセチル基、プロパノイル基、n−ブタノイル基、2−メチルプロパノイル基、n−ペンタノイル基、2,2−ジメチルプロパノイル基、n−ヘキサノイル基、n−ヘプタノイル基、n−オクタノイル基、n−ノナノイル基、n−デカノイル基、n−ウンデカノイル基、n−ドデカノイル基、n−トリデカノイル基、n−テトラデカノイル基、n−ペンタデカノイル基、及びn−ヘキサデカノイル基等が挙げられる。Rb29が飽和脂肪族アシルオキシ基である場合の具体例としては、アセチルオキシ基、プロパノイルオキシ基、n−ブタノイルオキシ基、2−メチルプロパノイルオキシ基、n−ペンタノイルオキシ基、2,2−ジメチルプロパノイルオキシ基、n−ヘキサノイルオキシ基、n−ヘプタノイルオキシ基、n−オクタノイルオキシ基、n−ノナノイルオキシ基、n−デカノイルオキシ基、n−ウンデカノイルオキシ基、n−ドデカノイルオキシ基、n−トリデカノイルオキシ基、n−テトラデカノイルオキシ基、n−ペンタデカノイルオキシ基、及びn−ヘキサデカノイルオキシ基等が挙げられる。
Rb29がアルコキシカルボニル基である場合、その炭素数は2〜20が好ましく、2〜7がより好ましい。Rb29がアルコキシカルボニル基である場合の具体例としては、メトキシカルボニル基、エトキシカルボニル基、n−プロピルオキシカルボニル基、イソプロピルオキシカルボニル基、n−ブチルオキシカルボニル基、イソブチルオキシカルボニル基、sec−ブチルオキシカルボニル基、tert−ブチルオキシカルボニル基、n−ペンチルオキシカルボニル基、イソペンチルオキシカルボニル基、sec−ペンチルオキシカルボニル基、tert−ペンチルオキシカルボニル基、n−ヘキシルオキシカルボニル基、n−ヘプチルオキシカルボニル基、n−オクチルオキシカルボニル基、イソオクチルオキシカルボニル基、sec−オクチオキシルカルボニル基、tert−オクチルオキシカルボニル基、n−ノニルオキシカルボニル基、イソノニルオキシカルボニル基、n−デシルオキシカルボニル基、及びイソデシルオキシカルボニル基等が挙げられる。
Rb29がフェニルアルキル基である場合、その炭素数は7〜20が好ましく、7〜10がより好ましい。また、Rb29がナフチルアルキル基である場合、その炭素数は11〜20が好ましく、11〜14がより好ましい。Rb29がフェニルアルキル基である場合の具体例としては、ベンジル基、2−フェニルエチル基、3−フェニルプロピル基、及び4−フェニルブチル基が挙げられる。Rb29がナフチルアルキル基である場合の具体例としては、α−ナフチルメチル基、β−ナフチルメチル基、2−(α−ナフチル)エチル基、及び2−(β−ナフチル)エチル基が挙げられる。Rb29が、フェニルアルキル基又はナフチルアルキル基である場合、Rb29は、フェニル基又はナフチル基上に更に置換基を有していてもよい。
Rb29がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は、N、S、及びOの合計の個数が1個以上である5員又は6員の単環であるか、かかる単環同士、又はかかる単環とベンゼン環とが縮合したヘテロシクリル基である。ヘテロシクリル基が縮合環である場合は、環数3までのものとする。かかるヘテロシクリル基を構成する複素環としては、フラン、チオフェン、ピロール、オキサゾール、イソオキサゾール、チアゾール、チアジアゾール、イソチアゾール、イミダゾール、ピラゾール、トリアゾール、ピリジン、ピラジン、ピリミジン、ピリダジン、ベンゾフラン、ベンゾチオフェン、インドール、イソインドール、インドリジン、ベンゾイミダゾール、ベンゾトリアゾール、ベンゾオキサゾール、ベンゾチアゾール、カルバゾール、プリン、キノリン、イソキノリン、キナゾリン、フタラジン、シンノリン、及びキノキサリン等が挙げられる。Rb29がヘテロシクリル基である場合、ヘテロシクリル基は更に置換基を有していてもよい。
Rb29が1又は2の有機基で置換されたアミノ基である場合、有機基の好適な例は、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数3〜10のシクロアルキル基、炭素数2〜20の飽和脂肪族アシル基、置換基を有してもよいフェニル基、置換基を有してもよいベンゾイル基、置換基を有してもよい炭素数7〜20のフェニルアルキル基、置換基を有してもよいナフチル基、置換基を有してもよいナフトイル基、置換基を有してもよい炭素数11〜20のナフチルアルキル基、及びヘテロシクリル基等が挙げられる。これらの好適な有機基の具体例は、Rb29と同様である。1又は2の有機基で置換されたアミノ基の具体例としては、メチルアミノ基、エチルアミノ基、ジエチルアミノ基、n−プロピルアミノ基、ジ−n−プロピルアミノ基、イソプロピルアミノ基、n−ブチルアミノ基、ジ−n−ブチルアミノ基、n−ペンチルアミノ基、n−ヘキシルアミノ基、n−ヘプチルアミノ基、n−オクチルアミノ基、n−ノニルアミノ基、n−デシルアミノ基、フェニルアミノ基、ナフチルアミノ基、アセチルアミノ基、プロパノイルアミノ基、n−ブタノイルアミノ基、n−ペンタノイルアミノ基、n−ヘキサノイルアミノ基、n−ヘプタノイルアミノ基、n−オクタノイルアミノ基、n−デカノイルアミノ基、ベンゾイルアミノ基、α−ナフトイルアミノ基、及びβ−ナフトイルアミノ基等が挙げられる。
Rb29に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合の置換基としては、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基、炭素数2〜7のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜7の飽和脂肪族アシルオキシ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するモノアルキルアミノ基、炭素数1〜6のアルキル基を有するジアルキルアミノ基、モルホリン−1−イル基、ピペラジン−1−イル基、ハロゲン原子、ニトロ基、及びシアノ基等が挙げられる。Rb29に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が更に置換基を有する場合、その置換基の数は、本発明の目的を阻害しない範囲で限定されないが、1〜4が好ましい。Rb29に含まれる、フェニル基、ナフチル基、及びヘテロシクリル基が、複数の置換基を有する場合、複数の置換基は、同一であっても異なっていてもよい。
Rb29の中では、化学的に安定であることや、立体的な障害が少なく、オキシムエステル化合物の合成が容易であることや、溶媒に対する溶解性が高いこと等から、ニトロ基、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数1〜6のアルコキシ基、及び炭素数2〜7の飽和脂肪族アシル基からなる群より選択される基が好ましく、ニトロ基又は炭素数1〜6のアルキルがより好ましく、ニトロ基又はメチル基が特に好ましい。
Rb29がフェニル基に結合する位置は、Rb29が結合するフェニル基について、フェニル基とオキシムエステル化合物の主骨格との結合手の位置を1位とし、メチル基の位置を2位とする場合に、4位又は5位が好ましく、5位がよりに好ましい。また、sは、0〜3の整数が好ましく、0〜2の整数がより好ましく、0又は1が特に好ましい。
式(15)におけるRb30は、水素原子又は炭素数1〜6のアルキル基である。Rb30としては、メチル基又はエチル基が好ましく、メチル基がより好ましい。Rb30がメチル基である場合、式(15)で表される化合物からなる光塩基発生剤は、特に感度に優れる。
式(15)で表されるオキシムエステル化合物は、上記のスキーム1又は2により合成できる。
また、式(15)で表されるオキシムエステル化合物は、pが1であり、Rb29がメチル基であって、Rb29が結合するベンゼン環に結合するメチル基に対して、Rb29がパラ位に結合する場合、例えば、下記式(16)で表される化合物を、スキーム1と同様の方法で、オキシム化及びアシル化することによって合成することもできる。なお、下記式(16)において、Rb24は式(12)と同様である。
オキシムエステル化合物(B−3)の中でも特に好適な化合物としては、下記式の化合物が挙げられる。
更に、光塩基発生剤としては、例えば、トリフェニルメタノール、ベンジルカルバメート、ベンゾインカルバメート等の光活性なカルバメート;O−カルバモイルヒドロキシルアミド、O−カルバモイルオキシム、アロマティックスルホンアミド、アルファーラクタム、N−(2−アリルエチニル)アミド等のアミド及びその他のアミド;オキシムエステル;α−アミノアセトフェノン;コバルト錯体;1−(アントラキノン−2−イル)エチルイミダゾールカルボキシレート;下記式(17)で表される化合物等の従来公知のものも挙げられる。
(式中、R
b31及びR
b32は、それぞれ独立に、水素原子又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。R
b31及びR
b32は、それらが結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。ただし、R
b31及びR
b32の少なくとも1つは有機基である。R
b33及びR
b34は、それぞれ独立に、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよい。R
b35、R
b36、R
b37、及びR
b38は、水素原子、ハロゲン原子、水酸基、メルカプト基、スルフィド基、シリル基、シラノール基、ニトロ基、ニトロソ基、スルフィノ基、スルホ基、スルホナト基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、ホスホナト基、アミノ基、アンモニオ基、又は有機基であり、同一であっても異なっていてもよく、R
b35、R
b36、R
b37、及びR
b38のいずれかは、下記式(18)で表される部分構造を有する。R
b35、R
b36、R
b37、及びR
b38は、それらの2つ以上が結合して環状構造を形成していてもよく、ヘテロ原子の結合を含んでいてもよい。)
(式中、R
b39は、2つの酸素原子と結合可能な連結基である。R
b40は、水素原子、シリル基、シラノール基、ホスフィノ基、ホスフィニル基、ホスホノ基、又は有機基である。tは1以上の整数である。)
光の作用により酸を発生する化合物(以下、「光酸発生剤」ともいう。)としては、特に限定されず、種々のものを使用できる。好適な光酸発生剤としては、例えば、オニウム塩、ジアゾメタン誘導体、グリオキシム誘導体、ビススルホン誘導体、β−ケトスルホン誘導体、ジスルホン誘導体、ニトロベンジルスルホネート誘導体、スルホン酸エステル誘導体、及びN−ヒドロキシイミド化合物のスルホン酸エステル誘導体等の、公知の光酸発生剤が挙げられる。
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物における(B)成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(B)成分の含有量は、(A)成分100質量に対して1〜50質量部が好ましく、1〜25質量部がより好ましい。
<(C)N,N,N’,N’−テトラメチルウレア>
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物は、溶剤としてN,N,N’,N’−テトラメチルウレア(以下、「(C)成分」ともいう。)を含有する。本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物は、溶剤としてN,N,N’,N’−テトラメチルウレアを含有することで、耐熱性に優れるポリイミド樹脂を与える。
N,N,N’,N’−テトラメチルウレアの大気圧下での沸点は177℃であって、テトラカルボン酸二無水物、ジアミン、及び生成するポリアミック酸を溶解可能な溶剤の中では比較的沸点が低い。このため、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアを溶剤として含有する本発明のネガ型感光性樹脂組成物からポリイミド樹脂を形成すると、生成するポリイミド樹脂中に溶剤が残存しにくく、ポリイミド樹脂の耐熱性が向上するものと考えられる。
更に、N,N,N’,N’−テトラメチルウレアは、EU(欧州連合)でのREACH規則において、有害性が懸念される物質であるSVHC(Substance of Very High Concern、高懸念物質)に指定されていないように、有害性が低い物質である点でも有用である。
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物における(C)成分の含有量は、本発明の目的を阻害しない範囲で特に限定されない。(C)成分の含有量は、上記ネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度に応じて、適宜、調製される。(C)成分の含有量は、上記ネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度が1〜50質量%となる量が好ましく、5〜30質量%となる量がより好ましい。
<その他の成分>
本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物は、本発明の目的を阻害しない範囲で、上記成分以外にその他の成分を含んでいてもよい。その他の成分の例としては、界面活性剤、可塑剤、粘度調整剤、消泡剤、着色剤、及び(C)成分以外の溶剤等が挙げられる。特に、(C)成分以外の溶剤としては、本発明の目的を阻害しない範囲で、従来からポリアミック酸の合成に用いられている溶剤を使用してもよいが、得られるポリイミド樹脂の耐熱性の観点から、本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物においては、溶剤として、(C)成分のみを用いることが最も好ましい。
≪パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法≫
本発明に係る、パターン化されたポリイミド樹脂膜の製造方法は、本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成する塗膜形成工程と、上記塗膜を選択的に露光する露光工程と、露光後の上記塗膜を現像する現像工程と、現像後の上記塗膜を加熱する加熱工程とを含む。本発明に係る製造方法により得られる、パターン化されたポリイミド樹脂膜は、屈曲性及び絶縁性に優れたものとなりやすい。以下、各工程について説明する。
<塗膜形成工程>
塗膜形成工程では、本発明に係るネガ型感光性樹脂組成物を被塗布体の表面に塗布して、上記ネガ型感光性樹脂組成物からなる塗膜を形成する。塗布方法としては、例えば、ディッピング法、スプレー法、バーコート法、ロールコート法、スピンコート法、カーテンコート法等が挙げられる。塗膜の厚さは、特に限定されない。典型的には、塗膜の厚さは、2〜100μmが好ましく、3〜50μmがより好ましい。塗膜の厚さは、塗布方法やネガ型感光性樹脂組成物の固形分濃度や粘度を調節することにより、適宜、制御することができる。
塗膜の形成後、露光工程に移行する前に、塗膜中の溶剤を除去する目的で、塗膜を加熱してもよい。加熱温度や加熱時間は、ネガ型感光性樹脂組成物に含まれる成分に熱劣化や熱分解が生じない限り特に限定されない。塗膜中の溶剤の沸点が高い場合、減圧下に塗膜を加熱してもよい。
<露光工程>
露光工程では、塗膜形成工程で得られる塗膜を、所定のパターンに選択的に露光する。選択的露光は、通常、所定のパターンのマスクを用いて行われる。選択的に露光された上記塗膜中の(B)成分は、光の作用により分解する。(B)成分が分解して発生した塩基又は酸により、上記塗膜中のポリアミック酸の閉環が促進される。このようなポリアミック酸の閉環の結果、ポリイミド膜が形成される。
露光に用いられる放射線としては、例えば、低圧水銀灯、高圧水銀灯、超高圧水銀灯、メタルハライドランプ、g線ステッパー、i線ステッパー等から放射される紫外線、電子線、レーザー光線等が挙げられる。露光量は、使用する光源や塗膜の膜厚等によっても異なるが、通常、1〜1000mJ/cm2、好ましくは10〜500mJ/cm2である。
<現像工程>
現像工程では、露光工程において所定のパターンに選択的に露光された塗膜から未露光部を除去して、上記塗膜を現像する。未露光部は、通常、アルカリ現像液に溶解させて除去される。現像方法としては、例えば、シャワー現像法、スプレー現像法、浸漬現像法、パドル現像法等が挙げられる。アルカリ現像液としては、無機アルカリ化合物及び有機アルカリ化合物から選択される1種以上のアルカリ化合物を含有する水溶液を用いることができる。現像液中のアルカリ化合物の濃度は、露光後の塗膜を良好に現像できる限り特に限定されない。典型的には、現像液中のアルカリ化合物の濃度は、1〜10質量%が好ましい。
無機アルカリ化合物の例としては、水酸化リチウム、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、リン酸水素二アンモニウム、リン酸水素二カリウム、リン酸水素二ナトリウム、ケイ酸リチウム、ケイ酸ナトリウム、ケイ酸カリウム、炭酸リチウム、炭酸ナトリウム、炭酸カリウム、ホウ酸リチウム、ホウ酸ナトリウム、ホウ酸カリウム、及びアンモニア等が挙げられる。有機アルカリ化合物の例としては、テトラメチルアンモニウムヒドロキシド、テトラエチルアンモニウムヒドロキシド、トリメチルヒドロキシエチルアンモニウムヒドロキシド、メチルアミン、ジメチルアミン、トリメチルアミン、モノエチルアミン、ジエチルアミン、トリエチルアミン、n−プロピルアミン、ジ−n−プロピルアミン、イソプロピルアミン、ジイソプロピルアミン、メチルジエチルアミン、ジメチルエタノールアミン、エタノールアミン、及びトリエタノールアミン等が挙げられる。
更に、現像液には、必要に応じて、メタノール、エタノール、プロパノール、又はエチレングリコール等の水溶性有機溶剤、界面活性剤、保存安定剤、及び樹脂の溶解抑止剤等を適量添加することができる。
<加熱工程>
加熱工程では、現像工程において、未露光部が除去されることによって、所定のパターンに現像された塗膜を加熱する。これにより、露光工程を経ても塗膜中に残存していたポリアミック酸の閉環が更に促進され、イミド化がより十分なものとなる。加熱温度は、適宜、調整されるが、例えば、120〜350℃、好ましくは150〜350℃に設定される。このような範囲の温度で現像後の塗膜を加熱することにより、ポリイミド樹脂の熱劣化や熱分解を抑制しつつ、塗膜中に残存していたポリアミック酸が更により十分なものとなりやすい。
また、加熱を高温で行う場合、多量のエネルギーの消費や、高温での処理設備の経時劣化が促進される場合があるため、加熱工程における加熱を低めの温度で行うことも好ましい。具体的には、加熱温度の上限を、220℃以下とするのが好ましく、200℃以下とするのがより好ましく、190℃以下とするのが特に好ましい。
≪屈曲性フィルム、フレキシブル基板≫
本発明に係る製造方法により得られる、パターン化されたポリイミド樹脂膜は、屈曲性に優れたものとなりやすいため、屈曲性フィルムに有用である。本発明に係る屈曲性フィルムは、上記の、パターン化されたポリイミド樹脂膜を備えるものである。本発明に係る屈曲性フィルムは、屈曲性が損なわれない限り、上記ポリイミド樹脂膜以外に、他の樹脂膜や金属箔等を備えていてもよい。
本発明に係る製造方法により得られる、パターン化されたポリイミド樹脂膜は、屈曲性だけでなく、絶縁性にも優れたものとなりやすい。本発明に係る屈曲性フィルムは、このようなポリイミド樹脂膜を備えるため、絶縁性に優れたものとなりやすく、フレキシブル基板において、絶縁層として好適に用いることができる。本発明に係るフレキシブル基板は、本発明に係る屈曲性フィルムを備えるものであり、より具体的には、例えば、上記屈曲性フィルムと、この屈曲性フィルム上に設けられた、銅箔等の金属箔とを備えるものが挙げられる。
以下、実施例を示して本発明を更に具体的に説明するが、本発明の範囲は、これらの実施例に限定されるものではない。
<実施例1〜8、比較例1〜3>
実施例及び比較例におけるテトラカルボン酸二無水物、ジアミン、光塩基発生剤、及び溶剤は、以下に示す通りである。
・テトラカルボン酸二無水物
PMDA:ピロメリット酸二無水物
s−BPDA:3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物
・ジアミン
ODA:4,4’−ジアミノジフェニルエーテル
PPD:p−フェニレンジアミン
・光塩基発生剤
・溶剤
TMU:N,N,N’,N’−テトラメチルウレア
NMP:N−メチル−2−ピロリドン
[ネガ型感光性樹脂組成物の調製]
以下では、表1に示すテトラカルボン酸二無水物と表1に示すジアミンとの反応生成物であり、表1に示す質量平均分子量及び分散度を有するポリアミック酸を用いた。上記ポリアミック酸の10質量%溶液(溶剤は表1に示す通り)17.0gに、表1に示す光塩基発生剤0.4g及び表1に示す溶剤2.6gを添加し撹拌して、ネガ型感光性樹脂組成物を調製した。
[ポリイミド膜の調製]
得られたネガ型感光性樹脂組成物を用いて、以下の方法に従って、ポリイミド膜を形成してポリイミドの耐熱性を評価するとともに、上記ネガ型感光性樹脂組成物のパターニング特性を評価した。
(耐熱性)
得られたネガ型感光性樹脂組成物をウエハ基板上に、スピンコーター(ミカサ製、1H−360S)により塗布した。ウエハ基板上の塗膜を180℃で20分間加熱して、膜厚約0.9μmのポリイミド膜を形成した。得られたポリイミド膜から、耐熱性評価用の試料5μgを削り取った。耐熱性評価用のポリイミド樹脂の試料を用いて、示差熱/熱重量測定装置(TG/DTA−6200、セイコーインスツル株式会社製)による測定を行い、TG曲線を得た。得られたTG曲線から、試料の5%重量減少温度を求めた。5%重量減少温度が300℃以上である場合、耐熱性が良(○)であると判定し、300℃未満である場合、耐熱性が不良(×)であると判定した。結果を表1に示す。
(パターニング特性)
得られたネガ型感光性樹脂組成物をウエハ基板上に、スピンコーター(ミカサ製、1H−360S)により塗布し、80℃で2分間プリベークして、膜厚1μmの塗膜を形成した。ラインアンドスペースパターンのマスクを用いて、超高圧水銀灯(200mW/cm2)により、2.5秒間露光した。露光された塗膜を、120℃のホットプレート上で5分間加熱した後、現像液(テトラメチルアンモニウムハイドロオキサイド2.38質量%水溶液とイソプロパノールを9:1で混合した溶液)に浸漬した。その結果、露光部が現像液に溶解せず残存したパターンを得ることができた。次いで、現像された塗膜を180℃で1時間加熱して、イミド化を行い、イミド化後の塗膜を観察した。イミド化後の塗膜がウエハ基板から剥がれず、幅4μmのラインが形成可能であった場合、パターニング特性が良(○)であると判定した。一方、イミド化後の塗膜がウエハ基板から剥がれてしまい、幅4μmのラインが形成不可であった場合、パターニング特性が不良(×)であると判定した。結果を表1に示す。
実施例1〜8によれば、質量平均分子量4000〜60000、分散度3.5以下のポリアミック酸を含み、溶剤としてN,N,N’,N’−テトラメチルウレアを用いたネガ型感光性樹脂組成物から得られたポリイミドは耐熱性に優れ、また、上記ネガ型感光性樹脂組成物からは良好にパターンを形成できることが分かる。
比較例1によれば、溶剤としてTMUの代わりにNMPを用いた場合、パターニング特性は良好なものの、耐熱性には劣ることが分かる。
比較例2及び3によれば、ポリアミック酸の質量平均分子量が60000を超え、又は、ポリアミック酸の分散度が3.5を超える場合、耐熱性には優れるものの、パターニング特性は不良であることが分かる。