JP2015013519A - 空気入りタイヤ - Google Patents

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Abstract

【課題】耐グルーブクラック性能を向上させた空気入りタイヤを提供する。【解決手段】タイヤ周方向に延びる溝5aが配置される接地面を形成するトレッドゴム5(キャップゴム50)と、タイヤ子午線断面において溝5aのタイヤ幅方向WD両側及びタイヤ径方向RD内側となる溝周辺領域Arに配置される網目状ゴム52であって、トレッドゴム5(キャップゴム50)よりも高硬度なゴムで形成される網目状ゴム52と、を有する。溝5aの壁面全体が網目状ゴム52で形成されず、少なくとも一部の溝壁面がトレッドゴム5(キャップゴム50)で形成されている。【選択図】図2

Description

本発明は、接地面に配置される溝に生じるクラックを低減させた空気入りタイヤに関する。
空気入りタイヤの接地面には、タイヤ周方向に延びる溝が複数配置されていることが多い。接地時において接地面を形成するトレッドゴムが変形し、溝底に歪みが集中しやすく、溝底にクラックが生じることがある。ショルダー部にある溝、すなわちタイヤ幅方向の最も外側にある溝に、クラックが生じやすい。
特許文献1には、高速耐久性能等を向上させるために、接地面を形成するトレッドゴムよりも高弾性のゴムで溝の壁面全体を形成した空気入りタイヤが開示されている。なお、特許文献1には、グルーブクラックのことは言及されていないようである。
特開昭60−124507号公報
上記特許文献1に開示のタイヤを含め、従来のタイヤでは、溝底に歪みが集中しやすく、グルーブクラックを招来しやすい。
本発明は、このような課題に着目してなされたものであって、その目的は、耐グルーブクラック性能を向上させた空気入りタイヤを提供することである。
本発明は、上記目的を達成するために、次のような手段を講じている。
すなわち、本発明の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる溝が配置される接地面を形成するトレッドゴムと、タイヤ子午線断面において前記溝のタイヤ幅方向両側及びタイヤ径方向内側となる溝周辺領域に配置される網目状ゴムであって、前記トレッドゴムよりも高硬度なゴムで形成される網目状ゴムと、を備え、前記溝の壁面全体が前記網目状ゴムで形成されず、少なくとも一部の溝壁面が前記トレッドゴムで形成されていることを特徴とする。
このように、タイヤ子午線断面において溝のタイヤ幅方向両側及びタイヤ径方向内側となる溝周辺領域に、トレッドゴムよりも高硬度なゴムで形成された網目状ゴムが配置されているので、溝に作用する歪みを分散させることができ、耐グルーブクラック性能を向上させることが可能となる。溝に集中する歪みを低減できるので、転がり抵抗を低減させることも可能となる。それでいて、溝の壁面全体が網目状ゴムで形成されず、少なくとも一部の溝壁面がトレッドゴムで形成されているので、溝の壁面全体が高硬度ゴムで形成されている場合に比べて溝に作用する歪みを分散でき、耐グルーブクラック性能を向上させることが可能となる。
網目状ゴムを適切に配置するためには、前記トレッドゴム及び前記網目状ゴムは、タイヤ幅方向に移動させながらタイヤ回転軸回りに巻き付けられたリボンゴムにより形成され、前記溝周辺領域には、少なくとも二層のリボンゴムが積層された部位が存在することが好ましい。
溝を包囲するように網目状ゴムを配置しやすくするためには、前記溝周辺領域には、少なくとも三層のリボンゴムが積層された部位が存在することが好ましい。
高速耐久性能を向上させるためには、前記リボンゴムの巻き付け始端及び巻き付け終端が、前記溝の直下に配置されていることが好ましい。
耐グルーブクラック性能を向上させるためには、前記リボンゴムは、前記トレッドゴムとなる第1ゴムと、前記網目状ゴムとなる第2ゴムと、を含み、前記リボンゴムの断面積における前記第2ゴムの断面積の割合は、タイヤ径方向外側から内側に向かうほど大きくなることが好ましい。
耐グルーブクラック性能を向上させるためには、前記網目状ゴムが配置される領域のタイヤ幅方向長さは、タイヤ径方向外側から内側へ向かうほど広くなることが好ましい。
適切に導電経路を確保するためには、前記網目状ゴムは導電性ゴムであり、当該網目状ゴムが前記接地面にて露出していることが好ましい。
本発明に係る空気入りタイヤの一例を示すタイヤ子午線断面図。 トレッド部を模式的に示す拡大図。 トレッドゴムの成形工程で用いられる製造設備を示す図。 リボンゴムの模式的な断面図。 リボンゴムの模式的な断面図。 リボンゴムの巻き付け過程を示す平面図。 網目状ゴムの積層範囲の一例を示す図。 網目状ゴムの積層範囲の一例を示す図。 網目状ゴムの積層範囲の一例を示す図。 従来の空気入りタイヤの溝周辺を模式的に示すタイヤ子午線断面図。
以下、本発明の一実施形態の空気入りタイヤについて、図面を参照して説明する。
図1に示すように、空気入りタイヤTは、一対のビード部1と、各々のビード部1からタイヤ径方向RD外側に延びるサイドウォール部2と、両サイドウォール部2のタイヤ径方向RD外側端に連なるトレッド部3と、を備える。ビード部1には、鋼線等の収束体をゴム被覆してなる環状のビードコア1aと、硬質ゴムからなるビードフィラー1bとが配設されている。
このタイヤTは、トレッド部3からサイドウォール部2を経てビード部1に至るトロイド状のカーカス層4を備える。カーカス層4は、一対のビード部同士1の間に設けられ、少なくとも一枚のカーカスプライにより構成され、その端部がビードコア1aを介して巻き上げられた状態で係止されている。カーカスプライは、タイヤ赤道CLに対して略直角に延びるコードをトッピングゴムで被覆して形成されている。カーカス層4の内側には、空気圧を保持するためのインナーライナーゴム4aが配置されている。
サイドウォール部2におけるカーカス層4の外側には、サイドウォールゴム6が設けられている。また、ビード部1におけるカーカス層4の外側には、リム装着時にリム(図示しない)と接するリムストリップゴム7が設けられている。本実施形態では、カーカス層4のトッピングゴム、リムストリップゴム7及びサイドウォールゴム6が導電性ゴムで形成されている。
トレッド部3におけるカーカス層4の外側には、カーカス層4を補強するためのベルト4bと、ベルト補強材4cと、トレッドゴム5とが内側から外側に向けて順に設けられている。ベルト4bは、複数枚のベルトプライにより構成されている。ベルト補強材4cは、タイヤ周方向に延びるコードをトッピングゴムで被覆して構成されている。ベルト補強材4cは、必要に応じて省略しても構わない。
図2は、トレッド部を模式的に示す拡大図である。トレッドゴム5の表面には、タイヤ周方向に沿って延びる複数本の溝5aが形成されている。本実施形態では溝5aは4本設けられているが、少なくとも2本あればよい。図1及び図2に示すように、トレッドゴム5は、接地面を構成するキャップゴム50と、キャップゴム50のタイヤ径方向内側に設けられるベースゴム51と、を有する。上記において接地面は、正規リムにリム組みし、正規内圧を充填した状態でタイヤを平坦な路面に垂直に置き、所定の正規荷重を加えたときの路面に接地する面であり、そのタイヤ幅方向WDの最外位置が接地端Eとなる。なお、正規荷重及び正規内圧とは、JISD4202(自動車タイヤの所元)等に規定されている最大荷重(乗用車用タイヤの場合は設計常用荷重)及びこれに見合った空気圧とし、正規リムとは、原則としてJISD4202等に定められている標準リムとする。
図2に示すように、タイヤ子午線断面において溝5aのタイヤ幅方向WD両側及びタイヤ径方向RD内側となる溝周辺領域Arには、網目状ゴム52が配置されている。網目状ゴム52は、トレッドゴム5よりも高硬度なゴムで形成されている。網目状ゴム52を設けることで、低硬度ゴム(トレッドゴム5)と高硬度ゴム(網目状ゴム52)とが交互に配置されることになる。本実施形態では、網目状ゴム52は導電性ゴムで形成され、キャップゴム50及びベースゴム51は非導電性ゴムで形成されている。網目状ゴム52は、接地面にて外部に露出している。これにより、導電経路を適切に確保することが可能となる。本実施形態において網目状ゴム52は、キャップゴム50及びベースゴム51の両方に配置されているが、少なくともキャップゴム50に配置されていれば、ベースゴム51に配置されていなくてもよい。溝周辺領域Arの幅をW1とし、溝5aの幅をW0とした場合に、W1≧W0×2となるのが好ましい。
トレッドゴム5(キャップゴム50,ベースゴム51)の硬度は、40〜80°が好ましく、特に55〜75°が好ましい。トレッドゴム5に対し網目状ゴム52は硬度が高ければよいが、少なくとも3度以上の硬度差があることが好ましい。好ましい高度差は3°〜10°が挙げられる。ここでいうゴム硬度は、JISK6253のデュロメータ硬さ試験(タイプA)に準じて測定した硬度を意味する。ゴム硬度が高いほど硬いことを示し、ゴム硬度が低いほど柔らかいことを示す。
図2に示すように、溝の壁面全体が網目状ゴム52で形成されておらず、少なくとも一部の壁面がトレッドゴム5で形成されている。本実施形態では、溝の壁面の一部がトレッドゴム5で形成され、網目状ゴム52が溝5aの壁面に露出している。勿論、溝の壁面全体がトレッドゴム5で形成され、網目状ゴム52が溝壁面に露出していない構成でもよい。溝5aの壁面全体が高硬度ゴムで形成されていなければよい。
本実施形態では、図1に示すように、タイヤ幅方向の最も外側に位置する左右二つの溝の周辺領域に網目状ゴム52が配置され、上記2つの溝の間にある他の溝の周辺領域には網目状ゴムが配置されていない。上記2つの溝の間には、網目状ゴムが配置されない領域があり、トレッドゴム全体に網目状ゴムが配置されているわけではない。
上記トレッドゴム5(キャップゴム50及びベースゴム51)は、いわゆるリボン巻き工法により成形される。リボン巻き工法は、図3に示すように、回転支持体31を回転させながら、リボンゴム成形装置30から供給されたリボンゴム20を回転支持体31に巻き付ける段階を含む。使用するゴムリボン20には、図4A及び図4Bに示すように、2種類のリボンゴム20がある。図4Aに示すリボンゴム20は、非導電性ゴムで形成されトレッドゴム5となる第1ゴム20aのみで形成されている。図4Bに示すリボンゴム20は、上記第1ゴム20aと、導電性ゴムで形成され上記網目状ゴム52となる第2ゴム20bと、を有し、第2ゴム20bが第1ゴム20aの片面を被覆している。第2ゴム20bの供給の有無を切り替えることにより、2種類のリボンゴムを切り替え可能である。
図3に示すように、リボンゴム成形装置30は、ゴムを押出してリボンゴム20を成形可能に構成されている。回転支持体31は、軸31aを中心としたR方向の回転と、軸方向への移動とが可能に構成されている。制御装置32は、リボンゴム成形装置30及び回転支持体31の作動制御を行う。本実施形態では、リボンゴム20の断面は三角形状であるが、これに限られず、楕円形や四角形などの他の形状でも構わない。また、回転支持体31は軸方向へ移動可能に構成されているが、回転支持体31に対しリボンゴム成形装置30を移動させてもよい。すなわち、回転支持体31が、リボンゴム成形装置30に対して軸方向に沿って相対移動可能に構成されていればよい。図5に示すように、リボンゴム20の巻き付けピッチP20は、リボンゴム20のリボン幅W20よりも小さく設定されている。これにより、隣り合うリボンゴム20・20同士が相互に接する状態で螺旋状に巻き付けられる。矢印Dは、リボン巻き付け位置の移動方向を示し、この方向に沿って隣り合うリボンゴム20が相互に縁部を重ねている。
図2は、リボンゴム20の巻き付け位置の移動経路を概念的に示している。説明の便宜上、タイヤ子午線断面においてタイヤ幅方向WDの一方側(図では左方)をWD1とし、他方側をWD2(図では右方)とする。ベースゴム51は、一方のトレッド端P2を始端S1として、リボンゴム20を他方のトレッド端P1へ向けて巻き付け、当該トレッド端P1を終端E1とする。溝周辺領域Arでは、図4Aに示すリボンゴム20から図4Bに示すリボンゴム20に切り替えることにより、網目状ゴム52を形成する。キャップゴム50は、タイヤ幅方向WDの外側にある溝5aの直下を始端S2とし、図2に示すように8の字を描く移動経路に沿ってリボンゴム20を移動させ、当該溝5aの直下を終端E2とする。リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E2は、溝5aのタイヤ径方向RD内側であって、タイヤ径方向RDに沿って見た場合に溝5aと重なる位置に配置されている。本実施形態では、リボンゴム20の移動経路は、タイヤ赤道CLを中心に左右対称であり、ユニフォミティを向上させている。勿論、リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E2は、適宜その配置位置を変更可能である。
本実施形態では、図2に示すように、溝周辺領域Arには、三層のリボンゴム20が積層された部位が存在する。勿論、リボンゴム20を4層、5層又はそれ以上にしてもよい。このようにリボンゴム20の層を三層以上にすることで、網目状ゴム52を十分に溝5aの下方に配置でき、耐クラック性能を向上できる。勿論、溝周辺領域Arには、少なくとも2層のリボンゴム20が積層されていればよい。リボンゴム20が2層でも網目状ゴム52を適切に配置することができるからである。
高硬度ゴムからなる網目状ゴム52の積層範囲は、図6A〜Cに示すように、適宜変更することができる。図6A〜Cでは、積層範囲を2点鎖線で模式的に示している。図6Aは、点線を用いてリボンゴム20の移動経路を示している。図6Aは、網目状ゴム52が配置される領域のタイヤ幅方向長さが、タイヤ径方向外側から内側へ向かうほど広くなる例を示している。図6Bは、上記長さが、タイヤ径方向でほとんど変わらない例を示している。図6Cは、上記長さが、タイヤ径方向外側から内側へ向かうほど狭くなる例を示している。
図4Bに示すリボンゴムの断面において、リボンゴム20の断面積における第2ゴム20bの断面積の割合Q%を、タイヤ径方向に応じて変化させてもよい。すなわち、タイヤ径方向外側にあるリボンゴムの断面積における第2ゴム20bの断面積の割合をX%とし、タイヤ径方向内側にある上記割合をY%とした場合に、次の3つのパターンが挙げられる。1つは、X>Yである。2つは、X=Yである。3つは、X<Yである。本実施形態では、第2ゴム20bの面積を変化させていないので、X=Yである。トレッドゴム5と網目状ゴム52との硬度差が3°以上且つ10°以下の場合、上記割合Q%は、網目状ゴム52を十分に配置するためには、少なくとも2%は必要である。上記各割合は、次の範囲内であるのが好ましい。2≦X≦50、3≦Y≦50。ベースゴム51にも網目状ゴム52を配置する場合、当該部分のリボンゴム20における第2ゴム20bの断面積の割合をZ%とすれば、5≦Z≦80が好ましい。
導電性ゴムは、体積抵抗率が10Ω・cm未満を示すゴムが例示され、例えば原料ゴムに補強剤としてカーボンブラックを高比率で配合することにより作製される。カーボンブラック以外にも、カーボンファイバーや、グラファイト等のカーボン系、及び金属粉、金属酸化物、金属フレーク、金属繊維等の金属系の公知の導電性付与材を配合することでも得られる。
また、非導電性ゴムは、体積抵抗率が10Ω・cm以上を示すゴムが例示され、原料ゴムに補強剤としてシリカを高比率で配合したものが例示される。該シリカは、例えば原料ゴム成分100重量部に対して30〜100重量部で配合される。シリカとしては、湿式シリカを好ましく用いるが、補強材として汎用されているものは制限なく使用できる。非導電性ゴムは、沈降シリカや無水ケイ酸などのシリカ類以外にも、焼成クレーやハードクレー、炭酸カルシウムなどを配合して作製してもよい。
上記の原料ゴムとしては、天然ゴム、スチレンブタジエンゴム(SBR)、ブタジエンゴム(BR)、イソプレンゴム(IR)、ブチルゴム(IIR)等が挙げられ、これらは1種単独で又は2種以上混合して使用される。かかる原料ゴムには、加硫剤や加硫促進剤、可塑剤、老化防止剤等も適宜に配合される。
導電性ゴムは、耐久性を高めて通電性能を向上する観点から、窒素吸着非表面積:NSA(m/g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1900以上、好ましくは2000以上であって、且つ、ジブチルフタレート吸油量:DBP(ml/100g)×カーボンブラックの配合量(質量%)が1500以上、好ましくは1700以上を満たす配合であることが望ましい。NSAはASTM D3037−89に、DBPはASTM D2414−90に準拠して求められる。
以上のように、本実施形態の空気入りタイヤは、タイヤ周方向に延びる溝5aが配置される接地面を形成するトレッドゴム5と、タイヤ子午線断面において溝5aのタイヤ幅方向WD両側及びタイヤ径方向RD内側となる溝周辺領域Arに配置される網目状ゴム52であって、トレッドゴム5よりも高硬度なゴムで形成される網目状ゴム52と、を備える。溝5aの壁面全体が網目状ゴム52で形成されず、少なくとも一部の溝壁面がトレッドゴム5で形成されている。
このように、タイヤ子午線断面において溝5aのタイヤ幅方向両側及びタイヤ径方向内側となる溝周辺領域Arに、トレッドゴム5よりも高硬度なゴムで形成された網目状ゴム52が配置されているので、溝5aに作用する歪みを分散させることができ、耐グルーブクラック性能を向上させることが可能となる。溝5aに集中する歪みを低減できるので、転がり抵抗を低減させることも可能となる。それでいて、溝5aの壁面全体が網目状ゴムで形成されず、少なくとも一部の溝壁面がトレッドゴムで形成されているので、溝5aの壁面全体が高硬度ゴムで形成されている場合に比べて溝に作用する歪みを分散でき、耐グルーブクラック性能を向上させることが可能となる。
本実施形態では、トレッドゴム5及び網目状ゴム52は、タイヤ幅方向WDに移動させながらタイヤ回転軸回りに巻き付けられたリボンゴム20により形成されている。溝周辺領域Arには、少なくとも二層のリボンゴム20が積層された部位が存在する。
この構成によれば、一種のゴムで形成されるリボンと、硬度の異なる二種のゴムで形成されるリボンゴムと、を使い分けるだけで、網目状ゴムを配置できるので、製造しやすい。それでいて、溝周辺領域Arには、少なくとも二層のリボンゴム20が積層された部位が存在するので、網目状ゴムを適切に配置することが可能となる。
本実施形態では、溝周辺領域Arには、少なくとも三層のリボンゴムが積層された部位が存在する。この構成によれば、タイヤ子午線断面において溝5aを包囲するように網目状ゴム52を配置しやすくなる。
本実施形態では、リボンゴム20の巻き付け始端S2及び巻き付け終端E2が、溝5aの直下に配置されている。この構成によれば、溝5aの直下は、ゴムの厚みが薄くなり、それに伴い高速回転時の発熱が抑えられるので、発熱に起因する故障を抑制でき、高速耐久性能を向上させることが可能となる。
本実施形態では、リボンゴム20は、トレッドゴム5となる第1ゴム20aと、網目状ゴム52となる第2ゴム20bと、を含む。リボンゴム20の断面積における第2ゴム20bの断面積の割合Q%は、タイヤ径方向RD外側から内側に向かうほど大きくなる。この構成によれば、溝のタイヤ径方向内側(又は直下)に配置される網目状ゴムが増えるので、耐グルーブクラック性能を向上することが可能となる。
本実施形態では、網目状ゴム52が配置される領域のタイヤ幅方向WD長さは、タイヤ径方向RD外側から内側へ向かうほど広くなる。この構成によれば、溝5aのタイヤ径方向RD内側に配置される網目状ゴムが増えるので、耐グルーブクラック性能を向上することが可能となる。
本実施形態では、網目状ゴム52は導電性ゴムであり、網目状ゴム52が接地面にて露出している。この構成によれば、摩耗初期、中期、末期のいずれのタイミングでも適切に導電経路を確保することが可能になる。
本発明の構成と効果を具体的に示すために、下記実施例について下記の評価を行った。なお、下記でいうゴム硬度は、ゴム組成物を150℃で30分間加硫し、23℃における加硫ゴムのゴム硬度をJISK6253に準拠して測定した値である。
(1)耐グルーブクラック性能(溝底歪み評価)
有限要素法(FEM;Finite Element Method)用にサイズ195/65R15のタイヤモデルを生成し、所定負荷をかけた状態における溝底の歪みのレベルを比較した。比較例1を100として指数で評価した。当該指数が大きいほど耐グルーブクラック性能が高く好ましい。
(2)転がり抵抗
サイズ195/65R15の試作タイヤを、サイズ15×6.0Jのリムに組み付け、内圧250kPaを充填し、実車Fr条件となる荷重440kgfをかけ、ドラム走行試験にて測定した転がり抵抗を指数評価した。比較例1を100として指数で評価した。当該指数が小さいほど転がり抵抗が小さく好ましい。
比較例1
図2に示す移動経路にてリボンゴムを巻き、タイヤを作製した。キャップゴム50の硬度は65°とし、ベースゴム51の硬度は59°としている。ただし、網目状ゴム52を配置していない。
比較例2
図7に示すように、溝5aの壁面全体を、トレッドゴム5(キャップゴム50)よりも硬い高硬度ゴム152で形成した。網目状ゴムはない。高硬度ゴム152の硬度は70°とした。それ以外は、比較例1と同じである。
実施例1
図2に示す移動経路にてリボンゴムを巻き、タイヤを作製した。キャップゴム50の硬度は65°とし、ベースゴム51の硬度は59°としている。図2に示すように、網目状ゴム52を配置している。キャップ部の網目状ゴム52の硬度は70°であり、キャップゴム50との硬度差は5°である。ベース部の網目状ゴム52の硬度は64°である。リボンゴム20の断面積に占める第2ゴム20bの断面積の割合Q(X=Y=Z)は10%とした。網目状ゴム52の積層範囲のタイヤ幅方向WD長さは、図6Cに示すように、タイヤ径方向RD外側から内側に向かうにつれ狭くなるようにした。
実施例2
網目状ゴム52の積層範囲のタイヤ幅方向WD長さは、図6Bに示すようにタイヤ径方向RDに応じてほぼ変化しないようにした。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例3
網目状ゴム52の積層範囲のタイヤ幅方向WD長さは、図6Aに示すように、タイヤ径方向RD外側から内側に向かうにつれ広くなるようにした。それ以外は、実施例1と同じとした。
実施例4
リボンゴム20における第2ゴム20bの断面積の割合について、X<Y<Zとした。すなわち、リボンゴム20の断面積における第2ゴム20bの断面積の割合は、タイヤ径方向RD外側から内側に向かうほど大きくなる。それ以外は、実施例2と同じとした。
実施例5
リボンゴム20における第2ゴム20bの断面積の割合について、X>Y>Zとした。すなわち、リボンゴム20の断面積における第2ゴム20bの断面積の割合は、タイヤ径方向RD外側から内側に向かうほど小さくなる。それ以外は、実施例2と同じとした。
Figure 2015013519
表1より、実施例1〜5が、比較例1、2に対して耐グルーブクラック性能及び転がり抵抗が改善している。これは、高硬度ゴムで形成される網目状ゴム52により歪みが分散されるからと考えられる。
網目状ゴム52の積層範囲について、実施例2が実施例1よりも優れており、さらに、実施例3が実施例2よりも優れていることから、溝5aの直下に網目状ゴム52がより多く配置されていることが原因と考えられる。
リボンゴム20に占める高硬度ゴムの割合について、実施例4が実施例2よりも優れており、実施例5が実施例2よりも劣っている。このことから、溝5aの直下に配置される網目状ゴム52の量が両性能に影響を与え、上記高硬度ゴムの割合に応じて、網目状ゴム52の量が変わることも理解できる。
上記の各実施形態で採用している構造を他の任意の実施形態に採用することは可能である。各部の具体的な構成は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々変形が可能である。
5 トレッドゴム(キャップゴム)
5a 溝
Ar 溝周辺領域
52 網目状ゴム
20 リボンゴム
20a 第1ゴム
20b 第2ゴム
S2 巻き付け始端
E2 巻き付け終端
WD タイヤ幅方向
RD タイヤ径方向

Claims (7)

  1. タイヤ周方向に延びる溝が配置される接地面を形成するトレッドゴムと、
    タイヤ子午線断面において前記溝のタイヤ幅方向両側及びタイヤ径方向内側となる溝周辺領域に配置される網目状ゴムであって、前記トレッドゴムよりも高硬度なゴムで形成される網目状ゴムと、を備え、
    前記溝の壁面全体が前記網目状ゴムで形成されず、少なくとも一部の溝壁面が前記トレッドゴムで形成されていることを特徴とする空気入りタイヤ。
  2. 前記トレッドゴム及び前記網目状ゴムは、タイヤ幅方向に移動させながらタイヤ回転軸回りに巻き付けられたリボンゴムにより形成され、前記溝周辺領域には、少なくとも二層のリボンゴムが積層された部位が存在する請求項1に記載の空気入りタイヤ。
  3. 前記溝周辺領域には、少なくとも三層のリボンゴムが積層された部位が存在する請求項2に記載の空気入りタイヤ。
  4. 前記リボンゴムの巻き付け始端及び巻き付け終端が、前記溝の直下に配置されている請求項2又は3に記載の空気入りタイヤ。
  5. 前記リボンゴムは、前記トレッドゴムとなる第1ゴムと、前記網目状ゴムとなる第2ゴムと、を含み、
    前記リボンゴムの断面積における前記第2ゴムの断面積の割合は、タイヤ径方向外側から内側に向かうほど大きくなる請求項2〜4のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  6. 前記網目状ゴムが配置される領域のタイヤ幅方向長さは、タイヤ径方向外側から内側へ向かうほど広くなる請求項1〜5のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
  7. 前記網目状ゴムは導電性ゴムであり、当該網目状ゴムが前記接地面にて露出している請求項1〜6のいずれかに記載の空気入りタイヤ。
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