JP2015008845A - バルーンコーティング方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】コーティング層を所望の厚さで均質に形成でき、かつ薬剤の形態型などをバルーンの部位に応じて自在に調節しつつコーティング可能なバルーンコーティング方法を提供する。
【解決手段】バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法であって、水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液Rに前記バルーン30の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程と、前記バルーン30を振動させる加振工程と、を有している。
【選択図】図1
【解決手段】バルーンカテーテル10のバルーン30の外表面にコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法であって、水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液Rに前記バルーン30の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程と、前記バルーン30を振動させる加振工程と、を有している。
【選択図】図1
Description
本発明は、バルーンの外表面に薬剤を含むコーティング層を形成するバルーンコーティング方法に関する。
近年、生体管腔内に生じた病変部(狭窄部)の改善のために、バルーンカテーテルが用いられている。バルーンカテーテルは、通常、長尺なシャフト部と、シャフト部の先端側に設けられて径方向に拡張可能なバルーンとを備えており、収縮されているバルーンを、細い生体管腔を経由して体内の目的場所まで到達させた後に拡張させることで、病変部を押し広げることができる。
しかしながら、病変部を強制的に押し広げると、内皮細胞が過剰に増殖して病変部に新たな狭窄(再狭窄)が発症する場合がある。このため、最近では、バルーンの外表面に狭窄を抑制するための薬剤をコーティングした薬剤溶出バルーンが用いられている。薬剤溶出バルーンは、拡張することで外表面にコーティングされている薬剤を瞬時に放出して薬剤を生体組織へ移行させることができ、これにより、再狭窄を抑制することができる。
バルーンに薬剤をコーティングする方法として、種々の方法が提案されている。例えば特許文献1には、バルーンカテーテルのバルーンを、薬剤を含む溶液に浸漬させた後に引き上げて溶媒を揮発させることで、薬剤を含むコーティング層をバルーンの外表面に形成する方法が記載されている。
また、特許文献2には、回転可能な球体を備えるコーティング装置を用いて、薬剤を含む溶液を球体に供給しつつ球体をバルーンの外表面に接触させて回転させることで、バルーンの外表面に溶液を塗布し、溶媒を揮発させて薬剤を含むコーティング層を形成する方法が記載されている。
バルーンの外表面にコーティングされる薬剤は、溶媒を揮発させる際の時間の長短や温度条件等によって、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などの異なる形態型となり得る。結晶および非晶質は、必ずしもどちらが望ましいというものではなく、目的に応じて選択できることが望まれる。
本発明は、上述した課題を解決するためになされたものであり、コーティング層を所望の厚さで均質に形成でき、かつ薬剤の形態型などをバルーンの部位に応じて自在に調節しつつコーティング可能なバルーンコーティング方法を提供することを目的とする。
上記目的を達成する本発明に係るバルーンコーティング方法は、バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法であって、水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液に前記バルーンの少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程と、前記バルーンを振動させる加振工程と、を有する。
上記のように構成したバルーンコーティング方法は、バルーンを振動させる加振工程を有するため、バルーンにコーティング液を均一に付着させて、コーティング層の厚さのバラツキを抑制して所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、バルーンの外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液内の薬剤と接触する回数を振動によって増加させることができ、薬剤の形態型や大きさなどを、バルーンの部位に応じて自在に調節することが可能となる。
前記加振工程において、前記コーティング液の界面から前記バルーンの少なくとも一部を引き上げつつ前記バルーンを振動させるようにすれば、バルーンを振動させつつ揮発性溶媒を揮発させることができ、雰囲気中の気体に対する揮発性溶媒の接触を促すことで揮発速度を調節することが可能となり、薬剤の形態型および大きさを自在に調節できるとともに、製造時間を短縮できる。
前記加振工程において、前記コーティング液の界面から前記バルーンの少なくとも一部を引き上げた後に再び浸漬させるように前記バルーンを往復運動させるようにすれば、バルーンの引き上げ毎に、引き上げられた部位に付着したコーティング液の揮発性溶媒が揮発して徐々にコーティング層が形成され、コーティング層の厚さを高精度に制御できる。
前記加振工程において、前記コーティング液を介して前記バルーンを振動させるようにすれば、バルーンカテーテルに直接的に加振機構を取り付けることなしに、容易な構成でバルーンを振動させることができる。
以下、図面を参照して、本発明の実施の形態を説明する。なお、図面の寸法比率は、説明の都合上、誇張されて実際の比率とは異なる場合がある。
<第1実施形態>
第1の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーン30の外表面に薬剤を含むコーティング層を形成するものであり、図1に示すコーティング装置50により実施される。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10の管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
第1の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーン30の外表面に薬剤を含むコーティング層を形成するものであり、図1に示すコーティング装置50により実施される。なお、本明細書では、バルーンカテーテル10の管腔に挿入する側を「先端」若しくは「先端側」、操作する手元側を「基端」若しくは「基端側」と称することとする。
まず、バルーンカテーテル10の構造を説明する。バルーンカテーテル10は、図2に示すように、長尺なカテーテル本体部20と、カテーテル本体部20の先端部に設けられるバルーン30と、バルーン30の外表面に被覆されるコーティング層32と、カテーテル本体部20の基端に固着されたハブ40とを有している。
カテーテル本体部20は、先端および基端が開口した管状体である外管21と、外管21の内部に配置される内管22とを備えている。外管21および内管22の間には、バルーン30を拡張するための拡張用流体が流通する拡張ルーメン23が形成されており、内管22の内側には、ガイドワイヤーが挿通されるガイドワイヤールーメン24が形成されている。
バルーン30は、先端側が内管22に接着され、基端側が外管21に接着されており、バルーン30の内部が、拡張ルーメン23に連通している。
ハブ40は、外管21の拡張ルーメン23と連通して拡張用流体を流入出させるポートとして機能する第1開口部41と、ガイドワイヤールーメン24を挿通させる第2開口部42とを備えている。第2開口部42には、血液の流出を抑制する止血弁43が設けられている。
バルーン30は、ある程度の可撓性を有する材料により形成されることが好ましく、そのような材料としては、例えば、ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリブテン、エチレン−プロピレン共重合体、エチレン−酢酸ビニル共重合体、アイオノマー、あるいはこれら二種以上の混合物等のポリオレフィンや、軟質ポリ塩化ビニル樹脂、ポリアミド、ポリアミドエラストマー、ポリエステル、ポリエステルエラストマー、ポリウレタン、フッ素樹脂等の熱可塑性樹脂、シリコーンゴム、ラテックスゴム等が使用できる。なお、バルーンカテーテルの構成は、拡張可能なバルーンを備えていれば、上記の構成に限定されない。
コーティング層32は、バルーン30を、薬剤、添加剤、および揮発性溶媒を含むコーティング液Rに浸漬(ディッピング)させ、揮発性溶媒を揮発させることで形成される。
薬剤は、生体へ作用する物質であり、薬剤の血中への溶出を抑制するという観点から、不水溶性薬剤が好ましい。
不水溶性薬剤は、水に不溶または難溶性である薬剤を意味し、具体的には、水に対する溶解度が、pH5〜8で5mg/mL未満である。その溶解度は、1mg/mL未満、さらに、0.1mg/mL未満でもよい。水不溶性薬剤は、脂溶性薬剤を含む。
いくつかの好ましい水不溶性薬剤の例は、免疫抑制剤、例えば、シクロスポリンを含むシクロスポリン類、ラパマイシン等の免疫活性剤、パクリタキセル等の抗がん剤、抗ウイルス剤または抗菌剤、抗新生組織剤、鎮痛剤および抗炎症剤、抗生物質、抗てんかん剤、不安緩解剤、抗麻酔剤、拮抗剤、ニューロンブロック剤、抗コリン作用剤、抗不整脈剤、抗高血圧剤、ホルモン剤ならびに栄養剤を含む。
水不溶性薬剤としては、ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセルおよびエベロリムスからなる群から選択される少なくとも1つが好ましい。ラパマイシン、パクリタキセル、ドセタキセル、エベロリムスは、それぞれ、同様の薬効を有する限り、それらの類似体および/またはそれらの誘導体を含む。例えば、パクリタキセルとドセタキセルとは類似体の関係にあり、ラパマイシンとエベロリムスとは誘導体の関係にある。これらのうちでは、パクリタキセルがさらに好ましい。
本実施形態におけるコーティング液Rは、上記水不溶性薬剤を、好ましくは5〜60mg/mLの濃度で、より好ましくは20〜50mg/mLの濃度で、さらに好ましくは30〜40mg/mLの濃度で、含有する。
添加剤は、特に制限されないが、薬剤と固体分散体を形成するポリマー(重合体)及び/又は高分子または低分子の化合物を適用でき、例えば、ポリオレフィン、ポリイソブチレン、エチレン−α−オレフィン共重合体、アクリルポリマーおよび共重合体、ポリ塩化ビニル、ポリビニル・メチル・エーテル、ポリフッ化ビニリデン、ポリ塩化ビニリデン、ポリアクリロニトリル、ポリビニルケトン、ポリスチレン、ポリ酢酸ビニル、エチレン−メチル・メタクリル酸塩共重合体、アクリロニトリル−スチレン共重合体、ABS樹脂、ナイロン12およびそのブロック共重合体、ポリカプロラクトン、ポリオキシメチレン、ポリエステル、ポリエーテル、ポリアミド、エポキシ樹脂、ポリウレタン、レーヨン・トリアセテート、セルロース、酢酸セルロース、酪酸セルロース、セロハン、硝酸セルロース、プロピオニルセルロース、セルロース・エーテル、カルボキシメチルセルロース、キチン、ポリ乳酸、ポリグリコール酸、ポリエチレンオキシド、ポリ乳酸−ポリエチレンオキシド共重合体、ポリエチレングリコール、ポリプロピレン・グリコール、グリセロール、ポリビニルアルコール、ポリビニルピロリドン、有機酸、有機酸エステルからなる群より選択される少なくとも1種が好ましい。なお、添加剤は、必ずしも設けられなくてもよい。
添加剤は、薬剤に対して少量であることが好ましく、マトリクスを形成しないことが好ましい。また、添加剤は、ミセル、リポソーム、造影剤、乳化剤、界面活性剤を含まないことが好ましいが、含まれてもよい。また、添加剤は、ポリマーを含まず低分子の化合物のみを含むことが好ましい。
揮発性溶媒は、特に限定されないが、メタノール、エタノール、ジオキサン、テトラヒドロフラン、ジメチルホルムアミド、アセトニトリル、ジメチルスルホキシド、アセトン等の揮発性有機溶媒を少なくとも1種類を含むことが好ましい。また、揮発性有機溶媒に水等が混合されてもよい。
次に、バルーン30の外表面にコーティング層32を形成するためのコーティング装置50について説明する。コーティング装置50は、図1に示すように、バルーンカテーテル10を保持してバルーンカテーテル10の軸心Xを中心として回転させる回転機構60と、バルーンカテーテル10を軸心Xに沿う方向へ移動させる移動機構70と、コーティング液Rを収容する容器80と、バルーン30へ振動を加える加振機構90と、コーティング装置50を制御する制御機構100と、を有する。
回転機構60は、バルーン30を回転可能に保持しつつ、内蔵されるモーター等の駆動源によってバルーンカテーテル10を回転させる。バルーンカテーテル10は、ガイドワイヤールーメン24の先端側の開口部を覆うようにキャップ61が被せられ、コーティング液Rのガイドワイヤールーメン24内への流入が防止されている。ガイドワイヤールーメン24内には、バルーンカテーテル10を直線形状に保持するために芯線62(図2を参照)が挿入される。また、バルーンカテーテル10は、拡張ルーメン23を塞ぐようにハブ40の第1開口部41にキャップ63が被せられ、バルーン30を拡張させた際に拡張用流体を密封することができる。
移動機構70は、内蔵されるモーター等の駆動源によって直線的に移動可能な移動台71を備え、この移動台71に、回転機構60が設置されている。移動台71を移動させることで、回転機構60に保持されたバルーンカテーテル10を、バルーンカテーテル10の軸心Xに沿う両方向へ移動させることができる。バルーンカテーテル10の軸心Xの方向は、本実施形態では鉛直方向と一致する。したがって、バルーンカテーテル10のバルーン30を下方に向けて設置した状態で、バルーンカテーテル10を下方へ移動させることで、容器80に収容されているコーティング液Rにバルーン30を浸漬させることができ、バルーンカテーテル10を上方へ移動させることで、コーティング液Rからバルーン30を引き上げることができる。なお、本実施形態では、バルーンカテーテル10の軸心Xの方向が鉛直方向と一致するが、鉛直方向に対して傾いてもよい。
加振機構90は、コーティング液Rおよびバルーン30を加振させる機構であり、コーティング液Rと接するように容器80内に取り付けられる。加振機構90は、交流電圧を印加することで振動する圧電素子を備えている。加振周波数は、特に限定されないが、例えば15kHz〜1000kHzである。なお、加振周波数は、15kHz未満であってもよく、1000kHzを超えてもよい。また、加振方向は、特に限定されない。
なお、加振機構90は、バルーン30を加振できるのであれば、取り付ける位置は特に限定されず、例えばバルーン30に直接取り付けたり、容器80に触れないようにコーティング液Rに浸漬させたり、またはコーティング液Rに接触しないように容器80に取り付けてもよい。
制御機構100は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構60、移動機構70、および加振機構90を、統括的に制御する。
次に、バルーン30の外表面に薬剤を含むコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法を説明する。
まず、容器80内に、コーティング液Rを収容する。次に、バルーンカテーテル10の第1開口部41から拡張用の流体をバルーン30内に供給し、バルーン30を拡張させた状態で第1開口部41にキャップ63を被せて密封し、バルーン30を拡張させた状態で維持する。また、ガイドワイヤールーメン24に芯線62を挿入してバルーンカテーテル10を直線形状に維持しつつ、ガイドワイヤールーメン24の先端側の開口部を覆うようにキャップ61を被せる。この後、バルーンカテーテル10を回転機構60に設置し、バルーン30をコーティング液Rの上方に位置させる。
次に、回転機構60を作動させて軸心Xを中心にバルーン30を回転させる(回転工程)とともに、加振機構90を作動させてコーティング液Rを振動させる(加振工程)。そして、移動機構70を作動させてバルーンカテーテル10を下降させる。これにより、図3に示すように、バルーン30がコーティング液Rに浸漬される(浸漬工程)。バルーン30がコーティング液Rに浸漬されると、コーティング液Rを介してバルーン30が加振される。そして、バルーン30の回転および振動を維持しつつ、図4に示すように、移動機構70によってバルーン30の上方の一部をコーティング液Rの界面Sから所定長さL1だけ引き上げて移動を停止させる。これにより、バルーン30の引き上げられた範囲の外表面にコーティング液Rが付着する。引き上げ速度は、特に限定されないが、例えば、0.1mm/秒〜10mm/秒である。
この後、バルーン30の引き上げられた範囲に付着したコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発し、バルーン30が薬剤および添加物によって被覆される。揮発させる時間は、溶媒により適宜設定されるが、例えば、数秒〜十数秒程度である。なお、揮発性溶媒が完全に揮発するまでバルーン30を引き上げた状態を維持してもよいが、揮発させる時間を短くし、揮発性溶媒が完全に揮発する前に再び浸漬させてもよい。
ところで、バルーン30をコーティング液Rの界面Sから引き上げた際にバルーン30に付着するコーティング液Rの膜厚は、コーティング液Rの密度、表面張力、粘度、重力および引き上げ速度が相互に作用して決定される。そして、バルーン30の引き上げ速度を速くすると、バルーン30に付着されるコーティング液Rの膜厚を増加させることができ、引き上げ速度を遅くすると、バルーン30に付着される溶液Rの膜厚を減少させることができる。したがって、引き上げ速度をバルーン30の部位に応じて調節することで、最終的に形成されるコーティング層32の厚さを部位に応じて任意に変更することができる。バルーン30に付着するコーティング液Rの膜厚が厚いと、揮発に要する時間を長くすることができ、薄いと、揮発に要する時間を短くすることができる。
バルーン30の外表面にコーティングされる薬剤は、結晶型、非結晶質(アモルファス)型、およびそれらの混合型などの異なる形態型となり得る。また、薬剤が結晶型である場合、結晶構造が異なる種々の形態型が存在する。さらに、結晶や非晶質は、コーティング層32において規則性を有するように配置される場合もあるが、不規則に配置される場合もある。そして、このような薬剤の形態型は、揮発性溶媒を揮発させる時間の長短や雰囲気温度により影響を受ける。したがって、揮発させる時間を適宜設定することで、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型をより自在に調節することが可能となる。
薬剤および添加物をバルーン30に被覆させた後には、再び移動機構70を作動させてバルーンカテーテル10を下降させ、図5に示すように、バルーン30をコーティング液Rに浸漬される。このとき、バルーン30の全体を浸漬させるのではなしに、バルーン30の上方(基端側)の一部がコーティング液Rの界面Sよりも上に位置するように浸漬される。すなわち、バルーン30の浸漬される範囲が、先に浸漬させた際よりもバルーン30の先端側へ移動する。なお、バルーン30の全体をコーティング液Rに浸漬されてもよい。
移動機構70によるバルーンカテーテル10の下降を所定の位置で停止させた後、図6に示すように、移動機構70によってバルーン30の上方の一部をコーティング液Rの界面Sから引き上げて移動を停止させる。この際のバルーン30の引き上げられる範囲の長さL2は、先に引き上げた際の長さL1よりも長い。すなわち、バルーン30の引き上げられる範囲が、先に引き上げた際よりも先端側へ移動する。バルーン30の引き上げられた範囲の外表面には、コーティング液Rが付着し、付着したコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発して、薬剤および添加物がバルーン30を被覆する。
そして、再びバルーン30の下降(浸漬)および上昇(引き上げ)を、バルーン30の浸漬される範囲および引き上げられる範囲を徐々に下方(先端側)へ移動させつつ繰り返し実施し、バルーン30の基端側から先端側へ向かって薬剤および添加物を徐々に被覆させる(往復運動工程)。バルーン30の浸漬および引き上げを所定の回数繰り返し、バルーン30の全体が薬剤および添加物によって被覆されてコーティング層32が形成される。コーティング層32の厚さを部分的に変更したい場合には、その部位を被覆する際の、往復運動の繰り返し回数や引き上げ速度を適宜変更することで、自在に調節できる。コーティング層32が形成されると、バルーンカテーテル10の全体を容器80から引き上げ、回転機構60、移動機構70および加振機構90を停止させ、コーティング装置50からバルーンカテーテル10を取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、第1実施形態に係るバルーンコーティング方法は、水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液Rにバルーン30の少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程と、バルーン30の少なくとも一部を浸漬させた状態でバルーン30を往復運動させつつ、往復運動の範囲を徐々に変化させる往復運動工程と、を有するため、コーティング層32の厚さを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。
また、揮発性溶媒を揮発させる時間の長短が、薬剤の形態型に影響を与えるため、揮発させる時間を調節することで、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型を自在に調節することができる。
また、コーティング液Rの粘度が高いと、バルーン30に付着するコーティング液Rの膜厚が不均一となりやすいため、膜厚が均一となる程度に粘度を低く設定し、バルーン30を往復運動させて浸漬および引き上げを複数回繰り返し行うことで、被覆させる厚さを徐々に増加させて、コーティング層32の厚さを高精度に制御できる。
また、往復運動工程において、バルーン30を一方向(本実施形態では、鉛直方向)へ往復運動させるため、単純な運動であることから、コーティング層32の厚さや析出される薬剤の形態型などの調節が容易となる。
また、往復運動工程において、コーティング液Rの界面Sからバルーン30を部分的に引き上げるとともに再び浸漬させるように往復運動させるため、バルーン30の引き上げ毎に、引き上げられた部位に付着したコーティング液Rの揮発性溶媒が揮発して徐々にコーティング層32が形成され、コーティング層32の厚さを高精度に制御できる。
また、往復運動工程において、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xに沿って往復運動させるため、コーティング液Rがバルーン30の外表面に均一に接触し、周方向へ均一なコーティング層32を形成できる。
また、往復運動工程において、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心として回転させるため、コーティング層32の厚さのバラツキを抑制して、所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成できる。また、バルーン30の外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を回転によって増加させることができるため、薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。
また、往復運動工程において、バルーン30を振動させているため、引き上げられるバルーン30にコーティング液Rが均一に付着して、形成されるコーティング層32の厚さのバラツキを抑制して、所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、バルーン30の外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を振動によって増加させることができ、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。また、バルーン30を振動させつつ揮発性溶媒を揮発させるため、雰囲気中の気体(例えば、空気)に対する揮発性溶媒の接触を促す(気体の出入りを促す)ことで揮発速度を調節することが可能となり、薬剤の形態型および大きさを自在に調節できるとともに、製造時間を短縮できる。また、バルーン30を振動せることで、バルーン30に付着した揮発性溶媒を霧化させて揮発を促すこともできる。なお、溶媒を霧化させるための周波数は、溶媒の材料に依存するため、揮発させる際の加振周波数を、揮発性溶媒の種類によって適宜設定することが好ましい。
また、加振工程において、コーティング液Rを介してバルーン30を振動させているため、回転するバルーンカテーテル10に加振機構90を取り付けることなしに、容易な構成でバルーン30を振動させることができる。
なお、バルーン30の回転方向を途中で変更したり、回転を一定時間停止してもよい。また、バルーン30を回転させなくてもよい。
また、バルーン30の加振において、途中で加振周波数や加振強度(振幅)を変更したり、一定時間加振を停止してもよい。また、バルーン30を振動させなくてもよい。
また、バルーン30を移動させるのではなしに、ポンプ等を用いて、図1で示されるコーティング液Rの液量Hを変化させて深さを変化させることで、引き上げ位置、引き上げ速度および引き上げ方向(上方向または下方向)を制御することもできる。
また、バルーン30の往復移動は、バルーン30の軸心Xに沿って行われるが、軸心Xの方向に沿っていなくてもよい。また、バルーン30の軸心Xの方向は、鉛直方向と一致しているが、鉛直方向に対して傾斜してもよい。
また、本実施形態では、バルーン30の基端側からコーティングを始めているが、コーティングはどこから始めてもよく、例えばバルーン30先端側からコーティングしてもよく、または、バルーン30の中央から両端へ向かってコーティングしてもよい。
また、バルーン30を、コーティング液R内で界面Sに沿う方向(例えば、水平方向)へ往復運動させてもよい。このような構成とするために、コーティング装置50の移動機構は、一方向(鉛直方向)のみならず、鉛直方向と交差する方向へもバルーンカテーテル10を移動させることが可能な構成を備えることができる。移動機構は、例えば、複数のスライド機構を組み合わせた多次元移動機構である。これにより、バルーン30を鉛直方向へ往復移動させるのみならず、コーティング液R内で界面Sと平行な方向へ移動(例えば、往復移動)させることが可能となり、バルーン30の外表面に析出された薬剤の結晶がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を増加させることができ、析出される薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。なお、バルーン30をコーティング液R内で界面Sに沿う方向へ往復移動させるのであれば、必ずしもバルーン30を鉛直方向へ往復運動させなくてもよい。
<第2実施形態>
第2の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーン30を略水平な状態で保持し、バルーン30の一部をコーティング液Rに浸漬させてバルーン30を回転させることで、バルーン30の全体をコーティングする方法である。なお、バルーンカテーテル10およびコーティング液Rは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第2の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、バルーン30を略水平な状態で保持し、バルーン30の一部をコーティング液Rに浸漬させてバルーン30を回転させることで、バルーン30の全体をコーティングする方法である。なお、バルーンカテーテル10およびコーティング液Rは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第2の実施形態におけるコーティング装置110は、図7に示すように、バルーンカテーテル10を保持してバルーンカテーテル10の軸心Xを中心として回転させる回転機構60と、コーティング液Rを収容する容器120と、バルーン30へ振動を加える加振機構90と、コーティング装置110を制御する制御機構130と、を有する。
なお、回転機構60および加振機構90の構成は、第1実施形態と同様であるため、同様の符号を付し、説明を省略する。
制御機構130は、例えばコンピュータにより構成され、回転機構60および加振機構90を、統括的に制御する。
次に、バルーン30の外表面に薬剤を含むコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法を説明する。
まず、容器120内に、コーティング液Rを収容する。次に、第1開口部41から拡張用の流体をバルーン30内に供給し、バルーン30を拡張させた状態で第1開口部41にキャップ63を被せて密封し、バルーン30を拡張させた状態を維持する。また、ガイドワイヤールーメン24に芯線62を挿入してバルーンカテーテル10を直線形状に維持しつつ、ガイドワイヤールーメン24の先端側の開口部を覆うようにキャップ61を被せる。次に、バルーンカテーテル10を回転機構60に設置し、バルーン30の一部をコーティング液Rに浸漬させた状態とする。このとき、図8に示すように、バルーン30は、軸心Xが略水平な状態で維持されて界面Sと略平行となって、下側の部位がコーティング液Rに浸漬され、上側となる部位がコーティング液Rの界面Sよりも外側に位置することになる。
次に、回転機構60を作動させて軸心Xを中心にバルーン30を回転させる(回転工程)とともに、加振機構90を作動させてコーティング液Rを振動させる(加振工程)。これにより、バルーン30の外表面は、浸漬されていた部位が周方向へ移動してコーティング液Rの界面Sから引き上げられるとともに、浸漬されていなかった部位がコーティング液Rに浸漬されることになる。バルーン30の引き上げられた範囲の外表面には、コーティング液Rが付着し、付着したコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発することで、バルーン30が薬剤および添加物がよって被覆される。そして、バルーン30の回転を継続することで、バルーン30の外表面の浸漬と引き上げが連続的に繰り返され、バルーン30の外表面が薬剤および添加物がよって徐々に被覆される。
ところで、バルーン30をコーティング液Rの界面Sから引き上げた際にバルーン30に付着するコーティング液Rの膜厚は、コーティング液Rの密度、表面張力、粘度、重力および引き上げ速度が相互に作用して決定される。そして、バルーン30の回転速度(引き上げ速度)を速くすると、バルーン30に付着されるコーティング液Rの膜厚を増加させることができ、回転速度を遅くすると、バルーン30に付着される溶液Rの膜厚を減少させることができる。したがって、回転速度をバルーン30の部位に応じて調節することで、最終的に形成されるコーティング層32の厚さを任意に変更することができる。バルーン30に付着するコーティング液Rの膜厚が厚いと、揮発に要する時間を長くすることができ、薄いと、揮発に要する時間を短くすることができる。
また、揮発性溶媒を揮発させる時間の長短が、薬剤の形態型に影響を与える。そして、揮発させる時間は、回転速度に依存するため、回転速度を適宜設定することで、コーティング液Rに含まれる薬剤の形態型を調節することが可能となる。
バルーン30の回転により浸漬および引き上げを所定の回数繰り返し、バルーン30の全体に薬剤および添加物が被覆されてコーティング層32が形成されると、回転機構60および加振機構90を停止させ、コーティング装置110からバルーンカテーテル10を取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。
以上のように、第2実施形態に係るバルーンコーティング方法は、水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液Rにバルーン30の少なくとも一部を浸漬させた状態で、バルーン30を軸心Xを中心として回転させる回転工程を有するため、コーティング液Rをバルーン30に均一に付着させて、コーティング層32の厚さのバラツキを抑制して、所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、バルーン30の外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を回転によって増加させることができるため、析出される薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。
また、回転工程において、バルーン30の外表面の周方向の一部をコーティング液Rに浸漬させるとともにバルーン30の外表面の周方向の他の部位をコーティング液Rの界面Sから露出させた状態で、バルーン30を回転させて浸漬される部位をバルーン30の周方向へ変化させつつ、コーティング液Rの界面Sから露出させた部位に付着したコーティング液Rの揮発性溶媒を揮発させるため、回転のみによってバルーン30の浸漬および引き上げを連続的に行うことができ、コーティング層32の厚さの分布を均一とすることができるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、回転速度によって揮発させる時間を調節できるため、回転速度を適宜設定することで、析出される薬剤の形態型や大きさなどを、自在に調節可能となる。
また、回転工程において、バルーン30を振動させるため、コーティング液Rをバルーン30に均一に付着させて、コーティング層32の厚さのバラツキを抑制して、所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、バルーン30の外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を増加させることができ、析出される薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。また、バルーン30を振動させつつ揮発性溶媒を揮発させるため、雰囲気中の気体(例えば、空気)に対する揮発性溶媒の接触を促すことで揮発速度を調節することが可能となり、薬剤の形態型を自在に調節できるとともに、製造時間を短縮できる。また、バルーン30を振動させることで、バルーン30に付着した揮発性溶媒を霧化させて揮発を促すこともできる。
なお、バルーン30の軸心Xの方向は、水平方向と一致しているが、水平方向に対して傾斜してもよい。また、バルーン30の回転方向を途中で変更したり、回転を一定時間停止してもよい。
また、バルーン30の加振において、途中で加振周波数や加振強度(振幅)を変更したり、一定時間加振を停止してもよい。また、バルーン30を振動させなくてもよい。
<第3実施形態>
第3の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、コーティング液Rを収容する容器内80に、バルーン30の周囲を囲む管状部材160を設け、この管状部材160を用いてバルーン30をコーティングする方法である。なお、バルーンカテーテル10およびコーティング液Rは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第3の実施形態に係るバルーンコーティング方法は、コーティング液Rを収容する容器内80に、バルーン30の周囲を囲む管状部材160を設け、この管状部材160を用いてバルーン30をコーティングする方法である。なお、バルーンカテーテル10およびコーティング液Rは、第1実施形態と同様であるため、説明を省略する。
第3の実施形態におけるコーティング装置150は、図9,10に示すように、第1実施形態におけるコーティング装置50に加え、容器80内のコーティング液Rの界面Sの近傍に、管状部材160を備えている。なお、コーティング装置150の管状部材160以外の構成は、第1実施形態と同様であるため、同様の符号を付し、説明を省略する。
管状部材160は、バルーンカテーテル10の軸心Xと平行に貫通する収容孔161が形成されている。収容孔161は、コーティング液Rの界面Sよりも上方にて上端が開口するとともに、コーティング液Rの界面Sよりも下方にて下端が開口している。したがって、管状部材160にバルーン30が収容されていない状態において、コーティング液Rは、収容孔161の下方の開口部(供給口)から収容孔161内に流入し、収容孔161内において界面Sを形成する。管状部材160は、固定具162によって容器80に対して固定されている。収容孔161の内径は、拡張させた状態のバルーン30が挿入された際に、バルーン30との外表面との間で毛細管現象が生じる程度の内径で形成されている。したがって、収容孔161の内径は、拡張させた状態のバルーン30の外径よりも、多少大きいことが好ましいが、バルーン30は変形可能であるため、バルーン30の外径と同程度、または多少小さくてもよい。なお、収容孔161は、下方にて内径が狭くなるようにテーパ状に形成されてもよい。下方にて内径が狭くなるようにテーパ状に形成されれば、収容孔161にバルーン30を挿入しやすく、かつ引き抜きやすくなる。または、収容孔161は、上方にて内径が狭くなるようにテーパ状に形成されてもよい。
管状部材160の内部には、コーティング液Rをバルーン30へ適用するための補助の役割を果たす適用部164が設けられる。適用部164は、コーティング液Rの界面Sよりも上方に設けられ、収容孔161の内壁面に360度にわたって全周的に設けられる。
適用部164は、柔軟でコーティング液Rを保持することができるものであり、例えば糸、糸により網状に構成されたメッシュ、繊維集合体(例えば、織布、不織布)、皮革(例えば、皮革を細長く加工したもの)、ブラシ、または多孔質体(例えば、スポンジ)等により構成される。
なお、適用部164は、コーティング液Rの界面Sよりも下方に設けられてもよく、または、コーティング液Rの界面Sの上下にわたって設けられてもよい。また、適用部164は、収容孔161の内壁面に全周的ではなしに周方向へ部分的に設けられてもよい。また、適用部164は、設けられなくてもよい。
次に、バルーン30の外表面に薬剤を含むコーティング層32を形成するバルーンコーティング方法を説明する。
まず、容器80内にコーティング液Rを収容する。これにより、収容孔161の下方の開口部からコーティング液Rが収容孔161内に流入し、収容孔161内において界面Sを形成する。次に、第1開口部41から拡張用の流体をバルーン30内に供給し、バルーン30を拡張させた状態で第1開口部41にキャップ63を被せて密封し、バルーン30を拡張させた状態を維持する。また、ガイドワイヤールーメン24に芯線62を挿入してバルーンカテーテル10を直線形状に維持しつつ、ガイドワイヤールーメン24の先端側の開口部を覆うようにキャップ61を被せる。この後、バルーンカテーテル10を回転機構60に設置し、バルーン30を管状部材160の上方に位置させる。
次に、回転機構60を作動させて軸心Xを中心にバルーン30を回転させる(回転工程)とともに、加振機構90を作動させてコーティング液Rを振動させる(加振工程)。そして、移動機構70を作動させてバルーンカテーテル10を下降させる。これにより、図11に示すように、バルーン30が管状部材160の収容孔161に収容され、コーティング液Rに浸漬される(浸漬工程)。バルーン30が、容器80内のコーティング液Rの界面Sよりも上方に一部が位置する状態となると、移動機構70によるバルーンカテーテル10の下降を停止させる。
バルーン30が管状部材160の収容孔161に収容されると、毛細管現象により、バルーン30と管状部材160の間の隙間を伝ってコーティング液Rが上昇し、容器80内の界面Sよりも上方まで達する。これにより、バルーン30と管状部材160の間の隙間に、コーティング液Rが供給される。
次に、バルーン30の回転および振動を維持しつつ、図12に示すように、移動機構70によってバルーン30を管状部材160から引き上げて、移動を停止させる。これにより、バルーン30の引き上げられた範囲の外表面にコーティング液Rが付着する。また、柔軟な適用部164が収容孔161に設けられているため、適用部164が、コーティング液Rをバルーン30へ適用するための補助の役割を果たし、望ましい量のコーティング液Rを、バルーン30を傷付けることなしに塗布することができる。そして、付着したコーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発すると、バルーン30が薬剤および添加物によって被覆される(揮発工程)。
薬剤および添加物をバルーン30に被覆させた後には、再び移動機構70を作動させてバルーンカテーテル10を下降させ、バルーン30を管状部材160の収容孔161に挿入し、コーティング液Rに浸漬される(浸漬工程)。そして、1回目の浸漬と同様にしてバルーン30にコーティング液Rを付着させた後に移動機構70により引き上げる(引き上げ工程)。これにより、コーティング液Rに含まれる揮発性溶媒が揮発し、バルーン30が薬剤および添加物によって被覆される。浸漬および引き上げを繰り返し実施し、バルーン30が望ましい量の薬剤および添加物によって被覆されてコーティング層32が形成されると、バルーンカテーテル10の全体を容器80から引き上げた後、回転機構60、移動機構70および加振機構90を停止させ、コーティング装置150からバルーンカテーテル10を取り外して、バルーン30のコーティングが完了する。なお、浸漬および引き上げを繰り返し行わずに、1回のみ実施してもよい。
また、第1実施形態に係るバルーンコーティング方法と同様に、バルーン30を往復運動させながら、往復移動の範囲を徐々に変化させてもよい。
以上のように、第3実施形態に係るバルーンコーティング方法は、水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液Rを収容可能な管状部材160にバルーン30を挿入し、バルーン30の外表面と管状部材160の内壁面の間の隙間にコーティング液Rを供給する浸漬工程と、バルーン30の外表面に付着したコーティング液Rの揮発性溶媒を揮発させる揮発工程と、を有するため、バルーン30の外表面と管状部材160の内壁面の間の隙間に、毛細管現象によってコーティング液Rが満たされ、コーティング液Rが薄膜となって有機溶媒が揮発しやすくなる。これにより、揮発させる時間を調節することが可能となって、コーティング層32に含まれる薬剤の形態型や大きさなどを自在に調節することができる。また、管状部材160の内部にバルーン30を挿入することで、バルーン30の位置を安定して固定でき、形成されるコーティング層32の形状を安定させることができる。
また、揮発工程の前に、バルーン30を軸心Xの方向へ移動させて管状部材160から少なくとも一部を引き抜く引き上げ工程を有するため、管状部材160の外で揮発性溶媒を迅速に揮発させることができ、薬剤の形態型や大きさなどを自在に調整できる。
また、引き上げ工程において、管状部材160からバルーン30の少なくとも一部を引き上げた後に再び挿入するようにバルーン30を往復運動させるため、コーティング層32の厚さを徐々に増加させて、コーティング層32の厚さを高精度に制御することができる。
また、浸漬工程、引き上げ工程および揮発工程において、バルーン30を当該バルーン30の軸心Xを中心として回転させるため、コーティング層32の厚さのバラツキを抑制して、所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、バルーン30の外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を増加させることができ、析出される薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。
また、浸漬工程、引き上げ工程および揮発工程において、バルーン30を振動させるため、引き上げられるバルーン30にコーティング液Rが均一に付着して、コーティング層32の厚さのバラツキを抑制して、所望の厚さでコーティングできるとともに、結晶または非晶質を均質に形成することができる。また、バルーン30の外表面に薬剤が析出されている場合に、析出された薬剤がコーティング液R内の薬剤と接触する回数を増加させることができ、析出される薬剤の形態型や大きさなどを、バルーン30の部位に応じて自在に調節することが可能となる。また、バルーン30を振動させつつ揮発性溶媒を揮発させるため、雰囲気中の気体(例えば、空気)に対する揮発性溶媒の接触を促すことで揮発速度を調節することが可能となり、薬剤の形態型や大きさなどを自在に調節できるとともに、製造時間を短縮できる。また、バルーン30を振動せることで、バルーン30に付着した揮発性溶媒を霧化して揮発を促すこともできる。
また、管状部材160は、コーティング液Rを収容する容器80内に配置されるとともに、容器80内のコーティング液Rの界面Sよりも外側で開口してバルーン30が挿入される収容孔161が形成され、収容孔161が、コーティング液Rが容器80内から流入可能な供給口(収容孔161の下端開口部)と連通しているため、管状部材160の内部にコーティング液Rが容器80から常に供給されて、管状部材160の内部のコーティング液Rを常に最適な量に維持することができる。
なお、バルーン30の回転方向を途中で変更したり、回転を一定時間停止してもよい。また、バルーン30を回転させなくてもよい。
また、バルーン30の加振において、途中で加振周波数や加振強度(振幅)を変更したり、一定時間加振を停止してもよい。また、バルーン30を振動させなくてもよい。
また、コーティング液Rの界面Sは、管状部材160の内部に位置しているが、コーティング液Rを管状部材160の内部へ供給できるのであれば、界面Sの位置は特に限定されず、例えば界面Sが管状部材160の上端や下端に位置してもよい。
また、管状部材は、上記の形態に限定されない。例えば、図13に示す変形例のように、容器内からコーティング液Rを流入させる供給口171が、管状部材170の下端ではなしに、管状部材170の側面に形成されてもよい。また、図14に示す他の変形例のように、上端のみが開口した管状部材180であってもよい。この場合、管状部材180およびコーティング液Rを収容する容器は設けられず、管状部材180の内部にのみコーティング液Rが収容される。このような形態とすることで、コーティング液Rを必要な量だけ正確に供給でき、バルーン30に被覆されるコーティング層32の厚さを、高精度に制御することができる。
また、バルーン30を管状部材160,170,180から引き抜かずに、バルーン30を管状部材160,170,180に挿入した状態で、揮発性溶媒を揮発させてもよい。このようにすれば、時間をかけてゆっくり揮発させることができ、コーティング層32を構成する薬剤の形態型を自在に調節することが可能となる。特に、揮発させる時間を長くすることは、薬剤の形態型を結晶型とする際に有効である。なお、バルーン30を管状部材160,170,180に挿入した状態で揮発性溶媒を揮発させる場合には、管状部材160,170,180の内壁面に、低摩擦材料(例えば、テフロン(登録商標))がコーティングされていることが好ましい。これにより、バルーン30の外表面を被覆するコーティング層32が管状部材160,170,180の内壁面に付着せず、コーティング層32の厚さを高精度に制御することができる。
なお、本発明は、上述した実施形態のみに限定されるものではなく、本発明の技術的思想内において当業者により種々変更が可能である。例えば、第1〜第3実施形態では、容器80,120の内部で1つのバルーン30のコーティングを行っているが、1つの容器80,120の内部で、複数のバルーン30のコーティングを同時に行ってもよい。
10 バルーンカテーテル、
30 バルーン、
32 コーティング層、
50,110,150 コーティング装置、
60 回転機構、
70 移動機構、
80,120 容器、
90 加振機構、
160,170,180 管状部材、
161 収容孔、
164 適用部、
171 供給口、
R コーティング液、
S 界面。
30 バルーン、
32 コーティング層、
50,110,150 コーティング装置、
60 回転機構、
70 移動機構、
80,120 容器、
90 加振機構、
160,170,180 管状部材、
161 収容孔、
164 適用部、
171 供給口、
R コーティング液、
S 界面。
Claims (4)
- バルーンカテーテルのバルーンの外表面にコーティング層を形成するバルーンコーティング方法であって、
水不溶性薬剤を溶解させた揮発性溶媒を含むコーティング液に前記バルーンの少なくとも一部を浸漬させる浸漬工程と、
前記バルーンを振動させる加振工程と、を有するバルーンコーティング方法。 - 前記加振工程において、前記コーティング液の界面から前記バルーンの少なくとも一部を引き上げつつ前記バルーンを振動させる請求項1に記載のバルーンコーティング方法。
- 前記加振工程において、前記コーティング液の界面から前記バルーンの少なくとも一部を引き上げた後に再び浸漬させるように前記バルーンを往復運動させる請求項1または2に記載のバルーンコーティング方法。
- 前記加振工程において、前記コーティング液を介して前記バルーンを振動させる請求項1〜3のいずれか1項に記載のバルーンコーティング方法。
Priority Applications (1)
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JP2013135645A JP2015008845A (ja) | 2013-06-27 | 2013-06-27 | バルーンコーティング方法 |
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Cited By (1)
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JP2019010297A (ja) * | 2017-06-30 | 2019-01-24 | 日本ゼオン株式会社 | 体内異物除去用バルーンカテーテルの製造方法 |
-
2013
- 2013-06-27 JP JP2013135645A patent/JP2015008845A/ja active Pending
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