JP2015004051A - 熱可塑性樹脂組成物及び成形品 - Google Patents
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Abstract
【解決手段】本発明の熱可塑性樹脂組成物は、(A)ポリカーボネート樹脂、(B)芳香族ポリエステル樹脂、(C)ポリオルガノシロキサン系重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを有する化合物、及び、(D)繊維状充填剤を含有し、ポリカーボネート樹脂(A)及び樹脂(B)の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10〜80質量%及び20〜90質量%であり、化合物(C)及び繊維状充填剤(D)の含有量は、ポリカーボネート樹脂(A)及び樹脂(B)の合計100質量部に対して、それぞれ、1〜25質量部及び40〜220質量部である。
【選択図】なし
Description
本発明の目的は、成形品の加工に好適な流動性(溶融時の流動性)を有して成形加工性に優れ、得られる成形品の耐衝撃性及び剛性のバランスに優れた熱可塑性樹脂組成物を提供することである。
1.(A)ポリカーボネート樹脂、(B)芳香族ポリエステル樹脂、(C)ポリオルガノシロキサン系重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを有する化合物、及び、(D)繊維状充填剤を含有し、
上記ポリカーボネート樹脂(A)及び上記樹脂(B)の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10〜80質量%及び20〜90質量%であり、
上記化合物(C)の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂(A)及び上記樹脂(B)の合計100質量部に対して1〜25質量部であり、
上記繊維状充填剤(D)の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂(A)及び上記樹脂(B)の合計100質量部に対して40〜220質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。
2.上記化合物(C)が、ゴム質のポリオルガノシロキサン系重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたシリコーン系ゴム強化グラフト樹脂である上記1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
3.上記繊維状充填剤(D)がガラス繊維を含む上記1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
4.上記1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
本明細書において、「(メタ)アクリル」は、アクリル及びメタクリルを、「(メタ)アクリレート」は、アクリレート及びメタクリレートを、「(メタ)アクリロイル基」は、アクリロイル基及びメタクリロイル基を、「(共)重合体」は、単独重合体及び共重合体を意味する。
また、ポリカーボネート樹脂を除く高分子の重量平均分子量(Mw)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)により測定されたポリスチレン換算値である。
また、上記成分(A)のMFR(温度240℃、荷重10kg)は、好ましくは1〜70g/10分、より好ましくは2.5〜50g/10分、更に好ましくは4〜30g/10分である。
更に、p−オキシ安息香酸及びp−ヒドロキシエトキシ安息香酸のような、オキシ酸及びこれらのエステル形成性誘導体を用いることもできる。
上記酸成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、必要に応じて、長鎖型のジオール化合物(ポリエチレングリコール、ポリテトラメチレングリコール等)、ビスフェノール類のアルキレンオキサイド付加重合体等(ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加重合体等)等を用いることもできる。
上記ジオール成分は、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
更に、上記化合物以外に、必要に応じて、グリコール酸、m−ヒドロキシ安息香酸、p−ヒドロキシ安息香酸、6−ヒドロキシ−2−ナフタレンカルボン酸、p−β−ヒドロキシエトキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸やアルコキシカルボン酸、及び、ステアリルアルコール、ベンジルアルコール、ステアリン酸、安息香酸、tert−ブチル安息香酸、ベンゾイル安息香酸等の単官能成分又はそのエステル誘導体;トリカルバリル酸、トリメリット酸、トリメシン酸、ピロメリット酸等の多価カルボン酸;グリセリン、トリメチロールエタン、トリメチロールプロパン、グリセロール、ペンタエリスリトール等の多価アルコール;没食子酸等の3官能以上の多官能成分又はそのエステル誘導体の1種あるいは2種以上を、重縮合用成分として用いてもよい。
以下、好ましい態様であるシリコーン系ゴム強化グラフト樹脂について、説明する。
〔R1 nSiO〕(4−n)/2 (1)
(式中、R1は置換又は非置換の1価炭化水素基であり、nは0〜3の整数を示す。R1が複数ある場合、互いに同一であっても異なってもよい。)
尚、上記オルガノシロキサン(i)は、上記一般式(1)で表される化合物の1種以上を用いて、予め縮合された、例えば、重量平均分子量(Mw)が500〜10,000程度のポリオルガノシロキサンであってもよい。そして、このポリオルガノシロキサンにおいて、その分子鎖末端が、ヒドロキシル基、アルコキシ基、トリメチルシリル基、メチルジフェニルシリル基等の官能基で封止されたポリオルガノシロキサンであってもよい。
上記オルガノシロキサン(i)が、重合性不飽和結合を含む場合、使用するグラフト交叉剤(ii)は、重合性不飽和結合を有しても有さなくてもよい。
上記変性ポリオルガノシロキサンゴムの製造に際して、耐衝撃性を改良するために、架橋剤を添加することもできる。架橋剤としては、メチルトリメトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン等の3官能性架橋剤、テトラエトキシシラン等の4官能性架橋剤等が挙げられる。架橋剤を用いる場合、その使用量の上限は、オルガノシロキサン(i)及びグラフト交叉剤(ii)の合計量を100質量部とした場合に、通常、10質量部、好ましくは5質量部である。
上記変性ポリオルガノシロキサンゴムの重量平均分子量(Mw)は、好ましくは30,000〜1,000,000、より好ましくは50,000〜300,000である。この範囲であると、本発明の組成物における耐衝撃性及び流動性のバランスに優れる。
上記ビニル系単量体(c1)に含まれる芳香族ビニル化合物の割合の下限は、成形加工性及び成形外観性の観点から、好ましくは50質量%、より好ましくは60質量%、更に好ましくは65質量%である。
上記(メタ)アクリル酸エステル化合物としては、(メタ)アクリル酸メチル、(メタ)アクリル酸エチル、(メタ)アクリル酸n−プロピル、(メタ)アクリル酸イソプロピル、(メタ)アクリル酸n−ブチル、(メタ)アクリル酸イソブチル、(メタ)アクリル酸sec−ブチル、(メタ)アクリル酸tert−ブチル、(メタ)アクリル酸ヘキシル、(メタ)アクリル酸n−オクチル、(メタ)アクリル酸2−エチルヘキシル、(メタ)アクリル酸シクロヘキシル、(メタ)アクリル酸フェニル、(メタ)アクリル酸ベンジル等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記カルボキシル基含有不飽和化合物としては、(メタ)アクリル酸、エタクリル酸、マレイン酸、フマル酸、イタコン酸、クロトン酸、桂皮酸等が挙げられる。これらの化合物は、単独であるいは2つ以上を組み合わせて用いることができる。
上記オキサゾリン基含有不飽和化合物としては、ビニルオキサゾリン等が挙げられる。
上記重合開始剤を使用する場合、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
上記連鎖移動剤を使用する場合、反応系に一括して、又は、連続的に添加することができる。
尚、上記シリコーン系ゴム強化樹脂が、2種以上のシリコーン系ゴム強化樹脂からなるようにする場合には、各ラテックスから樹脂を単離した後、混合してもよいが、他の方法として、各樹脂をそれぞれ含むラテックスの混合物を凝固する等の方法がある。
上記グラフト率は、下記式により求めることができる。
グラフト率(%)={(S−T)/T}×100
上記式中、Sはシリコーン系ゴム強化樹脂1グラムをアセトン20mlに投入し、25℃の温度条件下で、振とう機により2時間振とうした後、5℃の温度条件下で、遠心分離機(回転数;23,000rpm)で60分間遠心分離し、不溶分と可溶分とを分離して得られる不溶分の質量(g)であり、Tはシリコーン系ゴム強化樹脂1グラムに含まれるポリオルガノシロキサン系ゴムの質量(g)である。このポリオルガノシロキサン系ゴムの質量は、重合処方及び重合転化率から算出する方法、赤外線吸収スペクトル(IR)により求める方法等により得ることができる。
上記成分(D)の平均繊維長は、好ましくは0.02〜2.8mm、より好ましくは0.05〜2.2mm、更に好ましくは0.1〜1.5mmである。
尚、上記成分(D)の断面形状は、特に限定されず、円形、楕円形、多角形(長方形等)や、これらが変形したもの又は複合化した異形等とすることができる。本発明においては、図示していない、扁平率の高い楕円形や、図1(1)若しくは(2)に示される形状又はそれが変形した形状、の断面を有する成分(D)を含む組成物を用いることにより、流動性が向上し、成形加工性に優れ、成形収縮性の異方性(MD方向及びTD方向)を低減させることができ、反り又はねじれの抑制された成形品を得ることができる。特に、断面の短径d1に対する長径d2の比(d2/d1)が1.2以上である、円に対して扁平な形状の断面を有する部分を備える成分(D)を含むことが好ましい。
本発明の熱可塑性樹脂組成物又は成形品から、成分(D)を単離する場合には、例えば、空気中、500℃〜800℃の温度で加熱して、樹脂成分を灰化させた後、成分(D)を回収する方法等を適用すればよい。
上記ガラス繊維の形態は、特に制限はなく、長めの単繊維を多数本撚り、ガラス繊維用集束剤によって集束させた後、切断して得られたチョップドストランド、ロービング、ミルドファイバー等、いずれの形態であってもよい。これらのうち、機械的強度と弾性率のバランスの観点から、チョップドストランドが好適である。チョップドストランドに用いるガラス繊維としては、平均繊維径が好ましくは6〜23μm、より好ましくは9〜16μmの単繊維が好ましく用いられる。そして、単繊維の集束本数は、好ましくは100〜4,000本、より好ましくは800〜3,000本である。
ガラス繊維用集束剤としては、ビスフェノール型エポキシ樹脂、ノボラック型エポキシ樹脂等のエポキシ樹脂を含む組成物、ウレタン樹脂を含む組成物、ウレタン樹脂及びカップリング剤を含む組成物、ノボラック型エポキシ樹脂、ウレタン樹脂及びカップリング剤を含む組成物、ノボラック型エポキシ樹脂、フェノキシ樹脂及びカップリング剤を含む組成物、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物の共重合体を含む組成物、アミノ樹脂を含む組成物、ポリ酢酸ビニルを含む組成物、ポリエステル樹脂を含む組成物、ポリアクリレートを含む組成物、変性ポリオレフィン樹脂を含む組成物、デンプン又はポリビニルアルコールと、油脂とを含む組成物等が挙げられる。これらのうち、エポキシ樹脂を含む組成物が好ましい。
表面処理剤としては、反応性カップリング剤;高級脂肪酸、高級脂肪酸エステル、高級脂肪酸金属塩、フルオロカーボン系界面活性剤等が挙げられる。
R2Si(OR3)3 (2)
(式中、R2は、アミノ基、グリシドキシ基、塩素原子、ビニル基、(メタ)アクリロイル基、3,4−エポキシシクロヘキシル基、メルカプト基、N−アミノエチルアミノ基、イソシアネート基及びウレイド基から選ばれる基若しくは原子、又は、上記基を末端に有するアルキル基であり、R3は炭化水素基である。)
(R4O)Ti(OR5)(OR6)(OR7) (3)
(式中、R4はアルキル基であり、R5、R6及びR7は、互いに同一又は異なって、置換もしくは非置換のアルキル基、アルカノイル基、(メタ)アクリロイル基、ジアルキルパイロホスフェート基、N−アミノエチル−アミノエチル基、アルキルベンゼンスルホニル基、ジアルキルホスフェート基、ジアルキルホスファイト基及びクミルフェニル基から選ばれる基であり、R3及びR4が一緒になっている、2価の、エチレン基、オキサリル基又は−CO−CH2−基である。)
上記アルミネートカップリング剤としては、アルミニウムエチルアセトアセテート・ジイソプロピレート等のアルミニウムアルキルアセトアセテート・ジアルキレート;アルミニウムアルケニルアセトアセテート・ジアルキレート;アルミニウムトリスエチルアセトアセテート、アルミニウムビスエチルアセトアセテート・モノアセチルアセトネート、アルミニウムトリスアセチルアセトネート等が挙げられる。
尚、成分(D)が複数種のガラス繊維を含む場合であって、円形の断面を有するものと、円に対して扁平な形状の断面(異形断面)を有するものとを併用する場合、これらの含有割合は、両者の合計を100質量%とすると、成形加工性及び成形収縮性の観点から、それぞれ、好ましくは10〜90質量%及び10〜90質量%、より好ましくは20〜60質量%及び40〜80質量%である。
他の重合体としては、ビニル系単量体に由来する構造単位を含むビニル系(共)重合体(芳香族ビニル系(共)重合体、アクリル系(共)重合体、ポリ塩化ビニル樹脂、ポリ塩化ビニリデン樹脂、フッ素樹脂等)、ポリオレフィン樹脂、ポリアミド樹脂、更には、ポリオルガノシロキサン系ゴム以外のゴム質重合体の存在下、ビニル系単量体を重合して得られたゴム強化グラフト樹脂等が挙げられる。
本発明の組成物が、他の重合体(他の樹脂)を含有する場合、その含有量の上限は、上記成分(A)及び成分(B)の合計100質量部に対して、好ましくは60質量部、より好ましくは40質量部である。
上記成分(E)に含まれる構造単位(ex)の含有量は、上記成分(E)を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは40〜90質量%、より好ましくは50〜85質量%、更に好ましくは65〜80質量%である。上記構造単位(ex)の含有量が40〜90質量%であると、優れた機械的強度及び成形外観性を得ることができる。
上記成分(E)に含まれる構造単位(ey)の含有量は、上記成分(E)を構成する構造単位の合計を100質量%とすると、好ましくは10〜60質量%、より好ましくは15〜50質量%、更に好ましくは20〜35質量%である。上記構造単位(ey)の含有量が10〜60質量%であると、優れた機械的強度及び成形外観性を得ることができる。
上記成分(E)が、構造単位(ez)を含む場合、その含有量の上限は、上記成分(E)を構成する構造単位の合計、即ち、構造単位(ex)、(ey)及び(ez)の合計を100質量%とすると、好ましくは70質量%、より好ましくは50質量%である。
また、上記成分(E)の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、耐衝撃性及び成形性の観点から、好ましくは0.2〜0.8dl/g、より好ましくは0.25〜0.7dl/g、更に好ましくは0.3〜0.6dl/gである。
上記ジエン系ゴムとしては、ポリブタジエン、ポリイソプレン、ポリクロロプレン等の単独重合体;スチレン・ブタジエン共重合体、スチレン・ブタジエン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・ブタジエン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・ブタジエン共重合体等のスチレン・ブタジエン系共重合体ゴム;スチレン・イソプレン共重合体、スチレン・イソプレン・スチレン共重合体、アクリロニトリル・スチレン・イソプレン共重合体等のスチレン・イソプレン系共重合体ゴム;天然ゴム等が挙げられる。これらの共重合体は、ブロック共重合体でもよいし、ランダム共重合体でもよい。また、これらの共重合体は水素添加(但し、水素添加率は50%未満。)されたものであってもよい。上記ジエン系ゴムは、1種単独であるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
上記水添ジエン系ゴムとしては、下記の構造を有する共役ジエンブロック共重合体の水素添加物が挙げられる。即ち、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位からなる重合体ブロックA;1,2−ビニル結合含量が25モル%を超える共役ジエン系化合物に由来する構造単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックB;1,2−ビニル結合含量が25モル%以下の共役ジエン系化合物に由来する構造単位からなる重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックC;並びに、芳香族ビニル化合物に由来する構造単位と共役ジエン系化合物に由来する構造単位とからなる共重合体の二重結合部分を95モル%以上水素添加してなる重合体ブロックDのうち、2種以上を組み合わせたものからなるブロック共重合体である。
上記ブロック共重合体の構造としては、A−(B−A)n、(A−B)n、A−(B−C)n、C−(B−C)n、(B−C)n、A−(D−A)n、(A−D)n、A−(D−C)n、C−(D−C)n、(D−C)n、A−(B−C−D)n、(A−B−C−D)n〔但し、nは1以上の整数である。〕等が挙げられ、好ましくは、A−B−A、A−B−A−B、A−B−C、A−D−C、C−B−Cである。
上記ブロック共重合体を構成する重合体ブロックAの含有割合は、重合体の全体に対して、好ましくは0〜65質量%、より好ましくは10〜40質量%である。
上記重合体ブロックBにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25モル%を超え90モル%以下、より好ましくは30〜80モル%である。
また、上記重合体ブロックCにおける1,2−ビニル結合含量は、好ましくは25%モル以下、より好ましくは20モル%以下である。
また、上記重合体ブロックDにおける芳香族ビニル化合物単位量は、好ましくは25質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
また、上記単量体は、(メタ)アクリル酸アルキルエステル系化合物以外に、スチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等の芳香族ビニル化合物;アクリロニトリル、メタクリロニトリル等のシアン化ビニル化合物;メタクリル酸変性シリコーン、フッ素含有ビニル化合物等の各種のビニル系単量体を30質量%以下の範囲で含んでいてもよい。
上記エチレン・α−オレフィン共重合体としては、エチレン・プロピレン共重合体、エチレン・ブテン−1共重合体等が挙げられる。また、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体としては、エチレン・プロピレン・非共役ジエン共重合体、エチレン・ブテン−1・非共役ジエン共重合体等が挙げられる。
上記非共役ジエンに由来する構造単位の含有量は、上記エチレン・α−オレフィン・非共役ジエン共重合体を構成する構造単位の全量に対して、好ましくは1〜30質量%、より好ましくは2〜20質量%である。非共役ジエン単位の含有割合が多すぎると、成形外観性及び耐侯性が低下する場合がある。
また、上記エチレン・α−オレフィン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4、100℃;JIS K6300に準拠)は、好ましくは5〜80、より好ましくは10〜65、更に好ましくは15〜45である。ムーニー粘度が上記範囲にあると、フィルムの可撓性及び耐衝撃性に優れる。
(F1)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物及びシアン化ビニル化合物からなるビニル系単量体(f1)を重合して得られたジエン系ゴム強化樹脂
(F2)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及び(メタ)アクリル酸エステル化合物からなるビニル系単量体(f1)を重合して得られたジエン系ゴム強化樹脂
(F3)ジエン系ゴムの存在下に、芳香族ビニル化合物、シアン化ビニル化合物及びマレイミド系化合物からなるビニル系単量体(f1)を重合して得られたジエン系ゴム強化樹脂
上記ジエン系ゴム強化樹脂に含まれるグラフト樹脂のグラフト率は、上記成分(C)に含まれるシリコーン系ゴム強化グラフト樹脂の場合と同様にして測定され、耐衝撃性、成形外観性、剛性の観点から、好ましくは20%以上であり、より好ましくは30%以上、更に好ましくは40〜150%である。
また、本発明の熱可塑性樹脂組成物が、成分(D)として、ガラス繊維及び炭素繊維を含有し、他の充填剤として、ガラスフレークを含有する場合、ガラス繊維、炭素繊維及びガラスフレークの含有割合は、両者の合計を100質量%とすると、耐衝撃性、導電性及び成形収縮性の観点から、それぞれ、好ましくは20〜90質量%、5〜70質量%及び5〜70質量%、より好ましくは40〜80質量%、10〜50質量%及び10〜50質量%である。
上記無機系含リン化合物は、単独で用いてよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
無機系含リン化合物の使用方法としては、組成物の製造時であって、原料成分の混練前又は混練中等とすることができる。
成形品を製造する場合の成形装置のシリンダー温度は、通常、240℃〜300℃である。また、金型温度は、通常、40℃〜80℃である。
尚、上記のいずれの場合にも、成形品が大型である場合には、一般に、シリンダー温度は、上記温度より高めに設定される。
熱可塑性樹脂組成物の製造に用いた原料(樹脂又は共重合体、ガラス繊維等)は、以下の通りである。尚、グラフト率、固有粘度[η]等の測定は、上記記載の方法に準じて行った。
1−1.原料〔P〕
三菱エンジニアリングプラスチックス社製ポリカーボネート「NOVAREX 7022PJ」(商品名)を用いた。粘度平均分子量(Mv)は、22,000であり、MFR(温度240℃、荷重10kg)は、9g/10分である。
ウィンテックポリマー社製ポリブチレンテレフタレート「DURANEX 200FP」(商品名)を用いた。1,1,2,2−テトラクロロエタン/フェノール=1/1(質量比)の混合溶媒を用い、温度30℃で測定した固有粘度は、0.6dl/gである。
下記の合成例1により得られたシリコーン系ゴム強化樹脂を用いた。
p−ビニルフェニルメチルジメトキシシラン1.5部及びオクタメチルシクロテトラシロキサン98.5部の混合物を、ドデシルベンゼンスルホン酸2.0部を蒸留水に溶解させた水溶液300部に投入し、ホモミキサーにより3分間攪拌して乳化分散させた。乳化分散液を、コンデンサー、窒素ガス導入口及び攪拌機を備えたセパラブルフラスコに移し、攪拌下、90℃で6時間加熱して縮合反応させ、5℃で24時間冷却することで反応を完了させた。これにより、縮合率92.8%で変性ポリオルガノシロキサンゴムを含むラテックスを得た。その後、このラテックスに、炭酸ナトリウム水溶液を添加してpH7に中和した。尚、変性ポリオルガノシロキサンゴムの体積平均粒子径は280nmであった。
次に、攪拌機を備えたガラス製フラスコに、上記変性ポリオルガノシロキサンゴム40部、イオン交換水100部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1.5部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、スチレン15部及びアクリロニトリル5部を収容し、攪拌しながら45℃まで昇温した。その後、エチレンジアミン4酢酸ナトリウム0.1部、硫酸第1鉄0.003部、ホルムアルデヒドナトリウムスルホキシラート・2水和物0.2部及びイオン交換水15部よりなる活性剤水溶液、並びに、ジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド0.1部を添加し、重合を開始した。そして、1時間後、イオン交換水50部、ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム1部、tert−ドデシルメルカプタン0.1部、ジイソプロピルハイドロパーオキサイド0.2部、スチレン30部及びアクリロニトリル10部からなるインクレメンタル重合成分を3時間に渡って連続的に添加し、重合を続けた。添加終了後、更に攪拌を1時間続けた。
その後、2,2−メチレン−ビス(4−エチレン−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を停止し、シリコーン系ゴム強化樹脂を含むラテックスを得た。次いで、ラテックスに塩化カルシウム2部を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗及び乾燥(75℃、24時間)を行い、白色粉末(シリコーン系ゴム強化樹脂)を回収した。重合転化率は97.2%、グラフト率は90%、アセトン可溶分の固有粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は0.47dl/gであった。
繊維状充填剤として、原料S1〜S3を用い、他の充填剤として、原料S4を用いた。
(1)原料S1(ガラス繊維)
オーウェンスコーニングジャパン社製ガラス繊維(チョップドストランド)「CS03MA FT665」(商品名)を用いた。この製品は、素線径φ13μmの単繊維をエポキシ樹脂組成物からなる集束剤で束ねた後、繊維長3mmに調節されたチョップドストランドである。
(2)原料S2(炭素繊維)
日本ポリマー産業社製炭素繊維(チョップドストランド)「CFU」(商品名)を用いた。この製品は、素線径φ7μmの単繊維をポリウレタン系樹脂組成物からなる集束剤で束ねた後、繊維長6mmに調節されたチョップドストランドである。
(3)原料S3(異形断面を有するガラス繊維)
日東紡績社製扁平断面チョップドガラス繊維「CSG 3PA830」(商品名、カット長3mm、扁平長28μm、扁平短7μm)を用いた。
(4)原料S4(ガラスフレーク)
日本板硝子社製顆粒状ガラスフレーク「マイクログラスフレカREFG−101」(商品名、平均径600μm、平均厚さ5μm)を用いた。
下記の合成例2により得られたスチレン・アクリロニトリル共重合体(原料T1)、及び、合成例3により得られたジエン系ゴム強化樹脂(原料T2)を用いた。
リボン翼を備えたジャケット付き重合用反応器を、2基連結した合成装置を用いた。各反応器内に、窒素ガスをパージした後、1基目の反応器に、スチレン75部、アクリロニトリル25部及びトルエン20部からなる混合物と、分子量調節剤であるtert−ドデシルメルカプタン0.4部をトルエン5部に溶解した溶液と、重合開始剤である1,1’−アゾビス(シクロヘキサン−1−カーボニトリル)0.1部をトルエン5部に溶解した溶液とを連続的に供給し、110℃で重合を行った。供給した単量体等の平均滞留時間は2時間であり、2時間後の重合転化率は56%であった。
次いで、得られた重合体溶液を、1基目の反応器の外部に設けられたポンプにより、連続的に取り出して、2基目の反応器に供給した。連続的に取り出す量は、1基目の反応器に供給する量と同じである。尚、2基目の反応器においては、130℃で2時間重合を行い、2時間後の重合転化率は74%であった。
その後、2基目の反応器から、重合体溶液を回収し、これを、2軸3段ベント付き押出機に導入した。そして、直接、未反応単量体及びトルエン(重合用溶媒)を脱揮し、スチレン・アクリロニトリル共重合体を回収した。このスチレン・アクリロニトリル共重合体を、原料T1として用いた。
この原料T1の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.42dl/gであった。
攪拌機を備えたガラス製フラスコに、窒素気流中で、イオン交換水42部、ロジン酸カリウム0.35部、tert−ドデシルメルカプタン0.2部、平均粒子径300nmのポリブタジエンゴム(ゲル含有率80%)32部を含むラテックス80部、平均粒子径600nmのスチレン・ブタジエン共重合体ゴム(スチレン単位量30%)8部を含むラテックス19部、スチレン14部及びアクリロニトリル6部を収容し、攪拌しながら昇温した。内温が40℃に達したところで、ピロリン酸ナトリウム0.2部、硫酸第一鉄7水和物0.01部及びブドウ糖0.3部を、イオン交換水8部に溶解した溶液を加えた。その後、クメンハイドロパーオキサイド0.07部を加えて重合を開始した。
30分間重合させた後、イオン交換水45部、ロジン酸カリウム0.7部、スチレン30部、アクリロニトリル10部、tert−ドデシルメルカプタン0.13部及びクメンハイドロパーオキサイド0.1部を、3時間かけて連続的に添加した。その後、更に1時間重合を継続し、反応系に、2,2’−メチレン−ビス(4−エチル−6−tert−ブチルフェノール)0.2部を添加して重合を完結させた。
次いで、反応生成物を含むラテックスに、硫酸水溶液を添加して、樹脂成分を凝固し、水洗した。その後、水酸化カリウム水溶液を用いて、洗浄・中和し、更に、水洗した後、乾燥し、ジエン系ゴム強化樹脂を得た。このジエン系ゴム強化樹脂を、原料T2として用いた。この原料T2に含まれるグラフト樹脂におけるグラフト率は55%、未グラフトの(共)重合体(以下、「アセトン可溶分」という。)の含有率は38%であり、このアセトン可溶分の極限粘度[η](メチルエチルケトン中、30℃)は、0.45dl/gであった。
酸化防止剤として、下記の2種を用いた。
(1)原料U1(酸化防止剤)
ビス(2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイト(商品名「アデカスタブPEP−36」、ADEKA社製)
(2)原料U2(酸化防止剤)
2−[1−(2−ヒドロキシ−3,5−ジ−tert−ペンチルフェニル)エチル]−4,6−ジ−tert−ペンチルフェニルアクリレート(商品名「スミライザーGS(F)」、住友化学社製)
実施例1〜21及び比較例1〜6
原料〔P〕、〔Q〕、〔R〕、〔S〕、〔T〕及び〔U〕を、表1〜表3に記載の割合で、ヘンシェルミキサーにて混合した後、この混合物を、日本製鋼社製2軸押出機「TEX44αII」(型式名)に供給して溶融混練し、熱可塑性樹脂組成物を得た。尚、溶融混練の際のシリンダー設定温度は、200℃〜250℃とした。
(1)耐衝撃性
ISO 179に準じて、シャルピー衝撃強さを、温度23℃で測定した。単位は「kJ/m2」である。
(2)引張特性
ISO 527に準じて、引張強さを、温度23℃で測定した。単位は、「MPa」である。
(3)曲げ特性
ISO 178に準じて、曲げ強さ及び曲げモジュラスを、温度23℃で測定した。単位は、それぞれ、「MPa」及び「MPa」である。
(4)流動性
成形加工性の指標として、ISO 1133に準じて、メルトマスフローレートを、温度240℃及び荷重98Nの条件で測定した。単位は、「g/10分」である。
(5)成形収縮性
JIS K7152−4に準じて、MD方向及びTD方向について、それぞれ、成形収縮率を、温度23℃で測定した。
○:0.5%未満
△:0.5%〜0.7%
×:0.7%超過
比較例1は、本発明に係る成分(A)を含有しない例であり、耐衝撃性に劣り、成形収縮率が高かった。比較例2及び3は、本発明に係る成分(C)を含有しない例であり、耐衝撃性が劣っていた。比較例4は、本発明に係る成分(C)の含有割合が多すぎる例であり、メルトマスフローレートが低すぎて成形加工性に劣っていた。比較例5は、本発明に係る成分(D)の含有割合が少なすぎる例であり、剛性が十分ではなかった。比較例6は、本発明に係る成分(D)の含有割合が多すぎる例であり、流動性(成形加工性)が十分ではなかった。
一方、実施例1〜21によれば、シャルピー衝撃強さ、引張強さ、曲げ強さ及び曲げモジュラスがいずれも向上しており、また、メルトマスフローレートが2.3〜50g/10分の範囲にあり、耐衝撃性、剛性及び成形加工性のバランスに優れることが分かる。
Claims (4)
- (A)ポリカーボネート樹脂、(B)芳香族ポリエステル樹脂、(C)ポリオルガノシロキサン系重合体部と、ビニル系(共)重合体部とを有する化合物、及び、(D)繊維状充填剤を含有し、
上記ポリカーボネート樹脂(A)及び上記樹脂(B)の含有割合は、両者の合計を100質量%とした場合に、それぞれ、10〜80質量%及び20〜90質量%であり、
上記化合物(C)の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂(A)及び上記樹脂(B)の合計100質量部に対して1〜25質量部であり、
上記繊維状充填剤(D)の含有量は、上記ポリカーボネート樹脂(A)及び上記樹脂(B)の合計100質量部に対して40〜220質量部であることを特徴とする熱可塑性樹脂組成物。 - 上記化合物(C)が、ゴム質のポリオルガノシロキサン系重合体の存在下に、芳香族ビニル化合物を含むビニル系単量体を重合して得られたシリコーン系ゴム強化グラフト樹脂である請求項1に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 上記繊維状充填剤(D)がガラス繊維を含む請求項1又は2に記載の熱可塑性樹脂組成物。
- 請求項1乃至3のいずれか一項に記載の熱可塑性樹脂組成物を含むことを特徴とする成形品。
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