JP2004115668A - 難燃性熱可塑性樹脂組成物 - Google Patents
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Abstract
【課題】高度なレベルの耐薬品性、耐衝撃性、剛性、耐熱性を発現する樹脂材料を提供すること。
【解決手段】アクリル系ゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(A)5〜59.5質量%と、
芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する重合体(B)0〜54.5質量%と、
ポリカーボネート樹脂(C)40〜94.5質量%と、
芳香族ポリエステル樹脂(D)0.5〜55質量%((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物100質量部に対して、
難燃剤(E)1〜30質量部が配合された難燃性樹脂組成物60〜97質量%と繊維状充填剤(F)3〜40質量%からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
【解決手段】アクリル系ゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(A)5〜59.5質量%と、
芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する重合体(B)0〜54.5質量%と、
ポリカーボネート樹脂(C)40〜94.5質量%と、
芳香族ポリエステル樹脂(D)0.5〜55質量%((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物100質量部に対して、
難燃剤(E)1〜30質量部が配合された難燃性樹脂組成物60〜97質量%と繊維状充填剤(F)3〜40質量%からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性、難燃性、耐衝撃性、流動性、剛性に優れた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、OA機器、IT機器、あるいは家電機器等のハウジング用途においては、各機器の軽量化、コンパクト化が進み、これによりハウジング部材の薄肉化が求められている。すなわち、これは樹脂材料にとり高い剛性を求められることになる。同時に電気電子機器の集積密度が上がるため機器内部の温度が増大し、ハウジング部材の耐熱性が求められている。
ポリカ−ボネ−ト樹脂は、その優れた耐衝撃性あるいは耐熱性を生かして様々な工業用用途に用いられているが、成形加工温度が高い、流動性が悪いあるいは衝撃強度の厚み依存性が大きい等の欠点を有している。現在では、この欠点が改良されたポリカ−ボネ−ト樹脂にABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂をブレンドした組成物、すなわち、ポリカーボネート/ ABSアロイ樹脂が広く用いられている。しかしながら、ポリカ−ボネ−ト樹脂にABS樹脂をブレンドする方法では成形加工温度の低下は可能となるものの、剛性を高めるために繊維状充填剤を添加すると、繊維状充填剤強化ポリカーボネート樹脂と比較すると衝撃強度が劣る結果となる。すなわち流動性は改善されるものの繊維状充填剤強化ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂では、前述の強まる薄肉化指向すなわち耐衝撃性と剛性の高度な要求に対応できない。
また、同様に、ハウジング用途ではその火災防止の観点から難燃材料を求められるのが主流となってきたが、ポリカーボネート樹脂にABS樹脂をブレンドする方法では難燃性能が低下し種々の難燃剤を添加する必要がある。さらに、コンパクト化のためにその内部部品密度が高くなり内部機械部品のグリース等の薬品にハウジングが接触しやすくなったため、これに対する耐薬品性も求められるようになった。
難燃性、剛性を付与する方法としては、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂に炭素繊維および難燃剤を添加する方法がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−311029公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では耐衝撃性が劣り、その対策としてポリエステル系熱可塑性エラストマーを添加しているがその効果は少なく、さらに耐熱性も低下している。また、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂であるため耐薬品性に劣る。
本発明の目的は繊維状充填剤強化ポリカーボネート/ABS系アロイ樹脂材料において、高度なレベルの耐薬品性、耐衝撃性、剛性、耐熱性を示す材料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位を含有するアクリルゴム、ジエン系ゴムとアクリルゴムが複合されたジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン系ゴムとアクリルゴムが複合されたシリコーン−アクリル複合ゴムから選ばれるゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(A)5〜59.5質量%と、
芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する重合体(B)0〜54.5質量%と、
ポリカーボネート樹脂(C)40〜94.5質量%と、
芳香族ポリエステル樹脂(D)0.5〜55質量%((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物100質量部に対して、
難燃剤(E)1〜30質量部が配合された難燃性樹脂組成物60〜97質量%と繊維状充填剤(F)3〜40質量%((E)、(F)の合計量が100質量%)からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物にある。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるグラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるものであり、ゴム質重合体(r)には、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位を含有するアクリルゴム、ジエン系ゴムとアクリルゴムが複合されたジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン系ゴムとアクリルゴムが複合されたシリコーン−アクリル複合ゴムなどのアクリル系ゴムが用いられる。
【0006】
アクリルゴムの重合に用いるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、これらを単独で、もしくは二種以上併用して用いることができる。
これらの内、最終的に得られる繊維強化難燃性樹脂組成物の耐衝撃性および成形光沢が向上することから、特にn−ブチルアクリレートを用いることが好ましい。
アクリルゴムの重合には、前述したアルキル(メタ)アクリレートに加えて多官能単量体を併用しても良い。多官能単量体としては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。
【0007】
ジエン−アクリル複合ゴムに用いるジエン系ゴムとしては、ブタジエン重合体、ブタジエンと他の単量体を重合させて得られる共重合体が用いられる。具体的にはブタジエンゴム、SBR、NBR等が挙げられる。
また、シリコーン−アクリル複合ゴムに用いるポリオルガノシロキサン(g)としては特に限定されるものではないが好ましくは、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。
【0008】
ゴム質重合体(r)の重合には、通常のラジカル重合開始剤を作用させて乳化重合することによって調製できる。また、重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0009】
グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなる。
グラフト重合に用いる単量体には芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)とが両方含有されていることが好ましい。
グラフト重合に用いる芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)の組成比は特に限定されるものではないが、好ましくは、芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)の合計量100質量%中、シアン化ビニル化合物単量体(b)の含有量が10質量%〜50質量%であることが好ましい。
芳香族アルケニル化合物単量体(a)としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。また、シアン化ビニル化合物単量体(b)としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。
【0010】
グラフト重合を行う単量体には、芳香族アルケニル化合物単量体(a)やシアン化ビニル化合物単量体(b)と共重合可能な他の単量体(c)を含有していも良い。この様な単量体(c)の具体例としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタアクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルや、N−フェニルマレイミド等のマレイミドがあげられる。
【0011】
ゴム質重合体(r)への単量体のグラフト重合は、ゴム質重合体が分散したラテックスに単量体を加え、ラジカル重合法により一段あるいは多段でグラフト重合を行うことができる。グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
また、グラフト重合で用いる単量体中にはグラフトポリマーの分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
また、グラフト重合には、重合ラテックスを安定化させるとともにグラフト共重合体の平均粒子径を制御するために乳化剤を添加することができる。用いる乳化剤としては、特に限定させるものではないが、好ましい例としてはカチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が挙げられ、さらに好ましい例としてはスルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤を併用して用いる方法が挙げられる。
また、上記のように調製されるグラフト共重合体(A)の粒子径は特に限定されるものではない。
【0012】
通常のグラフト乳化重合法ではアセトン溶媒への可溶分、すなわちゴム質重合体にグラフトされていない重合体が同時に得られることが多いが、本発明でいうグラフト共重合体(A)は、アセトン溶媒に対する可溶分を取り除いた重合体成分のみをいう。
樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は、5〜59.5質量%である。((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)
含有量が5質量%未満では耐衝撃性が低下する傾向にあり、59.5質量%を超えると流動性が低下する傾向にある。好ましくは7〜40質量%である。
【0013】
本発明に用いる重合体(B)は、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する(共)重合体である。重合体(B)には、アルケニル化合物単量体やシアン化ビニル化合物単量体に加えて、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(c)を共重合して得られた重合体であっても良い。
芳香族アルケニル化合物単量体(a)、シアン化ビニル化合物単量体(b)、他のビニル系単量体(c)には、グラフト重合体(A)の製造で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、重合体(B)は、前述したグラフト重合体(A)の重合時に同時に得られるゴム質重合体にグラフトしていない重合体の形で添加されていてもよく、また別途重合して得られたものであっても良い。また樹脂組成物(D)中にこれらが両方添加されていてもよい。
【0014】
共重合体(B)の具体例としてはスチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)が挙げられる。
また、耐熱性を上げる目的で、前記ビニル系単量体(c)として、N−置換マレイミドを共重合することもできる。この様な重合体の具体例としてスチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体が挙げられる。
【0015】
芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)の組成比は特に限定されるものではないが、好ましくはシアン化ビニル化合物が両者の合計量100質量%中10〜50質量%とするのが好ましい。
重合体(B)の分子量については特に限定はないが、好ましくは0.2g/100ccN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度で0.4〜1.4dl/gの範囲内にあるものが好ましい。
共重合体(B)の含有量は、樹脂組成物100質量%中0〜54.5質量%である。含有量が54.5質量%を超えると耐衝撃性が悪化する傾向にある。
【0016】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(C)としては、特に限定されないが好ましくはビスフェーノールAタイプのポリカーボネート樹脂である。また、芳香族環が有機基置換されても良く、あるいは、ポリシロキサン/ポリシリコン等の珪素あるいは珪素/酸素を主骨格とするポリマー/オリゴマーがグラフトあるいはブロック共重合されていてもよい。分子量も特に限定されるものではないが、粘度平均分子量で15000〜35000の範囲内のものが好ましく用いられる。
樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(C)の含有量は、40〜94.5質量%である。含有量が40質量%未満では難燃性が低下する傾向にある。また、94.5質量%を超えると流動性が低下するとともに耐衝撃性の厚み依存性が増加する。好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは50〜60質量%である。
【0017】
本発明に係る樹脂組成物中の芳香族ポリエステル樹脂(D)は特に限定されない。そのジオール成分の例としてはブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物あるいはポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。また、酸成分の例としてはテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等が挙げられる。これらを単一組み合わせや複数組み合わせで用いられる。これらの中では1,4−ブタンジオールとテレフタル酸、1,4−ブタンジオールとナフタレンジカルボン酸の組み合わせ、すなわち、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンナフタレート樹脂が望ましい。
フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン=重量比1/1の混合溶媒に溶解させ,25℃にて測定した固有粘度は0.55〜1.40dl/gの範囲が好ましい。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物中の芳香族ポリエステル樹脂(D)は常法にて製造することができる。たとえば、エステル交換法では,テトラメチレングリコ−ル等の全グリコール成分が,テレフタル酸等のエステル形成性誘導体等の,全酸成分に対してモル比で1.2〜1.6倍となるように反応容器内に仕込み,テトラブトキシチタン等の触媒の存在下で150〜220℃まで徐々に加熱して十分にエステル交換反応を行った後,−0.7kPa以下の減圧下で230〜260℃に加熱し、2〜5時間縮合重合した後、ストランド状で水槽中に吐出し、ストランドカッターにてチップ状にカットしたものを速やかに乾燥してチップに付着した水分を取り除くことによって、本発明に使用されるポリエステル樹脂を得ることができる。また、エステル化法では、テトラメチレングリコ−ル等の全グリコール成分が、テレフタル酸等の全酸成分に対してモル比で1.2〜1.6倍となるように反応容器内に仕込み、窒素で加圧した状態で徐々に150〜220℃まで加熱して十分にエステル化反応を行った後、−0.7kPa以下の減圧下で230〜260℃に加熱し、2〜5時間縮合重合した後、ストランド状で水槽中に吐出し、ストランドカッターにてチップ状にカットしたものを速やかに乾燥してチップに付着した水分を取り除くことによって、本発明に使用されるポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明に使用されるポリエステル樹脂を製造する際に使用されるその他の触媒は、エステル交換触媒として酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等が挙げられ、重合触媒として三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ジブチルスズオキシド等が挙げられ、全酸成分に対して20〜1000ppmの範囲で添加される。
本発明に用いる芳香族ポリエステル樹脂(D)の配合量としては、樹脂組成物中0.5〜55質量%である。0.5質量%未満では耐衝撃性改良効果が低下する傾向にあり、55質量%を超えると耐熱性が低下する傾向にある。好ましくは0.5〜7質量%、更に好ましくは1〜4質量%である。
【0019】
本発明に好ましく用いられる難燃剤(E)は特に制限されず、例を挙げると臭素化合物、塩素化合物、フッ素化合物、燐化合物、赤燐、窒素化合物、珪素化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物等が挙げられる。これらの一種あるいは二種以上を組み合わせて用いられる。
窒素化合物の例としてはトリアジン類、メラミン類が挙げられる。
珪素化合物はシリコーンが挙げられる。直鎖状、分岐状でも良いし架橋されていても良い。
ホウ素化合物の例としてはホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸塩等が挙げられる。ホウ酸塩としてはホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウムホウ酸マグネシュウム等が挙げられる。好ましくはホウ酸亜鉛である。
アンチモン化合物の例としては三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。
好ましくは臭素系難燃剤(G)/三酸化アンチモン(H)系、リン系難燃剤(I)系、リン系難燃剤(I)/ポリテトラフルオロエチレン(J)系である。
臭素系難燃剤(G)の例としては臭素化エポキシ、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールA、ポリブロモベンジルアクリレート、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリフェニレンエーテル、ポリブロモジフェニルエーテル、ポリブロモジフェニルエーテル等が挙げられる。好ましくは臭素化エポキシである。
三酸化アンチモン(H)は流通している市販品を用いることができる。
リン系難燃剤(I)の例としてはリン酸エステル系難燃剤(K)、赤リン系難燃剤(L)、フォスファゼン、ポリリン酸塩等が挙げられる。好ましくはリン酸エステル系難燃剤(K)や赤リン難燃剤(L)である。
テトラフルオロエチレン(J)は流通している市販品を用いることができる。また、テトラフルオロエチレンを何らかの樹脂と複合化し樹脂への分散性を向上させたものでもよい。
リン酸エステル系難燃剤(K)の例としては次式で表さられるリン酸エステルが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0020】
【式1】
【0021】
(ここで、R1、R2、R3、R4は有機基を表し、それぞれ異なっても同一でも良い。Aは2価の有機基を表し、nは0以上の整数を表す。)
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシルジフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルフォスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフェート、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシニルジフェニルフォスフェート等のモノフォスフェート;フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)、フェニレンビス(ジトリルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジキシリルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジトリルフォスフェート)、ビフェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、ビフェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)、ビフェニレンビス(ジトリルフォスフェート)等のポリフォスフェート;である。なかでも、トリフェニルホスフェート、トリキシルフォスフェート、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)が好ましい。
赤リン系難燃剤(L)は熱硬化性樹脂及び/又は金属水酸化物で被覆され安定化されたものが好ましい。赤リン難燃剤はそれだけでは発火性があるので予め構成樹脂成分でマスターバッチ化されたものを用いることが好ましい。
難燃剤(E)の添加量は(A)、(B)、(C)、(D)の合計量100質量部に対して1〜30質量部である。1質量部未満では難燃効果がなく、30質量部を超えると耐衝撃性が低下する。
【0022】
本発明を構成する繊維状充填剤(F)としては、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ワラストナイト、酸化チタンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等の無機繊維や、これらに金属を被覆したものの他、鉄、ステンレス、ニッケル、銅、銀、金、チタン等の金属繊維等が挙げられ、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してよい。ガラス繊維およびこれに金属を被覆したものならびに炭素繊維およびこれに金属を被覆したものが好ましいが、剛性付与能力の高さから炭素繊維およびこれに金属を被覆したものがより好ましい。
繊維状充填剤(E)の配合量は、3〜40質量%(但し難燃性樹脂組成物と(E)の合計量が100質量%)とする。3質量部未満では剛性が劣る傾向にあり、40質量部を超えると流動性が低下する傾向にある。好ましくは10〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
【0023】
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は公知の混練機械によって成形することができ、押出機、射出成形機、ブロー成形機、カレンダー成形機およびインフレーション成形機等を用いることができる。
また、更に必要に応じて公知の染料、顔料、安定剤、タルク、マイカ等の充填材、難燃助剤等を配合することができる。
本発明の繊維強化難燃性熱可塑性樹脂の用途としては、特に限定されるものではないが、例えばコピー機、FAX機、プリンター、デスクトップ型/ノート型/タワー型/サーバー型コンピューター、PDA、携帯電話/PHS、TV、ビデオデッキ、オーディオ機器等の各種OA/情報/家電機器のハウジング及びシャーシー部品、PHS交換機、電話交換機等のハウジング、エアコン/クーラーの室内外機のハウジング、家電機器のハウジング、食器用途、表示部品および各種建材部材等の難燃性が必要となる用途に特に好適に用いられる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、参考例、実施例および比較例において『部』および『%』は特に断らない限り『質量部』および『質量%』を意味する。
なお、参考例に記載の各種測定は以下の方法により行った。
(1)ラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径
大塚電子(株)社製DLS−700型を用いた動的光散乱法により求めた。
(2)グラフト共重合体中のアセトン不溶分量の測定
冷却管および加熱器を備えたフラスコ中にグラフト共重合体約2.5g(秤量)およびアセトン80mlを入れ、加熱器により65℃で3時間加熱抽出処理を行い、冷却後次いで内液を日立工機(株)遠心分離器を用いて15000回転/分の条件で30分処理することによって、アセトン不溶分を分離し、ついで上澄みを取り除いた後の沈殿物を乾燥後、その質量を測定し、以下の式で算出した。アセトン不溶分(質量%)=分離処理後の沈殿物乾燥質量/アセトン抽出前のグラフト共重合体質量×100
(3)グラフト共重合体中のアセトン可溶成分の還元粘度
上記グラフト共重合体のアセトン溶媒での抽出、次いで遠心分離処理によるアセトン不溶分の分離によって得た上澄み液中のアセトン溶媒を減圧蒸発させることによってアセトン可溶成分を析出回収し、次いでこのアセトン可溶成分0.2gを100ccのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の溶液粘度を自動粘度計(SAN DENSHI(株)社製)を用いて25℃で測定し、同条件で測定した溶媒粘度よりアセトン可溶分の還元粘度を求めた。
【0025】
実施例および比較例における樹脂組成物の製造において、下記原料を使用した。
・ホ゜リカーホ゛ネート樹脂:出光石油化学(株)製タフロンA1700
・トリフェニルフォスフェート:大八化学(株)製TPP
・FP−500:1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシリルフォスフェート)、旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500
・臭素化エポキシ化合物:坂本薬品工業(株)製SR−T1000
・三酸化アンチモン:(株)鈴裕化学製ファイヤーカットAT−3
・赤リン:燐化学工業(株)製ノーバエクセル140
・赤リンマスターバッチ:ノーバエクセル140(15%)とタフロンA1700(85%)を予め窒素雰囲気下で押出機で混合したもの。
・ポリテトラフルオロエチレン:旭硝子(株)製フルオンCD−1
・アクリロニトリル−スチレン共重合体:アクリロニトリル成分27質量%およびスチレン成分73質量%よりなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から測定した還元粘度が0.6dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を懸濁重合法にて調製し、使用した。
・炭素繊維:三菱レイヨン(株)製 パイロフィルTR06U
・ガラス繊維:日本電気硝子(株)製 ECS03T−187
【0026】
また、各種評価は以下の方法により行った。
[アイゾット衝撃強度の測定]
ASTM D256に準拠した方法により3.2mm厚み/ノッチ付試片を作製し試験を行った。ノッチ側から試片を打撃し測定したものをノッチ側、ノッチの反対側から試片を打撃し測定したものを反ノッチ側と称する。
[荷重たわみ温度の測定]
ASTM D648に準拠した方法により6.4mm厚み試片を作製し試験を行った。1.82MPa荷重にて測定した。
[スパイラル流動長の測定]
日本製鋼所(株)製J75SS(II)を用い、厚さ2mm/幅15mmのスパイラル金型、シリンダー温度250℃/金型温度60℃、射出圧力98MPa(1000kg/cm2)で評価した。
[還元粘度の測定]
試料0.2gを100ccのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の溶液粘度を自動粘度計(SAN DENSHI(株)社製)を用いて25℃で測定し、同条件で測定した溶媒粘度より試料の還元粘度を求めた。
[固有粘度の測定]
フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン=質量比1/1の混合溶媒にポリエステル樹脂の粉砕物を溶解させ,ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。単位はdl/gで示した。
[耐薬品性評価]
実施例および比較例における樹脂組成物の耐薬品性試験は以下のように行った。評価法 :カンチレバー試験法(図1参照)
試験応力 :39.2MPa、78.5MPa
試験雰囲気:温度23℃、湿度50%
試験片 :長さ120×幅35×厚さ2.0mm
薬品種類 :加藤電機製 ヒンジグリス
薬品を試験片に塗布し上記条件により試験し、そのクラック発生時間を測定した。(図1参照)
【0027】
【図1】
【0028】
[参考例1:ポリブタジエンラテックス(L−1)の製造]
下記の各成分を10Lのステンレス製オートクレーブに仕込んだ。
イオン交換水 145質量部
不均化ロジン酸カリウム 1.0質量部
オレイン酸カリウム 1.0質量部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.4質量部
無水硫酸ナトリウム 0.1質量部
ターシャリードデシルメルカプタン 0.3質量部
ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド 0.5質量部
1,3−ブタジエン 26.2質量部
スチレン 1.4質量部
これを50℃に昇温し、ピロリン酸ナトリウムが0.5質量部、硫酸第一鉄が0.005質量部、イオン交換水が5質量部の混合物を添加し、重合を開始した。重合温度57℃で、1,3−ブタジエンが68.6質量部、スチレンが3.6質量部からなる混合物を圧力ポンプにて滴下供給した。次いで、重合転化率が40%に達した時点で、ノルマルドデシルメルカプタンを0.3質量部を添加しさらに重合を継続した。8時間後残存した1,3−ブタジエンを除去し、固形分が40.2質量%、重合転化率が97%、質量平均粒子径70nmのジエン系重合体ラテックス(L)を得た。
【0029】
[参考例2:肥大化用酸基含有共重合体(K)の合成]
冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に、窒素気流下で下記各成分を仕込み、攪拌を行いながら内温65℃に昇温した。
オレイン酸カリウム 2.2質量部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(70%溶液) 3.6質量部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.3質量部
硫酸第一鉄七水塩 0.003質量部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.009質量部
イオン交換水 200質量部
これに、n−ブチルアクリレートが81.5質量部、メタクリル酸が18.5質量部、クメンヒドロパーオキシドが0.5質量部からなる混合物を2時間かけて添加し,添加終了後も2時間そのままの温度で重合を継続した。重合転化率は98%であり、平均粒子径150nmの肥大化用酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
【0030】
[参考例3:グラフト共重合体(A−1)の製造]
参考例1で調製したジエン系重合体ラテックス(L−1)100質量部(固形分として)に、参考例2で調製した肥大化用酸基含有共重合体(K)ラテックス2.1質量部(固形分として)を攪拌しながら添加し、さらに30分間攪拌を続け肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。肥大化後の重合体の平均粒子径は380nmであった。
次に試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、この肥大化ジエン系ゴムラテックス10質量部(固形分として)、アルケニルコハク酸ジカリウム0.3質量部、イオン交換水175質量部およびブチルアクリレ−ト40質量部、アリルメタクリレ−ト0.16質量部、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト0.08質量部およびターシャリーブチルヒドロパ−オキサイト0.1質量部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045質量部およびロンガリット0.24質量部を蒸留水5質量部に溶解させた水溶液を添加した後内温を75℃に上昇させ、ラジカル重合を開始せしめた。1時間この状態を維持し、アクリレ−ト成分の重合を完結させ肥大化ポリブタジエンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴム重合体のラテックスを得た。この複合ゴム重合体ラテックスを少量サンプリングして測定した複合ゴム重合体の質量平均粒子径は、300nmであった。
次に、ロンガリット0.15質量部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.65質量部を蒸留水10質量部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル6.3質量部、スチレン18.7質量部およびターシャリーブチルヒドロパ−オキサイト0.11質量部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了から5分後、硫酸第一鉄0.001質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003質量部およびロンガリット0.15質量部を蒸留水5質量部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル6.3質量部、スチレン18.7質量部およびターシャリーブチルヒドロパ−オキサイト0.19質量部およびノルマルオクチルメルカプタン0.014質量部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を10分間保持した後冷却し、内温が60℃となった時点で、抗酸化剤(アンテージW500)0.2質量部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.2質量部を蒸留水5質量部に溶解した水溶液を添加した。以上の操作により、肥大化ポリブタジエンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴムに、アクリロニトリル/スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
得られたラテックス中の重合体の平均粒子径は、325nmであった。
次いで、上記重合ラテックスを全ラテックスの1.2倍量の45℃に加熱した硫酸0.6%水溶液中に攪拌しながら投入し、重合体を凝析させた。次いで液温を65℃に上昇させ5分間保持した後、液温を90まで上昇させた。次いで析出物を分離した後、この回収物を10倍量の蒸留水中に投入後10分間撹拌することで洗浄を実施した。この分散液を遠心脱水機に脱水処理し、さらに80℃で16時間乾燥し、グラフト共重合体混合物(A−a)を得た。
グラフト共重合体混合物(A−a)中のアセトン不溶分量は82質量%であった。グラフト共重合体(A−1)が82質量%含まれるグラフト共重合体混合物を得た。
【0031】
[参考例4:ポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスの製造]
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザ−に200kg/cm2 の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソ−ダ水溶液で中和した。
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
【0032】
[参考例5:グラフト共重合体(A−2)の製造]
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、参考例4で製造したポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)45.2部、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)社製)0.2部を採取し、蒸留水148.5部を添加混合した後、ブチルアクリレ−ト42部、アリルメタクリレ−ト0.3部、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト0.1部およびt−ブチルハイドロパ−オキサイト0.11部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.000225部およびロンガリット0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレ−ト成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレ−ト成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、ロンガリット0.25部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部およびt−ブチルハイドロパ−オキサイト0.05部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.2部およびエマールNC−35(花王(株)社製)0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル10部、スチレン30部およびt−ブチルハイドロパ−オキサイト0.2部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を0.5時間保持した後キュメンヒドロパ−オキサイト0.05部を添加し、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持した後冷却した。このラテックスにラテムルASK(アルケニルコハク酸ジカリウム塩;花王(株)社製)を0.5部添加し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体の重合ラテックスを得た。
動的光散乱法より求めたラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は、0.12μmであった。
次いで酢酸カルシウムにより凝固、脱水、乾燥しグラフト共重合体混合物(A−b)を得た。グラフト共重合体混合物(A−b)中のアセトン不溶分は85質量%であった。グラフト共重合体(A−2)が85質量%含まれたグラフト共重合体混合物を得た。
【0033】
[参考例6:グラフト共重合体(A−3)の製造]
参考例1で調製したジエン系重合体ラテックス(L−1)100質量部(固形分として)に、参考例2で調製した肥大化用酸基含有共重合体(K)ラテックス1.5質量部(固形分として)を攪拌しながら添加し、さらに30分間攪拌を続け肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。肥大化後の重合体の平均粒子径は310nmであった。5リットルガラス製反応器に、水150部、肥大化ジエン系ゴムラテックス100質量部(固形分として)、デキストローズ0.6部、ピロリン酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄七水塩0.01部を仕込み、窒素置換後60℃に昇温しアクリロニトリル30部、スチレン70部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、クメンハイドロパーオキシド0.3部からなる単量体混合物を200分かけて滴下し、その時に内温を65℃になる様にコントロールした。滴下終了後、クメンハイドロパーオキシド0.12部を添加し、さらに一時間保持し、老化防止剤(川口化学工業(株)製アンテージW−400)1部を添加後、冷却した。このグラフト共重合体ラテックスを5%硫酸水溶液凝固し、洗浄、乾燥してグラフト共重合体混合物(A−c)を得た。グラフト共重合体混合物中のアセトン不溶分は85質量%であった。グラフト共重合体(A−3)が85質量%含まれたグラフト共重合体混合物を得た。
【0034】
[参考例7:ポリブチレンテレフタレート樹脂(D)の製造]
ジメチルテレフタレート100モル部とテトラメチレングリコ−ル140モル部(以下BDO)、精留塔および攪拌装置を備えた反応容器に入れ,反応容器を140℃まで加熱した後、テトラブトキシチタンを対酸成分に対して600ppm(BDO溶液の希薄溶液として)添加し、攪拌を行いながら220℃まで3時間かけて徐々に昇温し、留出するメタノールを系外に排出しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合反応容器に移し真空度−99kPa以下、245℃で3時間縮合重合を行い所定の攪拌トルクに至ったところで、ストランド状で水槽中に吐出したものを、ストランドカッターにてチップ状に切断し、これを120℃で6時間真空乾燥してポリブチレンテレフタレート樹脂(D−1)を得た。これについて、固有粘度を測定したところ 1.01dl/gであった
【0035】
実施例、比較例
表1〜4に示した配合及びこれらに加え酸化安定剤(酸化安定剤(アデカ・アーガス化学株式会社AO−60、AO−412S)各0.2部を混合し、この混合物を260℃に加熱した二軸押出機に供給し、また、繊維状充填剤をサイドフィーダーにより溶融樹脂へ供給し混練してペレットを得た。
得られたペレットを20mmφ、35オンスのスクリューインライン成形機で、シリンダー温度250℃、金型温度60℃、にて各試験片を作成した。
得られた測定結果を表1〜4に示す。
なお、用いた原料には混合物が含まれるため、正味の配合量を「実際の配合部数」として記載した。
測定結果を表1〜4に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物によれば、繊維状充填剤強化ポリカーボネート系アロイ樹脂材料において、高度なレベルの耐薬品性、耐衝撃性、剛性、耐熱性を発現する。
【発明の属する技術分野】
本発明は、耐薬品性、難燃性、耐衝撃性、流動性、剛性に優れた樹脂組成物に関する。
【0002】
【従来の技術】
近年、OA機器、IT機器、あるいは家電機器等のハウジング用途においては、各機器の軽量化、コンパクト化が進み、これによりハウジング部材の薄肉化が求められている。すなわち、これは樹脂材料にとり高い剛性を求められることになる。同時に電気電子機器の集積密度が上がるため機器内部の温度が増大し、ハウジング部材の耐熱性が求められている。
ポリカ−ボネ−ト樹脂は、その優れた耐衝撃性あるいは耐熱性を生かして様々な工業用用途に用いられているが、成形加工温度が高い、流動性が悪いあるいは衝撃強度の厚み依存性が大きい等の欠点を有している。現在では、この欠点が改良されたポリカ−ボネ−ト樹脂にABS(アクリロニトリル−ブタジエン−スチレン)樹脂をブレンドした組成物、すなわち、ポリカーボネート/ ABSアロイ樹脂が広く用いられている。しかしながら、ポリカ−ボネ−ト樹脂にABS樹脂をブレンドする方法では成形加工温度の低下は可能となるものの、剛性を高めるために繊維状充填剤を添加すると、繊維状充填剤強化ポリカーボネート樹脂と比較すると衝撃強度が劣る結果となる。すなわち流動性は改善されるものの繊維状充填剤強化ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂では、前述の強まる薄肉化指向すなわち耐衝撃性と剛性の高度な要求に対応できない。
また、同様に、ハウジング用途ではその火災防止の観点から難燃材料を求められるのが主流となってきたが、ポリカーボネート樹脂にABS樹脂をブレンドする方法では難燃性能が低下し種々の難燃剤を添加する必要がある。さらに、コンパクト化のためにその内部部品密度が高くなり内部機械部品のグリース等の薬品にハウジングが接触しやすくなったため、これに対する耐薬品性も求められるようになった。
難燃性、剛性を付与する方法としては、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂に炭素繊維および難燃剤を添加する方法がある(例えば特許文献1)。
【特許文献1】特開平5−311029公報
【0003】
【発明が解決しようとする課題】
しかしながら、この方法では耐衝撃性が劣り、その対策としてポリエステル系熱可塑性エラストマーを添加しているがその効果は少なく、さらに耐熱性も低下している。また、ポリカーボネート/ABSアロイ樹脂であるため耐薬品性に劣る。
本発明の目的は繊維状充填剤強化ポリカーボネート/ABS系アロイ樹脂材料において、高度なレベルの耐薬品性、耐衝撃性、剛性、耐熱性を示す材料を提供することにある。
【0004】
【課題を解決するための手段】
本発明の要旨は、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位を含有するアクリルゴム、ジエン系ゴムとアクリルゴムが複合されたジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン系ゴムとアクリルゴムが複合されたシリコーン−アクリル複合ゴムから選ばれるゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(A)5〜59.5質量%と、
芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する重合体(B)0〜54.5質量%と、
ポリカーボネート樹脂(C)40〜94.5質量%と、
芳香族ポリエステル樹脂(D)0.5〜55質量%((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物100質量部に対して、
難燃剤(E)1〜30質量部が配合された難燃性樹脂組成物60〜97質量%と繊維状充填剤(F)3〜40質量%((E)、(F)の合計量が100質量%)からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物にある。
【0005】
【発明の実施の形態】
以下、本発明を詳細に説明する。
本発明に用いるグラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるものであり、ゴム質重合体(r)には、アルキル(メタ)アクリレート単量体単位を含有するアクリルゴム、ジエン系ゴムとアクリルゴムが複合されたジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン系ゴムとアクリルゴムが複合されたシリコーン−アクリル複合ゴムなどのアクリル系ゴムが用いられる。
【0006】
アクリルゴムの重合に用いるアルキル(メタ)アクリレートとしては、例えばメチルアクリレート、エチルアクリレート、n−プロピルアクリレート、n−ブチルアクリレート、2−エチルヘキシルアクリレート等のアルキルアクリレートおよびヘキシルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート、n−ラウリルメタクリレート等のアルキルメタクリレートが挙げられ、これらを単独で、もしくは二種以上併用して用いることができる。
これらの内、最終的に得られる繊維強化難燃性樹脂組成物の耐衝撃性および成形光沢が向上することから、特にn−ブチルアクリレートを用いることが好ましい。
アクリルゴムの重合には、前述したアルキル(メタ)アクリレートに加えて多官能単量体を併用しても良い。多官能単量体としては、例えばアリルメタクリレート、エチレングリコールジメタクリレート、プロピレングリコールジメタクリレート、1,3−ブチレングリコールジメタクリレート、1,4−ブチレングリコールジメタクリレート、トリアリルシアヌレート、トリアリルイソシアヌレート等が挙げられ、これらを単独でまたは二種以上併用して用いることができる。
【0007】
ジエン−アクリル複合ゴムに用いるジエン系ゴムとしては、ブタジエン重合体、ブタジエンと他の単量体を重合させて得られる共重合体が用いられる。具体的にはブタジエンゴム、SBR、NBR等が挙げられる。
また、シリコーン−アクリル複合ゴムに用いるポリオルガノシロキサン(g)としては特に限定されるものではないが好ましくは、ビニル重合性官能基を含有するポリオルガノシロキサンである。
【0008】
ゴム質重合体(r)の重合には、通常のラジカル重合開始剤を作用させて乳化重合することによって調製できる。また、重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。この中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
【0009】
グラフト共重合体(A)は、ゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなる。
グラフト重合に用いる単量体には芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)とが両方含有されていることが好ましい。
グラフト重合に用いる芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)の組成比は特に限定されるものではないが、好ましくは、芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)の合計量100質量%中、シアン化ビニル化合物単量体(b)の含有量が10質量%〜50質量%であることが好ましい。
芳香族アルケニル化合物単量体(a)としては、例えばスチレン、α−メチルスチレン、ビニルトルエン等が挙げられ、好ましくはスチレンである。また、シアン化ビニル化合物単量体(b)としては、例えばアクリロニトリル、メタクリロニトリル等が挙げられ、好ましくはアクリロニトリルである。
【0010】
グラフト重合を行う単量体には、芳香族アルケニル化合物単量体(a)やシアン化ビニル化合物単量体(b)と共重合可能な他の単量体(c)を含有していも良い。この様な単量体(c)の具体例としては、例えばメチルメタクリレート、エチルメタクリレート、2−エチルヘキシルメタクリレート等のメタアクリル酸エステル、メチルアクリレート、エチルアクリレート、ブチルアクリレート等のアクリル酸エステルや、N−フェニルマレイミド等のマレイミドがあげられる。
【0011】
ゴム質重合体(r)への単量体のグラフト重合は、ゴム質重合体が分散したラテックスに単量体を加え、ラジカル重合法により一段あるいは多段でグラフト重合を行うことができる。グラフト重合に用いるラジカル重合開始剤としては、過酸化物、アゾ系開始剤、または酸化剤・還元剤を組み合わせたレドックス系開始剤が用いられる。これらの中では、レドックス系開始剤が好ましく、特に硫酸第一鉄・エチレンジアミン四酢酸にナトリウム塩・ロンガリット・ヒドロパーオキサイドを組み合わせたスルホキシレート系開始剤が好ましい。
また、グラフト重合で用いる単量体中にはグラフトポリマーの分子量やグラフト率を調製するための各種連鎖移動剤を添加することができる。
また、グラフト重合には、重合ラテックスを安定化させるとともにグラフト共重合体の平均粒子径を制御するために乳化剤を添加することができる。用いる乳化剤としては、特に限定させるものではないが、好ましい例としてはカチオン系乳化剤、アニオン系乳化剤およびノニオン系乳化剤が挙げられ、さらに好ましい例としてはスルホン酸塩乳化剤あるいは硫酸塩乳化剤とカルボン酸塩乳化剤を併用して用いる方法が挙げられる。
また、上記のように調製されるグラフト共重合体(A)の粒子径は特に限定されるものではない。
【0012】
通常のグラフト乳化重合法ではアセトン溶媒への可溶分、すなわちゴム質重合体にグラフトされていない重合体が同時に得られることが多いが、本発明でいうグラフト共重合体(A)は、アセトン溶媒に対する可溶分を取り除いた重合体成分のみをいう。
樹脂組成物中のグラフト共重合体(A)の含有量は、5〜59.5質量%である。((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)
含有量が5質量%未満では耐衝撃性が低下する傾向にあり、59.5質量%を超えると流動性が低下する傾向にある。好ましくは7〜40質量%である。
【0013】
本発明に用いる重合体(B)は、芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する(共)重合体である。重合体(B)には、アルケニル化合物単量体やシアン化ビニル化合物単量体に加えて、これらと共重合可能な他のビニル系単量体(c)を共重合して得られた重合体であっても良い。
芳香族アルケニル化合物単量体(a)、シアン化ビニル化合物単量体(b)、他のビニル系単量体(c)には、グラフト重合体(A)の製造で説明したものと同様のものを用いることができる。
また、重合体(B)は、前述したグラフト重合体(A)の重合時に同時に得られるゴム質重合体にグラフトしていない重合体の形で添加されていてもよく、また別途重合して得られたものであっても良い。また樹脂組成物(D)中にこれらが両方添加されていてもよい。
【0014】
共重合体(B)の具体例としてはスチレン−アクリロニトリル共重合体(SAN樹脂)が挙げられる。
また、耐熱性を上げる目的で、前記ビニル系単量体(c)として、N−置換マレイミドを共重合することもできる。この様な重合体の具体例としてスチレン−アクリロニトリル−N−フェニルマレイミド共重合体が挙げられる。
【0015】
芳香族アルケニル化合物単量体(a)とシアン化ビニル化合物単量体(b)の組成比は特に限定されるものではないが、好ましくはシアン化ビニル化合物が両者の合計量100質量%中10〜50質量%とするのが好ましい。
重合体(B)の分子量については特に限定はないが、好ましくは0.2g/100ccN,N−ジメチルホルムアミド溶液として25℃で測定した還元粘度で0.4〜1.4dl/gの範囲内にあるものが好ましい。
共重合体(B)の含有量は、樹脂組成物100質量%中0〜54.5質量%である。含有量が54.5質量%を超えると耐衝撃性が悪化する傾向にある。
【0016】
本発明に用いるポリカーボネート樹脂(C)としては、特に限定されないが好ましくはビスフェーノールAタイプのポリカーボネート樹脂である。また、芳香族環が有機基置換されても良く、あるいは、ポリシロキサン/ポリシリコン等の珪素あるいは珪素/酸素を主骨格とするポリマー/オリゴマーがグラフトあるいはブロック共重合されていてもよい。分子量も特に限定されるものではないが、粘度平均分子量で15000〜35000の範囲内のものが好ましく用いられる。
樹脂組成物中のポリカーボネート樹脂(C)の含有量は、40〜94.5質量%である。含有量が40質量%未満では難燃性が低下する傾向にある。また、94.5質量%を超えると流動性が低下するとともに耐衝撃性の厚み依存性が増加する。好ましくは50〜80質量%、更に好ましくは50〜60質量%である。
【0017】
本発明に係る樹脂組成物中の芳香族ポリエステル樹脂(D)は特に限定されない。そのジオール成分の例としてはブタンジオール、エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール、ヘキサメチレングリコール、ネオペンチルグリコール、ビスフェノールAのエチレンオキサイド付加物あるいはポリエチレングリコール、ポリオキシテトラメチレングリコールなどのポリオキシアルキレングリコールが挙げられる。また、酸成分の例としてはテレフタル酸、ナフタレンジカルボン酸、イソフタル酸、オルトフタル酸等が挙げられる。これらを単一組み合わせや複数組み合わせで用いられる。これらの中では1,4−ブタンジオールとテレフタル酸、1,4−ブタンジオールとナフタレンジカルボン酸の組み合わせ、すなわち、ポリブチレンテレフタレート樹脂やポリブチレンナフタレート樹脂が望ましい。
フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン=重量比1/1の混合溶媒に溶解させ,25℃にて測定した固有粘度は0.55〜1.40dl/gの範囲が好ましい。
【0018】
本発明に係る樹脂組成物中の芳香族ポリエステル樹脂(D)は常法にて製造することができる。たとえば、エステル交換法では,テトラメチレングリコ−ル等の全グリコール成分が,テレフタル酸等のエステル形成性誘導体等の,全酸成分に対してモル比で1.2〜1.6倍となるように反応容器内に仕込み,テトラブトキシチタン等の触媒の存在下で150〜220℃まで徐々に加熱して十分にエステル交換反応を行った後,−0.7kPa以下の減圧下で230〜260℃に加熱し、2〜5時間縮合重合した後、ストランド状で水槽中に吐出し、ストランドカッターにてチップ状にカットしたものを速やかに乾燥してチップに付着した水分を取り除くことによって、本発明に使用されるポリエステル樹脂を得ることができる。また、エステル化法では、テトラメチレングリコ−ル等の全グリコール成分が、テレフタル酸等の全酸成分に対してモル比で1.2〜1.6倍となるように反応容器内に仕込み、窒素で加圧した状態で徐々に150〜220℃まで加熱して十分にエステル化反応を行った後、−0.7kPa以下の減圧下で230〜260℃に加熱し、2〜5時間縮合重合した後、ストランド状で水槽中に吐出し、ストランドカッターにてチップ状にカットしたものを速やかに乾燥してチップに付着した水分を取り除くことによって、本発明に使用されるポリエステル樹脂を得ることができる。
本発明に使用されるポリエステル樹脂を製造する際に使用されるその他の触媒は、エステル交換触媒として酢酸亜鉛、酢酸マンガン、酢酸マグネシウム等が挙げられ、重合触媒として三酸化アンチモン、二酸化ゲルマニウム、四塩化ゲルマニウム、ジブチルスズオキシド等が挙げられ、全酸成分に対して20〜1000ppmの範囲で添加される。
本発明に用いる芳香族ポリエステル樹脂(D)の配合量としては、樹脂組成物中0.5〜55質量%である。0.5質量%未満では耐衝撃性改良効果が低下する傾向にあり、55質量%を超えると耐熱性が低下する傾向にある。好ましくは0.5〜7質量%、更に好ましくは1〜4質量%である。
【0019】
本発明に好ましく用いられる難燃剤(E)は特に制限されず、例を挙げると臭素化合物、塩素化合物、フッ素化合物、燐化合物、赤燐、窒素化合物、珪素化合物、ホウ素化合物、アンチモン化合物等が挙げられる。これらの一種あるいは二種以上を組み合わせて用いられる。
窒素化合物の例としてはトリアジン類、メラミン類が挙げられる。
珪素化合物はシリコーンが挙げられる。直鎖状、分岐状でも良いし架橋されていても良い。
ホウ素化合物の例としてはホウ酸、酸化ホウ素、ホウ酸塩等が挙げられる。ホウ酸塩としてはホウ酸亜鉛、ホウ酸バリウムホウ酸マグネシュウム等が挙げられる。好ましくはホウ酸亜鉛である。
アンチモン化合物の例としては三酸化アンチモン、アンチモン酸ソーダ等が挙げられる。
好ましくは臭素系難燃剤(G)/三酸化アンチモン(H)系、リン系難燃剤(I)系、リン系難燃剤(I)/ポリテトラフルオロエチレン(J)系である。
臭素系難燃剤(G)の例としては臭素化エポキシ、臭素化ポリスチレン、臭素化ビスフェノールA、ポリブロモベンジルアクリレート、臭素化ポリカーボネート、臭素化ポリフェニレンエーテル、ポリブロモジフェニルエーテル、ポリブロモジフェニルエーテル等が挙げられる。好ましくは臭素化エポキシである。
三酸化アンチモン(H)は流通している市販品を用いることができる。
リン系難燃剤(I)の例としてはリン酸エステル系難燃剤(K)、赤リン系難燃剤(L)、フォスファゼン、ポリリン酸塩等が挙げられる。好ましくはリン酸エステル系難燃剤(K)や赤リン難燃剤(L)である。
テトラフルオロエチレン(J)は流通している市販品を用いることができる。また、テトラフルオロエチレンを何らかの樹脂と複合化し樹脂への分散性を向上させたものでもよい。
リン酸エステル系難燃剤(K)の例としては次式で表さられるリン酸エステルが挙げられるがこれに限定されるものではない。
【0020】
【式1】
【0021】
(ここで、R1、R2、R3、R4は有機基を表し、それぞれ異なっても同一でも良い。Aは2価の有機基を表し、nは0以上の整数を表す。)
リン酸エステルの具体例としては、トリメチルホスフェート、トリエチルホスフェート、トリブチルホスフェート、トリオクチルホスフェート、トリブトキシエチルホスフェート、トリフェニルホスフェート、トリクレジルホスフェート、トリキシルフォスフェート、クレジルジフェニルホスフェート、キシルジフェニルフォスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ジイソプロピルフェニルホスフェート、ジフェニル−2−エチルクレシルフォスフェート、トリス(イソプロピルフェニル)フォスフェート、メチルホスホン酸ジフェニル、フェニルホスホン酸ジエチル、レゾルシニルジフェニルフォスフェート等のモノフォスフェート;フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)、フェニレンビス(ジトリルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジフェニルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジキシリルフォスフェート)、ビスフェノールA−ビス(ジトリルフォスフェート)、ビフェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、ビフェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)、ビフェニレンビス(ジトリルフォスフェート)等のポリフォスフェート;である。なかでも、トリフェニルホスフェート、トリキシルフォスフェート、フェニレンビス(ジフェニルフォスフェート)、フェニレンビス(ジキシリルフォスフェート)が好ましい。
赤リン系難燃剤(L)は熱硬化性樹脂及び/又は金属水酸化物で被覆され安定化されたものが好ましい。赤リン難燃剤はそれだけでは発火性があるので予め構成樹脂成分でマスターバッチ化されたものを用いることが好ましい。
難燃剤(E)の添加量は(A)、(B)、(C)、(D)の合計量100質量部に対して1〜30質量部である。1質量部未満では難燃効果がなく、30質量部を超えると耐衝撃性が低下する。
【0022】
本発明を構成する繊維状充填剤(F)としては、炭素繊維、ガラス繊維、アルミナ繊維、シリコンカーバイド繊維、セラミック繊維、チタン酸カリウムウイスカー、ワラストナイト、酸化チタンウイスカー、酸化亜鉛ウイスカー等の無機繊維や、これらに金属を被覆したものの他、鉄、ステンレス、ニッケル、銅、銀、金、チタン等の金属繊維等が挙げられ、これらを1種単独で使用しても2種以上を併用してよい。ガラス繊維およびこれに金属を被覆したものならびに炭素繊維およびこれに金属を被覆したものが好ましいが、剛性付与能力の高さから炭素繊維およびこれに金属を被覆したものがより好ましい。
繊維状充填剤(E)の配合量は、3〜40質量%(但し難燃性樹脂組成物と(E)の合計量が100質量%)とする。3質量部未満では剛性が劣る傾向にあり、40質量部を超えると流動性が低下する傾向にある。好ましくは10〜35質量部、より好ましくは10〜30質量部である。
【0023】
本発明の繊維強化難燃性樹脂組成物は公知の混練機械によって成形することができ、押出機、射出成形機、ブロー成形機、カレンダー成形機およびインフレーション成形機等を用いることができる。
また、更に必要に応じて公知の染料、顔料、安定剤、タルク、マイカ等の充填材、難燃助剤等を配合することができる。
本発明の繊維強化難燃性熱可塑性樹脂の用途としては、特に限定されるものではないが、例えばコピー機、FAX機、プリンター、デスクトップ型/ノート型/タワー型/サーバー型コンピューター、PDA、携帯電話/PHS、TV、ビデオデッキ、オーディオ機器等の各種OA/情報/家電機器のハウジング及びシャーシー部品、PHS交換機、電話交換機等のハウジング、エアコン/クーラーの室内外機のハウジング、家電機器のハウジング、食器用途、表示部品および各種建材部材等の難燃性が必要となる用途に特に好適に用いられる。
【0024】
【実施例】
以下、実施例により本発明を説明する。尚、参考例、実施例および比較例において『部』および『%』は特に断らない限り『質量部』および『質量%』を意味する。
なお、参考例に記載の各種測定は以下の方法により行った。
(1)ラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径
大塚電子(株)社製DLS−700型を用いた動的光散乱法により求めた。
(2)グラフト共重合体中のアセトン不溶分量の測定
冷却管および加熱器を備えたフラスコ中にグラフト共重合体約2.5g(秤量)およびアセトン80mlを入れ、加熱器により65℃で3時間加熱抽出処理を行い、冷却後次いで内液を日立工機(株)遠心分離器を用いて15000回転/分の条件で30分処理することによって、アセトン不溶分を分離し、ついで上澄みを取り除いた後の沈殿物を乾燥後、その質量を測定し、以下の式で算出した。アセトン不溶分(質量%)=分離処理後の沈殿物乾燥質量/アセトン抽出前のグラフト共重合体質量×100
(3)グラフト共重合体中のアセトン可溶成分の還元粘度
上記グラフト共重合体のアセトン溶媒での抽出、次いで遠心分離処理によるアセトン不溶分の分離によって得た上澄み液中のアセトン溶媒を減圧蒸発させることによってアセトン可溶成分を析出回収し、次いでこのアセトン可溶成分0.2gを100ccのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の溶液粘度を自動粘度計(SAN DENSHI(株)社製)を用いて25℃で測定し、同条件で測定した溶媒粘度よりアセトン可溶分の還元粘度を求めた。
【0025】
実施例および比較例における樹脂組成物の製造において、下記原料を使用した。
・ホ゜リカーホ゛ネート樹脂:出光石油化学(株)製タフロンA1700
・トリフェニルフォスフェート:大八化学(株)製TPP
・FP−500:1,3−フェニレンビス(ジ−2,6−キシリルフォスフェート)、旭電化工業(株)製アデカスタブFP−500
・臭素化エポキシ化合物:坂本薬品工業(株)製SR−T1000
・三酸化アンチモン:(株)鈴裕化学製ファイヤーカットAT−3
・赤リン:燐化学工業(株)製ノーバエクセル140
・赤リンマスターバッチ:ノーバエクセル140(15%)とタフロンA1700(85%)を予め窒素雰囲気下で押出機で混合したもの。
・ポリテトラフルオロエチレン:旭硝子(株)製フルオンCD−1
・アクリロニトリル−スチレン共重合体:アクリロニトリル成分27質量%およびスチレン成分73質量%よりなり、N,N−ジメチルホルムアミド溶液から測定した還元粘度が0.6dl/gであるアクリロニトリル−スチレン共重合体を懸濁重合法にて調製し、使用した。
・炭素繊維:三菱レイヨン(株)製 パイロフィルTR06U
・ガラス繊維:日本電気硝子(株)製 ECS03T−187
【0026】
また、各種評価は以下の方法により行った。
[アイゾット衝撃強度の測定]
ASTM D256に準拠した方法により3.2mm厚み/ノッチ付試片を作製し試験を行った。ノッチ側から試片を打撃し測定したものをノッチ側、ノッチの反対側から試片を打撃し測定したものを反ノッチ側と称する。
[荷重たわみ温度の測定]
ASTM D648に準拠した方法により6.4mm厚み試片を作製し試験を行った。1.82MPa荷重にて測定した。
[スパイラル流動長の測定]
日本製鋼所(株)製J75SS(II)を用い、厚さ2mm/幅15mmのスパイラル金型、シリンダー温度250℃/金型温度60℃、射出圧力98MPa(1000kg/cm2)で評価した。
[還元粘度の測定]
試料0.2gを100ccのN,N−ジメチルホルムアミドに溶解させた溶液の溶液粘度を自動粘度計(SAN DENSHI(株)社製)を用いて25℃で測定し、同条件で測定した溶媒粘度より試料の還元粘度を求めた。
[固有粘度の測定]
フェノ−ル/1,1,2,2−テトラクロルエタン=質量比1/1の混合溶媒にポリエステル樹脂の粉砕物を溶解させ,ウベローデ粘度計を用いて25℃で測定した。単位はdl/gで示した。
[耐薬品性評価]
実施例および比較例における樹脂組成物の耐薬品性試験は以下のように行った。評価法 :カンチレバー試験法(図1参照)
試験応力 :39.2MPa、78.5MPa
試験雰囲気:温度23℃、湿度50%
試験片 :長さ120×幅35×厚さ2.0mm
薬品種類 :加藤電機製 ヒンジグリス
薬品を試験片に塗布し上記条件により試験し、そのクラック発生時間を測定した。(図1参照)
【0027】
【図1】
【0028】
[参考例1:ポリブタジエンラテックス(L−1)の製造]
下記の各成分を10Lのステンレス製オートクレーブに仕込んだ。
イオン交換水 145質量部
不均化ロジン酸カリウム 1.0質量部
オレイン酸カリウム 1.0質量部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.4質量部
無水硫酸ナトリウム 0.1質量部
ターシャリードデシルメルカプタン 0.3質量部
ジイソプロピルベンゼンヒドロパーオキサイド 0.5質量部
1,3−ブタジエン 26.2質量部
スチレン 1.4質量部
これを50℃に昇温し、ピロリン酸ナトリウムが0.5質量部、硫酸第一鉄が0.005質量部、イオン交換水が5質量部の混合物を添加し、重合を開始した。重合温度57℃で、1,3−ブタジエンが68.6質量部、スチレンが3.6質量部からなる混合物を圧力ポンプにて滴下供給した。次いで、重合転化率が40%に達した時点で、ノルマルドデシルメルカプタンを0.3質量部を添加しさらに重合を継続した。8時間後残存した1,3−ブタジエンを除去し、固形分が40.2質量%、重合転化率が97%、質量平均粒子径70nmのジエン系重合体ラテックス(L)を得た。
【0029】
[参考例2:肥大化用酸基含有共重合体(K)の合成]
冷却管、ジャケット加熱器および攪拌装置を備えた反応器内に、窒素気流下で下記各成分を仕込み、攪拌を行いながら内温65℃に昇温した。
オレイン酸カリウム 2.2質量部
ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム(70%溶液) 3.6質量部
ナトリウムホルムアルデヒドスルホキシレート二水和物 0.3質量部
硫酸第一鉄七水塩 0.003質量部
エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩 0.009質量部
イオン交換水 200質量部
これに、n−ブチルアクリレートが81.5質量部、メタクリル酸が18.5質量部、クメンヒドロパーオキシドが0.5質量部からなる混合物を2時間かけて添加し,添加終了後も2時間そのままの温度で重合を継続した。重合転化率は98%であり、平均粒子径150nmの肥大化用酸基含有共重合体ラテックス(K)を得た。
【0030】
[参考例3:グラフト共重合体(A−1)の製造]
参考例1で調製したジエン系重合体ラテックス(L−1)100質量部(固形分として)に、参考例2で調製した肥大化用酸基含有共重合体(K)ラテックス2.1質量部(固形分として)を攪拌しながら添加し、さらに30分間攪拌を続け肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。肥大化後の重合体の平均粒子径は380nmであった。
次に試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器に、この肥大化ジエン系ゴムラテックス10質量部(固形分として)、アルケニルコハク酸ジカリウム0.3質量部、イオン交換水175質量部およびブチルアクリレ−ト40質量部、アリルメタクリレ−ト0.16質量部、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト0.08質量部およびターシャリーブチルヒドロパ−オキサイト0.1質量部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が50℃となった時点で、硫酸第一鉄0.00015質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.00045質量部およびロンガリット0.24質量部を蒸留水5質量部に溶解させた水溶液を添加した後内温を75℃に上昇させ、ラジカル重合を開始せしめた。1時間この状態を維持し、アクリレ−ト成分の重合を完結させ肥大化ポリブタジエンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴム重合体のラテックスを得た。この複合ゴム重合体ラテックスを少量サンプリングして測定した複合ゴム重合体の質量平均粒子径は、300nmであった。
次に、ロンガリット0.15質量部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.65質量部を蒸留水10質量部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル6.3質量部、スチレン18.7質量部およびターシャリーブチルヒドロパ−オキサイト0.11質量部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了から5分後、硫酸第一鉄0.001質量部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003質量部およびロンガリット0.15質量部を蒸留水5質量部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル6.3質量部、スチレン18.7質量部およびターシャリーブチルヒドロパ−オキサイト0.19質量部およびノルマルオクチルメルカプタン0.014質量部の混合液を1時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度75℃の状態を10分間保持した後冷却し、内温が60℃となった時点で、抗酸化剤(アンテージW500)0.2質量部およびアルケニルコハク酸ジカリウム0.2質量部を蒸留水5質量部に溶解した水溶液を添加した。以上の操作により、肥大化ポリブタジエンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴムに、アクリロニトリル/スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体のラテックスを得た。
得られたラテックス中の重合体の平均粒子径は、325nmであった。
次いで、上記重合ラテックスを全ラテックスの1.2倍量の45℃に加熱した硫酸0.6%水溶液中に攪拌しながら投入し、重合体を凝析させた。次いで液温を65℃に上昇させ5分間保持した後、液温を90まで上昇させた。次いで析出物を分離した後、この回収物を10倍量の蒸留水中に投入後10分間撹拌することで洗浄を実施した。この分散液を遠心脱水機に脱水処理し、さらに80℃で16時間乾燥し、グラフト共重合体混合物(A−a)を得た。
グラフト共重合体混合物(A−a)中のアセトン不溶分量は82質量%であった。グラフト共重合体(A−1)が82質量%含まれるグラフト共重合体混合物を得た。
【0031】
[参考例4:ポリオルガノシロキサン(L−2)ラテックスの製造]
オクタメチルシクロテトラシロキサン98部、γ−メタクリロイルオキシプロピルジメトキシメチルシラン2部を混合してシロキサン系混合物100部を得た。これにドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム0.67部を溶解した蒸留水300部を添加し、ホモミキサ−にて10000回転/分で2分間撹拌した後、ホモジナイザ−に200kg/cm2 の圧力で1回通し、安定な予備混合オルガノシロキサンラテックスを得た。
一方、試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、ドデシルベンゼンスルホン酸10部と蒸留水90部とを注入し、10%のドデシルベンゼンスルホン酸水溶液を調製した。
この水溶液を85℃に加熱した状態で、予備混合オルガノシロキサンラテックスを4時間に亘って滴下し、滴下終了後1時間温度を維持し、冷却した。次いでこの反応物を苛性ソ−ダ水溶液で中和した。
このようにして得られたラテックスを170℃で30分間乾燥して固形分を求めたところ、17.7%であった。また、ラテックス中のポリオルガノシロキサンの質量平均粒子径は0.05μmであった。
【0032】
[参考例5:グラフト共重合体(A−2)の製造]
試薬注入容器、冷却管、ジャケット加熱機および攪拌装置を備えた反応器内に、参考例4で製造したポリオルガノシロキサンラテックス(L−1)45.2部、エマールNC−35(ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテルサルフェート;花王(株)社製)0.2部を採取し、蒸留水148.5部を添加混合した後、ブチルアクリレ−ト42部、アリルメタクリレ−ト0.3部、1,3−ブチレングリコ−ルジメタクリレ−ト0.1部およびt−ブチルハイドロパ−オキサイト0.11部の混合物を添加した。
この反応器に窒素気流を通じることによって、雰囲気の窒素置換を行い、60℃まで昇温した。内部の液温が60℃となった時点で、硫酸第一鉄0.000075部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.000225部およびロンガリット0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、ラジカル重合を開始せしめた。アクリレ−ト成分の重合により、液温は78℃まで上昇した。1時間この状態を維持し、アクリレ−ト成分の重合を完結させポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとの複合ゴムのラテックスを得た。
反応器内部の液温が70℃に低下した後、ロンガリット0.25部を蒸留水10部に溶解した水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル2.5部、スチレン7.5部およびt−ブチルハイドロパ−オキサイト0.05部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を1時間保持した後、硫酸第一鉄0.001部、エチレンジアミン四酢酸二ナトリウム塩0.003部、ロンガリット0.2部およびエマールNC−35(花王(株)社製)0.2部を蒸留水10部に溶解させた水溶液を添加し、次いでアクリロニトリル10部、スチレン30部およびt−ブチルハイドロパ−オキサイト0.2部の混合液を2時間にわたって滴下し重合した。滴下終了後、温度60℃の状態を0.5時間保持した後キュメンヒドロパ−オキサイト0.05部を添加し、さらに温度60℃の状態を0.5時間保持した後冷却した。このラテックスにラテムルASK(アルケニルコハク酸ジカリウム塩;花王(株)社製)を0.5部添加し、ポリオルガノシロキサンとブチルアクリレ−トゴムとからなる複合ゴムに、アクリロニトリル、スチレンをグラフト重合させたグラフト共重合体の重合ラテックスを得た。
動的光散乱法より求めたラテックス中のグラフト共重合体の質量平均粒子径は、0.12μmであった。
次いで酢酸カルシウムにより凝固、脱水、乾燥しグラフト共重合体混合物(A−b)を得た。グラフト共重合体混合物(A−b)中のアセトン不溶分は85質量%であった。グラフト共重合体(A−2)が85質量%含まれたグラフト共重合体混合物を得た。
【0033】
[参考例6:グラフト共重合体(A−3)の製造]
参考例1で調製したジエン系重合体ラテックス(L−1)100質量部(固形分として)に、参考例2で調製した肥大化用酸基含有共重合体(K)ラテックス1.5質量部(固形分として)を攪拌しながら添加し、さらに30分間攪拌を続け肥大化ジエン系ゴムラテックスを得た。肥大化後の重合体の平均粒子径は310nmであった。5リットルガラス製反応器に、水150部、肥大化ジエン系ゴムラテックス100質量部(固形分として)、デキストローズ0.6部、ピロリン酸ナトリウム0.1部、硫酸第一鉄七水塩0.01部を仕込み、窒素置換後60℃に昇温しアクリロニトリル30部、スチレン70部、t−ドデシルメルカプタン1.2部、クメンハイドロパーオキシド0.3部からなる単量体混合物を200分かけて滴下し、その時に内温を65℃になる様にコントロールした。滴下終了後、クメンハイドロパーオキシド0.12部を添加し、さらに一時間保持し、老化防止剤(川口化学工業(株)製アンテージW−400)1部を添加後、冷却した。このグラフト共重合体ラテックスを5%硫酸水溶液凝固し、洗浄、乾燥してグラフト共重合体混合物(A−c)を得た。グラフト共重合体混合物中のアセトン不溶分は85質量%であった。グラフト共重合体(A−3)が85質量%含まれたグラフト共重合体混合物を得た。
【0034】
[参考例7:ポリブチレンテレフタレート樹脂(D)の製造]
ジメチルテレフタレート100モル部とテトラメチレングリコ−ル140モル部(以下BDO)、精留塔および攪拌装置を備えた反応容器に入れ,反応容器を140℃まで加熱した後、テトラブトキシチタンを対酸成分に対して600ppm(BDO溶液の希薄溶液として)添加し、攪拌を行いながら220℃まで3時間かけて徐々に昇温し、留出するメタノールを系外に排出しながらエステル交換反応を行った。その後、重縮合反応容器に移し真空度−99kPa以下、245℃で3時間縮合重合を行い所定の攪拌トルクに至ったところで、ストランド状で水槽中に吐出したものを、ストランドカッターにてチップ状に切断し、これを120℃で6時間真空乾燥してポリブチレンテレフタレート樹脂(D−1)を得た。これについて、固有粘度を測定したところ 1.01dl/gであった
【0035】
実施例、比較例
表1〜4に示した配合及びこれらに加え酸化安定剤(酸化安定剤(アデカ・アーガス化学株式会社AO−60、AO−412S)各0.2部を混合し、この混合物を260℃に加熱した二軸押出機に供給し、また、繊維状充填剤をサイドフィーダーにより溶融樹脂へ供給し混練してペレットを得た。
得られたペレットを20mmφ、35オンスのスクリューインライン成形機で、シリンダー温度250℃、金型温度60℃、にて各試験片を作成した。
得られた測定結果を表1〜4に示す。
なお、用いた原料には混合物が含まれるため、正味の配合量を「実際の配合部数」として記載した。
測定結果を表1〜4に示す。
【0036】
【表1】
【0037】
【表2】
【0038】
【表3】
【0039】
【表4】
【0040】
【発明の効果】
本発明の難燃性熱可塑性樹脂組成物によれば、繊維状充填剤強化ポリカーボネート系アロイ樹脂材料において、高度なレベルの耐薬品性、耐衝撃性、剛性、耐熱性を発現する。
Claims (11)
- アルキル(メタ)アクリレート単量体単位を含有するアクリルゴム、ジエン系ゴムとアクリルゴムが複合されたジエン−アクリル複合ゴム、シリコーン系ゴムとアクリルゴムが複合されたシリコーン−アクリル複合ゴムから選ばれるゴム質重合体(r)に、芳香族アルケニル化合物単量体(a)及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)を含有する単量体がグラフト重合されてなるグラフト共重合体(A)5〜59.5質量%と、
芳香族アルケニル化合物単量体(a)単位及び/又はシアン化ビニル化合物単量体(b)単位を含有する重合体(B)0〜54.5質量%と、
ポリカーボネート樹脂(C)40〜94.5質量%と、
芳香族ポリエステル樹脂(D)0.5〜55質量%((A)、(B)、(C)、(D)の合計量が100質量%)からなる樹脂組成物100質量部に対して、
難燃剤(E)1〜30質量部が配合された難燃性樹脂組成物60〜97質量%と繊維状充填剤(F)3〜40質量%((E)、(F)の合計量が100質量%)からなる難燃性熱可塑性樹脂組成物。 - アクリル系ゴム質重合体が、ジエン−アクリル複合ゴムであることを特徴とする請求項1の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- アクリル系ゴム質重合体が、シリコーン−アクリル複合ゴムであることを特徴とする請求項1の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 繊維状充填剤(F)が炭素繊維であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 繊維状充填剤(F)がガラス繊維であることを特徴とする請求項1〜3の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 芳香族ポリエステル樹脂(D)が、ポリブチレンテレフタレート樹脂および/またはポリブチレンナフタレート樹脂であることを特徴とする請求項1〜5の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 難燃剤(E)が臭素系難燃剤(G)および三酸化アンチモン(H)であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の難燃性難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 難燃剤(E)がリン系難燃剤(I)及び/又はテトラフルオロエチレン(J)であることを特徴とする請求項1〜6の何れか1項記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- リン系難燃剤(I)がリン酸エステル系難燃剤(K)であることを特徴とする請求項8記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- リン系難燃剤(I)が赤リン系難燃剤(L)であることを特徴とする請求項8記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
- 赤リン系難燃剤(L)が熱硬化性樹脂及び/又は金属水酸化物で被覆されてなる安定化された赤リンであることを特徴とする請求項10記載の難燃性熱可塑性樹脂組成物。
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