様々なX線装置が知られている。知られているX線装置の一部は固定式で移動できないが、その他のものは移動式で移動が可能である。しかしながら、従来の移動式X線装置は大型で重く、そのバッテリーには鉛と酸が含まれているため、環境に優しくない。さらに、X線管の高さ調整には、カウンターウェイトを用いたカウンターバランス機構が使用され、それによってさらに重量が増大し、高さのある垂直コラムは、移動時に移動式X線装置を操縦する人の前方の視界を妨げる。また、従来の移動式X線装置は大きすぎて運搬が困難である。
また、一般的に、従来のX線システムは、診察室の様々な場所に配置される多くの追加的コンポーネントを有している。そのような追加的構成要素としては、操作コンソール、画像検査のためのコンピュータ、固定式のX線発生器、様々なホルダー、別体の表示部などがある。
従って、X線イメージングのコンポーネントの数を軽減することが有益である。
また、既存の固定式X線システムの多くは、旧式のアナログ検出器を使用する。
従って、デジタルラジオグラフィー検出器が使用可能となるように、アナログ検出器を有するシステムをアップグレード、すなわち、改善する手段を提供することが有益である。
特許文献1には、移動式X線装置が開示されているが、この文献の図1からも分かるように、移動式システムは大きく、垂直コラムが移動時に移動式X線装置を操縦する人の前方の視界を妨げる。
従って、小型で軽量な移動式X線装置への改良が求められている。
無鉛・無酸のバッテリーを有する環境に優しい移動式X線装置が有益である。
また、移動式X線装置の駆動又は移動時に、装置の前方に何があるかを自由に見えるようにすることが有益である。
容易な運搬が可能な移動式X線装置もまた有益である。
従って、本開示の実施形態は、好ましくは、添付の特許請求の範囲に従うX線画像を生成するための装置、システム及び方法を提供することによって、上記に同定されたもののような、当該分野における1以上の欠点、不利益又は問題を、個々に、又は、あらゆる組合せで、軽減するか、緩和するか、又は、排除することを試みる。
本開示の一態様によれば、X線画像生成装置が提供され、この装置は、第1の空間位置に配置されたデジタルラジオグラフィー(DR)検出器と、前記第1の空間位置と相対的な距離にある第2の空間位置に位置決め可能なX線管アセンブリとを備え、さらに、前記第1の空間位置及び/又は前記第2の空間位置を提供する少なくとも一つのセンサーを備える。使用されるセンサーは、角度センサー、コンパス、傾斜計、ジャイロ、ポテンショメーター、エンコーダー及び/又はGPS受信器である。また、局所的GPS又は局所的センサーネットワークを用いることで、絶対的な位置決めが可能である。これらのシステムには、磁石及び/又は三角測量の使用が含まれていても良い。また、上記装置は、前記少なくとも一つのセンサーから前記第1の空間位置及び/又は前記第2の空間位置を受信する制御部を備える。制御部は、前記第1及び第2空間位置に基づき、前記X線管アセンブリと前記DR検出器を整列させるために、前記第2の空間位置又は前記第1の空間位置を制御するようになっている。また、前記装置は、任意で、駆動輪、ベース、伸縮アーム、及び/又は、昇降コラムを備えており、装置の迅速且つ容易な位置決めが可能となる。
本開示の別の態様によれば、X線画像生成システムが提供され、このシステムは、患者テーブルやウォールスタンドなどのワークステーションと、装置とを備える。この装置の制御部は、前記ワークステーションに配置される、角度センサー、コンパス、傾斜計、ジャイロ、ポテンショメーター、エンコーダー及び/又はGPS受信器などのセンサーによって提供されるデータに基づき、前記X線管アセンブリとワークステーションとを整列させるよう構成されている。使用するデータは、識別データや位置データを含む。また、ワークステーションの角度データが任意で含まれている。提供されるデータにより、実施形態では、X線管アセンブリとワークステーションとの位置合わせを簡素化又は簡易化する。
本開示のさらに別の態様によれば、X線画像生成システムが提供され、このシステムは、ウォールスタンド又は患者テーブルなどのワークステーションと、移動式X線装置などの装置とを備える。この装置のDR検出器は、前記ワークステーションに配置され、制御部は、前記第1及び第2空間位置、すなわち、DR検出器と移動式X線装置の位置に基づき、装置のX線管アセンブリと前記DR検出器を整列させるために、前記装置の少なくとも一つのアクチュエータを制御するよう構成されている。トラッキング部を使用することで、X線管アセンブリとDR検出器との自動的な位置合わせが可能となる。この位置合わせは、垂直面及び/又は水平面において行われる。
本開示のさらなる態様によれば、X線画像生成方法が提供され、この方法は、第1の空間位置にデジタルラジオグラフィー(DR)検出器を位置決めする工程と、前記第1の空間位置と相対的な距離にある第2の空間位置に移動式X線装置を位置決めする工程とを備えている。前記第1の空間位置及び/又は前記第2の空間位置は、少なくとも一つのセンサーから受信され、さらに、任意で、昇降コラムの高さ調整が行われる。伸縮アームの回転角度の調整が任意で行われる。また、任意で、伸縮アームの長さの調整も行われる。全ての調整は第1及び第2の空間位置に基づいて行われる。また、必要に応じて、前記第1及び第2の空間位置に基づき、X線管アセンブリと前記DR検出器とを整列させるため、前記X線管アセンブリを傾斜及び/又は回転させる工程が実行され、X線画像を取得する。
本開示の別の態様によれば、X線画像生成方法が提供され、この方法は、第1の空間位置にデジタルラジオグラフィー(DR)検出器を位置決めする工程と、前記第1の空間位置と相対的な距離にある第2の空間位置に移動式X線装置を位置決めする工程とを備えている。前記第1の空間位置及び/又は前記第2の空間位置は、少なくとも一つのセンサーから制御部に受信され、さらに、任意で、第1及び第2空間位置に基づき、昇降コラムの高さ調整が行われる。また、第1及び第2空間位置に基づき、伸縮アームの回転角度の調整が任意で行われる。また、任意で、第1及び第2空間位置に基づき、伸縮アームの長さ調整が行われる。さらに、必要に応じて、前記第1及び第2の空間位置に基づき、X線管アセンブリと前記DR検出器とを整列させるため、前記X線管アセンブリを傾斜及び/又は回転させる工程が実行され、X線画像を取得する。その後、DR検出器が再配置されても良い。また、移動式X線装置が再配置されても良い。そして、より多くのX線画像が得られる。DR検出器又は移動式X線装置の再配置、及び、X線画像の取得は、所望の数のX線画像が得られるまで継続されても良い。
本開示のさらなる態様によれば、X線画像生成装置が提供され、この装置は、駆動輪とベースとを備えている。ベースは、ベースに対して回転可能に固定される昇降コラムを備え、さらに、少なくとも駆動輪と昇降コラムを制御するようになっている制御部を備えている。また、ベースは、昇降コラムの周りを回転可能で、接合部において接続要素により昇降コラムに接続される、伸縮アームを備えている。これにより、伸縮アームと接続要素とは、昇降コラムの外側部の外側で自由に移動することが可能で、非常に低い高さ、つまり、昇降コラムの底部よりわずかに上の高さでX線画像を取得することができる。昇降コラムは、操縦者の前方の視野を妨げることがないので、上記装置は、より安全な操縦又は移動を可能にする。また、上記装置は小型で、容易に運搬することができる。これにより、移動式X線装置を迅速、容易且つ安全に運搬することが可能となる。
本開示の別の態様によれば、X線画像生成システムが提供され、このシステムは、ワークステーションと装置とを備える。この装置の制御部は、ワークステーションに配置された、角度センサー、コンパス、傾斜計、ジャイロ、ポテンショメーター、エンコーダー及び/又はGPS受信器によって提供されるデータに基づき、X線管アセンブリとワークステーションとの位置合わせを行うよう構成されている。使用するデータには、識別データや位置データが含まれ、ワークステーションの角度データが任意で含まれている。提供されるデータにより、実施形態では、X線管アセンブリとワークステーションとの位置合わせを簡素化又は簡易化する。
本開示のさらに別の態様によれば、X線画像生成システムが提供され、このシステムは、ワークステーションと装置とを備えている。ワークステーションは、移動可能なデジタルラジオグラフィー(DR)検出器と、少なくとも一つのセンサーから上記装置に対するDR検出器の空間データを受信するトラッキング部とを備えている。使用可能なセンサーは、角度センサー、コンパス、傾斜計、ジャイロ、ポテンショメーター、エンコーダー及び/又はGPS受信器である。また、局所的GPS又は局所的センサーネットワークを用いることで、絶対的な位置決めが可能である。これらのシステムには、磁石及び/又は三角測量の使用が含まれていても良い。上記装置の制御部は、上記空間データに基づき、装置のX線管アセンブリとDR検出器との位置を合わせるため、装置のアクチュエータを制御するよう構成されている。トラッキング部を用いることで、X線管アセンブリとDR検出器との自動的な位置合わせが可能となる。この位置合わせは、垂直面及び/又は水平面において行われる。
本開示のさらなる態様によれば、X線画像生成方法が提供され、この方法は、診察用の移動式X線装置を位置決めする工程を備えている。この方法において、移動可能なDR検出器のトラッキングが行われ、さらに、必要に応じて、昇降コラムの高さ調整が行われる。また、必要に応じて、伸縮アームの回転角度の調整も行われる。伸縮アームと接続要素は、昇降コラムの外側部より外側に配置されるので、伸縮アームの高さも調整することができる。また、伸縮アームの長さ調整も必要に応じて行われる。さらに、X線管アセンブリとDR検出器を位置合わせするため、X線管アセンブリを必要に応じて傾斜及び/又は回転させる。そして、X線画像を取得する。
本開示の別の態様によれば、X線画像生成方法が提供され、この方法は、移動式X線装置を位置決めする工程を備えている。移動可能なDR検出器のトラッキングが行われ、さらに、必要に応じて、昇降コラムの高さ調整が行われる。また、必要に応じて、伸縮アームの回転角度の調整も行われる。また、伸縮アームの長さ調整も必要に応じて行われる。さらに、X線管アセンブリとDR検出器を位置合わせするため、X線管アセンブリを必要に応じて傾斜及び/又は回転させる。そして、X線画像を取得する。さらに、移動可能なDR検出器を移動して、より多くのX線画像を取得できるようにしても良い。DR検出器の移動及びX線画像の取得は、所望の数のX線画像が得られるまで継続されても良い。
本開示のさらに別の態様によれば、移動式X線装置(101)が提供され、この移動式X線装置は、ベースと、デジタルラジオグラフィー(DR)検出器とを備えている。デジタルラジオグラフィー(DR)検出器は、移動式X線装置のベースに挿入可能である。また、デジタルラジオグラフィー(DR)検出器は、スロットに収納することもできる。
本開示のさらなる態様によれば、X線画像生成システムが提供され、このシステムは、ワークステーションと移動式X線装置とを備えている。この移動式X線装置は、ベースと、デジタルラジオグラフィー(DR)検出器とを備えている。デジタルラジオグラフィー(DR)検出器は、ワークステーションに対して位置決め及び/又は着脱が可能である。また、デジタルラジオグラフィー(DR)検出器は、移動式X線装置のベースのスロットに挿入可能であり、移動式X線装置のベースのスロットに収納可能である。
本開示のさらなる実施形態は、従属請求項において規定され、従属請求項では、本開示の第2及び後続の態様についての特徴は、第1の態様についてのものに必要に応じて変更を加えられたものである。
本開示のいくつかの実施形態は、ケーブルや電線を、昇降コラムの外側ではなく、昇降コラムの内側に配設することを可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、運搬時の小型化を可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、上記装置の迅速且つ容易な位置決めを可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、上記X線管の容易な位置決め及び傾斜を可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、上記装置の操作性を簡素化する。
本開示のいくつかの実施形態は、上記装置の簡易な制御を可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、上記X線管の容易な移動を可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、上記装置の運搬の際に、容易な高さ調整を可能にする。
本開示のいくつかの実施形態は、DRセンサーのトラッキングに基づき、上記装置を患者テーブルに沿って自動駆動し、X線管アセンブリとDRセンサーとの位置合わせを行うことができるので、患者の様々な部位の撮像を迅速且つ容易に行うことが可能となる。
「備える/備えている」という用語は、本明細書中で使用される場合、記述される特徴、数字、工程又は構成要素の存在を特定するものと解釈されるが、1以上の他の特徴、数字、工程、構成要素又はこれらの群の存在又は追加を除外しないことが強調されるべきである。
本発明の実施形態が可能とする上記及び他の態様、特徴及び利点は、添付の図面を参照する、以下の本発明の実施形態の説明から明らかとなる。
次に、本開示の具体的な実施形態について、添付の図面を参照しながら説明する。しかしながら、本開示は、多くの異なる形態で実施可能であり、本明細書中に示される実施形態に限定して解釈されるべきではない。これらの実施形態は、本開示が、徹底的且つ完全であり、そして、当業者に本開示の範囲を完全に伝えるように提供される。添付の図面に示される実施形態の詳細な説明において使用される専門用語は、本開示を限定するものではない。図面において、同様の参照番号は同様の要素を示す。
以下の説明は、X線画像生成装置、特に、移動式X線装置に適用可能な本開示の実施形態に焦点を合わせたものである。しかしながら、本開示は、このような適用に限定されるものではなく、例えば、固定式X線装置をはじめとするその他多くのX線画像生成装置に適用可能であることが理解されるであろう。
図1は、移動式X線装置101の側面図であり、移動式X線装置101の主要構成要素が示されている。移動式X線装置101は、前方対17と後方対1の2組の車輪に支持されたベースを備え、後方対1には独立してモーターが取り付けられ、駆動輪として機能する。また、前方対は、駆動輪として利用される。また別の代案としては、駆動輪として一つの車輪しか使用しない。ここでは4つの車輪を説明するが、その他実現可能な任意の数の車輪を使用可能であることが理解されるべきである。上記駆動輪は、運搬時に駆動ハンドル3を介してユーザーからユーザー入力を受け取る制御部2によって制御されている。ベース100にはまた、電動コラムも取り付けられている。該コラムは、昇降コラム4であっても良い。昇降コラム4は、ベース(100)に対して回転可能に固定されている。昇降コラム4は、ユーザーによって、制御部2を利用して駆動ハンドル3を介して制御されている。このように、制御部2は、昇降コラム4及び/又は駆動輪を制御するようになっている。昇降コラム4の外側コラム部には、回転可能な伸縮アーム5が、昇降コラム5の周りを伸縮アーム5と共に回転可能な接続要素6によって接合部において取り付けられている。このように、伸縮アーム5は、接合部において昇降コラム4の周りを回転可能な接続要素6によって、昇降コラム4に接続されている。伸縮アーム5は、バランスが保たれ、昇降コラム4の外側部の外側で、接続要素と共に自由に移動可能である。一実施形態において、接続要素は、回転運動を行うため、モーターなどのアクチュエータを備えている。このアクチュエータは、非カウンターウェイト型及び/又は非バランス型アクチュエータであることが好ましい。このように、上記ベースは、昇降コラム4の外側に位置し、伸縮アーム5の動作を作動させるためのアクチュエータを備えており、このアクチュエータは、非カウンターウェイト型及び/又は非バランス型アクチュエータであることが好ましい。アクチュエータは、昇降コラム4の外側で摺動可能である。伸縮アーム5の端部には、X線管アセンブリが取り付けられている。このX線管アセンブリは、X線管7とコリメータ8とを備えている。X線管アセンブリは、伸縮アーム5の中心軸の周りを回転9及び傾斜10することが可能である。X線管アセンブリは、360度回転しても良い。X線管アセンブリの移動やコリメータの光照射野は、任意に電動式とすることが可能である。伸縮アーム5及び接続要素が、先行技術にあるように昇降コラムの内側ではなく、昇降コラム4の外側部の外側に位置しているので、昇降コラム4の内側のスペースを、伸縮アームやX線管アセンブリの電線設置などの他の目的に使用可能である。X線管に転送されるエネルギーは、内蔵型の高電圧発生器11によって生成される。また、移動式X線装置101は、画像システムPC12と、グラフィック制御/画像プレビュースクリーンと、DR検出器スロット又はフラットパネル検出器(FPD)スロット14、つまり、FPDの収納用スロットとをさらに備えている。このスロットは、高密度ラインスキャン固体検出器などの他のタイプのDR検出器に用いられても良い。画像システムPC12は、画像処理に利用される。画像のプレビューがグラフィックスクリーンに表示される。それに加えて、もしくは、その代わりに、スクリーンには、発生器設定及び/又はシステム情報が表示される。スクリーンには、患者情報、予約リスト、診察のための様々な設定、画像設定、露出設定も表示可能である。一実施形態において、上記スクリーンは、タッチスクリーンであり、データの閲覧と入力を可能にしている。FPDは、画像システムPCに無線で接続されている。FPDのバッテリーは、FPDがFPDスロットに位置している時に充電される。FPDスロットはまた、運搬時にFPDを保護する。装置全体への電力供給は、一つ又は数個の内蔵バッテリー15を用いて行われる。バッテリー15は、一実施形態において、無鉛・無酸なので、環境に優しいバッテリーである。
図2は、移動式X線装置の上面図であり、好ましい車輪の位置を示す。後輪1が一対と、前輪17が一対あることが好ましい。図2には、運搬時の伸縮アーム5の位置も示されている。運搬時、伸縮アームは、移動式X線装置上の運搬位置に配置されている。つまり、伸縮アーム5は、運搬のため、ベース100上の位置へと回転可能な位置決めが可能である。これにより、移動式X線装置の小型化が可能となる。伸縮アーム5を上記運搬位置に配置するために、伸縮アーム5がどこに位置しているかによって、伸縮アームを昇降コラム4で上昇又は降下させることで、伸縮アーム5はベース100の上部より若干上に位置する。その後、伸縮アームは、ベース100上の位置へと回転される。そして、伸縮アーム5の降下、つまり、ロック位置への降下が可能である。伸縮アーム5は、安全な運搬のため、任意でロック位置に固定されても良い。
図3aは、駐車位置にある駆動ハンドル3の側面図であり、図3bは運転位置にある駆動ハンドル3の側面図である。このように、これらの図は、駆動ハンドル3の異なる位置を示している。図3aでは、駆動ハンドルは運転位置にあるので、移動式X線装置の移動又は駆動が可能である。図3bでは、駆動ハンドル3は降下されて駐車位置にある。駆動ハンドル3が駐車位置にある場合、ユーザーは移動式X線装置を運搬又は移動することができない。しかしながら、一実施形態において、患者テーブルに沿ってなどのように、駆動ハンドル3が駐車位置にある場合にも、移動式X線装置を自動的に移動させることは可能である。駆動ハンドルが駐車位置にあっても、移動式X線装置をジョグモードでゆっくりと移動させることもできる。一実施形態では、駆動ハンドル3は、歪みゲージ又は歪みゲージ変換器によって、X線管7に接続され、一体化されており、それにより、運搬中におけるX線管7の移動及び/又は装置の移動が容易になる。また、駆動ハンドル3には、ユーザー入力を制御部2へ転送するようになっているユーザーインターフェースが備えられていても良い。X線管7は、細長い形状を有し、駆動ハンドル3は、細長いX線管7のそれぞれの端部で、X線管7と一体に接続される。駆動ハンドルの高さ調整は、両端、すなわち、細長いX線管7の端部に位置している。駆動ハンドル3は、移動式X線装置の移動、例えば、運搬中のX線装置の移動や、X線管アセンブリの位置決めを制御するために使用可能である。
図4は、ワークステーションを示す。この図に示すワークステーションは、患者テーブル400である。患者401のX線画像は、移動式X線装置101によって生成することができる。一実施形態において、デジタルラジオグラフィー(DR)検出器402は、患者テーブル400に沿って、異なる位置の間を手動又は自動で移動する。上記異なる位置とは、撮像される患者の異なる部位に対応する。DR検出器がある位置から他の位置に移動された場合、移動式X線装置は、その移動を追跡し、X線管アセンブリとDR検出器とを整列させる。この整列は、一実施形態において、単に移動式X線装置を車輪の方向に移動させることによって行われても良く、すなわち、制御部2は、駆動輪を制御し、移動式X線装置とDR検出器とが整列するまで駆動輪を駆動することで、移動式X線装置を移動しても良い。このように、本実施形態では、上記追跡が一水平方向でのみ行われる。しかしながら、複数の方向でも追跡を行うことが可能であることが理解されるべきである。よって、いくつかの実施形態では、3次元で追跡が行われ、移動式X線装置及び/又はX線管アセンブリの移動が適切なアクチュエータを用いて3次元で行われる。追跡は、いくつかの実施形態では、角度センサー、コンパス、傾斜計、ジャイロ及び/又はGPS受信器などの様々なセンサーを用いて行われる。いくつかの実施形態では、X線管アセンブリとDR検出器402の両方にセンサーが取り付けられる。DR検出器からのセンサー信号は、直接又は移動式X線装置上に位置する追跡部を介して、制御部2へと無線で送信可能である。追跡部又は制御部2は、センサーから位置データなどの空間データを受け取る。この空間データは、第1の空間位置、例えば、DR検出器の位置に関連するデータであっても良い。その代わり、もしくは、それに加えて、上記空間データは、第2の空間位置、例えば、移動式X線装置の位置に関連するものであっても良い。追跡部によって受信したデータには、さらに、識別データ、位置データ、角度データ、チェックサムが含まれていても良い。仮に別の追跡部を用いた場合、制御部2は、その追跡部からデータを受信する。上記装置の制御部2は、装置のアクチュエータを制御し、上記空間データに基づいて、装置のX線管アセンブリとDR検出器とを整列させるよう構成されている。追跡部の使用により、X線管アセンブリとDR検出器を自動的に整列させることが可能となる。その代案として、追跡部を制御部2の一部としても良い。DR検出器402に用いられるセンサーは、スナップ式のホルダーを利用し、DRセンサーから容易に着脱できることが好ましい。
図5は、患者テーブル400と移動式X線装置の上面図である。図5から、移動式X線装置の伸縮アーム5が、患者テーブル400と垂直になるよう回転していることが分かる。移動式X線装置は、患者テーブル400と並行に設置されているので、患者401の複数の部位の撮像が必要な場合は、移動式X線装置を患者テーブル400に沿って駆動することが可能である。一実施形態では、移動式X線装置は、床にある磁気トラックなどのトラックに従って、患者テーブル400に沿って駆動される。本実施形態では、制御部2は、磁気トラックから取り出された位置データに応じて、移動式X線装置の移動を制御しても良い。上記位置データには、IDデータ及び/又はチェックサムが含まれていても良い。また、制御部2は、磁気トラックからの位置データとDR検出器402から受信した位置データとを比較し、この比較に基づいて、X線管アセンブリとDR検出器402との整列を行っても良い。使用されるトラックは、磁気トラックに代わって、機械的なトラック又はレールであっても良く、トラックは床上にある必要はない。その代わりに、トラックは、天井、壁、又は、患者テーブルなどのテーブル上にあっても良い。機械的レールを使用する場合、位置データは、電線を介して、又は、無線で、ポテンショメーターやエンコーダーなどの位置センサーから、制御部2へ送信されても良い。トラックを使用する代わりに、光学式マークや印を移動式X線装置で追跡しても良い。別の実施形態では、移動式X線装置は、ワークステーション又はワークステーションに近接して取り付けられる機械アームによって、その移動がガイドされても良い。本実施形態では、移動式X線装置の位置が分かっている、つまり、予め決まっているので、位置データを検索する必要がない。
図6に示す実施形態では、DR検出器402の追跡が垂直方向に行われている。DR検出器402が追跡されると、X線管アセンブリは、昇降コラム4でX線管アセンブリの高さを調整することで、DR検出器402から適切な距離に位置決めされる。
図7は、別の実施形態を示し、X線管アセンブリとDR検出器402とを整列させるために、昇降コラム4によって、X線管アセンブリの高さが調整されている。本実施形態では、DR検出器は、別のタイプのワークステーション、すなわち、ウォールスタンド700のホルダー404内に設置されている。本実施形態では、DR検出器402を有するホルダー404は、患者401のどの部位を撮像するかによって、様々な高さの様々な位置へと移動可能である。一実施形態では、モーターなどのアクチュエータを利用して、ホルダー404を自動的に様々な位置へと移動する。このアクチュエータは、制御部2から無線送受信機を介して、無線で制御可能である。
図8は、X線管アセンブリの様々な位置を示す。X線管アセンブリは、追跡動作に応答して、昇降コラム4を移動させることで、位置800、802、804へと配置され、この動作によってDRセンサー402が位置806、808、810の内の一つに追跡される。一実施形態では、DR検出器402の代わりに、実際のホルダー404が追跡される。従って、本実施形態では、追跡用センサーは、ホルダー404内又はそれに近接して配置され、センサー信号は、制御部2に無線で送信される。
図9は、ウォールスタンド700と移動式X線装置の側面図であり、X線管アセンブリ702が傾斜した状態を示す。この図では、X線管アセンブリ702が傾斜している。一実施形態では、X線管アセンブリ702は、まず、手動又は自動で、適切な角度に傾斜される。次に、昇降コラム4に対するX線管アセンブリ702の角度に基づき、DR検出器402が追跡され、X線管アセンブリ702が昇降コラム4によって適切な高さまで上昇する。上記角度は、必要に応じて、例えば、角度センサーや傾斜計によって測定が可能である。X線管アセンブリ702の高さ調整は、DR検出器402と移動式X線装置との距離に基づいて行うことができる。この距離は、磁気トラックとDR検出器から受信した位置データから算出できる。また、機械的レールを使用する場合、位置データは、電線を介して、又は、無線で、ポテンショメーターやエンコーダーなどの位置センサーから、制御部2へ送信されても良い。また別の代替案としては、光学式マークから距離が得られ、例えば、一定の光学式マークに所定の距離が与えられている。傾斜したX線管は、トモグラフィー画像、トモシンセシス、パノラマ画像への画像のつなぎ合わせ、ワークステーションやDR検出器の自動追跡にも利用可能である。追跡は、例えば、振り子式追跡として行うことが可能である。
図10aは、近接センサーを備えた移動式X線装置の側面図である。この図から分かるように、近接センサー1002は、移動式X線装置のベース100の前方に位置している。近接センサー1002は、物理的接触なしに、隣接する物体の存在を検出することができる。近接センサー1002が、移動式X線装置の移動経路を妨害する物体を検出すると、ユーザーは、移動式X線装置の移動を停止できるよう警告されても良い。代替法としては、近接センサー1002が移動式X線装置の前に物体を検出した場合、移動式X線装置を自動的に停止させても良い。
図10bには、いくつかの近接センサー1002が示されている。これらの近接センサー1002は、ベース100の前部にわたって配置されており、近接センサー1002は各々隣の近接センサー1002との距離が短い。5つの近接センサー1002が図示されているが、その他実現可能な任意の数の近接センサーを使用可能であることが理解されるべきである。
図11a及び図11bに示す別の実施形態では、ベース100の前部に、カメラ又はビデオカメラ1102が搭載されている。ビデオカメラ1102からの画像はスクリーンに送られ、それによってユーザーは移動式X線装置の運搬中に移動式X線装置の前方に何があるかが分かる。一実施形態において、移動式X線装置は、近接センサー1002と、少なくとも一台のカメラ1102を備えている。カメラ及び/又は近接センサーを用いることで、移動式X線装置を安全に移動及び/又は運搬することが可能になる。
図12a乃至図12cに示すいくつかの実施形態では、移動式X線装置101は、DR検出器スロット14(図1に概略的に示す)を備えている。DR検出器スロット14は、DR検出器402やアナログカセットなどの画像レセプター1204の収納に利用されても良い。放射線検査の多くでは、散乱したX線によって生じる画像中のノイズを抑えるために、グリッド部1202が用いられる。グリッド部1202は、基本的に、薄いカバーの形状を有し、画像レセプター1204を囲んでいても良い。すなわち、画像レセプター1204は、グリッド部1202内に配置されても良い。このように、例えば、グリッド部1202及び/又は画像レセプター1204が使用されていない時に、画像レセプター1204の有無にかかわらず、グリッド部1202をDR検出器スロット14内に収納することも可能である。画像レセプター1204及びグリッド部1202がいずれもスロット14に収納されている場合、ユーザーは、画像レセプター1204を、その上に搭載されたグリッド部1202と共に取り出すのか、それともグリッド部1202無しで取り出すのかを選択しても良い。
画像レセプター1204は、グリッド部1202がベース部100内にある場合、画像レセプター1204を若干傾斜させて挿入することで、スロット14内に設置しても良い。このように、画像レセプター1204を傾斜させて挿入することで、ユーザーの腕の筋肉の緊張が緩和されるので、ユーザーに良好なエルゴノミクスが与えられる。このように傾斜した挿入は、また、重力により画像レセプター1204の設置を簡素化する。さらに、スロット14の床からの高さは、ユーザーに良好なエルゴノミクスが与えられるよう選択されても良い。一例としては、スロット開口は、床面高さから50〜150cm、好ましくは、60〜80cmの位置に設定しても良い。
画像レセプター1204は、スロット開口から侵入すると、スロット14の底部へと滑り降りる。画像レセプター1204は、スロット14の底部に到達すると、内部でロックされる。このロック機構は、機械的バネ機構などであっても良い。
グリッド部1202を搭載した画像レセプター1204の設置は、グリッド部1202がベース部100内にある場合の画像レセプター1204のスロット14への設置と同様に行われる。
画像レセプター1204の取り外しは、ユーザーが単に取り出しを行うことでなされてもよい。取り出しは、画像レセプター1204の可視側を押すことで行われても良い。取り出しが行われると、画像レセプター1204は自動的に2〜30cm、好ましくは、10〜15cm外へ押し出される。この押し出しは、例えば、機械的バネ機構によって行われても良い。画像レセプター1204がこの取出し位置にあると、検査のために、必要に応じて、プラスチック保護袋を画像レセプター1204の上及び/又は周りに容易に取付け可能である。一般的に、プラスチック保護袋は、画像レセプター1204が液体と接触してしまう可能性のある用途に用いられる。さらに、画像レセプター1204が取出し位置にある間、ユーザーは、グリッド部1202をベース部100内に残したまま画像レセプター1204を両手で安全に掴んで引き出しても良い。こうして、画像レセプター1204の取出し中も、ユーザーに良好なエルゴノミクスが与えられる。
また、グリッド部1202を搭載したベース部100から画像レセプター1204を取り出しても良い。グリッド部1202がベース部100の内側、画像レセプター1204がベース部100の外側にある場合、ユーザーは、画像レセプター1204をベース部100とグリッド部1202とに設置しても良い。これは、ユーザーがグリッド選択装置の起動により行っても良く、このグリッド選択装置は機械的な装置であることが好ましい。その後、ユーザーは、画像レセプター1204の可視側を押して取出しを行う。取出しが行われると、画像レセプター1204は自動的に10〜15cm外へ押し出される。この押し出しは、例えば、機械的バネ機構によって行われても良い。画像レセプター1204がこの取出し位置にあると、検査のために、必要に応じて、画像レセプター1204を含むグリッド部1202の上及び/又は周りにプラスチック保護袋を容易に取付け可能である。さらに、画像レセプター1204を含むグリッド部1202が取出し位置にある間、ユーザーは、グリッド部1202を両手で安全に掴んで、ベース部100から画像レセプター1204と共にグリッド部1202を引き出しても良い。こうして、画像レセプター1204を含むグリッド部1202の取出し中も、ユーザーに良好なエルゴノミクスが与えられる。
また、代替法として、ユーザーが、スロット14の外側でグリッド部1202の取付・取外しを行っても良い。
従来のX線システムと比較して、本開示の移動式X線装置は、より少ない構成要素からなる。一例として、本開示のX線装置は、通常従来のX線システムで用いられる追加的な操作コンソールや画像診断のための追加的なコンピュータ、固定式X線発生器、別体の表示部、ホルダーを必要としない。このように、よりシンプルで費用効率の高いX線システムが提供される。さらに、新規の移動式X線システムを固定システムとして利用することで、移動式でありながら固定式X線システムに取って替わることができる。
さらに、本開示の移動式X線装置によれば、アナログ検出器を備えるシステムを、DR検出器を利用したものに容易にアップグレードすることができる。これは、上記システムのアップグレードに必要な追加の構成要素が、移動式X線装置のみであるからである。
本開示を具体的な実施形態に沿って説明してきたが、本開示の範囲内で、上記以外の他の実施形態も同様に可能であり、上記以外の方法の工程を備え得る。本開示の特徴及び工程を、上記以外の組合わせで組み合わせても良い。本開示の範囲は、添付の特許請求の範囲によってのみ限定される。より一般的には、当業者は、本明細書中に記載されるあらゆるパラメーター、寸法、素材及び構成が、例示的であること、そして、実際のパラメーター、寸法、素材及び/又は構成は、本開示の技術が使用される特定の用途に依存することを容易に理解する。