JP2014505869A - 質量分析によるインスリンの定量 - Google Patents

質量分析によるインスリンの定量 Download PDF

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Abstract

試料中のインスリンの量を決定する方法が記載される。より具体的には、タンデム質量分析又は高分解能/高精度質量分析技術と合せて精製法を利用して生物学的試料中のインスリンを検出及び定量するための質量分析法が記載される。

Description

関連特許出願
本出願は、その全体として、またすべての目的のために参照により本明細書に組み込まれる、2010年12月28日に出願の米国仮出願第61/427,749号の利益を主張するものである。
発明の分野
本発明は、インスリンの定量的測定に関する。特定の態様において、本発明は、質量分析によるインスリンの定量的測定の方法に関する。
発明の背景
本発明の背景の以下の記述は、単に本発明を理解するうえでの一助として示すものであって、本発明の先行技術を記述又は構成するものと認めるものではない。
インスリンは、システイン残基の間のジスルフィド架橋により連結されたA鎖及びB鎖と表される2つの鎖における51個のアミノ酸からなる小ペプチドである。ヒトインスリンは、約5607.4amuの分子質量を有する。A鎖は、21個のアミノ酸を有し、B鎖は、30個のアミノ酸を有する。
インスリンは、体内の脂肪及びステロイド代謝を調節する中心的なホルモンである。血糖値が食後に上昇するとき、インスリンが血流中に放出され、グルコースの循環から細胞内への輸送を可能にする。
インスリンの産生又は利用の欠如により、糖尿病がもたらされる。インスリンは、糖尿病の治療のためにしばしば投与される。糖尿病及びその合併症は、重大な公衆衛生上の問題である。したがって、糖尿病及び糖尿病前症(pre-diabetic)患者の試料中のインスリンの定量は、診断ツールとしてもまた患者の治療をモニタリングするためにも重要である。
免疫学的技術がインスリンの定量に広く用いられ(例えば、Manleyら、Clin Chem.、2007年、53巻、922〜32頁参照)、インスリンの検出及び/又は定量のためのいくつかの質量分析法が報告された。例えば、Stocklin R.ら、Diabetes、1997年、46巻、44〜50頁(免疫アフィニティークロマトグラフィー−固相抽出−HPLC−シングル質量分析による血清試料中のインスリンの定量を報告している)、Darby S. M.ら、J. Anal Toxicol、2001年、25巻、8〜14頁(生理的レベル超の血漿中インスリンのSPE−HPLC−MS定量を報告している)、Fierens C.ら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2001年、15巻、1433〜41頁(HPLC−(ESI)MS/MSによる水溶液中のインスリンの検出を報告している)、Magnes, C.ら、52nd ASMS Conference、2004年5月(高分解能/高精度質量分析による血清中のインスリンの定量を報告している)、Thevis, M.ら、Anal. Chem.、2005年、77巻、3579〜85頁(血漿からのインスリンの定量及びインスリンB鎖の検出のための免疫アフィニティークロマトグラフィー−固相抽出−HPLC−タンデム質量分析法を報告している)、Thevis, M.ら、Anal. Chem.、2006年、77巻、3579〜85頁及びThomas, A.ら、Anal. Chem.、2007年、79巻、2518〜24頁(血漿からのインスリンの定量及びインスリンB鎖の検出のための固相抽出−免疫アフィニティークロマトグラフィー−固相抽出−HPLC−タンデム質量分析法を報告している)、Uytfanghe, K.ら、Rapid Comm Mass Spectrom.、2007年、21巻、819〜821頁(血清からのインスリンの定量のための免疫アフィニティークロマトグラフィー−固相抽出−HPLC−タンデム質量分析法を報告している)、Rodriguez-Cabaleiro D.ら、Clin Chem.、2007年、53巻、1462〜69頁(血漿からのインスリンの定量及びインスリンB鎖の検出のための免疫アフィニティークロマトグラフィー−固相抽出−HPLC−タンデム質量分析法を報告している)、Thevis, M.ら、Mass Spectrom. Reviews、2008年、27巻、35〜50頁(血漿からのインスリンの定量及びインスリンB鎖の検出のための免疫アフィニティークロマトグラフィー−固相抽出−HPLC−タンデム質量分析法を報告している)並びにGuedes, S.、J. Am Soc Mass Spectrom、2009年、20巻、1319〜26頁を参照のこと。
発明の要旨
本発明は、質量分析により試料中のインスリンの量を決定する方法を提供する。
1つの態様において、本方法は、タンデム質量分析を用いる。いくつかのタンデム質量分析実施形態において、本方法は、ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するためのものである。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)試料からインスリン濃縮画分を得るために、試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ;(b)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンイオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリン(enriched insuline)をイオン化源(ionization source)に供するステップ;(c)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンイオンの量を決定するステップとを含み、前記試料は、イオン化の前に免疫精製に供されていない。これらの実施形態において、ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンの量を用いて、試料中のインスリンの量を決定する。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に、試料は酸性条件に供される。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップは、濃縮インスリンをギ酸に供するステップを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、1162.5±0.5及び968.9±0.5の質量電荷比(mass to charge ratio)(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるインスリン前駆イオンを含む。さらなる関連実施形態において、ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。他の関連実施形態において、1つ又は複数のフラグメントイオンは、1162.5±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び968.9±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。関連実施形態において、各前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンは、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に、試料は塩基性条件に供される。いくつかの関連実施形態において、試料を塩基性条件に供するステップは、試料をアンモニアに供するステップを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、1453.8±0.5及び1163.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるインスリン前駆イオンを含む。さらなる関連実施形態において、ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。他の関連実施形態において、1つ又は複数のフラグメントイオンは、1453.8のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び1163.0±0.5の質量電荷比を有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
試料中のインスリンの量を決定するためにタンデム質量分析を用いるいくつかの実施形態において、方法は、(a)抽出技術により試料中のインスリンを濃縮するステップ;(b)試料からインスリン濃縮画分(fraction enriched in insulin)を得るためにステップ(a)からの精製インスリンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ;(c)質量分析により検出できるインスリン前駆イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンをイオン化源に供するステップであって、ここでインスリン前駆イオンは1162.5±0.5のm/zを有する、ステップ;(d)質量分析により検出できる1つ又は複数のフラグメントイオンを発生させるためにインスリン前駆イオンを約40〜70eVの範囲内の衝突エネルギーでの衝突誘起解離に供するステップ;(e)質量分析により1つ又は複数の前記フラグメントイオンの量を決定するステップを含む。これらの実施形態において、ステップ(e)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける。いくつかの実施形態において、抽出技術は、固相抽出(SPE)である。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に試料を酸性条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップは、試料をギ酸に供するステップを含む。代替実施形態において、イオン化の前に試料を塩基性条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を塩基性条件に供するステップは、アンモニアを含む。
いくつかの実施形態において、衝突エネルギーは、例えば、約40〜50eVの範囲内などの約40〜60eVの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で発生する1つ又は複数のフラグメントイオンは、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む。
ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するためにタンデム質量分析を用いるいくつかの実施形態において、方法は、(a)試料を、インスリンからインスリンA鎖を得るのに適する条件に供するステップ;(b)インスリンA鎖濃縮画分を得るために、ステップ(a)からの試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ;(c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンA鎖イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンA鎖をイオン化源に供するステップ;(d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンA鎖イオンの量を決定するステップを含む。これらの実施形態において、ステップ(d)で決定されるイオンの量を、前記試料中のインスリンの量に関連付ける。
いくつかの関連実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に試料を酸性条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップは、前記試料をギ酸に供するステップを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(a)で得られるインスリンA鎖は、イオン化の前に化学的に改変されない。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1192.9±0.5及び795.4±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるインスリンA鎖前駆イオンを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1192.9±0.5のm/zを有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び795.4±0.5のm/zを有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。いくつかの関連実施形態において、各前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンは、513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
代替実施形態において、方法は、イオン化の前にステップ(a)で得られるインスリンA鎖を化学的に改変するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、化学的改変は、インスリンA鎖をアルキル化するステップを含む。さらなる関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1306.0±0.5及び871.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるアルキル化インスリンA鎖前駆イオンを含む。他の関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。他の関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1306.0±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び871.0±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。いくつかの関連実施形態において、各アルキル化前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンは、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
いくつかの実施形態において、生物学的試料中のインスリンの量を決定するためにタンデム質量分析を用いる。これらの実施形態において、方法は、(a)試料を、インスリンからインスリンB鎖を得るのに適する条件に供するステップ;(b)インスリンB鎖濃縮画分を得るためにステップ(a)からの試料を処理するステップ;(c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンB鎖イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンB鎖をイオン化源に供するステップ;(d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンB鎖イオンの量を決定するステップを含む。これらの実施形態において、ステップ(d)で決定されるイオンの量を、試料中のインスリンの量に関連付ける。
いくつかの実施形態において、ステップ(b)の処理は、固相抽出(SPE)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)又は両方によりインスリンB鎖を濃縮するステップを含む。SPE及びHPLCの両方を用いるいくつかの関連実施形態において、2つの濃縮技術は、オンライン式で実施することができる。
いくつかの実施形態において、生物学的試料は、ヒト血漿又は血清試料を含む。いくつかの関連実施形態において、決定されるインスリンの量は、ヒトから採取した場合の試料中に存在するインスリンの量である。
いくつかの実施形態において、イオン化源は、加熱ESI源などのエレクトロスプレーイオン化(ESI)源である。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に試料を酸性条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップは、前記試料をギ酸に供するステップを含む。
いくつかの実施形態において、インスリンB鎖をイオン化の前に化学的に改変しない。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるインスリンB鎖前駆イオンを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、906.0±0.5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群、例えば、768.5±0.5、753.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群など、例えば、768.5±0.5及び753.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群などから選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1144.2±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン、858.3±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン及び686.8±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオンからなる群から選択される2つ以上のフラグメントイオンを含む。
いくつかの実施形態において、タンデム質量分析は、686.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するヒトインスリンB鎖前駆イオンを発生させるステップと、前駆イオンを906.0±0.5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオン、例えば、768.5±0.5及び753.0±0.5からなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンなどにフラグメント化するステップとを含む。
いくつかの実施形態において、タンデム質量分析は、10〜25V(端点を含む)の範囲内の衝突エネルギーを用いて前駆イオンをフラグメント化するステップを含む。
代替実施形態において、インスリンB鎖をイオン化の前に化学的に改変する。いくつかの実施形態において、化学的改変は、前記インスリンB鎖をアルキル化するステップを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1181.9±0.5、886.9±0.5及び709.8±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるアルキル化インスリンB鎖前駆イオンを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1181.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン、886.9±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン及び709.8±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオンからなる群から選択される2つ以上のフラグメントイオンを含む。いくつかの関連実施形態において、各前駆イオンからのフラグメントイオンは、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるイオンを含む。
第2の態様において、本明細書に示す特定の方法は、試料中のインスリンの量を決定するために高分解能/高精度質量分析を利用する。高精度/高分解能質量分析を利用するいくつかの実施形態において、方法は、(a)多価インスリンイオンを発生させるのに適する条件下で試料からのインスリンをイオン化源に供するステップであって、ここでインスリンイオンは質量分析により検出できる、ステップ;および(b)高分解能/高精度質量分析により1つ又は複数の多価インスリンイオンの量を決定するステップを含む。これらの実施形態において、ステップ(b)で決定される1つ又は複数のイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける。いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析を10,000のFWHM及び50ppmの質量精度(mass accuracy)で行う。いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析を高分解能/高精度飛行時間(TOF)型質量分析計を用いて行う。いくつかの実施形態において、イオン化条件は、酸性条件下でのインスリンのイオン化を含む。いくつかの関連実施形態において、酸性条件は、イオン化の前のギ酸による前記試料の処理を含む。いくつかの実施形態において、多価インスリンイオンは、4+、5+及び6+価インスリンイオン(4+, 5+, and 6+ charged insulin ions)からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、6+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、約968.8±1.5の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含む。いくつかの実施形態において、6+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、968.28±0.1、968.45±0.1、968.62±0.1、968.79±0.1、968.95±0.1、969.12±0.1、969.28±0.1、969.45±0.1、969.61±0.1のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオン、例えば、968.95±0.1のm/zを有するイオンなどを含む。
いくつかの実施形態において、5+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、約1162.5±1.0の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含む。いくつかの実施形態において、5+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、1161.72±0.1、1161.92±0.1、1162.12±0.1、1162.32±0.1、1162.52±0.1、1162.72±0.1、1162.92±0.1、1163.12±0.1、1163.32±0.1のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオン、例えば、1162.54±0.1のm/zを有するイオンなどを含む。
いくつかの実施形態において、4+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、約1452.9±0.8の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含む。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、試料は、生物学的試料を含み得る。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、尿、血漿又は血清などの生体液を含み得る。いくつかの実施形態において、生物学的試料は、ヒト、例えば、成人男性若しくは女性、又は若年男性若しくは女性からの試料を含み得る。ここで、若年は、18歳未満、15歳未満、12歳未満又は10歳未満である。ヒト試料は、病状若しくは状態を診断若しくはモニターするために、又は病状若しくは状態の治療効力をモニターするために分析することができる。いくつかの関連実施形態において、本明細書で述べる方法は、ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するために用いることができる。
タンデム質量分析を利用する実施形態において、タンデム質量分析は、例えば、多重反応モニタリング、前駆イオンスキャニング又はプロダクトイオンスキャニングを含む、当技術分野で公知の方法により実施することができる。
いくつかの実施形態において、タンデム質量分析は、前駆イオンを1つ又は複数のフラグメントイオンにフラグメント化するステップを含む。2つ以上のフラグメントイオンの量を決定する実施形態において、測定されたイオン量を試料中のインスリンの量に関連付けるために、該量を当技術分野で公知の任意の数学的操作に供することができる。例えば、試料中のインスリンの量を決定するステップの一部として、2つ以上のフラグメントイオンの量を合計することができる。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、対象の被分析物(analyte)(例えば、インスリン、化学的に改変された若しくは改変されていないインスリンA鎖又は化学的に改変された若しくは改変されていないインスリンB鎖)は、イオン化の前に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により試料から精製することができる。本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、対象の被分析物は、例えば、試料を固相抽出(SPE)カラムに供することなどの抽出技術により試料から精製することができる。いくつかの実施形態において、抽出技術は、免疫精製技術でない。具体的には、いくつかの実施形態において、SPEカラムは、免疫アフィニティーカラムでない。いくつかの実施形態において、免疫精製は、方法のいずれの段階においても用いない。いくつかの実施形態において、抽出技術及びHPLCは、自動化された試料の処理及び分析を可能にするためにオンライン式で実施することができる。
いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析は、約10,000以上、例えば、約15,000以上など、例えば、約20,000以上など、例えば、約25,000以上などの分解能(FWHM)で実施する。いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析は、約50ppm以下、例えば、約20ppm以下など、約10ppm以下など、約5ppm以下など、約3ppm以下などの精度で実施する。いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析は、約10,000以上の分解能(FWHM)及び約50ppm以下の精度で実施する。いくつかの実施形態において、分解能は、約15,000以上であり、精度は、約20ppm以下である。いくつかの実施形態において、分解能は、約20,000以上であり、精度は、約10ppm以下であり、好ましくは、分解能は、約20,000以上であり、精度は、約5ppm以下、例えば、約3ppm以下などである。
いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析は、オービトラップ型質量分析計、飛行時間(TOF)型質量分析計又はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質量分析計(時としてフーリエ変換質量分析計として公知である)を用いて実施することができる。
いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンイオンは、約1452.9±0.8、1162.5±1及び968.8±1.5の範囲内のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンである。これらの範囲内のイオンは、それぞれ4+、5+及び6+の電荷を有するインスリンイオンに相当する。これらの電荷を有する単一同位体イオンは、列挙した範囲内のm/zに主としておさまる。しかし、より低い存在度の天然に存在する同位元素変異体がこの範囲外に存在し得る。1162.5±1の範囲内のインスリンイオンは、好ましくは約1161.72±0.1、1161.92±0.1、1162.12±0.1、1162.32±0.1、1162.52±0.1、1162.72±0.1、1162.92±0.1、1163.12±0.1、1163.32±0.1のm/zを有するインスリンイオン、例えば、1162.54±0.1のm/zを有するイオンなどを含む。968.8±1.5の範囲内のインスリンイオンは、好ましくは約968.28±0.1、968.45±0.1、968.62±0.1、968.79±0.1、968.95±0.1、969.12±0.1、969.28±0.1、969.45±0.1、969.61±0.1のm/zを有するインスリンイオン、例えば、968.95±0.1のm/zを有するイオンなどを含む。いくつかの実施形態において、質量分析により検出される1つ又は複数のインスリンイオンの量を試料中のインスリンタンパク質の量に関連付けるステップは、ヒト又は非ヒトインスリンタンパク質などの内部標準との比較を含む。内部標準は、場合によって同位体標識することができる。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、試料は、生物学的試料、好ましくは、例えば、血漿又は血清を含む体液試料を含み得る。
質量分析(タンデム又は高分解能/高精度)は、ポジティブイオンモードで実施することができる。或いは、質量分析は、ネガティブイオンモードで実施することができる。例えば、大気圧化学イオン化(APCI)又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)を含む、様々なイオン化源を用いてインスリンをイオン化することができる。いくつかの実施形態において、インスリン及び/又は化学的に改変された若しくは改変されていないインスリンA鎖若しくはインスリンB鎖は、ESIによりポジティブイオンモードでイオン化する。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、単独で検出できる内部標準を試料に加えることができ、その量も試料中で決定される。単独で検出できる内部標準を利用する実施形態において、試料中に存在する対象の被分析物及び内部標準の両方のすべて又は一部がイオン化されて、質量分析計で検出できる複数のイオンを生成し、それぞれから生成した1つ又は複数のイオンが質量分析により検出される。これらの実施形態において、対象の被分析物から生成したイオンの存在又は量は、検出された内部標準イオンの量との比較により試料中の対象の被分析物の量の存在に関連付けることができる。
或いは、試料中のインスリンの量は、1つ又は複数の外部参照標準との比較により決定することができる。具体例としての外部参照標準は、ヒト若しくは非ヒトインスリン、合成インスリン類似体又はその同位体標識変異体を添加したブランク血漿又は血清などである。
いくつかの実施形態において、方法は、約10μIU/mL〜500μIU/mL(約60pmol/L〜3000pmol/L又は約0.35ng/mL〜17.4ng/mLに相当する)(端点を含む)の範囲内のレベルの試料中のインスリンの量を決定することができる。
本明細書で用いる場合、特に示さない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「a protein」への言及は、複数のタンパク質分子を含む。
本明細書で用いる場合、「精製」、「精製する」及び「濃縮する」という用語は、対象の被分析物(単数又は複数)以外のすべての物質を試料から除去することを意味しない。それよりも、これらの用語は、対象の被分析物の検出を妨害する可能性がある試料中の他の成分と比較して対象の1つ又は複数の被分析物の量を高くする手順を意味する。様々な手段による試料の精製は、1つ又は複数の妨害物質、例えば、質量分析による選択される親又は娘イオンの検出を妨害する可能性がある又は妨害しない可能性がある1つ又は複数の物質の相対的な減少を可能にする。この用語を用いるときの相対的な減少は、精製すべき材料中に対象の被分析物とともに存在する物質が精製により完全に除去されることを必要としない。
本明細書で用いる場合、「免疫精製」又は「免疫精製する」という用語は、対象の1つ又は複数の被分析物を濃縮するためにポリクローナル又はモノクローナル抗体を含む抗体を利用する精製手順を意味する。免疫精製は、当技術分野で周知の免疫精製法のいずれかを用いて実施することができる。しばしば免疫精製手順は、固体担体、例えば、カラム、ウエル、チューブ、ゲル、カプセル、粒子又は同類のものに結合した、コンジュゲートした又は別の状態で結合した抗体を利用するものである。免疫精製は、本明細書で用いる場合、当技術分野でしばしば免疫沈降と呼ばれる手順、並びに当技術分野でしばしばアフィニティークロマトグラフィー又は免疫アフィニティークロマトグラフィーと呼ばれる手順を制限なしに含む。
本明細書で用いる場合、「免疫粒子」という用語は、その表面(粒子上及び/又は内)に結合した、コンジュゲートした又は別の状態で結合した抗体を有するカプセル、ビーズ、ゲル粒子又は同類のものを意味する。特定の好ましい実施形態において、免疫粒子は、セファロース又はアガロースビーズである。好ましい代替実施形態において、免疫粒子は、ガラス、プラスチック若しくはシリカビーズ又はシリカゲルを含む。
本明細書で用いる場合、「抗インスリン抗体」という用語は、インスリンに対する親和性を有する任意のポリクローナル又はモノクローナル抗体を意味する。種々の実施形態において、インスリン以外の化学種に対するインスリン抗体の特異性は、異なる可能性があり、例えば、特定の好ましい実施形態において、抗インスリン抗体は、インスリンに対して特異的であり、したがって、インスリン以外の化学種に対する親和性をほとんど又は全く有さないが、他の好ましい実施形態において、抗インスリン抗体は、非特異的であり、インスリン以外の特定の化学種に結合する。
本明細書で用いる場合、「試料」という用語は、対象の被分析物を含み得る任意の試料を意味する。本明細書で用いる場合、「体液」という用語は、個人の身体から分離することができる任意の流体を意味する。例えば、「体液」は、血液、血漿、血清、胆汁、唾液、尿、涙液、汗及び同類のものを含み得る。好ましい実施形態において、試料は、ヒトからの体液試料、好ましくは血漿又は血清を含む。
本明細書で用いる場合、「固相抽出」又は「SPE」という用語は、溶液が通過又は周りに流れる固体(すなわち、固相)に対する溶液(すなわち、移動相)中に溶解又は懸濁した成分の親和性の結果として化学物質の混合物を成分に分離する方法を意味する。場合によっては、移動相が固相を通過又はその周りに流れるとき、移動相の望ましくない成分が固相により保持されて、移動相中の被分析物の精製がもたらされる可能性がある。他の場合には、被分析物が固相により保持されて、移動相の望ましくない成分が固相を通過又はその周りに流れることが可能になり得る。これらの場合、さらなる処理又は分析のために次に第2の移動相を用いて、保持された被分析物を固相から溶出する。TFLCを含むSPEは、単一又は混合モード機構により機能し得る。混合モード機構は、同じカラムにおいてイオン交換と疎水性保持を利用するものであり、例えば、混合モードSPEカラムの固相は、強い陰イオン交換及び疎水性保持を示し得る、又は強い陽イオン交換及び疎水性保持を示し得る。
一般的に、被分析物に対するSPEカラム充填物質の親和性は、1つ又は複数の化学的相互作用又は免疫親和性相互作用などの様々な機構のいずれかに起因し得る。いくつかの実施形態において、インスリンのSPEは、免疫親和性カラム充填物質を用いずに行われる。すなわち、いくつかの実施形態において、インスリンは、免疫親和性カラムでないSPEカラムにより試料から精製される。
本明細書で用いる場合、「クロマトグラフィー」という用語は、液体又は気体により運ばれる化学物質の混合物が、静止液体又は固相の周り又は上に流れるときに化学物質の差別的分配の結果として成分に分離される方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「液体クロマトグラフィー」又は「LC」という用語は、流体が微細な物質のカラム又は毛細管通路に均一に浸透するときに流体溶液の1つ又は複数の成分が選択的に遅延する方法を意味する。遅延は、1つ又は複数の固定相とバルク流体(すなわち、移動相)との間のこの流体が固定相(単数又は複数)に対して移動するときの混合物の成分の分配に起因する。「液体クロマトグラフィー」の例としては、逆相液体クロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び乱流液体クロマトグラフィー(TFLC)(時に高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)又は高処理液体クロマトグラフィーとして公知である)などがある。
本明細書で用いる場合、「高速液体クロマトグラフィー」又は「HPLC」(時に「高圧液体クロマトグラフィー」として公知である)という用語は、移動相を加圧下で固定相、一般的に密に充填されたカラムに強制的に通すことによって分離の程度を増大させる液体クロマトグラフィーを意味する。
本明細書で用いる場合、「乱流液体クロマトグラフィー」又は「TFLC」(時に高乱流液体クロマトグラフィー又は高処理液体クロマトグラフィーとして公知である)という用語は、カラム充填剤に通すアッセイされる物質の乱流を、分離を行う基盤として利用するクロマトグラフィーの形態を意味する。TFLCは、質量分析による分析の前に2つの無名の薬物を含む試料の調製に適用された。例えば、Zimmerら、J Chromatogr、A854巻、23〜35頁(1999年)を参照のこと。TFLCをさらに説明している、米国特許第5,968,367号、第5,919,368号、第5,795,469号及び第5,772,874号も参照のこと。当業者は、「乱流」を理解している。流体がゆっくりと滑らかに流れている場合、その流れは、「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラム中を低流速で移動している流体は、層流である。層流において、流体の粒子の運動は規則的であり、粒子が一般的に実質的に直線的に移動する。より速い速度では、水の慣性が流体の摩擦力に打ち勝ち、乱流が生ずる。不規則な境界と接触していない流体は、それを「追い越し」、摩擦により遅くなるか、又は平坦でない表面により偏向させられる。流体が乱れて流れている場合、それは、流れが層流である場合より大きい「抵抗」により渦状に旋回して(又は渦巻き状で)流れる。流体の流れが層流又は乱流である場合を判断するうえで助けとするための多くの参考文献が入手可能である(例えば、Turbulent Flow Analysis: Measurement and Prediction、P.S. Bernard & J.M. Wallace、John Wiley & Sons, Inc.(2000年)、An Introduction to Turbulent Flow、Jean Mathieu & Julian Scott、Cambridge University Press (2001年))。
本明細書で用いる場合、「ガスクロマトグラフィー」又は「GC」という用語は、試料混合物を蒸発させ、液体又は粒子状固体から構成される固定相を含むカラム中を移動するキャリヤーガス(窒素又はヘリウムとしての)の流れに注入し、固定相に対する化合物の親和性に従ってその成分化合物に分離するクロマトグラフィーを意味する。
本明細書で用いる場合、「大粒子カラム」又は「抽出カラム」という用語は、約50μmより大きい平均粒子直径を含むクロマトグラフィーカラムを意味する。この文脈において用いる場合、「約」という用語は、±10%を意味する。
本明細書で用いる場合、「分析カラム」という用語は、被分析物の存在又は量の決定を可能にするのに十分なカラムから溶出する試料中の物質の分離を達成するのに十分なクロマトグラフ段(plate)を有するクロマトグラフィーカラムを意味する。そのようなカラムは、さらなる分析のための精製試料を得るために保持されない物質から保持される物質を分離又は抽出するという一般的な目的を有する「抽出カラム」としばしば区別される。この文脈において用いる場合、「約」という用語は、±10%を意味する。好ましい実施形態において、分析カラムは、直径が約5μmの粒子を含む。
本明細書で用いる場合、「オンライン」及び「インライン」という用語は、例えば、「オンライン自動式(on-line automated fashion)」又は「オンライン抽出」に用いられているように、操作者の介入の必要なしに実施される手順を意味する。対照的に、「オフライン」という用語は、本明細書で用いる場合、操作者の手作業による介入を必要とする手順を意味する。したがって、試料を沈殿に供し、次いで、上清を手作業でオートサンプラーに装填する場合、沈殿及び装填ステップは、その後のステップからオフラインである。方法の様々な実施形態において、1つ又は複数のステップをオンライン自動式で実施することができる。
本明細書で用いる場合、「質量分析」又は「MS」という用語は、化合物をそれらの質量により同定するための分析技術を意味する。MSは、イオンの質量電荷比又は「m/z」に基づいてイオンをフィルタリングし、検出し、測定する方法を意味する。MS技術は、一般的に(1)化合物をイオン化して、荷電化合物を生成するステップと、(2)荷電化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算するステップとを含む。化合物は、適切な手段によりイオン化し、検出することができる。「質量分析計」は、一般的にイオン化装置、質量分析計及びイオン検出器を含む。一般的に、対象の1つ又は複数の分子がイオン化され、その後イオンが質量分析装置に導入され、そこでは、磁界と電界の組み合わせにより、イオンが質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間内の経路をたどる。例えば、「表面からの質量分析(Mass Spectrometry From Surfaces)」と題する米国特許第6,204,500号、「タンデム質量分析の方法及び装置(Methods and Apparatus for Tandem Mass Spectrometry)」と題する第6,107,623号、「質量分析に基づくDNA診断(DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry)」と題する第6,268,144号、「被分析物の脱離及び検出のための表面増強光感受性結合及び放出(Surface-Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desoption And Detection Of Analytes)」と題する第6,124,137号、Wrightら、Prostate Cancer and Prostatic Diseases、1999年、2巻、264〜76頁並びにMerchant及びWeinberger、Electrophoresis、2000年、21巻、1164〜67頁を参照のこと。
本明細書で用いる場合、「高分解能/高精度質量分析」は、固有の化学イオン(unique chemical ion)を確認するのに十分な精度及び正確度(precision and accuracy)で荷電種の質量電荷比を測定することができる質量分析計を用いて実施される質量分析を意味する。固有の化学イオンの確認は、当該イオンの個々の同位体ピークが容易に識別できる場合のイオンについて可能である。固有の化学イオンを確認するために必要な特定の分解能及び質量正確度は、イオンの質量及び電荷状態によって異なる。
本明細書で用いる場合、「分解能」又は「分解能(FWHM)」(当技術分野で「m/Δm50%」としても公知である)という用語は、最大高さの50%における質量ピークの幅(半値全幅、「FWHM」)で割った観測質量電荷比を意味する。分解能の差の効果を、約1093のm/zを有するイオンの理論的な質量スペクトルを示す図1A〜Cに示す。図1Aに約3000の分解能(通常の四重極型質量分析計の一般的な操作条件)を有する質量分析計による理論的質量スペクトルを示す。図1Aにおいてわかるように、個々の同位体ピークは識別できない。比較すると、図1Bに約10,000の分解能を有する質量分析計による理論的質量スペクトルを示すが、個々の同位体ピークが明確に識別できる。図1Cに約12,000の分解能を有する質量分析計による理論的質量スペクトルを示す。この最高の分解能では、個々の同位体ピークは、ベースラインからの1%未満の寄与を含む。
本明細書で用いる場合、質量分析に関する「固有の化学物質イオン」は、単一原子構成を有する単一イオンを意味する。単一イオンは、1価又は多価であり得る。
本明細書で用いる場合、質量分析に関する「正確度」(又は「質量正確度」)という用語は、検討されるイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを意味する。正確度は、一般的に百万分の1(ppm)で表される。質量の正確度の差の効果を、1093.52094のm/zの理論的ピークについて検出されるm/zと実際のm/zとの間の生じ得る差の境界を示す図2A〜Dに示す。図2Aに120ppmの正確度での検出されるm/zの生じ得る範囲を示す。対照的に図2Bに50ppmの正確度での検出されるm/zの生じ得る範囲を示す。図2C及び2Dに20ppm及び10ppmの正確度での検出されるm/zのより狭い生じ得る範囲を示す。
本発明の高分解能/高精度質量分析法は、10,000、15,000、20,000、25,000、50,000、100,000又はさらにより大きい値より大きいFWHMで質量分析を行うことができる機器で実施することができる。同様に、本発明の方法は、50ppm、20ppm、15ppm、10ppm、5ppm、3ppm未満又はさらにより小さい値の正確度で質量分析を行うことができる機器で実施することができる。これらの性能特性の能力がある機器は、特定のオービトラップ質量分析計、飛行時間(「TOF」)型質量分析計又はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計を組み込み得る。好ましい実施形態において、方法は、オービトラップ質量分析計又はTOF型質量分析計を含む機器により実施される。
「オービトラップ」という用語は、たる様の外側電極と同軸の内側電極からなるイオントラップを記述する。イオンは、電極間の電界に接線方向に注入され、イオンと電極との間の静電相互作用がイオンが同軸内側電極を周回するときの遠心力と釣り合うためにトラップされる。イオンが同軸内側電極を周回するとき、トラップされたイオンの軌道がイオンの質量電荷比に応じた調和振動数で中心電極の軸に沿って振動する。軌道振動数の検出により、オービトラップを高精度(1〜2ppmと低い)及び高分解能(FWHM)(最大約200,000)を有する質量分析計として用いることが可能になる。オービトラップに基づく質量分析計は、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許第6,995,364号に詳細に記載されている。オービトラップ分析計の使用は、様々な被分析物の定性及び定量分析について報告された。例えば、米国特許出願公開第2008/0118932号(2007年11月9日出願)、Bredehoftら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2008年、22巻、477〜485頁、Le Bretonら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2008年、22巻、3130〜36頁、Thevisら、Mass Spectrom. Reviews、2008年、27巻、35〜50頁、Thomasら、J. Mass Spectrom.、2008年、43巻、908〜15頁、Schenkら、BMC Medical Genomics、2008年、1巻、41頁及びOlsenら、Nature Methods、2007年、4巻、709〜12頁を参照のこと。
本明細書で用いる場合、「ネガティブイオンモードで動作する」という用語は、負イオンを発生させ、検出する質量分析法を意味する。「ポジティブイオンモードで動作する」という用語は、本明細書で用いる場合、正イオンを発生させ、検出する質量分析法を意味する。好ましい実施形態において、質量分析をポジティブイオンモードで行う。
本明細書で用いる場合、「イオン化」又は「イオン化する」という用語は、1以上の電子単位に等しい正味の電荷を有する被分析物イオンを発生させる方法を意味する。負イオンは、1以上の電子単位の正味の負電荷を有するものであり、一方、正イオンは、1以上の電子単位の正味の正電荷を有するものである。
本明細書で用いる場合、「電子イオン化」又は「EI」という用語は、気相又は蒸気相中の対象の被分析物が電子の流れと相互作用する方法を意味する。電子と被分析物との衝突が、次に質量分析技術に供され得る被分析物イオンを生成する。
本明細書で用いる場合、「化学イオン化」又は「CI」という用語は、試薬ガス(例えば、アンモニア)が電子衝撃に供され、試薬ガスイオンと被分析物分子との相互作用により被分析物イオンが生じる方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「高速原子衝撃」又は「FAB」という用語は、高エネルギー原子(しばしばXe又はAr)のビームが不揮発性試料に衝突し、試料に含まれている分子を脱離させ、イオン化する方法を意味する。試験試料をグリセロール、チオグリセロール、m−ニトロベンジルアルコール、18−クラウン−6クラウンエーテル、2−ニトロフェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミンなどの粘性液体マトリックスに溶解する。化合物又は試料に対する適切なマトリックスの選択は、経験的過程である。
本明細書で用いる場合、「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」又は「MALDI」という用語は、不揮発性試料を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ崩壊を含む様々なイオン化経路により試料中の被分析物を脱離させ、イオン化するレーザー照射にさらす方法を意味する。MALDIのために、試料を、被分析物分子の脱離を促進するエネルギー吸収マトリックスと混合する。
本明細書で用いる場合、「表面エンハンス型レーザー脱離イオン化」又は「SELDI」という用語は、不揮発性試料を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ崩壊を含む様々なイオン化経路により試料中の被分析物を脱離させ、イオン化するレーザー照射にさらす他の方法を意味する。SELDIのために、試料を一般的に、対象の1つ又は複数の被分析物を優先的に保持する表面に結合させる。MALDIと同様に、この方法は、イオン化を促進するエネルギー吸収物質も用いることができる。
本明細書で用いる場合、「エレクトロスプレーイオン化」又は「ESI」という用語は、末端に高い正又は負電位を印加した短い毛細管に溶液を通す方法を意味する。管の末端に到達した溶液は、蒸発して(霧化)、溶媒蒸気中溶液の非常に小さな液滴のジェット又は噴霧体(spray)になる。この液滴の噴霧体(mist)は、蒸発チャンバー中を流れる。液滴がより小さくなるとき、電荷の間の自然反発力によってイオン並びに中性分子が放出されるような時点まで表面電荷密度が増加する。
本明細書で用いる場合、「大気圧化学イオン化」又は「APCI」という用語は、ESIと同様な質量分析法を意味するが、APCIは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン−分子反応によりイオンを生成する。プラズマは、噴霧毛細管と対極との間の放電により維持される。次いで、イオンは、一般的に一組の差動排気スキマーステージを用いることにより質量分析計内に抽出される。向流の乾燥および予熱されたNガスを用いて、溶媒の除去を改善することができる。APCIにおける気相イオン化は、極性がより低い種を分析するのにESIより有効であり得る。
「大気圧光イオン化」又は「APPI」という用語は、本明細書で用いる場合、分子Mのイオン化の機構が分子イオンM+を生成する光子の吸収及び電子の放出である質量分析の形態を意味する。光子エネルギーが一般的にイオン化電位の直上であるため、分子イオンは解離を受けにくい。多くの場合に、クロマトグラフィーの必要なしに試料を分析することが可能であり、それによりかなりの時間と費用の節約となり得る。水蒸気又はプロトン性溶媒の存在下では、分子イオンは、Hを引き抜いてMH+を形成し得る。Mが高いプロトン親和性を有する場合、これが起こる傾向がある。M+とMH+の合計が一定であるため、これは、定量の正確度に影響を与えない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、通常MH+として観測されるが、ナフタレン又はテストステロンなどの非極性化合物は、通常M+を形成する。例えば、Robbら、Anal. Chem.、2000年、72巻(15号)、3653〜3659頁を参照のこと。
本明細書で用いる場合、「誘導結合プラズマ」又は「ICP」という用語は、大部分の元素が原子化され、イオン化されるような十分に高い温度で試料が部分的にイオン化されたガスと相互作用する方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「電界脱離」という用語は、不揮発性試験試料をイオン化表面上にのせ、強い電界を用いて被分析物イオンを発生させる方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「脱離」という用語は、表面からの被分析物の除去及び/又は被分析物の気相への侵入を意味する。レーザー脱離熱脱離は、被分析物を含む試料をレーザーパルスにより気相中に熱的に脱離させる技術である。レーザーは、金属基部を備えた特製の96ウエルプレートの裏面を照射する。レーザーパルスが底部を加熱し、熱が試料を気相に移行させる。気相試料が次に質量分析計に引き込まれる。
本明細書で用いる場合、「選択イオンモニタリング」という用語は、比較的狭い質量範囲内、一般的に約1質量単位の範囲内のイオンのみが検出される質量分析機器の検出モードである。
本明細書で用いる場合、「選択反応モニタリング」として時として公知である「多重反応モード」は、前駆イオン及び1つ又は複数のフラグメントイオンが選択的に検出される質量分析機器の検出モードである。
本明細書で用いる場合、「定量化下限」、「定量下限」又は「LLOQ」という用語は、測定が定量的に意味があるようになるポイントを意味する。このLOQにおける被分析物の応答は、特定可能であり、個別的であり、20%未満の相対標準偏差(RSD%)及び85%〜115%の正確度で再現性がある。
本明細書で用いる場合、「検出限界」又は「LOD」という用語は、測定値がそれに関連する不確実さより大きいポイントである。LODは、値がその測定に関連する不確実さを超えるポイントであり、ゼロ濃度における平均値のRSDの3倍と定義される。
本明細書で用いる場合、体液試料中の被分析物の「量」は、一般的に試料の体積において検出できる被分析物の質量を反映する絶対値を意味する。しかし、量は、他の被分析物の量と比較した相対量も意図する。例えば、試料中の被分析物の量は、試料中に通常存在する被分析物の対照又は正常レベルより大きい量であり得る。
「約」という用語は、イオンの質量の測定を含まない定量的測定に関して本明細書で用いる場合、表示値プラス又はマイナス10%を意味する。質量分析機器は、所定の被分析物の質量を決定することについてわずかに異なり得る。イオンの質量又はイオンの質量/電荷比に関する「約」という用語は、+/−0.50原子質量単位を意味する。
上述の本発明の概要は、非限定的なものであり、本発明の他の特徴及び利点は、本発明の以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
約3000の分解能を有する質量分析計により分析するときの約1093のm/zを有するイオンの理論的質量スペクトルを示す図である。 約10,000の分解能を有する質量分析計により分析するときの約1093のm/zを有するイオンの理論的質量スペクトルを示す図である。 約12,000の分解能を有する質量分析計により分析するときの約1093のm/zを有するイオンの理論的質量スペクトルを示す図である 120ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 50ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 20ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 10ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 図3A及びBは、酸性条件下でポジティブイオンモードでのESIによるヒトインスリンのイオン化で収集された具体例としてのスペクトルを示す図である。詳細は実施例3で述べる。 図3A及びBは、塩基性条件下でポジティブイオンモードでのESIによるヒトインスリンのイオン化で収集された具体例としてのスペクトルを示す図である。詳細は実施例3で述べる。 図4Aは、QTOF質量分析計により得られたヒトインスリンの約900〜1200のm/z範囲にわたる具体例としてのスペクトルを示す図である。図4Bは、QTOF質量分析計により得られたストリップ血清試料マトリックスからの混入物ピークを示す図である。詳細は実施例4で述べる。 図5Aは、QTOF質量分析計により得られたヒトインスリンの約1154〜1177のm/z範囲にわたる具体例としての高分解能/高精度スペクトルを示す図である。図5Bは、約1159〜1166のm/z範囲の拡大図である。詳細は実施例4で述べる。 図6Aは、QTOF質量分析計により得られたヒトインスリンの約964〜973のm/z範囲にわたる具体例としての高分解能/高精度スペクトルを示す図である。図6Bは、約967〜971のm/z範囲の拡大図である。詳細は実施例4で述べる。 図7は、インスリンの高分解能/高精度MSにより測定したスパイクした模擬血清標準中のヒトインスリンの定量の直線性プロットを示す図である。詳細は実施例4で述べる。 図8は、インスリンの高分解能/高精度MSにより測定したスパイクしたストリップ血清標準中のヒトインスリンの定量の直線性プロットを示す図である。詳細は実施例4で述べる。 図9は、5+及び6+荷電状態のヒトインスリン前駆イオンの生成を示すタンデム質量分析Q1スキャンを示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図10は、6+荷電状態のヒトインスリン前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図11は、5+荷電状態のヒトインスリン前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図12は、各種衝突エネルギーで6+及び5+ヒトインスリン前駆イオンをフラグメント化することにより生成した選択したフラグメントイオンの相対強度を示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図13は、2つの可能なヒトインスリンA鎖前駆イオン(2+及び3+荷電状態の)及び2つの可能なヒトインスリンB鎖前駆イオン(3+及び4+荷電状態の)を示す複合スペクトルを示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図14は、l3+、4+及び5+荷電状態の可能なヒトインスリンB鎖前駆イオンの生成を示すタンデム質量分析Q1スキャンを示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図15は、各種衝突エネルギーで3+ヒトインスリンA鎖前駆イオンをフラグメント化することにより生成した選択したフラグメントイオンの相対強度を示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図16は、4+荷電状態のヒトインスリンB鎖前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図17は、3+荷電状態のヒトインスリンB鎖前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例10で述べる。 図18は、各種衝突エネルギーで3+ヒトインスリンB鎖前駆イオンをフラグメント化することにより生成した選択したフラグメントイオンの相対強度を示す図である。詳細は実施例10で述べる。 図19は、ヒトインスリンB鎖のタンデム質量分析による患者血清試料中のヒトインスリンのLLOQを評価するために用いたプロットを示す図である。詳細は実施例12で述べる。 図20は、ヒトインスリンB鎖のタンデム質量分析により測定したスパイクしたストリップ血清試料中のヒトインスリンの定量の直線性のプロットを示す図である。詳細は実施例13で述べる。
発明の詳細な説明
試料中のインスリンの量を決定する方法を述べる。より具体的には、試料中のインスリンを検出し、定量するための質量分析法を述べる。方法は、選択される被分析物の精製を実施するための固相抽出(SPE)及び/又は液体クロマトグラフィー(LC)を質量分析(MS)の方法と組み合わせて利用し、それにより、試料中のインスリンを検出し、定量するためのアッセイシステムを提供し得る。好ましい実施形態は、自動インスリン定量アッセイへの大規模臨床施設における適用に特に十分に適している。
本発明の方法に用いる適切な試験試料は、対象の被分析物を含み得る試験試料である。いくつかの好ましい実施形態において、試料は、生物学的試料、すなわち、動物、細胞培養、器官培養等などの生物学的源から得られる試料である。特定の好ましい実施形態において、試料は、イヌ、ネコ、ウマ等などの哺乳動物から得られる。特に好ましい哺乳動物は、霊長類、最も好ましくは男性又は女性ヒトである。好ましい試料は、血液、血漿、血清、唾液、脳脊髄液などの体液又は組織試料、好ましくは血漿及び血清を含む。そのような試料は、例えば、患者、すなわち、疾患又は状態の診断、予後診断又は治療のために臨床施設に出頭する男性又は女性の生者から得ることができる。試料が生物学的試料を含む実施形態において、方法は、試料が生物学的源から得られた場合の試料中のインスリンの量を決定するために用いることができる。
本発明はまた、インスリンの定量アッセイ用のキットを企図する。インスリンの定量アッセイ用のキットは、本明細書で提供する組成物を含むキットを含み得る。例えば、キットは、包装材料及び少なくとも1回のアッセイに十分な量の一定量の同位体標識内部標準を含み得る。一般的に、インスリンの定量アッセイ用の包装済み試薬の使用についての有形の形式で記録された(例えば、紙又は電子媒体上に含まれた)取扱説明書も含む。
本発明の実施形態に用いる較正及びQCプールは、好ましくは、インスリンが本質的に存在しないという条件で、対象とする試料マトリックスと同様なマトリックスを用いて調製する。
質量分析用の試料の調製
質量分析のための調製において、例えば、液体クロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、薄層クロマトグラフィー(TLC)、毛細管電気泳動を含む電気泳動、免疫アフィニティー分離を含むアフィニティー分離、酢酸エチル若しくはメタノール抽出を含む抽出法及びカオトロピック剤の使用又は上記のもの若しくは同類のもののいずれかの組み合わせを含む当技術分野で公知の様々な方法により、インスリンを試料中の1つ又は複数の他の成分と比べて濃縮することができる。
質量分析の前に用いることができる試料の精製の1つの方法は、対象の被分析物はカラム充填剤に可逆的に保持されるが、1つ又は複数の他の物質は保持されない条件下で試料を固相抽出(SPE)カラムに加えることである。この技術において、対象の被分析物がカラムにより保持される場合に、第1の移動相条件を用いることができ、保持されない物質が洗い流されたならば、保持された物質をカラムから除去するためにその後に第2の移動相条件を用いることができる。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンは、アルキル結合表面を含む充填剤を含むSPEカラムに可逆的に保持させることができる。例えば、いくつかの実施形態において、C−8オンラインSPEカラム(Phenomenex,Inc.製のOasis HLBオンラインSPEカラム/カートリッジ(2.1mmx20mm)又は同等物など)は、質量分析の前にインスリンを濃縮するために用いることができる。いくつかの実施形態において、SPEカラムの使用は、洗浄溶液としてのHPLC用0.2%水性ギ酸及び溶出溶液としてのアセトニトリル中0.2%ギ酸を用いて行われる。
いくつかの実施形態において、インスリンは、免疫アフィニティー技術により精製しない。これらの実施形態のいくつかは、SPEカラムを利用する。これらの実施形態において、SPEカラムは、免疫アフィニティーカラムでない。
他の実施形態において、方法は、質量分析の前のインスリンを免疫精製するステップを含む。免疫精製ステップは、当技術分野で周知の免疫精製法のいずれかを用いて実施することができる。しばしば免疫精製手順は、固体担体、例えば、カラム、ウエル、チューブ、カプセル、粒子又は同類のものに結合した、コンジュゲートした、固定化された又は別の状態で結合した抗体を利用するものである。一般的に、免疫精製法は、(1)被分析物が抗体に結合するように対象の被分析物を含む試料を抗体とともにインキュベートするステップと、(2)1又は複数回の洗浄ステップを実施するステップと、(3)抗体から被分析物を溶出するステップとを含む。
特定の実施形態において、免疫精製のインキュベーションステップは、溶液中の遊離の抗体を用いて実施し、抗体は、その後、洗浄ステップの前に固体表面に結合又は付着させる。特定の実施形態において、これは、抗インスリン抗体である一次抗体及び一次抗インスリン抗体に対する親和性を有する固体表面に結合させた二次抗体を用いて達成することができる。代替実施形態において、インキュベーションステップの前に一次抗体を固体表面に結合させる。
適切な固体担体は、制限なしに、チューブ、スライド、カラム、ビーズ、カプセル、粒子、ゲル及び同類のものを含む。いくつかの好ましい実施形態において、固体担体は、例えば、96ウエルプレート、384ウエルプレート及び同類のものなどの多ウエルプレートである。いくつかの実施形態において、固体担体は、セファロース若しくはアガロースビーズ又はゲルである。抗体(例えば、インスリン抗体又は二次抗体)を固体担体に結合、付着、固定化又は連結することができる当技術分野で周知の多くの方法、例えば、共有結合又は非共有結合吸着、親和性結合、イオン結合などがある。いくつかの実施形態において、抗体は、CNBrを用いて連結させる。例えば、抗体は、CNBr活性化セファロースに連結させることができる。他の実施形態において、抗体は、プロテインA、プロテインG、プロテインA/G又はプロテインLなどの抗体結合タンパク質を介して固体担体に付着させる。
免疫精製法の洗浄ステップは、一般的に、インスリンが固体担体上の抗インスリン抗体に結合したままであるように固体担体を洗浄することを必要とする。免疫精製法の溶出ステップは、一般的に、抗インスリン抗体へのインスリンの結合を破壊する溶液の添加を必要とする。具体例としての溶出溶液は、有機溶液、塩溶液及び高又は低pH溶液を含む。
質量分析の前に用いることができる試料の精製の他の方法は、液体クロマトグラフィー(LC)である。液体クロマトグラフィー技術において、対象の被分析物が1つ又は複数の他の物質と比べて異なる速度で溶出する移動相条件下で試料をクロマトグラフ分析カラムに加えることによって、被分析物を精製することができる。そのような手順は、試料の1つ又は複数の他の成分と比べて対象の1つ又は複数の被分析物の量を高め得る。
HPLCを含む液体クロマトグラフィーの特定の方法は、比較的に遅い層流技術に依拠している。伝統的なHPLC分析は、カラム中を通る試料の層流が試料からの対象の被分析物の分離の基礎であるカラム充填に依拠している。当業者は、そのようなカラムにおける分離が分配過程であることを理解し、Cペプチドとともに用いるのに適切であるHPLCを含むLC、機器及びカラムを選択することができる。クロマトグラフ分析カラムは、一般的に化合物構成成分の分離(すなわち、分別)を促進するための媒体(すなわち、充填剤)を含む。媒体は、微細な粒子を含み得る。粒子は、一般的に、様々な化合物構成成分と相互作用して化合物構成成分の分離を促進する結合表面を含む。1つの適切な結合表面は、アルキル結合又はシアノ結合表面などの疎水性結合表面である。アルキル結合表面は、C−4、C−8、C−12又はC−18結合アルキル基を含み得る。いくつかの実施形態において、クロマトグラフ分析カラムは、モノリスC−18カラムである。クロマトグラフ分析カラムは、試料を受け入れる入口部及び分別試料を含む溶出物を排出するための出口部を含む。試料は、入口部に直接、又はオンラインSPEカラムなどのSPEカラム若しくはTFLCカラムから供給することができる。いくつかの実施形態において、試料がSPE及び/又はTFLC及び/又はHPLCカラムに達する前に試料中の粒子及びリン脂質を除去するために、オンラインフィルターをSPEカラム及び又はHPLCカラムの前に用いることができる。
1つの実施形態において、試料は、入口部においてLCカラムに加え、溶媒又は溶媒混合物により溶出し、出口部において排出することができる。対象の被分析物(単数又は複数)を溶出するための各種溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグラフィーは、勾配モード、無勾配モード又は多型的(すなわち、混合)モードを用いて実施することができる。クロマトグラフィー中、物質の分離は、溶出液(「移動相」としても公知)、溶出モード、勾配条件、温度の選択等などの変数による影響を受ける。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンをHPLCにより濃縮する。このHPLCは、モノリスC−18カラムクロマトグラフシステム、例えば、Phenomenex Inc.製のOnyxモノリスC−18カラム(50x2.0mm)又は同等物を用いて実施することができる。特定の実施形態において、HPLCは、溶媒AとしてのHPLC用0.2%水性ギ酸及び溶媒Bとしてのアセトニトリル中0.2%ギ酸を用いて実施する。
弁及び継手配管の注意深い選択により、手作業によるステップの必要なく1つのクロマトグラフィーカラムから次のカラムに物質が通るように2つ以上のクロマトグラフィーカラムを必要に応じて接続することができる。好ましい実施形態において、弁及び配管の選択は、必要なステップを実施するようにあらかじめプログラムされたコンピュータにより制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムは、そのようなオンライン式で検出システム、例えば、MSシステムにも接続されている。したがって、操作者が試料のトレーをオートサンプラーに取り付けることができ、残りの操作は、コンピュータ制御のもとに実施されて、選択されるすべての試料の精製及び分析が行われる結果となる。
いくつかの実施形態において、質量分析の前のインスリンの精製のためにTFLCを用いることができる。そのような実施形態において、被分析物を捕捉するTFLCカラムを用いて試料を抽出することができる。次いで、被分析物を溶出し、オンラインで分析HPLCカラムに移す。例えば、試料の抽出は、大粒子径(50μm)充填剤を含むTFLC抽出カートリッジを用いて達成することができる。このカラムから溶出した試料は、質量分析の前のさらなる精製のためにオンラインで分析HPLCカラムに移すことができる。これらのクロマトグラフィー手順に含まれるステップを自動式で連結することができるので、被分析物の精製中の操作者の関与の必要性を最小限にすることができる。この特徴により、時間と費用の節約がもたらされ、操作者の誤りの機会が排除される可能性がある。
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の上述の精製技術は、複数の試料の同時処理を可能にするために、インスリンの精製のために並行して用いることができる。いくつかの実施形態において、用いられる精製技術は、免疫アフィニティークロマトグラフィーなどの免疫精製技術を除く。
質量分析によるインスリンの検出及び定量
質量分析は、分別試料をイオン化し、さらなる分析のために荷電分子を生成するためのイオン源を含む質量分析計を用いて実施される。様々な実施形態において、インスリンは、当業者に公知の方法によりイオン化することができる。例えば、インスリンのイオン化は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、レーザーダイオード熱脱離(LDTD)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(LSI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面エンハンス型レーザー脱離イオン化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)及び粒子ビームイオン化により行うことができる。当業者は、イオン化法の選択は、測定される被分析物、試料の種類、検出器の種類、ポジティブ対ネガティブモードの選択等に基づいて決定することができることを理解し、インスリンはポジティブモードでイオン化されても、ネガティブモードでイオン化されてもよい。好ましい実施形態において、インスリンは、ESIによりポジティブイオンモードでイオン化される。
質量分析技術において、一般的に、試料をイオン化した後、それにより生成した正又は負に荷電したイオンを分析して、質量電荷比(m/z)を決定することができる。m/zを決定するための種々の分析計は、四重極型分析計、イオントラップ型分析計、飛行時間型分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計及びオービトラップ型分析計を含む。いくつかの具体例としてのイオントラップ方法は、Bartolucciら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2000年、14巻、967〜73頁に記載されている。
イオンは、数種の検出モードを用いて検出することができる。例えば、選択されるイオンは、すなわち、選択イオンモニタリングモード(SIM)を用いて検出することができ、又は代わりになるべきものとして、衝突誘起解離若しくはニュートラルロスに起因する質量遷移を例えば、多重反応モニタリング(MRM)若しくは選択反応モニタリング(SRM)によりモニターすることができる。いくつかの実施形態において、質量電荷比を四重極型分析計を用いて決定する。「四重極」又は「四重極型イオントラップ」機器において、振動高周波電界におけるイオンは、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振幅及び質量/電荷比に比例する力を受ける。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷比を有するイオンのみが四重極を縦断するが、他のすべてのイオンは偏向させられるように選択できる。したがって、四重極機器は、機器に注入されるイオンの「マスフィルター」及び「質量検出器」の両方として機能し得る。
イオンが検出器に衝突するとき、それらは、デジタル信号に変換される電子のパルスを生じる。取得されたデータは、コンピュータに転送され、コンピュータは、収集されたイオンの計数を時間に対してプロットする。得られる質量クロマトグラムは、伝統的なHPLC−MS法で得られるクロマトグラムに類似している。特定のイオンに対応するピーク下面積又はそのようなピークの振幅を測定し、対象の被分析物の量と関連させることができる。特定の実施形態において、フラグメントイオン(単数又は複数)及び/又は前駆イオンのピークの曲線下面積又は振幅を測定して、インスリンの量を決定する。所定のイオンの相対存在量(relative abundance)は、内部又は外部分子標準の1つ又は複数のイオンのピークに基づく較正標準曲線を用いて最初の被分析物の絶対量に変換することができる。
特定の質量分析計を用いるMS技術の分解能を「タンデム質量分析」又は「MS/MS」により向上させることができる。この技術において、対象の分子から得られる前駆イオン(親イオンとも呼ばれる)は、MS機器によりフィルターすることができ、前駆イオンは、その後フラグメント化されて、第2のMS手順で分析される1つ又は複数のフラグメントイオン(娘イオン又はプロダクトイオンとも呼ばれる)を生じる。前駆イオンの注意深い選択により、特定の被分析物により生成するイオンのみがフラグメント化チャンバーに通され、そこでの不活性ガスの原子との衝突により、フラグメントイオンが生成する。前駆及びフラグメントイオンの両方が一連の所定のイオン化/フラグメント化条件下で再現性よく生成するので、MS/MS技術は、極めて強力な分析ツールとなり得る。例えば、フィルトレーション/フラグメンテーションの組み合わせは、妨害物質を除去するために用いることができ、生物学的試料のような複雑な試料に特に有用であり得る。特定の実施形態において、マルチプル四重極型分析計を含む質量分析機器(トリプル四重極型機器など)を用いてタンデム質量分析を行う。
MS/MS技術を用いる特定の実施形態において、前駆イオンをさらなるフラグメント化のために単離し、衝突活性化解離(CAD)を用いて、後続の検出のために前駆イオンからフラグメントイオンを生成する。CADにおいて、前駆イオンは、不活性ガスとの衝突によりエネルギーを獲得し、その後「単分子分解」と呼ばれる過程によりフラグメントになる。振動エネルギーの増加によりイオン内の特定の結合を切断できるように、十分なエネルギーが前駆イオンに蓄積されなければならない。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンは、次のようにMS/MSを用いて検出され、及び/又は定量される。最初に試料をSPEに、次いで、液体クロマトグラフィー、好ましくはHPLCに供することにより、試料中のインスリンが濃縮され、クロマトグラフ分析カラムからの液体溶媒の流れがMS/MS分析計の加熱ネブライザーインターフェースに入り、溶媒/被分析物混合物がインターフェースの加熱荷電チューブ中で蒸気に変換される。これらの過程において、被分析物(すなわち、インスリン)がイオン化される。イオン、例えば、前駆イオンは、機器の開口部を通過し、第1の四重極に入る。四重極1及び3(Q1及びQ3)は、イオンの質量電荷比(m/z)に基づいてイオンの選択(すなわち、Q1及びQ3におけるそれぞれ「前駆」及び「フラグメント」イオンの選択)を可能にするマスフィルターである。四重極2(Q2)は、イオンがフラグメント化されるコリジョンセルである。質量分析計の第1の四重極(Q1)は、インスリンイオンのm/zを有する分子を選択する。正しいm/zを有する前駆イオンは、コリジョンチャンバー(Q2)内に通されるが、他のm/zを有する不要なイオンは、四重極の側面に衝突し、除去される。Q2に入った前駆イオンは、中性ガス分子(アルゴン分子など)と衝突し、フラグメントになる。生成したフラグメントイオンは、四重極3(Q3)に通され、ここでフラグメントイオンが検出のために選択される。
インスリンのイオン化は、多価前駆イオン(4+、5+、6+等の前駆イオンのような)をもたらし得る。イオン化条件、特にエレクトロスプレー技術に用いられる緩衝液のpHは、生成したインスリン前駆イオンの同一性及び量に著しい影響を与える。例えば、酸性条件下では、ポジティブエレクトロスプレーイオン化は、主として、それぞれ1162.5±0.5及び968.5±0.5のm/zを有する5+及び6+価インスリン前駆イオンを発生させ得る。しかし、塩基性条件下では、ポジティブエレクトロスプレーイオン化は、主として、それぞれ1453.75±0.5及び1162.94±0.5のm/zを有する4+及び5+価インスリン前駆イオンを発生させ得る。本方法は、酸性又は塩基性条件、好ましくは酸性条件を利用し得る。
本方法は、ポジティブ又はネガティブイオンモード、好ましくはポジティブイオンモードで実施されるMS/MSを含み得る。特定の実施形態において、エレクトロスプレー緩衝液は、酸性であり、Q1は、約1162.5±0.5又は968.5±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンを選択する。これらのインスリン前駆イオンのいずれかのフラグメント化により、約226.21±0.5及び/又は135.6±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成する。したがって、Q1が、約1162.5±0.5及び968.5±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のインスリン前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約226.21±0.5及び135.6±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。
特定の実施形態において用いることができるタンデム質量分析機器を操作する代替モードは、プロダクトイオンスキャン法及び前駆イオンスキャン法を含む。これらの操作モードの説明については、例えば、E. Michael Thurmanら、Chromatographic-Mass Spectrometric Food Analysis for Trace Determination of Pesticide Residues、Chapter 8 (Amadeo R. Fernandez-Alba編、Elsevier 2005)(387)を参照のこと。
他の実施形態において、高分解能/高精度質量分析計は、本発明の方法によるインスリンの定量的分析に用いることができる。定量的結果の容認できる精度を達成するために、質量分析計は、対象のイオンについて約50ppm又はそれ以下の正確度で10,000又はそれ以上の分解能(FWHM)を示すことができなければならない。好ましくは質量分析計は、約5ppm又はそれ以下の正確度で18,000又はそれ以上の分解能(FWHM)、例えば、20,000又はそれ以上の分解能(FWHM)と約3ppm又はそれ以下の正確度など、例えば、25,000又はそれ以上の分解能(FWHM)と約3ppm又はそれ以下の正確度などを示す。インスリンイオンについて必要なレベルの性能を示すことができる3つの具体例としての分析計は、オービトラップ質量分析計、特定のTOF質量分析計及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計である。
炭素、酸素及び窒素などの生物学的活性分子に見いだされる元素は、多種の同位体で天然に存在する。例えば、ほとんどの炭素は、12Cとして存在するが、すべての天然に存在する炭素の約1%は、13Cとして存在する。したがって、少なくとも1つの炭素原子を含有する天然に存在する分子の一部分は、少なくとも1つの13C原子を含有することになる。天然に存在する元素同位体が分子に含まれることにより、複数の分子同位体が生じる。分子同位体の質量の差は、少なくとも1原子質量単位(amu)である。これは、元素同位体が少なくとも1つの中性子異なるからである(1つの中性子の質量≒1amu)。分子同位体が多荷電状態にイオン化される場合、質量分析での検出が質量電荷比(m/z)に基づいているため、同位体の間の質量の差異は、識別することが困難になり得る。例えば、両方が5+状態にイオン化される、質量が1amu異なる2つの同位体は、わずか0.2のそれらのm/zの差を示す。高分解能/高精度質量分析は、高度に多荷電イオン(±2、±3、±4、±5又はより高度の電荷を有するイオンなど)の同位体を識別することができる。
天然に存在する元素同位体のため、すべての分子イオン(十分に感度の高い質量分析機器により分析した場合、それぞれが個別に検出できるスペクトルピークを生じ得る)について複数の同位体が一般的に存在する。複数の同位体のm/z比及び相対存在量は、分子イオンの同位体シグニチャを集合的に含む。いくつかの実施形態において、2つ以上の分子同位体のm/z比及び相対存在量は、検討中の分子イオンの同一性を確認するために利用することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の同位体の質量分析ピークを用いて分子イオンを定量する。いくつかの関連実施形態において、1つの同位体の単一質量分析ピークを用いて分子イオンを定量する。他の関連実施形態において、複数の同位体ピークを用いて分子イオンを定量する。これらの後者の実施形態において、複数の同位体ピークは、任意の適切な数学的処理に供することができる。いくつかの数学的処理は、当技術分野で公知であり、多重ピーク下面積の合計又は多重ピークによる応答の平均を含むが、これらに限定されない。5+及び6+インスリンイオンの多重同位体を示す具体例としてのスペクトルは、図4〜6に見られる。図5A〜Bに認められるように、5+インスリンイオンの種々の同位体のピークは、約1161.72、1161.92、1162.12、1162.32、1162.52、1162.72、1162.92、1163.12及び1163.32に認められる。図6A〜Bに認められるように、6+インスリンイオンの種々の同位体のピークは、約968.28、968.45、968.62、968.79、968.95、969.12、969.28、968.45及び969.61に認められる。しかし、イオンの同位体の変異体について観測される正確な質量は、機器の変動のためにわずかに変化し得ることを注意すること。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンの量を定性的に評価するために1つ又は複数のイオンの相対存在量を高分解能/高精度質量分析計により測定する。いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析により測定される1つ又は複数のイオンは多価インスリンイオンである。これらの多価イオンは、約1453±0.8(すなわち、4+イオンの1つ又は複数の単一同位体ピーク)及び/又は1162±1(すなわち、5+イオンの1つ又は複数の単一同位体ピーク)及び/又は968.8±1.5(すなわち、6+イオンの1つ又は複数の単一同位体ピーク)の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含み得る。
高分解能オービトラップ分析計の使用は、様々な被分析物の定性及び定量分析について報告された。例えば、米国特許出願公開第2008/0118932号(2007年11月9日出願)、Bredehoftら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2008年、22巻、477〜485頁、Le Bretonら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2008年、22巻、3130〜36頁、Thevisら、Mass Spectrom. Reviews、2008年、27巻、35〜50頁、Thomasら、J. Mass Spectrom.、2008年、43巻、908〜15頁、Schenkら、BMC Medical Genomics、2008年、1巻、41頁及びOlsenら、Nature Methods、2007年、4巻、709〜12頁を参照のこと。
被分析物アッセイの結果は、当技術分野で公知の多くの方法により最初の試料中の被分析物の量に関連付けることができる。例えば、サンプリング及び分析パラメーターが注意深く管理されているならば、所定のイオンの相対存在量は、当該相対存在量を最初の分子の絶対量に換算する表と比較することができる。或いは、外部標準を試料とともに実施することができ、標準曲線をそれらの標準から得たイオンに基づいて作成する。そのような標準曲線を用いて、所定のイオンの相対存在量を最初の分子の絶対量に換算することができる。特定の好ましい実施形態において、内部標準を用いてインスリンの量を計算するための標準曲線を作成する。そのような標準曲線を作成し、用いる方法は、当技術分野で周知であり、当業者は適切な内部標準を選択することができる。例えば、好ましい実施形態において、1つ又は複数の形の同位体標識インスリンを内部標準として用いることができる。イオンの量を最初の分子の量に関連させる多くの他の方法は、当業者に周知である。
本明細書で用いる場合、「同位体標識」は、質量分析技術により分析するとき、非標識分子と比べて標識分子の質量シフトをもたらす。適切な標識の例としては、重水素(H)、13C及び15Nなどがある。1つ又は複数の同位体標識を分子における1つ又は複数の位置に組み込むことができ、1つ又は複数の種類の同位体標識を同じ同位体標識分子に用いることができる。
質量分析による未改変インスリンA及び/又はB鎖の定量によるインスリンの定量
他の実施形態において、質量分析の前にインスリンの成分鎖を得るために、インスリンを化学処理に供することができる。インスリンのA鎖及びB鎖は、ジスルフィド還元を引き起こすことが当技術分野で公知である任意の化学的処理により分離することができる。例えば、インスリンをTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィン)で処理して、インスリンのジスルフィド架橋を還元し、A鎖とB鎖を分離することができる。
A鎖及びB鎖は、次にインスリンの精製のための上述のいずれか1つ又は複数の精製ステップに供することができる。好ましい実施形態において、A鎖及び/又はB鎖を質量分析の前にHPLCによる精製に供する。
精製されたならば、A鎖及び/又はB鎖を次にイオン化源に供する。インスリンの場合と同様に、当業者は、イオン化法の選択は、測定される被分析物、試料の種類、検出器の種類、ポジティブ対ネガティブモードの選択等に基づいて決定することができることを理解する。インスリンA鎖及びB鎖は、ポジティブ又はネガティブモードでイオン化され得る。好ましい実施形態において、インスリンA鎖及び/又はB鎖は、ESIによりポジティブモードでイオン化される。
インスリンA鎖のイオン化は、多価A鎖前駆イオン(2+、3+等の前駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、インスリンA鎖分子のポジティブエレクトロスプレーイオン化は、それぞれ1192.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有する2+及び3+価A鎖前駆イオンを発生させ得る。インスリンと同様に、インスリンA鎖のイオン化により生成する多価種の同一性及び量は、用いられるイオン化条件による影響を受ける。好ましい実施形態において、インスリンA鎖を酸性条件下でイオン化する。
インスリンA鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約1192.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有する1つ又は複数のインスリンA鎖前駆イオンを選択し得る。これらのインスリンA鎖前駆イオンのいずれかのフラグメント化により、約513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し得る。したがって、Q1が約1192.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のインスリンA鎖前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリンを定性的に評価することができる。
同様に、インスリンB鎖のイオン化は、多価B鎖前駆イオン(3+、4+、5+等の前駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、インスリンB鎖分子のポジティブエレクトロスプレーイオン化は、それぞれ1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有する3+、4+及び5+価B鎖前駆イオンを発生させ得る。インスリンと同様に、インスリンB鎖のイオン化により生成する多価種の同一性及び量は、用いられるイオン化条件による影響を受ける。好ましい実施形態において、インスリンB鎖を酸性条件下でイオン化する。
インスリンB鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有する1つ又は複数のインスリンB鎖前駆イオンを選択し得る。これらの3つのインスリンB鎖前駆イオンのフラグメント化により、約825.4±0.5、768.5±0.5、753.2±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し得る。したがって、Q1が約1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のインスリンB鎖前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約825.4±0.5、768.5±0.5、753.2±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される、好ましくは約345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリンを定性的に評価することができる。
質量分析による化学的に改変されたインスリンA及び/又はB鎖の定量によるインスリンの定量
代替実施形態において、別個のインスリンA鎖及びB鎖を、イオン化及び/又は精製の前に1つ又は複数の化学的改変ステップに供することができる。例えば、分離されたならば、インスリンA鎖及びB鎖分子は、構成要素であるシステインを完全にアルキル化するためのカルバミドメチル化を受け得る。例えば、カルバミドメチル化は、インスリンA鎖及び/又はB鎖を、DTT(1,4−ジチオトレイトール)による還元の後にヨードアセトアミドとの反応に供することによって達成することができる。インスリンA鎖のカルバミドメチル化は、約228.08amu(システイン当たり約57.02)の質量増加を引き起こす、4個のシステインのアルキル化をもたらす。インスリンB鎖のカルバミドメチル化は、約114.04amu(システイン当たり約57.02)の質量増加を引き起こす、2個のシステインのアルキル化をもたらす。
精製されたならば、化学的に改変された(例えば、アルキル化)A鎖及び/又はB鎖をイオン化源に供される。インスリンの場合と同様に、当業者は、イオン化法の選択は、測定される被分析物、試料の種類、検出器の種類、ポジティブ対ネガティブモードの選択等に基づいて決定することができることを理解する。アルキル化インスリンA鎖及びB鎖は、ポジティブ又はネガティブモードでイオン化することができる。好ましい実施形態において、アルキル化インスリンA鎖及び/又はB鎖は、ESIによりポジティブモードでイオン化される。
アルキル化インスリンA鎖のイオン化は、多価アルキル化A鎖前駆イオン(2+、3+等の前駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、アルキル化インスリンA鎖分子のポジティブエレクトロスプレーイオン化は、それぞれ1306.0±0.5及び871.0±0.5のm/zを有する2+及び3+価アルキル化A鎖前駆イオンを発生させ得る。インスリンと同様に、アルキル化インスリンA鎖のイオン化により生成する多価種の同一性及び量は、用いられるイオン化条件による影響を受ける。好ましい実施形態において、アルキル化インスリンA鎖を酸性条件下でイオン化する。
アルキル化インスリンA鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約1306.0±0.5及び871.0±0.5のm/zを有する1つ又は複数のアルキル化インスリンA鎖前駆イオンを選択し得る。これらのアルキル化インスリンA鎖前駆イオンのいずれかのフラグメント化により、約570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し得る。したがって、Q1が約1192.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のアルキル化インスリンA鎖前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリンを定性的に評価することができる。
同様に、アルキル化インスリンB鎖のイオン化は、多価アルキル化B鎖前駆イオン(3+、4+、5+等の前駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、アルキル化インスリンB鎖分子のポジティブエレクトロスプレーイオン化は、それぞれ1181.9±0.5、886.9±0.5及び709.8±0.5のm/zを有する3+、4+及び5+価アルキル化B鎖前駆イオンを発生させ得る。インスリンと同様に、アルキル化インスリンB鎖のイオン化により生成する多価種の同一性及び量は、用いられるイオン化条件による影響を受ける。好ましい実施形態において、アルキル化インスリンB鎖を酸性条件下でイオン化する。
アルキル化インスリンB鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約1181.9±0.5、886.9±0.5及び709.8±0.5のm/zを有する1つ又は複数のインスリンB鎖前駆イオンを選択し得る。これらの3つのアルキル化インスリンB鎖前駆イオンのフラグメント化により、約345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し得る。したがって、Q1が約1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のアルキル化インスリンB鎖前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリンを定性的に評価することができる。
上述の方法のいずれかの1つ又は複数のステップは、自動装置を用いて実施することができる。特定の実施形態において、1つ又は複数の精製ステップをオンラインで実施し、より好ましくは精製及び質量分析ステップのすべてをオンライン式で実施することができる。
以下の実施例は、本発明を説明する役割を果たす。これらの実施例は、本方法の範囲を制限するものではない。
実施例1: 試料の調製
様々な量のインスリンを含有する模擬血清試料は、直線的な応答を評価するために、模擬血清(0.002%プロテアーゼ阻害剤AEBSFを含むリン酸緩衝生理食塩水(PBS)緩衝液に溶かした牛血清アルブミン(BSA)40mg/mL)にヒトインスリンを様々な濃度でスパイクすることによって調製した(以下の実施例4で述べる)。
ヒトインスリンはまた、応答の直線性を評価するために、Golden West Biologicals,Inc.から入手した2回活性炭処理した血清に様々な濃度でスパイクした(以下の実施例4で述べる)。
実施例2: 質量分析前のインスリンの濃縮
前記で調製したヒトインスリンスパイク模擬及びストリップ血清の試料注入は、Cohesive Technologies Aria TX−420システムで、Aria OS V1.6以上のソフトウェアを用いて実施した。
試料75μLを、オンライン固相抽出(SPE)カラム、Waters Oasis HLB(25μm、2.1×20mm)に導入した。SPEカラムはヒトインスリンを保持したが、その他の血清タンパク質及び高分子は流出させた。
インスリンは、抽出カラムから40%アセトニトリルに溶かした0.2%ギ酸で溶出し、分析カラム(Phenomenex Inc.製の一体型C18分析カラム(粒径5μm、50×2.1mm))に添加した。試料中に含有されるその他の被分析物からインスリンを分離するために、HPLC勾配を分析カラムに適用した。移動相Aは、0.2%ギ酸水溶液で、移動相Bはアセトニトリルに溶かした0.2%ギ酸であった。HPLC勾配は28.5%有機勾配で開始し、約90秒で37%まで増加させた。
次に、インスリン濃縮試料を、インスリン定量のために高分解能/高精度MS又はMS/MSに供した。
実施例3: インスリンのイオン化に対するpHの影響
インスリンのイオン化は、ESI源を用いてポジティブイオンモードで行った。ポジティブインスリンイオンを発生させるためにこのイオン化源を使用する間、エレクトロスプレーキャリア溶液のpHが、発生したインスリンイオンの量及び同一性に影響を及ぼすことが観察された。
酸性条件下では、多価インスリンイオンが968.5±0.50(6+イオン)及び1162.3±0.50(5+イオン)のm/zで観察された。酸性条件下でのインスリンのイオン化から収集されたスペクトル例を図3Aに示す。
塩基性条件下では、多価インスリンイオンが1163.0±0.50(5+イオン)及び1453.8±0.50(4+イオン)のm/zで観察された。塩基性条件下でのインスリンのイオン化から収集されたスペクトル例を図3Bに示す。
酸性及び塩基性の両方の条件下で十分なシグナルが発生し、定量的分析を両条件下で実施することができた。
実施例4: 高分解能/高精度MSによるインスリンの検出及び定量
高分解能/高精度MSは、Agilent TOF MSシステム(Agilent Technologies、Inc.)を使用して実施した。このシステムは、高分解能/高精度MSを可能にするMS分析器を使用する。この機器は、インスリン測定中、約25,000FWHMの分解能及び約1ppmの質量精度を示す。
イオン化は、ESI源を用いてポジティブイオンモードで行った。実施例3で述べたように、エレクトロスプレーキャリア溶液のpHは、発生したインスリンイオンの量及び同一性に影響を及ぼした。実施例1で調製した試料は、SPEカラムからギ酸溶液によって溶出したので、試料は、イオン化の前に酸性化された。実施例3で記載したように、多価インスリンイオンは6+及び5+の荷電状態であることが観察された。
ストリップ血清試料から混入ピークが溶出することが観察された。図4Aは、QTOF質量分析器で発生した模擬血清試料中のインスリンの約900から1200のm/z範囲にわたるスペクトル例を示す。図4Bは、QTOF質量分析器で発生したストリップ血清試料マトリックスの混入ピークを示す。混入ピーク源は、インスリンピークとは異なる時間に溶出することが認められた(データは示さず)。
5+イオンの個々の同位体ピークを示す約1155から1176のm/z範囲にわたる高分解能/高精度スペクトル例を図5Aに示す。約1159と1166の間のスペクトル部分を拡大したものを図5Bに示す。スペクトルに見られるように、個々の同位体ピーク例は、約1161.72、1161.92、1162.12、1162.32、1162.52、1162.72、1162.92、1163.12及び1163.34のm/zに認められる。
6+イオンの個々の同位体ピークを示す約964から973のm/z範囲にわたる高分解能/高精度スペクトル例を図6Aに示す。約967と971.4の間のスペクトル部分を拡大したものを図6Bに示す。スペクトルに見られるように、個々の同位体ピーク例は、約968.28、968.45、968.62、968.79、968.95、968.12、968.28、968.45及び968.61のm/zに観察される。
定量の直線性を評価するために、スパイクした模擬及びストリップ血清試料におけるインスリン定量について1162.54±0.10のm/zを有するイオンのデータを収集した。いずれの種類の試料も約1.22ng/mLから1250ng/mLの濃度範囲にわたって直線性を示した。スパイクした模擬血清試料及びスパイクしたストリップ血清試料におけるインスリン検出のデータの直線性を示すグラフを図7及び8それぞれに示す。高分解能/高精度質量分析定量によるインスリンの適合度検定(R)を決定すると、スパイクした模擬血清では0.9981、スパイクしたストリップ血清では0.9979であった。
実施例5: タンデムMSによるインスリンの検出及び定量
MS/MSは、Thermo TSQ Vantage MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation)を使用して実施した。いずれもThermo Electron製である以下のソフトウェアプログラム、TSQ Vantage V2.0.0以上、Xcalibur V2.0以上及びLCQuan V2.5以上を本明細書で記載した実施例において使用した。分析カラムから排出する液体溶媒/被分析物は、MS/MS分析器のESI源界面に流動した。溶媒/被分析物混合液は、界面の加熱されたチュービング内で蒸気に変換された。被分析物は、ESIによって酸性条件下においてポジティブイオンモードでイオン化された。
イオンは、最初の四重極(Q1)を通過した。いくつかの可能なインスリン前駆イオンが、Q1で観察された。Q1スペクトルの例は図9に見られる。フラグメンテーションの試験は、約1163.32±0.50(5+イオン)及び約969.56±0.50(6+イオン)のm/zを有する多価インスリン前駆イオンで実施した。各前駆イオンのフラグメンテーションからのプロダクトイオンスキャンの例を図10及び11のそれぞれに示す。
5+及び6+前駆イオンからのフラグメンテーションパターンに対する衝突エネルギーの影響を調べた。各前駆イオンは、約7eVから約80eVの範囲の衝突エネルギーでフラグメント化し、3種類の選択されたフラグメントイオン(約135.9±0.50、226.2±0.50及び345.3±0.50のm/z)の相対強度をモニターした。これらの試験の結果を図12に示す。図12に示したように、フラグメントイオンの相対強度は、衝突エネルギーに応じて著しく変化する。それぞれモニターした遷移に最適な衝突エネルギー値を表1に示す。
6+イオンのフラグメンテーションによってインスリンを定量するために、四重極2(Q2)に入ってくる前駆イオンはアルゴンガスと30eVの衝突エネルギーで衝突してイオンフラグメントを発生し、このイオンフラグメントはさらに選択するために四重極3(Q3)を通過した。以下の質量遷移が969.56±0.50前駆イオンのフラグメンテーションで認められた。Q3スキャン(プロダクトイオンスキャン)から収集されたフラグメンテーションスペクトルの例を図10に示す。
観察された遷移のうち2つをMRMモードでモニターし、定量分析用に合計した:969.56±0.50から135.9±0.50及び226.2±0.50の前駆イオン(表2を参照のこと)。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、図10で認められた任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択することができる。同様に、定量は30eVの衝突エネルギーで遂行したが、十分なイオンシグナルを生じる任意の衝突エネルギーを使用してもよく、モニターするフラグメントイオン(単数又は複数)の同一性に依存してもよい。例えば、前記で示した2つのフラグメントイオンでは、衝突エネルギーは約20から約50eVの範囲、例えば、約25から約40eVの範囲、例えば、約28から32eVであってもよい。
5+イオンのフラグメンテーションによってインスリンを定量するために、四重極2(Q2)に入ってくる前駆イオンはアルゴンガスと49eVの衝突エネルギーで衝突してイオンフラグメントを発生し、このイオンフラグメントはさらに選択するために四重極3(Q3)を通過した。以下の質量遷移が1163.32±0.50前駆イオンのフラグメンテーションで観察された。Q3スキャン(プロダクトイオンスキャン)から収集されたフラグメンテーションスペクトルの例を図11に示す。
観察された遷移のうち2つをMRMモードでモニターし、定量分析用に合計した:1163.32±0.50から135.9±0.50及び226.2±0.50の前駆イオン(表2を参照のこと)。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、図10で認められた任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択してもよい。同様に、定量は49eVの衝突エネルギーで遂行したが、十分なイオンシグナルを生じる任意の衝突エネルギーを使用してもよく、モニターするフラグメントイオン(単数又は複数)の同一性に依存してもよい。例えば、前記で示した2つのフラグメントイオンでは、衝突エネルギーは約25から約70eVの範囲、例えば、約30から約60eVの範囲、例えば、約35から50eVであってもよい。
実施例6: タンデムMSによるインスリンA鎖及びB鎖の検出及び定量
実施例1で記載したように調製したインスリンをスパイクした模擬血清及びストリップ血清試料をTCEP(トリス(2−カルボキシエチル)ホスフィンで処理し、インスリンのジスルフィド架橋を還元し、A鎖及びB鎖に分離した。ジスルフィド還元後、分離したA鎖及びB鎖を含有する試料に実施例2で記載した精製手順と同じ手順を行った。得られたインスリンA鎖及びB鎖を、実施例5で記載したようにMS/MS分析に供した。両被分析物は、ESIを用いて酸性条件下においてポジティブモードでイオン化した。
いくつかの可能なインスリンA鎖及びB鎖前駆イオンが、Q1で観察された。2つの可能なA鎖前駆イオン(2+及び3+荷電状態)及び2つの可能なB鎖前駆イオン(3+及び4+荷電状態)を示す複合スペクトルを図13に示す。これらの2つのA鎖前駆イオンは、約1192.86±0.50(2+イオン)及び795.43±0.50(3+イオン)のm/zで観察された。これらの2つのB鎖前駆イオンは、約1144.09±0.50(3+イオン)及び858.40±0.50(4+イオン)のm/zで観察された。第3の可能なB鎖前駆イオン(図14に示す)はまた、約686.83±0.50(5+イオン)のm/zで観察された。フラグメンテーションの試験は、前記のA鎖及びB鎖前駆イオンすべてで実施した。
A鎖3+前駆イオン(約795.43±0.50のm/z)からのフラグメンテーションパターンに対する衝突エネルギーの影響を調べた。前駆イオンは、約7eVから約80eVの範囲の衝突エネルギーでフラグメント化し、4種類の選択されたフラグメントイオン(約513.0±0.50、399.0±0.50、236.0±0.50及び133.0±0.50のm/z)の相対強度をモニターした。これらの試験の結果を図15に示す。図15に示したように、フラグメントイオンの相対強度は、衝突エネルギーに応じて著しく変化する。それぞれモニターした遷移に最適な衝突エネルギー値を表3に示す。
インスリンの定量は、約1192.86±0.50(2+イオン)及び795.43±0.50(3+イオン)のm/zを有するA鎖前駆イオンで実施した。定量実験は、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では、2+イオン(約1192.86±0.50のm/z)又は3+イオン(約795.43±0.50のm/z)を前駆イオンとして選択して、表3に示したような衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラグメントイオン、513.0±0.50、399.0±0.50、236.0±0.50及び133.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモニターされた。定量は、4つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、観察された任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択してもよい。
インスリンの定量はまた、約1144.09±0.50(3+イオン)、858.40±0.50(4+イオン)及び686.83±0.50(5+イオン)のm/zを有するB鎖前駆イオンで実施した。定量実験は、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では、3+イオン(約1144.09±0.50のm/z)又は4+イオン(約795.43±0.50のm/z)又は5+イオン(約686.83±0.50のm/z)を前駆イオンとして選択して、30eVの衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラグメントイオン、226.2±0.50及び345.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモニターされた。30eVの衝突エネルギーでのB鎖4+イオンのフラグメンテーションからのスペクトル例(すなわち、プロダクトイオンスキャン)を図16に示す。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、図16で観察された任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択してもよい。
実施例7 タンデムMSによるインスリンA鎖(アルキル化)及びB鎖(アルキル化)の検出及び定量
インスリンをスパイクした模擬血清及びストリップ血清試料をDTT(1,4−ジチオスレイトール)で処理して、分離したA鎖及びB鎖を含有する模擬及びストリップ血清試料を生成した。精製する前に、インスリンA鎖及びB鎖分子をカルバミドメチル化し、分子中に存在する構成システインそれぞれを完全にアルキル化した。A鎖において、4個のシステインがこの方法によってアルキル化され、約228.08amuの質量増加が生じた。B鎖において、2個のシステインがこの方法によってアルキル化され、約114.04amuの質量増加が生じた。
システインをアルキル化した後、アルキル化されたA鎖及びアルキル化されたB鎖を含有する試料に、実施例2で記載した精製手順と同じ手順を行った。得られたアルキル化A鎖及びアルキル化B鎖を、実施例5で記載したようにMS/MS分析に供した。両被分析物は、ESIを用いて酸性条件下においてポジティブモードでイオン化した。
いくつかの可能なアルキル化A鎖及びアルキル化B鎖前駆イオンが、Q1で観察された。約1306.0±0.50(2+イオン)及び871.0±0.50(3+イオン)のm/zを有する2個の可能なA鎖前駆イオンをフラグメンテーション及び定量のために選択した。約1181.9±0.50(3+イオン)及び886.40±0.50(4+イオン)及び709.80±0.50(5+イオン)のm/zを有する3個の可能なアルキル化B鎖前駆イオンをフラグメンテーション及び定量のために選択した。
インスリンの定量は、約1306.0±0.50(2+イオン)及び871.0±0.50(3+イオン)のm/zを有するアルキル化A鎖前駆イオンで実施した。定量実験は、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では、2+イオン(約1306.0±0.50のm/z)又は3+イオン(約871.0±0.50のm/z)を前駆イオンとして選択して、30eVの衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラグメントイオン、133.0±0.50、293.0±0.50、456.0±0.50及び570.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモニターされた。定量は、4つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移を選択してもよい。
インスリンの定量はまた、約1181.9±0.50(3+イオン)、886.9±0.50(4+イオン)及び709.8±0.50(5+イオン)のアルキル化B鎖前駆イオンで実施した。定量実験は、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では、3+イオン(約1181.9±0.50のm/z)、4+イオン(約886.9±0.50のm/z)又は5+イオン(約709.8±0.50のm/z)を前駆イオンとして選択して、30eVの衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラグメントイオン、226.2±0.50及び345.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモニターされた。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移を選択してもよい。
実施例8: インスリンB鎖の定量によるインスリン定量用のヒト試料の調製
2種類の内部標準溶液をヒト試料におけるインスリンの定量で使用した。第1の内部標準溶液は、ウシインスリンを0.2%ギ酸水溶液に10pmol/μLの濃度で溶解して調製した。次に、この溶液30μLを、1.5Mトリス塩基及びエタノールを15:85の比率で含有する塩基/抽出溶液500mLで希釈した。第2の内部標準溶液は、ペプチド1mgを0.2%ギ酸水溶液1mLに溶解することによって、同位体標識したヒトインスリンB鎖(プロリンが5個の13C及び1個の15Nで標識されている)で調製した。この濃縮溶液5μlを水1000μLで希釈して、第2の内部標準溶液を調製した。
以前に凍結したヒト血清試料を解凍し、室温に戻し、十分に撹拌した。一旦解凍したら、各試料150μLをウシインスリンでスパイクした塩基/抽出溶液350μLに添加した。得られた混合物を1000rpmの速度で2分間撹拌し、−20℃冷凍庫内で60±5分間インキュベートして、沈殿物を形成させた。インキュベーション後、試料を5500rpmで10分間遠心した。次に、各試料の上清250μLを96マイクロリットルプレートに移した。その後、TCEP還元溶液(Thermo Scientificカタログ番号77720)2mLを第2の内部標準溶液100μLとともに混合し、この混合液20μLを96マイクロリットルプレートの各試料に添加した。試料を再度1000rpmの速度で2分間撹拌し、37℃のインキュベーターで60±5分間インキュベートして、試料中のインスリンの還元を起こさせ、試料中に存在するいかなる完全なインスリンもA及びB鎖に分離させた。次に、試料を−20℃冷凍庫内で10分間インキュベートして、沈殿物を形成させた。沈殿した試料を再度5500rpmで10分間遠心した。次に、各試料の上清の225を、MS/MS分析の前にSPE及びHPLCで濃縮した。
実施例9: 質量分析前のヒト試料のインスリンB鎖の濃縮
実施例8で調製した加工血清試料の試料注入は、Cohesive Technologies Aria TX−420システムで、Aria OS V1.6以上のソフトウェアを用いて実施した。
各試料の225μLを、Waters Oasis HLB(25μm、2.1×20mm)、オンライン固相抽出(SPE)カラムに導入した。SPEカラムはインスリンB鎖を保持したが、その他のタンパク質及び高分子は流出させた。保持されたインスリンB鎖は0.2%ギ酸で洗浄した。
次に、インスリンB鎖は0.025%イソプロパノールを含む0.2%ギ酸に溶かした35%アセトニトリルで抽出カラムから溶出し、ガードカートリッジを備えた分析カラム(Michrom Bioresources 300 Armstrong Magic C4(2.1×50mm、粒径5μm)分析カラム及びPhenomenex Securityガードカラムカートリッジ(Phenomenex P/N AHO−4286))に添加した。試料中に含有されるその他の被分析物からインスリンを分離するために、HPLC勾配をガード/分析カラムに適用した。移動相Aは、0.2%ギ酸水溶液で、移動相Bは2.5%イソプロパノールを含むアセトニトリルに溶かした0.2%ギ酸であった。HPLC勾配は12.0%有機勾配で開始し、約90秒で42%まで増加させた。
次に、インスリン濃縮試料を、インスリン定量のためにMS/MSに供した。
実施例10: タンデムMSによるヒト血清のインスリンB鎖の検出及び定量
MS/MSは、Thermo TSQ Vantage MS/MSシステム(Thermo Electron Corporation)を使用して実施した。いずれもThermo Electron製である以下のソフトウェアプログラム、TSQ Vantage V2.0.0以上、Xcalibur V2.0以上及びLCQuan V2.5以上を、本明細書で記載した実施例において使用した。分析カラムから排出する液体溶媒/被分析物は、MS/MS分析器の加熱されたESI源界面に流動した。溶媒/被分析物混合物は、界面の加熱されたチュービング内で蒸気に変換した。被分析物は、ESIを用いて酸性条件下においてポジティブイオンモードでイオン化した。
実施例6で前述したように、いくつかの可能なインスリンB鎖前駆イオンが、Q1で観察された。約686.83±0.50(5+イオン)のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンをフラグメンテーションのために選択した。フラグメンテーション試験によって、いくつかのインスリンB鎖フラグメントイオンが示された。フラグメンテーションスペクトルの1例を図17に示す。
ヒトインスリンB鎖5+前駆イオン(約686.9±0.50のm/z)のフラグメンテーションパターンに対する衝突エネルギーの影響を調べた。前駆イオンは、約7Vから約80Vの範囲の衝突エネルギーでフラグメント化し、5種類の選択されたフラグメントイオン(約906.0±0.50、825.0±0.50、768.5±0.50、753.0±0.50及び703.0±0.50のm/z)の相対強度をモニターした。これらの試験の結果を図18に示す。図18に示したように、フラグメントイオンの相対強度は、衝突エネルギーに応じて著しく変化する。それぞれモニターした遷移にほぼ最適な衝突エネルギー値を表8に示す。
約768.5±0.50及び753.2±0.50のm/zを有するヒトインスリンB鎖フラグメントイオンを定量で使用するために選択した。同様の試験を、いずれも実施例8で記載したウシインスリン(内部標準1)及び同位体標識インスリンB鎖(内部標準2)で実施した。さらなる定量試験で使用するために選択した各種のインスリンB鎖についてモニターした質量遷移を表9に示す。
定量は、表8で示したインスリンB鎖それぞれの2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、指示した被分析物のいずれかの定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、図17で認められた任意のその他のヒトインスリンB鎖フラグメントイオンを含む)を選択してもよい。
実施例11: アッセイ内及びアッセイ間の精度、再現性及び正確度の試験
実施例8〜10で記載したアッセイのアッセイ内及びアッセイ間の精度、再現性及び正確度の試験は、アッセイの報告可能な推定範囲を包含するように、8、12、20、40及び80μIU/mLのヒトインスリンでスパイクしたストリップ血清(Biocell Laboratories Inc.、1131−00、ロットHHP03)から作製した5つのQCプールで実施した。
5つのQCプールそれぞれの複製物8つを1回のアッセイで分析して、アッセイ内の試料の変動係数(CV)を決定した。これらの試験から得られたデータを表10に示す。結果に行った統計処理によって、5つのQCプールの再現性(CV)は3.0から7.9%の範囲で、いずれも許容可能なレベル内である(すなわち、≦15%CV、≦20%CVが許容可能なLOQレベルは除く)ことが示された。表10で示したデータのさらなる分析によって、各プールのアッセイ内正確度は80〜120%の許容範囲内であることが明らかになった。
アッセイ間変動を調べるために、5つのQCプールそれぞれの8つの複製物を、別々の日に5回分析した。これらの試験から得られたデータを表11に示す。プールのアッセイ間変動(%CV)は7.1から14.0%の範囲であった。8、12、20、40及び80μIU/mLの標的インスリンレベルの全体的な変動は、それぞれ14.0%、10.2%、10.0%、7.5%及び7.1%であった。全プールの分析は、≦20%CVが許容可能なLOQレベル以外は、≦15%CVの許容可能な再現性の必要条件を満たしていた。表11で示したデータのさらなる分析によって、各プールのアッセイ間正確度は80〜120%の許容範囲内であることが明らかになった。
実施例12: 分析感度:ブランク上限(LOB)、検出限界(LOD)及び定量限界(LOQ)
選択性とは、試料中のその他の成分の存在下で被分析物を区別し定量する分析方法の能力である。LOB及びLODはいずれも、ある測定値がその測定に関連した不確定度よりも大きい指標である。LOBは、ゼロ濃度からの標準偏差の2倍と定義される。LODは、ゼロ濃度からの標準偏差の4倍と定義される。選択性を試験するために、適切な生物学的マトリックス(ストリップ血清)のブランク試料を用意し、干渉を試験し、実施例8〜10で記載した方法によって分析した。ブランクのストリップ血清試料は14回測定した。これらの試験の結果を統計学的に分析すると、LOB1.4μIU/mL及びLOD1.8μIU/mLであった。
LLOQは、測定値が定量的に有意義になる点である。このLLOQでの被分析物応答は、精度20%及び正確度80%から120%で、同定可能で、明確に区別され、再現性がある。LLOQは、予測されたLLOQ(1.25、2.5、5、10、15及び25μIU/mLに近い濃度のヒトインスリンでスパイクした6つのストリップ血清標本をアッセイし、次いで7回の測定のアッセイ内再現性を評価することによって決定された。これらの試験のデータを分析し、プロットすると(図19に示す)、LLOQは曲線から3μIU/mLであると決定され、許容される性能を生じる最低濃度はCVの95%信頼区間で20%未満のままであった。
実施例13: アッセイの報告可能な範囲及び直線性
実施例8〜10で記載したアッセイの直線範囲を確立するため、8つのスパイクしたストリップ血清試料(ヒトインスリン濃度5、10、15、25、50、100、200及び300μIU/mL)を調製し、別々の日に5回分析した。5回の連続した測定の重み付き(1/X)直線回帰によって、±20%の正確度で0.995以上の相関係数が得られ、定量化できる範囲は5から300μIU/mLであることがわかった。検量線の例を図20に示す。
実施例14: 標本種類の試験
マトリックス特異性は、10人のヒト患者プールを6つの異なる種類のBD Vacutainer(商標)管(そのままの血清、SST、EDTA血漿、ヘパリンナトリウム血漿、ヘパリンリチウム血漿及びクエン酸ナトリウム血漿)に収集することによって評価した。次に、各プールの試料のインスリンを抽出し、実施例8〜10で記載した方法に従って分析した。これらの試験によって、クエン酸ナトリウム血漿試料は分析に許容されないが、その他の種類の試料はすべて許容可能であることが示された。
実施例15: 干渉試験
インスリン決定に対する溶血干渉の影響は、軽度、中等度及び高度の溶血患者試料において様々なレベルのインスリンをスパイクすることによって評価した。次に、インスリンを抽出し、実施例8〜10で記載した方法に従って分析した。これらの試験のデータによって、許容可能な結果(すなわち、80〜120%内の正確度)が、軽度及び中等度の溶血試料で得られることが示された。高度に溶血した試料は許容されなかった。
インスリン決定に対する脂肪血症干渉の影響は、軽度、中等度及び高度の脂肪血症患者試料において様々なレベルのインスリンをスパイクすることによって評価した。次に、インスリンを抽出し、実施例8〜10で記載した方法に従って分析した。これらの試験のデータによって、許容可能な結果(すなわち、80〜120%内の正確度)が、全レベルの脂肪血症で得られることが示された。
インスリン決定に対するビリルビン干渉の影響は、軽度、中等度及び高度の黄疸患者試料において様々なレベルのインスリンをスパイクすることによって評価した。次に、インスリンを抽出し、実施例8〜10で記載した方法に従って分析した。これらの試験のデータによって、許容可能な結果(すなわち、80〜120%内の正確度)が、全レベルのビリルビンで得られることが示された。
本明細書で言及又は引用した論文、特許及び特許出願、並びにその他の全文献及び電子的に入手できる情報の内容は、各個別の刊行物が参照により具体的及び個別に組み入れられるように示される場合と同程度に参照により本明細書に全体として組み入れられる。出願人らは、任意のこのような論文、特許、特許出願又はその他の物理的及び電子的文献からのありとあらゆる材料及び情報を本出願に物理的に組み入れる権利を保持する。
本明細書で例示的に記載した方法は、本明細書に具体的に開示していない任意の要素又は要素(複数)、限定又は限定(複数)の非存在下で適切に実施することができる。したがって、例えば、用語「comprising(含む)」、「including(含む)」、「containing(含有する)」などは、広範に、限定されることなく読み取られるべきである。さらに、本明細書で使用した用語及び表現は、限定ではなく説明のために使用されており、このような用語及び表現の使用において、示された、及び説明された特徴の任意の同等物又はその一部を排除するものではない。請求した本発明の範囲内において様々な変更が可能であることは認識されている。したがって、本発明を好ましい実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書で開示しその中で実施される本発明の変更及び変形は当業者であれば用いることができ、このような変更及び変形は本発明の範囲内であると見なされることを理解されたい。
本発明は、本明細書において広範及び一般的に記載してきた。一般的な開示に含まれるより狭い種及び亜種のそれぞれも本方法の一部を形成する。これには、部類から任意の対象物を削除する条件又は消極的限定を有する方法の一般的説明が、削除された材料が本明細書に具体的に記載されているか否かに関わらず、含まれる。
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、方法の特徴又は態様がマーカッシュ群によって記載されている場合は、当業者であれば、本発明はまた、マーカッシュ群の任意の個々の構成要素又は構成要素の亜群によって記載されることを理解するであろう。

Claims (87)

  1. タンデム質量分析により生物学的試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
    (a)インスリンからインスリンB鎖を得るのに適する条件に試料を供するステップ、
    (b)インスリンB鎖濃縮画分を得るために、ステップ(a)からの試料を処理するステップ、
    (c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンB鎖イオンを発生させるのに適する条件下で、濃縮インスリンB鎖をイオン化源に供するステップ、及び
    (d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンB鎖イオンの量を決定するステップ
    を含み、
    ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
  2. ステップ(b)の前記処理するステップが、固相抽出(SPE)によりインスリンB鎖を濃縮するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  3. ステップ(b)の前記処理するステップが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)によりインスリンB鎖を濃縮するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  4. 前記生物学的試料がヒト血漿又は血清試料を含む、請求項1に記載の方法。
  5. 決定されるインスリンの量がヒトから採取された場合に試料中に存在するインスリンの量である、請求項4に記載の方法。
  6. 前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、請求項1に記載の方法。
  7. 前記サンプルがポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、請求項1に記載の方法。
  8. 前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、請求項7に記載の方法。
  9. 前記インスリンB鎖がイオン化の前に化学的に改変されていない、請求項1に記載の方法。
  10. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるインスリンB鎖前駆イオンを含む、請求項9に記載の方法。
  11. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、906.0±0.5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項9に記載の方法。
  12. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1144.2±0.5の質量電荷比(m/z)を有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン、858.3±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン及び686.8±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項9に記載の方法。
  13. 前記タンデム質量分析が、686.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するヒトインスリンB鎖前駆イオンを発生させるステップ、及び、前記前駆イオンを906.0±0.5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンにフラグメント化するステップを含む、請求項1に記載の方法。
  14. ステップ(d)で決定されるイオンが768.5±0.5及び753.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群からの1つ又は複数のイオンを含む、請求項13に記載の方法。
  15. 前記フラグメント化するステップが10〜25V(端点を含む)の範囲内の衝突エネルギーを用いて行われる、請求項13に記載の方法。
  16. 前記インスリンB鎖がイオン化の前に化学的に改変される、請求項1に記載の方法。
  17. 前記化学的改変が前記インスリンB鎖をアルキル化するステップを含む、請求項16に記載の方法。
  18. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1181.9±0.5、886.9±0.5及び709.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるアルキル化インスリンB鎖前駆イオンを含む、請求項17に記載の方法。
  19. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、345.0±0.5及び226.2±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項17に記載の方法。
  20. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1181.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン、886.9±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン及び709.8±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオンからなる群から選択される2つ以上のフラグメントイオンを含む、請求項17に記載の方法。
  21. 各前駆イオンからの前記フラグメントイオンが345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるイオンを含む、請求項20に記載の方法。
  22. タンデム質量分析により、ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
    (a)前記試料からインスリン濃縮画分を得るために、前記試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
    (b)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンイオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンをイオン化源に供するステップ、及び
    (c)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンイオンの量を決定するステップ
    を含み、
    前記試料はイオン化の前に免疫精製に供されず、ステップ(c)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
  23. 前記生物学的試料が血漿又は血清試料を含む、請求項22に記載の方法。
  24. 前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、請求項22に記載の方法。
  25. 前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、請求項22に記載の方法。
  26. 前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、請求項25に記載の方法。
  27. ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1162.5±0.5及び968.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるインスリン前駆イオンを含む、請求項25に記載の方法。
  28. ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項27に記載の方法。
  29. 前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、1162.5±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び968.9±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項27に記載の方法。
  30. 各前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項29に記載の方法。
  31. 前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に塩基性条件に供される、請求項21に記載の方法。
  32. 前記試料を塩基性条件に供するステップが前記試料をアンモニアに供するステップを含む、請求項31に記載の方法。
  33. ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1453.8±0.5及び1163.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるインスリン前駆イオンを含む、請求項31に記載の方法。
  34. ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項33に記載の方法。
  35. 前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、1163.0±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び968.9±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項33に記載の方法。
  36. タンデム質量分析により試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
    (a)前記試料からインスリン濃縮画分を得るために前記試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
    (b)質量分析により検出できるインスリン前駆イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンをイオン化源に供するステップであって、ここで、前記インスリン前駆イオンは、1162.5±0.5の質量電荷比(m/z)を有する、ステップ、
    (c)質量分析により検出できる1つ又は複数のフラグメントイオンを発生させるために前記インスリン前駆イオンを約40〜70eVの範囲内の衝突エネルギーでの衝突誘起解離に供するステップ、及び
    (d)質量分析により1つ又は複数の前記フラグメントイオンの量を決定するステップ
    を含み、
    ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
  37. 前記試料が生物学的試料を含む、請求項36に記載の方法。
  38. 前記試料が血漿又は血清試料を含む、請求項36に記載の方法。
  39. 前記試料がヒトから採取される生物学的試料を含み、前記方法がヒトから採取される場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するために用いられる、請求項36に記載の方法。
  40. 前記イオン化条件が前記試料をイオン化の前に酸性条件に供するステップを含む、請求項36に記載の方法。
  41. 前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、請求項40に記載の方法。
  42. 前記イオン化条件が前記試料をイオン化の前に塩基性条件に供するステップを含む、請求項36に記載の方法。
  43. 前記試料を塩基性条件に供するステップが前記試料をアンモニアに供するステップを含む、請求項42に記載の方法。
  44. 前記イオン化がエレクトロスプレーイオン化(ESI)源を用いてポジティブイオンモードで行われる、請求項36に記載の方法。
  45. 前記衝突エネルギーが約40〜60eVの範囲内にある、請求項36に記載の方法。
  46. 前記衝突エネルギーが約40〜50eVの範囲内にある、請求項36に記載の方法。
  47. 前記1つ又は複数のフラグメントイオンが226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む、請求項36に記載の方法。
  48. タンデム質量分析により、ヒトから採取される場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
    (a)インスリンからインスリンA鎖を得るのに適する条件に試料を供するステップ、
    (b)インスリンA鎖濃縮画分を得るために、ステップ(a)からの試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
    (c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンA鎖イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンA鎖をイオン化源に供するステップ、及び
    (d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンA鎖イオンの量を決定するステップ
    を含み、
    ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
  49. 前記生物学的試料が血漿又は血清試料を含む、請求項48に記載の方法。
  50. 前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、請求項48に記載の方法。
  51. 前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、請求項48に記載の方法。
  52. 前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、請求項41に記載の方法。
  53. ステップ(a)で得られた前記インスリンA鎖がイオン化の前に化学的に改変されていない、請求項48に記載の方法。
  54. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1192.9±0.5及び795.4±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるインスリンA鎖前駆イオンを含む、請求項53に記載の方法。
  55. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項53に記載の方法。
  56. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1192.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び795.4±0.5のm/zを有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項53に記載の方法。
  57. 各前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項56に記載の方法。
  58. イオン化の前にステップ(a)で得られたインスリンA鎖を化学的に改変するステップをさらに含む、請求項48に記載の方法。
  59. 前記化学的改変が前記インスリンA鎖をアルキル化するステップを含む、請求項58に記載の方法。
  60. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1306.0±0.5及び871.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるアルキル化インスリンA鎖前駆イオンを含む、請求項59に記載の方法。
  61. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項59に記載の方法。
  62. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1306.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び871.0±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項59に記載の方法。
  63. 各アルキル化前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項62に記載の方法。
  64. 高分解能/高精度質量分析により試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
    (a)多価インスリンイオンを発生させるのに適する条件下で前記試料からのインスリンをイオン化源に供するステップであって、ここで、前記多価インスリンイオンは、質量分析により検出できる、ステップ、
    (b)高分解能/高精度質量分析により1つ又は複数の多価インスリンイオンの量を決定するステップ
    を含み、
    ステップ(b)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
  65. 前記高分解能/高精度質量分析が10,000以上のFWHM及び50ppm以下の質量精度で行われる、請求項64に記載の方法。
  66. 前記高分解能/高精度質量分析が15,000以上のFWHM及び20ppm以下の質量精度で行われる、請求項64に記載の方法。
  67. 前記高分解能/高精度質量分析が20,000以上のFWHM及び5ppm以下の質量精度で行われる、請求項64に記載の方法。
  68. 前記高分解能/高精度質量分析が高分解能/高精度飛行時間(TOF)型質量分析計を用いて行われる、請求項64に記載の方法。
  69. 前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、請求項64に記載の方法。
  70. 前記イオン化条件が酸性条件下でのインスリンのイオン化を含む、請求項64に記載の方法。
  71. 前記酸性条件がイオン化の前のギ酸による前記試料の処理を含む、請求項69に記載の方法。
  72. 前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが4+、5+及び6+価インスリンイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む、請求項64に記載の方法。
  73. 前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが6+価インスリンイオンを含む、請求項72に記載の方法。
  74. 前記1つ又は複数の6+価インスリンイオンが、約968.0±1.5の範囲内の質量電荷比(m/z)を有する1つ又は複数のイオンを含む、請求項73に記載の方法。
  75. 6+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが、968.28±0.1、968.45±0.1、968.62±0.1、968.79±0.1、968.95±0.1、968.12±0.1、968.28±0.1、968.45±0.1及び968.61±0.1の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む、請求項73に記載の方法。
  76. 前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが5+価インスリンイオンを含む、請求項72に記載の方法。
  77. 5+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが約1162.5±1.0の範囲内の質量電荷比(m/z)を有する1つ又は複数のイオンを含む、請求項76に記載の方法。
  78. 5+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが、1161.72±0.1、1161.92±0.1、1162.12±0.1、1162.32±0.1、1162.52±0.1、1162.72±0.1、1162.92±0.1、1163.12±0.1及び1163.34±0.1の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む、請求項76に記載の方法。
  79. 5+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが1162.54±0.1の質量電荷比(m/z)を有するイオンを含む、請求項76に記載の方法。
  80. 前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが4+価インスリンイオンを含む、請求項72に記載の方法。
  81. 4+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが約1452.9±0.8の範囲内の質量電荷比(m/z)を有する1つ又は複数のイオンを含む、請求項80に記載の方法。
  82. イオン化の前に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により前記試料からインスリンを精製する、請求項64に記載の方法。
  83. 試料がHPLCの前に固相抽出(SPE)に供される、請求項81に記載の方法。
  84. 前記試料が生物学的試料を含む、請求項64に記載の方法。
  85. 前記試料がヒトから得られるものである、請求項64に記載の方法。
  86. 前記試料が血漿又は血清試料を含む、請求項64に記載の方法。
  87. 前記試料がヒトからの生物学的試料であり、前記方法がヒトから採取される場合の前記試料中のインスリンの量を決定するために用いられる、請求項64に記載の方法。
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