JP2017161447A - 分析方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】質量分析計を用いて、インタクトなタンパク質を分析する方法を提供する。【解決手段】質量分析計(30)は、イオン化部(2)、第一質量分離部(3)、開裂部(4)、第二質量分離部(5);および検出部(6)を備える。分析対象のタンパク質をインタクトなタンパク質として含む試料が質量分析計に導入され、イオン化部(2)でイオン化される。イオン化は、例えばエレクトロスプレーイオン化法により行われる。第一質量分離部(3)は、特定のm/zを有するイオンをプリカーサイオンとして選別する。本発明の分析方法では、プリカーサイオンとして、タンパク質の多価イオンが選別される。【選択図】図1

Description

本発明は、質量分析計を用いたタンパク質の分析方法に関する。
血液等の生体試料中のタンパク質濃度を正確に定量することは、機能研究、病態把握、医薬品開発等において重要である。例えば、インスリンは、生体中の血糖を下げるホルモンであり、血中のインスリン濃度を測定することにより、糖尿病の診断や病態把握、治療奏功の判定が行われている。
生体試料中の特定のタンパク質を高感度に検出して定量可能な手法として、ELISA法等の免疫学的測定法が広く用いられている。免疫学的測定法は、抗体やキット等の消耗品が高価であることや、キットの個体差等に起因する測定誤差が生じ易いことが問題である。
近年、生体試料等の様々な夾雑物を含有する試料中の特定のタンパク質やペプチドを個別に定量可能な手法として、質量分析(MS)を用いた分析方法が注目されている(例えば特許文献1参照)。中でも、液体クロマトグラフィー(LC)とタンデム型質量分析計(MS/MS)とを組み合わせたLC/MS/MSを用いたマルチプル・リアクション・モニタリング(MRM)は、多様な夾雑物を含む試料中の目的物質を高精度で定量可能であり、生体試料中のタンパク質の分析方法としての応用が進んでいる。
MRMでは、試料中の各成分がLCで時間的に分離されて質量分析計に導入される。質量分析計に導入された試料は、イオン化プローブでイオン化され、様々なイオンを生じる。プローブで発生したイオン(プリカーサイオン)は、前段のMSで、m/zに基づいて検出対象となる特定のイオンが選択され、コリジョンセルで、衝突誘起解離(CID)により複数種のイオン(プロダクトイオン)を生成する。後段のMSで、m/zに基づいて特定のプロダクトイオンが検出器へ透過され、検出器でプロダクトイオンが定量される。分析対象のタンパク質のプリカーサイオンとプロダクトイオンの組み合わせ(トランジション)およびCIDのコリジョンエネルギーを予め選択しておけば、測定ごとに条件の最適化を行う必要がない。そのため、簡便な手法で、生体試料中に含まれる微量のタンパク質を高感度に分析することが可能である。
タンパク質の多くは、数千Da〜数万Daの分子量を有する。一方、質量分析計の質量ダイナミックレンジには限界がある。例えば、四重極型質量分析計で検出可能なm/zの上限は2000〜3000程度である。そのため、MRM分析では、質量分析計での分析に適した分子量を有するように、タンパク質の前処理が行われるのが一般的である。
タンパク質を低分子量化する前処理としては、プロテアーゼ消化により、タンパク質を特定のアミノ酸配列位置で切断する方法が一般的である。タンパク質にジスルフィド(S−S)結合が残存していると、プロテアーゼ消化により生じるペプチドフラグメントの種類が多様となり、MRMトランジションの予測が困難となる。そのため、インスリンのようにジスルフィド結合を有するタンパク質が分析対象である場合は、試料の前処理として、還元アルキル化等によりジスルフィド結合を切断後にプロテアーゼ消化を行うのが一般的である。
WO2012/121302号パンフレット
上記のように、タンデム型質量分析計を用いたタンパク質の分析は、分析方法自体は簡便である。一方で、ジスルフィド結合の切断やプロテアーゼ消化等の前処理は、工数および時間を要する。また、前処理による試料のロスが生じ、定量性の低下を招く場合がある。
多種多様な夾雑物を含む生体試料のプロテアーゼ消化を実施すると、生体試料中に含まれる分析対象以外のタンパク質もプロテアーゼ消化されるため、膨大な種類のペプチド断片が生成する。そのため、検出および定量に最適なペプチド断片の選択は容易ではない。
上記に鑑み、本発明は、プロテアーゼ消化やジスルフィドの切断等の前処理を行わずに、インタクトなタンパク質を質量分析計により分析可能な分析方法の提供を目的とする。
本発明に用いられる質量分析計は、いわゆるタンデム型の質量分析計(MS/MS)である。質量分析計は、イオン化部、第一質量分離部、開裂部、第二質量分離部、および検出部を備える。このような質量分析計の好ましい例として、トリプル四重極質量分析計が挙げられる。イオン化部におけるタンパク質のイオン化法としては、エレクトロスプレーイオン化法が好ましい。
本発明の分析方法では、試料が質量分析計のイオン化部に導入される。試料中には、分析対象のタンパク質がインタクトなタンパク質として含まれている。イオン化部でイオン化された試料は、第一質量分離部に導入される。第一質量分離部では、特定のm/zを有するイオンがプリカーサイオンとして選別される。本発明の分析方法では、プリカーサイオンとして多価イオンが選別される。プリカーサイオンのm/zは、500〜2000が好ましい。
選別されたプリカーサイオンは、開裂部に導入され、複数種のプロダクトイオンを生成する。プロダクトイオンは第二質量分離部に導入され、m/zに基づいて選別される。第二質量分離部で選別された特定のm/zを有するプロダクトイオンは、検出部で検出される。第二質量分離部では、500以上のm/zを有するプロダクトイオンが選別されることが好ましい。
本発明の分析方法では、インスリン等のジスルフィド結合を有するタンパク質をインタクトのまま質量分析計に導入してもよい。特に、分析対象のタンパク質が3000〜10000Daの分子量を有する場合に、高精度での分析が可能である。分析対象がインスリンである場合、第一質量分離部では、インスリンの4価〜6価のイオンがプリカーサイオンとして選別されることが好ましい。
本発明の分析方法により、生体試料等の夾雑物を含む試料中の特定のタンパク質を検出・定量することが可能である。本発明の分析方法は、プロテアーゼ処理等を行うことなく、インタクトなタンパク質を質量分析計に導入するため、簡便かつ低コストである。
LC/MS/MSを用いた分析方法の概要を示す概念図である。 ヒトインスリン標品のプリカーサスキャンのMSクロマトグラムである。 ヒトインスリン標品のプリカーサスキャンのマススペクトルである。 ヒトインスリン標品のMRM分析結果であり、(A)はMRMクロマトグラム、(B)はピーク面積に基づく検量線である。 ヒト血漿へのインスリンのスパイク試料のMRM分析結果であり、(A)はMRMクロマトグラム、(B)はピーク面積に基づく検量線である。 (A)および(B)は、それぞれ健常人から採取した血漿のMRMクロマトグラムである。
本発明の分析方法では、質量分析計を用いて試料中のタンパク質の検出や定量分析が行われる。
[試料の準備]
まず、分析対象となる試料が準備される。分析対象となる試料はタンパク質を含むものであれば特に限定されない。分析対象試料としては、血液、血清、血漿、組織抽出液、細胞抽出液、尿、脳脊髄液等の生体試料が挙げられる。生体試料中には、様々なタンパク質が含まれている。また、タンパク質以外にも多種多様な夾雑物が含まれている。
分析対象試料は、質量分析計への導入前に、脱塩、可溶化、濃縮、乾燥等の処理が行われてもよい。例えば、脱塩および濃縮は、固相抽出(SPE)用のスピンカラムやウェルプレート等を用いて行うことができる。また、固相抽出操作を自動化したオンラインSPEシステムとLC/MS/MSとを組み合わせることにより、生体試料をそのままインジェクションして分析に供することもできる。
本発明の分析方法では、インタクトなタンパク質が質量分析計に導入される。そのため、試料の前処理として、プロテアーゼ処理等のタンパク質の一次構造を変化させる処理や、ジスルフィド結合等のアミノ酸残基間の共有結合を切断する処理を行う必要がない。なお、尿素変性やpH変性のように、共有結合の切断を伴わない変性処理を行うことは差支えない。
タンパク質を含む生体試料の分析前処理として一般に行われる還元アルキル化やプロテアーゼ消化では、高濃度の試薬を試料に添加する必要がある。本発明の方法では、これらの処理を必要としないため、質量分析におけるイオンサプレッションやノイズを低減できる。
ここで、「インタクトなタンパク質」とは、正常状態で合成され生体中に存在するタンパク質であり、生体から採取後に、ペプチド結合やジスルフィド結合等の共有結合の切断が人為的に行われていないものを指す。プレプロタンパク質、プロタンパク質等プロセシングされる前のタンパク質や、プロセシングを受けたタンパク質も、「インタクトなタンパク質」に含まれる。細胞内で起こるプロセシング、タンパク質の寿命によるペプチド断片化、生体内の細胞外でのタンパク質分解等は、いずれも非人為的なプロセスであり、これらのプロセシングを受けたタンパク質が生体から抽出されたものも、「インタクトなタンパク質」に含まれる。
必要に応じて脱塩や濃縮等を行った後、試料を質量分析計に導入する。生体試料は、種々の夾雑物を含有しているため、試料が質量分析計に導入される前に、液体クロマトグラフィー(LC)により、試料中の各成分が時間的に分離されることが好ましい。すなわち、本発明の分析方法は、液体クロマトグラフィー(LC)とタンデム質量分析計(MS/MS)とを組み合わせたLC/MS/MSを用いて行われることが好ましい。
LC/MS/MSでは、試料中の各成分が、質量分析の前段のLCで時間的に分離される。そのため、各成分の保持時間に従って、プリカーサイオンとプロダクトイオンのm/zの組(トランジション)を切り替えることにより、分析対象タンパク質由来のプロダクトイオンを高精度かつ高感度で検出できる。
図1は、タンデム型質量分析計を用いた分析方法の概要を示す概念図である。質量分析計は、真空ポンプ(不図示)により真空排気される分析室30の内部に、イオン化部2、第一質量分離部3、開裂部4、第二質量分離部5、および検出部6を備える。
イオン化部2で、分析対象のタンパク質を含む試料がイオン化される。イオン化の方法は特に限定されず、電子イオン化(EI)法、化学イオン化(CI)法、脱離電子イオン化(DEI)法、脱離化学イオン化(DCI)法、高速原子衝突(FAB)法、エレクトロスプレーイオン化(ESI)法、大気圧化学イオン化(APCI)法、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)法等が挙げられる。
中でも、タンパク質の構造を破壊することなくイオン化が可能であり、液体クロマトグラフィーからの試料の導入が容易であることから、ESI法が好ましい。また、本発明の分析方法では、プリカーサイオンとして多価イオンが選択されることから、多価イオンを生成しやすいESI法が適している。
第一質量分離部3および第二質量分離部5は、m/zに基づいてイオンを分離するように構成されている。質量分離部における分離方法としては、四重極(Q)型、四重極イオントラップ(QIT)型、飛行時間(TOF)型等が挙げられる。第一質量分離部3と第二質量分離部5のイオン分離方法は同一でも異なっていてもよい。第一質量分離部と第二質量分離部の組み合わせとしては、Q/Q、Q/TOF、TOF/TOF等が挙げられる。本発明の分析方法においては、第一質量分離部3および第二質量分離部5がいずれもQ型であり、両者の間に、質量分離の機能を有していない四重極を備えるトリプル四重極(QqQ)型の質量分析計が好ましく用いられる。
トリプル四重極質量分析計は、それぞれ4本のロッド電極から成る3段の四重極3,4,5、およびイオンを検出してイオン量に応じた検出信号を出力する検出器6を備える。第一段四重極3および第三段四重極5は四重極マスフィルタである。第二段四重極4は単なる四重極(または多重極)のイオンガイドであり、質量分離の機能を有していない。
第一段四重極3には、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加され、これにより発生する電場の作用により、イオン化部2で生成された各種イオンの中で特定のm/zを有する目的イオンのみがプリカーサイオンとして選別される。
第二段四重極4は、密閉性が高いコリジョンセル9に収納されている。このコリジョンセル9内には、アルゴン等のCIDガスが導入される。第一段四重極3から第二段四重極4に送られたプリカーサイオンは、コリジョンセル9内でCIDガスと衝突し、衝突誘起解離による開裂を生じてプロダクトイオンが生成される。この開裂の態様は様々であるため、通常、一種のプリカーサイオンからm/zの異なる複数種のプロダクトイオンが生成する。これら各種のプロダクトイオンがコリジョンセル9から、第三段四重極5に導入される。通常、第二段四重極4には、高周波電圧のみが印加されるか、または高周波電圧に直流バイアス電圧を加算した電圧が印加され、この第二段四重極4はイオンを収束させつつ後段の第三段四重極5に輸送するイオンガイドとして機能する。
第三段四重極5には、第一段四重極3と同様に、直流電圧と高周波電圧とを合成した電圧が印加される。これにより発生する電場の作用により、第三段四重極5では特定のm/zを有するプロダクトイオンのみが選別され、検出器6に透過される。第3段四重極5に印加する直流電圧および高周波電圧を適宜変化させることにより、第三段四重極5を通過し得るイオンのm/zを走査(プロダクトイオンスキャン)することができる。
第三段四重極5で選別されたプロダクトイオンは、検出器6で検出され、検出されたプロダクトイオン量に応じた電気信号がデータ処理部(不図示)に送信される。データ処理部は、プロダクトイオンのマススペクトル(MS/MSスペクトル)を作成することができ、プロダクトイオンのピーク面積から、プロダクトイオン量を定量できる。
本発明の分析方法では、第一質量分離部において、プリカーサイオンとして多価イオンが選択される。分子量の大きいタンパク質でも、多価イオンであればm/zが小さいため、質量分析計の質量ダイナミックレンジ内でインタクトなタンパク質のイオンを検出および選別できる。
例えば、四重極の質量ダイナミックレンジの上限は2000〜3000程度である。分析対象がインスリン(5807Da)である場合、1価イオンは四重極のダイナミックレンジ外であるが、3価正イオン(m/z 1937.3)、4価正イオン(m/z 1453)、5価正イオン(m/z 1162.5)、6価正イオン(m/z 969)は、四重極のダイナミックレンジ内のm/zを有する。
プリカーサイオンのm/zは、500〜2000の範囲内が好ましく、900〜1500がより好ましい。分析対象のタンパク質がインスリンである場合、プリカーサイオンの価数は4価〜6価が好ましく、5価イオンが特に好ましい。
より分子量の大きいタンパク質を分析対象とする場合、m/zが上記範囲となるように、より価数の大きい多価イオンをプリカーサとして選択すればよい。ただし、イオン価数の増大に伴ってMSの価数分布が大きくなるため、選別対象のプリカーサイオンの生成量が減少する傾向がある。そのため、高精度の分析結果を得る観点から、プリカーサイオンの価数は20以下が好ましく、10以下がより好ましい。
プリカーサイオンの価数およびm/zが上記範囲内であれば、ESIによるイオン生成量が大きいため、分析精度に優れる。そのため、本発明の方法を、生体試料中の分析対象タンパク質の濃度の定量にも応用可能である。本発明の方法の適用に好適なタンパク質の分子量は、2000〜10000Daであり、3000〜8000Daが特に適している。
第一質量分離部3で分離され選別されたプリカーサイオンとしての多価イオンは、開裂部4で開裂され、複数種のプロダクトイオンが生成する。プロダクトイオンは第二質量分離部5でm/zに基づいて分離・選別される。開裂部4で生成するイオンの種類および量は、CIDのコリジョンエネルギーに依存する。そのため、第二質量分離部5で選別されるプロダクトイオンに応じて、当該プロダクトイオンの生成量が最大となるコリジョンエネルギー(最適コリジョンエネルギー)を分析条件に組み込んでおくことが好ましい。
タンデム型質量分析計を用いたMRM分析では、プリカーサイオンを適切に選択することに加えて、定量性および再現性の良いプロダクトイオンを選択することが好ましい。様々な夾雑物を含有する試料のMRM分析では、分析対象以外のタンパク質やペプチドが、分析対象のタンパク質やペプチドと同一のプリカーサイオンやプロダクトイオンを生じる可能性がある。
質量分析計の検出器で検出されたプロダクトイオン量に基づいて、試料中の分析対象タンパク質の含有量(濃度)を算出できる。例えば、タンパク質の量とプロダクトイオン量とを予め関連付けておくことにより、プロダクトイオン量から試料中のタンパク質の含有量を算出できる。
タンパク質の含有量とプロダクトイオン量とを関連付ける方法としては、例えば、外部標準による検量線(標準曲線)を用いる方法が挙げられる。検量線は、本分析(試料の分析)と同一の条件で、タンパク質濃度が既知の標準試料の分析を行い、濃度とプロダクトイオンのピーク面積(あるいはピーク強度)とをプロットすることによって得られる。分析対象試料に予め内部標準を加えて測定を行い、内部標準に由来するプロダクトイオン量と、分析対象のタンパク質に由来するプロダクトイオン量とを関連付けることもできる。
前述のように、本発明の分析方法は、ジスルフィド結合の切断やプロテアーゼ処理等を行うことなく、インタクトなタンパク質を質量分析計に導入するため、簡便かつ低コストである。また、これらの前処理を必要としないため、試料のロスが少なく、高い分析精度を実現可能である。
試料中のタンパク質のプロテアーゼ消化を行うと、分析対象以外のタンパク質もプロテアーゼ消化されるため、数残基〜数十残基のペプチド断片が多数産生される。そのため、分析対象以外のタンパク質由来のペプチドが、分析対象のタンパク質由来のペプチドと同一のアミノ酸配列を有する場合があり、分析対象のタンパク質に特有のプリカーサイオンとプロダクトイオンの組み合わせを適切に選択することが困難な場合がある。
これに対して、本発明の方法では、プロテアーゼ消化が行われないため、試料内に含まれるペプチドの種類を低減できる。また、プリカーサイオンとしてインタクトなタンパク質の多価イオンが選択されるため、分析対象以外のタンパク質から、分析対象のタンパク質由来のプロダクトイオンと同一のプロダクトイオンが生成する確率は極めて低い。そのため、本発明の分析方法は、MRMトランジションの選択を容易に行い得るとの利点を有する。
以下に、ヒトインスリンの分析例を示し、本発明を具体的に説明する。ヒトインスリンは21アミノ酸残基からなるA鎖と30アミノ酸残基からなるB鎖とが2本のジスルフィド結合により結合した分子量5807Daのペプチドホルモンであり、A鎖内にも1つのジスルフィド結合を有している。なお、本発明は下記の実施例に限定されるものではない。以下における%は、特に断りがない限り重量%である。
本実施例では、高速液体クロマトグラフ‐トリプル四重極型LC/MS/MSシステム(島津製作所製、LCMS−8060)により、以下に示す条件で分析を行った。
<LC条件>
LCシステム:高速液体クロマトグラフ Nexera X2
分析カラム: Shim-pack ODS-III
流速: 0.4ml/分
移動相: A液 0.1%ギ酸水溶液、B液 0.1%ギ酸アセトニトリル溶液
グラジエントプログラム:以下の表1に示す通り
<MS条件>
イオン化モード: ESI(+)
Figure 2017161447
[実験例1]精製タンパク質溶液を用いた検証および検量線の作成
<試料のSPE処理>
96ウェルの陰イオン交換SPEプレートにメタノール(500μl)を加えて遠心し、次いで超純水(500μl)を加えて遠心した。所定量のヒトインスリンの標品を添加して遠心した後、5%アンモニア水(500μl)を加えて遠心し、次いで10%アセトニトリル(500μl)を加えて遠心し、溶出液を回収した。SPE処理後の試料に40%酢酸(200μl)を添加して、分析用試料とした。
<LC/MS/MS分析>
(プリカーサスキャン)
ヒトインスリン標品のプリカーサスキャンのMSクロマトグラムを図2、マススペクトルを図3に示す。図2および図3に示すように、LC溶出時間4.8分に、m/z 969、1162、1452のピークが確認された。これらのピークは、それぞれインスリンの6価、5価、4価のイオンと同定された。
(プロダクトスキャン)
インスリンの4価イオン、5価イオンおよび6価イオンをプリカーサイオンとして選択し、プロダクトスイオンスキャンを行い、表2に示すプリカーサイオンとプロダクトイオンのm/zの組合せ、および各プロダクトイオンの最適コリジョンエネルギー(CE)を得た。
Figure 2017161447
表2に示すトランジションの中で、プリカーサイオン:m/z 1162.5(5価イオン)、プロダクトイン:m/z 1410.1の組み合わせが、最も大きなプロダクトイオン検出量を示した。以下では、このMRM条件で分析を実施した。
<検量線の作成>
SPEプレートにロードするインスリンの量を変化させて、MRM分析を行った。結果を図4に示す。図4(A)は、MRMクロマトグラムであり、インスリンのロード量が2fmolの試料でも、プロダクトイオンが検出されていることが分かる。インスリンのロード量を横軸、プロダクトイオン量(ピーク面積)の対数を縦軸としてプロットしたところ、インスリンの両とピーク面積の対数との間に線形関係がみられ、図4(B)に示す検量線が得られた。
[実験例2]スパイクテスト
<試料の前処理>
血漿(500μl)を、容量2mlのチューブに採取し、50%酢酸を(5μl)を添加し、次いで5%アンモニア水(500μl)を添加した。この試料に、所定濃度(1pM、10pM、30pM、100pM)となるようにインスリン標品を添加した後、SPEプレートにロードし、実施例1と同様にして分析用試料を調製した。
<LC/MS/MS分析>
上記実施例1と同様の条件でMRM分析を実施した結果を図5に示す。図5(A)はMRMクロマトグラムであり、インスリンのスパイク濃度が1pMの試料でも、プロダクトイオンが検出されていることが分かる。インスリンのロード量を横軸、プロダクトイオン量(ピーク面積)の対数を縦軸としてプロットしたところ、インスリンの両とピーク面積の対数との間に線形関係がみられ、図5(B)に示す検量線が得られた。
図5(B)の検量線の濃度0への外挿入値(切片)と検量線の傾きから、インスリンをスパイクしていない血漿中のインスリン濃度が約30pMと見積もられた。図5(A)では、インスリンがスパイクされていない血漿のクロマトグラムのピーク高さの推定値が点線で示されている。図5(A)の右側に両矢印で示されている範囲(ピーク高さ)が、濃度約30pMに対応している。
[実施例3]ヒト血漿のMRM分析
2人の健常人から採取した血漿を試料として、実施例2と同様に前処理を行った後、インスリンをスパイクせずにMRM分析を実施した。結果を図6(A)および図(B)に示す。
上記実施例2では、内因のインスリン以外に種々の夾雑を含むヒト血漿へのスパイクテストにおいて、インスリンのスパイク量に依存した面積強度変化がみられた。また、実施例3の結果から、インスリンをスパイクしていない血漿を試料とした場合にも、同一のMRM条件で、インスリン由来のプロダクトイオンの検出が確認された。
これらの結果から、上記表2のMRM分析条件が、多数の夾雑物を含む生体試料中のインスリン濃度の定量に有効であることが確認された。すなわち、4価〜6価の多価イオンをプリカーサイオンとして、表2に示すトランジション(プロダクトイオンとプリカーサイオンの組み合わせ)を用いてMS/MS分析を実施することにより、インタクトなインスリンを高精度で検出および定量可能である。
なお、m/zの値は、質量分析計の分離精度や検出器の種類等により多少の差異を生じるため、インスリンのMRM分析で適用可能なプリカーサイオンおよびプロダクトイオンのm/zは、表2に示す値の±1の範囲であれば許容できる。また、表2に示すm/zを有するプリカーサイオンおよびプロダクトイオンの同位体を選別対象としてMRM分析を実施してもよい。

Claims (9)

  1. 質量分析計を用いたタンパク質の分析方法であって、
    質量分析計は、試料をイオン化するイオン化部;特定のm/zを有するイオンをプリカーサイオンとして選別する第一質量分離部;第一質量分離部で選別されたプリカーサイオンから複数種のプロダクトイオンを生成する開裂部;前記プロダクトイオンをm/zに基づいて選別する第二質量分離部;および前記第二質量分離部で選別された特定のm/zを有するプロダクトイオンを検出する検出部を備え、
    分析対象のタンパク質をインタクトなタンパク質として含む試料が質量分析計のイオン化部に導入され
    前記第一質量分離部において、前記タンパク質の多価イオンが前記プリカーサイオンとして選別される、分析方法。
  2. 前記イオン化部において、エレクトロスプレーイオン化法により前記タンパク質のイオン化が行われる、請求項1に記載の分析方法。
  3. 前記質量分析計がトリプル四重極質量分析計である、請求項1または2のいずれか1項に記載の分析方法。
  4. 前記プリカーサイオンのm/zが500〜2000である、請求項1〜3のいずれか1項に記載の分析方法。
  5. 前記プロダクトイオンのm/zが500以上である、請求項1〜4のいずれか1項に記載の分析方法。
  6. 分析対象のタンパク質がジスルフィド結合を有する、請求項1〜5のいずれか1項に記載の分析方法。
  7. 分析対象のタンパク質の分子量が、2000〜10000Daである、請求項1〜6のいずれか1項に記載の分析方法。
  8. 分析対象のタンパク質がインスリンである、請求項1〜7のいずれか1項に記載の分析方法。
  9. 前記プリカーサイオンが4価〜6価のイオンである、請求項8に記載の分析方法。
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US20210302286A1 (en) * 2018-09-18 2021-09-30 Shimadzu Corporation Method for pretreatment of biological sample

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