JP7399200B2 - 質量分析によるインスリンの定量 - Google Patents

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Description

関連特許出願
本出願は、その全体として、またすべての目的のために参照により本明細書に組み込ま
れる、2010年12月28日に出願の米国仮出願第61/427,749号の利益を主
張するものである。
発明の分野
本発明は、インスリンの定量的測定に関する。特定の態様において、本発明は、質量分
析によるインスリンの定量的測定の方法に関する。
発明の背景
本発明の背景の以下の記述は、単に本発明を理解するうえでの一助として示すものであ
って、本発明の先行技術を記述又は構成するものと認めるものではない。
インスリンは、システイン残基の間のジスルフィド架橋により連結されたA鎖及びB鎖
と表される2つの鎖における51個のアミノ酸からなる小ペプチドである。ヒトインスリ
ンは、約5607.4amuの分子質量を有する。A鎖は、21個のアミノ酸を有し、B
鎖は、30個のアミノ酸を有する。
インスリンは、体内の脂肪及びステロイド代謝を調節する中心的なホルモンである。血
糖値が食後に上昇するとき、インスリンが血流中に放出され、グルコースの循環から細胞
内への輸送を可能にする。
インスリンの産生又は利用の欠如により、糖尿病がもたらされる。インスリンは、糖尿
病の治療のためにしばしば投与される。糖尿病及びその合併症は、重大な公衆衛生上の問
題である。したがって、糖尿病及び糖尿病前症(pre-diabetic)患者の試料中のインスリ
ンの定量は、診断ツールとしてもまた患者の治療をモニタリングするためにも重要である
免疫学的技術がインスリンの定量に広く用いられ(例えば、Manleyら、Clin Chem.、20
07年、53巻、922~32頁参照)、インスリンの検出及び/又は定量のためのいくつかの質
量分析法が報告された。例えば、Stocklin R.ら、Diabetes、1997年、46巻、44~50頁(
免疫アフィニティークロマトグラフィー-固相抽出-HPLC-シングル質量分析による
血清試料中のインスリンの定量を報告している)、Darby S. M.ら、J. Anal Toxicol、20
01年、25巻、8~14頁(生理的レベル超の血漿中インスリンのSPE-HPLC-MS定
量を報告している)、Fierens C.ら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2001年、15巻、14
33~41頁(HPLC-(ESI)MS/MSによる水溶液中のインスリンの検出を報告し
ている)、Magnes, C.ら、52nd ASMS Conference、2004年5月(高分解能/高精度質量分
析による血清中のインスリンの定量を報告している)、Thevis, M.ら、Anal. Chem.、200
5年、77巻、3579~85頁(血漿からのインスリンの定量及びインスリンB鎖の検出のため
の免疫アフィニティークロマトグラフィー-固相抽出-HPLC-タンデム質量分析法を
報告している)、Thevis, M.ら、Anal. Chem.、2006年、77巻、3579~85頁及びThomas, A
.ら、Anal. Chem.、2007年、79巻、2518~24頁(血漿からのインスリンの定量及びインス
リンB鎖の検出のための固相抽出-免疫アフィニティークロマトグラフィー-固相抽出-
HPLC-タンデム質量分析法を報告している)、Uytfanghe, K.ら、Rapid Comm Mass S
pectrom.、2007年、21巻、819~821頁(血清からのインスリンの定量のための免疫アフィ
ニティークロマトグラフィー-固相抽出-HPLC-タンデム質量分析法を報告している
)、Rodriguez-Cabaleiro D.ら、Clin Chem.、2007年、53巻、1462~69頁(血漿からのイ
ンスリンの定量及びインスリンB鎖の検出のための免疫アフィニティークロマトグラフィ
ー-固相抽出-HPLC-タンデム質量分析法を報告している)、Thevis, M.ら、Mass S
pectrom. Reviews、2008年、27巻、35~50頁(血漿からのインスリンの定量及びインスリ
ンB鎖の検出のための免疫アフィニティークロマトグラフィー-固相抽出-HPLC-タ
ンデム質量分析法を報告している)並びにGuedes, S.、J. Am Soc Mass Spectrom、2009
年、20巻、1319~26頁を参照のこと。
発明の要旨
本発明は、質量分析により試料中のインスリンの量を決定する方法を提供する。
1つの態様において、本方法は、タンデム質量分析を用いる。いくつかのタンデム質量
分析実施形態において、本方法は、ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリン
の量を決定するためのものである。いくつかの実施形態において、本方法は、(a)試料
からインスリン濃縮画分を得るために、試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマト
グラフィー(HPLC)に供するステップ;(b)質量分析により検出できる1つ又は複
数のインスリンイオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリン(enriched insul
ine)をイオン化源(ionization source)に供するステップ;(c)タンデム質量分析に
より1つ又は複数のインスリンイオンの量を決定するステップとを含み、前記試料は、イ
オン化の前に免疫精製に供されていない。これらの実施形態において、ステップ(c)で
決定される1つ又は複数のイオンの量を用いて、試料中のインスリンの量を決定する。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に、試料は酸
性条件に供される。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップ
は、濃縮インスリンをギ酸に供するステップを含む。いくつかの関連実施形態において、
ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、1162.5±0.5及び968
.9±0.5の質量電荷比(mass to charge ratio)(m/z)を有するイオンからなる
群から選択されるインスリン前駆イオンを含む。さらなる関連実施形態において、ステッ
プ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、226.2±0.5及び135.9±0
.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオ
ンを含む。他の関連実施形態において、1つ又は複数のフラグメントイオンは、1162
.5±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメント
イオン及び968.9±0.5のm/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複
数のフラグメントイオンを含む。関連実施形態において、各前駆イオンからの1つ又は複
数のフラグメントイオンは、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有す
るイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に、試料は塩
基性条件に供される。いくつかの関連実施形態において、試料を塩基性条件に供するステ
ップは、試料をアンモニアに供するステップを含む。いくつかの関連実施形態において、
ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイオンは、1453.8±0.5及び116
3.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるインスリン前駆イオン
を含む。さらなる関連実施形態において、ステップ(c)で決定される1つ又は複数のイ
オンは、226.2±0.5及び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群
から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。他の関連実施形態において、
1つ又は複数のフラグメントイオンは、1453.8のm/zを有するインスリン前駆イ
オンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び1163.0±0.5の質量電荷比を
有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
試料中のインスリンの量を決定するためにタンデム質量分析を用いるいくつかの実施形
態において、方法は、(a)抽出技術により試料中のインスリンを濃縮するステップ;(
b)試料からインスリン濃縮画分(fraction enriched in insulin)を得るためにステッ
プ(a)からの精製インスリンを高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステ
ップ;(c)質量分析により検出できるインスリン前駆イオンを発生させるのに適する条
件下で濃縮インスリンをイオン化源に供するステップであって、ここでインスリン前駆イ
オンは1162.5±0.5のm/zを有する、ステップ;(d)質量分析により検出で
きる1つ又は複数のフラグメントイオンを発生させるためにインスリン前駆イオンを約4
0~70eVの範囲内の衝突エネルギーでの衝突誘起解離に供するステップ;(e)質量
分析により1つ又は複数の前記フラグメントイオンの量を決定するステップを含む。これ
らの実施形態において、ステップ(e)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリ
ンの量に関連付ける。いくつかの実施形態において、抽出技術は、固相抽出(SPE)で
ある。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に試料を酸性
条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップは、
試料をギ酸に供するステップを含む。代替実施形態において、イオン化の前に試料を塩基
性条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を塩基性条件に供するステップ
は、アンモニアを含む。
いくつかの実施形態において、衝突エネルギーは、例えば、約40~50eVの範囲内
などの約40~60eVの範囲内にある。いくつかの実施形態において、ステップ(d)
で発生する1つ又は複数のフラグメントイオンは、226.2±0.5及び135.9±
0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む。
ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するためにタンデム質
量分析を用いるいくつかの実施形態において、方法は、(a)試料を、インスリンからイ
ンスリンA鎖を得るのに適する条件に供するステップ;(b)インスリンA鎖濃縮画分を
得るために、ステップ(a)からの試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラ
フィー(HPLC)に供するステップ;(c)質量分析により検出できる1つ又は複数の
インスリンA鎖イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンA鎖をイオン化源
に供するステップ;(d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンA鎖イオン
の量を決定するステップを含む。これらの実施形態において、ステップ(d)で決定され
るイオンの量を、前記試料中のインスリンの量に関連付ける。
いくつかの関連実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に試料を
酸性条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップ
は、前記試料をギ酸に供するステップを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(
a)で得られるインスリンA鎖は、イオン化の前に化学的に改変されない。いくつかの関
連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1192.
9±0.5及び795.4±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるイ
ンスリンA鎖前駆イオンを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決
定される1つ又は複数のイオンは、513.0±0.5、399.0±0.5、236.
0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は
複数のフラグメントイオンを含む。いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で
決定される1つ又は複数のイオンは、1192.9±0.5のm/zを有するインスリン
A鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び795.4±0.5のm/
zを有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
いくつかの関連実施形態において、各前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオ
ンは、513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±
0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイ
オンを含む。
代替実施形態において、方法は、イオン化の前にステップ(a)で得られるインスリン
A鎖を化学的に改変するステップをさらに含む。いくつかの実施形態において、化学的改
変は、インスリンA鎖をアルキル化するステップを含む。さらなる関連実施形態において
、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、1306.0±0.5及び87
1.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるアルキル化インスリン
A鎖前駆イオンを含む。他の関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又
は複数のイオンは、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び
133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメ
ントイオンを含む。他の関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複
数のイオンは、1306.0±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンA鎖前駆イ
オンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び871.0±0.5のm/zを有する
アルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む。
いくつかの関連実施形態において、各アルキル化前駆イオンからの1つ又は複数のフラグ
メントイオンは、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び1
33.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラ
グメントイオンを含む。
いくつかの実施形態において、生物学的試料中のインスリンの量を決定するためにタン
デム質量分析を用いる。これらの実施形態において、方法は、(a)試料を、インスリン
からインスリンB鎖を得るのに適する条件に供するステップ;(b)インスリンB鎖濃縮
画分を得るためにステップ(a)からの試料を処理するステップ;(c)質量分析により
検出できる1つ又は複数のインスリンB鎖イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮イ
ンスリンB鎖をイオン化源に供するステップ;(d)タンデム質量分析により1つ又は複
数のインスリンB鎖イオンの量を決定するステップを含む。これらの実施形態において、
ステップ(d)で決定されるイオンの量を、試料中のインスリンの量に関連付ける。
いくつかの実施形態において、ステップ(b)の処理は、固相抽出(SPE)、高速液
体クロマトグラフィー(HPLC)又は両方によりインスリンB鎖を濃縮するステップを
含む。SPE及びHPLCの両方を用いるいくつかの関連実施形態において、2つの濃縮
技術は、オンライン式で実施することができる。
いくつかの実施形態において、生物学的試料は、ヒト血漿又は血清試料を含む。いくつ
かの関連実施形態において、決定されるインスリンの量は、ヒトから採取した場合の試料
中に存在するインスリンの量である。
いくつかの実施形態において、イオン化源は、加熱ESI源などのエレクトロスプレー
イオン化(ESI)源である。
いくつかの実施形態において、ポジティブイオンモードでのイオン化の前に試料を酸性
条件に供する。いくつかの関連実施形態において、試料を酸性条件に供するステップは、
前記試料をギ酸に供するステップを含む。
いくつかの実施形態において、インスリンB鎖をイオン化の前に化学的に改変しない。
いくつかの関連実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは
、1144.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有する
イオンからなる群から選択されるインスリンB鎖前駆イオンを含む。いくつかの関連実施
形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、906.0±0.
5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0.
5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群、例
えば、768.5±0.5、753.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±
0.5のm/zを有するイオンからなる群など、例えば、768.5±0.5及び753
.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群などから選択される1つ又は複数のフラ
グメントイオンを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ
又は複数のイオンは、1144.2±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオン
からのフラグメントイオン、858.3±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イ
オンからのフラグメントイオン及び686.8±0.5のm/zを有するインスリンB鎖
前駆イオンからのフラグメントイオンからなる群から選択される2つ以上のフラグメント
イオンを含む。
いくつかの実施形態において、タンデム質量分析は、686.8±0.5の質量電荷比
(m/z)を有するヒトインスリンB鎖前駆イオンを発生させるステップと、前駆イオン
を906.0±0.5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5
、703.0±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイ
オンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオン、例えば、768.5
±0.5及び753.0±0.5からなる群から選択される1つ又は複数のフラグメント
イオンなどにフラグメント化するステップとを含む。
いくつかの実施形態において、タンデム質量分析は、10~25V(端点を含む)の範
囲内の衝突エネルギーを用いて前駆イオンをフラグメント化するステップを含む。
代替実施形態において、インスリンB鎖をイオン化の前に化学的に改変する。いくつか
の実施形態において、化学的改変は、前記インスリンB鎖をアルキル化するステップを含
む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは
、1181.9±0.5、886.9±0.5及び709.8±0.5のm/zを有する
イオンからなる群から選択されるアルキル化インスリンB鎖前駆イオンを含む。いくつか
の実施形態において、ステップ(d)で決定される1つ又は複数のイオンは、345.0
±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複
数のフラグメントイオンを含む。いくつかの実施形態において、ステップ(d)で決定さ
れる1つ又は複数のイオンは、1181.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するア
ルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン、886.9±0.5のm
/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン及び709
.8±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメント
イオンからなる群から選択される2つ以上のフラグメントイオンを含む。いくつかの関連
実施形態において、各前駆イオンからのフラグメントイオンは、345.0±0.5及び
226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるイオンを含む。
第2の態様において、本明細書に示す特定の方法は、試料中のインスリンの量を決定す
るために高分解能/高精度質量分析を利用する。高精度/高分解能質量分析を利用するい
くつかの実施形態において、方法は、(a)多価インスリンイオンを発生させるのに適す
る条件下で試料からのインスリンをイオン化源に供するステップであって、ここでインス
リンイオンは質量分析により検出できる、ステップ;および(b)高分解能/高精度質量
分析により1つ又は複数の多価インスリンイオンの量を決定するステップを含む。これら
の実施形態において、ステップ(b)で決定される1つ又は複数のイオンの量を前記試料
中のインスリンの量に関連付ける。いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量
分析を10,000のFWHM及び50ppmの質量精度(mass accuracy)で行う。い
くつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析を高分解能/高精度飛行時間(T
OF)型質量分析計を用いて行う。いくつかの実施形態において、イオン化条件は、酸性
条件下でのインスリンのイオン化を含む。いくつかの関連実施形態において、酸性条件は
、イオン化の前のギ酸による前記試料の処理を含む。いくつかの実施形態において、多価
インスリンイオンは、4+、5+及び6+価インスリンイオン(4+, 5+, and 6+ charged
insulin ions)からなる群から選択される。
いくつかの実施形態において、6+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、約
968.8±1.5の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含む。いくつかの
実施形態において、6+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、968.28±
0.1、968.45±0.1、968.62±0.1、968.79±0.1、968
.95±0.1、969.12±0.1、969.28±0.1、969.45±0.1
、969.61±0.1のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数
のイオン、例えば、968.95±0.1のm/zを有するイオンなどを含む。
いくつかの実施形態において、5+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、約
1162.5±1.0の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含む。いくつか
の実施形態において、5+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、1161.7
2±0.1、1161.92±0.1、1162.12±0.1、1162.32±0.
1、1162.52±0.1、1162.72±0.1、1162.92±0.1、11
63.12±0.1、1163.32±0.1のm/zを有するイオンからなる群から選
択される1つ又は複数のイオン、例えば、1162.54±0.1のm/zを有するイオ
ンなどを含む。
いくつかの実施形態において、4+荷電状態の1つ又は複数のインスリンイオンは、約
1452.9±0.8の範囲内のm/zを有する1つ又は複数のイオンを含む。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、試料は、生物学的試料を含み得る。いくつ
かの実施形態において、生物学的試料は、尿、血漿又は血清などの生体液を含み得る。い
くつかの実施形態において、生物学的試料は、ヒト、例えば、成人男性若しくは女性、又
は若年男性若しくは女性からの試料を含み得る。ここで、若年は、18歳未満、15歳未
満、12歳未満又は10歳未満である。ヒト試料は、病状若しくは状態を診断若しくはモ
ニターするために、又は病状若しくは状態の治療効力をモニターするために分析すること
ができる。いくつかの関連実施形態において、本明細書で述べる方法は、ヒトから採取し
た場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するために用いることができる。
タンデム質量分析を利用する実施形態において、タンデム質量分析は、例えば、多重反
応モニタリング、前駆イオンスキャニング又はプロダクトイオンスキャニングを含む、当
技術分野で公知の方法により実施することができる。
いくつかの実施形態において、タンデム質量分析は、前駆イオンを1つ又は複数のフラ
グメントイオンにフラグメント化するステップを含む。2つ以上のフラグメントイオンの
量を決定する実施形態において、測定されたイオン量を試料中のインスリンの量に関連付
けるために、該量を当技術分野で公知の任意の数学的操作に供することができる。例えば
、試料中のインスリンの量を決定するステップの一部として、2つ以上のフラグメントイ
オンの量を合計することができる。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、対象の被分析物(analyte)(例えば、イ
ンスリン、化学的に改変された若しくは改変されていないインスリンA鎖又は化学的に改
変された若しくは改変されていないインスリンB鎖)は、イオン化の前に高速液体クロマ
トグラフィー(HPLC)により試料から精製することができる。本明細書で述べる方法
のいずれかにおいて、対象の被分析物は、例えば、試料を固相抽出(SPE)カラムに供
することなどの抽出技術により試料から精製することができる。いくつかの実施形態にお
いて、抽出技術は、免疫精製技術でない。具体的には、いくつかの実施形態において、S
PEカラムは、免疫アフィニティーカラムでない。いくつかの実施形態において、免疫精
製は、方法のいずれの段階においても用いない。いくつかの実施形態において、抽出技術
及びHPLCは、自動化された試料の処理及び分析を可能にするためにオンライン式で実
施することができる。
いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析は、約10,000以上、例
えば、約15,000以上など、例えば、約20,000以上など、例えば、約25,0
00以上などの分解能(FWHM)で実施する。いくつかの実施形態において、高分解能
/高精度質量分析は、約50ppm以下、例えば、約20ppm以下など、約10ppm
以下など、約5ppm以下など、約3ppm以下などの精度で実施する。いくつかの実施
形態において、高分解能/高精度質量分析は、約10,000以上の分解能(FWHM)
及び約50ppm以下の精度で実施する。いくつかの実施形態において、分解能は、約1
5,000以上であり、精度は、約20ppm以下である。いくつかの実施形態において
、分解能は、約20,000以上であり、精度は、約10ppm以下であり、好ましくは
、分解能は、約20,000以上であり、精度は、約5ppm以下、例えば、約3ppm
以下などである。
いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析は、オービトラップ型質量分
析計、飛行時間(TOF)型質量分析計又はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴型質
量分析計(時としてフーリエ変換質量分析計として公知である)を用いて実施することが
できる。
いくつかの実施形態において、高分解能/高精度質量分析により検出できる1つ又は複
数のインスリンイオンは、約1452.9±0.8、1162.5±1及び968.8±
1.5の範囲内のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオン
である。これらの範囲内のイオンは、それぞれ4+、5+及び6+の電荷を有するインス
リンイオンに相当する。これらの電荷を有する単一同位体イオンは、列挙した範囲内のm
/zに主としておさまる。しかし、より低い存在度の天然に存在する同位元素変異体がこ
の範囲外に存在し得る。1162.5±1の範囲内のインスリンイオンは、好ましくは約
1161.72±0.1、1161.92±0.1、1162.12±0.1、1162
.32±0.1、1162.52±0.1、1162.72±0.1、1162.92±
0.1、1163.12±0.1、1163.32±0.1のm/zを有するインスリン
イオン、例えば、1162.54±0.1のm/zを有するイオンなどを含む。968.
8±1.5の範囲内のインスリンイオンは、好ましくは約968.28±0.1、968
.45±0.1、968.62±0.1、968.79±0.1、968.95±0.1
、969.12±0.1、969.28±0.1、969.45±0.1、969.61
±0.1のm/zを有するインスリンイオン、例えば、968.95±0.1のm/zを
有するイオンなどを含む。いくつかの実施形態において、質量分析により検出される1つ
又は複数のインスリンイオンの量を試料中のインスリンタンパク質の量に関連付けるステ
ップは、ヒト又は非ヒトインスリンタンパク質などの内部標準との比較を含む。内部標準
は、場合によって同位体標識することができる。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、試料は、生物学的試料、好ましくは、例え
ば、血漿又は血清を含む体液試料を含み得る。
質量分析(タンデム又は高分解能/高精度)は、ポジティブイオンモードで実施するこ
とができる。或いは、質量分析は、ネガティブイオンモードで実施することができる。例
えば、大気圧化学イオン化(APCI)又はエレクトロスプレーイオン化(ESI)を含
む、様々なイオン化源を用いてインスリンをイオン化することができる。いくつかの実施
形態において、インスリン及び/又は化学的に改変された若しくは改変されていないイン
スリンA鎖若しくはインスリンB鎖は、ESIによりポジティブイオンモードでイオン化
する。
本明細書で述べる方法のいずれかにおいて、単独で検出できる内部標準を試料に加える
ことができ、その量も試料中で決定される。単独で検出できる内部標準を利用する実施形
態において、試料中に存在する対象の被分析物及び内部標準の両方のすべて又は一部がイ
オン化されて、質量分析計で検出できる複数のイオンを生成し、それぞれから生成した1
つ又は複数のイオンが質量分析により検出される。これらの実施形態において、対象の被
分析物から生成したイオンの存在又は量は、検出された内部標準イオンの量との比較によ
り試料中の対象の被分析物の量の存在に関連付けることができる。
或いは、試料中のインスリンの量は、1つ又は複数の外部参照標準との比較により決定
することができる。具体例としての外部参照標準は、ヒト若しくは非ヒトインスリン、合
成インスリン類似体又はその同位体標識変異体を添加したブランク血漿又は血清などであ
る。
いくつかの実施形態において、方法は、約10μIU/mL~500μIU/mL(約
60pmol/L~3000pmol/L又は約0.35ng/mL~17.4ng/m
Lに相当する)(端点を含む)の範囲内のレベルの試料中のインスリンの量を決定するこ
とができる。
本明細書で用いる場合、特に示さない限り、単数形「a」、「an」及び「the」は
、複数の指示対象を含む。したがって、例えば、「a protein」への言及は、複
数のタンパク質分子を含む。
本明細書で用いる場合、「精製」、「精製する」及び「濃縮する」という用語は、対象
の被分析物(単数又は複数)以外のすべての物質を試料から除去することを意味しない。
それよりも、これらの用語は、対象の被分析物の検出を妨害する可能性がある試料中の他
の成分と比較して対象の1つ又は複数の被分析物の量を高くする手順を意味する。様々な
手段による試料の精製は、1つ又は複数の妨害物質、例えば、質量分析による選択される
親又は娘イオンの検出を妨害する可能性がある又は妨害しない可能性がある1つ又は複数
の物質の相対的な減少を可能にする。この用語を用いるときの相対的な減少は、精製すべ
き材料中に対象の被分析物とともに存在する物質が精製により完全に除去されることを必
要としない。
本明細書で用いる場合、「免疫精製」又は「免疫精製する」という用語は、対象の1つ
又は複数の被分析物を濃縮するためにポリクローナル又はモノクローナル抗体を含む抗体
を利用する精製手順を意味する。免疫精製は、当技術分野で周知の免疫精製法のいずれか
を用いて実施することができる。しばしば免疫精製手順は、固体担体、例えば、カラム、
ウエル、チューブ、ゲル、カプセル、粒子又は同類のものに結合した、コンジュゲートし
た又は別の状態で結合した抗体を利用するものである。免疫精製は、本明細書で用いる場
合、当技術分野でしばしば免疫沈降と呼ばれる手順、並びに当技術分野でしばしばアフィ
ニティークロマトグラフィー又は免疫アフィニティークロマトグラフィーと呼ばれる手順
を制限なしに含む。
本明細書で用いる場合、「免疫粒子」という用語は、その表面(粒子上及び/又は内)
に結合した、コンジュゲートした又は別の状態で結合した抗体を有するカプセル、ビーズ
、ゲル粒子又は同類のものを意味する。特定の好ましい実施形態において、免疫粒子は、
セファロース又はアガロースビーズである。好ましい代替実施形態において、免疫粒子は
、ガラス、プラスチック若しくはシリカビーズ又はシリカゲルを含む。
本明細書で用いる場合、「抗インスリン抗体」という用語は、インスリンに対する親和
性を有する任意のポリクローナル又はモノクローナル抗体を意味する。種々の実施形態に
おいて、インスリン以外の化学種に対するインスリン抗体の特異性は、異なる可能性があ
り、例えば、特定の好ましい実施形態において、抗インスリン抗体は、インスリンに対し
て特異的であり、したがって、インスリン以外の化学種に対する親和性をほとんど又は全
く有さないが、他の好ましい実施形態において、抗インスリン抗体は、非特異的であり、
インスリン以外の特定の化学種に結合する。
本明細書で用いる場合、「試料」という用語は、対象の被分析物を含み得る任意の試料
を意味する。本明細書で用いる場合、「体液」という用語は、個人の身体から分離するこ
とができる任意の流体を意味する。例えば、「体液」は、血液、血漿、血清、胆汁、唾液
、尿、涙液、汗及び同類のものを含み得る。好ましい実施形態において、試料は、ヒトか
らの体液試料、好ましくは血漿又は血清を含む。
本明細書で用いる場合、「固相抽出」又は「SPE」という用語は、溶液が通過又は周
りに流れる固体(すなわち、固相)に対する溶液(すなわち、移動相)中に溶解又は懸濁
した成分の親和性の結果として化学物質の混合物を成分に分離する方法を意味する。場合
によっては、移動相が固相を通過又はその周りに流れるとき、移動相の望ましくない成分
が固相により保持されて、移動相中の被分析物の精製がもたらされる可能性がある。他の
場合には、被分析物が固相により保持されて、移動相の望ましくない成分が固相を通過又
はその周りに流れることが可能になり得る。これらの場合、さらなる処理又は分析のため
に次に第2の移動相を用いて、保持された被分析物を固相から溶出する。TFLCを含む
SPEは、単一又は混合モード機構により機能し得る。混合モード機構は、同じカラムに
おいてイオン交換と疎水性保持を利用するものであり、例えば、混合モードSPEカラム
の固相は、強い陰イオン交換及び疎水性保持を示し得る、又は強い陽イオン交換及び疎水
性保持を示し得る。
一般的に、被分析物に対するSPEカラム充填物質の親和性は、1つ又は複数の化学的
相互作用又は免疫親和性相互作用などの様々な機構のいずれかに起因し得る。いくつかの
実施形態において、インスリンのSPEは、免疫親和性カラム充填物質を用いずに行われ
る。すなわち、いくつかの実施形態において、インスリンは、免疫親和性カラムでないS
PEカラムにより試料から精製される。
本明細書で用いる場合、「クロマトグラフィー」という用語は、液体又は気体により運
ばれる化学物質の混合物が、静止液体又は固相の周り又は上に流れるときに化学物質の差
別的分配の結果として成分に分離される方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「液体クロマトグラフィー」又は「LC」という用語は、流体
が微細な物質のカラム又は毛細管通路に均一に浸透するときに流体溶液の1つ又は複数の
成分が選択的に遅延する方法を意味する。遅延は、1つ又は複数の固定相とバルク流体(
すなわち、移動相)との間のこの流体が固定相(単数又は複数)に対して移動するときの
混合物の成分の分配に起因する。「液体クロマトグラフィー」の例としては、逆相液体ク
ロマトグラフィー(RPLC)、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)及び乱流液体
クロマトグラフィー(TFLC)(時に高乱流液体クロマトグラフィー(HTLC)又は
高処理液体クロマトグラフィーとして公知である)などがある。
本明細書で用いる場合、「高速液体クロマトグラフィー」又は「HPLC」(時に「高
圧液体クロマトグラフィー」として公知である)という用語は、移動相を加圧下で固定相
、一般的に密に充填されたカラムに強制的に通すことによって分離の程度を増大させる液
体クロマトグラフィーを意味する。
本明細書で用いる場合、「乱流液体クロマトグラフィー」又は「TFLC」(時に高乱
流液体クロマトグラフィー又は高処理液体クロマトグラフィーとして公知である)という
用語は、カラム充填剤に通すアッセイされる物質の乱流を、分離を行う基盤として利用す
るクロマトグラフィーの形態を意味する。TFLCは、質量分析による分析の前に2つの
無名の薬物を含む試料の調製に適用された。例えば、Zimmerら、J Chromatogr、A854巻、
23~35頁(1999年)を参照のこと。TFLCをさらに説明している、米国特許第5,96
8,367号、第5,919,368号、第5,795,469号及び第5,772,8
74号も参照のこと。当業者は、「乱流」を理解している。流体がゆっくりと滑らかに流
れている場合、その流れは、「層流」と呼ばれる。例えば、HPLCカラム中を低流速で
移動している流体は、層流である。層流において、流体の粒子の運動は規則的であり、粒
子が一般的に実質的に直線的に移動する。より速い速度では、水の慣性が流体の摩擦力に
打ち勝ち、乱流が生ずる。不規則な境界と接触していない流体は、それを「追い越し」、
摩擦により遅くなるか、又は平坦でない表面により偏向させられる。流体が乱れて流れて
いる場合、それは、流れが層流である場合より大きい「抵抗」により渦状に旋回して(又
は渦巻き状で)流れる。流体の流れが層流又は乱流である場合を判断するうえで助けとす
るための多くの参考文献が入手可能である(例えば、Turbulent Flow Analysis: Measure
ment and Prediction、P.S. Bernard & J.M. Wallace、John Wiley & Sons, Inc.(2000年
)、An Introduction to Turbulent Flow、Jean Mathieu & Julian Scott、Cambridge Uni
versity Press (2001年))。
本明細書で用いる場合、「ガスクロマトグラフィー」又は「GC」という用語は、試料
混合物を蒸発させ、液体又は粒子状固体から構成される固定相を含むカラム中を移動する
キャリヤーガス(窒素又はヘリウムとしての)の流れに注入し、固定相に対する化合物の
親和性に従ってその成分化合物に分離するクロマトグラフィーを意味する。
本明細書で用いる場合、「大粒子カラム」又は「抽出カラム」という用語は、約50μ
mより大きい平均粒子直径を含むクロマトグラフィーカラムを意味する。この文脈におい
て用いる場合、「約」という用語は、±10%を意味する。
本明細書で用いる場合、「分析カラム」という用語は、被分析物の存在又は量の決定を
可能にするのに十分なカラムから溶出する試料中の物質の分離を達成するのに十分なクロ
マトグラフ段(plate)を有するクロマトグラフィーカラムを意味する。そのようなカラ
ムは、さらなる分析のための精製試料を得るために保持されない物質から保持される物質
を分離又は抽出するという一般的な目的を有する「抽出カラム」としばしば区別される。
この文脈において用いる場合、「約」という用語は、±10%を意味する。好ましい実施
形態において、分析カラムは、直径が約5μmの粒子を含む。
本明細書で用いる場合、「オンライン」及び「インライン」という用語は、例えば、「
オンライン自動式(on-line automated fashion)」又は「オンライン抽出」に用いられ
ているように、操作者の介入の必要なしに実施される手順を意味する。対照的に、「オフ
ライン」という用語は、本明細書で用いる場合、操作者の手作業による介入を必要とする
手順を意味する。したがって、試料を沈殿に供し、次いで、上清を手作業でオートサンプ
ラーに装填する場合、沈殿及び装填ステップは、その後のステップからオフラインである
。方法の様々な実施形態において、1つ又は複数のステップをオンライン自動式で実施す
ることができる。
本明細書で用いる場合、「質量分析」又は「MS」という用語は、化合物をそれらの質
量により同定するための分析技術を意味する。MSは、イオンの質量電荷比又は「m/z
」に基づいてイオンをフィルタリングし、検出し、測定する方法を意味する。MS技術は
、一般的に(1)化合物をイオン化して、荷電化合物を生成するステップと、(2)荷電
化合物の分子量を検出し、質量電荷比を計算するステップとを含む。化合物は、適切な手
段によりイオン化し、検出することができる。「質量分析計」は、一般的にイオン化装置
、質量分析計及びイオン検出器を含む。一般的に、対象の1つ又は複数の分子がイオン化
され、その後イオンが質量分析装置に導入され、そこでは、磁界と電界の組み合わせによ
り、イオンが質量(「m」)及び電荷(「z」)に依存する空間内の経路をたどる。例え
ば、「表面からの質量分析(Mass Spectrometry From Surfaces)」と題する米国特許第
6,204,500号、「タンデム質量分析の方法及び装置(Methods and Apparatus fo
r Tandem Mass Spectrometry)」と題する第6,107,623号、「質量分析に基づく
DNA診断(DNA Diagnostics Based On Mass Spectrometry)」と題する第6,268,
144号、「被分析物の脱離及び検出のための表面増強光感受性結合及び放出(Surface-
Enhanced Photolabile Attachment And Release For Desoption And Detection Of Analy
tes)」と題する第6,124,137号、Wrightら、Prostate Cancer and Prostatic D
iseases、1999年、2巻、264~76頁並びにMerchant及びWeinberger、Electrophoresis、20
00年、21巻、1164~67頁を参照のこと。
本明細書で用いる場合、「高分解能/高精度質量分析」は、固有の化学イオン(unique
chemical ion)を確認するのに十分な精度及び正確度(precision and accuracy)で荷
電種の質量電荷比を測定することができる質量分析計を用いて実施される質量分析を意味
する。固有の化学イオンの確認は、当該イオンの個々の同位体ピークが容易に識別できる
場合のイオンについて可能である。固有の化学イオンを確認するために必要な特定の分解
能及び質量正確度は、イオンの質量及び電荷状態によって異なる。
本明細書で用いる場合、「分解能」又は「分解能(FWHM)」(当技術分野で「m/
Δm50%」としても公知である)という用語は、最大高さの50%における質量ピーク
の幅(半値全幅、「FWHM」)で割った観測質量電荷比を意味する。分解能の差の効果
を、約1093のm/zを有するイオンの理論的な質量スペクトルを示す図1A~Cに示
す。図1Aに約3000の分解能(通常の四重極型質量分析計の一般的な操作条件)を有
する質量分析計による理論的質量スペクトルを示す。図1Aにおいてわかるように、個々
の同位体ピークは識別できない。比較すると、図1Bに約10,000の分解能を有する
質量分析計による理論的質量スペクトルを示すが、個々の同位体ピークが明確に識別でき
る。図1Cに約12,000の分解能を有する質量分析計による理論的質量スペクトルを
示す。この最高の分解能では、個々の同位体ピークは、ベースラインからの1%未満の寄
与を含む。
本明細書で用いる場合、質量分析に関する「固有の化学物質イオン」は、単一原子構成
を有する単一イオンを意味する。単一イオンは、1価又は多価であり得る。
本明細書で用いる場合、質量分析に関する「正確度」(又は「質量正確度」)という用
語は、検討されるイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを意味する。正確
度は、一般的に百万分の1(ppm)で表される。質量の正確度の差の効果を、1093
.52094のm/zの理論的ピークについて検出されるm/zと実際のm/zとの間の
生じ得る差の境界を示す図2A~Dに示す。図2Aに120ppmの正確度での検出され
るm/zの生じ得る範囲を示す。対照的に図2Bに50ppmの正確度での検出されるm
/zの生じ得る範囲を示す。図2C及び2Dに20ppm及び10ppmの正確度での検
出されるm/zのより狭い生じ得る範囲を示す。
本発明の高分解能/高精度質量分析法は、10,000、15,000、20,000
、25,000、50,000、100,000又はさらにより大きい値より大きいFW
HMで質量分析を行うことができる機器で実施することができる。同様に、本発明の方法
は、50ppm、20ppm、15ppm、10ppm、5ppm、3ppm未満又はさ
らにより小さい値の正確度で質量分析を行うことができる機器で実施することができる。
これらの性能特性の能力がある機器は、特定のオービトラップ質量分析計、飛行時間(「
TOF」)型質量分析計又はフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計を組み込
み得る。好ましい実施形態において、方法は、オービトラップ質量分析計又はTOF型質
量分析計を含む機器により実施される。
「オービトラップ」という用語は、たる様の外側電極と同軸の内側電極からなるイオン
トラップを記述する。イオンは、電極間の電界に接線方向に注入され、イオンと電極との
間の静電相互作用がイオンが同軸内側電極を周回するときの遠心力と釣り合うためにトラ
ップされる。イオンが同軸内側電極を周回するとき、トラップされたイオンの軌道がイオ
ンの質量電荷比に応じた調和振動数で中心電極の軸に沿って振動する。軌道振動数の検出
により、オービトラップを高精度(1~2ppmと低い)及び高分解能(FWHM)(最
大約200,000)を有する質量分析計として用いることが可能になる。オービトラッ
プに基づく質量分析計は、参照によりその全体として本明細書に組み込まれる、米国特許
第6,995,364号に詳細に記載されている。オービトラップ分析計の使用は、様々
な被分析物の定性及び定量分析について報告された。例えば、米国特許出願公開第200
8/0118932号(2007年11月9日出願)、Bredehoftら、Rapid Commun. Mas
s Spectrom.、2008年、22巻、477~485頁、Le Bretonら、Rapid Commun. Mass Spectrom.
、2008年、22巻、3130~36頁、Thevisら、Mass Spectrom. Reviews、2008年、27巻、35~
50頁、Thomasら、J. Mass Spectrom.、2008年、43巻、908~15頁、Schenkら、BMC Medica
l Genomics、2008年、1巻、41頁及びOlsenら、Nature Methods、2007年、4巻、709~12頁
を参照のこと。
本明細書で用いる場合、「ネガティブイオンモードで動作する」という用語は、負イオ
ンを発生させ、検出する質量分析法を意味する。「ポジティブイオンモードで動作する」
という用語は、本明細書で用いる場合、正イオンを発生させ、検出する質量分析法を意味
する。好ましい実施形態において、質量分析をポジティブイオンモードで行う。
本明細書で用いる場合、「イオン化」又は「イオン化する」という用語は、1以上の電
子単位に等しい正味の電荷を有する被分析物イオンを発生させる方法を意味する。負イオ
ンは、1以上の電子単位の正味の負電荷を有するものであり、一方、正イオンは、1以上
の電子単位の正味の正電荷を有するものである。
本明細書で用いる場合、「電子イオン化」又は「EI」という用語は、気相又は蒸気相
中の対象の被分析物が電子の流れと相互作用する方法を意味する。電子と被分析物との衝
突が、次に質量分析技術に供され得る被分析物イオンを生成する。
本明細書で用いる場合、「化学イオン化」又は「CI」という用語は、試薬ガス(例え
ば、アンモニア)が電子衝撃に供され、試薬ガスイオンと被分析物分子との相互作用によ
り被分析物イオンが生じる方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「高速原子衝撃」又は「FAB」という用語は、高エネルギー
原子(しばしばXe又はAr)のビームが不揮発性試料に衝突し、試料に含まれている分
子を脱離させ、イオン化する方法を意味する。試験試料をグリセロール、チオグリセロー
ル、m-ニトロベンジルアルコール、18-クラウン-6クラウンエーテル、2-ニトロ
フェニルオクチルエーテル、スルホラン、ジエタノールアミン及びトリエタノールアミン
などの粘性液体マトリックスに溶解する。化合物又は試料に対する適切なマトリックスの
選択は、経験的過程である。
本明細書で用いる場合、「マトリックス支援レーザー脱離イオン化」又は「MALDI
」という用語は、不揮発性試料を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ
崩壊を含む様々なイオン化経路により試料中の被分析物を脱離させ、イオン化するレーザ
ー照射にさらす方法を意味する。MALDIのために、試料を、被分析物分子の脱離を促
進するエネルギー吸収マトリックスと混合する。
本明細書で用いる場合、「表面エンハンス型レーザー脱離イオン化」又は「SELDI
」という用語は、不揮発性試料を、光イオン化、プロトン化、脱プロトン化及びクラスタ
崩壊を含む様々なイオン化経路により試料中の被分析物を脱離させ、イオン化するレーザ
ー照射にさらす他の方法を意味する。SELDIのために、試料を一般的に、対象の1つ
又は複数の被分析物を優先的に保持する表面に結合させる。MALDIと同様に、この方
法は、イオン化を促進するエネルギー吸収物質も用いることができる。
本明細書で用いる場合、「エレクトロスプレーイオン化」又は「ESI」という用語は
、末端に高い正又は負電位を印加した短い毛細管に溶液を通す方法を意味する。管の末端
に到達した溶液は、蒸発して(霧化)、溶媒蒸気中溶液の非常に小さな液滴のジェット又
は噴霧体(spray)になる。この液滴の噴霧体(mist)は、蒸発チャンバー中を流れる。
液滴がより小さくなるとき、電荷の間の自然反発力によってイオン並びに中性分子が放出
されるような時点まで表面電荷密度が増加する。
本明細書で用いる場合、「大気圧化学イオン化」又は「APCI」という用語は、ES
Iと同様な質量分析法を意味するが、APCIは、大気圧のプラズマ内で起こるイオン-
分子反応によりイオンを生成する。プラズマは、噴霧毛細管と対極との間の放電により維
持される。次いで、イオンは、一般的に一組の差動排気スキマーステージを用いることに
より質量分析計内に抽出される。向流の乾燥および予熱されたNガスを用いて、溶媒の
除去を改善することができる。APCIにおける気相イオン化は、極性がより低い種を分
析するのにESIより有効であり得る。
「大気圧光イオン化」又は「APPI」という用語は、本明細書で用いる場合、分子M
のイオン化の機構が分子イオンM+を生成する光子の吸収及び電子の放出である質量分析
の形態を意味する。光子エネルギーが一般的にイオン化電位の直上であるため、分子イオ
ンは解離を受けにくい。多くの場合に、クロマトグラフィーの必要なしに試料を分析する
ことが可能であり、それによりかなりの時間と費用の節約となり得る。水蒸気又はプロト
ン性溶媒の存在下では、分子イオンは、Hを引き抜いてMH+を形成し得る。Mが高いプ
ロトン親和性を有する場合、これが起こる傾向がある。M+とMH+の合計が一定である
ため、これは、定量の正確度に影響を与えない。プロトン性溶媒中の薬物化合物は、通常
MH+として観測されるが、ナフタレン又はテストステロンなどの非極性化合物は、通常
M+を形成する。例えば、Robbら、Anal. Chem.、2000年、72巻(15号)、3653~3659頁を
参照のこと。
本明細書で用いる場合、「誘導結合プラズマ」又は「ICP」という用語は、大部分の
元素が原子化され、イオン化されるような十分に高い温度で試料が部分的にイオン化され
たガスと相互作用する方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「電界脱離」という用語は、不揮発性試験試料をイオン化表面
上にのせ、強い電界を用いて被分析物イオンを発生させる方法を意味する。
本明細書で用いる場合、「脱離」という用語は、表面からの被分析物の除去及び/又は
被分析物の気相への侵入を意味する。レーザー脱離熱脱離は、被分析物を含む試料をレー
ザーパルスにより気相中に熱的に脱離させる技術である。レーザーは、金属基部を備えた
特製の96ウエルプレートの裏面を照射する。レーザーパルスが底部を加熱し、熱が試料
を気相に移行させる。気相試料が次に質量分析計に引き込まれる。
本明細書で用いる場合、「選択イオンモニタリング」という用語は、比較的狭い質量範
囲内、一般的に約1質量単位の範囲内のイオンのみが検出される質量分析機器の検出モー
ドである。
本明細書で用いる場合、「選択反応モニタリング」として時として公知である「多重反
応モード」は、前駆イオン及び1つ又は複数のフラグメントイオンが選択的に検出される
質量分析機器の検出モードである。
本明細書で用いる場合、「定量化下限」、「定量下限」又は「LLOQ」という用語は
、測定が定量的に意味があるようになるポイントを意味する。このLOQにおける被分析
物の応答は、特定可能であり、個別的であり、20%未満の相対標準偏差(RSD%)及
び85%~115%の正確度で再現性がある。
本明細書で用いる場合、「検出限界」又は「LOD」という用語は、測定値がそれに関
連する不確実さより大きいポイントである。LODは、値がその測定に関連する不確実さ
を超えるポイントであり、ゼロ濃度における平均値のRSDの3倍と定義される。
本明細書で用いる場合、体液試料中の被分析物の「量」は、一般的に試料の体積におい
て検出できる被分析物の質量を反映する絶対値を意味する。しかし、量は、他の被分析物
の量と比較した相対量も意図する。例えば、試料中の被分析物の量は、試料中に通常存在
する被分析物の対照又は正常レベルより大きい量であり得る。
「約」という用語は、イオンの質量の測定を含まない定量的測定に関して本明細書で用
いる場合、表示値プラス又はマイナス10%を意味する。質量分析機器は、所定の被分析
物の質量を決定することについてわずかに異なり得る。イオンの質量又はイオンの質量/
電荷比に関する「約」という用語は、+/-0.50原子質量単位を意味する。
上述の本発明の概要は、非限定的なものであり、本発明の他の特徴及び利点は、本発明
の以下の詳細な説明及び特許請求の範囲から明らかである。
約3000の分解能を有する質量分析計により分析するときの約1093のm/zを有するイオンの理論的質量スペクトルを示す図である。 約10,000の分解能を有する質量分析計により分析するときの約1093のm/zを有するイオンの理論的質量スペクトルを示す図である。 約12,000の分解能を有する質量分析計により分析するときの約1093のm/zを有するイオンの理論的質量スペクトルを示す図である 120ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 50ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 20ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 10ppmの質量精度での1093.52094のm/zにおける理論的ピークについて検討したイオンの真のm/zからの機器の応答の生じ得る偏りを示す図である。 図3A及びBは、酸性条件下でポジティブイオンモードでのESIによるヒトインスリンのイオン化で収集された具体例としてのスペクトルを示す図である。詳細は実施例3で述べる。 図3A及びBは、塩基性条件下でポジティブイオンモードでのESIによるヒトインスリンのイオン化で収集された具体例としてのスペクトルを示す図である。詳細は実施例3で述べる。 図4Aは、QTOF質量分析計により得られたヒトインスリンの約900~1200のm/z範囲にわたる具体例としてのスペクトルを示す図である。図4Bは、QTOF質量分析計により得られたストリップ血清試料マトリックスからの混入物ピークを示す図である。詳細は実施例4で述べる。 図5Aは、QTOF質量分析計により得られたヒトインスリンの約1154~1177のm/z範囲にわたる具体例としての高分解能/高精度スペクトルを示す図である。図5Bは、約1159~1166のm/z範囲の拡大図である。詳細は実施例4で述べる。 図6Aは、QTOF質量分析計により得られたヒトインスリンの約964~973のm/z範囲にわたる具体例としての高分解能/高精度スペクトルを示す図である。図6Bは、約967~971のm/z範囲の拡大図である。詳細は実施例4で述べる。 図7は、インスリンの高分解能/高精度MSにより測定したスパイクした模擬血清標準中のヒトインスリンの定量の直線性プロットを示す図である。詳細は実施例4で述べる。 図8は、インスリンの高分解能/高精度MSにより測定したスパイクしたストリップ血清標準中のヒトインスリンの定量の直線性プロットを示す図である。詳細は実施例4で述べる。 図9は、5+及び6+荷電状態のヒトインスリン前駆イオンの生成を示すタンデム質量分析Q1スキャンを示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図10は、6+荷電状態のヒトインスリン前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図11は、5+荷電状態のヒトインスリン前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図12は、各種衝突エネルギーで6+及び5+ヒトインスリン前駆イオンをフラグメント化することにより生成した選択したフラグメントイオンの相対強度を示す図である。詳細は実施例5で述べる。 図13は、2つの可能なヒトインスリンA鎖前駆イオン(2+及び3+荷電状態の)及び2つの可能なヒトインスリンB鎖前駆イオン(3+及び4+荷電状態の)を示す複合スペクトルを示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図14は、l3+、4+及び5+荷電状態の可能なヒトインスリンB鎖前駆イオンの生成を示すタンデム質量分析Q1スキャンを示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図15は、各種衝突エネルギーで3+ヒトインスリンA鎖前駆イオンをフラグメント化することにより生成した選択したフラグメントイオンの相対強度を示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図16は、4+荷電状態のヒトインスリンB鎖前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例6で述べる。 図17は、3+荷電状態のヒトインスリンB鎖前駆イオンのフラグメント化によるプロダクトイオンスキャンを示す図である。詳細は実施例10で述べる。 図18は、各種衝突エネルギーで3+ヒトインスリンB鎖前駆イオンをフラグメント化することにより生成した選択したフラグメントイオンの相対強度を示す図である。詳細は実施例10で述べる。 図19は、ヒトインスリンB鎖のタンデム質量分析による患者血清試料中のヒトインスリンのLLOQを評価するために用いたプロットを示す図である。詳細は実施例12で述べる。 図20は、ヒトインスリンB鎖のタンデム質量分析により測定したスパイクしたストリップ血清試料中のヒトインスリンの定量の直線性のプロットを示す図である。詳細は実施例13で述べる。
発明の詳細な説明
試料中のインスリンの量を決定する方法を述べる。より具体的には、試料中のインスリ
ンを検出し、定量するための質量分析法を述べる。方法は、選択される被分析物の精製を
実施するための固相抽出(SPE)及び/又は液体クロマトグラフィー(LC)を質量分
析(MS)の方法と組み合わせて利用し、それにより、試料中のインスリンを検出し、定
量するためのアッセイシステムを提供し得る。好ましい実施形態は、自動インスリン定量
アッセイへの大規模臨床施設における適用に特に十分に適している。
本発明の方法に用いる適切な試験試料は、対象の被分析物を含み得る試験試料である。
いくつかの好ましい実施形態において、試料は、生物学的試料、すなわち、動物、細胞培
養、器官培養等などの生物学的源から得られる試料である。特定の好ましい実施形態にお
いて、試料は、イヌ、ネコ、ウマ等などの哺乳動物から得られる。特に好ましい哺乳動物
は、霊長類、最も好ましくは男性又は女性ヒトである。好ましい試料は、血液、血漿、血
清、唾液、脳脊髄液などの体液又は組織試料、好ましくは血漿及び血清を含む。そのよう
な試料は、例えば、患者、すなわち、疾患又は状態の診断、予後診断又は治療のために臨
床施設に出頭する男性又は女性の生者から得ることができる。試料が生物学的試料を含む
実施形態において、方法は、試料が生物学的源から得られた場合の試料中のインスリンの
量を決定するために用いることができる。
本発明はまた、インスリンの定量アッセイ用のキットを企図する。インスリンの定量ア
ッセイ用のキットは、本明細書で提供する組成物を含むキットを含み得る。例えば、キッ
トは、包装材料及び少なくとも1回のアッセイに十分な量の一定量の同位体標識内部標準
を含み得る。一般的に、インスリンの定量アッセイ用の包装済み試薬の使用についての有
形の形式で記録された(例えば、紙又は電子媒体上に含まれた)取扱説明書も含む。
本発明の実施形態に用いる較正及びQCプールは、好ましくは、インスリンが本質的に
存在しないという条件で、対象とする試料マトリックスと同様なマトリックスを用いて調
製する。
質量分析用の試料の調製
質量分析のための調製において、例えば、液体クロマトグラフィー、ろ過、遠心分離、
薄層クロマトグラフィー(TLC)、毛細管電気泳動を含む電気泳動、免疫アフィニティ
ー分離を含むアフィニティー分離、酢酸エチル若しくはメタノール抽出を含む抽出法及び
カオトロピック剤の使用又は上記のもの若しくは同類のもののいずれかの組み合わせを含
む当技術分野で公知の様々な方法により、インスリンを試料中の1つ又は複数の他の成分
と比べて濃縮することができる。
質量分析の前に用いることができる試料の精製の1つの方法は、対象の被分析物はカラ
ム充填剤に可逆的に保持されるが、1つ又は複数の他の物質は保持されない条件下で試料
を固相抽出(SPE)カラムに加えることである。この技術において、対象の被分析物が
カラムにより保持される場合に、第1の移動相条件を用いることができ、保持されない物
質が洗い流されたならば、保持された物質をカラムから除去するためにその後に第2の移
動相条件を用いることができる。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンは、アルキル結合表面を含む充填剤
を含むSPEカラムに可逆的に保持させることができる。例えば、いくつかの実施形態に
おいて、C-8オンラインSPEカラム(Phenomenex,Inc.製のOasi
s HLBオンラインSPEカラム/カートリッジ(2.1mmx20mm)又は同等物
など)は、質量分析の前にインスリンを濃縮するために用いることができる。いくつかの
実施形態において、SPEカラムの使用は、洗浄溶液としてのHPLC用0.2%水性ギ
酸及び溶出溶液としてのアセトニトリル中0.2%ギ酸を用いて行われる。
いくつかの実施形態において、インスリンは、免疫アフィニティー技術により精製しな
い。これらの実施形態のいくつかは、SPEカラムを利用する。これらの実施形態におい
て、SPEカラムは、免疫アフィニティーカラムでない。
他の実施形態において、方法は、質量分析の前のインスリンを免疫精製するステップを
含む。免疫精製ステップは、当技術分野で周知の免疫精製法のいずれかを用いて実施する
ことができる。しばしば免疫精製手順は、固体担体、例えば、カラム、ウエル、チューブ
、カプセル、粒子又は同類のものに結合した、コンジュゲートした、固定化された又は別
の状態で結合した抗体を利用するものである。一般的に、免疫精製法は、(1)被分析物
が抗体に結合するように対象の被分析物を含む試料を抗体とともにインキュベートするス
テップと、(2)1又は複数回の洗浄ステップを実施するステップと、(3)抗体から被
分析物を溶出するステップとを含む。
特定の実施形態において、免疫精製のインキュベーションステップは、溶液中の遊離の
抗体を用いて実施し、抗体は、その後、洗浄ステップの前に固体表面に結合又は付着させ
る。特定の実施形態において、これは、抗インスリン抗体である一次抗体及び一次抗イン
スリン抗体に対する親和性を有する固体表面に結合させた二次抗体を用いて達成すること
ができる。代替実施形態において、インキュベーションステップの前に一次抗体を固体表
面に結合させる。
適切な固体担体は、制限なしに、チューブ、スライド、カラム、ビーズ、カプセル、粒
子、ゲル及び同類のものを含む。いくつかの好ましい実施形態において、固体担体は、例
えば、96ウエルプレート、384ウエルプレート及び同類のものなどの多ウエルプレー
トである。いくつかの実施形態において、固体担体は、セファロース若しくはアガロース
ビーズ又はゲルである。抗体(例えば、インスリン抗体又は二次抗体)を固体担体に結合
、付着、固定化又は連結することができる当技術分野で周知の多くの方法、例えば、共有
結合又は非共有結合吸着、親和性結合、イオン結合などがある。いくつかの実施形態にお
いて、抗体は、CNBrを用いて連結させる。例えば、抗体は、CNBr活性化セファロ
ースに連結させることができる。他の実施形態において、抗体は、プロテインA、プロテ
インG、プロテインA/G又はプロテインLなどの抗体結合タンパク質を介して固体担体
に付着させる。
免疫精製法の洗浄ステップは、一般的に、インスリンが固体担体上の抗インスリン抗体
に結合したままであるように固体担体を洗浄することを必要とする。免疫精製法の溶出ス
テップは、一般的に、抗インスリン抗体へのインスリンの結合を破壊する溶液の添加を必
要とする。具体例としての溶出溶液は、有機溶液、塩溶液及び高又は低pH溶液を含む。
質量分析の前に用いることができる試料の精製の他の方法は、液体クロマトグラフィー
(LC)である。液体クロマトグラフィー技術において、対象の被分析物が1つ又は複数
の他の物質と比べて異なる速度で溶出する移動相条件下で試料をクロマトグラフ分析カラ
ムに加えることによって、被分析物を精製することができる。そのような手順は、試料の
1つ又は複数の他の成分と比べて対象の1つ又は複数の被分析物の量を高め得る。
HPLCを含む液体クロマトグラフィーの特定の方法は、比較的に遅い層流技術に依拠
している。伝統的なHPLC分析は、カラム中を通る試料の層流が試料からの対象の被分
析物の分離の基礎であるカラム充填に依拠している。当業者は、そのようなカラムにおけ
る分離が分配過程であることを理解し、Cペプチドとともに用いるのに適切であるHPL
Cを含むLC、機器及びカラムを選択することができる。クロマトグラフ分析カラムは、
一般的に化合物構成成分の分離(すなわち、分別)を促進するための媒体(すなわち、充
填剤)を含む。媒体は、微細な粒子を含み得る。粒子は、一般的に、様々な化合物構成成
分と相互作用して化合物構成成分の分離を促進する結合表面を含む。1つの適切な結合表
面は、アルキル結合又はシアノ結合表面などの疎水性結合表面である。アルキル結合表面
は、C-4、C-8、C-12又はC-18結合アルキル基を含み得る。いくつかの実施
形態において、クロマトグラフ分析カラムは、モノリスC-18カラムである。クロマト
グラフ分析カラムは、試料を受け入れる入口部及び分別試料を含む溶出物を排出するため
の出口部を含む。試料は、入口部に直接、又はオンラインSPEカラムなどのSPEカラ
ム若しくはTFLCカラムから供給することができる。いくつかの実施形態において、試
料がSPE及び/又はTFLC及び/又はHPLCカラムに達する前に試料中の粒子及び
リン脂質を除去するために、オンラインフィルターをSPEカラム及び又はHPLCカラ
ムの前に用いることができる。
1つの実施形態において、試料は、入口部においてLCカラムに加え、溶媒又は溶媒混
合物により溶出し、出口部において排出することができる。対象の被分析物(単数又は複
数)を溶出するための各種溶媒モードを選択することができる。例えば、液体クロマトグ
ラフィーは、勾配モード、無勾配モード又は多型的(すなわち、混合)モードを用いて実
施することができる。クロマトグラフィー中、物質の分離は、溶出液(「移動相」として
も公知)、溶出モード、勾配条件、温度の選択等などの変数による影響を受ける。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンをHPLCにより濃縮する。このH
PLCは、モノリスC-18カラムクロマトグラフシステム、例えば、Phenomen
ex Inc.製のOnyxモノリスC-18カラム(50x2.0mm)又は同等物を
用いて実施することができる。特定の実施形態において、HPLCは、溶媒AとしてのH
PLC用0.2%水性ギ酸及び溶媒Bとしてのアセトニトリル中0.2%ギ酸を用いて実
施する。
弁及び継手配管の注意深い選択により、手作業によるステップの必要なく1つのクロマ
トグラフィーカラムから次のカラムに物質が通るように2つ以上のクロマトグラフィーカ
ラムを必要に応じて接続することができる。好ましい実施形態において、弁及び配管の選
択は、必要なステップを実施するようにあらかじめプログラムされたコンピュータにより
制御される。最も好ましくは、クロマトグラフィーシステムは、そのようなオンライン式
で検出システム、例えば、MSシステムにも接続されている。したがって、操作者が試料
のトレーをオートサンプラーに取り付けることができ、残りの操作は、コンピュータ制御
のもとに実施されて、選択されるすべての試料の精製及び分析が行われる結果となる。
いくつかの実施形態において、質量分析の前のインスリンの精製のためにTFLCを用
いることができる。そのような実施形態において、被分析物を捕捉するTFLCカラムを
用いて試料を抽出することができる。次いで、被分析物を溶出し、オンラインで分析HP
LCカラムに移す。例えば、試料の抽出は、大粒子径(50μm)充填剤を含むTFLC
抽出カートリッジを用いて達成することができる。このカラムから溶出した試料は、質量
分析の前のさらなる精製のためにオンラインで分析HPLCカラムに移すことができる。
これらのクロマトグラフィー手順に含まれるステップを自動式で連結することができるの
で、被分析物の精製中の操作者の関与の必要性を最小限にすることができる。この特徴に
より、時間と費用の節約がもたらされ、操作者の誤りの機会が排除される可能性がある。
いくつかの実施形態において、1つ又は複数の上述の精製技術は、複数の試料の同時処
理を可能にするために、インスリンの精製のために並行して用いることができる。いくつ
かの実施形態において、用いられる精製技術は、免疫アフィニティークロマトグラフィー
などの免疫精製技術を除く。
質量分析によるインスリンの検出及び定量
質量分析は、分別試料をイオン化し、さらなる分析のために荷電分子を生成するための
イオン源を含む質量分析計を用いて実施される。様々な実施形態において、インスリンは
、当業者に公知の方法によりイオン化することができる。例えば、インスリンのイオン化
は、電子イオン化、化学イオン化、エレクトロスプレーイオン化(ESI)、光子イオン
化、大気圧化学イオン化(APCI)、光イオン化、大気圧光イオン化(APPI)、レ
ーザーダイオード熱脱離(LDTD)、高速原子衝撃(FAB)、液体二次イオン化(L
SI)、マトリックス支援レーザー脱離イオン化(MALDI)、電界イオン化、電界脱
離、サーモスプレー/プラズマスプレーイオン化、表面エンハンス型レーザー脱離イオン
化(SELDI)、誘導結合プラズマ(ICP)及び粒子ビームイオン化により行うこと
ができる。当業者は、イオン化法の選択は、測定される被分析物、試料の種類、検出器の
種類、ポジティブ対ネガティブモードの選択等に基づいて決定することができることを理
解し、インスリンはポジティブモードでイオン化されても、ネガティブモードでイオン化
されてもよい。好ましい実施形態において、インスリンは、ESIによりポジティブイオ
ンモードでイオン化される。
質量分析技術において、一般的に、試料をイオン化した後、それにより生成した正又は
負に荷電したイオンを分析して、質量電荷比(m/z)を決定することができる。m/z
を決定するための種々の分析計は、四重極型分析計、イオントラップ型分析計、飛行時間
型分析計、フーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計及びオービトラップ型分析
計を含む。いくつかの具体例としてのイオントラップ方法は、Bartolucciら、Rapid Comm
un. Mass Spectrom.、2000年、14巻、967~73頁に記載されている。
イオンは、数種の検出モードを用いて検出することができる。例えば、選択されるイオ
ンは、すなわち、選択イオンモニタリングモード(SIM)を用いて検出することができ
、又は代わりになるべきものとして、衝突誘起解離若しくはニュートラルロスに起因する
質量遷移を例えば、多重反応モニタリング(MRM)若しくは選択反応モニタリング(S
RM)によりモニターすることができる。いくつかの実施形態において、質量電荷比を四
重極型分析計を用いて決定する。「四重極」又は「四重極型イオントラップ」機器におい
て、振動高周波電界におけるイオンは、電極間に印加されたDC電位、RFシグナルの振
幅及び質量/電荷比に比例する力を受ける。電圧及び振幅は、特定の質量/電荷比を有す
るイオンのみが四重極を縦断するが、他のすべてのイオンは偏向させられるように選択で
きる。したがって、四重極機器は、機器に注入されるイオンの「マスフィルター」及び「
質量検出器」の両方として機能し得る。
イオンが検出器に衝突するとき、それらは、デジタル信号に変換される電子のパルスを
生じる。取得されたデータは、コンピュータに転送され、コンピュータは、収集されたイ
オンの計数を時間に対してプロットする。得られる質量クロマトグラムは、伝統的なHP
LC-MS法で得られるクロマトグラムに類似している。特定のイオンに対応するピーク
下面積又はそのようなピークの振幅を測定し、対象の被分析物の量と関連させることがで
きる。特定の実施形態において、フラグメントイオン(単数又は複数)及び/又は前駆イ
オンのピークの曲線下面積又は振幅を測定して、インスリンの量を決定する。所定のイオ
ンの相対存在量(relative abundance)は、内部又は外部分子標準の1つ又は複数のイオ
ンのピークに基づく較正標準曲線を用いて最初の被分析物の絶対量に変換することができ
る。
特定の質量分析計を用いるMS技術の分解能を「タンデム質量分析」又は「MS/MS
」により向上させることができる。この技術において、対象の分子から得られる前駆イオ
ン(親イオンとも呼ばれる)は、MS機器によりフィルターすることができ、前駆イオン
は、その後フラグメント化されて、第2のMS手順で分析される1つ又は複数のフラグメ
ントイオン(娘イオン又はプロダクトイオンとも呼ばれる)を生じる。前駆イオンの注意
深い選択により、特定の被分析物により生成するイオンのみがフラグメント化チャンバー
に通され、そこでの不活性ガスの原子との衝突により、フラグメントイオンが生成する。
前駆及びフラグメントイオンの両方が一連の所定のイオン化/フラグメント化条件下で再
現性よく生成するので、MS/MS技術は、極めて強力な分析ツールとなり得る。例えば
、フィルトレーション/フラグメンテーションの組み合わせは、妨害物質を除去するため
に用いることができ、生物学的試料のような複雑な試料に特に有用であり得る。特定の実
施形態において、マルチプル四重極型分析計を含む質量分析機器(トリプル四重極型機器
など)を用いてタンデム質量分析を行う。
MS/MS技術を用いる特定の実施形態において、前駆イオンをさらなるフラグメント
化のために単離し、衝突活性化解離(CAD)を用いて、後続の検出のために前駆イオン
からフラグメントイオンを生成する。CADにおいて、前駆イオンは、不活性ガスとの衝
突によりエネルギーを獲得し、その後「単分子分解」と呼ばれる過程によりフラグメント
になる。振動エネルギーの増加によりイオン内の特定の結合を切断できるように、十分な
エネルギーが前駆イオンに蓄積されなければならない。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンは、次のようにMS/MSを用いて
検出され、及び/又は定量される。最初に試料をSPEに、次いで、液体クロマトグラフ
ィー、好ましくはHPLCに供することにより、試料中のインスリンが濃縮され、クロマ
トグラフ分析カラムからの液体溶媒の流れがMS/MS分析計の加熱ネブライザーインタ
ーフェースに入り、溶媒/被分析物混合物がインターフェースの加熱荷電チューブ中で蒸
気に変換される。これらの過程において、被分析物(すなわち、インスリン)がイオン化
される。イオン、例えば、前駆イオンは、機器の開口部を通過し、第1の四重極に入る。
四重極1及び3(Q1及びQ3)は、イオンの質量電荷比(m/z)に基づいてイオンの
選択(すなわち、Q1及びQ3におけるそれぞれ「前駆」及び「フラグメント」イオンの
選択)を可能にするマスフィルターである。四重極2(Q2)は、イオンがフラグメント
化されるコリジョンセルである。質量分析計の第1の四重極(Q1)は、インスリンイオ
ンのm/zを有する分子を選択する。正しいm/zを有する前駆イオンは、コリジョンチ
ャンバー(Q2)内に通されるが、他のm/zを有する不要なイオンは、四重極の側面に
衝突し、除去される。Q2に入った前駆イオンは、中性ガス分子(アルゴン分子など)と
衝突し、フラグメントになる。生成したフラグメントイオンは、四重極3(Q3)に通さ
れ、ここでフラグメントイオンが検出のために選択される。
インスリンのイオン化は、多価前駆イオン(4+、5+、6+等の前駆イオンのような
)をもたらし得る。イオン化条件、特にエレクトロスプレー技術に用いられる緩衝液のp
Hは、生成したインスリン前駆イオンの同一性及び量に著しい影響を与える。例えば、酸
性条件下では、ポジティブエレクトロスプレーイオン化は、主として、それぞれ1162
.5±0.5及び968.5±0.5のm/zを有する5+及び6+価インスリン前駆イ
オンを発生させ得る。しかし、塩基性条件下では、ポジティブエレクトロスプレーイオン
化は、主として、それぞれ1453.75±0.5及び1162.94±0.5のm/z
を有する4+及び5+価インスリン前駆イオンを発生させ得る。本方法は、酸性又は塩基
性条件、好ましくは酸性条件を利用し得る。
本方法は、ポジティブ又はネガティブイオンモード、好ましくはポジティブイオンモー
ドで実施されるMS/MSを含み得る。特定の実施形態において、エレクトロスプレー緩
衝液は、酸性であり、Q1は、約1162.5±0.5又は968.5±0.5のm/z
を有するインスリン前駆イオンを選択する。これらのインスリン前駆イオンのいずれかの
フラグメント化により、約226.21±0.5及び/又は135.6±0.5のm/z
を有するフラグメントイオンが生成する。したがって、Q1が、約1162.5±0.5
及び968.5±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数
のインスリン前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約226.21±0.5
及び135.6±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラ
グメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラ
グメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2
つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態に
おいて、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の
最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の
前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試
料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。
特定の実施形態において用いることができるタンデム質量分析機器を操作する代替モー
ドは、プロダクトイオンスキャン法及び前駆イオンスキャン法を含む。これらの操作モー
ドの説明については、例えば、E. Michael Thurmanら、Chromatographic-Mass Spectrome
tric Food Analysis for Trace Determination of Pesticide Residues、Chapter 8 (Ama
deo R. Fernandez-Alba編、Elsevier 2005)(387)を参照のこと。
他の実施形態において、高分解能/高精度質量分析計は、本発明の方法によるインスリ
ンの定量的分析に用いることができる。定量的結果の容認できる精度を達成するために、
質量分析計は、対象のイオンについて約50ppm又はそれ以下の正確度で10,000
又はそれ以上の分解能(FWHM)を示すことができなければならない。好ましくは質量
分析計は、約5ppm又はそれ以下の正確度で18,000又はそれ以上の分解能(FW
HM)、例えば、20,000又はそれ以上の分解能(FWHM)と約3ppm又はそれ
以下の正確度など、例えば、25,000又はそれ以上の分解能(FWHM)と約3pp
m又はそれ以下の正確度などを示す。インスリンイオンについて必要なレベルの性能を示
すことができる3つの具体例としての分析計は、オービトラップ質量分析計、特定のTO
F質量分析計及びフーリエ変換イオンサイクロトロン共鳴質量分析計である。
炭素、酸素及び窒素などの生物学的活性分子に見いだされる元素は、多種の同位体で天
然に存在する。例えば、ほとんどの炭素は、12Cとして存在するが、すべての天然に存
在する炭素の約1%は、13Cとして存在する。したがって、少なくとも1つの炭素原子
を含有する天然に存在する分子の一部分は、少なくとも1つの13C原子を含有すること
になる。天然に存在する元素同位体が分子に含まれることにより、複数の分子同位体が生
じる。分子同位体の質量の差は、少なくとも1原子質量単位(amu)である。これは、
元素同位体が少なくとも1つの中性子異なるからである(1つの中性子の質量≒1amu
)。分子同位体が多荷電状態にイオン化される場合、質量分析での検出が質量電荷比(m
/z)に基づいているため、同位体の間の質量の差異は、識別することが困難になり得る
。例えば、両方が5+状態にイオン化される、質量が1amu異なる2つの同位体は、わ
ずか0.2のそれらのm/zの差を示す。高分解能/高精度質量分析は、高度に多荷電イ
オン(±2、±3、±4、±5又はより高度の電荷を有するイオンなど)の同位体を識別
することができる。
天然に存在する元素同位体のため、すべての分子イオン(十分に感度の高い質量分析機
器により分析した場合、それぞれが個別に検出できるスペクトルピークを生じ得る)につ
いて複数の同位体が一般的に存在する。複数の同位体のm/z比及び相対存在量は、分子
イオンの同位体シグニチャを集合的に含む。いくつかの実施形態において、2つ以上の分
子同位体のm/z比及び相対存在量は、検討中の分子イオンの同一性を確認するために利
用することができる。いくつかの実施形態において、1つ又は複数の同位体の質量分析ピ
ークを用いて分子イオンを定量する。いくつかの関連実施形態において、1つの同位体の
単一質量分析ピークを用いて分子イオンを定量する。他の関連実施形態において、複数の
同位体ピークを用いて分子イオンを定量する。これらの後者の実施形態において、複数の
同位体ピークは、任意の適切な数学的処理に供することができる。いくつかの数学的処理
は、当技術分野で公知であり、多重ピーク下面積の合計又は多重ピークによる応答の平均
を含むが、これらに限定されない。5+及び6+インスリンイオンの多重同位体を示す具
体例としてのスペクトルは、図4~6に見られる。図5A~Bに認められるように、5+
インスリンイオンの種々の同位体のピークは、約1161.72、1161.92、11
62.12、1162.32、1162.52、1162.72、1162.92、11
63.12及び1163.32に認められる。図6A~Bに認められるように、6+イン
スリンイオンの種々の同位体のピークは、約968.28、968.45、968.62
、968.79、968.95、969.12、969.28、968.45及び969
.61に認められる。しかし、イオンの同位体の変異体について観測される正確な質量は
、機器の変動のためにわずかに変化し得ることを注意すること。
いくつかの実施形態において、試料中のインスリンの量を定性的に評価するために1つ
又は複数のイオンの相対存在量を高分解能/高精度質量分析計により測定する。いくつか
の実施形態において、高分解能/高精度質量分析により測定される1つ又は複数のイオン
は多価インスリンイオンである。これらの多価イオンは、約1453±0.8(すなわち
、4+イオンの1つ又は複数の単一同位体ピーク)及び/又は1162±1(すなわち、
5+イオンの1つ又は複数の単一同位体ピーク)及び/又は968.8±1.5(すなわ
ち、6+イオンの1つ又は複数の単一同位体ピーク)の範囲内のm/zを有する1つ又は
複数のイオンを含み得る。
高分解能オービトラップ分析計の使用は、様々な被分析物の定性及び定量分析について
報告された。例えば、米国特許出願公開第2008/0118932号(2007年11
月9日出願)、Bredehoftら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2008年、22巻、477~485
頁、Le Bretonら、Rapid Commun. Mass Spectrom.、2008年、22巻、3130~36頁、Thevis
ら、Mass Spectrom. Reviews、2008年、27巻、35~50頁、Thomasら、J. Mass Spectrom.
、2008年、43巻、908~15頁、Schenkら、BMC Medical Genomics、2008年、1巻、41頁及び
Olsenら、Nature Methods、2007年、4巻、709~12頁を参照のこと。
被分析物アッセイの結果は、当技術分野で公知の多くの方法により最初の試料中の被分
析物の量に関連付けることができる。例えば、サンプリング及び分析パラメーターが注意
深く管理されているならば、所定のイオンの相対存在量は、当該相対存在量を最初の分子
の絶対量に換算する表と比較することができる。或いは、外部標準を試料とともに実施す
ることができ、標準曲線をそれらの標準から得たイオンに基づいて作成する。そのような
標準曲線を用いて、所定のイオンの相対存在量を最初の分子の絶対量に換算することがで
きる。特定の好ましい実施形態において、内部標準を用いてインスリンの量を計算するた
めの標準曲線を作成する。そのような標準曲線を作成し、用いる方法は、当技術分野で周
知であり、当業者は適切な内部標準を選択することができる。例えば、好ましい実施形態
において、1つ又は複数の形の同位体標識インスリンを内部標準として用いることができ
る。イオンの量を最初の分子の量に関連させる多くの他の方法は、当業者に周知である。
本明細書で用いる場合、「同位体標識」は、質量分析技術により分析するとき、非標識
分子と比べて標識分子の質量シフトをもたらす。適切な標識の例としては、重水素(
)、13C及び15Nなどがある。1つ又は複数の同位体標識を分子における1つ又は複
数の位置に組み込むことができ、1つ又は複数の種類の同位体標識を同じ同位体標識分子
に用いることができる。
質量分析による未改変インスリンA及び/又はB鎖の定量によるインスリンの定量
他の実施形態において、質量分析の前にインスリンの成分鎖を得るために、インスリン
を化学処理に供することができる。インスリンのA鎖及びB鎖は、ジスルフィド還元を引
き起こすことが当技術分野で公知である任意の化学的処理により分離することができる。
例えば、インスリンをTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィン)で処理し
て、インスリンのジスルフィド架橋を還元し、A鎖とB鎖を分離することができる。
A鎖及びB鎖は、次にインスリンの精製のための上述のいずれか1つ又は複数の精製ス
テップに供することができる。好ましい実施形態において、A鎖及び/又はB鎖を質量分
析の前にHPLCによる精製に供する。
精製されたならば、A鎖及び/又はB鎖を次にイオン化源に供する。インスリンの場合
と同様に、当業者は、イオン化法の選択は、測定される被分析物、試料の種類、検出器の
種類、ポジティブ対ネガティブモードの選択等に基づいて決定することができることを理
解する。インスリンA鎖及びB鎖は、ポジティブ又はネガティブモードでイオン化され得
る。好ましい実施形態において、インスリンA鎖及び/又はB鎖は、ESIによりポジテ
ィブモードでイオン化される。
インスリンA鎖のイオン化は、多価A鎖前駆イオン(2+、3+等の前駆イオンのよう
な)をもたらし得る。例えば、インスリンA鎖分子のポジティブエレクトロスプレーイオ
ン化は、それぞれ1192.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有する2+及
び3+価A鎖前駆イオンを発生させ得る。インスリンと同様に、インスリンA鎖のイオン
化により生成する多価種の同一性及び量は、用いられるイオン化条件による影響を受ける
。好ましい実施形態において、インスリンA鎖を酸性条件下でイオン化する。
インスリンA鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約1192.
0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有する1つ又は複数のインスリンA鎖前駆
イオンを選択し得る。これらのインスリンA鎖前駆イオンのいずれかのフラグメント化に
より、約513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0
±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し得る。したがって、Q1が約11
92.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択さ
れる1つ又は複数のインスリンA鎖前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約
513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5
のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し
得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存
在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイ
オンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメント
イオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量
的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又
は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリン
を定性的に評価することができる。
同様に、インスリンB鎖のイオン化は、多価B鎖前駆イオン(3+、4+、5+等の前
駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、インスリンB鎖分子のポジティブエレクト
ロスプレーイオン化は、それぞれ1144.2±0.5、858.3±0.5及び686
.8±0.5のm/zを有する3+、4+及び5+価B鎖前駆イオンを発生させ得る。イ
ンスリンと同様に、インスリンB鎖のイオン化により生成する多価種の同一性及び量は、
用いられるイオン化条件による影響を受ける。好ましい実施形態において、インスリンB
鎖を酸性条件下でイオン化する。
インスリンB鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約1144.
2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有する1つ又は複数
のインスリンB鎖前駆イオンを選択し得る。これらの3つのインスリンB鎖前駆イオンの
フラグメント化により、約825.4±0.5、768.5±0.5、753.2±0.
5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが
生成し得る。したがって、Q1が約1144.2±0.5、858.3±0.5及び68
6.8±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のインス
リンB鎖前駆イオンを選択する実施形態において、Q3は、約825.4±0.5、76
8.5±0.5、753.2±0.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm
/zを有するイオンの群から選択される、好ましくは約345.0±0.5及び226.
2±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオ
ンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオ
ンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラ
グメントイオンの相対存在量を測定することができる。これらの実施形態において、各フ
ラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインス
リンを定量的に評価することができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンか
らの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初の
インスリンを定性的に評価することができる。
質量分析による化学的に改変されたインスリンA及び/又はB鎖の定量によるインスリ
ンの定量
代替実施形態において、別個のインスリンA鎖及びB鎖を、イオン化及び/又は精製の
前に1つ又は複数の化学的改変ステップに供することができる。例えば、分離されたなら
ば、インスリンA鎖及びB鎖分子は、構成要素であるシステインを完全にアルキル化する
ためのカルバミドメチル化を受け得る。例えば、カルバミドメチル化は、インスリンA鎖
及び/又はB鎖を、DTT(1,4-ジチオトレイトール)による還元の後にヨードアセ
トアミドとの反応に供することによって達成することができる。インスリンA鎖のカルバ
ミドメチル化は、約228.08amu(システイン当たり約57.02)の質量増加を
引き起こす、4個のシステインのアルキル化をもたらす。インスリンB鎖のカルバミドメ
チル化は、約114.04amu(システイン当たり約57.02)の質量増加を引き起
こす、2個のシステインのアルキル化をもたらす。
精製されたならば、化学的に改変された(例えば、アルキル化)A鎖及び/又はB鎖を
イオン化源に供される。インスリンの場合と同様に、当業者は、イオン化法の選択は、測
定される被分析物、試料の種類、検出器の種類、ポジティブ対ネガティブモードの選択等
に基づいて決定することができることを理解する。アルキル化インスリンA鎖及びB鎖は
、ポジティブ又はネガティブモードでイオン化することができる。好ましい実施形態にお
いて、アルキル化インスリンA鎖及び/又はB鎖は、ESIによりポジティブモードでイ
オン化される。
アルキル化インスリンA鎖のイオン化は、多価アルキル化A鎖前駆イオン(2+、3+
等の前駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、アルキル化インスリンA鎖分子のポ
ジティブエレクトロスプレーイオン化は、それぞれ1306.0±0.5及び871.0
±0.5のm/zを有する2+及び3+価アルキル化A鎖前駆イオンを発生させ得る。イ
ンスリンと同様に、アルキル化インスリンA鎖のイオン化により生成する多価種の同一性
及び量は、用いられるイオン化条件による影響を受ける。好ましい実施形態において、ア
ルキル化インスリンA鎖を酸性条件下でイオン化する。
アルキル化インスリンA鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約
1306.0±0.5及び871.0±0.5のm/zを有する1つ又は複数のアルキル
化インスリンA鎖前駆イオンを選択し得る。これらのアルキル化インスリンA鎖前駆イオ
ンのいずれかのフラグメント化により、約570.0±0.5、456.0±0.5、2
93.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し
得る。したがって、Q1が約1192.0±0.5及び795.0±0.5のm/zを有
するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のアルキル化インスリンA鎖前駆イオ
ンを選択する実施形態において、Q3は、約570.0±0.5、456.0±0.5、
293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンの群から選択される
1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実施形態において、単一前駆イ
オンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。或いは、単一
前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在量を測定することができる。
これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存在量を任意の公知の数学的処
理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価することができる。他の実施形態に
おいて、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを測定し、上述
のように利用して試料中の最初のインスリンを定性的に評価することができる。
同様に、アルキル化インスリンB鎖のイオン化は、多価アルキル化B鎖前駆イオン(3
+、4+、5+等の前駆イオンのような)をもたらし得る。例えば、アルキル化インスリ
ンB鎖分子のポジティブエレクトロスプレーイオン化は、それぞれ1181.9±0.5
、886.9±0.5及び709.8±0.5のm/zを有する3+、4+及び5+価ア
ルキル化B鎖前駆イオンを発生させ得る。インスリンと同様に、アルキル化インスリンB
鎖のイオン化により生成する多価種の同一性及び量は、用いられるイオン化条件による影
響を受ける。好ましい実施形態において、アルキル化インスリンB鎖を酸性条件下でイオ
ン化する。
アルキル化インスリンB鎖をタンデム質量分析に供する実施形態において、Q1は、約
1181.9±0.5、886.9±0.5及び709.8±0.5のm/zを有する1
つ又は複数のインスリンB鎖前駆イオンを選択し得る。これらの3つのアルキル化インス
リンB鎖前駆イオンのフラグメント化により、約345.0±0.5及び226.2±0
.5のm/zを有するフラグメントイオンが生成し得る。したがって、Q1が約1144
.2±0.5、858.3±0.5及び686.8±0.5のm/zを有するイオンから
なる群から選択される1つ又は複数のアルキル化インスリンB鎖前駆イオンを選択する実
施形態において、Q3は、約345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有す
るイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを選択し得る。特定の実
施形態において、単一前駆イオンからの単一フラグメントイオンの相対存在量を測定する
ことができる。或いは、単一前駆イオンからの2つ以上のフラグメントイオンの相対存在
量を測定することができる。これらの実施形態において、各フラグメントイオンの相対存
在量を任意の公知の数学的処理に供し、試料中の最初のインスリンを定量的に評価するこ
とができる。他の実施形態において、2つ以上の前駆イオンからの1つ又は複数のフラグ
メントイオンを測定し、上述のように利用して試料中の最初のインスリンを定性的に評価
することができる。
上述の方法のいずれかの1つ又は複数のステップは、自動装置を用いて実施することが
できる。特定の実施形態において、1つ又は複数の精製ステップをオンラインで実施し、
より好ましくは精製及び質量分析ステップのすべてをオンライン式で実施することができ
る。
以下の実施例は、本発明を説明する役割を果たす。これらの実施例は、本方法の範囲を
制限するものではない。
実施例1: 試料の調製
様々な量のインスリンを含有する模擬血清試料は、直線的な応答を評価するために、模
擬血清(0.002%プロテアーゼ阻害剤AEBSFを含むリン酸緩衝生理食塩水(PB
S)緩衝液に溶かした牛血清アルブミン(BSA)40mg/mL)にヒトインスリンを
様々な濃度でスパイクすることによって調製した(以下の実施例4で述べる)。
ヒトインスリンはまた、応答の直線性を評価するために、Golden West B
iologicals,Inc.から入手した2回活性炭処理した血清に様々な濃度でス
パイクした(以下の実施例4で述べる)。
実施例2: 質量分析前のインスリンの濃縮
前記で調製したヒトインスリンスパイク模擬及びストリップ血清の試料注入は、Coh
esive Technologies Aria TX-420システムで、Aria
OS V1.6以上のソフトウェアを用いて実施した。
試料75μLを、オンライン固相抽出(SPE)カラム、Waters Oasis
HLB(25μm、2.1×20mm)に導入した。SPEカラムはヒトインスリンを保
持したが、その他の血清タンパク質及び高分子は流出させた。
インスリンは、抽出カラムから40%アセトニトリルに溶かした0.2%ギ酸で溶出し
、分析カラム(Phenomenex Inc.製の一体型C18分析カラム(粒径5μ
m、50×2.1mm))に添加した。試料中に含有されるその他の被分析物からインス
リンを分離するために、HPLC勾配を分析カラムに適用した。移動相Aは、0.2%ギ
酸水溶液で、移動相Bはアセトニトリルに溶かした0.2%ギ酸であった。HPLC勾配
は28.5%有機勾配で開始し、約90秒で37%まで増加させた。
次に、インスリン濃縮試料を、インスリン定量のために高分解能/高精度MS又はMS
/MSに供した。
実施例3: インスリンのイオン化に対するpHの影響
インスリンのイオン化は、ESI源を用いてポジティブイオンモードで行った。ポジテ
ィブインスリンイオンを発生させるためにこのイオン化源を使用する間、エレクトロスプ
レーキャリア溶液のpHが、発生したインスリンイオンの量及び同一性に影響を及ぼすこ
とが観察された。
酸性条件下では、多価インスリンイオンが968.5±0.50(6+イオン)及び1
162.3±0.50(5+イオン)のm/zで観察された。酸性条件下でのインスリン
のイオン化から収集されたスペクトル例を図3Aに示す。
塩基性条件下では、多価インスリンイオンが1163.0±0.50(5+イオン)及
び1453.8±0.50(4+イオン)のm/zで観察された。塩基性条件下でのイン
スリンのイオン化から収集されたスペクトル例を図3Bに示す。
酸性及び塩基性の両方の条件下で十分なシグナルが発生し、定量的分析を両条件下で実
施することができた。
実施例4: 高分解能/高精度MSによるインスリンの検出及び定量
高分解能/高精度MSは、Agilent TOF MSシステム(Agilent
Technologies、Inc.)を使用して実施した。このシステムは、高分解能
/高精度MSを可能にするMS分析器を使用する。この機器は、インスリン測定中、約2
5,000FWHMの分解能及び約1ppmの質量精度を示す。
イオン化は、ESI源を用いてポジティブイオンモードで行った。実施例3で述べたよ
うに、エレクトロスプレーキャリア溶液のpHは、発生したインスリンイオンの量及び同
一性に影響を及ぼした。実施例1で調製した試料は、SPEカラムからギ酸溶液によって
溶出したので、試料は、イオン化の前に酸性化された。実施例3で記載したように、多価
インスリンイオンは6+及び5+の荷電状態であることが観察された。
ストリップ血清試料から混入ピークが溶出することが観察された。図4Aは、QTOF
質量分析器で発生した模擬血清試料中のインスリンの約900から1200のm/z範囲
にわたるスペクトル例を示す。図4Bは、QTOF質量分析器で発生したストリップ血清
試料マトリックスの混入ピークを示す。混入ピーク源は、インスリンピークとは異なる時
間に溶出することが認められた(データは示さず)。
5+イオンの個々の同位体ピークを示す約1155から1176のm/z範囲にわたる
高分解能/高精度スペクトル例を図5Aに示す。約1159と1166の間のスペクトル
部分を拡大したものを図5Bに示す。スペクトルに見られるように、個々の同位体ピーク
例は、約1161.72、1161.92、1162.12、1162.32、1162
.52、1162.72、1162.92、1163.12及び1163.34のm/z
に認められる。
6+イオンの個々の同位体ピークを示す約964から973のm/z範囲にわたる高分
解能/高精度スペクトル例を図6Aに示す。約967と971.4の間のスペクトル部分
を拡大したものを図6Bに示す。スペクトルに見られるように、個々の同位体ピーク例は
、約968.28、968.45、968.62、968.79、968.95、968
.12、968.28、968.45及び968.61のm/zに観察される。
定量の直線性を評価するために、スパイクした模擬及びストリップ血清試料におけるイ
ンスリン定量について1162.54±0.10のm/zを有するイオンのデータを収集
した。いずれの種類の試料も約1.22ng/mLから1250ng/mLの濃度範囲に
わたって直線性を示した。スパイクした模擬血清試料及びスパイクしたストリップ血清試
料におけるインスリン検出のデータの直線性を示すグラフを図7及び8それぞれに示す。
高分解能/高精度質量分析定量によるインスリンの適合度検定(R)を決定すると、ス
パイクした模擬血清では0.9981、スパイクしたストリップ血清では0.9979で
あった。
実施例5: タンデムMSによるインスリンの検出及び定量
MS/MSは、Thermo TSQ Vantage MS/MSシステム(The
rmo Electron Corporation)を使用して実施した。いずれもT
hermo Electron製である以下のソフトウェアプログラム、TSQ Van
tage V2.0.0以上、Xcalibur V2.0以上及びLCQuan V2
.5以上を本明細書で記載した実施例において使用した。分析カラムから排出する液体溶
媒/被分析物は、MS/MS分析器のESI源界面に流動した。溶媒/被分析物混合液は
、界面の加熱されたチュービング内で蒸気に変換された。被分析物は、ESIによって酸
性条件下においてポジティブイオンモードでイオン化された。
イオンは、最初の四重極(Q1)を通過した。いくつかの可能なインスリン前駆イオン
が、Q1で観察された。Q1スペクトルの例は図9に見られる。フラグメンテーションの
試験は、約1163.32±0.50(5+イオン)及び約969.56±0.50(6
+イオン)のm/zを有する多価インスリン前駆イオンで実施した。各前駆イオンのフラ
グメンテーションからのプロダクトイオンスキャンの例を図10及び11のそれぞれに示
す。
5+及び6+前駆イオンからのフラグメンテーションパターンに対する衝突エネルギー
の影響を調べた。各前駆イオンは、約7eVから約80eVの範囲の衝突エネルギーでフ
ラグメント化し、3種類の選択されたフラグメントイオン(約135.9±0.50、2
26.2±0.50及び345.3±0.50のm/z)の相対強度をモニターした。こ
れらの試験の結果を図12に示す。図12に示したように、フラグメントイオンの相対強
度は、衝突エネルギーに応じて著しく変化する。それぞれモニターした遷移に最適な衝突
エネルギー値を表1に示す。
6+イオンのフラグメンテーションによってインスリンを定量するために、四重極2(
Q2)に入ってくる前駆イオンはアルゴンガスと30eVの衝突エネルギーで衝突してイ
オンフラグメントを発生し、このイオンフラグメントはさらに選択するために四重極3(
Q3)を通過した。以下の質量遷移が969.56±0.50前駆イオンのフラグメンテ
ーションで認められた。Q3スキャン(プロダクトイオンスキャン)から収集されたフラ
グメンテーションスペクトルの例を図10に示す。
観察された遷移のうち2つをMRMモードでモニターし、定量分析用に合計した:96
9.56±0.50から135.9±0.50及び226.2±0.50の前駆イオン(
表2を参照のこと)。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、
定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモ
ニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷
移(例えば、図10で認められた任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択する
ことができる。同様に、定量は30eVの衝突エネルギーで遂行したが、十分なイオンシ
グナルを生じる任意の衝突エネルギーを使用してもよく、モニターするフラグメントイオ
ン(単数又は複数)の同一性に依存してもよい。例えば、前記で示した2つのフラグメン
トイオンでは、衝突エネルギーは約20から約50eVの範囲、例えば、約25から約4
0eVの範囲、例えば、約28から32eVであってもよい。
5+イオンのフラグメンテーションによってインスリンを定量するために、四重極2(
Q2)に入ってくる前駆イオンはアルゴンガスと49eVの衝突エネルギーで衝突してイ
オンフラグメントを発生し、このイオンフラグメントはさらに選択するために四重極3(
Q3)を通過した。以下の質量遷移が1163.32±0.50前駆イオンのフラグメン
テーションで観察された。Q3スキャン(プロダクトイオンスキャン)から収集されたフ
ラグメンテーションスペクトルの例を図11に示す。
観察された遷移のうち2つをMRMモードでモニターし、定量分析用に合計した:11
63.32±0.50から135.9±0.50及び226.2±0.50の前駆イオン
(表2を参照のこと)。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが
、定量は1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記の
モニターした遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量
遷移(例えば、図10で認められた任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択し
てもよい。同様に、定量は49eVの衝突エネルギーで遂行したが、十分なイオンシグナ
ルを生じる任意の衝突エネルギーを使用してもよく、モニターするフラグメントイオン(
単数又は複数)の同一性に依存してもよい。例えば、前記で示した2つのフラグメントイ
オンでは、衝突エネルギーは約25から約70eVの範囲、例えば、約30から約60e
Vの範囲、例えば、約35から50eVであってもよい。
実施例6: タンデムMSによるインスリンA鎖及びB鎖の検出及び定量
実施例1で記載したように調製したインスリンをスパイクした模擬血清及びストリップ
血清試料をTCEP(トリス(2-カルボキシエチル)ホスフィンで処理し、インスリン
のジスルフィド架橋を還元し、A鎖及びB鎖に分離した。ジスルフィド還元後、分離した
A鎖及びB鎖を含有する試料に実施例2で記載した精製手順と同じ手順を行った。得られ
たインスリンA鎖及びB鎖を、実施例5で記載したようにMS/MS分析に供した。両被
分析物は、ESIを用いて酸性条件下においてポジティブモードでイオン化した。
いくつかの可能なインスリンA鎖及びB鎖前駆イオンが、Q1で観察された。2つの可
能なA鎖前駆イオン(2+及び3+荷電状態)及び2つの可能なB鎖前駆イオン(3+及
び4+荷電状態)を示す複合スペクトルを図13に示す。これらの2つのA鎖前駆イオン
は、約1192.86±0.50(2+イオン)及び795.43±0.50(3+イオ
ン)のm/zで観察された。これらの2つのB鎖前駆イオンは、約1144.09±0.
50(3+イオン)及び858.40±0.50(4+イオン)のm/zで観察された。
第3の可能なB鎖前駆イオン(図14に示す)はまた、約686.83±0.50(5+
イオン)のm/zで観察された。フラグメンテーションの試験は、前記のA鎖及びB鎖前
駆イオンすべてで実施した。
A鎖3+前駆イオン(約795.43±0.50のm/z)からのフラグメンテーショ
ンパターンに対する衝突エネルギーの影響を調べた。前駆イオンは、約7eVから約80
eVの範囲の衝突エネルギーでフラグメント化し、4種類の選択されたフラグメントイオ
ン(約513.0±0.50、399.0±0.50、236.0±0.50及び133
.0±0.50のm/z)の相対強度をモニターした。これらの試験の結果を図15に示
す。図15に示したように、フラグメントイオンの相対強度は、衝突エネルギーに応じて
著しく変化する。それぞれモニターした遷移に最適な衝突エネルギー値を表3に示す。
インスリンの定量は、約1192.86±0.50(2+イオン)及び795.43±
0.50(3+イオン)のm/zを有するA鎖前駆イオンで実施した。定量実験は、前駆
イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では、2+イオン(約1192.86±
0.50のm/z)又は3+イオン(約795.43±0.50のm/z)を前駆イオン
として選択して、表3に示したような衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラ
グメントイオン、513.0±0.50、399.0±0.50、236.0±0.50
及び133.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモニターされた。定量は、
4つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモ
ニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任
意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、観察された任意の
その他のフラグメントイオンを含む)を選択してもよい。
インスリンの定量はまた、約1144.09±0.50(3+イオン)、858.40
±0.50(4+イオン)及び686.83±0.50(5+イオン)のm/zを有する
B鎖前駆イオンで実施した。定量実験は、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定
量実験では、3+イオン(約1144.09±0.50のm/z)又は4+イオン(約7
95.43±0.50のm/z)又は5+イオン(約686.83±0.50のm/z)
を前駆イオンとして選択して、30eVの衝突エネルギーでフラグメント化した。以下の
フラグメントイオン、226.2±0.50及び345.0±0.50は、選択した前駆
イオンに関わらずモニターされた。30eVの衝突エネルギーでのB鎖4+イオンのフラ
グメンテーションからのスペクトル例(すなわち、プロダクトイオンスキャン)を図16
に示す。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだ
けの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷
移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、
図16で観察された任意のその他のフラグメントイオンを含む)を選択してもよい。
実施例7 タンデムMSによるインスリンA鎖(アルキル化)及びB鎖(アルキル化)の
検出及び定量
インスリンをスパイクした模擬血清及びストリップ血清試料をDTT(1,4-ジチオ
スレイトール)で処理して、分離したA鎖及びB鎖を含有する模擬及びストリップ血清試
料を生成した。精製する前に、インスリンA鎖及びB鎖分子をカルバミドメチル化し、分
子中に存在する構成システインそれぞれを完全にアルキル化した。A鎖において、4個の
システインがこの方法によってアルキル化され、約228.08amuの質量増加が生じ
た。B鎖において、2個のシステインがこの方法によってアルキル化され、約114.0
4amuの質量増加が生じた。
システインをアルキル化した後、アルキル化されたA鎖及びアルキル化されたB鎖を含
有する試料に、実施例2で記載した精製手順と同じ手順を行った。得られたアルキル化A
鎖及びアルキル化B鎖を、実施例5で記載したようにMS/MS分析に供した。両被分析
物は、ESIを用いて酸性条件下においてポジティブモードでイオン化した。
いくつかの可能なアルキル化A鎖及びアルキル化B鎖前駆イオンが、Q1で観察された
。約1306.0±0.50(2+イオン)及び871.0±0.50(3+イオン)の
m/zを有する2個の可能なA鎖前駆イオンをフラグメンテーション及び定量のために選
択した。約1181.9±0.50(3+イオン)及び886.40±0.50(4+イ
オン)及び709.80±0.50(5+イオン)のm/zを有する3個の可能なアルキ
ル化B鎖前駆イオンをフラグメンテーション及び定量のために選択した。
インスリンの定量は、約1306.0±0.50(2+イオン)及び871.0±0.
50(3+イオン)のm/zを有するアルキル化A鎖前駆イオンで実施した。定量実験は
、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では、2+イオン(約1306.
0±0.50のm/z)又は3+イオン(約871.0±0.50のm/z)を前駆イオ
ンとして選択して、30eVの衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラグメン
トイオン、133.0±0.50、293.0±0.50、456.0±0.50及び5
70.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモニターされた。定量は、4つの
質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は1つだけの質量遷移をモニター
することによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組
み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移を選択してもよい。
インスリンの定量はまた、約1181.9±0.50(3+イオン)、886.9±0
.50(4+イオン)及び709.8±0.50(5+イオン)のアルキル化B鎖前駆イ
オンで実施した。定量実験は、前駆イオンのそれぞれで実施した。これらの定量実験では
、3+イオン(約1181.9±0.50のm/z)、4+イオン(約886.9±0.
50のm/z)又は5+イオン(約709.8±0.50のm/z)を前駆イオンとして
選択して、30eVの衝突エネルギーでフラグメント化した。以下のフラグメントイオン
、226.2±0.50及び345.0±0.50は、選択した前駆イオンに関わらずモ
ニターされた。定量は、2つの質量遷移をモニターすることによって遂行したが、定量は
1つだけの質量遷移をモニターすることによって遂行してもよい。逆に、前記のモニター
した遷移のいずれかを任意の組み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移を選
択してもよい。
実施例8: インスリンB鎖の定量によるインスリン定量用のヒト試料の調製
2種類の内部標準溶液をヒト試料におけるインスリンの定量で使用した。第1の内部標
準溶液は、ウシインスリンを0.2%ギ酸水溶液に10pmol/μLの濃度で溶解して
調製した。次に、この溶液30μLを、1.5Mトリス塩基及びエタノールを15:85
の比率で含有する塩基/抽出溶液500mLで希釈した。第2の内部標準溶液は、ペプチ
ド1mgを0.2%ギ酸水溶液1mLに溶解することによって、同位体標識したヒトイン
スリンB鎖(プロリンが5個の13C及び1個の15Nで標識されている)で調製した。
この濃縮溶液5μlを水1000μLで希釈して、第2の内部標準溶液を調製した。
以前に凍結したヒト血清試料を解凍し、室温に戻し、十分に撹拌した。一旦解凍したら
、各試料150μLをウシインスリンでスパイクした塩基/抽出溶液350μLに添加し
た。得られた混合物を1000rpmの速度で2分間撹拌し、-20℃冷凍庫内で60±
5分間インキュベートして、沈殿物を形成させた。インキュベーション後、試料を550
0rpmで10分間遠心した。次に、各試料の上清250μLを96マイクロリットルプ
レートに移した。その後、TCEP還元溶液(Thermo Scientificカタ
ログ番号77720)2mLを第2の内部標準溶液100μLとともに混合し、この混合
液20μLを96マイクロリットルプレートの各試料に添加した。試料を再度1000r
pmの速度で2分間撹拌し、37℃のインキュベーターで60±5分間インキュベートし
て、試料中のインスリンの還元を起こさせ、試料中に存在するいかなる完全なインスリン
もA及びB鎖に分離させた。次に、試料を-20℃冷凍庫内で10分間インキュベートし
て、沈殿物を形成させた。沈殿した試料を再度5500rpmで10分間遠心した。次に
、各試料の上清の225を、MS/MS分析の前にSPE及びHPLCで濃縮した。
実施例9: 質量分析前のヒト試料のインスリンB鎖の濃縮
実施例8で調製した加工血清試料の試料注入は、Cohesive Technolo
gies Aria TX-420システムで、Aria OS V1.6以上のソフト
ウェアを用いて実施した。
各試料の225μLを、Waters Oasis HLB(25μm、2.1×20
mm)、オンライン固相抽出(SPE)カラムに導入した。SPEカラムはインスリンB
鎖を保持したが、その他のタンパク質及び高分子は流出させた。保持されたインスリンB
鎖は0.2%ギ酸で洗浄した。
次に、インスリンB鎖は0.025%イソプロパノールを含む0.2%ギ酸に溶かした
35%アセトニトリルで抽出カラムから溶出し、ガードカートリッジを備えた分析カラム
(Michrom Bioresources 300 Armstrong Magi
c C4(2.1×50mm、粒径5μm)分析カラム及びPhenomenex Se
curityガードカラムカートリッジ(Phenomenex P/N AHO-42
86))に添加した。試料中に含有されるその他の被分析物からインスリンを分離するた
めに、HPLC勾配をガード/分析カラムに適用した。移動相Aは、0.2%ギ酸水溶液
で、移動相Bは2.5%イソプロパノールを含むアセトニトリルに溶かした0.2%ギ酸
であった。HPLC勾配は12.0%有機勾配で開始し、約90秒で42%まで増加させ
た。
次に、インスリン濃縮試料を、インスリン定量のためにMS/MSに供した。
実施例10: タンデムMSによるヒト血清のインスリンB鎖の検出及び定量
MS/MSは、Thermo TSQ Vantage MS/MSシステム(The
rmo Electron Corporation)を使用して実施した。いずれもT
hermo Electron製である以下のソフトウェアプログラム、TSQ Van
tage V2.0.0以上、Xcalibur V2.0以上及びLCQuan V2
.5以上を、本明細書で記載した実施例において使用した。分析カラムから排出する液体
溶媒/被分析物は、MS/MS分析器の加熱されたESI源界面に流動した。溶媒/被分
析物混合物は、界面の加熱されたチュービング内で蒸気に変換した。被分析物は、ESI
を用いて酸性条件下においてポジティブイオンモードでイオン化した。
実施例6で前述したように、いくつかの可能なインスリンB鎖前駆イオンが、Q1で観
察された。約686.83±0.50(5+イオン)のm/zを有するインスリンB鎖前
駆イオンをフラグメンテーションのために選択した。フラグメンテーション試験によって
、いくつかのインスリンB鎖フラグメントイオンが示された。フラグメンテーションスペ
クトルの1例を図17に示す。
ヒトインスリンB鎖5+前駆イオン(約686.9±0.50のm/z)のフラグメン
テーションパターンに対する衝突エネルギーの影響を調べた。前駆イオンは、約7Vから
約80Vの範囲の衝突エネルギーでフラグメント化し、5種類の選択されたフラグメント
イオン(約906.0±0.50、825.0±0.50、768.5±0.50、75
3.0±0.50及び703.0±0.50のm/z)の相対強度をモニターした。これ
らの試験の結果を図18に示す。図18に示したように、フラグメントイオンの相対強度
は、衝突エネルギーに応じて著しく変化する。それぞれモニターした遷移にほぼ最適な衝
突エネルギー値を表8に示す。
約768.5±0.50及び753.2±0.50のm/zを有するヒトインスリンB
鎖フラグメントイオンを定量で使用するために選択した。同様の試験を、いずれも実施例
8で記載したウシインスリン(内部標準1)及び同位体標識インスリンB鎖(内部標準2
)で実施した。さらなる定量試験で使用するために選択した各種のインスリンB鎖につい
てモニターした質量遷移を表9に示す。
定量は、表8で示したインスリンB鎖それぞれの2つの質量遷移をモニターすることに
よって遂行したが、指示した被分析物のいずれかの定量は1つだけの質量遷移をモニター
することによって遂行してもよい。逆に、前記のモニターした遷移のいずれかを任意の組
み合わせで置換又は増大するために、追加の質量遷移(例えば、図17で認められた任意
のその他のヒトインスリンB鎖フラグメントイオンを含む)を選択してもよい。
実施例11: アッセイ内及びアッセイ間の精度、再現性及び正確度の試験
実施例8~10で記載したアッセイのアッセイ内及びアッセイ間の精度、再現性及び正
確度の試験は、アッセイの報告可能な推定範囲を包含するように、8、12、20、40
及び80μIU/mLのヒトインスリンでスパイクしたストリップ血清(Biocell
Laboratories Inc.、1131-00、ロットHHP03)から作製
した5つのQCプールで実施した。
5つのQCプールそれぞれの複製物8つを1回のアッセイで分析して、アッセイ内の試
料の変動係数(CV)を決定した。これらの試験から得られたデータを表10に示す。結
果に行った統計処理によって、5つのQCプールの再現性(CV)は3.0から7.9%
の範囲で、いずれも許容可能なレベル内である(すなわち、≦15%CV、≦20%CV
が許容可能なLOQレベルは除く)ことが示された。表10で示したデータのさらなる分
析によって、各プールのアッセイ内正確度は80~120%の許容範囲内であることが明
らかになった。
アッセイ間変動を調べるために、5つのQCプールそれぞれの8つの複製物を、別々の
日に5回分析した。これらの試験から得られたデータを表11に示す。プールのアッセイ
間変動(%CV)は7.1から14.0%の範囲であった。8、12、20、40及び8
0μIU/mLの標的インスリンレベルの全体的な変動は、それぞれ14.0%、10.
2%、10.0%、7.5%及び7.1%であった。全プールの分析は、≦20%CVが
許容可能なLOQレベル以外は、≦15%CVの許容可能な再現性の必要条件を満たして
いた。表11で示したデータのさらなる分析によって、各プールのアッセイ間正確度は8
0~120%の許容範囲内であることが明らかになった。
実施例12: 分析感度:ブランク上限(LOB)、検出限界(LOD)及び定量限界(
LOQ)
選択性とは、試料中のその他の成分の存在下で被分析物を区別し定量する分析方法の能
力である。LOB及びLODはいずれも、ある測定値がその測定に関連した不確定度より
も大きい指標である。LOBは、ゼロ濃度からの標準偏差の2倍と定義される。LODは
、ゼロ濃度からの標準偏差の4倍と定義される。選択性を試験するために、適切な生物学
的マトリックス(ストリップ血清)のブランク試料を用意し、干渉を試験し、実施例8~
10で記載した方法によって分析した。ブランクのストリップ血清試料は14回測定した
。これらの試験の結果を統計学的に分析すると、LOB1.4μIU/mL及びLOD1
.8μIU/mLであった。
LLOQは、測定値が定量的に有意義になる点である。このLLOQでの被分析物応答
は、精度20%及び正確度80%から120%で、同定可能で、明確に区別され、再現性
がある。LLOQは、予測されたLLOQ(1.25、2.5、5、10、15及び25
μIU/mLに近い濃度のヒトインスリンでスパイクした6つのストリップ血清標本をア
ッセイし、次いで7回の測定のアッセイ内再現性を評価することによって決定された。こ
れらの試験のデータを分析し、プロットすると(図19に示す)、LLOQは曲線から3
μIU/mLであると決定され、許容される性能を生じる最低濃度はCVの95%信頼区
間で20%未満のままであった。
実施例13: アッセイの報告可能な範囲及び直線性
実施例8~10で記載したアッセイの直線範囲を確立するため、8つのスパイクしたス
トリップ血清試料(ヒトインスリン濃度5、10、15、25、50、100、200及
び300μIU/mL)を調製し、別々の日に5回分析した。5回の連続した測定の重み
付き(1/X)直線回帰によって、±20%の正確度で0.995以上の相関係数が得ら
れ、定量化できる範囲は5から300μIU/mLであることがわかった。検量線の例を
図20に示す。
実施例14: 標本種類の試験
マトリックス特異性は、10人のヒト患者プールを6つの異なる種類のBD Vacu
tainer(商標)管(そのままの血清、SST、EDTA血漿、ヘパリンナトリウム
血漿、ヘパリンリチウム血漿及びクエン酸ナトリウム血漿)に収集することによって評価
した。次に、各プールの試料のインスリンを抽出し、実施例8~10で記載した方法に従
って分析した。これらの試験によって、クエン酸ナトリウム血漿試料は分析に許容されな
いが、その他の種類の試料はすべて許容可能であることが示された。
実施例15: 干渉試験
インスリン決定に対する溶血干渉の影響は、軽度、中等度及び高度の溶血患者試料にお
いて様々なレベルのインスリンをスパイクすることによって評価した。次に、インスリン
を抽出し、実施例8~10で記載した方法に従って分析した。これらの試験のデータによ
って、許容可能な結果(すなわち、80~120%内の正確度)が、軽度及び中等度の溶
血試料で得られることが示された。高度に溶血した試料は許容されなかった。
インスリン決定に対する脂肪血症干渉の影響は、軽度、中等度及び高度の脂肪血症患者
試料において様々なレベルのインスリンをスパイクすることによって評価した。次に、イ
ンスリンを抽出し、実施例8~10で記載した方法に従って分析した。これらの試験のデ
ータによって、許容可能な結果(すなわち、80~120%内の正確度)が、全レベルの
脂肪血症で得られることが示された。
インスリン決定に対するビリルビン干渉の影響は、軽度、中等度及び高度の黄疸患者試
料において様々なレベルのインスリンをスパイクすることによって評価した。次に、イン
スリンを抽出し、実施例8~10で記載した方法に従って分析した。これらの試験のデー
タによって、許容可能な結果(すなわち、80~120%内の正確度)が、全レベルのビ
リルビンで得られることが示された。
本明細書で言及又は引用した論文、特許及び特許出願、並びにその他の全文献及び電子
的に入手できる情報の内容は、各個別の刊行物が参照により具体的及び個別に組み入れら
れるように示される場合と同程度に参照により本明細書に全体として組み入れられる。出
願人らは、任意のこのような論文、特許、特許出願又はその他の物理的及び電子的文献か
らのありとあらゆる材料及び情報を本出願に物理的に組み入れる権利を保持する。
本明細書で例示的に記載した方法は、本明細書に具体的に開示していない任意の要素又
は要素(複数)、限定又は限定(複数)の非存在下で適切に実施することができる。した
がって、例えば、用語「comprising(含む)」、「including(含む
)」、「containing(含有する)」などは、広範に、限定されることなく読み
取られるべきである。さらに、本明細書で使用した用語及び表現は、限定ではなく説明の
ために使用されており、このような用語及び表現の使用において、示された、及び説明さ
れた特徴の任意の同等物又はその一部を排除するものではない。請求した本発明の範囲内
において様々な変更が可能であることは認識されている。したがって、本発明を好ましい
実施形態及び任意選択の特徴によって具体的に開示してきたが、本明細書で開示しその中
で実施される本発明の変更及び変形は当業者であれば用いることができ、このような変更
及び変形は本発明の範囲内であると見なされることを理解されたい。
本発明は、本明細書において広範及び一般的に記載してきた。一般的な開示に含まれる
より狭い種及び亜種のそれぞれも本方法の一部を形成する。これには、部類から任意の対
象物を削除する条件又は消極的限定を有する方法の一般的説明が、削除された材料が本明
細書に具体的に記載されているか否かに関わらず、含まれる。
その他の実施形態は、以下の特許請求の範囲に含まれる。さらに、方法の特徴又は態様
がマーカッシュ群によって記載されている場合は、当業者であれば、本発明はまた、マー
カッシュ群の任意の個々の構成要素又は構成要素の亜群によって記載されることを理解す
るであろう。

本発明は、以下の態様を包含し得る。
[1]
タンデム質量分析により生物学的試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該
方法は、
(a)インスリンからインスリンB鎖を得るのに適する条件に試料を供するステップ、
(b)インスリンB鎖濃縮画分を得るために、ステップ(a)からの試料を処理するス
テップ、
(c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンB鎖イオンを発生させるの
に適する条件下で、濃縮インスリンB鎖をイオン化源に供するステップ、及び
(d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンB鎖イオンの量を決定するス
テップ
を含み、
ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、
方法。
[2]
ステップ(b)の前記処理するステップが、固相抽出(SPE)によりインスリンB鎖
を濃縮するステップを含む、上記[1]に記載の方法。
[3]
ステップ(b)の前記処理するステップが、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)
によりインスリンB鎖を濃縮するステップを含む、上記[1]に記載の方法。
[4]
前記生物学的試料がヒト血漿又は血清試料を含む、上記[1]に記載の方法。
[5]
決定されるインスリンの量がヒトから採取された場合に試料中に存在するインスリンの
量である、上記[4]に記載の方法。
[6]
前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、上記[1]に記載
の方法。
[7]
前記サンプルがポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、上記
[1]に記載の方法。
[8]
前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、上記
[7]に記載の方法。
[9]
前記インスリンB鎖がイオン化の前に化学的に改変されていない、上記[1]に記載の
方法。
[10]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1144.2±0.5、8
58.3±0.5及び686.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからな
る群から選択されるインスリンB鎖前駆イオンを含む、上記[9]に記載の方法。
[11]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、906.0±0.5、82
5.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0.5、34
5.0±0.5及び226.2±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる
群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[9]に記載の方法。
[12]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1144.2±0.5の質
量電荷比(m/z)を有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン、85
8.3±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイオン及
び686.8±0.5のm/zを有するインスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイ
オンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[9]に
記載の方法。
[13]
前記タンデム質量分析が、686.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するヒトイ
ンスリンB鎖前駆イオンを発生させるステップ、及び、前記前駆イオンを906.0±0
.5、825.0±0.5、768.5±0.5、753.0±0.5、703.0±0
.5、345.0±0.5及び226.2±0.5のm/zを有するイオンからなる群か
ら選択される1つ又は複数のフラグメントイオンにフラグメント化するステップを含む、
上記[1]に記載の方法。
[14]
ステップ(d)で決定されるイオンが768.5±0.5及び753.0±0.5のm
/zを有するイオンからなる群からの1つ又は複数のイオンを含む、上記[13]に記載
の方法。
[15]
前記フラグメント化するステップが10~25V(端点を含む)の範囲内の衝突エネル
ギーを用いて行われる、上記[13]に記載の方法。
[16]
前記インスリンB鎖がイオン化の前に化学的に改変される、上記[1]に記載の方法。
[17]
前記化学的改変が前記インスリンB鎖をアルキル化するステップを含む、上記[16]
に記載の方法。
[18]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1181.9±0.5、8
86.9±0.5及び709.8±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからな
る群から選択されるアルキル化インスリンB鎖前駆イオンを含む、上記[17]に記載の
方法。
[19]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、345.0±0.5及び2
26.2±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンの群から選択される1つ又は複
数のフラグメントイオンを含む、上記[17]に記載の方法。
[20]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1181.9±0.5の質
量電荷比(m/z)を有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからのフラグメントイ
オン、886.9±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖前駆イオンからの
フラグメントイオン及び709.8±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンB鎖
前駆イオンからのフラグメントイオンからなる群から選択される2つ以上のフラグメント
イオンを含む、上記[17]に記載の方法。
[21]
各前駆イオンからの前記フラグメントイオンが345.0±0.5及び226.2±0
.5のm/zを有するイオンからなる群から選択されるイオンを含む、上記[20]に記
載の方法。
[22]
タンデム質量分析により、ヒトから採取した場合の生物学的試料中のインスリンの量を
決定する方法であって、該方法は、
(a)前記試料からインスリン濃縮画分を得るために、前記試料を固相抽出(SPE)
及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
(b)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンイオンを発生させるのに適
する条件下で濃縮インスリンをイオン化源に供するステップ、及び
(c)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンイオンの量を決定するステッ

を含み、
前記試料はイオン化の前に免疫精製に供されず、ステップ(c)で決定されるイオンの
量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
[23]
前記生物学的試料が血漿又は血清試料を含む、上記[22]に記載の方法。
[24]
前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、上記[22]に記
載の方法。
[25]
前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、上記[2
2]に記載の方法。
[26]
前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、上記
[25]に記載の方法。
[27]
ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1162.5±0.5及び
968.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるイ
ンスリン前駆イオンを含む、上記[25]に記載の方法。
[28]
ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、226.2±0.5及び1
35.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラ
グメントイオンを含む、上記[27]に記載の方法。
[29]
前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、1162.5±0.5のm/zを有するイ
ンスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び968.9±0.5の
m/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、
上記[27]に記載の方法。
[30]
各前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、226.2±0.5及
び135.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数の
フラグメントイオンを含む、上記[29]に記載の方法。
[31]
前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に塩基性条件に供される、上記[
21]に記載の方法。
[32]
前記試料を塩基性条件に供するステップが前記試料をアンモニアに供するステップを含
む、上記[31]に記載の方法。
[33]
ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1453.8±0.5及び
1163.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択される
インスリン前駆イオンを含む、上記[31]に記載の方法。
[34]
ステップ(c)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、226.2±0.5及び1
35.9±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラ
グメントイオンを含む、上記[33]に記載の方法。
[35]
前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、1163.0±0.5のm/zを有するイ
ンスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び968.9±0.5の
m/zを有するインスリン前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、
上記[33]に記載の方法。
[36]
タンデム質量分析により試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
(a)前記試料からインスリン濃縮画分を得るために前記試料を固相抽出(SPE)及
び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
(b)質量分析により検出できるインスリン前駆イオンを発生させるのに適する条件下
で濃縮インスリンをイオン化源に供するステップであって、ここで、前記インスリン前駆
イオンは、1162.5±0.5の質量電荷比(m/z)を有する、ステップ、
(c)質量分析により検出できる1つ又は複数のフラグメントイオンを発生させるため
に前記インスリン前駆イオンを約40~70eVの範囲内の衝突エネルギーでの衝突誘起
解離に供するステップ、及び
(d)質量分析により1つ又は複数の前記フラグメントイオンの量を決定するステップ
を含み、
ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、
方法。
[37]
前記試料が生物学的試料を含む、上記[36]に記載の方法。
[38]
前記試料が血漿又は血清試料を含む、上記[36]に記載の方法。
[39]
前記試料がヒトから採取される生物学的試料を含み、前記方法がヒトから採取される場
合の生物学的試料中のインスリンの量を決定するために用いられる、上記[36]に記載
の方法。
[40]
前記イオン化条件が前記試料をイオン化の前に酸性条件に供するステップを含む、上記
[36]に記載の方法。
[41]
前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、上記
[40]に記載の方法。
[42]
前記イオン化条件が前記試料をイオン化の前に塩基性条件に供するステップを含む、上
記[36]に記載の方法。
[43]
前記試料を塩基性条件に供するステップが前記試料をアンモニアに供するステップを含
む、上記[42]に記載の方法。
[44]
前記イオン化がエレクトロスプレーイオン化(ESI)源を用いてポジティブイオンモ
ードで行われる、上記[36]に記載の方法。
[45]
前記衝突エネルギーが約40~60eVの範囲内にある、上記[36]に記載の方法。
[46]
前記衝突エネルギーが約40~50eVの範囲内にある、上記[36]に記載の方法。
[47]
前記1つ又は複数のフラグメントイオンが226.2±0.5及び135.9±0.5
のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む、上記[
36]に記載の方法。
[48]
タンデム質量分析により、ヒトから採取される場合の生物学的試料中のインスリンの量
を決定する方法であって、該方法は、
(a)インスリンからインスリンA鎖を得るのに適する条件に試料を供するステップ、
(b)インスリンA鎖濃縮画分を得るために、ステップ(a)からの試料を固相抽出(
SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
(c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンA鎖イオンを発生させるの
に適する条件下で濃縮インスリンA鎖をイオン化源に供するステップ、及び
(d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンA鎖イオンの量を決定するス
テップ
を含み、
ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、
方法。
[49]
前記生物学的試料が血漿又は血清試料を含む、上記[48]に記載の方法。
[50]
前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、上記[48]に記
載の方法。
[51]
前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、上記[4
8]に記載の方法。
[52]
前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、上記
[41]に記載の方法。
[53]
ステップ(a)で得られた前記インスリンA鎖がイオン化の前に化学的に改変されてい
ない、上記[48]に記載の方法。
[54]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1192.9±0.5及び
795.4±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるイ
ンスリンA鎖前駆イオンを含む、上記[53]に記載の方法。
[55]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、570.0±0.5、45
6.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5の質量電荷比(m/z)を
有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[53
]に記載の方法。
[56]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1192.9±0.5の質
量電荷比(m/z)を有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメン
トイオン及び795.4±0.5のm/zを有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ
又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[53]に記載の方法。
[57]
各前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが570.0±0.5、4
56.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオン
からなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[56]に記
載の方法。
[58]
イオン化の前にステップ(a)で得られたインスリンA鎖を化学的に改変するステップ
をさらに含む、上記[48]に記載の方法。
[59]
前記化学的改変が前記インスリンA鎖をアルキル化するステップを含む、上記[58]
に記載の方法。
[60]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1306.0±0.5及び
871.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるア
ルキル化インスリンA鎖前駆イオンを含む、上記[59]に記載の方法。
[61]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、570.0±0.5、45
6.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5の質量電荷比(m/z)を
有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[59
]に記載の方法。
[62]
ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1306.0±0.5の質
量電荷比(m/z)を有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数の
フラグメントイオン及び871.0±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンA鎖
前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記[59]に記載の方法

[63]
各アルキル化前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、570.0
±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを
有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、上記
[62]に記載の方法。
[64]
高分解能/高精度質量分析により試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該
方法は、
(a)多価インスリンイオンを発生させるのに適する条件下で前記試料からのインスリ
ンをイオン化源に供するステップであって、ここで、前記多価インスリンイオンは、質量
分析により検出できる、ステップ、
(b)高分解能/高精度質量分析により1つ又は複数の多価インスリンイオンの量を決
定するステップ
を含み、
ステップ(b)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、
方法。
[65]
前記高分解能/高精度質量分析が10,000以上のFWHM及び50ppm以下の質
量精度で行われる、上記[64]に記載の方法。
[66]
前記高分解能/高精度質量分析が15,000以上のFWHM及び20ppm以下の質
量精度で行われる、上記[64]に記載の方法。
[67]
前記高分解能/高精度質量分析が20,000以上のFWHM及び5ppm以下の質量
精度で行われる、上記[64]に記載の方法。
[68]
前記高分解能/高精度質量分析が高分解能/高精度飛行時間(TOF)型質量分析計を
用いて行われる、上記[64]に記載の方法。
[69]
前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、上記[64]に記
載の方法。
[70]
前記イオン化条件が酸性条件下でのインスリンのイオン化を含む、上記[64]に記載
の方法。
[71]
前記酸性条件がイオン化の前のギ酸による前記試料の処理を含む、上記[69]に記載
の方法。
[72]
前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが4+、5+及び6+価インスリンイオンか
らなる群から選択される1つ又は複数のイオンを含む、上記[64]に記載の方法。
[73]
前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが6+価インスリンイオンを含む、上記[7
2]に記載の方法。
[74]
前記1つ又は複数の6+価インスリンイオンが、約968.0±1.5の範囲内の質量
電荷比(m/z)を有する1つ又は複数のイオンを含む、上記[73]に記載の方法。
[75]
6+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが、968.28±0.1、96
8.45±0.1、968.62±0.1、968.79±0.1、968.95±0.
1、968.12±0.1、968.28±0.1、968.45±0.1及び968.
61±0.1の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択される1つ又は
複数のイオンを含む、上記[73]に記載の方法。
[76]
前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが5+価インスリンイオンを含む、上記[7
2]に記載の方法。
[77]
5+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが約1162.5±1.0の範囲
内の質量電荷比(m/z)を有する1つ又は複数のイオンを含む、上記[76]に記載の
方法。
[78]
5+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが、1161.72±0.1、1
161.92±0.1、1162.12±0.1、1162.32±0.1、1162.
52±0.1、1162.72±0.1、1162.92±0.1、1163.12±0
.1及び1163.34±0.1の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から
選択される1つ又は複数のイオンを含む、上記[76]に記載の方法。
[79]
5+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが1162.54±0.1の質量
電荷比(m/z)を有するイオンを含む、上記[76]に記載の方法。
[80]
前記1つ又は複数の多価インスリンイオンが4+価インスリンイオンを含む、上記[7
2]に記載の方法。
[81]
4+荷電状態の前記1つ又は複数のインスリンイオンが約1452.9±0.8の範囲
内の質量電荷比(m/z)を有する1つ又は複数のイオンを含む、上記[80]に記載の
方法。
[82]
イオン化の前に高速液体クロマトグラフィー(HPLC)により前記試料からインスリ
ンを精製する、上記[64]に記載の方法。
[83]
試料がHPLCの前に固相抽出(SPE)に供される、上記[81]に記載の方法。
[84]
前記試料が生物学的試料を含む、上記[64]に記載の方法。
[85]
前記試料がヒトから得られるものである、上記[64]に記載の方法。
[86]
前記試料が血漿又は血清試料を含む、上記[64]に記載の方法。
[87]
前記試料がヒトからの生物学的試料であり、前記方法がヒトから採取される場合の前記
試料中のインスリンの量を決定するために用いられる、上記[64]に記載の方法。

Claims (15)

  1. タンデム質量分析により、ヒトから採取される場合の生物学的試料中のインスリンの量を決定する方法であって、該方法は、
    (a)インスリンからインスリンA鎖を得るのに適する条件に試料を供するステップ、
    (b)インスリンA鎖濃縮画分を得るために、ステップ(a)からの試料を固相抽出(SPE)及び高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に供するステップ、
    (c)質量分析により検出できる1つ又は複数のインスリンA鎖イオンを発生させるのに適する条件下で濃縮インスリンA鎖をイオン化源に供するステップ、及び
    (d)タンデム質量分析により1つ又は複数のインスリンA鎖イオンの量を決定するステップであって、ここで、前記1つ又は複数のインスリンA鎖イオンは、1192.9±0.5及び795.4±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるインスリンA鎖前駆イオンを含む、ステップ
    を含み、
    ステップ(d)で決定されるイオンの量を前記試料中のインスリンの量に関連付ける、方法。
  2. 前記生物学的試料が血漿又は血清試料を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 前記イオン化源がエレクトロスプレー(ESI)イオン化源である、請求項1に記載の方法。
  4. 前記試料がポジティブイオンモードでのイオン化の前に酸性条件に供される、請求項1に記載の方法。
  5. 前記試料を酸性条件に供するステップが前記試料をギ酸に供するステップを含む、請求項4に記載の方法。
  6. ステップ(a)で得られた前記インスリンA鎖がイオン化の前に化学的に改変されていない、請求項1に記載の方法。
  7. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項6に記載の方法。
  8. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1192.9±0.5の質量電荷比(m/z)を有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び795.4±0.5のm/zを有するインスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項6に記載の方法。
  9. 各前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、513.0±0.5、399.0±0.5、236.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項に記載の方法。
  10. イオン化の前にステップ(a)で得られたインスリンA鎖を化学的に改変するステップをさらに含む、請求項1に記載の方法。
  11. 前記インスリンA鎖を化学的改変するステップ前記インスリンA鎖をアルキル化するステップを含む、請求項10に記載の方法。
  12. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1306.0±0.5及び871.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンからなる群から選択されるアルキル化インスリンA鎖前駆イオンを含む、請求項11に記載の方法。
  13. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するイオンの群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項11に記載の方法。
  14. ステップ(d)で決定される前記1つ又は複数のイオンが、1306.0±0.5の質量電荷比(m/z)を有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオン及び871.0±0.5のm/zを有するアルキル化インスリンA鎖前駆イオンからの1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項11に記載の方法。
  15. 各アルキル化前駆イオンからの前記1つ又は複数のフラグメントイオンが、570.0±0.5、456.0±0.5、293.0±0.5及び133.0±0.5のm/zを有するイオンからなる群から選択される1つ又は複数のフラグメントイオンを含む、請求項14に記載の方法。

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