JP2014218074A - 成形品の製造方法 - Google Patents

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Abstract

【課題】成形時におけるポリマーの結晶化度の低下を抑制することが可能で、成形品の耐衝撃性が良好で、複雑な形状を有する成形品に加工した際にも、角部や屈曲部の成形不良や強度不足を引き起こす恐れがなく、真空成形や深絞り成形が可能な、成形品の製造方法を提供する。【解決手段】半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布の両面もしくは片面に、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーの被覆層が形成されたラミネートシートを用意し、該ラミネートシートを少なくとも2枚以上織布が隣接しないように重ね合せたものを、半結晶性熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着して板状シートを作製し、得られた板状シートを真空成形等により熱成形して成形品を製造する。【選択図】図1

Description

本発明は、半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布を用いた成形品の製造方法に関する。
半結晶性ポリマー糸条からポリマー製品を製造する方法は、堅くて強いシートの製法として知られており、例えば、特許文献1では、高密度ポリエチレン繊維の束(実施例1参照)や、数層の織物マット(実施例3参照)を、熱間圧縮することによってポリエチレンシートを製造している。
しかし、この方法では、接触圧(0.5MPa)にさらしながら圧着温度(134〜139℃)に加熱して10分間保持し、ポリマーの一部を溶融させた後、40〜50MPaの圧力を加え圧着するので、一旦溶融したポリマーが再結晶した際には、溶融に伴う結晶化度の低下とそれに伴う機械的性質の低下が生じ、成形前のポリマーが所有していた特性を充分発揮させることができない。
一方、高密度ポリエチレン繊維(融点145-152℃)層の間に、低密度ポリエチレンフィルム(融点107-120℃)を挟み込み、フィルムの融点よりも高く繊維層の融点よりも低い温度で熱圧着させた場合は、フィルムと繊維層の間の接着力が弱い脆弱なシートしか得られないことが報告されている。
特許文献2には、グレードが同じで融点が異なる2種類のポリエチレンを用いる方法が開示されており、配向させることにより高融点化したポリエチレン繊維層の間に、ポリエチレンフィルムを挟み込み、ポリエチレンフィルムは完全に溶融するが、ポリエチレン繊維層は一部のみが溶融する温度で圧着することにより成形品を製造する方法が開示されている。この方法は、フィルムと繊維層とを低圧で圧着させるので、機械的性質の低下は小さい。
しかしながら、特許文献2の方法では、高融点化した繊維が溶融することにより結晶化度が低下するため、所望の強度が得られ難くなる。また、圧着時に溶融したポリエチレンが繊維層の糸条間の隙間に浸透するため糸条の自由度が妨げられることにより、結果として、成形品の耐衝撃性が低下する;複雑な形状を有する成形品に加工した際の角部や屈曲部の成形不良あるいは強度不足が引き起こされる;真空成形や深絞り成形ができない;という問題がある。
特表平6−502227号公報 特表2007−528304号公報
本発明は、成形時におけるポリマーの結晶化度の低下を抑制することが可能で、成形品の耐衝撃性が良好で、複雑な形状を有する成形品に加工した際にも、角部や屈曲部の成形不良や強度不足を引き起こす恐れがなく、真空成形や深絞り成形が可能な、成形品の製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、前記課題を解決するために鋭意検討を重ねた結果、本発明に到達した。 すなわち、本発明は以下の通りである。
(1)半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布の両面もしくは片面に、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーの被覆層が形成されたラミネートシートを用意し、
該ラミネートシートを少なくとも2枚以上織布が隣接しないように重ね合せたものを、半結晶性熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着して板状シートを作製し、
得られた板状シートをプラグアシスト真空成形、圧空真空成形又はプレス成形により熱成形することを特徴とする成形品の製造方法。
(2)半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布と、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーからなるフィルムを用意し、
織布を少なくとも2枚以上用い、各織布の両面もしくは片面にフィルムを合計1〜2枚織布が隣接しないように重ね合せたものを、半結晶性熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着して板状シートを作製し、
得られた板状シートをプラグアシスト真空成形、圧空真空成形又はプレス成形により熱成形することを特徴とする成形品の製造方法。
(3)ラミネートシート及び板状シートが、織布の隙間に融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーが侵入している状態、または、織布の隙間を融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーが貫通することで織布両面の被覆層が結合した状態にある、上記(1)又は(2)に記載の成形品の製造方法。
(4)半結晶性熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィンである、上記(1)〜(3)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(5)ラミネートシートの厚みが、80〜300μm/枚である、上記(1)、(3)、(4)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(6)成形品の密度が0.6〜0.9g/cmである、上記(1)〜(5)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(7)熱圧着がカレンダー法、プレス法又は押出法によるものである、上記(1)〜(6)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
(8)成形品が、カバン類又はケース類である、上記(1)〜(7)のいずれかに記載の成形品の製造方法。
本発明の成形品の製造方法によれば、耐衝撃性、リサイクル性に優れる成形品を製造できると共に、真空成形や深絞り成形により、カバン、カメラケース、楽器ケース等の複雑な形状の成形品に加工することもでき、しかも成形品の角部や屈曲部の強度が保持された成形品を製造することができる。
また、ポリエチレンやポリプロピレンを用いて製造した成形品は、軽量かつ耐衝撃性に優れているため、アタッシュケース、スーツケース等の剛性が要求されるカバン類、ケース類、防弾板、防御板等として好適である。
本発明による成形品の製造方法の工程図である。 比較例による成形品の製造方法の工程図である。 板状シートにおいて、成形時プレス圧力と成形品の衝撃試験における最大荷重エネルギーとの関係を示す図である。 板状シートにおいて、成形品の計算密度と衝撃試験における最大荷重エネルギーとの関係を示す図である。 本発明による成形品の落錘衝撃試験(衝撃エネルギー5J、10J)後の衝撃面とその裏側の写真。 比較例による成形品の落錘衝撃試験(衝撃エネルギー5J、10J)後の衝撃面とその裏側の写真。 本発明による成形品の製造方法の工程図である。
本発明の請求項1に係る成形品の製造方法は、半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布を基材として、その両面もしくは片面に、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーの被覆層が形成されたラミネートシートを用意し、該ラミネートシートを少なくとも2枚以上重ね合せて積層体とし、該積層体を熱圧着し、該ラミネートシートの被覆層を軟化もしくは融着させることにより板状シートを作製し、該板状シートを熱成形して成形品を製造するものである。
本発明の請求項2に係る成形品の製造方法は、半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布と、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーからなる補助フィルムを用意し、該織布を少なくとも2枚以上用い、各織布の両面もしくは片面にフィルムを合計1〜2枚重ね合せたものを、熱圧着して板状シートを作製し、該板状シートを熱成形して成形品を製造するものである。
請求項1及び請求項2に係る成形品の製造方法では、半結晶性熱可塑性ポリマーを選択的に溶融もしくは軟化させるが、織布の結晶化度を低下させないようにするため、半結晶性熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着する。また、複数枚の織布を一体化させるため、重ね合せる際は織布同士が隣接しないように配置することが望ましい。
半結晶性熱可塑性ポリマーは、そのフィルムや糸条を延伸することにより結晶化度が高くなる性質を有しており、ポリマーの延伸倍率を上げることにより、延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点は高くなる。
本発明では、被覆層(単に「ラミネート」と称することがある。)或いはフィルムを構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点は、延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点より、少なくとも10℃以上低いことが肝要である。両ポリマーの融点差は、好ましくは15℃以上、より好ましくは20℃以上である。このように融点差を設けることにより、熱圧着時において被覆層或いはフィルムを構成するポリマーは溶融するが、延伸糸条を構成するポリマーは溶融することがないか溶融しても最小限程度に抑えることができるため、延伸糸条を構成するポリマーの結晶性低下による強度低下を防止することができる。
延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーとしては、軽量で耐衝撃性に優れ、融点が低く加工し易く、延伸糸条として高強度が得られ易く、かつ被覆層との溶融接着性の良好な、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく用いられる。
ポリエチレンとしては、公知の低密度ポリエチレン、中密度ポリエチレン等が用いられる。ポリプロピレンとしては、公知のポリプロピレンが用いられ、アイソタクチックポリプロピレン、アタクチックポリプロピレン等が用いられる。
複合糸条を用いて形成された延伸糸条を用いることもできる。具体的には、ポリプロピレン系樹脂を芯糸とし、該ポリプロピレン系ポリマーより融点の低いポリプロピレン系ポリマーやポリエチレン系ポリマーを鞘糸とした複合糸条が挙げられる。これにより、芯糸を構成するポリマーの延伸効果を失うことなく鞘糸を構成するポリマーが、被覆層と強固に融着することができる。芯糸と鞘糸の融点差は、10℃以上、より好ましくは20℃以上とするのが良い。
延伸糸条は、半結晶性熱可塑性ポリマーの延伸糸条であれば特に限定されるものではなく、マルチフィラメント、モノフィラメント、扁平モノフィラメント、フラットヤーン、スリットヤーンなどが挙げられる。マルチフィラメント、モノフィラメント及び扁平モノフィラメントは、成形品の表面平滑性が劣る欠点があるため、フラットヤーン、スリットヤーンが好適に用いられる。
延伸糸条は、公知の方法で製造された糸条もしくは複合糸条を延伸した後、熱処理を施したフィラメント、または、半結晶性熱可塑性ポリマー製フィルムを細断した後、縦一軸延伸し、その後熱処理を施した糸条等が挙げられる。延伸糸条の繊度は用途に応じて適宜決定すれば良く、特に限定されるものではない。
織布は公知の方法で織成された、平織、綾織、朱子織、絡み織や変化組織などが用いられ、上記の延伸糸条を経緯の一部に用いた織布であれば良い。なお編物は、伸縮性が有り、繊維が移動することによる衝撃吸収作用はあるが、表面平滑性が劣るため好ましくない。
延伸糸条を織成した織布は、ラミネートシート或いはフィルムを重ね合せた際の半結晶性熱可塑性ポリマーの結晶の軸調整が容易であり、当該ポリマーの配向方向に強度を持たせることができる点でも好ましい。
織布の目付は、延伸糸条の種類にもよるが、織布1枚が30〜200g/mのものが好ましく、より好ましくは50〜150g/mである。目付が小さすぎる場合は、成形品の強度を得るために積層枚数を増やさなければならず、それによって成形品の均一性が損なわれるおそれがある。また、目付の大きい織布を作製することは、フラットヤーンを用いた織布の場合には困難である。
織布の織密度は、経糸及び緯糸がそれぞれ5本/インチ以上であることが、成形品の強度を保持するうえで望ましい。織密度の上限は延伸糸条の種類によって異なり、特に限定されるものではないが、好ましくは5本〜15本/インチである。織密度が5本/インチより少ない場合は、充分な成形品の強度(堅さ)や耐衝撃性が得られ難くなり、織密度が15本/インチを超える場合は、織布の隙間に融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーが貫通し難くなることで、板状シートの剥離が生じ易くなる。
被覆層或いはフィルムを構成する半結晶性熱可塑性ポリマーは、延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマー同様、軽量で耐衝撃性に優れ、融点が低く加工し易く、延伸糸条との溶融接着性の良好な、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィンが好ましく用いられる。延伸糸条との融点差10℃以上を確保する点からは、エチレン−プロピレン共重合体を用いることもできる。被覆層或いはフィルムの厚みは特に限定されるものではなく、15〜100μm程度が好ましい。
ラミネートシートは、公知の押出ラミネート法、カレンダー法、コーティング法、浸漬法等により、織布の両面もしくは片面に被覆層を形成したものであれば良く、織布の隙間に溶融ポリマーが侵入している状態、または、織布の隙間を溶融ポリマーが貫通することで織布両面の被覆層が結合した状態のシートなどが存在する。
ラミネートシートの厚みは、80〜300μm程度のものが好適である。厚みが小さいと、所望の耐衝撃性を得るために、重ね合せるラミネートシートの枚数を増やす必要があり、製造工程が煩雑となる。一方、厚みが大きくなり過ぎると、ラミネートシートを作製すること自体が難しくなり、軽量性を損なうことにもなる。
本発明では、ラミネートシートとして、レジャーシート、建築中の建物を覆うカバーシート、土嚢シート等の市販ラミネートシートを使用することもできる。
また、ラミネートシートには、本発明の目的を損なわない程度の、難燃剤、酸化防止剤、熱安定剤、紫外線吸収剤、帯電防止剤、顔料、着色剤、核剤等の添加剤が配合されていても良い。織布、フィルムについても同様である。
ラミネートシートを重ね合せる場合は、少なくとも2枚以上、好ましくは2〜10枚、さらに好ましくは3〜8枚用いることが望ましく、枚数は成形品の目的や用途に合わせて適宜選択することができ、重ね合せる方向は任意である。
織布とフィルムを重ね合せる場合は、ラミネートシートを重ね合せる場合に比べて、織布やフィルムの厚さを任意に設定でき、重ね合せる順序や枚数も限定されないという利点がある。成形品に適度な強度(堅さ)や耐衝撃性を付与する観点からは、織布は少なくとも2枚以上用いる必要がある。フィルムは、各織布の片面又は両面に合計1〜2枚重ね合せるが、織布の1〜2倍の枚数にすることが好ましい。フィルムの重ね合せる枚数が多くなると、フィルム間で溶融温度差が生じ易くなり、全てのフィルムを溶融させるために成形温度を上げると、織布を構成するポリマーの結晶化度が低下する虞がある。織布とフィルムを交互に重ね合せると、重ね合せが容易である。織布の枚数は、好ましくは2〜8枚、さらに好ましくは2〜5枚であり、枚数は成形品の目的や用途に合わせて適宜選択することができ、重ね合せる方向も任意である。
本発明に係る成形品の製造方法においては、ラミネートシートを重ね合せた後、得られた積層体を、被覆層を構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱し熱圧着して、ラミネートシートの被覆層を互いに融着或いは被覆層を軟化させて織布の間に侵入もしくは織布に融着させて一体化することで、板状シートを作製する。或いは、織布とフィルムを重ね合せたものを、フィルムの融点以上かつ織布の融点未満の温度、即ち、フィルムを構成するポリマーが軟化もしくは一部が溶融する温度まで加熱し、織布とフィルムを熱圧着させて一体化することで、板状シートを作製する。
熱圧着には公知の手段を用いることができ、公知の押出ラミネート成形法、カレンダー成形法、プレス成形法等を採用することができる。カバンやケース等複雑な形状の成形品の製造には、真空成形法が望ましいが、真空成形法で熱圧着と成形を行った場合は、ラミネートシート同士或いは織布とフィルムの剥離が起こり、良好な成形品を得ることができなくなる。従って、所定形状の成形品を成形する前に熱圧着により板状シートを作製する必要がある。この場合、熱圧着温度は、延伸糸条を構成するポリマーの結晶化を低下させないために、該ポリマーの融点未満とすることが望ましい。例えば、被覆層を構成するポリマーがポリエチレンの場合、熱圧着温度は115〜125℃程度が好ましい。
板状シートを熱成形する際の成形条件は、遠赤外線ヒーターを用いた場合、ヒーター温度で樹脂の熱変形温度より10℃程度高めとする他は、従来の成形条件が用いられる。熱成形法としては、プラグアシスト真空成形法、圧空真空成形法、又はプレス成形法が好ましい。プラグアシスト真空成形法は、カバンやケース等の複雑な形状の成形品の製造に好適であり、プレス成形法は、カバンやケース等のシェル部等を形成するために好適である。
真空成形時の圧力は特に限定するものではないが、成形品表面の平滑性を向上させるには真空ポンプ等を用いて減圧にすることが好ましい。減圧が充分でないと、得られる成形品の中にボイドが残留するおそれがある。真空成形時には成形品に優れた形状付与性を付与するため、プラグを押し込んで成形するプラグアシスト真空成形法、又は上型から空気を流し込んで成形する真空圧空成形法を採用することが好ましい。
これにより、延伸糸条を構成するポリマーの結晶化度を実質的に低下させることなく、織布とフィルムを互いに融着させ、或いは、隣接するラミネートシートの被覆層を互いに融着させるので、成形品の強度を向上させることができる。こうして得られた成形品は、耐衝撃性及び引張強度に優れ適度な剛性を有する、スーツケースやアタッシュケース等のカバン、カメラケース、楽器ケース等のケースとして好適なものとなる。成形品の密度は、ラミネートシートの種類によっても異なるが、密度が0.6〜0.9g/cmであり軽量の成形品が得られる
以下、本発明を実施例および比較例を用いて更に具体的に説明するが、本発明は以下の実施例のみに限定されるものではない。また、成形品の評価は以下の方法に従った。
(厚み)
マイクロメーターで測定した。
(計算密度(g/cm))
次の計算式により求めた。[目付(g/m)÷(厚さ(mm)]×10
(耐衝撃性試験)
試験用サンプルは、成形品の中央平面部付近から約100mm×100mmの大きさに切り出したものを用いた。
ASTM3763−06に準拠した。落錘衝撃試験機:インストロン製Dynatup(登録商標)9250HV、ストライカ:φ12.7mm(先端:半球形状)、φ76mmの受け押え板を用い、ストライカがサンプルに与える衝撃エネルギーの設定値を5J、10Jに設定して実施した。
(耐衝撃性評価)
○:ストライカが成形品を突き抜けない
△:成形品に穴開きあるが、ストライカが成形品を突き抜けない
×:ストライカが成形品を突き抜ける
(強度)
引張試験機(インストロン万能材料試験機 5966)を用い、試験片の長さ100mm、引張速度5mm/分で実施した。
(実施例1)
ポリエチレンスリットヤーンの延伸糸条を織成した織布としては、萩原工業(株)製土嚢袋(厚さ0.1mm、目付63.9g/m、織密度8.8本×8.8本/インチ)を用いた。該織布の両面を被覆するフィルムとしては、関西化学工業(株)製LLDPEフィルム(厚さ0.02mm、目付19.3g/m)を用いた。
上記の織布4枚とフィルム8枚とを、図1に示す順序で重ね合せたものを、熱プレス機に供給し、表1に示す温度と圧力で10分間熱プレスした後、室温まで放冷し、成形品(No.1〜No.7)を得た。
(比較例1)
実施例1で用いたものと同じ織布4枚とフィルム8枚とを、図2に示す順序で積層した以外は、実施例1と同じ条件で成形品(No.8〜No.11)を得た。
実施例及び比較例で得た成形品の耐衝撃性及び強度特性を表1に示す。また、図3には成形時プレス圧力と成形品の衝撃試験における最大荷重エネルギーとの関係を、図4には成形品の計算密度と衝撃試験における最大荷重エネルギーとの関係を示す。ここで、計算密度は、(成形品の重量)/(成形品の厚さ)で求められる値である。
表1より、本実施例の方法で製造した成形品は、強度特性に優れるとともに、最大荷重エネルギーが大きく(すなわち、耐衝撃性良好)、外観良好であることがわかる。これに対し、比較例の方法で製造した成形品は、強度特性及び耐衝撃性の点で劣り、外観不良であった。
表2に加工前の織布の最大荷重と伸度を測定した結果を示す。表1と表2の対比より、本実施例の方法では成形により成形品の強度低下が生じ難いことがわかる。
(実施例2)
(株)ユタカメイク製の市販のポリエチレン製薄手ブルーシート大畳#BS−MK(スリット糸厚さ20μm、スリット幅4mm、織物密度6本×6本/インチ、シート厚さ70μm)を12枚重ね合せたものを、熱プレス機に供給し、プレス温度113℃×10分間、ゲージ圧50kgf/cmで熱プレスした後、室温まで放冷し、厚さ1.14mm、目付675g/m、計算密度0.592g/cmの成形品を得た。成形品の耐衝撃性を評価した結果を表3に示す。
(実施例3)
(株)ナフコ製の市販のポリエチレン製ブルーシート厚手#3000(スリット糸厚さ30μm、スリット幅4mm、織物密度12本×12本/インチ、シート厚さ220μm、目付138.9g/m)を4枚重ね合せたものを、熱プレス機に供給し、プレス温度113℃×10分間、ゲージ圧50kgf/cmで熱プレスした後、室温まで放冷し、厚さ1.43mm、目付722g/m、計算密度0.505g/cmの成形品を得た。成形品の耐衝撃性を評価した結果を表3に示す。
(実施例4)
(株)ナフコ製の市販のポリエチレン製ブルーシート厚手#3000を6枚重ね合せたものを、熱プレス機に供給し、プレス温度113℃×10分間、ゲージ圧50kgf/cmで熱プレスした後、室温まで放冷し、厚さ2.00mm、目付918g/m、計算密度0.459g/cmの成形品を得た。成形品の耐衝撃性を評価した結果を表3に示す。
(比較例2)
厚さ1.00mm、重量983g/m、計算密度0.983g/cmのポリエチレン板を用いた。
(比較例3)
市販スーツケースから切り出した、厚さ1.15mm、重量1135g/m、計算密度0.987g/cmのポリエチレン試験片を用いた。
(比較例4)
萩原工業(株)製土嚢袋(スリット糸厚さ約30μm、スリット幅5mm、シート厚さ約0.1mm、目付63.9g/m、織密度8.8本×8.8本/インチ)から切り出したポリエチレン製織布を用いた。
実施例2〜4および比較例2〜4で得た成形品もしくは試験片の耐衝撃性評価結果を表3にまとめて示す。
表3の結果から本発明により得られる成形品は、軽量で、しかも、耐衝撃性に優れるものであった(図5参照)。
これに対し、比較例の成形品は、耐衝撃性に劣るものであった(図6参照)。
以下の実施例及び比較例では、真空成形法による成形品の製造及び評価を行った。
各種真空成形方法中のストレート法とプラグアシスト法にて評価した。
(参考)
1.ストレート法
メス型(凹形の型)を使用する最も単純な方法と言われ、型の上に加熱したシートをあて、その間を真空に引いて、型に沿わせて成形する方法で、成形品の偏肉が大きくなり、底のコーナー部が最も薄くなる。
2.ドレープ法
凸形の型を使用し、型で突き上げてから真空で引いて型に吸い付けて成形する方法で、深絞りが可能であり、肉厚はストレート法に比べ均一となる。
3.エアースリップ法
加熱シートを圧縮空気で半球状にふくらませ、その中に雄型を入れ、真空で引く成形方法で、均一な肉厚の成形品が可能となる。
4.リバースドロー法
エアースリップ法での雄型に代えて雌型を使用する成形方法で、雌型の反対方向にふくらませることにより、シートを均一に予張し、より均一な肉厚の成形方法が可能となる。
5.プラグアシスト法(補助プラグ法)
雌型を使用して深絞り成形を行う方法で、雌型の上にクランプされた加熱シートを、プラグで雌型にある程度押し込んだ後に真空で引いて成形する。
6.プラグアシストリバースドロー法(圧空真空成形法)
プラグアシスト法と、リバースドロー法を組み合わせた成形方法で、シートの下から空気でブローし、半球状にした後にプラグで雌型にある程度押し込み、真空で引いて成形する方法で、成形面積の大きい厚肉シートの深絞り成形が可能となる。
(成形品の形状付与性)
成形品の剥離及び皺発生の有無を目視判定し、剥離及び皺が無い場合:○、剥離は無いが皺が有る場合:△、剥離及び皺が有る場合:×、と評価した。
(成形品の堅さ)
成形品が形状保持性を目視判定し、形状保持できる堅さの場合:○、形状保持し難い堅さの場合:△、形状保持できない堅さの場合:×、と評価した。
(比較例5)
萩原工業(株)製の、ポリプロピレンスリットヤーンの延伸糸条を織成した織布に、低融点PP樹脂を50μラミネートした、ラミネート織布(厚さ0.5mm、目付242g/m、糸幅約2.5mm、織密度15本×15本/インチ)を用いた。ラミネート織布の引張強度は1,955N/50mm,伸度24.3%,355Nであった。
上記のラミネート織布1枚を、ストレート真空法による真空成形機にて、上側のセラミックヒータの温度:120℃、下側のセラミックヒータ温度:100℃で、真空度:0.8〜0.9atm、プレス圧:5〜7kg/cmで、10秒間熱成形した後、室温空気にて冷却し、成形品を得た。その結果を表4に示す。
(比較例6)
比較例5で用いたラミネート織布シート2枚を、図7に示す順序で重ね合せたものを、加熱温度160℃、1.2m/min、プレス圧7ton、クリアランス0mmにて貼り合せ、板状シート(引張強度4,148N/50mm、伸度24.5%、引裂強度449N)を得た。得られた板状シートを、比較例5と同様の条件下で熱成形した。その結果を表4に示す。
(比較例7)
比較例5で用いたラミネート織布シートを、プラグアシスト法による真空成形機にて、比較例5に準じて熱成形した。その結果を表4に示す。
(実施例5)
比較例5で用いたラミネート織布2枚を、図7に示す順序で重ねたものを、加熱温度160℃、1.2m/min、プレス時の線圧力350kg/cm、クリアランス0mmにて貼り合せ、板状シートを得た。得られた板状シートを、プラグアシスト法による真空成形機にて、上側のセラミックヒータの温度:120℃、下側のセラミックヒータ温度:100℃で、真空度:0.8〜0.9atm、プレス圧:5〜7kg/cmで、10秒間熱成形した後、室温空気にて冷却し、成形品を得た。その結果を表4に示す。
(実施例6)
実施例5で得られた板状シートのPPラミネート側に、PP樹脂を約1mmラミネート貼り付けたシートを作製した。
得られた板状シートを、上側のセラミックヒータ温度:120℃、下側のセラミックヒータ温度:100℃とし、プラグアシスト法による真空成形機にて、真空度:0.8〜0.9atm、プレス圧:5〜7kg/cmで、10秒間熱成形した後、室温空気にて冷却し、成形品を得た。その結果を表4に示す。
(実施例7)
実施例5で得られた板状シートの織布側に、PP樹脂を約1mmラミネート貼り付けたシートを作製した。
得られた板状シートを、上側のセラミックヒータ温度:120℃、下側のセラミックヒータ温度:100℃とし、プラグアシスト法による真空成形機にて、真空度:0.8〜0.9atm、プレス圧:5〜7kg/cmで、10秒間熱成形した後、室温空気にて冷却し、成形品を得た。その結果を表4に示す。
(比較例8)
板状シートの真空成形時において、プラグを用いなかった以外は、実施例6と同様の条件で真空成形して成形品を得た。その結果を表4に示す。
(比較例9)
比較例7で得た板状シート2枚を重ね合せ、4ヶ所の端をテープ止めして真空成形機に投入し、実施例6と同様の条件で真空成形した。その結果、形状付与性、堅さともに不充分なものであった。
(比較例10)
比較例5で用いた織布とフィルムを、各4層を交互に重ね合せ、4ヶ所の端をテープ止めして真空成形機に投入し、実施例6と同様の条件で真空成形した。その結果、最上面のフィルムが溶融したが、最内層のシートには破れが発生した。このことより、非接着状態で真空成型機に投入した場合は、材料間で熱伝導し難いため、材料を一体化できないことが分った。
(比較例11)
実施例6で作製した板状シートにOPPフィルム(厚さ30μm)を重ね合せ、4ヶ所の端をテープ止めして真空成形機に投入し、実施例6と同様の条件で真空成形した。その結果、OPPフィルムを貼り合せることができなかった。
本発明によれば、軽量で、適度な剛性を有し、耐衝撃性に優れる成形品を製造することができる。そのため、アタッシュケース、スーツケース等のカバン類や、カメラケース、楽器ケース等のケース類の製造に好適に利用することができる。
1 織布
2 フィルム
3 板状シート
4 熱プレス機
11 織布
12 フィルム
13 板状シート
14 熱プレス機

Claims (8)

  1. 半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布の両面もしくは片面に、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーの被覆層が形成されたラミネートシートを用意し、
    該ラミネートシートを少なくとも2枚以上織布が隣接しないように重ね合せたものを、半結晶性熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着して板状シートを作製し、
    得られた板状シートをプラグアシスト真空成形、圧空真空成形又はプレス成形により熱成形することを特徴とする成形品の製造方法。
  2. 半結晶性熱可塑性ポリマー製の延伸糸条を織成した織布と、前記延伸糸条を構成する半結晶性熱可塑性ポリマーの融点よりは少なくとも10℃以上融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーからなるフィルムを用意し、
    織布を少なくとも2枚以上用い、各織布の両面もしくは片面にフィルムを合計1〜2枚織布が隣接しないように重ね合せたものを、半結晶性熱可塑性ポリマーの融点以上かつ織布の融点未満の温度で熱圧着して板状シートを作製し、
    得られた板状シートをプラグアシスト真空成形、圧空真空成形又はプレス成形により熱成形することを特徴とする成形品の製造方法。
  3. ラミネートシート及び板状シートが、織布の隙間に融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーが侵入している状態、または、織布の隙間を融点の低い半結晶性熱可塑性ポリマーが貫通することで織布両面の被覆層が結合した状態にある、請求項1又は2に記載の成形品の製造方法。
  4. 半結晶性熱可塑性ポリマーが、ポリオレフィンである、請求項1〜3のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  5. ラミネートシートの厚みが、80〜300μm/枚である、請求項1、3、4のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  6. 成形品の密度が0.6〜0.9g/cmである、請求項1〜5のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  7. 熱圧着がカレンダー法、プレス法又は押出法によるものである、請求項1〜6のいずれかに記載の成形品の製造方法。
  8. 成形品が、カバン類又はケース類である、請求項1〜7のいずれかに記載の成形品の製造方法。
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