JP2014217310A - 魚介類からの有用物の抽出分離方法 - Google Patents
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Abstract
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しかし、この方法では、原料となる魚を一旦、乾燥物とするため、乾燥中および乾燥物の保管中に原料魚の脂肪分の酸化が起こり、酸化臭(アルデヒド、アルコール等)が発生して抽出エキスの風味を損なってしまう。そのため、原料となる魚は脂肪分の少ない魚(概ね5%以下)に限定されるが、それでも魚に含まれるわずかな脂肪分に由来する酸化臭を完全に防ぐことはできない。
また、凍結魚肉を原料とすると、組織が脆弱化して煮熟中に煮熟水側に旨味成分等の有用成分が多く流失してしまうため、乾燥加工品として煮干しを製造する場合には新鮮な魚を原料とする必要がある。
加えて、この様に抽出して得たエキスは、固形物濃度が5%以下と低く、商品化するためには更に固形物濃度10%以上にまで濃縮する必要があった。また、頭や内臓を含んだ乾燥加工品からそのまま抽出してしまうと、苦味成分も抽出されるため、手間やコストのかかる頭や内臓の除去作業が必要となっている。
請求項3の発明は、原料となる魚が凍結魚であることを特徴とする、請求項1または2に記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法である。
請求項4の発明は、原料となる魚が5%以上の脂肪分を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法である。
請求項5の発明は、ミンチ化した原料魚肉に、原料魚肉の等倍量以下の加水を行った後に、加熱、固液分離することにより、エキスと同時に魚油も得ることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法である。
第1に原料となる魚をミンチ化することで、旨味成分等の有用成分を効率的に短時間で高濃度に抽出できるだけでなく、原料となる魚の大小、大きさの異なる魚が混在したり、また、鮮度低下により脆弱化した魚体があったりしても問題にならないこと、
第2に旨味成分等の有用成分が抽出される時間と苦味成分が抽出される時間との差を利用して有用成分を選択的に抽出できること、
第3に従来法の原料魚からエキス抽出原料としての乾燥加工品を一旦製造することを止めてダイレクトにエキスを得ることになるので、煮熟工程が不要となり、原料魚に含まれる有用成分を全て、しかも固形物濃度を高く回収できる。さらに乾燥工程が不要となり、乾燥中の脂肪酸化による酸化臭の生成を防ぐとともに、製造時間の大幅な短縮が実現できるとの知見に基づくものである。
(1)脂肪分の多寡にかかわらず、酸化臭が極端に少なくなり、且つ
(2)有用成分のみが効率良くエキス側に抽出でき、固形物濃度が高くなった
エキスを得られるので、そのまま、濃縮することなく、料理用ダシ、加工食品用原料として用いることができる。
(原料)
原料魚肉として、魚類全般を使用でき、魚種、魚体の大きさだけでなく、脂肪分の多寡や、生鮮、凍結の違いを問わない。
また、頭や内臓、骨などを事前に除去することなく丸ごと使用できる。
原料魚肉は、粉砕してミンチ化する。粒径は1cm以下が好ましく、2〜3mmがより好ましい。粉砕するのは抽出効率および加熱時間の短縮を考慮したためであるが、細かくなり過ぎると、後の固液分離の際に、強力な遠心分離や精密な濾過が必要となり、逆に大きくなり過ぎると、抽出効率が悪くなる。
粉砕機は、特に制限されず、チョッパーやサイレントカッター等、市販されているものを使用できる。
脂肪分が多い場合や、旨味やこく味等の呈味成分を調整するために、原料魚肉の種類によっては、使用用途に応じて、加水することが望ましい。原料魚肉の脂肪分が多い場合は、魚肉に含まれる水分量が少ないため、ある程度加水した方が抽出効率が良くなり、エキスと魚油の分離も容易になる。従って、脂肪分の多い魚を原料とした場合には、加水することで、エキスと共に変質の少ない魚油も純度高くしかも効率良く回収できることになる。
ただし、加水量は、原料魚肉の等倍量までが好ましい。これ以上加水すると、魚肉から抽出されるエキス量は増加するが、固形物濃度が低下し、抽出効率が悪くなる。
前述のミンチ化した原料魚肉を加熱する。加熱温度は、抽出効率を考慮して魚肉のタンパク質が確実に熱変性する65℃以上が好ましい。所定の上限まで昇温した後には熱源をOFFにすることで直ちに冷却できるので、加熱抽出時間は、煮熟とは明らかに区別できる程度の短時間であり、原料魚肉の種類や小塊の粒径により異なるが、実験結果からは20分が上限の目安になっていることが確認されている。
加熱方法は、加熱時間の調整し易さからジュール加熱が好ましいが、ミンチ化することで加熱・冷却し易くなっているため、スチームや焙焼等従来から行われているものも利用できる。
加熱抽出後に、固液分離する。分離方法は、遠心脱水、ろ過、圧搾等、一般に知られる手法で行うことができる。脂肪分が多い場合には、遠心分離等により、脂肪分を浮上させて分離回収することで良質な魚油も得られる。
(比較例1)
この結果から、脂肪の分解により生成される酸化臭が、従来法による煮干し抽出エキスより、有意的に少なくなったことが確認された。
Claims (6)
- 魚介類からの有用物の抽出分離方法であって、
原料となる魚肉を粉砕してミンチ化し、魚肉を構成する水溶性タンパク質が熱変性する温度まで加熱したら熱源をOFFすることで短時間だけ加熱し、その後に固液分離することにより、エキスを水相抽出することを特徴とする方法。 - 原料となる魚が頭及び/または内臓を含むものであることを特徴とする、請求項1に記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法。
- 原料となる魚が凍結魚であることを特徴とする、請求項1または2に記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法。
- 原料となる魚が5%以上の脂肪分を含むことを特徴とする、請求項1から3のいずれかに記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法。
- ミンチ化した原料魚肉に、原料魚肉の等倍量以下の加水を行った後に、加熱、固液分離することにより、エキスと同時に魚油も得ることを特徴とする請求項1から4のいずれかに記載の魚介類からの有用物の抽出分離方法。
- 請求項1から5のいずれかに記載の方法により得られた魚介類エキス及び請求項5により得られた魚油。
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