JP7153179B2 - 海産物系濃厚だしの製造方法 - Google Patents

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本発明は、海産物系濃厚だし及びその製造方法等に関する。
魚節類や昆布類から抽出されるだしは、旨味成分を豊富に含んでおり、特に日本料理では重要な役割を果たしている。そのため、以前から、様々なだしの製造方法が検討されてきた(特許文献1及び2)。
特公昭62-36652号公報 特許第6019527号公報
本発明は、旨味が強く、優れた香りを有し、かつ臭みやえぐみを抑えた海産物系濃厚だし及びその製造方法、並びに海産物系濃厚だしを含む飲食品等を提供する。
発明者は、赤身魚又は昆布類からなる抽出原料から抽出した抽出液を抽出溶媒として、魚節類、煮干又は昆布類からなるだし原料を抽出する工程を含むことで、旨味が強く、優れた香りを有し、かつ臭みやえぐみを抑えた海産物系濃厚だしを製造できることを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、以下の[1]~[7]の態様に関する。
[1]赤身魚又は昆布類からなる抽出原料から抽出し固液分離して得られた抽出液を抽出溶媒として、魚節類、煮干又は昆布類からなるだし原料を抽出し固液分離する工程を含み、抽出溶媒100重量部に対して、だし原料0.1~20重量部を用いる、海産物系濃厚だしの製造方法。
[2]赤身魚がカツオ、マグロ、サバ及びイワシからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、魚節類がカツオ節、マグロ節、サバ節及びイワシ節からなる群から選ばれる少なくとも1種であって、煮干がイワシ、アジ、サバ及びトビウオからなる群から選ばれる少なくとも1種である、[1]記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
[3]抽出溶媒のBrixが10以上である、[1]又は[2]記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
[4]だし原料の抽出条件が30~120℃である、[1]~[3]に記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
[5]抽出原料とだし原料が同じ海産物である、[1]~[4]の何れかに記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
[6][1]~[5]の何れかに記載の製造方法により得られる海産物系濃厚だしであって、Brix15以上である海産物系濃厚だし。
[7][6]記載の海産物系濃厚だしを含む調味料又は飲食品。
赤身魚又は昆布類からなる抽出原料から抽出した抽出液は旨味はあるが臭みやえぐみ等が強く、だしとしての利用が難しかったが、該抽出液を抽出溶媒としてだし原料を抽出することで、旨味が強く、かつ臭みやえぐみを抑え、優れた香りを有する海産物系濃厚だしを製造できるようになった。さらに、該海産物系濃厚だしを添加することで、強い旨味と優れた香りを付与でき、化学調味料を使用することなく、力価の高いだしの入った調味料又は飲食品を提供できる。
本発明に記載の海産物系濃厚だしは、赤身魚又は昆布類からなる抽出原料から抽出した抽出液を抽出溶媒として、魚節類、煮干又は昆布類からなるだし原料を抽出する工程を含むことで、海産物系濃厚だしを得られる。
本発明に記載の抽出溶媒となる抽出液の抽出原料としては、赤身魚又は昆布類であればよく、赤身魚としてはカツオ、マグロ、サバ、イワシ等が例示できる。昆布類は特に限定されないが、利尻昆布、日高昆布(三石昆布)、真昆布、羅臼昆布、細目昆布、長昆布(浜中昆布)等が例示できる。
本発明に記載の抽出溶媒となる抽出液は、赤身魚又は昆布類から抽出し固液分離して得られた抽出液であればよく、生もしくは冷凍の赤身魚又は生もしくは乾燥昆布を抽出原料としてボイル又は蒸す等、蒸煮により抽出するのが好ましく、頭部、内臓等を取り除いた身を使用するのが好ましいが、イワシは頭部のみ除去したもの又は全身を使用するのが好ましい。該抽出液は、水溶液中で抽出して得られた液でもよく、蒸すことで抽出された液でもよく、抽出時の水溶液にエタノールを添加してもよいが、水溶液中のエタノール濃度は20重量%以下が好ましく、10重量%以下がより好ましく、5重量%以下がさらに好ましく、1重量%以下が特に好ましく、0.5重量%以下が最も好ましい。さらに、抽出時の加熱でエタノールが揮発するため、得られた抽出液中のエタノール濃度は5重量%以下が好ましく、2重量%以下がより好ましく、1重量%以下がさらに好ましく、エタノールを含まないのが特に好ましい。抽出原料からの抽出は、本発明に記載の抽出液が得られれば特に限定されないが、60~120℃が好ましく、70~110℃がより好ましく、80~100℃がさらに好ましく、85~95℃が特に好ましく、時間は適宜設定できるが、10~150分が好ましく、20~120分がより好ましく、30~90分がさらに好ましく、40~60分が特に好ましい。該抽出液は、抽出後に、抽出液と固形物とを分離する固液分離を行うことで得られるが、分離方法は特に限定されず、分離後の液に新たに抽出原料を投入して繰り返し抽出してもよく、市販のエキスを使用してもよい。固液分離することで、雑味を抑えた抽出液が得られ、その後濃縮してもよい。さらにグルコース酸化酵素等による酵素処理等の処理を行ってもよい。
本発明では、抽出原料から抽出した前記抽出液を抽出溶媒として、魚節類、煮干又は昆布類からなるだし原料を抽出する工程を含んでいればよく、だし原料としては、一般的な海産物系のだし原料であれば特に限定されないが、魚節類はカツオ節、マグロ節、サバ節、イワシ節等が例示でき、煮干はイワシ、アジ、サバ、トビウオ等が例示でき、昆布類は利尻昆布、日高昆布(三石昆布)、真昆布、羅臼昆布、細目昆布、長昆布(浜中昆布)等が例示できる。魚節類はカツオ節、マグロ節、サバ節及びイワシ節からなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、煮干はイワシ、アジ、サバ及びトビウオからなる群から選ばれる少なくとも1種が好ましく、例えば、抽出原料がカツオの場合は、だし原料にはカツオ節を使用し、抽出原料がカタクチイワシの場合は、だし原料にはカタクチイワシからなる煮干を使用し、抽出原料が昆布の場合は、だし原料には昆布をする等、抽出原料と同じ海産物をだし原料とするのがより好ましい。抽出溶媒100重量部に対するだし原料は0.1~20重量部が好ましく、0.2~15重量部がより好ましく、0.3~10重量部がさらに好ましく、0.5~8重量部が特に好ましい。本発明の海産物系濃厚だしは、だし原料からの抽出後に抽出液と固形物とを分離する固液分離を行うことで得られるが、分離方法は特に限定されず、その後濃縮してもよく、固液分離することで、雑味を抑えた抽出液が得られる。
だし原料の抽出に使用する抽出溶媒は、本発明の海産物系濃厚だしが得られれば特に限定されないが、だし原料抽出時のBrixは10以上であるのが好ましく、20以上であるのがより好ましく、25以上であるのがさらに好ましく、30以上であるのが特に好ましく、Brixが高くなるほど、本発明の海産系濃厚だしの旨味が増すため好ましいが、高過ぎると臭み又はえぐみが強くなるため、Brixの上限は60以下、50以下又は40以下が好ましく、抽出原料から抽出、濃縮した抽出液を、水を添加する等して適切なBrixになるよう調整して使用してもよい。また、だし原料の抽出時にエタノールを添加してもよいが、エタノール濃度は60重量%未満が好ましく、55重量%以下がより好ましく、50重量%以下、40重量%以下、30重量%以下、20重量%以下、10重量%以下、5重量%以下、1重量%以下又は0.5重量%以下がさらに好ましい。
だし原料からの抽出は、本発明の海産物系濃厚だしが得られれば特に限定されないが、30~125℃が好ましく、40~120℃がより好ましく、50~110℃がさらに好ましく、60~100℃が特に好ましく、上限は80℃未満が好ましく、75℃以下がより好ましく、上限温度を低くすることで揮発性の高い香り成分が揮発し難く、優れた香りのだしが得られる。時間は適宜設定できるが、10分~15時間が好ましく、20分~12時間がより好ましく、30~6時間がさらに好ましく、40~3時間が特に好ましく、1時間以内が最も好ましい。
上記工程を含むことにより、強い旨味と優れた香りを有する、本発明の海産物系濃厚だしが得られる。本発明の海産物系濃厚だしは、Brixが15以上であるのが好ましく、20以上、25以上、30以上、35以上又は40以上であるのがより好ましく、強い旨味と優れた香りを有し、臭みやえぐみが少ない。海産物系濃厚だしは、さらに、ドラムドライ、エアードライ、スプレードライ、真空乾燥及び/又は凍結乾燥等を行い、乾燥品として利用してもよい。
本発明の海産物系濃厚だしは、天然物由来で、優れた風味及び呈味を有しているため、だしとして各種調味料や飲食品に広く利用できる。各調味料や飲食品に添加することにより、化学調味料を加えることなく、強い旨味や香りを付与することができる。
以下、実施例を示して本発明を具体的に説明するが、本発明は以下の例によって限定されるものではない。尚、本発明において、%は別記がない限り全て重量%である。
カツオの頭部及び内臓を取り除いた身を使用して熱水抽出した後、固液分離及び濃縮工程を経て得られたカツオ抽出液(Brix30°)1500gに、カツオ節42gを入れ、70~75℃で、40分間抽出した後、90℃で10分間殺菌処理した。得られた液を200メッシュろ過し、さらに珪藻土ろ過した後、Brix58まで濃縮して、カツオ濃厚だし(実施品1)を得た。
マグロの頭部及び内臓を取り除いた身を使用して熱水抽出した後、固液分離及び濃縮工程を経て得られたマグロ抽出液(Brix66°)900gに、水1329g及びグルコース36gを加えて溶解させた後、グルコース酸化酵素製剤(スミチームGOP:新日本化学工業株式会社製)を2.61g添加して、撹拌(130rpm)しながら40℃で3時間酵素処理を行い、80℃で10分間処理して酵素を失活させた。得られた酵素処理抽出液(Brix27)2319gを抽出溶媒としてタンク1に入れ、80℃の水230gとマグロ節12gを入れたタンク2に抽出溶媒を循環させ、75℃、40分間、循環抽出し、Brix27のマグロ濃厚だし(実施品2)を得た。尚、タンク2からタンク1方向の流路にろ布ろ過装置を設置して循環抽出を行った。
[評価試験]
実施品1、2及び比較品について、習熟した6名のパネラーにより、旨味、香り、臭み及びえぐみの官能評価を行った。尚、実施例1のカツオ抽出液を比較品1、実施例2のマグロ抽出液を比較品2-1、酵素処理液を比較品2-2とし、さらに実施例1のカツオ抽出液の代わりに水を抽出溶媒として抽出した抽出液を基準品1、実施例2の酵素処理液の代わりに水を抽出溶媒として抽出した抽出液を基準品2とし、何れのサンプルもBrixを0.5に調整して官能評価した。各評価は、5段階で評価し、基準品1又は2を「3」として、基準品よりやや強いものを「4」、強いものを「5」、やや弱いものを「2」、弱いものを「1」とした。尚、基準品1は、実施品1及び比較品1の基準品とし、基準品2は、実施品2、比較品2-1及び比較品2-2の基準品とした。各パネラーの数値を平均し、基準品との数値を比較した。旨味及び香りは、基準品より数値が大きい方が優れ、数値が小さい方が劣るとし、臭み及びえぐみは、基準品より数値が小さい方が優れ、数値が大きい方が劣るとして、基準品より優れたものを「◎」、基準品と同等のものを「○」、基準品よりやや劣るものを「△」、基準品よりはるかに劣るものを「×」として、結果を表1に示した。
Figure 0007153179000001
表1に示すとおり、実施品1のカツオ濃厚だしは、比較品1のカツオ抽出液に比べて、香り、臭み及びえぐみが改善され、好ましいものであった。また、実施品2のマグロ濃厚だしも同様に、比較品2-1のマグロ抽出液に比べて、香り、臭み及びえぐみが改善され、好ましいもので、さらに、比較品2-2の酵素処理品に比べて香りが改善されていた。尚、水を抽出溶媒とした基準品に比べ、何れも旨味は強かった。
以上から、カツオやマグロから抽出しただけの抽出液では旨味はあるが香りが弱く、臭みやえぐみが強かったが、該抽出液を抽出溶媒としてだし原料を抽出することで、旨味が強く、かつ臭みやえぐみを抑え、優れた香りを有する海産物系濃厚だしを製造できることが分かった。

Claims (6)

  1. 赤身魚からなる抽出原料から抽出し固液分離して得られた抽出液を抽出溶媒として、魚節類からなるだし原料を80℃未満で抽出し固液分離する工程を含み、
    抽出溶媒のBrixが10以上であって、
    抽出溶媒100重量部に対して、だし原料0.1~20重量部を用いる、
    Brix15以上である海産物系濃厚だしの製造方法。
  2. 赤身魚がカツオ、マグロ、サバ及びイワシからなる群から選ばれる少なくとも1種であって、魚節類がカツオ節、マグロ節、サバ節及びイワシ節からなる群から選ばれる少なくとも1種であ、請求項1記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
  3. だし原料の抽出条件が30~75℃である、請求項1又は2記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
  4. 抽出原料とだし原料が同じ海産物である、請求項1~の何れか1項に記載の海産物系濃厚だしの製造方法。
  5. 請求項1~の何れかに記載の製造方法により得られる海産物系濃厚だしであって、Brix15以上であり、水を抽出溶媒とした製造方法により得られる抽出液と比べ、旨味が強い、海産物系濃厚だし。
  6. 請求項記載の海産物系濃厚だしを含む調味料又は飲食品。
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